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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128280
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】生麺又は調理麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220825BHJP
【FI】
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026732
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227489
【氏名又は名称】日東富士製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】羽立 只勝
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LA03
4B046LA05
4B046LA06
4B046LA10
4B046LB01
4B046LB20
4B046LC01
4B046LC02
4B046LG26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コシがあって良好な食感が保たれる生麺及び調理麺の製造方法を提供する。
【解決手段】生麺又は調理麺の製造方法は、小麦粉と、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種とを含む澱粉質原料100質量部に対して、水を30~70質量部を添加して生地を調製する生地調製工程と、前記生地を用いて製麺する製麺工程と、を含む。パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉は、平均粒径が20~100μmであることが好ましい。生麺又は調理麺は、中華麺、うどん、そうめん、冷むぎ、スパゲッティ、マカロニ、焼きそばの麺、ラザニエのいずれかとすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉と、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種とを含む澱粉質原料100質量部に対して、水を30~70質量部を添加して生地を調製する生地調製工程と、
前記生地を用いて製麺する製麺工程と、
を含むことを特徴とする生麺又は調理麺の製造方法。
【請求項2】
前記パン粉、前記クラッカ粉及び前記膨化穀粉は、平均粒径が20~100μmである請求項1に記載の生麺又は調理麺の製造方法。
【請求項3】
前記澱粉質原料100質量部中に、前記パン粉、前記クラッカ粉及び前記膨化穀粉のうち少なくとも1種を1~45質量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生麺又は調理麺の製造方法。
【請求項4】
前記生麺又は調理麺が、中華麺、うどん、そうめん、冷むぎ、スパゲッティ、マカロニ、焼きそばの麺、ラザニエから選ばれた1種である、請求項1乃至3のいずれかに記載の生麺又は、調理麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生麺又は調理麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、中華麺、うどん、そうめん、冷むぎ、スパゲッティ、マカロニ、焼きそばの麺、ラザニエなどの麺類は、食べたときの食感が重要とされている。すなわち、麺に適度なコシがある食感が好まれる傾向がある。
【0003】
このようなユーザの様々な食感の要求に応えるために、麺の食感を改善することが行われており、例えば、小麦粉を主体とする穀粉原料に、粒径が100μm超~1500μm以下のパン粉砕物を1~20質量%含有する原料粉を用いて製造したノンフライ即席麺が特許文献1に開示されている。
【0004】
また、製造における作業性の点では、麺の茹で上げ時間が短い方が好まれる傾向があり、例えば、特許文献2においては、穀粉又はデンプンを吸湿状態で加圧押出機によりノズルを介して大気中に押し出して膨化穀粉又は膨化デンプンを得、次いで該膨化穀粉又は膨化デンプンを粉砕したのち小麦粉と配合して常法に従って製麺する早茹で麺類の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4762256号
【特許文献2】特開平06-046781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば、スープ等に浸して提供される麺は、その調理が終了してからの時間が経過するにつれてスープの吸水量が増加して伸びるため、食感が低下する問題がある。
【0007】
ところで、麺の食感に「もちもち感」を付与することや、麺に透明感を付与すること等を目的として、麺の生地を作成する際に加水量を増やすことが行われている。このような高加水の麺においては、麺の伸び耐性が高いことが知られている。しかし、生地の加水量が増加するに伴って生地の強度が低下し、製麺性が損なわれる問題がある。
