IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

特開2022-128242船を制御するためのシステム及び方法
<>
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図1
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図2
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図3
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図4
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図5
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図6
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図7
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図8
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図9
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図10
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図11
  • 特開-船を制御するためのシステム及び方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128242
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】船を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/21 20060101AFI20220825BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20220825BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B63H21/21
B63H20/00 803
B63H25/42 B
B63H25/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026667
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 健人
(57)【要約】
【課題】前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いを低減させることで、船を所定の動作モードで精度よく移動させる。
【解決手段】コントローラは、横移動モードにおいて、第1シフト機構と第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定し、第1船舶推進器のスラストと第2船舶推進器のスラストとの合力が横方向を向くように第1船舶推進器の舵角と第2船舶推進器の舵角とを制御する。コントローラは、横移動モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に設定し、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、横移動モードの開始時に、第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、第1シフト機構を遅らせて前進状態に切り換える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船を制御するためのシステムであって、
前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構を含み、第1ステアリング軸回りに回転可能な第1船舶推進器と、
前記第1船舶推進器を前記第1ステアリング軸回りに回転させる第1ステアリングアクチュエータと、
前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構を含み、第2ステアリング軸回りに回転可能な第2船舶推進器と、
前記第2船舶推進器を前記第2ステアリング軸回りに回転させる第2ステアリングアクチュエータと、
前記船を横方向に平行移動させる横移動モードにて、前記第1船舶推進器と前記第1ステアリングアクチュエータと前記第2船舶推進器と第2ステアリングアクチュエータとを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記横移動モードにおいて、前記第1シフト機構と前記第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定し、前記第1船舶推進器のスラストと前記第2船舶推進器のスラストとの合力が前記横方向を向くように前記第1船舶推進器の舵角と前記第2船舶推進器の舵角とを制御し、
前記横移動モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に設定し、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記横移動モードの開始時に、前記第2シフト機構を後進状態に切り換えてから遅らせて前記第1シフト機構を前進状態に切り換える、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記横移動モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記横移動モードの開始時に、前記第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、所定の遅延時間後に、前記第1シフト機構を前進状態に切り換える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1船舶推進器への要求スラストを決定し、
前記要求スラストの大きさに応じて前記遅延時間を変更する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前移動モードと前記横移動モードとを含む前記船の動作モードを指示するために操作可能な操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記操作装置による指示が前記前移動モードから前記横移動モードに変更されたときには、前記横移動モードの開始時に、遅延させずに前記第1シフト機構を前記前進状態に切り換える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
