(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128213
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ターボ型ポンプ及び流体供給ユニット
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20220825BHJP
F04B 1/2064 20200101ALI20220825BHJP
【FI】
F04D29/44 C
F04D29/44 E
F04B1/2064
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026617
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】木内 智
【テーマコード(参考)】
3H070
3H130
【Fターム(参考)】
3H070AA01
3H070BB04
3H070BB06
3H070CC21
3H070DD91
3H130AA04
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA61A
3H130CA02
3H130CA21
3H130EB01A
(57)【要約】
【課題】インペラの流体加圧供給能力に対して下流側の消費流量が少ない供給過剰運転時において流体の加圧送給性能を向上させること。
【解決手段】吸込通路32に設けたインペラ34の回転により吸込通路32の下流に流体を加圧送給するターボ型ポンプであって、吸込通路32においてインペラ34よりも上流側に位置する部分には、下流側に向いた反転面40を形成する状態で内径を減少させるオリフィス孔36aが設けられ、反転面40には流体の周方向への流れを制限する反転隔壁部42が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路に設けたインペラの回転により前記流体通路の下流に流体を加圧送給するターボ型ポンプであって、
前記流体通路において前記インペラよりも上流側に位置する部分には、下流側に向いた反転面を形成する状態で内径を減少させる縮径部が設けられ、前記反転面には流体の周方向への流れを制限する反転隔壁部が設けられていることを特徴とするターボ型ポンプ。
【請求項2】
前記反転隔壁部は、前記流体通路の周方向に沿って互いに間隔を確保して複数設けられ、前記縮径部の軸心に対して放射状に延在していることを特徴とする請求項1に記載のターボ型ポンプ。
【請求項3】
前記反転隔壁部は、前記流体通路の周方向に沿って互いに間隔を確保して複数設けられ、前記縮径部の軸心を通過する半径に対して外周側から内周側に向かうに従って前記インペラの回転方向に傾斜するように延在していることを特徴とする請求項1に記載のターボ型ポンプ。
【請求項4】
前記反転隔壁部は、前記流体通路の周方向に沿って互いに間隔を確保して複数設けられ、
前記反転隔壁部の相互間には、前記流体通路の外周側から内周側に向けて湾曲状となる反転凹面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のターボ型ポンプ。
【請求項5】
前記反転凹面は、湾曲の中心が前記縮径部よりも外周側に位置するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のターボ型ポンプ。
【請求項6】
前記反転凹面は、球状を成すように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のターボ型ポンプ。
【請求項7】
前記流体通路において前記縮径部と前記インペラとの間に位置する部分の内周面には、流体の周方向への流れを制限する前段隔壁部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のターボ型ポンプ。
【請求項8】
前記反転隔壁部は、前記流体通路の周方向に沿って互いに間隔を確保して複数設けられ、
前記反転隔壁部の相互間には、前記流体通路の外周側から内周側に向けて湾曲状となる反転凹面が設けられ、
前記流体通路において前記縮径部と前記インペラとの間に位置する部分は、前記インペラの回転軸心に沿って直線状に延在し、
前記前段隔壁部は、前記反転隔壁部に対応した位置に設けられ、
前記前段隔壁部の相互間には、円柱の凹状を成す整流溝が設けられていることを特徴とする請求項7に記載のターボ型ポンプ。
【請求項9】
前記流体通路において前記縮径部と前記インペラとの間に位置する部分は、上流側に向けて内径が漸次増大するようにテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のターボ型ポンプ。