【0008】
また、例えば、煮込みうどんや、鍋料理が食された後のスープを利用して食されるうどんや、中華麺のように、麺が長時間煮込まれることが想定される料理においては、煮込まれる時間が長くなるにつれて麺のコシが失われ、例えば、箸で麺を掴み上げただけで切れてしまう問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、コシがあって良好な食感が保たれる生麺及び調理麺の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の生麺及び調理麺の製造方法は、小麦粉と、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種と、を含む澱粉質原料100質量部に対して、水を30~70質量部を添加して生地を調製する生地調製工程と、前記生地を用いて製麺する製麺工程と、を含むことを特徴としている。
【0011】
ここで、本明細書において、生麺とは、成形された麺が未加熱及び未乾燥状態のものをいう。生麺は、主に冷蔵又は常温で流通される。
【0012】
また、調理麺とは、生麺を茹で、蒸し等の加熱によって調理されたものをいう。調理麺は、そのまま食されることが可能あり、電子レンジ等の簡便な加熱機器による再加熱調理や、生麺の茹で時間よりも短縮された茹で時間で調理して食されることも可能である。
調理麺は、主に、常温、冷蔵又は、冷凍で流通される。
【0013】
本発明の生麺又は調理麺の製造方法によれば、小麦粉と、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種と、を含む澱粉質原料を用いて生麺及び調理麺を製造することにより、コシがあって良好な食感が保たれる生麺及び調理麺を製造することが可能となる。
【0014】
本発明の生麺又は調理麺の製造方法において、前記パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉は、平均粒径が20~100μmであることが好ましい。
【0015】
本発明の生麺又は、調理麺の製造方法において、前記澱粉質原料100質量部中に、前記パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種を1~45質量部含有することが好ましい。
【0016】
本発明の生麺又は、調理麺の製造方法において、前記生麺又は、調理麺が、中華麺、うどん、そうめん、冷むぎ、スパゲッティ、マカロニ類、焼きそばの麺、ラザニエから選ばれた1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の生麺又は、調理麺の製造方法によれば、コシがあって良好な食感が保たれる生麺及び調理麺を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の生麺又は調理麺の製造方法は、小麦粉と、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種(以下、微粉資材とも称する)と、を含む澱粉質原料100質量部に対して、水を30~70質量部を添加して生地を調製する生地調製工程と、この生地調製工程で調製した生地を用いて製麺する製麺工程と、を含む。なお、澱粉質原料は、小麦粉及び微粉資材の他に、例えば澱粉や、小麦粉以外の穀粉などを含まれていてもよい。
【0019】
原料に用いられる小麦粉としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、及びこれらの混合粉などを用いることができる。
【0020】
パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種は、澱粉質原料100質量部中に、1~45質量部含有するとよく、好ましくは、5~20質量部含有するとよく、さらに好ましくは、7~15質量部含有するとよい。尚、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉は、少なくともいずれか1種が原料に含まれていればよく、これらを複数種組み合わせて原料に含まれていてもよい。
【0021】
パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種が、1質量部よりも低いと、生麺又は調理麺のコシがあって良好な食感が保たれる効果が乏しくなり、45質量部を超えると、資材の固有の食感や食味が勝る傾向がある。
【0022】
パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉の平均粒径は、特に限定されないが、20~100μmが好ましく、30~90μmがより好ましく、40~80μmがさらに好ましい。これらの平均粒径が20μmよりも小さいと、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉を生成する際に摩擦熱が生じて変質し、生麺又は調理麺のコシがあって良好な食感が保たれる効果を得ることが困難となる傾向がある。また、平均粒径が、100μmよりも大きいとパン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉の食感が生麺又は、調理麺の食感に影響を及ぼす傾向がある。