船を制御するためのシステムであって、
前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構を含む第1船舶推進器と、
前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構を含む第2船舶推進器と、
前記船を回頭させる回頭モードにて、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記回頭モードにおいて、前記第1シフト機構と前記第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定することで、前記船を回頭させ、
前記回頭モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記回頭モードの開始時に、前記第2シフト機構を後進状態に切り換えてから遅らせて前記第1シフト機構を前進状態に切り換える、
システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記回頭モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記回頭モードの開始時に、前記第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、所定の遅延時間後に、前記第1シフト機構を前進状態に切り換える、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記第1船舶推進器への要求スラストを決定し、
前記要求スラストの大きさに応じて前記遅延時間を変更する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前移動モードと前記回頭モードとを含む前記船の動作モードを指示するために操作可能な操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記操作装置による指示が前記前移動モードから前記回頭モードに変更されたときには、前記回頭モードの開始時に、遅延させずに前記第1シフト機構を前記前進状態に切り換える、
請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
船を制御するためのシステムであって、
前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構を含む第1船舶推進器と、
前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構を含む第2船舶推進器と、
所定の動作モードにて、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1シフト機構と前記第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定することで、前記船を前記所定の動作モードにて移動させ、
前記所定の動作モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記所定の動作モードの開始時に、前記第2シフト機構を後進状態に切り換えてから遅らせて前記第1シフト機構を前進状態に切り換える、
システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記所定の動作モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記所定の動作モードの開始時に、前記第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、所定の遅延時間後に、前記第1シフト機構を前進状態に切り換える、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記第1船舶推進器への要求スラストを決定し、
前記要求スラストの大きさに応じて前記遅延時間を変更する、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前移動モードと前記所定の動作モードとを指示するために操作可能な操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記操作装置による指示が前記前移動モードから前記所定の動作モードに変更されたときには、前記所定の動作モードの開始時に、遅延させずに前記第1シフト機構を前進状態へ切り換える、
請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
船を制御するためのシステムであって、
第1スロットル指令に応じて制御される第1エンジンと、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構とを含む第1船舶推進器と、
第2スロットル指令に応じて制御される第2エンジンと、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構とを含む第2船舶推進器と、
所定の動作モードにて、前記第1船舶推進器と前記第2船舶推進器とを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1シフト機構と前記第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定することで、前記船を前記所定の動作モードにて移動させ、
前記所定の動作モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記所定の動作モードの開始時に、前記第2エンジンへの前記第2スロットル指令の出力から遅らせて前記第1エンジンへの前記第1スロットル指令を出力する、
システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記所定の動作モードにおいて、前記第1シフト機構を前進状態に、前記第2シフト機構を後進状態に設定するときには、前記所定の動作モードの開始時に、前記第2エンジンへの前記第2スロットル指令の出力から、所定の遅延時間後に、前記第1エンジンへの前記第1スロットル指令を出力する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記第1船舶推進器への要求スラストを決定し、