【請求項10】
前記流体通路において前記インペラに連絡する部分の内径は、前記縮径部の内径と一致していることを特徴とする請求項9に記載のターボ型ポンプ。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか一つに記載されたターボ型ポンプと、前記流体通路において前記インペラよりも下流側に位置する部分に接続された容積型ポンプとを備えることを特徴とする流体供給ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路に設けたインペラにより流体通路の下流に流体を送給するターボ型ポンプ及びターボ型ポンプを備えた流体供給ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インペラを備えたターボ型ポンプでは、流体の加圧供給能力に対して下流側の消費流量が小さい状況下では、インペラの入口側の流体に旋回状の逆流が生じることに起因して種々の問題を招来する懸念がある。より具体的に説明すると、ターボ型ポンプの回転数が一定であっても、下流側に接続された流体放出ノズルの開口が絞られた場合、あるいは下流側に接続された可変容量型ポンプの吐出容量が小さく設定された場合には、上述の逆流が生じるおそれがある。また、下流側の消費流量が一定であっても、上流側のターボ型ポンプの回転数が上昇した場合にも、上述の逆流が生じるおそれがある(以下、これらの運転状態を単に供給過剰運転時と総称することとする)。このため従来では、インペラよりも上流側に位置する部分に逆流する流体に当接するように反転面を有したオリフィスリングを設けるとともに、オリフィスリングとインペラとの間に流体の旋回を抑制する整流手段を設けるようにしたものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、整流手段を通過した後の流体は、オリフィスリングの反転面に当接した際に周方向へも拡散することになる。このため、オリフィスリングによっては、流体の逆流を効率良く反転することができず、供給過剰運転時における流体の加圧送給性能を考慮した場合、未だ改善の余地がある。なお、上述の問題は、必ずしもインデューサを備えたものに限らず、インペラの回転によって下流に流体を加圧送給するものであれば同様に生じ得るものである。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、供給過剰運転時において流体の加圧送給性能を向上させることのできるターボ型ポンプ及び流体供給ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るターボ型ポンプは、流体通路に設けたインペラの回転により前記流体通路の下流に流体を加圧送給するターボ型ポンプであって、前記流体通路において前記インペラよりも上流側に位置する部分には、下流側に向いた反転面を形成する状態で内径を減少させる縮径部が設けられ、前記反転面には流体の周方向への流れを制限する反転隔壁部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、反転面に反転隔壁部が設けられているため、反転面に当接した際の流体が周方向へ拡散することなく流体通路の中心側へ案内されることになる。これにより、逆流が生じた場合にもこれを効率良く反転させることができ、インペラの流体加圧供給能力に対して下流側の消費流量が少ない供給過剰運転時においても流体の加圧送給性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1であるターボ型ポンプを備えた流体供給ユニットの断面側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した流体供給ユニットの要部を示す断面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した流体供給ユニットのターボ型ポンプに適用するインペラを示すもので、(a)は外観斜視図、(b)は
図1におけるD-D線断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した流体供給ユニットのターボ型ポンプにおいて縮径部を構成するためのオリフィスプレートをインペラに対向する反転面側から見た外観斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したオリフィスプレートを示すもので、(a)はインペラに対向する反転面側から見た図、(b)は(a)におけるE-E線断面図である。
