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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128236
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220825BHJP
   G03B 17/04 20210101ALI20220825BHJP
【FI】
G02B7/04 Z
G03B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026654
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】若山 富裕
【テーマコード(参考)】
2H044
2H101
【Fターム(参考)】
2H044BF07
2H101BB07
2H101BB13
(57)【要約】
【課題】簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置を提供する。
【解決手段】カメラ装置1のレンズ鏡筒10は、バレル部22に対して前方に移動可能な後方鏡筒ユニット31と、後方鏡筒ユニット31の半径方向内側に収容される第1の位置から後方鏡筒ユニット31から前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な前方鏡筒ユニット32とを含む。前方鏡筒ユニット32は、半径方向外側に突出する突起部41を有する。レンズ鏡筒10は、後方鏡筒ユニット31に形成されるバネ軸部55と前方鏡筒ユニット32の突起部41との間に架け渡される切替バネ60を含む。切替バネ60は、前方鏡筒ユニット32の突起部41の位置により付勢方向が変化するように構成される。後方鏡筒ユニット31のバネ軸部55は、半径方向外側に向かって延び、切替バネ60の腕部61が係合するバネ係合部56と、バネ係合部56の先端からバネ係合部56が延びる方向と垂直なX方向に延出する張出部57とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル部と、
前記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒と
を備え、
前記レンズ鏡筒は、
前記バレル部の半径方向内側に収容された状態から前記バレル部に対して前方に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、
前記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容される第1の位置から前記第1の鏡筒ユニットから前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な第2の鏡筒ユニットであって、半径方向外側に突出する突起部を有する第2の鏡筒ユニットと、
前記第1の鏡筒ユニットに形成されるバネ軸部と前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部との間に架け渡される切替バネであって、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部が基準位置よりも前記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部を前記沈胴方向に付勢し、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部が前記基準位置よりも前記繰出方向側に位置しているときには、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部を前記繰出方向に付勢するように前記バネ軸部を中心として回転可能な切替バネと
を含み、
前記第1の鏡筒ユニットの前記バネ軸部は、
半径方向外側に向かって延び、前記切替バネが係合するバネ係合部と、
前記バネ係合部の先端から前記バネ係合部が延びる方向と垂直な方向に延出する張出部と
を有する、
カメラ装置。
【請求項2】
前記バネ係合部は、前記第1の鏡筒ユニットの半径方向外側に向かって延びる円筒により構成される、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記バネ係合部は、前記第1の鏡筒ユニットの半径方向外側に向かって延びる円筒を二分した1対の半円筒であって、互いに離間して配置される1対の半円筒により構成される、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記張出部は、前記1対の半円筒のそれぞれの先端から互いに反対側に延出するように構成される、請求項3に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記第1の鏡筒ユニットは、
