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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128253
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】皮膚用粘着性フィルム
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220825BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220825BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026684
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】520385021
【氏名又は名称】ウェトラブホールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】岡野 仁夫
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC112
4C083AD091
4C083AD092
4C083CC02
4C083DD12
(57)【要約】
【課題】フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有し、皮膚に対する刺激性が低く、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを提供する。
【解決手段】フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有し、フィルムを形成するためのフィルム形成材としてポリビニルアルコールを含有するフィルム形成材が用いられていることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、当該フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有し、当該フィルムを形成するためのフィルム形成材としてポリビニルアルコールを含有するフィルム形成材が用いられていることを特徴とする皮膚用粘着性フィルム。
【請求項2】
フィルム形成材がさらに脂肪族多価アルコールを含有する請求項1に記載の皮膚用粘着性フィルム。
【請求項3】
粘着面上に剥離フィルムが形成されている請求項1または2に記載の皮膚用粘着性フィルム。
【請求項4】
皮膚用粘着性フィルムを製造する方法であって、フィルム成形型内にポリビニルアルコールを含有するフィルム形成材を入れた後、当該フィルム形成材を-10℃以下の温度に冷凍し、冷凍したフィルム形成材を解凍する操作を3~15回繰り返すことを特徴とする皮膚用粘着性フィルムの製造方法。
【請求項5】
フィルム形成材がさらに脂肪族多価アルコールを含有する請求項4に記載の皮膚用粘着性フィルムの製造方法。
【請求項6】
フィルム成形型内の底面に剥離フィルムを置いた後に当該フィルム成形型内にフィルム形成材を入れる請求項4または5に記載の皮膚用粘着性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用粘着性フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れ、例えば、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの成分を皮膚に付与する際などに好適に使用することができる皮膚用粘着性フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状化粧品は、一般に化粧料を皮膚に付与するために用いられている。外出時などに持ち運びが容易であり、容器を必要としないフィルム状化粧品として、多糖類またはタンパク質が原料として用いられているフィルム状化粧品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記フィルム状化粧品は、使用時に水を必要とすることから、水を入手することができない場合には使用することができないため、使用性に劣る。
【0003】
また、皮膚に貼付して使用するための化粧用水溶性フィルムとして、平均分子量が1000~30万である澱粉分解物、加工澱粉、加工澱粉分解物、ヒドロキシアルキル化セルロースおよびポリビニルピロリドンからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分と、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸分解物、ヒアルロン酸誘導体およびそれらの塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分と、可塑剤とを含有する水溶性フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、前記水溶性フィルムは、使用時に水を必要とすることから、前記フィルム状化粧品と同様に使用時に水を入手することができない場合には使用することができないため、使用性に劣り、また水を使用しなくてもよいようにするためには当該水溶性フィルムの表面にジェル層を形成させなければならない(例えば、特許文献2の段落[0025]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-212027号公報
【特許文献2】特開2009-221391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有し、皮膚に対する刺激性が低く、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得るべく鋭意研究を重ねた結果、1枚のフィルムでありながら一方表面に粘着面を有し、他方表面に非粘着面を有し、皮膚に対する刺激性が低く、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを見出した。本発明は、前記知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
本発明は、
(1) フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、当該フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有し、当該フィルムを形成するためのフィルム形成材としてポリビニルアルコールを含有するフィルム形成材が用いられていることを特徴とする皮膚用粘着性フィルム、