【
図6】
図6は、オリフィスプレートの変形例をインペラに対向する反転面側から見た外観斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示したオリフィスプレートの変形例を示すもので、(a)はインペラに対向する反転面側から見た図、(b)は(a)におけるF-F線断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態2であるターボ型ポンプを備えた流体供給ユニットの断面側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した流体供給ユニットの要部拡大断面図である。
【
図11】
図11は、
図8に示した流体供給ユニットのターボ型ポンプにおいて流体通路を構成するためのスリーブを示すもので、(a)は上流側の端面から下流側を見た図、(b)は(a)におけるG-G線断面図である。
【
図12】
図12は、
図8に示したスリーブを上流側の端面から下流側を見た外観斜視図である。
【
図13】
図13は、
図8に示した流体供給ユニットのターボ型ポンプにおいて縮径部を構成するためのオリフィスプレートを示すもので、(a)はインペラに対向する反転面側から見た図、(b)は(a)におけるH-H線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るターボ型ポンプ及び流体供給ユニットの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1、
図2は、本発明の実施の形態1であるターボ型ポンプを備えた流体供給ユニットを示すものである。ここで例示する流体供給ユニットは、作業機械において各種油圧機器に油を供給するための油圧ポンプユニットであり、ケース1とポートブロック2とによって構成されるユニット本体3の内部に入力シャフト10を備えている。入力シャフト10は、一端部がケース1の外部に露出する一方、他端部がポートブロック2の内部に収容された状態で軸受11,12を介してユニット本体3に支持してあり、軸心Cを中心として回転することが可能である。図には明示していないが、この入力シャフト10の一端部には、作業機械に搭載されたエンジンや電動機等の駆動源が連結してある。
【0011】
ユニット本体3においてケース1に構成される中空部1aには、シリンダブロック20が配設してある。シリンダブロック20は、容積型ポンプである可変容量型斜板ピストンポンプを構成するためのもので、中心部を貫通する入力シャフト10を介してユニット本体3の中空部1aに配設してある。シリンダブロック20は、入力シャフト10との間がスプラインによって連結してあり、入力シャフト10とともに軸心Cを回転軸心として回転することが可能である。
【0012】
シリンダブロック20には、入力シャフト10の周囲に複数本のシリンダボア20aが設けてある。シリンダボア20aは、それぞれ入力シャフト10の軸心Cに平行となるように形成した円柱状の空所であり、周方向に沿って互いに等間隔に配置してある。個々のシリンダボア20aは、一方の端部がシリンダブロック20の一方の端面(以下、開放側端面20bという)に開口する一方、他方の端部が細径のシリンダポート20cを介してシリンダブロック20の他方の端面(以下、摺動端面20dという)に開口している。シリンダボア20aのそれぞれには、ピストン21が配設してある。ピストン21は、シリンダボア20aの軸心に沿って移動可能に嵌合したものである。個々のピストン21には、シリンダブロック20の開放側端面20bから突出する端部にピストンシュー22が装着してある。ピストンシュー22は、ピストン21に対して傾動可能に接続したものである。このシリンダブロック20は、一方の端部がピストンシュー22を介して斜板23に摺動可能に当接し、かつ他方の端部がポートブロック2に設けた弁板24に摺動可能に当接している。
【0013】
斜板23は、入力シャフト10に対して傾斜した摺接面23aを有し、摺接面23aを介してピストンシュー22に当接したものである。ピストンシュー22を介して斜板23の摺接面23aに当接するピストン21は、シリンダブロック20が回転した場合に摺接面23aの傾斜に従ってシリンダボア20aの内部を往復移動することになる。図には明示していないが、本実施の形態1で例示する油圧ポンプユニットでは、入力シャフト10に対して摺接面23aの傾斜角度を変更することが可能である。摺接面23aの傾斜角度を変更した場合には、シリンダブロック20が回転した際のシリンダボア20aに対するピストン21の往復移動距離が変化することになる。
【0014】