前記バレル部の半径方向内側で前記バレル部に対して前方に移動可能な第1の筒部と、
前記バネ軸部を含む第2の筒部であって、前記第1の筒部の半径方向内側で前記第1の筒部に対して前方に移動可能な第2の筒部と
を含み、
前記第1の筒部の内周面には、前記光軸方向に沿って延びる溝が形成され、
前記第2の筒部の前記バネ軸部の前記張出部は、前記光軸に沿った方向に延出し、前記第1の筒部の前記溝の内部に位置する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記第1の鏡筒ユニットは、弾性変形可能な少なくとも1つの弾性片を有し、
前記少なくとも1つの弾性片は、前記第2の鏡筒ユニットの前記突起部に係合して前記第2の鏡筒ユニットを前記第1の位置に保持する突出部を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特にレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出すことができるカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出す鏡筒繰出機構を有するカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなカメラにおいて、通常の撮影に加えて近距離での撮影(マクロ撮影)を行うためには、通常の撮影時からさらにレンズ鏡筒を前方に繰り出す必要がある。しかしながら、レンズ鏡筒を多段階で前方に繰り出すための機構は複雑になり易く、大きな収容スペースを必要とする。このため、通常の撮影時からさらに前方にレンズ鏡筒を繰り出す機構を簡単かつコンパクトな構造で実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-56009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、バレル部と、上記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して前方に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容される第1の位置から上記第1の鏡筒ユニットから前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な第2の鏡筒ユニットとを備える。上記第2の鏡筒ユニットは、半径方向外側に突出する突起部を有する。上記レンズ鏡筒は、上記第1の鏡筒ユニットに形成されるバネ軸部と上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部との間に架け渡される切替バネを有する。上記切替バネは、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が基準位置よりも上記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記沈胴方向に付勢し、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が上記基準位置よりも上記繰出方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記繰出方向に付勢するように上記バネ軸部を中心として回転可能となっている。上記第1の鏡筒ユニットの上記バネ軸部は、半径方向外側に向かって延び、上記切替バネが係合するバネ係合部と、上記バネ係合部の先端から上記バネ係合部が延びる方向とは垂直な方向に延出する張出部とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、図2に示すレンズ鏡筒が+X方向に最大限伸びた状態を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示すカメラ装置の通常撮影状態を示す斜視図である。
図5図5は、図1に示すカメラ装置のマクロ撮影状態を示す斜視図である。
図6図6は、図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を示す分解斜視図である。
図7図7は、図6のレンズ鏡筒の一部を側方から見た図である。
図8図8は、図6のレンズ鏡筒の一部の分解斜視図である。
図9図9は、図5のマクロ撮影状態におけるレンズ鏡筒の一部を側方から見た図である。
図10図10は、図7のA-A線断面である。
図11図11は、本発明の他の実施形態におけるカメラ装置の第2の筒部を示す拡大斜視図である。