(2) フィルム形成材がさらに脂肪族多価アルコールを含有する前記(1)に記載の皮膚用粘着性フィルム、
(3) 粘着面上に剥離フィルムが形成されている前記(1)または(2)に記載の皮膚用粘着性フィルム、
(4) 皮膚用粘着性フィルムを製造する方法であって、フィルム成形型内にポリビニルアルコールを含有するフィルム形成材を入れた後、当該フィルム形成材を-10℃以下の温度に冷凍し、冷凍したフィルム形成材を解凍する操作を3~15回繰り返すことを特徴とする皮膚用粘着性フィルムの製造方法、
(5) フィルム形成材がさらに脂肪族多価アルコールを含有する前記(4)に記載の皮膚用粘着性フィルムの製造方法、および
(6) フィルム成形型内の底面に剥離フィルムを置いた後に当該フィルム成形型内にフィルム形成材を入れる前記(4)または(5)に記載の皮膚用粘着性フィルムの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有し、皮膚に対する刺激性が低く、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムおよびその製造方法が提供される。
【0009】
なお、前記粘着性は、室温(約20℃)下でフィルムを清浄化されたヒトの手の甲に貼り付けた後、手の甲から剥がすときにフィルムが手の甲に粘着する性質を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)フィルム形成材
本発明においては、フィルム形成材としてポリビニルアルコールを含有するフィルム形成材が用いられる。
【0011】
〔ポリビニルアルコール〕
ポリビニルアルコールの平均重合度は、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得る観点から、好ましくは1000~3000、より好ましくは1300~2500、さらに好ましくは1500~2000である。ポリビニルアルコールの平均重合度は、粘度法で求められる平均重合度を意味する。
【0012】
ポリビニルアルコールのケン化度は、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得る観点から、好ましくは65~100モル%、より好ましくは70~95モル%、さらに好ましくは75~90モル%である。
【0013】
ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール水溶液として用いることが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液に使用される水としては、例えば、純水、精製水、イオン交換水、水道水などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ポリビニルアルコール水溶液を調製する際に使用される水の温度は常温であってもよく、当該水は、必要により加温されていてもよく冷却されていてもよい。ポリビニルアルコール水溶液を調製する際に使用される水には、本発明の目的を阻害しない範囲内で水溶性有機溶媒が含まれていてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水溶性有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、特に限定されないが、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得る観点から、3~10質量%であることが好ましく、3~8質量%であることがより好ましい。
【0015】
〔脂肪族多価アルコール〕
フィルム形成材には、皮膚用粘着性フィルムの伸縮性を向上させる観点から、脂肪族多価アルコールが用いられていることが好ましい。
【0016】
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの3価以上の脂肪族ポリオールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪族多価アルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。脂肪族多価アルコールのなかでは、伸縮性を向上させ、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得る観点から、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0017】
ポリビニルアルコール水溶液100質量部あたりの脂肪族多価アルコールの量は、伸縮性を向上させ、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得る観点から、30~100質量部であることが好ましく、35~80質量部であることがより好ましく40~60質量部であることがさらに好ましい。
【0018】
〔その他の成分〕
フィルム形成材には、本発明の目的が阻害されない範囲内でポリビニルアルコール以外の水溶性高分子化合物が含まれていてもよい。
【0019】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、デキストラン、プルランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水溶性高分子化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
また、フィルム形成材には、本発明の目的が阻害されない範囲内で各種ビタミン、サリチル酸またはその誘導体に代表される消炎鎮痛剤、ポリフェノールに代表される抗酸化剤、塩化ベンザルコニウムに代表される抗菌剤、プラセンタエキスに代表される美白成分、コラーゲンに代表される保湿成分、各種香料、各種色素、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0021】
(2)皮膚用粘着性フィルムの製造方法
本発明の皮膚用粘着性フィルムは、フィルム成形型内にフィルム形成材を入れた後、当該フィルム形成材を-10℃以下の温度に冷凍し、冷凍したフィルム形成材を解凍する操作を3~15回繰り返すことによって作製することができる。
【0022】
フィルム成形型には、所定の形状を有する皮膚用粘着性フィルムに対応する内面形状を有する容器が用いることができる。例えば、平面形状を有する皮膚用粘着性フィルムを得る場合には、成形型内の底面が平面であるフィルム成形型を用いることができる。フィルム成形型の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属、ポリプロピレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、スチロール樹脂、硬質塩化ビニル樹脂などの樹脂、ガラスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0023】