前記要求スラストの大きさに応じて前記遅延時間を変更する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前移動モードと前記所定の動作モードとを指示するために操作可能な操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記操作装置による指示が前記前移動モードから前記所定の動作モードに変更されたときには、前記所定の動作モードの開始時に、遅延させずに前記第1エンジンへの前記第1スロットル指令を出力する、
請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船を所定の動作モードで移動させるように、複数の船舶推進器を制御するシステムが知られている。例えば、特許文献1のシステムは、左船外機と、右船外機と、コントローラと、ジョイスティックとを備えている。ジョイスティックが横方向に操作されると、コントローラは、船が横方向に移動するように、左右の船外機を制御する。
【0003】
詳細には、ジョイスティックが右方向に操作されると、コントローラは、左船外機を前進状態に切り換え、右船外機を後進状態に切り換える。また、コントローラは、左船外機からのスラストと右船外機からのスラストとの合力が、船の重心位置において右方向を向くように、左右の船外機の舵角を制御する。それにより、船が右方向へ平行移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-140272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船舶推進器においては、コントローラからの要求スラストに対する前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性が異なる。後進方向のスラストは、前進方向のスラストよりも遅く、要求スラストに到達する。そのため、所定の動作モードの開始時に、同時に、2つの船舶推進器の一方を前進状態に、他方を後進状態に切り換えた場合には、2つの船舶推進器のスラストが釣り合わず、スラストの大きさに違いが生じる。それにより、船が真横よりも前方へ移動してしまう。本開示の目的は、船を所定の動作モードで精度よく移動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るシステムは、船を制御するためのシステムである。当該システムは、第1船舶推進器と、第1ステアリングアクチュエータと、第2船舶推進器と、第2ステアリングアクチュエータと、コントローラとを備える。第1船舶推進器は、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構を含む。第1船舶推進器は、第1ステアリング軸回りに回転可能である。第1ステアリングアクチュエータは、第1船舶推進器を第1ステアリング軸回りに回転させる。第2船舶推進器は、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構を含む。第2船舶推進器は、第2ステアリング軸回りに回転可能である。第2ステアリングアクチュエータは、第2船舶推進器を第2ステアリング軸回りに回転させる。コントローラは、船を横方向に平行移動させる横移動モードにて、第1船舶推進器と第1ステアリングアクチュエータと第2船舶推進器と第2ステアリングアクチュエータとを制御する。
【0007】
コントローラは、横移動モードにおいて、第1シフト機構と第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定し、第1船舶推進器のスラストと第2船舶推進器のスラストとの合力が横方向を向くように第1船舶推進器の舵角と第2船舶推進器の舵角とを制御する。コントローラは、横移動モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に設定し、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、横移動モードの開始時に、第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、第1シフト機構を遅らせて前進状態に切り換える。
【0008】
第1の態様に係るシステムでは、横移動モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に設定し、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、横移動モードの開始時に、第2シフト機構が後進状態に切り換えられてから、遅れて第1シフト機構が前進状態に切り換えられる。そのため、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減される。それにより、船を横移動モードで精度よく移動させることができる。
【0009】
本開示の第2の態様に係るシステムは、船を制御するためのシステムである。当該システムは、第1船舶推進器と、第2船舶推進器と、コントローラとを備える。第1船舶推進器は、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構を含む。第2船舶推進器は、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構を含む。コントローラは、船を回頭させる回頭モードにて、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御する。
【0010】
コントローラは、回頭モードにおいて、第1シフト機構と第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定することで、船を回頭させる。コントローラは、回頭モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、回頭モードの開始時に、第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、第1シフト機構を遅らせて前進状態に切り換える。
【0011】
第2の態様に係るシステムでは、回頭モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に設定し、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、回頭モードの開始時に、第2シフト機構が後進状態に切り換えられてから、遅れて第1シフト機構が前進状態に切り換えられる。そのため、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減される。それにより、船を回頭モードで精度よく移動させることができる。