弁板24は、シリンダブロック20の摺動端面20dに開口するすべてのシリンダポート20cを同時に閉塞することのできる内外径を有した円形状を成すものである。本実施の形態1では、シリンダブロック20の摺動端面20dが凹状の球面となるように形成してあり、これに隙間なく摺接することができるように弁板24においてシリンダブロック20の摺動端面20dに対向する部分が凸状の球面となるように形成してある。
【0015】
この弁板24には、入力シャフト10の軸心Cを中心とした円周上に高圧ポート24a及び低圧ポート24bが設けてある。高圧ポート24a及び低圧ポート24bは、弁板24を貫通する切欠であり、それぞれに対して隣接する複数のシリンダポート20cが連通可能となるように円弧状に延在したものである。
【0016】
一方、ユニット本体3のポートブロック2には、吐出通路31及び吸込通路(流体通路)32が設けてある。吐出通路31は、一端が弁板24の高圧ポート24aに連通するとともに、図示せぬ他端がポートブロック2の外表面に開口するものである。ポートブロック2の外表面に開口する吐出通路31の開口端部には、各種油圧機器に対して油を供給する油通路(図示せず)が接続してある。吸込通路32は、入力シャフト10の軸心Cに近接した部分から径方向に沿って直線状に延在するもので、一端が弁板24の低圧ポート24bに連通し、かつ他端がポートブロック2の外表面に開口している。図からも明らかなように、吸込通路32は、吐出通路31に比較して大きな内径を有するように構成してあり、内部にインペラ34及びスリーブ35を備えるとともに、開口端部にオリフィスプレート36を備えている。インペラ34、スリーブ35及びオリフィスプレート36は、上述した可変容量型斜板ピストンポンプの前段に、非容積型ポンプであるターボ型ポンプを構成するためのものである。
【0017】
インペラ34は、
図1~
図3に示すように、基端部に支持軸部34aを有し、支持軸部34aの軸心34b(回転軸心)を吸込通路32の軸心32aに合致させた状態で支持軸部34aを介してポートブロック2に回転可能に配設したものである。インペラ34には、吸込通路32の上流に向けて開口する導入口34cを有した円筒部34dが設けてある。円筒部34dの内部には、複数の羽根板部34eが径方向に沿って湾曲状に形成してある。円筒部34dにおいて羽根板部34eの相互間となる部分には、外周面に開口するように複数の吐出口34fが設けてある。
【0018】
インペラ34の基端部には、ドリブンギア13が設けてある。ドリブンギア13は、軸心が支持軸部34aの軸心34bに合致するように取り付けたベベルギアであり、入力シャフト10に設けたドライブギア14に歯合している。ドライブギア14は、軸心が入力シャフト10の軸心Cに合致するように取り付けたベベルギアであり、入力シャフト10が回転した場合にドリブンギア13を介してインペラ34を増速回転させるように機能するものである。このインペラ34は、入力シャフト10が回転した場合にドライブギア14及びドリブンギア13の増速比で連動し、複数の羽根板部34eによって吸込通路32の油を導入口34cから吸引する一方、吸引した油を外周部の吐出口34fから吐出して弁板24の低圧ポート24bに加圧送給するように機能する。この加圧能力は、インペラ34の回転数の二乗に比例して高くなる。
【0019】
図1、
図2に示すように、スリーブ35は、吸込通路32の内周面においてインペラ34よりも上流側に位置する部分に装着することにより、インペラ34の回転をガイドするとともに、導入口34cへの油の流れをガイドするように機能するものである。本実施の形態1では、スリーブ本体35aとフランジ部35bとを有したスリーブ35を適用している。スリーブ本体35aは、断面が円形で、軸心35cが直線状を成すように構成したもので、吸込通路32の内部に嵌合可能となる外径に形成してある。フランジ部35bは、スリーブ本体35aの一端部から外周に向けて延在した平板状を成すものである。このスリーブ35は、スリーブ本体35aを吸込通路32の内部に挿入し、かつフランジ部35bをポートブロック2の外表面に当接させた状態で、フランジ部35bを介してポートブロック2にネジを螺合することによりポートブロック2に固定してある。
【0020】
スリーブ本体35aの内周面は、インペラ34の導入口34cに連絡する下流端部分35dが導入口34cとほぼ同じ内径を有しているとともに、上流側に向けて内径が漸次増大するテーパ状部分35eを有している。スリーブ本体35aにおいてもっとも下流側となる端部には、インペラ34における円筒部34dの端部外周部に摺動可能に嵌合となる外筒部35fが設けてある。
【0021】
オリフィスプレート36は、
図1、
図2、
図4、
