(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012830
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】車両用複合アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20220107BHJP
H01Q 5/314 20150101ALI20220107BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20220107BHJP
H01Q 9/30 20060101ALI20220107BHJP
H01Q 5/10 20150101ALI20220107BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20220107BHJP
H04B 1/18 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
H01Q5/314
H01Q9/16
H01Q9/30
H01Q5/10
H01Q1/24 Z
H04B1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114945
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳
【テーマコード(参考)】
5J047
5K062
【Fターム(参考)】
5J047AA07
5J047AB12
5J047EB01
5J047FD03
5K062AB02
5K062AC01
5K062BA01
5K062BB04
(57)【要約】
【課題】小型化できると共に複数の周波数帯域間のアイソレーションも高い車両用複合アンテナ装置を提供する。
【解決手段】車両用複合アンテナ装置のアンテナ部1は、共通トップ容量部10と、第1インダクタ部11と、第2インダクタ部12と、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21と、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22と、アンテナ部側共通コネクタ30と、制御信号分離部40とからなる。アンテナ部側共通コネクタ30は、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号を重畳し通信機部2側へ伝達する。制御信号分離部40は、アンテナ部側共通コネクタ30に重畳されるスイッチ用制御信号をアンテナ部側共通コネクタ30から分離し、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22へ入力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯の信号を受信可能な車両用複合アンテナ装置であって、該車両用複合アンテナ装置は、
車両の外側に配置され複数の周波数帯の信号を受信可能に構成されるアンテナ部と、
車両の内側に配置され、前記アンテナ部により受信される複数の周波数帯の信号を抽出する通信機部と、
を具備し、
前記アンテナ部は、
第1周波数帯用のエレメントの一部として機能すると共に、第1周波数帯に近接し第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用のエレメントの一部としても機能する共通トップ容量部と、
前記共通トップ容量部と第1周波数帯用の第1給電部との間に接続され、第1周波数帯用のエレメントの一部として機能する第1インダクタ部と、
前記共通トップ容量部又は第1インダクタ部と第2周波数帯用の第2給電部との間に接続され、第2周波数帯用のエレメントの一部として機能する第2インダクタ部と、
前記第1給電部からの第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なアンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部と、
前記第2給電部からの第2周波数帯の信号をオンオフ制御可能なアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部と、
前記アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部からの第1周波数帯の信号及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部からの第2周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達するためのアンテナ部側共通コネクタと、
前記アンテナ部側共通コネクタに重畳されるスイッチ用制御信号をアンテナ部側共通コネクタから分離し、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部へ入力する制御信号分離部と、
を具備し、
前記通信機部は、
アンテナ部側共通コネクタに嵌合する通信機部側共通コネクタと、
前記スイッチ用制御信号を通信機部側共通コネクタに重畳する制御信号重畳部と、
を具備する、
ことを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部は、さらに、
前記アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部からの第1周波数帯の信号を通過させるアンテナ部側第1周波数帯信号通過部と、
前記アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部からの第2周波数帯の信号を通過させるアンテナ部側第2周波数帯信号通過部と、
を具備することを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用複合アンテナ装置において、前記通信機部は、さらに、
前記通信機部側共通コネクタからの第1周波数帯の信号を通過させる通信機部側第1周波数帯信号通過部と、
前記通信機部側共通コネクタからの第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯信号通過部と、
前記通信機部側第1周波数帯信号通過部からの第1周波数帯の信号を増幅する第1周波数帯用アンプと、
前記通信機部側第2周波数帯信号通過部からの第2周波数帯の信号を増幅する第2周波数帯用アンプと、
前記第1周波数帯用アンプ及び第2周波数帯用アンプからの第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号を受信するチューナ部と、
を具備することを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部の第2インダクタ部は、共通トップ容量部と第2給電部との間に接続されることを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部の第2インダクタ部は、第1インダクタ部と第2給電部との間に接続されることを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部の第2給電部は、第2周波数帯よりも低い第3周波数帯用の第3給電部としても機能し、
前記アンテナ部側共通コネクタは、第3給電部からの第3周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達する、
ことを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部は、さらに、