図12図12は、図11に示す第2の筒部を含むレンズ鏡筒の一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について図1から図12を参照して詳細に説明する。図1から図12において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図12においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+X方向を「前」又は「前方」といい、-X方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0009】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓5が形成されており、このファインダ窓5に隣接してフラッシュ窓6が配置されている。また、ファインダ窓5の-Z方向側にはレリーズボタン7が配置されている。トップカバー4には、Y方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0010】
図2は、フロントカバー2、リアカバー3、及びトップカバー4により形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す分解斜視図である。図2に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2の筒状部2A(図1参照)の内側に収容されるレンズ鏡筒10と、レンズ鏡筒10が取り付けられるフレーム20とを有している。このフレーム20は、略直方体状のベース部21と、ベース部21から前方に延び、レンズ鏡筒10を保持する筒状のバレル部22とを含んでいる。
【0011】
本実施形態におけるレンズ鏡筒10は、+X方向に伸長可能な構造となっている。図3は、+X方向に最大限伸長した状態のレンズ鏡筒10を示す斜視図である。図3に示すように、レンズ鏡筒10は、第1の筒部11と第2の筒部12と第3の筒部13とを含んでいる。第1の筒部11はフレーム20のバレル部22に対してX方向に移動可能であり、第2の筒部12は第1の筒部11に対してX方向に移動可能となっている。また、第3の筒部13は第2の筒部12に対してX方向に移動可能となっている。本実施形態では、第1の筒部11及び第2の筒部12は後方鏡筒ユニット31(第1の鏡筒ユニット)を構成しており、第3の筒部13は前方鏡筒ユニット32(第2の鏡筒ユニット)を構成している。第3の筒部13の内部にはレンズ(図示せず)が収容されている。
【0012】
図3に示すように、レンズ鏡筒10の第1の筒部11の後端部には半径方向外側に突出する2つの係合突起14が形成されている。それぞれの係合突起14に対応して、フレーム20のバレル部22には、図2に示すように、光軸Pの方向(X方向)に沿って延びる2つのガイド溝24が形成されている。レンズ鏡筒10のそれぞれの係合突起14は、バレル部22のガイド溝24の内部に収容され、ガイド溝24に係合するようになっている。ガイド溝24のZ方向の幅は、係合突起14のZ方向の幅よりわずかに大きい程度となっている。したがって、係合突起14はガイド溝24にガイドされつつ、ガイド溝24の内部で光軸Pの方向(X方向)に移動するようになっている。
【0013】
図2に示すように、フレーム20のバレル部22の近傍には、操作ボタン8がコイルバネ8Aにより+X方向に付勢された状態で設けられている。この操作ボタン8は、図1に示すように、フロントカバー2の筒状部2Aの近傍でフロントカバー2から+X方向に突出しており、ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込めるようになっている。ユーザが操作ボタン8を-X方向に押し込むと、バレル部22に取り付けられた鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10の係合突起14が+X方向に押し出され、図4に示すように、レンズ鏡筒10が+X方向(繰出方向)に繰り出されるようになっている。このようにレンズ鏡筒10がバレル部22から+X方向に飛び出すと、図示しないスイッチ機構によりカメラ装置1の電源が入る。
【0014】
鏡筒繰出機構9は、操作ボタン8に連動して係合突起14を+X方向に押し出すレバー9Aと、係合突起14の位置によって係合突起14を付勢する方向が反転するねじりコイルバネ(図示せず)とを含んでいる。このねじりコイルバネは、係合突起14が所定の位置を越えて+X方向に移動すると、係合突起14を+X方向に付勢し、反対に、係合突起14が所定の位置を越えて-X方向に移動すると、係合突起14を-X方向に付勢するように構成されている。なお、鏡筒繰出機構9は特定のものに限られるものではなく、レンズ鏡筒10を+X方向に繰り出すことができるのであればどのような構造のものであってもよい。
【0015】