フィルム形成材をフィルム成形型内に入れる際のフィルム形成材の温度は、特に限定されず、通常、室温であるが、必要によりフィルム形成材を加温してもよい。また、フィルム成形型内に入れられるフィルム形成材の深さは、特に限定されず、本発明の皮膚用粘着性フィルムの目的とする厚さに応じて適宜調整することが好ましい。フィルム成形型内に入れられるフィルム形成材の深さの一例として、当該深さが0.5~5mm程度であることが挙げられる。
【0024】
フィルム成形型内の底面には、形成される皮膚用粘着性フィルムがフィルム成形型の内面に付着することを防止するとともに、皮膚用粘着性フィルムの粘着面を保護するために、剥離フィルムをあらかじめ置いておくことが好ましい。
【0025】
剥離フィルムをフィルム成形型内の底面に置いた後にフィルム形成材をフィルム成形型内に入れた場合、粘着面に剥離フィルムを有する皮膚用粘着性フィルムが得られる。粘着面に剥離フィルムを有する皮膚用粘着性フィルムは、粘着面に異物が付着することを防止することができるとともに、粘着面が空気と接触することによって乾燥することを防止することができる。また、皮膚用粘着性フィルムをロール状に巻いたとき、粘着面が剥離フィルムで保護されているので、当該皮膚用粘着性フィルムをロール状で保存したり、販売したりすることができる。なお、皮膚用粘着性フィルムの粘着面に付着している剥離フィルムは、当該皮膚用粘着性フィルムを使用する際に除去することができる。
【0026】
剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、各種ナイロンに代表されるポリアミド、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの樹脂からなるフィルム、コート紙などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0027】
次に、フィルム形成材が入れられたフィルム成形型を例えば冷凍室などに入れることにより、当該フィルム形成材を冷凍する。
【0028】
フィルム形成材の冷凍を開始する際のフィルム形成材の温度は、特に限定されず、通常室温であるが、必要により、当該フィルム形成材は、加温されていてもよく、冷却されていてもよい。
【0029】
フィルム形成材の冷凍温度は、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有する皮膚用粘着性フィルムを得る観点から-10℃以下である。フィルム形成材の冷凍温度の下限値には特に限定がないが、皮膚用粘着性フィルムを製造する際のエネルギー効率および生産性を高める観点から、当該下限値は-30℃以上であることが好ましく、-25℃以上であることがより好ましい。
【0030】
フィルム形成材の平均冷却速度は、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有する皮膚用粘着性フィルムを効率よく得る観点から、-20~-5℃/hであることが好ましく、-15~-5℃/hであることが好ましい。なお、フィルム形成材の平均冷却速度は、フィルム形成材の冷却の開始時の温度とフィルム形成材の冷凍温度との温度差をフィルム形成材の冷却の開始時からフィルム形成材の冷凍温度に到達するまでに要する時間で除した値を意味する。例えば、フィルム形成材の平均冷却速度が-10℃/hであることは、フィルム形成材の冷却の開始時からフィルム形成材の冷凍温度に到達するまでに1時間あたり平均して-10℃の割合でフィルム形成材の温度を低下させることを意味する。
【0031】
なお、本発明においては、フィルム形成材の冷却の開始時からフィルム形成材の冷凍温度に到達するまでの間に経時とともに冷却温度勾配が緩やかになる傾向があることから、フィルム形成材の冷却の開始時からフィルム形成材の冷凍温度に到達するまでにおける平均的な冷却速度である平均冷却温度が採用されている。
【0032】
フィルム形成材の冷却を開始してからフィルム形成材の冷凍温度に到達するまでの時間は、特に限定されないが、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有する皮膚用粘着性フィルムを効率よく得る観点から、1.5時間以上であることが好ましい。例えば、フィルム形成材の冷却の開始温度が25℃であり、フィルム形成材の冷凍温度が-10℃であり、フィルム形成材の平均冷却速度が-10℃/hである場合、3.5時間となる。
【0033】
本発明において、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有する皮膚用粘着性フィルムが得られるのは、フィルム形成材の冷却を開始してからフィルム形成材の冷凍温度に到達するまでの間にフィルム形成材に含まれているポリビニルアルコールは、時間をかけてゆっくりと沈降するので、形成される皮膚用粘着性フィルムのフィルム成形型と接する側の面(底面)におけるポリビニルアルコールの濃度が高くなることからリビニルアルコールの架橋密度が高くなって粘着面が形成され、その反対面(上面)におけるポリビニルアルコールの濃度が相対的に低くなることからポリビニルアルコールの架橋密度が相対的に低く高くって非粘着面が形成されることに基づくものと考えられる。
【0034】
本発明では、フィルム形成材に使用されるポリビニルアルコールの種類および当該フィルム形成材における含有率、フィルム形成材の冷凍温度および平均冷却速度を調整することにより、皮膚用粘着性フィルムの一方表面に形成される粘着面が所望の粘着性を有するように適宜調整することができる。
【0035】
フィルム形成材を冷凍させた後の冷凍時間(冷凍を維持する時間)は、冷凍温度によって異なるので一概には決定することができないが、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムを得る観点から5~15時間程度であることが好ましい。
【0036】
次に、冷凍されたフィルム形成材を解凍する。冷凍されたフィルム形成材を解凍する際の解凍速度には特に限定がなく、冷凍されたフィルム形成材は、通常、空気中に放置することによって自然解凍することができるほか、冷凍されたフィルム形成材に温風を吹き付けるなどの方法により、冷凍されたフィルム形成材を強制的に解凍してもよい。冷凍されたフィルム形成材の解凍後の温度は、冷凍されたフィルム形成材が解凍されていればよいので特に限定されないが、皮膚用粘着性フィルムを効率よく製造する観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下である。