【0023】
尚、本発明において、平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用いて乾式で測定された体積平均値(Mean V)として求めることができる。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置としては、例えばマイクロトラック粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社)等を用いることができる。
【0024】
パン粉は、パン粉又は、パン粉類似物を含む。パン粉は、パンを粉砕し細かくして作製されたものをいう。パン粉には、乾燥パン粉(水分約10~13%)、生パン粉(水分約35~38w/w%が標準)、セミドライパン粉(水分が約18w/w%から約28w/w%前後の調整品)、ブレダーパン粉(高周波式)、微粉パン粉(粒度は30~40メッシュ位)、ブレッドパウダー(粒度は80メッシュ位)、着色料を加えたカラーパン粉等が挙げられる。尚、パン粉は、例えば、小麦粉を混捏、発酵、焼成の後に粉砕して得られる。また、市販のパン粉を使用することもできる。
【0025】
また、クラッカ粉は、小麦粉を主原料として焼いて得られた膨化焼き菓子を粉状にしたものである。クラッカ粉は、クラッカを、例えばサイクロテック (FOSS製)によって粉砕し、必要に応じて所定の粒度に篩分けすることによって得ることができる。
【0026】
膨化穀粉は、例えば、二軸エクストルーダ等を用いて、穀粉を含む原料に加水し、これを高圧の雰囲気下で加熱混合した後、相対的に低圧の雰囲気下へ押し出して、即ち、所定の圧力の雰囲気下で加熱した後、その所定の圧力よりも低圧の雰囲気下へ押し出して膨化させ、その膨化物を粉砕することにより得ることができる。
【0027】
澱粉質原料に含有されうる澱粉としては、例えば小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、などの生澱粉や、それらの加工澱粉を用いることができる。加工澱粉としては、例えばα化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、架橋澱粉などが挙げられる。また、難消化性澱粉を含有していてもよい。
【0028】
また、上記のような澱粉質原料の他に、例えば食塩、かんすい、甘味料、香辛料、調味料、膨張剤、増粘剤、糖類、乳化剤、pH調整剤、アルコール、保存剤、着色料などを適宜配合することができる。
【0029】
生地調製工程において添加される水の量は、澱粉質原料100質量部に対して、30~70質量部とするとよく、好ましくは、30~60質量部添加されるとよく、さらに好ましくは、35~50質量部添加されるとよい。
【0030】
特に、従来の麺類又は調理麺の製造方法では、澱粉質原料100質量部に対する水の添加量が40質量部超えると、水の添加量に伴って生地の強度が低下する。このため、ロール製麺機等の機械で製麺する際には、多くても40台の前半の質量部の加水量でなければ、製麺することは困難である。
【0031】
また、手作業による製麺工程を含む、いわゆる手打ち及び手打ちを再現した手打ち風製麺機においては、機械で製麺した場合よりも水の添加量を多くして製麺することができる。このような場合においても、澱粉質原料100質量部に対する水の添加量が45質量部超えると、水の添加量に伴って生地の強度が低下する。このため、手打ち及び手打ち風製麺機で製麺する際には、多くても40台の後半の質量部の加水量でなければ、製麺することは困難である。
【0032】
上記の高加水域においては、特に、澱粉質原料100質量部に対する水の添加量は、40~70質量部とするとよく、好ましくは、45~65質量部添加されるとよく、さらに好ましくは、50~65質量部添加されるとよい。
【0033】
生地調製工程において添加される水の量が、澱粉質原料100質量部に対して、30質量部よりも少ないと、生地が繋がりにくい傾向や、食感が硬くなりすぎる傾向があり、70質量部を超えると、生地が軟化し成形性が低下する傾向がある。
【0034】
生地調製工程においては、これらの原料及び水を混錬して生地を調製することができる。尚、原料の混練は、例えば、横型ミキサー等の公知のミキサー等を用いて行うことができる。
【0035】
製麺工程は、例えば、生地調整工程で調製した生地をシート状に圧延して、包丁やスリッターによって切断、又は生地を押出成形することにより、麺線を形成する工程である。製麺工程は、例えばロール製麺機や、パスタ製造機などの公知の製麺機を用いて行うことができる。製麺工程を経ることによって、生麺を製造することができ、この生麺は、包装袋などに充填して、冷蔵又は常温で流通させることができ、冷凍して冷凍麺として流通させることもできる。
【0036】