図5に示すように、中心部分にオリフィス孔(縮径部)36aを有した平板状を成すもので、オリフィス孔36aの軸心36bをスリーブ本体35aの軸心35cに合致させた状態でポートブロック2に取り付けてある。オリフィス孔36aは、スリーブ本体35aにおける上流側の端部よりも小さい内径となるように形成してある。これにより、オリフィスプレート36をポートブロック2に取り付けた場合には、オリフィスプレート36がスリーブ本体35aの内周側に突出し、スリーブ本体35aとの間に反転面40を構成することになる。すなわち、オリフィスプレート36及びスリーブ35を取り付けた状態の吸込通路32では、オリフィス孔36aを通過した後にスリーブ本体35aの上流側において内径が一旦増大し、インペラ34に至るまでの間に漸次内径が減少することになる。本実施の形態1では、インペラ34の導入口34cよりも小さい内径となるようにオリフィスプレート36にオリフィス孔36aが形成してある。
【0022】
反転面40は、吸込通路32の軸心32aに対して直交するように延在した下流側に向くものである。この反転面40には、オリフィス孔36aの周囲となる部分に複数の反転凹面41が周方向に沿って互いに等間隔となるように設けてある。反転凹面41は、内底面が平坦状で反転面40に平行となるように形成した凹所であり、それぞれの外周端は、スリーブ本体35aにおける上流側端部の内周面とほぼ一致している。周方向に隣接する反転凹面41は、相互間に間隔を確保することで構成される反転隔壁部42によって互いに隔絶してある。反転隔壁部42は、反転面40が露出される部分であり、オリフィス孔36aの軸心36bに対して径方向に沿って放射状に延在し、オリフィス孔36aにのみ開口するように構成してある。
【0023】
図1、
図2に示すように、上述の吸込通路32には、オリフィスプレート36を介して吸込配管50が接続してある。吸込配管50は、図示せぬ油タンクとの間を接続するものである。本実施の形態1では、オリフィス孔36aよりも大きく、スリーブ本体35aにおける上流側端部の内周面とほぼ一致した内径を有する吸込配管50が接続してある。
【0024】
上記のように構成した油圧ポンプユニットでは、図示せぬ駆動源の回転によって入力シャフト10が回転すると、シリンダブロック20の回転に伴ってピストン21が往復移動する。これにより、吸込配管50、オリフィス孔36a、スリーブ本体35a、インペラ34、弁板24の低圧ポート24bを通じてシリンダボア20aに吸い込まれた油が弁板24の高圧ポート24a、吐出通路31、油通路(図示せず)を通じて各種油圧機器に供給されることになる。
【0025】
この間、吸込通路32においては、ドライブギア14、ドリブンギア13を介して増速回転するインペラ34が、吸込配管50から弁板24の低圧ポート24bに至るまでの間に油の圧力を高めるように機能するため、可変容量型斜板ピストンポンプでのポンプ吸込性能を向上させることができる。
【0026】
ここで、入力シャフト10が駆動源の回転変動により定格回転数よりも高速で回転している場合や可変容量側斜板ピストンポンプの斜板23が小さい傾斜角度に設定されて運転している場合等のように、インペラ34の流体加圧供給能力に対して下流側の消費流量が少ない状況下(以下、単に供給過剰運転時という)では、吸込通路32の圧力が上昇することになり、インペラ34の吐出口34fを通過した油が再び吐出口34fを通ってスリーブ本体35aに旋回状に逆流し、これに起因してサージングが発生する原因となり得る。また、スリーブ本体35aや吸込配管50において旋回状の逆流が発達した場合には、中心部の圧力降下によって逆流にキャビテーションが発生し(以下、単に逆流渦キャビテーションという)、安定した運転が困難となる事態を招来するおそれもある。
【0027】
しかしながら、上述の油圧ポンプユニットによれば、スリーブ本体35aに発生した逆流がオリフィスプレート36に当接することで反転することになり、上述の問題を招来するおそれがなくなる。すなわち、供給過剰運転時にスリーブ本体35aに生じた旋回状の油の逆流は、遠心力によってテーパ状部分35eに滑らかに導入され、オリフィスプレート36に当接することで反転する。オリフィスプレート36で反転した油は、吸込配管50からオリフィス孔36aに流入した油に合流して下流のインペラ34の導入口34cに向かう流れを加速することになる。従って、供給過剰運転時であっても、サージングが発生する問題や逆流渦キャビテーションが発生して運転が不安定となる等の問題を防止することが可能となる。
【0028】