前記アンテナ部の第2給電部と第2周波数帯よりも低い第3周波数帯用の第3給電部との間に接続され、第3周波数帯用のエレメントの一部としても機能する第3インダクタ部を具備し、
前記アンテナ部側共通コネクタは、第3給電部からの第3周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達する、
ことを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部は、さらに、前記第3給電部からの第3周波数帯の信号を増幅するアンテナ部側第3周波数帯用アンプを具備することを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の車両用複合アンテナ装置において、前記通信機部は、さらに、前記通信機部側共通コネクタからの第3周波数帯の信号を増幅する通信機部側第3周波数帯用アンプを具備することを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部は、さらに、アンテナ部側共通コネクタに第3周波数帯の信号が到達し、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号が到達しないように制御可能なアイソレーション用スイッチ部を有することを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項11】
請求項3乃至請求項10の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記通信機部側第1周波数帯信号通過部は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第1周波数帯用スイッチ部と、第1周波数帯の信号を通過させる通信機部側第1周波数帯用フィルタ部と、からなり、
前記通信機部側第2周波数帯信号通過部は、第2周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第2周波数帯用スイッチ部と、第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯用フィルタ部と、からなる
ことを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項12】
請求項3乃至請求項8の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記通信機部側第1周波数帯信号通過部は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第1周波数帯用スイッチ部と、第1周波数帯の信号を通過させる通信機部側第1周波数帯用フィルタ部と、からなり、
前記通信機部側第2周波数帯信号通過部は、第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯用フィルタ部と、からなる
ことを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項13】
請求項3乃至請求項8の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記通信機部側第1周波数帯信号通過部は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第1周波数帯用スイッチ部と、からなり、
前記通信機部側第2周波数帯信号通過部は、第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯用フィルタ部と、からなる
ことを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13の何れかに記載の車両用複合アンテナ装置において、前記アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部及び/又はアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部は、
直列に接続される第1コンデンサ及び第2コンデンサと、
第1コンデンサ及び第2コンデンサの間に直列に接続される第1PINダイオードと、
第2コンデンサと第1PINダイオードとの間に並列に接続され、スイッチ用制御信号が入力されるコイルと、
第1コンデンサと第1PINダイオードとの間と、グラウンドとの間に接続される、第2PINダイオードと抵抗の直列回路と、
からなることを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【請求項15】
請求項14に記載の車両用複合アンテナ装置において、前記直列回路の第2PINダイオードは、直列接続される2つのPINダイオードからなることを特徴とする車両用複合アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用複合アンテナ装置に関し、特に、複数の周波数帯の信号を受信可能で小型化に適した車両用複合アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の周波数帯の信号を受信可能な複合アンテナは存在する。複合アンテナは、アンテナ素子を配置するスペースに特に問題がなければある程度自由に設計可能である。しかしながら、例えば車両に搭載可能な低背型の車両用複合アンテナ装置の場合、高さ制限やケース内の小さいスペースにアンテナや周辺回路を収めなければいけない等、種々の制限がある。したがって、小型の車両用複合アンテナ装置では、十分なアンテナ性能を得るのが難しかった。さらに、近年の車両には安全性や快適性を求め様々な情報機器の搭載が進められている。それに伴い、種々の周波数帯の信号を用いる必要があり、各周波数帯に適したアンテナ素子を複数設ける必要がある。低背型のアンテナ装置のケース内のスペースが小さい場合、各アンテナ素子は互いに近い距離に配置されることになるため、アンテナ素子同士が影響し合うアイソレーションの問題があった。特にFM周波数帯とDAB(Band-III)の周波数帯のように周波数帯が近い場合には、アイソレーションの問題が大きかった。これは、アイソレーションが低いと一方の性能を上げると他方の性能が下がるといったように、アンテナ性能の調整がトレードオフの関係になるためである。
【0003】
このような問題を解決するために、特許文献1には、アンテナ素子となる同調コイル部を複数の周波数帯で共用することで小型化が可能で、同調コイル部と給電部の間にスイッチを設けることでアイソレーションを高めた複合アンテナ装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、FM波帯を細分化した周波数幅でのみ共振する狭帯域アンテナの複数のタップが設けられたコイルエレメントから、スイッチング素子を切り替えて所定の周波数帯の信号を受信するアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-133692号公報
【特許文献2】特開2019-047415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の車両用複合アンテナ装置に対する小型化・軽量化の要望はさらに高まっている。従来の特許文献1や特許文献2の装置では、複数の周波数帯の信号それぞれに対応する出力を、ケーブルを介して通信機(受信機)に接続して受信していた。車両ルーフには、複数の出力に対応する複数のケーブルを通すために大きな孔を開ける必要があった。車両ルーフに開けられる孔が大きくなると、構造上の問題や車両ルーフへの組み付け上の問題が生じ得る。
【0007】