また、調理麺は、上記で得た生麺を、茹でたり、蒸したりして、加熱調理することにより得ることができる。調理麺も包装袋や、包装容器などに充填して、冷蔵又は常温で、あるいは冷凍して流通させることができる。なお、本発明は、油揚げ麺、熱風乾燥麺などの即席麺や、乾麺は対象としていない。
【0037】
尚、本発明の生麺又は調理麺は、例えば、中華麺、うどん、そうめん、冷むぎ、スパゲッティ、マカロニ類、焼きそばの麺、ラザニエなどの麺類に適用することができる。
【0038】
本発明の生麺又は調理麺は、それぞれの麺の種類に応じた方法で調理することによって食される。本発明の生麺又は調理麺は、パン粉、クラッカ粉及び膨化穀粉のうち少なくとも1種を含有することにより、茹揚げ時間を短くすることができる。
【0039】
また、加水量を多くしても生地がべた付きにくくなり、製麺性を良好に維持することができる。このため、通常よりも加水量の多い麺を製造できると共に、それによって茹伸びがしにくい麺を得ることができる。また、電子レンジで加熱調理しても、良好な食感が得られるので、電子レンジ加熱調理用の麺としても適している。
【実施例0040】
以下に、本発明を更に具体的に説明するために実施例を挙げる。
【0041】
[試験例1](中華麺の加水量に応じた食感試験)
(中華麺の調製)
原料である澱粉質原料の配合を小麦粉のみで調製した中華麺を対照群1とし、原料である澱粉質原料を小麦粉及びパン粉を表1に示す量で配合し、生地の加水量が互いに異なる中華麺を実施例1乃至3として作成した。
【0042】
小麦粉は、準強力粉を用いた。
パン粉は、焙焼パン粉微粉砕物を用いた。焙焼パン粉微粉砕物は、焙焼微粉パン粉30メッシュを超遠心粉砕機ZM-200(Retsch社製)を使用して平均径65μmとなるよう更に微粉砕化して得た。
【0043】
実施例1乃至3の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、パン粉を7.0質量部とした。これらが均一に混合された澱粉質原料に、水を加え、中華麺を作成した。
【0044】
実施例1の加水量は、原料である澱粉質原料100質量部に対して41.0質量部とした。実施例2の加水量は、原料である澱粉質原料100質量部に対して44.0質量部とした。実施例3の加水量は、原料である澱粉質原料100質量部に対して47.0質量部とした。
【0045】
尚、対照群1及び実施例1乃至3には、かん水及び食塩を添加した。かん水は、澱粉質原料100質量部に対して1.5質量部を添加し、食塩は、澱粉質原料100質量部に対して0.5質量部を添加した。
【0046】
生地調製工程は、V-967型横型ミキサー(トーキョーメンキ株式会社製)を用いて行った。また、製麺工程は、V-825型ロール製麺機(トーキョーメンキ株式会社製)を用いて行った。対照群1及び実施例1乃至3の中華麺の麺線は切歯#16角、麺厚1.6mmとした。
【0047】
対照群1及び実施例1乃至3の中華麺は、1食あたり生麺で130gとして調製した。茹で時間は、社内の熟練したパネラーが麺線を沸騰水に投入してから、茹で上がりの状態を見て最適な時間を判断した。
【0048】
社内の熟練したパネラー10名が対照群1及び実施例1乃至4を喫食し、対照群1を基準(5点)として食感を点数と共に評価した。点数は、食感が硬いものを1点とし、非常にもっちりとした食感を10点とした。以下の表1にその評価を示す。尚、以下の全ての表に示されている点数以外の数値は、質量部である。例えば、加水量は、澱粉質原料100質量部に対する質量部を示している。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示されるように、実施例1乃至3は、対照群1よりも加水量が多いにも関わらず、良好な生地の状態であり、かつ対照群よりももっちりとした食感であった。実施例1乃至3は、対照群1よりも茹で時間が短くなった。
【0051】
[試験例2](電子レンジによる再加熱後の調理麺の食感)
試験例1と同一の態様で対照群1及び実施例1乃至4の中華麺を作成した。実施例4の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、パン粉を7.0質量部とした。実施例4の加水量は、原料である澱粉質原料100質量部に対して38.0質量部とした。茹で時間は沸騰水に麺線を投入してから、最適時間の約8割の時間で茹でた。茹で上がった麺を冷水でしめて乾燥しないよう常温にて密閉容器内で2時間保存した。その後、20℃のスープと合わせ、ラップフィルムで食器ごと包み、電子レンジで500Wで6分加熱して喫食した。
【0052】
また、試験例1と同一の態様で生地状態の評価を行った。尚、茹で上げ直後の食感と、本試験において食した際の食感を比較した茹で伸び評価をした。ここで、茹で上げ直後の食感に近い評価を「茹で伸びが遅い」とし、茹で上げ直後の食感から遠くなるにつれて「茹で伸びが早い」とした。食感の評価は、茹で伸び早いものを1点とし、茹でのび遅いものを10点とした。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示されるように、パン粉を添加した実施例4は、対照群1と同一の加水量であるにもかかわらず食感を硬めであり、かつ対照群1よりも「茹で伸びが遅い」食感であった。また、実施例1乃至3は、対照群1よりも加水量が多いにも関わらず、良好な生地の状態であり、かつ対照群1よりも「茹で伸びが遅い」食感であった。したがって、調理麺が電子レンジによって再加熱調理された際の「茹で伸びが早く」なる傾向を抑えることができた。