本実施形態では、第1の筒部11がバレル部22に対して+X方向に移動する際に、図示しない移動機構により第2の筒部12が第1の筒部11に対して+X方向に移動するようになっている。このため、図4に示すように、第2の筒部12が第1の筒部11から+X方向に繰り出した状態となる。この状態における第2の筒部12に対する第3の筒部13の位置を「第1の位置」ということとする。この状態でユーザは通常の撮影を行うことができる(通常撮影状態)。この通常撮影状態においては、前方鏡筒ユニット32の第3の筒部13は、後方鏡筒ユニット31の第2の筒部12の半径方向内側に収容されている。
【0016】
また、本実施形態では、図4に示す状態においてユーザが手で第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すことができるようになっている。第3の筒部13を第2の筒部12からさらに+X方向に引き出すと、図5に示すように、第2の筒部が第1の筒部11から+X方向に繰り出し、さらに第3の筒部13が第2の筒部12から+X方向に繰り出した状態となる。このときの第2の筒部12に対する第3の筒部13の位置を「第2の位置」ということとする。この状態でユーザは例えば近距離のマクロ撮影を行うことができる(マクロ撮影状態)。
【0017】
一方、図1は、レンズ鏡筒10がフレーム20のバレル部22に収容された状態を示しており、この状態ではレンズ鏡筒10がX方向に最も短くなっている。以下、この状態を「沈胴状態」ということとする。
【0018】
図6は、図4の通常撮影状態におけるレンズ鏡筒10の一部を示す分解斜視図、図7図6に示すレンズ鏡筒10の一部を側方から見た図、図8はレンズ鏡筒10の一部の分解斜視図である。図6に示すように、後方鏡筒ユニット31の第2の筒部12は、半径方向外側に突出する複数のガイド爪50を有している。また、後方鏡筒ユニット31の第1の筒部11の内周面には、第2の筒部12のガイド爪50に対応して、X方向に延びるガイド溝15が形成されている。第2の筒部12のガイド爪50は第1の筒部11のガイド溝15に係合しており、第2の筒部12は、このガイド溝15にガイドされつつ第1の筒部11に対してX方向に移動できるようになっている。
【0019】
また、図8に示すように、前方鏡筒ユニット32の第3の筒部13は、半径方向外側に突出する2つの円筒状の突起部41と2つのガイド爪42とを有している(図8ではそれぞれ1つのみ図示)。後方鏡筒ユニット31の第2の筒部12の内周面には、第3の筒部13のガイド爪42に対応して、X方向に延びるガイド溝51が形成されている。第3の筒部13のガイド爪42は第2の筒部12のガイド溝51に係合しており、第3の筒部13は、このガイド溝51にガイドされつつ第2の筒部12に対してX方向に移動できるようになっている。
【0020】
この第2の筒部12のガイド溝51の後方には、1対の弾性片52が-X方向に片持ち梁状に延びている。したがって、これらの弾性片52の自由端側(-X方向側)は弾性変形可能となっている。これらの弾性片52の間には、上述した第3の筒部13の突起部41が移動するための移動空間Sが形成されており、第3の筒部13の突起部41はこの移動空間Sを通って第2の筒部12の外側まで延びている。また、それぞれの弾性片52は、-X方向側の端部近傍で移動空間Sの内側に向かって突出する突出部53を有している。これらの突出部53は、X方向に移動する突起部41の経路上に位置しており、これらの突出部53によって移動空間Sの幅が狭くなっている。
【0021】
第2の筒部12の一方の弾性片52の近傍には、半径方向外側に突出するピン状のバネ軸部55が形成されている。図7及び図8に示すように、このバネ軸部55は、第2の筒部12の半径方向外側に向かって延びる円筒状のバネ係合部56と、バネ係合部56の先端から-X方向に延出する張出部57とを有している。バネ軸部55のバネ係合部56の周囲には、例えばねじりコイルバネからなる切替バネ60の一方の腕部61の端部が巻回され、切替バネ60の腕部61とバネ軸部55のバネ係合部56とが係合している。
【0022】
この切替バネ60の他方の腕部62の端部は、移動空間Sを通って第2の筒部12の外側まで延びる第3の筒部13の突起部41の周囲に巻回され、切替バネ60の腕部62と突起部41とが係合している。すなわち、第2の筒部12のバネ軸部55と第3の筒部13の突起部41との間に、上述した切替バネ60がバネ軸部55のバネ係合部56を中心として回転できるように架け渡されている。この切替バネ60は、腕部61,62の間の開き角度が切替バネ60の自由角度よりも小さくなるように装着されている。図示の例では、この切替バネ60はねじりコイルバネにより構成されているが、他の種類のバネ(例えば板バネ)により構成することも可能である。
【0023】
図8に示すように、第3の筒部13の突起部41の先端からは張出部43が延びており、この張出部43によって突起部41に係合する切替バネ60が突起部41から外れてしまうことが防止される。また、バネ軸部55も-X方向に延出する張出部57を有しているため、この張出部57によってバネ係合部56に係合する切替バネ60がバネ係合部56から外れてしまうことが防止される。
【0024】