【0012】
本開示の第3の態様に係るシステムは、船を制御するためのシステムである。当該システムは、第1船舶推進器と、第2船舶推進器と、コントローラとを備える。第1船舶推進器は、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第1シフト機構を含む。第2船舶推進器は、前進状態と後進状態とに切り替え可能な第2シフト機構を含む。コントローラは、所定の動作モードにて、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御する。
【0013】
コントローラは、第1シフト機構と第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定することで、船を所定の動作モードにて移動させる。コントローラは、所定の動作モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、所定の動作モードの開始時に、第2シフト機構を後進状態に切り換えてから、第1シフト機構を遅らせて前進状態に切り換える。
【0014】
第3の態様に係るシステムでは、所定の動作モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に設定し、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、所定の動作モードの開始時に、第2シフト機構が後進状態に切り換えられてから、遅れて第1シフト機構が前進状態に切り換えられる。そのため、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減される。それにより、船を所定の動作モードで精度よく移動させることができる。
【0015】
本開示の第4の態様に係るシステムは、船を制御するためのシステムである。当該システムは、第1船舶推進器と、第2船舶推進器と、コントローラとを備える。第1船舶推進器は、第1エンジンと第1シフト機構とを含む。第1エンジンは、第1スロットル指令に応じて制御される。第1シフト機構は、前進状態と後進状態とに切り替え可能である。第2船舶推進器は、第2エンジンと第2シフト機構とを含む。第2エンジンは、第2スロットル指令に応じて制御される。第2シフト機構は、前進状態と後進状態とに切り替え可能である。コントローラは、所定の動作モードにて、第1船舶推進器と第2船舶推進器とを制御する。
【0016】
コントローラは、第1シフト機構と第2シフト機構との一方を前進状態に、他方を後進状態に設定することで、船を所定の動作モードにて移動させる。コントローラは、所定の動作モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、所定の動作モードの開始時に、第2エンジンへの第2スロットル指令の出力から遅らせて第1エンジンへの第1スロットル指令を出力する。
【0017】
第4の態様に係るシステムでは、所定の動作モードにおいて、第1シフト機構を前進状態に設定し、第2シフト機構を後進状態に設定するときには、所定の動作モードの開始時に、第2エンジンへの第2スロットル指令の出力から、遅れて第1エンジンへの第1スロットル指令が出力される。そのため、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減される。それにより、船を所定の動作モードで精度よく移動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減されることで、船を所定の動作モードで精度よく移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るシステムが搭載された船を示す斜視図である。
図2】船舶推進器の側面図である。
図3】システムの構成を示す模式図である。
図4】左方への横移動モードでの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図5】右方への横移動モードでの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図6】時計回りへの回頭モードでの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図7】反時計回りへの回頭モードでの船舶推進器の制御を示す模式図である。
図8】左方への横移動モードでの船舶推進器の制御を示すタイミングチャートである。
図9】右方への横移動モードでの船舶推進器の制御を示すタイミングチャートである。
図10】遅延時間データの一例を示す図である。
図11】時計回りへの回頭モードでの船舶推進器の制御を示すタイミングチャートである。
図12】反時計回りへの回頭モードでの船舶推進器の制御を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係るシステムが搭載された船100を示す斜視図である。船100を制御するためのシステムは、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとを備えている。
【0021】
第1、第2船舶推進器1a,1bは、船100の船尾に取り付けられる。第1、第2船舶推進器1a,1bは、船外機である。第1、第2船舶推進器1a,1bは、船100の幅方向に並んで配置されている。具体的には、第1船舶推進器1aは、船100の左舷に配置される。第2船舶推進器1bは、船100の右舷に配置される。第1、第2船舶推進器1a,1bは、それぞれ船100を推進させるスラストを発生させる。
【0022】
図2は、第1船舶推進器1aの側面図である。以下、第1船舶推進器1aの構造について説明するが、第2船舶推進器1bも第1船舶推進器1aの構造と同様である。第1船舶推進器1aは、ブラケット11aを介して船100に取り付けられる。ブラケット11aは、第1ステアリング軸12a回りに回転可能に第1船舶推進器1aを支持する。第1ステアリング軸12aは、第1船舶推進器1aの上下方向に延びている。
【0023】