【0055】
[試験例3](平均粒径)
試験例1と同一の態様で対照群1、比較例1及び実施例3、5、6の中華麺を作成した。表3に示されるように、対照群1、比較例1及び実施例3、5、6の澱粉質原料の配合は、試験例1と同一とした。尚、比較例1のパン粉の平均粒径は、120μmとした。実施例5のパン粉の平均粒径は、95μmとした。実施例6のパン粉の平均粒径は、40μmとした。
【0056】
比較例1の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して43.0質量部とした。実施例5の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して46.0質量部とした。実施例6の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して48.0質量部とした。
【0057】
また、試験例1と同一の態様で生地状態及び食感の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示されるように、平均粒径が100μm以下のパン粉が添加された実施例3、5、6は、対照群1及び比較例1よりももっちりとした食感であった。実施例3、5、6は、対照群1よりも茹で時間が短くなった。
【0060】
[試験例4](加水量)
試験例1と同一の態様で対照群1、実施例3、7~9及び比較例2の中華麺を作成した。表4に示されるように、実施例7の澱粉質原料の配合は、小麦粉を97.0質量部、パン粉を3.0質量部とした。実施例8の澱粉質原料の配合は、小麦粉を85.0質量部、パン粉を15.0質量部とした。実施例9の澱粉質原料の配合は、小麦粉を60.0質量部、パン粉を40.0質量部とした。比較例2の澱粉質原料の配合は、小麦粉を40.0質量部、パン粉を60.0質量部とした。
【0061】
実施例7の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して40.0質量部とした。実施例8の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して54.0質量部とした。実施例9の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して65.0質量部とした。比較例2の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して72.0質量部とした。
【0062】
また、試験例1と同一の態様で生地状態及び食感の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
表4に示されるように、パン粉を添加した実施例7は、対照群1に近い加水量であるにもかかわらず食感を「わずかにもっちり」にすることができた。また、実施例3,8及び9は、対照群1よりも加水量が多く、対照群1よりも「もっちり」した食感であった。実施例3、7乃至9は、対照群1よりも茹で時間が短くなった。また、比較例2は、生地が団子状になり、かつ生地のべたつきが多く、製麺することができなかった。
【0065】
[試験例5](微粉資材の種類)
試験例1と同一の態様で対照群1及び実施例3、10乃至12の中華麺を作成した。尚、実施例10は、パン粉に代えてクラッカ粉を添加した。実施例11は、パン粉に代えて膨化穀粉(小麦粉を膨化して粉砕したもの)(以下、膨化穀粉1とも称する)を添加した。実施例12は、パン粉に代えて膨化穀粉(小麦ととうもろこしの膨化穀粉)(以下、膨化穀粉2とも称する)を添加した。
【0066】
また、パン粉、クラッカ粉、膨化穀粉1及び膨化穀粉2は、粒度が粗いものは超遠心粉砕機ZM-200(Retsch社製)を使用して平均粒径が65μmとなるよう更に微粉砕化したものを用いた。
【0067】
表5に示されるように、実施例10の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、クラッカ粉を7.0質量部とした。実施例11の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、膨化穀粉1を7.0質量部とした。実施例12の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、膨化穀粉2を7.0質量部とした。
【0068】
また、試験例1と同一の態様で生地状態及び食感の評価を行った。その結果を表5に示す。尚、表5の微粉資材は、パン粉、クラッカ粉、膨化穀粉1及び膨化穀粉2である。
【0069】
【表5】
【0070】
表5に示されるように、微粉資材の種類によらず、微粉資材を添加した実施例3,10乃至12は、対照群1よりももっちりとした食感であった。また、実施例3,10乃至12は、対照群1よりも短い茹で時間であった。
【0071】
[試験例6](茹で調理後のうどん麺の伸び試験)