ここで、図7に示す状態では、第3の筒部13の突起部41に係合する切替バネ60の腕部62が腕部61よりも-X方向側に位置しているので、第3の筒部13の突起部41には切替バネ60の付勢力の-X方向成分が作用する。したがって、この切替バネ60の付勢力の-X方向成分を上回る力が第3の筒部13に作用しなければ、第3の筒部13は+X方向には動かないようになっている。また、図7に示す状態では、第3の筒部13の突起部41は、第2の筒部12の弾性片52の突出部53よりも-X方向にあるため、切替バネ60の付勢力の-X方向成分を上回る力が第3の筒部13に作用した場合であっても、弾性片52の突出部53が第3の筒部13の突起部41に係合するため、第3の筒部13の突起部41が弾性片52の突出部53を越えて+X方向側に移動するためには、第3の筒部13の突起部41が弾性片52の突出部53を乗り越える程度まで弾性片52を弾性変形させる力が必要となる。このように、図7に示す状態から第3の筒部13を+X方向に移動させるためにはある程度の力が必要である。このため、鏡筒繰出機構9によってレンズ鏡筒10が沈胴状態から+X方向(繰出方向)に繰り出される際に第3の筒部13に多少の力が作用しても、第3の筒部13は第2の筒部12に対して図7に示す第1の位置を維持することができ、通常撮影が可能となる。
【0025】
上述したように、通常撮影状態からマクロ撮影状態にする際には、ユーザが手で第3の筒部13(例えばフランジ部13A)を持って+X方向に引き出す。このとき、ユーザが、第3の筒部13の突起部41が弾性片52の突出部53を乗り越える程度まで弾性片52を弾性変形させる力よりも大きな力で第3の筒部13を引き出すと、第3の筒部13の突起部41が弾性片52の突出部53を乗り越えて+X方向に移動する。ここで、第3の筒部13の突起部41が、図9に示す基準位置R(切替バネ60の腕部61と腕部62のX方向の位置が一致するときの突起部41の位置)を越えて+X方向に移動すると、切替バネ60の付勢方向が反転し、第3の筒部13の突起部41には切替バネ60から+X方向の力が作用することとなる。したがって、ユーザが第3の筒部13を+X方向に引き出さなくても、第3の筒部13は、切替バネ60の付勢力の+X方向成分によって第2の筒部12に対して+X方向(繰出方向)に移動する。最終的には、第3の筒部13は、第2の筒部12のストッパ(図示せず)に当接する第2の位置まで+X方向に移動し、図5及び図9に示すマクロ撮影状態となる。
【0026】
このように、本実施形態における切替バネ60は、第3の筒部13の突起部41が基準位置Rよりも-X方向(沈胴方向)側に位置しているときには、突起部41を-X方向に付勢し、第3の筒部13の突起部41が上述した基準位置Rよりも+X方向(繰出方向)側に位置しているときには、突起部41を+X方向に付勢するように構成されている。なお、第3の筒部13の突起部41を+X方向側に付勢するタイミングを突起部41が弾性片52の突出部53を乗り越えた後とするために、弾性片52の突出部53の頂部よりも+X方向(繰出方向)側に基準位置Rを設定することが好ましい。
【0027】
マクロ撮影状態から通常撮影状態又は沈胴状態にする際には、ユーザは、切替バネ60の付勢力の+X方向成分よりも大きく、さらに第3の筒部13の突起部41が弾性片52の突出部53を乗り越える程度まで弾性片52を弾性変形させる力よりも大きな力で第3の筒部13(例えばフランジ部13A)を-X方向に押し込む。これにより、第3の筒部13の突起部41が弾性片52の突出部53を乗り越えて-X方向に移動する。このとき、第3の筒部13の突起部41は、図9に示す基準位置Rよりも-X方向側に位置しているため、切替バネ60から第3の筒部13の突起部41に-X方向の力が作用し、第3の筒部13の突起部41は上述した第1の位置に移動する。
【0028】
また、本実施形態では、第3の筒部13の突起部41が円筒状であるため、第3の筒部13の突起部41と弾性片52A,52Bの突出部53A,53Bとの摩擦が小さくなるため、第3の筒部13のX方向への移動がスムーズになるとともに、突起部41及び突出部53A,53Bの耐久性が向上する。また、第3の筒部13に対するユーザの操作感も向上する。
【0029】
本実施形態では、2つの弾性片52の突出部53が互いに対向するように配置されているため、2つの弾性片52の互いに対向する突出部53によって第3の筒部13の突起部41をより確実に第1の位置に保持することができる。
【0030】
上述したように、第2の筒部12のバネ軸部55のバネ係合部56には切替バネ60の一方の腕部61が巻回されるが、本実施形態では、バネ軸部55の張出部57が、バネ係合部56が延びる方向とは垂直な方向(図示の例では-X方向)に延出しているため、第2の筒部12のバネ軸部55のバネ係合部56に切替バネ60の腕部61を取り付ける際に、張出部57によって切替バネ60の腕部61がバネ係合部56から外れてしまうことが防止される。これにより、レンズ鏡筒10の組立が容易になる。