第1船舶推進器1aは、第1エンジン2aと、第1ドライブ軸3aと、第1プロペラ軸4aと、第1シフト機構5aとを含む。第1エンジン2aは、船100を推進させるスラストを発生させる。第1エンジン2aは、内燃エンジンである。第1エンジン2aは、クランク軸13aを含む。クランク軸13aは、第1船舶推進器1aの上下方向に延びている。第1ドライブ軸3aは、クランク軸13aに接続されている。第1ドライブ軸3aは、第1船舶推進器1aの上下方向に延びている。第1プロペラ軸4aは、第1船舶推進器1aの前後方向に延びている。第1プロペラ軸4aは、第1シフト機構5aを介して、第1ドライブ軸3aに接続されている。第1プロペラ軸4aにはプロペラ6aが取り付けられる。
【0024】
第1シフト機構5aは、前進ギア14aと、後進ギア15aと、ドッグクラッチ16aとを含む。ドッグクラッチ16aによってギア14a,15aの接続が切り換えられることで、第1ドライブ軸3aから第1プロペラ軸4aへの回転の伝達方向が切り換えられる。それにより、船100の前進と後進とが切り換えられる。
【0025】
詳細には、第1シフト機構5aは、前進状態と、後進状態と、中立状態とに切り替え可能である。第1シフト機構5aが前進状態では、ドッグクラッチ16aは前進ギア14aに接続される。それにより、第1プロペラ軸4aを前進方向に回転させるように、第1ドライブ軸3aの回転が第1プロペラ軸4aに伝達される。第1シフト機構5aが後進状態では、ドッグクラッチ16aは後進ギア15aに接続される。それにより、第1プロペラ軸4aを後進方向に回転させるように、第1ドライブ軸3aの回転が第1プロペラ軸4aに伝達される。第1シフト機構5aが中立状態では、ドッグクラッチ16aは、前進ギア14aと後進ギア15aとのいずれからも解放される。それにより、第1ドライブ軸3aの回転は、第1プロペラ軸4aに伝達されない。
【0026】
図3は、船100を制御するためのシステムの構成を示す模式図である。図3に示すように、第1船舶推進器1aは、第1シフトアクチュエータ7aと第1ステアリングアクチュエータ8aとを含む。第1シフトアクチュエータ7aは、第1シフト機構5aのドッグクラッチ16aに接続されている。第1シフトアクチュエータ7aは、ドッグクラッチ16aを動作させることで、ギア14a,15aの接続を切り換える。それにより、船100の前進と後進とが切り換えられる。第1シフトアクチュエータ7aは、例えば電動モータである。ただし、第1シフトアクチュエータ7aは、電動シリンダ、油圧モータ、或いは油圧シリンダなどの他のアクチュエータであってもよい。
【0027】
第1ステアリングアクチュエータ8aは、第1船舶推進器1aに接続されている。第1ステアリングアクチュエータ8aは、第1船舶推進器1aを第1ステアリング軸12a回りに回転させる。それにより、第1船舶推進器1aの舵角が変更される。舵角は、第1船舶推進器1aの前後方向に対する第1プロペラ軸4aの角度である。第1ステアリングアクチュエータ8aは、例えば電動モータである。ただし、第1シフトアクチュエータ7aは、電動シリンダ、油圧モータ、或いは油圧シリンダなどの他のアクチュエータであってもよい。
【0028】
第1船舶推進器1aは、第1ECU(Electric Control Unit)9aを含む。第1ECU9aは、CPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含む。第1ECU9aは、第1船舶推進器1aを制御するためのプログラム及びデータを記憶している。第1ECU9aは、第1エンジン2aを制御する。
【0029】
第2船舶推進器1bは、第2エンジン2bと、第2シフト機構5bと、第2シフトアクチュエータ7bと、第2ステアリングアクチュエータ8bと、第2ECU9bとを含む。第2船舶推進器1bは、第2ステアリング軸12b(図4参照)回りに回転可能である。第2船舶推進器1bの第2エンジン2b、第2シフト機構5b、第2シフトアクチュエータ7b、第2ステアリングアクチュエータ8b、及び第2ECU9bは、第1船舶推進器1aの第1エンジン2a、第1シフト機構5a、第1シフトアクチュエータ7a、第1ステアリングアクチュエータ8a、及び第1ECU9aと、それぞれ同様の構成である。
【0030】
システムは、ステアリングホイール24と、リモートコントローラ25と、ジョイスティック26と、入力装置27とを含む。図1に示すように、ステアリングホイール24と、リモートコントローラ25と、ジョイスティック26と、入力装置27とは、船100の操船席に配置されている。
【0031】
ステアリングホイール24は、オペレータが船100の旋回方向を操作するための装置である。ステアリングホイール24は、センサ240を含む。センサ240は、ステアリングホイール24の操作方向及び操作量を示すステアリング信号を出力する。
【0032】
リモートコントローラ25は、第1スロットルレバー25aと第2スロットルレバー25bとを含む。第1スロットルレバー25aは、オペレータが第1船舶推進器1aのスラストの大きさを調整するための装置である。また、第1スロットルレバー25aは、オペレータが、第1船舶推進器1aのスラストの方向を、前進と後進とに切り替えるための装置である。第1スロットルレバー25aは、中立位置から、前進方向と後進方向とに操作可能である。中立位置は、前進方向と後進方向との間の位置である。第1スロットルレバー25aはセンサ251を含む。センサ251は、第1スロットルレバー25aの操作方向及び操作量を示す第1スロットル信号を出力する。
【0033】
第2スロットルレバー25bは、オペレータが第2船舶推進器1bのスラストの大きさを調整するための装置である。また、第2スロットルレバー25bは、オペレータが、第2船舶推進器1bのスラストの方向を、前進と後進とに切り替えるための装置である。第2スロットルレバー25bの構成は、第1スロットルレバー25aと同様である。第2スロットルレバー25bはセンサ252を含む。センサ252は、第2スロットルレバー25bの操作方向及び操作量を示す第2スロットル信号を出力する。
【0034】
ジョイスティック26は、オペレータが、前後左右の各方向への船100の動作モードを指示するために操作可能である。また、ジョイスティック26は、オペレータが船100を回頭させる回頭モードを指示するために操作可能である。ジョイスティック26は、中立位置から、少なくとも前後左右の4方向に傾倒可能である。ジョイスティック26は、4方向以上の方向への指示が可能であってもよく、全方位への指示が可能であってもよい。ジョイスティック26は、回転軸Ax1を中心に回転可能である。すなわち、ジョイスティック26は、回転軸Ax1を中心に、中央位置から時計回り及び反時計回りに捻り操作可能である。
【0035】
ジョイスティック26は、センサ260を含む。センサ260は、ジョイスティック26の操作を示すジョイスティック信号を出力する。ジョイスティック信号は、ジョイスティック26の傾倒方向、及び、傾倒量を含む。ジョイスティック信号は、ジョイスティック26の捻り方向、及び、捻り量を含む。
