(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128317
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ及びマルチコアファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/02 471
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026774
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】福本 良平
(72)【発明者】
【氏名】安間 淑通
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AA02
2H250AA52
2H250AC46
2H250AC63
2H250AC64
2H250AC66
2H250AC94
2H250AC95
2H250AC96
2H250AC98
2H250AD19
2H250AH01
2H250AH27
2H250AH47
2H250BB32
2H250BB33
2H250BC02
(57)【要約】
【課題】軽量化し得るともにコア間の位置ずれを抑制し得るマルチコアファイバ及び当該マルチコアファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】マルチコアファイバ1は、複数のコア11と、コア11をそれぞれ囲うクラッド20と、を備える。クラッド20は、それぞれのコア11が中心に配置されクラッド部12が当該コア11を囲うシングルコアファイバ10におけるそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士が当該クラッド部12の直径よりも小さな幅Wに亘って一体とされる接合部21を有する。クラッド20の外周面は、それぞれのクラッド部12の外周面の他の一部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアと、
複数の前記コアをそれぞれ囲うクラッドと、
を備え、
前記クラッドは、それぞれの前記コアが中心部に配置されクラッド部が当該コアを囲う複数のシングルコアファイバにおける少なくとも2つの前記クラッド部の外周面の一部同士が当該クラッド部の直径よりも小さな幅に亘って一体とされる接合部を有し、
前記クラッドの外周面は、当該少なくとも2つのクラッド部の外周面の他の一部を含む
ことを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
少なくとも1つの前記接合部における前記クラッドの外周面は、前記接合部中心に向かって弧状に凹んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
互いに並列する3つ以上の前記シングルコアファイバを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
3つ以上の前記シングルコアファイバを有し、
前記クラッドには、3つ以上の前記シングルコアファイバの前記クラッド部の外周面によって囲われる多角形状の空隙が存在する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
それぞれの前記クラッド部の外周面のうち前記空隙を形成する部位の少なくとも1つが当該部位に最も近い前記コアを囲うように湾曲している
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
それぞれの前記クラッド部の外周面のうち前記空隙を形成する部位の少なくとも1つの幅が当該部位に最も近い前記コアの直径以上である
ことを特徴とする請求項4または5に記載のマルチコアファイバ。
【請求項7】
前記シングルコアファイバの少なくとも1つは、当該シングルコアファイバの前記クラッド部よりも低い屈折率を有して当該シングルコアファイバの前記コアを囲うトレンチ層を有し、
当該シングルコアファイバにおける前記接合部の幅が前記トレンチ層の直径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項8】
前記接合部の幅が当該接合部を有する前記シングルコアファイバの前記コアの直径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項9】
前記コアの少なくとも1つが楕円状である
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のマルチコアファイバ。
【請求項10】
中心に配置されるコアガラス体と当該コアガラス体を囲うクラッドガラス体とを含むシングルコアファイバ用ロッドを束ねるバンドル工程と、
溶融状態において前記クラッドガラス体の外周面の一部同士が前記クラッドガラス体の直径よりも小さな幅に亘って接するように、束ねられた前記シングルコアファイバ用ロッドを線引きする線引工程と、
を備える
ことを特徴とするマルチコアファイバの製造方法。
【請求項11】
前記バンドル工程において、隣り合う前記シングルコアファイバ用ロッドの外周面同士が接するように複数の前記シングルコアファイバ用ロッドを束ねる
ことを特徴とする請求項10に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【請求項12】
前記バンドル工程において、隣り合う前記シングルコアファイバ用ロッドの外周面同士を溶着する
ことを特徴とする請求項11に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバ及びマルチコアファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークにおける通信量が急増する傾向にある。そこで、この需要に応えるために、1つのクラッド内に複数のコアが配置されたマルチコアファイバを用いることがある。このようなマルチコアファイバでは、一般的に、複数のコアを囲うクラッドの断面における外周面の形状は円形である。