このような問題を生じ得るケーブルを排し、コネクタにより車両用複合アンテナ装置と通信機を直接接続することも考えられる。しかしながら、複数の周波数帯の信号それぞれに対応する複数のピンを有するコネクタは大きくなり、回路基板上で占有する面積が増加し得る。アンテナ装置の小型化に伴い回路基板も小型化しているため、低雑音アンプ回路等、ある程度の設置面積が必要なものと共に大型のコネクタを回路基板上に設置するのは困難となっていた。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、小型化できると共に複数の周波数帯域間のアイソレーションも高い車両用複合アンテナ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による車両用複合アンテナ装置は、車両の外側に配置され複数の周波数帯の信号を受信可能に構成されるアンテナ部と、車両の内側に配置され、アンテナ部により受信される複数の周波数帯の信号を抽出する通信機部と、を具備するものである。ここで、アンテナ部は、第1周波数帯用のエレメントの一部として機能すると共に、第1周波数帯に近接し第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用のエレメントの一部としても機能する共通トップ容量部と、共通トップ容量部と第1周波数帯用の第1給電部との間に接続され、第1周波数帯用のエレメントの一部として機能する第1インダクタ部と、共通トップ容量部又は第1インダクタ部と第2周波数帯用の第2給電部との間に接続され、第2周波数帯用のエレメントの一部として機能する第2インダクタ部と、第1給電部からの第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なアンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部と、第2給電部からの第2周波数帯の信号をオンオフ制御可能なアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部と、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部からの第1周波数帯の信号及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部からの第2周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達するためのアンテナ部側共通コネクタと、アンテナ部側共通コネクタに重畳されるスイッチ用制御信号をアンテナ部側共通コネクタから分離し、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部へ入力する制御信号分離部と、を具備するものであれば良い。また、通信機部は、アンテナ部側共通コネクタに嵌合する通信機部側共通コネクタと、スイッチ用制御信号を通信機部側共通コネクタに重畳する制御信号重畳部と、を具備するものであれば良い。
【0010】
ここで、アンテナ部は、さらに、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部からの第1周波数帯の信号を通過させるアンテナ部側第1周波数帯信号通過部と、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部からの第2周波数帯の信号を通過させるアンテナ部側第2周波数帯信号通過部と、を具備するものであっても良い。
【0011】
通信機部は、さらに、通信機部側共通コネクタからの第1周波数帯の信号を通過させる通信機部側第1周波数帯信号通過部と、通信機部側共通コネクタからの第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯信号通過部と、通信機部側第1周波数帯信号通過部からの第1周波数帯の信号を増幅する第1周波数帯用アンプと、通信機部側第2周波数帯信号通過部からの第2周波数帯の信号を増幅する第2周波数帯用アンプと、第1周波数帯用アンプ及び第2周波数帯用アンプからの第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号を受信するチューナ部と、を具備するものであっても良い。
【0012】
また、アンテナ部の第2インダクタ部は、共通トップ容量部と第2給電部との間に接続されるものであっても良い。
【0013】
また、アンテナ部の第2インダクタ部は、第1インダクタ部と第2給電部との間に接続されるものであっても良い。
【0014】
また、アンテナ部の第2給電部は、第2周波数帯よりも低い第3周波数帯用の第3給電部としても機能し、アンテナ部側共通コネクタは、第3給電部からの第3周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達するものであっても良い。
【0015】
また、アンテナ部は、さらに、アンテナ部の第2給電部と第2周波数帯よりも低い第3周波数帯用の第3給電部との間に接続され、第3周波数帯用のエレメントの一部としても機能する第3インダクタ部を具備し、アンテナ部側共通コネクタは、第3給電部からの第3周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達するものであっても良い。
【0016】
また、アンテナ部は、さらに、第3給電部からの第3周波数帯の信号を増幅するアンテナ部側第3周波数帯用アンプを具備するものであっても良い。
【0017】
また、通信機部は、さらに、通信機部側共通コネクタからの第3周波数帯の信号を増幅する通信機部側第3周波数帯用アンプを具備するものであっても良い。
【0018】
また、アンテナ部は、さらに、アンテナ部側共通コネクタに第3周波数帯の信号が到達し、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号が到達しないように制御可能なアイソレーション用スイッチ部を有するものであっても良い。
【0019】
また、通信機部側第1周波数帯信号通過部は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第1周波数帯用スイッチ部と、第1周波数帯の信号を通過させる通信機部側第1周波数帯用フィルタ部と、からなり、通信機部側第2周波数帯信号通過部は、第2周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第2周波数帯用スイッチ部と、第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯用フィルタ部と、からなるものであっても良い。
【0020】
また、通信機部側第1周波数帯信号通過部は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第1周波数帯用スイッチ部と、第1周波数帯の信号を通過させる通信機部側第1周波数帯用フィルタ部と、からなり、通信機部側第2周波数帯信号通過部は、第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯用フィルタ部と、からなるものであっても良い。
【0021】
また、通信機部側第1周波数帯信号通過部は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能な通信機部側第1周波数帯用スイッチ部と、からなり、通信機部側第2周波数帯信号通過部は、第2周波数帯の信号を通過させる通信機部側第2周波数帯用フィルタ部と、からなるものであっても良い。
【0022】