【0031】
図6に戻って、第1の筒部11の内周面には、上述した第2の筒部12のバネ軸部55に対応して、X方向に延びる溝16が形成されている。図10は、図7のA-A線断面であり、第1の筒部11の溝16と第2の筒部12のバネ軸部55との関係を示している。図10に示すように、第2の筒部12のバネ軸部55の先端部は第1の筒部11の溝16の内部に位置しており、第2の筒部12が第1の筒部11に対してX方向に移動する際には、第2の筒部12のバネ軸部55の先端部が第1の筒部11の溝16の内部を移動するようになっている。ここで、第1の筒部11の溝16と第2の筒部12のバネ軸部55の張出部57とはいずれもX方向に延びているため、第2の筒部12のバネ軸部55が第1の筒部11の溝16の内部を移動する際に、バネ軸部55の張出部57が第1の筒部11に衝突して干渉することが防止される。また、第1の筒部11と第2の筒部12とを組み立てた後は、第2の筒部12のバネ軸部55が第1の筒部11の溝16に入り込むので、バネ係合部56から切替バネ60の腕部61が外れてしまうことも防止される。
【0032】
上述したバネ軸部55のバネ係合部56は、第2の筒部12の半径方向外側に向かって延びる円筒により構成されているが、例えば、図11及び図12に示すように、第2の筒部12の半径方向外側に向かって延びる円筒を二分した1対の半円筒156A,156Bによりバネ軸部55のバネ係合部を構成してもよい。このとき、半円筒156A,156Bは互いに離間して配置されることが好ましい。図11及び図12に示す例では、半円筒156A,156BはX方向に離間して配置されている。このような半円筒156A,156Bによりバネ係合部を構成することで、切替バネ60の腕部61をバネ軸部55に取り付ける際に、これらの半円筒156A,156Bを互いに近づく方向に弾性変形させることができるため、バネ軸部55への切替バネ60の腕部61の取付が容易になる。
【0033】
この場合において、バネ軸部55は、半円筒156A,156Bのそれぞれの先端から互いに反対側に延出する張出部157A,157Bを有していることが好ましい。このように、半円筒156A,156Bのそれぞれの先端から互いに反対側に張出部157A,157Bを延出させることにより、切替バネ60の腕部61がバネ係合部から外れてしまうことをより効果的に防止することができる。また、この場合において、図12に示すように、張出部157A,157Bが延出する方向を第1の筒部11の溝16が延びる方向と一致させることが好ましい。張出部157A,157Bが延出する方向と第1の筒部11の溝16が延びる方向とを同一の方向にすることで、第2の筒部12のバネ軸部55が第1の筒部11の溝16の内部を移動する際に、バネ軸部55の張出部157A,157Bが第1の筒部11に衝突して干渉することが防止される。
【0034】
なお、本明細書において使用した用語「前」、「前方」、「後」、「後方」、「上」、「上方」、「下」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0035】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、簡単かつコンパクトな構造で2つの撮影状態を実現することができるカメラ装置が提供される。このカメラ装置は、バレル部と、上記バレル部の内部に収容された沈胴状態から光軸方向に沿った繰出方向に移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して前方に移動可能な第1の鏡筒ユニットと、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向内側に収容される第1の位置から上記第1の鏡筒ユニットから前方に繰り出した第2の位置まで移動可能な第2の鏡筒ユニットとを備える。上記第2の鏡筒ユニットは、半径方向外側に突出する突起部を有する。上記レンズ鏡筒は、上記第1の鏡筒ユニットに形成されるバネ軸部と上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部との間に架け渡される切替バネを有する。上記切替バネは、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が基準位置よりも上記繰出方向とは反対の沈胴方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記沈胴方向に付勢し、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部が上記基準位置よりも上記繰出方向側に位置しているときには、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部を上記繰出方向に付勢するように上記バネ軸部を中心として回転可能となっている。上記第1の鏡筒ユニットの上記バネ軸部は、半径方向外側に向かって延び、上記切替バネが係合するバネ係合部と、上記バネ係合部の先端から上記バネ係合部が延びる方向と垂直な方向に延出する張出部とを有する。