【0037】
前記フィルム形成材を-10℃以下の温度に冷凍し、冷凍したフィルム形成材を解凍する操作を1サイクルとしたとき、当該操作を3~15回繰り返して行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得ることができる。
【0038】
本発明においては、前記操作を繰り返して行なうので、フィルム成形型で得られる皮膚用粘着性フィルムの下面、換言すれば、フィルム成形型と接する側の面に粘着性を有する粘着面が形成され、皮膚用粘着性フィルムの上面に非粘着性の非粘着面が形成され、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムが得られる。前記冷解凍の操作を繰り返す回数は、フィルム形成材を十分にフィルム化させる観点から、3回以上であるが、5回以上であることが好ましい。また、前記冷解凍の操作を繰り返す回数の上限値は、皮膚用粘着性フィルムを効率よく製造する観点から、15回以下、好ましくは10回以下である。
【0039】
以上のようにして得られる皮膚用粘着性フィルムには溶媒(水)が含まれていることから、必要により乾燥させてもよい。皮膚用粘着性フィルムを乾燥させる方法としては、例えば、減圧乾燥法、温風乾燥法、加熱乾燥法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
一般にフィルム形成材に含まれているポリビニルアルコールを架橋させる方法としてホウ酸、ホウ砂などの架橋剤で化学的に架橋させる方法が考えられる。しかし、当該架橋剤でポリビニルアルコールを化学的に架橋させた場合、フィルムの一方表面に粘着性の粘着面を有し、フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面を有する皮膚用粘着性フィルムが得られない。
【0041】
これに対して、本発明では、フィルム形成材の冷解凍を繰り返すというポリビニルアルコールを物理的に架橋させる方法が採られているので、一方表面に粘着性を有する粘着面が形成され、他方表面に非粘着性の非粘着面が形成され、皮膚に対する刺激性が低く、皮膚に対する粘着性を有し、洗浄性および使用性に優れている皮膚用粘着性フィルムが得られる。
【0042】
なお、フィルム形成材には、必要により、本発明の目的が阻害されない範囲内でポリビニルアルコールを化学的に架橋させるための架橋剤が含まれていてもよい。
【0043】
架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)などのホウ素化合物;チタン、チタンアセチルアセテート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンラクテートなどのチタンおよびその化合物、ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、クエン酸ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、ジルコニウム酸、ジルコニウム酸塩などのジルコニウムおよびその化合物などに代表される多価金属およびその化合物;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどのアミン化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
(3)皮膚用粘着性フィルム
以上のようにして得られる本発明の皮膚用粘着性フィルムは、従来のような粘着層を形成させるという操作が採られていないにもかかわらず、一方表面に粘着性の粘着面を有し、他方表面に非粘着性の非粘着面を有する。
【0045】
本発明の皮膚用粘着性フィルムの厚さは、特に限定されず、本発明の皮膚用粘着性フィルムの用途に応じて適宜調整することが好ましいが、通常、0.1~5mm程度である。例えば、本発明の皮膚用粘着性フィルムを化粧用フィルム、薬効成分などを皮膚に付与するためのフィルムとして用いる場合には、皮膚に対する密着性および追従性を向上させる観点から、皮膚用粘着性フィルムの厚さは、0.1~1mm程度であることが好ましく、0.3~0.8mm程度であることが好ましい。また、本発明の皮膚用粘着性フィルムをシップとして使用する場合には、皮膚に消炎鎮痛効果を持続して付与するとともに、皮膚に対する追従性を向上させる観点から、0.5~5mm程度であることが好ましく、1~3mm程度であることが好ましい。
【0046】
本発明の皮膚用粘着性フィルムの大きさおよび平面形状は、任意であり、本発明の皮膚用粘着性フィルムの用途に応じて適宜調整することが好ましい。
【0047】
本発明の皮膚用粘着性フィルムの原料として皮膚に対する刺激性が低く、人体に対する安全性が高いポリビニルアルコールが用いられているので、本発明の皮膚用粘着性フィルムは、人体の皮膚に対する安全性に優れている。
【0048】
また、従来、ポリビニルアルコールは、その水溶液を塗布し、乾燥させることにより、皮膜を形成することから、皮膜形成剤として使用されている。しかし、皮膜形成材としてポリビニルアルコールを用い、当該ポリビニルアルコールの水溶液の薄膜を形成させた後、乾燥させることによってフィルムを作製した場合、当該フィルムの両面は、粘着性を有しないため、当該フィルムを使用する際には、皮膚に対する粘着性を付与するためにその表面に粘着層を形成させる必要がある。
【0049】
これに対して、本発明の皮膚用粘着性フィルムは、従来のようにポリビニルアルコールで形成されたフィルムと相違して、当該フィルムの表面に粘着層を形成させる必要がなく、1枚のフィルムの一方表面に粘着性の粘着面が形成され、当該フィルムの他方表面に非粘着性の非粘着面が形成されているという粘着面と非粘着面を同時に併せ持つものである。
【0050】
したがって、本発明によれば、従来のように皮膚に貼付するための粘着層をフィルムの表面に形成させることが必要ではないので、皮膚用粘着性フィルムを容易に製造することができるのみならず、その厚さを薄くすることができることから、皮膚用粘着性フィルムを軽量化させ、皮膚に対する皮膚用粘着性フィルムの追従性を向上させることができる。
【0051】
また、本発明の皮膚用粘着性フィルムの原料として生分解性を有するポリビニルアルコールが使用されており、本発明の皮膚用粘着性フィルムは、水溶性に優れているので、例えば、化粧料を当該皮膚用粘着性フィルムに含有させた化粧用フィルム、消炎鎮痛剤を当該皮膚用粘着性フィルムに含有させたシップなどとして皮膚に貼付し、使用いた後に、例えば、入浴時などに水または温水で洗い流すだけで除去することができ、洗い流された水に含まれているポリビニルアルコールは生分解されるので、本発明の皮膚用粘着性フィルムは、環境に優しいという利点を有する。