また、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部及び/又はアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部は、直列に接続される第1コンデンサ及び第2コンデンサと、第1コンデンサ及び第2コンデンサの間に直列に接続される第1PINダイオードと、第2コンデンサと第1PINダイオードとの間に並列に接続され、スイッチ用制御信号が入力されるコイルと、第1コンデンサと第1PINダイオードとの間と、グラウンドとの間に接続される、第2PINダイオードと抵抗の直列回路と、からなるものであれば良い。
【0023】
また、直列回路の第2PINダイオードは、直列接続される2つのPINダイオードからなるものであっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車両用複合アンテナ装置には、小型化できると共に複数の周波数帯域間のアイソレーションも高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の車両用複合アンテナ装置を説明するための概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の車両用複合アンテナ装置のアンテナ部の他の例を説明するための概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の車両用複合アンテナ装置のアンテナ部のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の車両用複合アンテナ装置の通信機部の詳細を説明するための概略構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の車両用複合アンテナ装置の他の例を説明するための概略構成図である。
【
図6】
図6は、本発明の車両用複合アンテナ装置のアンテナ部のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図7】
図7は、本発明の車両用複合アンテナ装置に第3周波数帯用アンプを設けた例を説明するための概略構成図である。
【
図8】
図8は、本発明の車両用複合アンテナ装置に第3周波数帯用アンプを設けた他の例を説明するための概略構成図である。
【
図9】
図9は、本発明の車両用複合アンテナ装置の通信機部において第2周波数帯の信号受信性能を高める例を説明するための概略構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の車両用複合アンテナ装置の通信機部において第2周波数帯の信号受信性能を高める他の例を説明するための概略構成図である。
【
図11】
図11は、本発明の車両用複合アンテナ装置に用いられるスイッチ部の回路図である。
【
図12】
図12は、本発明の車両用複合アンテナ装置に用いられるスイッチ部の他の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。本発明の車両用複合アンテナ装置は、複数の周波数帯の信号を受信可能なものである。
図1は、本発明の車両用複合アンテナ装置を説明するための概略構成図である。図示の通り、本発明の車両用複合アンテナ装置は、主にアンテナ部1と通信機部2とからなる。図示例は、本発明の車両用複合アンテナ装置を2波に対応させた例である。
【0027】
アンテナ部1は、車両の外側に配置されるものである。具体的には、例えば車両ルーフ上に配置される低背型アンテナ装置である。アンテナ部1は、複数の周波数帯の信号を受信可能に構成されている。即ち、アンテナ部1は、複合エレメントを有している。
【0028】
通信機部2は、車両の内側に配置されるものである。具体的には、例えば車両ルーフを介してアンテナ部1の直下に配置されるものである。通信機部2は、アンテナ部1により受信される複数の周波数帯の信号を抽出するものである。
【0029】
以下、アンテナ部1の詳細について具体的に説明する。図示の通り、アンテナ部1は、共通トップ容量部10と、第1インダクタ部11と、第2インダクタ部12と、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21と、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22と、アンテナ部側共通コネクタ30と、制御信号分離部40とから主に構成されている。
【0030】
第1周波数帯用のエレメントは、共通トップ容量部10と、第1インダクタ部11とからなる。ここで、第1周波数帯とは、具体的には、例えばDAB(Band-III)用の周波数帯である。
【0031】
また、
図1に示される第2周波数帯用のエレメントは、共通トップ容量部10と、第1インダクタ部11と、第2インダクタ部12とからなる。ここで、第2周波数帯とは、第1周波数帯に近接し第1周波数帯よりも低い周波数帯である。具体的には、例えばFM用の周波数帯である。図示の通り、第2インダクタ部12は、第1インダクタ部12と第2給電部14との間に接続されている。このように構成されると、第2周波数帯用のエレメントは、共通トップ容量部10と第1インダクタ部11と第2インダクタ部12の直列回路となり、第1周波数帯用のエレメントを共用する分、第2インダクタ部12のコイルの巻き数を減らすことが可能となる。したがって、省スペース化が可能となる。
【0032】
即ち、共通トップ容量部10は、第1周波数帯用のエレメントの一部として機能すると共に、第2周波数帯用のエレメントの一部としても機能するものである。そして、第1インダクタ部11は、共通トップ容量部10と第1周波数帯用の第1給電部13との間に接続され、第1周波数帯用のエレメントの一部として機能するものである。また、第2インダクタ部12は、共通トップ容量部10と第2周波数帯用の第2給電部14との間に接続され、第2周波数帯用のエレメントの一部として機能するものである。
【0033】
なお、第1インダクタ部11や第2インダクタ部12は、図示例ではコイルとして示したが、本発明はこれに限定されず、インダクタ成分を有するものであれば、例えば回路基板上にパターンニング形成されたメアンダパターン等により提供されても良い。また、第1インダクタ部11は、図示例では1つのコイルで構成される例を示したが、本発明はこれに限定されず、複数のコイルを組み合わせて構成されても良い。
【0034】
また、共通トップ容量部10は、容量装荷アンテナとして機能するものである。共通トップ容量部30により静電容量を持たせることで、第1周波数帯用のエレメントや第2周波数帯用のエレメントを短縮している。
【0035】
アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21は、第1給電部13からの第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。即ち、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21は、第1周波数帯の信号をアンテナ部側共通コネクタ30へ伝達するか否かを制御するスイッチである。
【0036】
アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22は、第2給電部14からの第2周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。即ち、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22は、第2周波数帯の信号をアンテナ部側共通コネクタ30へ伝達するか否かを制御するスイッチである。
【0037】