【0036】
このような構成により、沈胴状態において第2の鏡筒ユニットの突起部が基準位置よりも沈胴方向側に位置するように構成すれば、沈胴状態からレンズ鏡筒が前方に繰り出す際に、切替バネの付勢力の沈胴方向成分を上回る力が第2の鏡筒ユニットに作用しなければ、第2の鏡筒ユニットは繰出方向に動かない。このため、第2の鏡筒ユニットに多少の力が作用しても、第2の鏡筒ユニットは第1の位置を維持することができ、第1の撮影状態を実現することができる。また、切替バネの付勢力の沈胴方向成分を上回る力で第2の鏡筒ユニットを前方に引き出すと、切替バネの付勢方向が反転し、第2の鏡筒ユニットの突起部には切替バネから繰出方向に力が作用する。これにより、第2の鏡筒ユニットを第2の位置まで移動させることができ、第2の撮影状態を実現することができる。
【0037】
このように、本発明によれば、2つの撮影状態、すなわち、第2の鏡筒ユニットが第1の鏡筒ユニットに対して第1の位置にある第1の撮影状態と、第2の鏡筒ユニットが第1の鏡筒ユニットに対して第2の位置にある第2の撮影状態とを簡単かつコンパクトな構造により実現することができる。
【0038】
また、第1の鏡筒ユニットのバネ軸部は、バネ係合部の先端からバネ係合部が延びる方向と垂直な方向に延出する張出部を有しているため、第1の鏡筒ユニットのバネ軸部と第2の鏡筒ユニットの突起部との間に切替バネを架け渡す際に、張出部によって切替バネがバネ係合部から外れてしまうことが防止されるので、レンズ鏡筒の組立が容易になる。
【0039】
上記バネ係合部は、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向外側に向かって延びる円筒により構成されていてもよい。
【0040】
あるいは、上記バネ係合部は、上記第1の鏡筒ユニットの半径方向外側に向かって延びる円筒を二分した1対の半円筒により構成されていてもよい。このとき、1対の半円筒は互いに離間して配置される。このような1対の半円筒によりバネ係合部を構成することで、切替バネをバネ軸部に取り付ける際に、これらの半円筒を互いに近づく方向に弾性変形させることができるため、バネ軸部への切替バネの取付が容易になる。この場合において、上記張出部が、上記1対の半円筒のそれぞれの先端から互いに反対側に延出するようにすれば、これらの張出部によって切替バネがバネ係合部から外れてしまうことをより効果的に防止することができる。
【0041】
上記第1の鏡筒ユニットは、上記バレル部の半径方向内側で上記バレル部に対して前方に移動可能な第1の筒部と、上記バネ軸部を含む第2の筒部とを含んでいてもよい。上記第2の筒部は、上記第1の筒部の半径方向内側で上記第1の筒部に対して前方に移動可能とされる。上記第1の筒部の内周面には、上記光軸方向に沿って延びる溝が形成されていてもよい。上記第2の筒部の上記バネ軸部の上記張出部は、上記光軸に沿った方向に延出し、上記第1の筒部の上記溝の内部に位置することが好ましい。このような構成により、第2の筒部のバネ軸部が第1の筒部の溝の内部を移動する際に、バネ軸部の張出部が第1の筒部に衝突して干渉することを防止することができる。
【0042】
上記第1の鏡筒ユニットは、弾性変形可能な少なくとも1つの弾性片を有することが好ましい。この場合において、上記少なくとも1つの弾性片は、上記第2の鏡筒ユニットの上記突起部に係合して上記第2の鏡筒ユニットを上記第1の位置に保持する突出部を有することが好ましい。このような構成により、切替バネの付勢力の沈胴方向成分を上回る力が第2の鏡筒ユニットに作用した場合であっても、弾性片の突出部が第2の鏡筒ユニットの突起部に係合するため、第2の鏡筒ユニットを繰出方向に移動させるためにはある程度の力が必要となる。このため、第2の鏡筒ユニットに多少の力が作用しても、第2の鏡筒ユニットは第1の位置を維持することができる。
【0043】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
4 トップカバー
5 ファインダ窓
6 フラッシュ窓
7 レリーズボタン
8 操作ボタン
9 鏡筒繰出機構
10 レンズ鏡筒
11 第1の筒部
12 第2の筒部
13 第3の筒部
14 係合突起
16 溝
20 フレーム
21 ベース部
22 バレル部
24 ガイド溝
31 後方鏡筒ユニット(第1の鏡筒ユニット)
32 前方鏡筒ユニット(第2の鏡筒ユニット)
41 突起部
42 ガイド爪
51 ガイド溝
52 弾性片
53 突出部
55 バネ軸部
56,156A,156B バネ係合部
57,157A,157B 張出部
60 切替バネ
61,62 腕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12