【0036】
入力装置27は、動作モードの設定のために操作可能である。入力装置27は、例えばタッチスクリーン、或いは、スイッチである。入力装置27は、入力装置27に入力された動作モードの設定を示す設定信号を出力する。
【0037】
システムは、操船コントローラ30を含む。操船コントローラ30は、CPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含む。操船コントローラ30は、第1船舶推進器1a及び第2船舶推進器1bを制御するためのプログラム及びデータを記憶している。操船コントローラ30は、第1、第2ECU9a,9bと有線、或いは無線を介して接続されている。操船コントローラ30は、ステアリングホイール24、リモートコントローラ25、ジョイスティック26、及び入力装置27と接続されている。
【0038】
操船コントローラ30は、センサ240からステアリング信号を受信する。操船コントローラ30は、センサ251,252からスロットル信号を受信する。操船コントローラ30は、センサ260からジョイスティック信号を受信する。操船コントローラ30は、センサ240,251,252,260からのこれらの信号に基づいて、第1、第2ECU9a,9bへ指令信号を出力する。
【0039】
指令信号は、第1ECU9aを介して、第1エンジン2a、第1シフトアクチュエータ7a、第1ステアリングアクチュエータ8aに送信される。指令信号は、第2ECU9bを介して、第2エンジン2b、第2シフトアクチュエータ7b、第2ステアリングアクチュエータ8bに送信される。
【0040】
操船コントローラ30は、第1スロットルレバー25aの操作方向に応じて、第1シフトアクチュエータ7aへの第1シフト指令を出力する。それにより、第1船舶推進器1aの前進と後進とが切り替えられる。操船コントローラ30は、第1スロットルレバー25aの操作量に応じて、第1エンジン2aへの第1スロットル指令を出力する。第1ECU9aは、第1スロットル指令に応じて、第1船舶推進器1aのスラストを制御する。なお、センサ251からの第1スロットル信号は、第1ECU9aへ直接的に入力されてもよい。第1ECU9aは、センサ251からの第1スロットル信号に応じて、第1エンジン2aへの第1スロットル指令を出力してもよい。
【0041】
操船コントローラ30は、第2スロットルレバー25bの操作方向に応じて、第2シフトアクチュエータ7bへの第2シフト指令を出力する。それにより、第2船舶推進器1bの前進と後進とが切り替えられる。操船コントローラ30は、第2スロットルレバー25bの操作量に応じて、第2エンジン2bへの第2スロットル指令を出力する。第2ECU9bは、第2スロットル指令に応じて、第2船舶推進器1bのスラストを制御する。なお、センサ252からの第2スロットル信号は、第2ECU9bへ直接的に入力されてもよい。第2ECU9bは、センサ252からの第2スロットル信号に応じて、第2エンジン2bへの第2スロットル指令を出力してもよい。
【0042】
操船コントローラ30は、ステアリングホイール24の操作方向及び操作量に応じて、第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bへの指令信号を出力する。ステアリングホイール24が中立位置から左方に操作されると、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとが右方に回転するように、第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bを制御する。それにより、船100は左方に旋回する。
【0043】
ステアリングホイール24が中立位置から右方に操作されると、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとが左方に回転するように、第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bを制御する。それにより、船100は右方に旋回する。また、操船コントローラ30は、ステアリングホイール24の操作量に応じて、第1船舶推進器1aと第2船舶推進器1bとの舵角を制御する。
【0044】
操船コントローラ30は、ジョイスティック26の傾倒方向、及び、傾倒量に応じて、第1、第2エンジン2a,2b、第1、第2シフトアクチュエータ7a,7b、及び第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bへの指令信号を出力する。操船コントローラ30は、ジョイスティック26の傾倒方向に対応した方向に、傾倒量に対応した速度で、船100が平行移動するように、第1、第2エンジン2a,2b、第1、第2シフトアクチュエータ7a,7b、及び第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bを制御する。
【0045】
ジョイスティック26が前方に倒されているときには、操船コントローラ30は、船100を前方に移動させる(前移動モード)。ジョイスティック26が後方に倒されているときには、操船コントローラ30は、船100を後方に移動させる(後移動モード)。
【0046】
ジョイスティック26が左方、又は、右方に倒されているときには、操船コントローラ30は、船100を左方、又は、右方に横移動させる(横移動モード)。例えば、ジョイスティック26が右方に倒されているときには、操船コントローラ30は、図4に示すように、第1船舶推進器1aに前進のスラストF1を発生させ、第2船舶推進器1bに後進のスラストF2を発生させる。操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aのスラストF1と第2船舶推進器1bのスラストF2との合力F3が、船100の右方を向くように、第1、第2船舶推進器1a,1bのスラストと舵角とを制御する。それにより、船100が真右に平行移動する。
【0047】
ジョイスティック26が左方に倒されているときには、操船コントローラ30は、図5に示すように、第1船舶推進器1aに後進のスラストF1を発生させ、第2船舶推進器1bに前進のスラストF2を発生させる。操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aのスラストF1と第2船舶推進器1bのスラストF2との合力F3が、船100の左方を向くように、第1、第2船舶推進器1a,1bのスラストと舵角とを制御する。それにより、船100が真左に平行移動する。
【0048】