ここで、第1周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオンにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御すれば良い。また、第2周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオフにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオンに制御すれば良い。また、通信機部2側で分波可能であれば、必要によりアンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22を共にオンにすることも可能である。
【0038】
アンテナ部側共通コネクタ30は、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21からの第1周波数帯の信号及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22からの第2周波数帯の信号を重畳し通信機部側へ伝達するためのものである。アンテナ部側共通コネクタ30は、後述の通信機部側共通コネクタ31に嵌合する。アンテナ部側共通コネクタ30は、具体的には、例えば多極同軸コネクタ等であれば良い。
【0039】
制御信号分離部40は、スイッチ用制御信号をアンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22へ入力するものである。スイッチ用制御信号は、アンテナ部側共通コネクタ30に重畳されており、制御信号分離部40を用いてアンテナ部側共通コネクタ30からスイッチ用制御信号を分離する。スイッチ用制御信号は、具体的には、例えば直流電圧値によるものであれば良い。そして、図示の通り、制御信号分離部40は、具体的には、例えばコンデンサとコイルからなる回路であれば良い。制御信号分離部40のコンデンサは、アンテナ部側共通コネクタ30に直列に接続され、直流電圧であるスイッチ用制御信号がエレメント側に流れないように分離するものである。また、制御信号分離部40のコイルは、アンテナ部側共通コネクタ30に並列に接続され、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号が、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22の制御端子側に流れないように分離するものである。
【0040】
そして、通信機部2は、通信機部側共通コネクタ31と、制御信号重畳部41とから主に構成される。そして、通信機部2は、例えば後述のチューナ部50を用いてアンテナ部1により受信される複数の周波数帯の信号を抽出する。
【0041】
通信機部側共通コネクタ31は、アンテナ部側共通コネクタ30に嵌合するものである。通信機部側共通コネクタ31は、アンテナ部側共通コネクタ30を介してアンテナ部1で受信した第1周波数帯の信号や第2周波数帯の信号を通信機部2側に伝達するものである。また、通信機部側共通コネクタ31を介してアンテナ部1にスイッチ用制御信号を伝達する。即ち、本発明の車両用複合アンテナ装置は、複数の周波数帯の信号及びスイッチ用制御信号をすべて、アンテナ部側共通コネクタ30及び通信機部側共通コネクタ31に集約して伝達するように構成されている。アンテナ部側共通コネクタ30が例えば多極同軸コネクタであれば、通信機部側共通コネクタ31もそれに応じて嵌合する多極同軸コネクタであれば良い。なお、本明細書中では、アンテナ部側共通コネクタ30及び通信機部側共通コネクタ31は、1ポートのものを用いているが、本発明はこれに限定されず、数ポート用いるものであっても良い。
【0042】
制御信号重畳部41は、スイッチ用制御信号を通信機部側共通コネクタ31に重畳するものである。上述の通り、アンテナ部側共通コネクタ30にスイッチ用制御信号を重畳するために、アンテナ部側共通コネクタ30に嵌合する通信機部側共通コネクタ31にスイッチ用制御信号である直流電圧を印加する。図示の通り、制御信号重畳部41は、具体的には、コンデンサとコイルとスイッチ用制御信号(Cont.V)を生成する直流電圧源からなる回路であれば良い。なお、スイッチ用制御信号は、チューナ部50により生成されれば良い。制御信号重畳部41のコンデンサは、通信機部側共通コネクタ31に直列に接続され、直流電圧であるスイッチ用制御信号がチューナ部50側に流れないように分離するものである。また、制御信号重畳部41のコイルは、通信機部側共通コネクタ31に並列に接続され、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号が直流電圧源側に流れないように分離するものである。
【0043】
ここで、
図1に示される例では、第1周波数帯用のエレメントを共通トップ容量部10と、第1インダクタ部11で構成すると共に、第2周波数帯用のエレメントを共通トップ容量部10と、第1インダクタ部11と、第2インダクタ部12で構成していた。即ち、第1インダクタ部11は、第1周波数帯用のエレメントとしても第2周波数帯用のエレメントとしても用いられるものであった。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
図2は、本発明の車両用複合アンテナ装置のアンテナ部の他の例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。この例では、アンテナ部1の第2インダクタ部12は、共通トップ容量部10と第2給電部14との間に接続されている。即ち、共通トップ容量部10から並列に第1インダクタ部11と第2インダクタ部12が接続されている。このように構成されると、共通トップ容量部10の下で第1周波数帯用のエレメントと第2周波数帯用のエレメントを分岐させることになるため、近接する第1周波数帯と第2周波数帯のアイソレーションを向上させることが可能となる。
【0044】
また、近接する第1周波数帯と第2周波数帯のアイソレーションを向上させるためには、アンテナ部1は、
図3に示されるような構成であっても良い。
図3は、本発明の車両用複合アンテナ装置のアンテナ部のさらに他の例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、第1周波数帯用のエレメントや第2周波数帯用のエレメントは、
図1や
図2に示されるものであれば良く、
図3では省略した。図示の通り、この例では、アンテナ部1は、さらに、アンテナ部側第1周波数帯信号通過部23と、アンテナ部側第2周波数帯信号通過部24とを有している。
【0045】
アンテナ部側第1周波数帯信号通過部23は、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21からの第1周波数帯の信号を通過させるものである。具体的には、アンテナ部側第1周波数帯信号通過部23は、第2周波数帯よりも高い第1周波数帯を通過させる分波器、例えばハイパスフィルタ回路であれば良い。
【0046】
また、アンテナ部側第2周波数帯信号通過部24は、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22からの第2周波数帯の信号を通過させるものである。具体的には、アンテナ部側第2周波数帯信号通過部24は、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯を通過させる分波器、例えばローパスフィルタ回路又はバンドパスフィルタ回路であれば良い。
【0047】
図示例では、アンテナ部1側のフィルタ回路により第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号のアイソレーションを高めているため、必要によりアンテナ部1側の第1周波数帯用スイッチ部21及び第2周波数帯用スイッチ部22を共にオンにし、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号を同時に受信するように制御しても良い。