特に、実施の形態1では、オリフィスプレート36の反転面40に反転凹面41及び反転隔壁部42を設けているため、反転凹面41に当接した油が反転隔壁部42によって周方向に拡散する事態が制限され、オリフィス孔36aに向けて送給されることになる。これにより、スリーブ本体35aのテーパ状部分35eに導入された油の逆流がオリフィスプレート36において効率良く反転されることになり、供給過剰運転時においてインペラ34による油の加圧送給性能及び可変容量型斜板ピストンポンプでのポンプ吸込性能を向上させることが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施の形態1では、オリフィスプレート36の反転隔壁部42を放射状に設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6、
図7に示す変形例のオリフィスプレート136のように、オリフィス孔(縮径部)136aの軸心136bを通過する半径に対して外周側から内周側に向かうに従ってインペラ34の回転方向(矢印A)に傾斜(角度:θ)するように反転隔壁部142を設けるようにしても良い(
図7(a)参照)。すなわち、スリーブ本体35aに生じる油の逆流は、インペラ34の回転方向Aと同方向に旋回状となる。このため、この逆流の旋回方向に沿って反転隔壁部142が延在するように設けることで油が反転凹面141に当接した際にオリフィス孔136aに向いた中心側への油の流れがスムーズとなり、上述の作用効果が一層顕著となることを期待することができる。なお、この変形例のオリフィスプレート136は、実施の形態1で例示した油圧ポンプユニットのオリフィスプレート36に代えて適用することを前提に構成したものである。また、反転凹面141は、オリフィスプレート136の反転面140に周方向に沿って互いに等間隔となるように設けてあり、内底面が平坦状で反転面140に平行となるように形成したものである点は実施の形態1と同様である。
【0030】
また、上述した実施の形態1及び変形例では、反転凹面として内底面が平坦状のものを例示しているが、本発明はこれに限定されず、以下に示す実施の形態2のように、内底面が湾曲状となる反転凹面を設けるようにしても良い。
【0031】
(実施の形態2)
図8~
図10は、実施の形態2であるターボ型ポンプを備えた流体供給ユニットを示すものである。ここで例示する流体供給ユニットは、実施の形態1と同様、作業機械において各種油圧機器に油を供給するための油圧ポンプユニットであり、実施の形態1とはスリーブ235及びオリフィスプレート236の構成が主に異なったものである。以下においては、実施の形態1との相違点について主に説明し、共通する構成については同一の符号を付すこととする。
【0032】
図9~
図11に示すように、スリーブ235は、吸込通路32の内周面においてインペラ34よりも上流側に位置する部分に装着することにより、インペラ34の回転をガイドするとともに、導入口34cへの油の流れをガイドするように機能するものである。本実施の形態2では、スリーブ本体235aとフランジ部235bとを有したスリーブ235を適用している。スリーブ本体235aは、
図8~
図12に示すように、断面が円形で、軸心235cが直線状を成すように構成したもので、吸込通路32の内部に嵌合可能となる外径に形成してある。フランジ部235bは、スリーブ本体235aの一端部から外周に向けて延在した平板状を成すものである。このスリーブ235は、スリーブ本体235aを吸込通路32の内部に挿入し、かつフランジ部235bをポートブロック2の外表面に当接させた状態で、フランジ部235bを介してポートブロック2にネジを螺合することによりポートブロック2に固定してある。
【0033】
スリーブ本体235aの内周面235dは、上流側に位置する端部がインペラ34の導入口34cよりも大きな内径を有するように構成してある一方、下流側に向けて内径が漸次減少するように延在したテーパ状を成している。スリーブ本体235aにおいてもっとも下流側に位置する端部には、インペラ34の外周部に摺動可能に嵌合となる外筒部235eが設けてある。スリーブ本体235aにおいてもっとも上流側に位置する端部には、内周面よりも内径の大きな口広部235fが形成してある。スリーブ本体235aの内周面235dにおいてインペラ34の導入口34cに連絡する下流端部分235gは、導入口34cとほぼ同じ内径となるように形成してある。
【0034】