操船コントローラ30は、ジョイスティック26の捻り方向に対応した方向に、捻り量に対応した速度で、船100が回頭するように、第1、第2エンジン2a,2b、第1、第2シフトアクチュエータ7a,7b、及び第1、第2ステアリングアクチュエータ8a,8bを制御する(回頭モード)。例えば、ジョイスティック26が時計回りに捻られたときには、図6に示すように、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aに前進のスラストを発生させ、第2船舶推進器1bに後進のスラストを発生させる。それにより、船100が時計回りに回頭する。
【0049】
ジョイスティック26が反時計回りに捻られたときには、図7に示すように、操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aに後進のスラストを発生させ、第2船舶推進器1bに前進のスラストを発生させる。それにより、船100が反時計回りに回頭する。
【0050】
操船コントローラ30は、上述した横移動モードの開始時に、前進状態へのシフトを遅らせるシフトディレイ制御を実行する。シフトディレイ制御では、操船コントローラ30は、船舶推進器1a,1bの一方のシフト機構を後進状態に切り換えてから、他方のシフト機構を遅らせて前進状態に切り換える。
【0051】
例えば、操船コントローラ30は、右方への横移動モードの開始時には、第2船舶推進器1bの第2シフト機構5bを後進状態に切り換えてから、第1船舶推進器1aの第1シフト機構5aを遅らせて前進状態に切り換える。操船コントローラ30は、左方への横移動モードの開始時には、第1船舶推進器1aの第1シフト機構5aを後進状態に切り換えてから、第2船舶推進器1bの第2シフト機構5bを遅らせて前進状態に切り換える。
【0052】
図8は、右方への横移動モードの開始時におけるジョイスティック信号とシフト指令を示すタイミングチャートである。図8に示すように、操船コントローラ30は、時間T1において、右方へのジョイスティック信号を受信する。それにより、操船コントローラ30は、右方への横移動モードを開始する。操船コントローラ30は、時間T1において右方へのジョイスティック信号を受信すると、まず第2船舶推進器1bへ後進のシフト指令を出力して、第2シフト機構5bを後進状態に切り換える。そして、操船コントローラ30は、時間T1から遅延時間経過後の時間T2において、第1船舶推進器1aへ前進のシフト指令を出力して、第1シフト機構5aを前進状態に切り換える。
【0053】
図9は、左方への横移動モードの開始時におけるジョイスティック信号とシフト指令を示すタイミングチャートである。図9に示すように、操船コントローラ30は、時間T1において、左方へのジョイスティック信号を受信する。それにより、操船コントローラ30は、左方への横移動モードを開始する。操船コントローラ30は、時間T1において左方へのジョイスティック信号を受信すると、まず第1船舶推進器1aへ後進のシフト指令を出力して、第1シフト機構5aを後進状態に切り換える。そして、操船コントローラ30は、時間T1から遅延時間経過後の時間T2において、第2船舶推進器1bへ前進のシフト指令を出力して、第2シフト機構5bを前進状態に切り換える。
【0054】
操船コントローラ30は、前進の要求スラストの大きさに応じて、シフトディレイ制御での遅延時間を変更する。操船コントローラ30は、遅延時間データを参照して、前進の要求スラストから、遅延時間を決定する。遅延時間データは、前進の要求スラストと遅延時間との関係を規定する。操船コントローラ30は、遅延時間データを記憶している。
【0055】
例えば、操船コントローラ30は、右方へのジョイスティック26の傾倒量に応じて、第1船舶推進器1aの前進の要求スラストと、第2船舶推進器1bの後進の要求スラストとを決定する。操船コントローラ30は、第1船舶推進器1aの前進の要求スラストに基づいて、右方への横移動モードの開始時の遅延時間を決定する。操船コントローラ30は、左方へのジョイスティック26の傾倒量に応じて、第1船舶推進器1aの後進の要求スラストと、第2船舶推進器1bの前進の要求スラストとを決定する。操船コントローラ30は、第2船舶推進器1bの前進の要求スラストに基づいて、左方への横移動モードの開始時の遅延時間を決定する。
【0056】
図10は、遅延時間データの一例を示す図である。図10に示すように、遅延時間データは、前進の要求スラストの増大に応じて、段階的に増大する遅延時間を規定している。ただし、遅延時間データは、図10に示すものに限らず、変更されてもよい。例えば、遅延時間データは、前進の要求スラストの増大時に応じて、直線状に増大する遅延時間を規定してもよい。或いは、遅延時間データは、前進の要求スラストの増大に応じて、曲線状に増大する遅延時間を規定してもよい。
【0057】
操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、中立位置から、左方又は右方に操作されたときに、シフトディレイ制御を実行する。操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、後方から、左方又は右方に操作されたときに、シフトディレイ制御を実行する。操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、左右の一方から、他方へ操作されたときに、シフトディレイ制御を実行する。
【0058】
ただし、操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、前方から、左方又は右方に操作されたときには、シフトディレイ制御を実行しない。すなわち、操船コントローラ30は、ジョイスティック26による指示が前移動モードから横移動モードに変更されたときには、横移動モードの開始時に、遅延させずに前進の船舶推進器のシフト機構を前進状態に切り換える。
【0059】
操船コントローラ30は、回頭モードの開始時にシフトディレイ制御を実行する。例えば、操船コントローラ30は、時計回りへの回答モードの開始時には、第2船舶推進器1bの第2シフト機構5bを後進状態に切り換えてから、第1船舶推進器1aの第1シフト機構5aを遅らせて前進状態に切り換える。操船コントローラ30は、反時計回りへの回答モードの開始時には、第1船舶推進器1aの第1シフト機構5aを後進状態に切り換えてから、第2船舶推進器1bの第2シフト機構5bを遅らせて前進状態に切り換える。
【0060】