【0048】
次に、
図4を用いて通信機部2の詳細について説明する。
図4は、本発明の車両用複合アンテナ装置の通信機部の詳細を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、通信機部2は、さらに、通信機部側第1周波数帯信号通過部51と、通信機部側第2周波数帯信号通過部52と、第1周波数帯用アンプ53と、第2周波数帯用アンプ54と、チューナ部50とから構成しても良い。
【0049】
通信機部側第1周波数帯信号通過部51は、通信機部側共通コネクタ31からの第1周波数帯の信号を通過させるものである。具体的には、通信機部側第1周波数帯信号通過部51は、第2周波数帯よりも高い第1周波数帯を通過させる分波器、例えばハイパスフィルタ回路であれば良い。
【0050】
また、通信機部側第2周波数帯信号通過部52は、通信機部側共通コネクタ31からの第2周波数帯の信号を通過させるものである。具体的には、通信機部側第2周波数帯信号通過部52は、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯を通過させる分波器、例えばローパスフィルタ回路又はバンドパスフィルタ回路であれば良い。
【0051】
第1周波数帯用アンプ53は、通信機部側第1周波数帯信号通過部51からの第1周波数帯の信号を増幅するものである。具体的には、低雑音アンプであれば良い。
【0052】
また、第2周波数帯用アンプ54は、通信機部側第2周波数帯信号通過部52からの第2周波数帯の信号を増幅するものである。具体的には、低雑音アンプであれば良い。
【0053】
そして、チューナ部50は、第1周波数帯用アンプ53及び第2周波数帯用アンプ54からの第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号を受信するものである。
【0054】
一般的に、低雑音アンプが必要な場合、低雑音アンプはエレメントのなるべく近くに接続されるものである。即ち、アンテナ部1側に配置されるのが一般的である。しかしながら、本発明の車両用複合アンテナ装置は、通信機部2がアンテナ部1の直下に配置され、アンテナ部側共通コネクタ30と通信機部側共通コネクタ31によりダイレクトに接続されるものである。したがって、第1周波数帯用アンプ53や第2周波数帯用アンプ54を通信機部2側に配置したとしても、アンテナ受信性能の劣化を抑えることが可能である。アンテナ部1側に第1周波数帯用アンプ53や第2周波数帯用アンプ54を配置する必要がないため、アンテナ部1の小型化が可能となる。
【0055】
次に、
図5を用いて本発明の車両用複合アンテナ装置を3波に対応させた例について説明する。
図5は、本発明の車両用複合アンテナ装置の他の例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。この例は、上述の第1周波数帯であるDAB用の周波数帯と、第2周波数帯であるFM用の周波数帯に、さらに第3周波数帯であるAM用の周波数帯を追加したものである。図示の通り、アンテナ部1の第2給電部14が、第2周波数帯よりも低い第3周波数帯用の第3給電部15としても機能するものである。なお、図示例では、第2インダクタ部12から第2給電部14と第3給電部15の2つの給電部が分岐して接続されるように示したが、第2周波数帯であるFM用の周波数帯と第3周波数帯であるAM用の周波数帯は大きく異なるため、第2給電部14からAM用の周波数帯の信号を取り出しても良い。
【0056】
そして、アンテナ部側共通コネクタ30は、第3給電部15からの第3周波数帯の信号を重畳し通信機部2側へ伝達する。図示例では、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21と、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22のようなスイッチ部を第3周波数帯用には設けておらず、常に第3周波数帯の信号はアンテナ部側共通コネクタ30に重畳される構成を示した。
【0057】
また、
図5に示される通信機部2は、
図4の通信機部側第1周波数帯信号通過部51が、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部55と、通信機部側第1周波数帯用フィルタ部51aとからなる構成である。即ち、
図4の制御信号重畳部41と、通信機部側第1周波数帯信号通過部51との間に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部55を設けた構成である。同様に、
図4の通信機部側第2周波数帯信号通過部52が、通信機部側第2周波数帯用スイッチ部56と、通信機部側第1周波数帯用フィルタ部52aとからなる構成である。即ち、
図4の制御信号重畳部41と、通信機部側第2周波数帯信号通過部52との間に、通信機部側第2周波数帯用スイッチ部56を設けた構成である。
【0058】
通信機部側第1周波数帯用スイッチ部55は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。第1周波数帯の信号を受信する際には、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部55をオンにし、それ以外はオフに制御すれば良い。なお、この際、アンテナ部1では、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオンにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御すれば良い。また、通信機部側第1周波数帯用フィルタ部51aは、通信機部側共通コネクタ31からの第1周波数帯の信号を通過させるものである。具体的には、通信機部側第1周波数帯用フィルタ部51aは、第2周波数帯よりも高い第1周波数帯を通過させる分波器、例えばハイパスフィルタ回路であれば良い。これにより、通信機部2側でも第1周波数帯の信号のアイソレーションが高まり、第1周波数帯の受信性能を向上させることが可能である。
【0059】
通信機部側第2周波数帯用スイッチ部56は、第2周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。第2周波数帯の信号を受信する際には、通信機部側第2周波数帯用スイッチ部56をオンにし、それ以外はオフに制御すれば良い。なお、この際、アンテナ部1では、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオンにし、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオフに制御すれば良い。また、通信機部側第2周波数帯用フィルタ部52aは、通信機部側共通コネクタ31からの第2周波数帯の信号を通過させるものである。具体的には、通信機部側第2周波数帯用フィルタ部52aは、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯を通過させる分波器、例えばバンドパスフィルタ回路であれば良い。バンドパスフィルタ回路で構成することで、第2周波数帯よりも低い第3周波数帯の信号も遮断することが可能となる。これにより、通信機部2側でも第2周波数帯の信号のアイソレーションが高まり、第2周波数帯の受信性能を向上させることが可能である。
【0060】