また、スリーブ本体235aの内周面235dには、複数の整流溝235hが周方向に沿って互いに等間隔となるように並設してある。整流溝235hは、円柱の凹状を成し、それぞれの軸心がスリーブ本体235aの軸心235cに沿って直線状に延在するように形成したものである。より詳細に説明すると、整流溝235hには、円柱の凹状を成す部分の上下にそれぞれ凹球面状部分が設けてある。スリーブ本体235aにおいて整流溝235hの相互間となる部分には、間隔を確保することによって前段隔壁部235jが構成してある。前段隔壁部235jは、スリーブ本体235aの内周面235dが露出される部分であり、スリーブ本体235aの軸心235cに沿って直線状に延在している。図からも明らかなように、整流溝235hの上流端部は、それぞれの凹球面状部分が口広部235fにおいて互いに連通している。整流溝235hの下流端部は、インペラ34の導入口34cに連絡する下流端部分235gから上流側に間隔を確保した位置で個々の凹球面状部分が個別に終端している。
【0035】
オリフィスプレート236は、
図9、
図10、
図13に示すように、中心部分に円板状の厚板部分236aを有するとともに、厚板部分236aの周囲に薄板部分236bを有したもので、厚板部分236aをスリーブ235の口広部235fに挿入し、かつ薄板部分236bをスリーブ235のフランジ部235bに重ね合わせた状態でポートブロック2に取り付けてある。オリフィスプレート236には、厚板部分236aの中心部にオリフィス孔(縮径部)236cが設けてある。オリフィス孔236cは、スリーブ本体235aにおける上流側の端部よりも小さい内径となるように形成してある。これにより、オリフィスプレート236をポートブロック2に取り付けた場合には、オリフィスプレート236がスリーブ本体235aの内周側に突出し、スリーブ本体235aの内部に反転面240を構成することになる。すなわち、オリフィスプレート236及びスリーブ235を取り付けた状態の吸込通路32では、オリフィス孔236cを通過した後にスリーブ本体235aにおいて内径が一旦増大し、インペラ34に至るまでの間に漸次内径が減少することになる。本実施の形態2では、インペラ34の導入口34cと同一の内径となるようにオリフィスプレート236にオリフィス孔236cが形成してある。
【0036】
反転面240は、吸込通路32の軸心32aに対して直交するように延在した下流側に向くものである。この反転面240には、オリフィス孔236cの周囲となる部分に複数の反転凹面241が周方向に沿って互いに等間隔となるように設けてある。反転凹面241は、上流側に向けて凸となる球の凹状に形成したものである。
図9に示すように、それぞれの反転凹面241は、湾曲の中心である球の中心241aがオリフィス孔236cと口広部235fとの間に位置し、オリフィス孔236cの軸心236dに向けて漸次下流側(
図9において上方側)となるように湾曲した部分を有している。
図9~
図11、
図13に示すように、厚板部分236aにおいて反転凹面241の相互間となる部分には、間隔を確保することによって反転隔壁部242が構成してある。反転隔壁部242は、反転面240が露出される部分であり、オリフィス孔236cの軸心236dに対して径方向に沿って放射状に延在している。本実施の形態2では、スリーブ本体235aに形成した前段隔壁部235jに対応する位置に前段隔壁部235jと同じ数だけ反転隔壁部242がオリフィスプレート236に設けてある。
【0037】
上記のように構成した油圧ポンプユニットでは、図示せぬ駆動源の回転によって入力シャフト10が回転すると、シリンダブロック20の回転に伴ってピストン21が往復移動する。これにより、吸込配管50、オリフィス孔236c、スリーブ本体235a、インペラ34、弁板24の低圧ポート24bを通じてシリンダボア20aに吸い込まれた油が弁板24の高圧ポート24a、吐出通路31、油通路(図示せず)を通じて各種油圧機器に供給されることになる。
【0038】
この間、吸込通路32においては、ドライブギア14、ドリブンギア13を介して増速回転するインペラ34が、吸込配管50から弁板24の低圧ポート24bに至るまでの間に油の圧力を高めるように機能するため、可変容量型斜板ピストンポンプでのポンプ吸込性能を向上させることができる。
【0039】
しかも、上述の油圧ポンプユニットによれば、入力シャフト10が高速で回転する等の供給過剰運転時においてスリーブ本体235aに旋回状の逆流が発生した場合にも、内周面235dに設けた前段隔壁部235jによって逆流の旋回が抑制され、その後に反転面240に当接することで反転することになる。すなわち、供給過剰運転時にスリーブ本体235aに生じた油の旋回状の逆流は、前段隔壁部235jに当接することにより軸方向の流れに整流された後、オリフィスプレート236の反転面240に当接することで反転し、吸込配管50からオリフィス孔236cに流入した油に合流して下流のインペラ34の導入口34cに向かう流れを加速することになる。従って、供給過剰運転時であっても、サージングが発生する問題や逆流渦キャビテーションが発生して運転が不安定となる等の問題を防止することが可能となる。