【0052】
したがって、本発明の皮膚用粘着性フィルムは、従来のように使用後の化粧用フィルム、シップなどを廃棄物として処理する必要がないのみならず、使用後には皮膚から剥がさずに水または温水で洗い流すだけで皮膚から容易に除去することができるので、例えば、化粧品分野、医療分野、介護分野などの幅広い分野で使用することが期待される。
【実施例0053】
次に、本発明の皮膚用粘着性フィルムを実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が5質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン50gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0055】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが2mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-10℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0056】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約1.8mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0057】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0058】
実施例2
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が5質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液をフィルム形成材として用いた。
【0059】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが2mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-10℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0060】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約1.8mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0061】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0062】
実施例3
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が3質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン40gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0063】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが2mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-10℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0064】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約1.8mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0065】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0066】
実施例4
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が15質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン60gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0067】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが2mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-10℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0068】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約1.8mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0069】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0070】
実施例5
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が5質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン70gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0071】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが2mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-15℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0072】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約1.8mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0073】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0074】
実施例6
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が5質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン50gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0075】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが5mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-5℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0076】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約4.6mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0077】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0078】
実施例7
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が5質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン50gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0079】
皮膚用粘着性フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが5mmとなるように注ぎ、当該トレーを冷凍室内に入れ、室温(約20℃)から-20℃まで平均冷却速度を-15℃/hに調節して冷却し、-20℃の温度を6時間維持した後、室温となるまで放置する操作を1サイクルとし、当該サイクルを5回行なうことにより、皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0080】
次に、前記で得られた皮膚用粘着性フィルムをトレーから取り出し、空気中で12時間放置することによって自然乾燥させ、厚さが約4.7mmの皮膚用粘着性フィルムを得た。
【0081】
前記で得られた皮膚用粘着性フィルムの剥離フィルムが付着している面は粘着性を有しており、他方の表面には粘着性が認められなかった。
【0082】
比較例1
平均重合度が1700であり、ケン化度が約80モル%であるポリビニルアルコールを濃度が5質量%となるように室温下で水に溶解させることにより、ポリビニルアルコール水溶液100gを得た。前記で得られたポリビニルアルコール水溶液100gとグリセリン10gとを混合することにより、フィルム形成材を得た。
【0083】
フィルムを形成させるための容器として内面の底面が平滑なポリプロピレン製のフィルム成形型(内面における長さ:100mm、幅:50mm、深さ:30mmの直方体)を用意し、当該トレー内の底面に剥離フィルムとしてポリエチレン製フィルム(長さ:90mm、幅:40mm、厚さ:1mm)を置き、前記で得られたフィルム形成材を深さが2mmとなるように注ぎ、当該トレーを機内温度が約60℃の乾燥機内に入れ、12時間乾燥させることにより、厚さが約1.8mmのフィルムを得た。前記で得られたフィルムの両面には粘着性が認められなかった。
【0084】
比較例2
従来のフィルムとして、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:30μm)がエチレン-酢酸ビニル樹脂フィルム(厚さ:10μm)の一方表面に形成されているフィルムを用意した。前記フィルムの粘着剤層に粘着性が認められた。
【0085】
比較例3
従来のフィルムとして、ヒドロキシエチルセルロースからなる水溶性フィルム(厚さ:約1.5mm)を用意した。前記フィルムには水溶性が認められたが、粘着性が認められなかった。
【0086】
次に、各実施例および各比較例で得られたフィルムを用いて以下の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0087】
(1)刺激性
各実施例および各比較例で得られたフィルムの剥離フィルムを剥がし、その面をヒトの手の甲に貼り付け、皮膚に対する刺激があるかどうかを確認し、以下の評価基準に基づいて皮膚に対する刺激性を評価した。
〔評価基準〕
◎:皮膚に対する刺激性が認められない。
△:皮膚に対する刺激性がやや認められる。
×:皮膚に対する刺激性が認められる。
【0088】
(2)粘着性
室温(約20℃)の空気中で各実施例および各比較例で得られたフィルムの剥離フィルムを剥がし、その面を清浄化されたヒトの手の甲に貼り付けた後、フィルムを手の甲から剥がす際にフィルムが手の甲に粘着しているかどうかを調べ、以下の評価基準に基づいて皮膚に対する皮膚に対する粘着性を評価した。
〔評価基準〕
◎:フィルムの一方表面が手の甲に粘着し、他方表面が手の甲に粘着しない。
×:フィルムの両表面がいずれも手の甲に粘着するか、またはフィルムの両表面がいずれも手の甲に粘着しない。
【0089】
(3)洗浄性
各実施例および各比較例で得られたフィルムの剥離フィルムを剥がし、その面をヒトの手の甲に貼り付けた後、洗面器に入れた約40℃の温水400mL中に手を浸し、他方の手でフィルムを軽く擦ることにより、フィルムの洗浄性を調べ、以下の評価基準に基づいて皮膚に対する洗浄性を評価した。
〔評価基準〕
◎:水で洗い流すことができる。
×:水で洗い流すことがでない。
【0090】
(4)使用性
各実施例および各比較例で得られたフィルムの剥離フィルムを剥がし、その面をヒトの手の甲に貼り付けるために水を必要とするかどうかを調べ、以下の評価基準に基づいて使用性を評価した。
〔評価基準〕
◎:ヒトの手の甲に貼り付けるために水を必要としない。
×:ヒトの手の甲に貼り付けるために水を必要とする。
××:ヒトの手の甲に貼り付けるために水を用いてもフィルムを手の甲に貼り付けることができない。
【0091】
(5)伸張性
各実施例および各比較例で得られたフィルムの剥離フィルムを剥がした後、当該フィルムの両端を左右の手の親指と人差し指でそれぞれ掴んで引っ張ることにより、フィルムの伸張性を調べ、以下の評価基準に基づいて伸張性を評価した。
〔評価基準〕
◎:フィルムの伸張性が優れている。
〇:フィルムの伸張性が良好である。
×:フィルムに伸張性が小さいかまたは伸張させたときにフィルムが容易に破壊する。
【0092】
(6)生分解性
各実施例および各比較例で得られたフィルムに生分解性を有する材料が使用されているかどうかを調べ、以下の評価基準に基づいて生分解性を評価した。
〔評価基準〕
◎:生分解性を有する材料が使用されている。
×:生分解性を有する材料が使用されていない。
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示された結果から、各実施例で得られた皮膚用粘着性フィルムは、いずれも、一方表面に皮膚に対する粘着性を有するが、他方の表面には粘着性を有しておらず、原料としてポリビニルアルコールが用いられているので生分解性に優れており、皮膚に対する刺激性が低く、洗浄性および使用性に優れていることがわかる。