第3周波数帯の信号を受信する際には、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部55及び通信機部側第2周波数帯用スイッチ部56をオフに制御し、フィルタ回路やアンプ回路等、他の周波数帯用の回路を分離する。また、アンテナ部1では、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御する。これにより、通信機部2側でも第3周波数帯の信号のアイソレーションが高まり、第3周波数帯の受信性能を向上させることが可能である。
【0061】
なお、
図5に示される例では、第2給電部14と第3給電部15の2つの給電部は第2インダクタ部12から分岐させたものを示したが、本発明はこれに限定されない。
図6は、本発明の車両用複合アンテナ装置のアンテナ部のさらに他の例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、アンテナ部1は、さらに、第3インダクタ部16を具備していても良い。第3インダクタ部16は、第2周波数帯用の第2給電部14と第3周波数帯用の第3給電部15との間に接続されるものである。そして、第3インダクタ部16は、第3周波数帯用のエレメントの一部としても機能する。即ち、第3周波数帯用のエレメントは、共通トップ容量部10と第1インダクタ部11と第2インダクタ部12と第3インダクタ部16の直列回路となる。エレメント長が足りない場合等には、このように構成しても良い。そして、上述の図示例と同様に、アンテナ部側共通コネクタ30は、第3給電部15からの第3周波数帯の信号を重畳し通信機部2側へ伝達すれば良い。
【0062】
ここで、第3周波数帯の信号を増幅するためにアンプ回路を設ける際のバリエーションについて説明する。
図7は、本発明の車両用複合アンテナ装置に第3周波数帯用アンプを設けた例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、第1周波数帯用のエレメントや第2周波数帯用のエレメント、第3周波数帯用のエレメントは、
図5や
図6に示されるものであれば良く、
図7では省略した。図示の通り、アンテナ部1が、アンテナ部側第3周波数帯用アンプ17を具備している。アンテナ部側第3周波数帯用アンプ17は、第3給電部15からの第3周波数帯の信号を増幅するものである。図示例のように、アンテナ部側第3周波数帯用アンプ17をアンテナ部1に配置し、第1周波数帯用アンプ53や第2周波数帯用アンプ54を通信機部2に配置することで、アンテナ部1をある程度小型化することが可能である。なお、通信機部2の構成は図示例には限定されず、例えば
図5に示されるような構成であっても良い。
【0063】
また、
図8は、本発明の車両用複合アンテナ装置に第3周波数帯用アンプを設けた他の例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、通信機部2が、通信機部側第3周波数帯用アンプ57を具備している。通信機部側第3周波数帯用アンプ57は、通信機部側共通コネクタ31からの第3周波数帯の信号を増幅するものである。図示例のように、第1周波数帯用アンプ53、第2周波数帯用アンプ54、通信機部側第3周波数帯用アンプ57をすべて通信機部2に配置することで、アンテナ部1をさらに小型化することが可能である。
【0064】
このようにすべてのアンプを通信機部2に配置する場合には、図示のように、第3周波数帯の信号のアイソレーションを高めるために、アンテナ部1に、アイソレーション用スイッチ部25を設けても良い。アイソレーション用スイッチ部25は、アンテナ部側共通コネクタ30に第3周波数帯の信号が到達し、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯の信号が到達しないように制御可能なものである。即ち、第3周波数帯の信号を受信する場合には、アイソレーション用スイッチ部25をオフにし、第1周波数帯の信号及び第2周波数帯用の回路を完全に分離する。第1周波数帯の信号や第2周波数帯の信号を受信する場合には、アイソレーション用スイッチ部25をオンにすれば良い。
【0065】
図5や
図6に示される例のように、アンテナ部側第1周波数帯信号通過部23やアンテナ部側第2周波数帯信号通過部24を設けない場合には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22を共にオフにすることで第1周波数帯の信号及び第2周波数帯用の回路を完全に分離することが可能となる。しかしながら、
図8に示されるようにアンテナ部側第1周波数帯信号通過部23やアンテナ部側第2周波数帯信号通過部24を設けた場合には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22を共にオフにしたとしても、アンテナ部側第1周波数帯信号通過部23やアンテナ部側第2周波数帯信号通過部24が第3周波数帯用の回路にぶら下がることになる。これは容量成分となり、共通トップ容量部10に対して無効容量となる。したがって、アイソレーション用スイッチ部25を用いてアンテナ部側第1周波数帯信号通過部23やアンテナ部側第2周波数帯信号通過部24も含め分離することで、共通トップ容量部10の容量成分の減少を抑えることが可能となる。これにより、第3周波数帯用のアンプをアンテナ部1側ではなく通信機部1側に配置したとしても、信号受信性能の劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0066】
図9は、本発明の車両用複合アンテナ装置の通信機部において第2周波数帯の信号受信性能を高める例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、アンテナ部1の構成は、これまでに説明した構成を適宜適用可能である。図示例は、
図7の通信機部側第1周波数帯信号通過部51が、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58と、通信機部側第1周波数帯用フィルタ部51aとからなる構成である。即ち、
図7の制御信号重畳部41と、通信機部側第1周波数帯信号通過部51との間に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58を設けた構成である。なお、通信機部側第2周波数帯信号通過部52は、
図7と同様の構成であり、第2周波数帯の信号を通過させるものであれば良い。
【0067】
通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。このように通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58を設けることで、第2周波数帯の信号受信性能を高めることが可能である。第1周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオンにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御すると共に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58をオンに制御する。また、第2周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオフにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオンに制御すると共に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58をオフに制御する。そして、第3周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御すると共に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58をオフに制御する。
【0068】