【0040】
特に、実施の形態2では、前段隔壁部235jの間に整流溝235hとして円柱の凹状を成し、さらにその上下両端部に凹球面状部分を設けているため、逆流する油の入射角度によらず、旋回状となっている油の流れを効率良く整流溝235hに導入してスリーブ235の軸方向に沿った流れに整えることができるようになる。さらに、オリフィスプレート236の反転面240に球状の反転凹面241を設けているため、整流溝235hを通過した後の油の流れを乱すことなくスリーブ本体235aの軸心235cに向けて下流側へガイドすることができ、逆流した油がオリフィスプレート236を越えて上流側の吸込配管50まで到達する事態を確実に防止することができるようになる。
【0041】
また、オリフィスプレート236には、反転凹面241の相互間に反転隔壁部242が設けてある。このため、反転面240に当接した油は、反転隔壁部242によって周方向への拡散が制限された状態でスリーブ本体235aの軸心235cに向けてガイドされることになる。これにより、スリーブ本体235aに到達した油の逆流がオリフィスプレート236において効率良く反転されることになり、供給過剰運転時においてインペラ34による油の加圧送給性能及び可変容量型斜板ピストンポンプでのポンプ吸込性能を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、上述した実施の形態1、変形例、実施の形態2では、可変容量型斜板ピストンポンプの前段に構成されるターボ型ポンプを例示しているが、必ずしもこれに限らず、インペラを含むターボ型ポンプによって直接油圧機器等の負荷に対して油を供給するように構成しても良い。流体としては必ずしも油である必要はなく、その他の液体や気体であっても良い。ターボ型ポンプを駆動する駆動源としては、油圧モータやタービン、風車、水車であっても構わない。
【0043】
また、上述した実施の形態1、変形例、実施の形態2では、吸込配管の内径に対してオリフィス孔の内径を小さく構成しているため、吸込配管を通過した油は、オリフィスプレートを通過する際に絞られた後、スリーブ本体の上流部において膨張されることになる。このため、上述の油圧ポンプユニットによれば、オリフィスプレートの反転凹面によって反転された油が、スリーブ本体の上流において膨張される油に沿って流れることになり、逆流渦キャビテーションが発生する事態を招来する懸念がない。しかしながら、オリフィスプレートのオリフィス孔と吸込配管の内径との関係は、上述の例に限らず、例えばオリフィス孔と吸込配管とを同じ内径となるように構成しても良い。
【0044】
さらに、上述した実施の形態1、変形例、実施の形態2では、スリーブ本体においてオリフィスプレートに接続される上流側部分の内径を下流側部分よりも大径となるようにテーパ状に構成しているが、必ずしもこれに限定されない。なお、実施の形態2のように、スリーブ本体をテーパ状に構成した場合には、オリフィス孔の内径をインペラの導入口と同一の寸法に設定することが可能となり、吸込配管を流れる油に圧力損失が生じる事態を防止することができる等の作用効果を奏することができる。
【0045】
またさらに、上述した実施の形態2では、反転面に球状の反転凹面を設けるようにしているが、必ずしも球状である必要はなく、例えば外周側から内周側に向けてのみ湾曲するように円柱の凹状を成す反転凹面を設けるようにしても良い。この場合にも、湾曲の中心である円柱の軸心が、縮径部であるオリフィス孔よりも外周側に位置するように反転凹面を設けることが好ましい。また、スリーブ本体の内周面に円柱状の凹面を成す整流溝及び前段隔壁部を設けるようにしているが、必ずしも整流溝及び前段隔壁部を設ける必要はない。逆に、実施の形態1及び変形例においてスリーブ本体の内周面に整流溝や前段隔壁部を設けても良い。
【0046】
また、上述した実施の形態1、変形例、実施の形態2では、反転隔壁部を周方向に沿って等間隔となるように設けているが、必ずしも反転隔壁部を等間隔に設ける必要はない。さらに、反転隔壁部を非等間隔に設ける場合には、必ずしも反転凹面を互いに同一の大きさとなるように設ける必要はなく、例えば反転隔壁部の間隔に応じて反転凹面の大きさを変化させるように構成しても構わない。
【符号の説明】
【0047】
2 ポートブロック
32 吸込通路
34 インペラ
35,235 スリーブ
35a,235a スリーブ本体
235h 整流溝
235j 前段隔壁部
36,136,236 オリフィスプレート
36a,136a,236c オリフィス孔
40,140,240 反転面
41,141,241 反転凹面
42,142,242 反転隔壁部