図11は、時計回りへの回頭モードの開始時におけるジョイスティック信号とシフト指令を示すタイミングチャートである。図11に示すように、操船コントローラ30は、時間T1において、時計回りへのジョイスティック信号を受信する。それにより、操船コントローラ30は、時計回りへの回頭モードを開始する。操船コントローラ30は、時間T1において時計回りへのジョイスティック信号を受信すると、まず第2船舶推進器1bへ後進のシフト指令を出力して、第2シフト機構5bを後進状態に切り換える。そして、操船コントローラ30は、時間T1から遅延時間経過後の時間T2において、第1船舶推進器1aへ前進のシフト指令を出力して、第1シフト機構5aを前進状態に切り換える。
【0061】
図12は、反時計回りへの回頭モードの開始時におけるジョイスティック信号とシフト指令を示すタイミングチャートである。図12に示すように、操船コントローラ30は、時間T1において、反時計回りへのジョイスティック信号を受信する。それにより、操船コントローラ30は、反時計回りへの回頭モードを開始する。操船コントローラ30は、時間T1において反時計回りへのジョイスティック信号を受信すると、まず第1船舶推進器1aへ後進のシフト指令を出力して、第1シフト機構5aを後進状態に切り換える。そして、操船コントローラ30は、時間T1から遅延時間経過後の時間T2において、第2船舶推進器1bへ前進のシフト指令を出力して、第2シフト機構5bを前進状態に切り換える。なお、操船コントローラ30は、横移動モードの開示時と同様に、回頭モードの開示時の遅延時間を、前進の要求スラストの大きさに応じて、変更する。
【0062】
操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、中立位置から、時計回り又は反時計回りに捻られたときには、シフトディレイ制御を実行する。操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、時計回りと反時計回りとの一方から他方へ捻られたときには、シフトディレイ制御を実行する。
【0063】
ただし、操船コントローラ30は、ジョイスティック26が、前後左右のいずれかから、時計回り又は反時計回りに捻られたときには、シフトディレイ制御を実行しない。すなわち、操船コントローラ30は、ジョイスティック26による指示が、前後左右のいずれかの移動モードから、回頭モードに変更されたときには、回頭モードの開始時に、遅延させずに前進の船舶推進器のシフト機構を前進状態に切り換える。
【0064】
以上説明した本実施形態に係るシステムでは、横移動モード及び回頭モードにおいて、シフトディレイ制御が実行される。そのため、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減される。それにより、船100を横移動モード及び回頭モードで精度よく移動させることができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
船舶推進器は、船外機に限らず、変更されてもよい。例えば、船舶推進器は、船内外機、或いは、ジェット推進器であってもよい。船舶推進器の数は2つに限らず、2つより多くてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、動作モードを指示するための操作装置の一例としてジョイスティックが挙げられている。しかし、操作装置は、ジョイスティックに限らず、変更されてもよい。例えば、操作装置は、スイッチ、或いはタッチスクリーンなどの他の装置であってもよい。
【0068】
上記の実施形態では、操船コントローラ30は、シフトディレイ制御によって、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いを低減させている。しかし、操船コントローラ30は、スロットルディレイ制御によって、スラストの大きさの違いを低減させてもよい。スロットルディレイ制御では、操船コントローラ30は、前進の船舶推進器のエンジンへのスロットル信号を、後進の船舶推進器のエンジンへのスロットル信号よりも遅らせて出力する。
【0069】
例えば、操船コントローラ30は、右方への横移動モードの開始時に、第2エンジン2bへの第2スロットル信号の出力から、第1エンジン2aへの第1スロットル信号を遅らせて送らせて出力してもよい。操船コントローラ30は、左方への横移動モードの開始時に、第1エンジン2aへの第1スロットル信号の出力から、第2エンジン2bへの第2スロットル信号を遅らせて送らせて出力してもよい。
【0070】
操船コントローラ30は、時計回りへの回頭モードの開始時に、第2エンジン2bへの第2スロットル信号の出力から、第1エンジン2aへの第1スロットル信号を遅らせて送らせて出力してもよい。操船コントローラ30は、反時計回りへの回頭モードの開始時に、第1エンジン2aへの第1スロットル信号の出力から、第2エンジン2bへの第2スロットル信号を遅らせて出力してもよい。
【0071】
スロットルディレイ制御においても、操船コントローラ30は、上記の実施形態と同様に、前進の要求スラストの大きさに応じて遅延時間を変更してもよい。また、操船コントローラ30は、上記の実施形態と同様に、横移動モード又は回頭モードの操作の前のジョイスティック26の操作に応じて、スロットルディレイ制御を実行しなくてもよい。
【0072】
シフトディレイ制御、或いはスロットルディレイ制御が実行される所定の動作モードは、横移動モードと回頭モードとに限られず、変更されてもよい。例えば、横移動モードのみにおいて、シフトディレイ制御、或いはスロットルディレイ制御が実行されてもよい。回頭モードのみにおいて、シフトディレイ制御、或いはスロットルディレイ制御が実行されてもよい。或いは、横移動モードと回頭モードと以外の動作モードにおいて、シフトディレイ制御、或いはスロットルディレイ制御が実行されてもよい。例えば、船が所定の軌跡に従って移動するように船舶推進器を制御する自動操船モードにおいて、シフトディレイ制御、或いはスロットルディレイ制御が実行されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、前進方向のスラストと後進方向のスラストとの過渡特性の違いによるスラストの大きさの違いが低減されることで、船を所定の動作モードで精度よく移動させることができる。
【符号の説明】
【0074】
1a第1船舶推進器 ,1b:第2船舶推進器, 5a:第1シフト機構, 5b:第2シフト機構, 8a:第1ステアリングアクチュエータ, 8b:第2ステアリングアクチュエータ, 12a:第1ステアリング軸, 12b:第2ステアリング軸, 30:操船コントローラ, 26:ジョイスティック(操作装置), 100:船
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12