澱粉質原料の配合を小麦粉のみで調製したうどんを対照群2とした。対照群2の加水量は、33.0とした。また、澱粉質原料として、小麦粉及びパン粉を表6に示す量で配合したうどんを実施例13及び14として作成した。
【0072】
小麦粉は、中力粉を用いた。パン粉は、焙焼パン粉微粉砕物を用いた。焙焼パン粉微粉砕物は、焙焼微粉パン粉30メッシュを超遠心粉砕機ZM-200(Retsch社製)を使用して平均径65μmとなるよう更に微粉砕化して得た。
【0073】
実施例13の澱粉質原料の配合は、小麦粉を95.0質量部、パン粉を5.0質量部とした。実施例14の澱粉質原料の配合は、小麦粉を90.0質量部、パン粉を10.0質量部とした。これらが均一に混合された澱粉質原料に、水を加え、うどんの麺を作成した。
【0074】
実施例13及び14の加水量は、原料である澱粉質原料100質量部に対して33.0質量部とした。
【0075】
生地調製工程は、V-967型横型ミキサー(トーキョーメンキ株式会社製)を用いて行った。また、製麺工程は、V-825型ロール製麺機(トーキョーメンキ株式会社製)を用いて行った。
【0076】
対照群2及び実施例13及び14のうどんの麺は、切歯#10角、麺厚3.0mmとした。また、対照群2及び実施例13及び14のうどんの麺は、1食あたり生麺で130gとして調製した。
【0077】
(麺を煮込んだ際の強度試験)
以下の要領で茹で工程及び麺の強度評価を行い、麺を煮込んだ際の強度試験をした。その結果を表6に示す。
茹で工程:沸騰水に麺線を投入して、食することが可能となる20分間茹でてから取り出し、ホットプレートで80℃に加熱中の汁中で更に20分茹でた。
強度評価:茹で工程を経た、麺線を箸で掴んで10本掴んで1本も切れない場合は◎、1~2本切れた場合は〇、3本以上切れた場合を×とした。
【0078】
【表6】
【0079】
表6に示されるように、パン粉を添加した実施例13は、対照群2と同一の加水量であるにもかかわらず、麺の伸び強度が対照群2よりも高いことが確認された。また、実施例14は、対照群2と同一の加水量であるにもかかわらず、麺の伸び強度が対照群2及び実施例13よりも高いことが確認された。
【0080】
[試験例7](うどんの調製)
澱粉質原料の配合を小麦粉のみで調製したうどんを対照群3とし、澱粉質原料を小麦粉及びパン粉を表7に示す量で配合したうどんを実施例15として作成した。対照群3及び実施例15の小麦粉は、試験例6と同一のものを用いた。
【0081】
実施例15の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、パン粉を7.0質量部とした。うどんの麺は、試験例6と同様に作成した。
【0082】
茹で時間は、社内の熟練したパネラーが麺線を沸騰水に投入してから、茹で上がりの状態を見て最適な時間を判断した。社内の熟練した10名のパネラーがうどんを喫食し、対照群を基準(5点)として食感の評価を行った。食感の評価は、コシがないものを1点とし、良好なコシがあるものを10点とした。以下の表7にその評価を示す。
【0083】
【表7】
【0084】
表7に示されるように、パン粉を添加した実施例15は、対照群3よりもコシがあることがわかった。また、実施例15は、茹で時間も対照群3よりも短いことがわかった。
【0085】
[試験例8](スパゲティの調製)
澱粉質原料の配合を小麦粉のみで調製したスパゲティを対照群4とし、澱粉質原料を小麦粉及び、パン粉を表8に示す量で配合したスパゲティを実施例16として作成した。対照群4及び実施例16の小麦粉は、デュラム小麦粉を用いた。
【0086】
実施例16の澱粉質原料の配合は、小麦粉を93.0質量部、パン粉を7.0質量部とした。これらが均一に混合された澱粉質原料に、水を加え、スパゲティを作成した。対照群4及び実施例16のスパゲッティの麺は、切歯#8角、麺厚1.8mmとした。また、対照群4及び実施例16のスパゲッティの麺は、1食あたり生麺で130gとして調製した。
【0087】
茹で時間は、社内の熟練したパネラーが麺線を沸騰水に投入してから、茹で上がりの状態を見て最適な時間を判断した。食感の評価は、試験例7と同一の態様で行った。その結果を表8に示す。
【0088】
【表8】
【0089】
表8に示されるように、パン粉を添加した実施例16は、対照群4よりもコシがあることがわかった。また、実施例16は、茹で時間も対照群4よりも短いことがわかった。
【0090】
[試験例9](製麺試験)
試験例1と同一の態様で対照群5及び実施例8の中華麺を作成した。表9に示されるように、対照群5及び実施例8の加水量は、澱粉質原料100質量部に対して54.0質量部とした。
【0091】
対照群5及び実施例8に対して、下記の態様にて製麺可否の評価を行った。その結果を表9に示す。
〇:製麺機を用いて不具合なく製麺できた。
×:生地にべたつきがあり、製麺機に生地が付着する等の不具合が生じた。
【0092】
【表9】
【0093】
表9に示すように、対照群5は、生地が団子状になり、またべたつきが多く製麺機に生地が付着して、製麺することができなかった。これに対して、実施例8は、生地が固まることなく製麺機で製麺することができた。