図9に示される例では、通信機部2の第1周波数帯の信号側にのみ通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58を設けているため、第2周波数帯の信号のみを受信する際には第2周波数帯の信号受信性能を向上させることが可能となる。
【0069】
図10は、本発明の車両用複合アンテナ装置の通信機部において第2周波数帯の信号受信性能を高める他の例を説明するための概略構成図である。図中、
図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、アンテナ部1の構成は、これまでに説明した構成を適宜適用可能である。図示例は、
図7の通信機部側第1周波数帯信号通過部51を通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58のみで構成したものである。通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。なお、通信機部側第2周波数帯信号通過部52は、
図7と同様の構成であり、第2周波数帯の信号を通過させるものであれば良い。
【0070】
通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58は、第1周波数帯の信号をオンオフ制御可能なものである。このように通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58を設けることで、第2周波数帯の信号受信性能を高めることが可能である。即ち、第1周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオンにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御すると共に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58をオンに制御する。また、第2周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21をオフにし、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオンに制御すると共に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58をオフに制御する。そして、第3周波数帯の信号を受信する際には、アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21及びアンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22をオフに制御すると共に、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部58をオフに制御する。
【0071】
図10に示される例では、第2周波数帯の信号受信性能を向上させると共に、さらに、通信機部側第1周波数帯用フィルタを設けないため、フィルタにおける信号劣化が無く、第1周波数帯の信号受信性能も向上させることが可能である。
【0072】
次に、上述のスイッチ部の構成の具体例について、
図11を用いて説明する。
図11は、本発明の車両用複合アンテナ装置に用いられるスイッチ部の回路図である。図示の通り、本発明の車両用複合アンテナ装置に用いられるスイッチ部(アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部21、アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部22、通信機部側第1周波数帯用スイッチ部55、58、通信機部側第2周波数帯用スイッチ部56)は、第1コンデンサ60と、第2コンデンサ61と、第1PINダイオード62と、第2PINダイオード64と、コイル63と、抵抗65とからなる。図中、左右の端子が入出力端子である。アンテナ部1のスイッチ部の場合には、左側端子が給電部側であり、右側端子がアンテナ部側共通コネクタ30側である。通信機部2のスイッチ部の場合には、図中、左側端子が通信機部側共通コネクタ31側であり、右側端子がチューナ部50側である。また、上側端子は、制御信号分離部40や制御信号重畳部41のスイッチ用制御信号(Cont.V)が入力される端子である。
【0073】
第1コンデンサ60及び第2コンデンサ61は、入出力端子間に直列に接続されている。また、第1PINダイオード62は、第1コンデンサ60及び第2コンデンサ61の間に直列に接続されている。ここで、PINダイオードとは、PN接合の間に抵抗値の高い真性半導体であるI層を挟み込んだ3層構造のダイオードである。順電圧では可変抵抗のように働き、逆電圧ではコンデンサのように働く特性を有している。
【0074】
また、コイル63は、第2コンデンサ61と第1PINダイオード62との間に並列に接続されている。そして、コイル63には、スイッチ用制御信号(Cont.V)が入力される。
【0075】
そして、第2PINダイオード64と抵抗65の直列回路が、第1コンデンサ60と第1PINダイオード62との間と、グラウンドとの間に接続されている。
【0076】
PINダイオードを用いる一般的なスイッチ回路では、グラウンド側の回路が
図11に示されるような第2PINダイオード64と抵抗65の直列回路ではなく、インダクタや抵抗のみの回路であった。そのような例だと、例えば第3周波数帯であるAM周波数帯の信号を通さないようにするためには、インダクタであれば数mH程度のものが必要となるため、サイズが大きく高コストとなっていた。また、抵抗であれば10kΩ程度のものが必要となるため、第1PINダイオード62に流れる電流が減少し、オン時の通過特性が悪化していた。
【0077】
しかしながら、
図11に示されるような第2PINダイオード64と抵抗65の直列回路の場合には、PINダイオード64のオフ時の端子間容量が数pFと小さいため、AM周波数帯の信号を十分にカットできる。また、インダクタを用いるよりサイズも小さく低コストとなる。
【0078】
また、
図12に示されるように、グラウンド側の直列回路の第2PINダイオード64を、直列接続される2つのPINダイオード64a,64bとして構成しても良い。これにより、オフ時の容量成分をさらに小さくすることができ、それぞれ第1周波数帯(DAB)や第2周波数帯(FM)、第3周波数帯(AM)のオフ時のアイソレーションをさらに高めることが可能となる。
【0079】
なお、本発明の車両用複合アンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
1 アンテナ部
2 通信機部
10 共通トップ容量部
11 第1インダクタ部
12 第2インダクタ部
13 第1給電部
14 第2給電部
15 第3給電部
16 第3インダクタ部
17 アンテナ部側第3周波数帯用アンプ
21 アンテナ部側第1周波数帯用スイッチ部
22 アンテナ部側第2周波数帯用スイッチ部
23 アンテナ部側第1周波数帯信号通過部
24 アンテナ部側第2周波数帯信号通過部
25 アイソレーション用スイッチ部
30 アンテナ部側共通コネクタ
31 通信機部側共通コネクタ
40 制御信号分離部
41 制御信号重畳部
50 チューナ部
51 通信機部側第1周波数帯信号通過部
51a 通信機部側第1周波数帯用フィルタ部
52 通信機部側第2周波数帯信号通過部
52a 通信機部側第2周波数帯用フィルタ部
53 第1周波数帯用アンプ
54 第2周波数帯用アンプ
55 通信機部側第1周波数帯用スイッチ部
56 通信機部側第2周波数帯用スイッチ部
57 通信機部側第3周波数帯用アンプ
58 通信機部側第1周波数帯用スイッチ部
60,61 コンデンサ
62,64 PINダイオード
63 コイル
65 抵抗