【0003】
また、他のマルチコアファイバとして、例えば下記非特許文献1に記載されたマルチコアファイバが知られている。この非特許文献1に記載されたマルチコアファイバは、1つのコアと当該コアを囲うクラッドとから成るシングルコアファイバを複数束ねて、この束を樹脂で一括して被覆した構成を有する。このようなマルチコアファイバは、マルチエレメントファイバと呼ばれることがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Jain et al., “Multi-Element Fiber Technology for Space-Division Multiplexing Applications,” Opt. Express, vol. 22, issue 4, pp. 3787-3796, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1に記載のマルチエレメントファイバは、シングルコアファイバを束ねた構成であるため、それぞれのシングルコアファイバのクラッドを合わせた断面積は、クラッドの断面が円形である従来のマルチコアファイバのクラッドの断面積に比べて、小さくなり得る。従って、マルチエレメントファイバは、クラッドの外周面の形状が円形である従来のマルチコアファイバと比べて、軽量化し得ると考えられる。
【0006】
しかし、上記非特許文献1に記載のマルチエレメントファイバでは、シングルコアファイバ同士が樹脂を介して保持されているに過ぎない。そのため、このマルチエレメントファイバが例えば切断される場合等において、マルチエレメントファイバに外力が作用すると、この外力によってシングルコアファイバ同士の位置がずれて、コア間の位置ずれが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、軽量化し得るともにコア間の位置ずれを抑制し得るマルチコアファイバ及び当該マルチコアファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成のため、本発明のマルチコアファイバは、複数のコアと、複数の前記コアをそれぞれ囲うクラッドと、を備え、前記クラッドは、それぞれの前記コアが中心部に配置されクラッド部が当該コアを囲う複数のシングルコアファイバにおける少なくとも2つの前記クラッド部の外周面の一部同士が当該クラッド部の直径よりも小さな幅に亘って一体とされる接合部を有し、前記クラッドの外周面は、当該少なくとも2つの前記クラッド部の前記外周面の他の一部を含むことを特徴とするものである。
【0009】
上記のような構成によれば、シングルコアファイバのクラッド部の一部同士が一体化しているため、例えば切断時などにおいてマルチコアファイバに外力が作用する場合において、シングルコアファイバ同士の位置がずれることが抑制される。したがって、コア間の位置ずれを抑制することができる。
【0010】
また、このマルチコアファイバのクラッドにおける上記接合部の幅はシングルコアファイバのクラッド部の直径よりも小さい。ところで、クラッド部の中心にはコアが配置されるため、クラッド部の外周面のうち上記接合部を除く他の一部は、コアの中心からの距離が概ね一定となる傾向にある。このため、接合部で一体となる一対のシングルコアファイバのそれぞれにおける外周面の他の一部同士は、互いに離間する。したがって、このマルチコアファイバのクラッドには、接合部近傍においてくびれが存在する。このマルチコアファイバのクラッドは、このようなくびれを有するため、断面における外周面の形状が例えば各シングルコアファイバのクラッド部を内側に含む円形のクラッドと比べて、断面積が小さくなり得、クラッドのガラスの量が少なくなり得る。このため、本発明のマルチコアファイバによれば、軽量化し得る。
【0011】
また、上記マルチコアファイバは、少なくとも1つの前接合部における前記クラッドの外周面は、前記接合部中心に向かって弧状に凹んでいることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、接合部におけるクラッドの外周面が弧状に凹んでいることで、クラッドの外周に内側被覆層が設けられた場合において、クラッドと内側被覆層との剥離起点を抑制し、クラッドからの内側被覆層の剥離を抑制し得る。このため、内側被覆層の剥離に起因した応力の不均一性を抑制し、マイクロベンドが抑制され得、コアを伝搬する光の伝送損失が抑制され得る。
【0013】
また、上記マルチコアファイバは、互いに並列する3つ以上のシングルコアファイバを有してもよい。
【0014】
このような構成によれば3つ以上のコアを有する、いわゆるテープファイバとして使用し得、コア間の位置ずれを抑制しつつ軽量化し得る。
【0015】
また、上記マルチコアファイバが3つ以上のシングルコアファイバを有する場合、前記クラッドには、3つ以上の前記シングルコアファイバの前記クラッド部の外周面によって囲われる多角形状の空隙が存在することが好ましい。
【0016】
このような空隙が存在することによって、コアから漏洩する光が他のコアに伝わり難くなり得、コア間のクロストークが抑制され得る。
【0017】
また、上記クラッドに上記空隙が存在する場合、それぞれの前記クラッド部の外周面のうち前記空隙を形成する部位のそれぞれが当該部位に最も近い前記コアを囲うように湾曲していることが好ましい。
【0018】
また、上記空隙が存在する場合、それぞれの前記クラッド部の外周面のうち前記空隙を形成する部位の幅のそれぞれが当該部位に最も近い前記コアの直径以上であることが好ましい。
【0019】
この場合、クラッド部の外周面のうち空隙を形成する部位の幅がコアの直径未満の場合に比べて、コアから漏洩する光が他のコアに伝わり難くなり得、コア間のクロストークが抑制され得る。
【0020】
また、前記シングルコアファイバの少なくとも1つは、当該シングルコアファイバの前記クラッド部よりも低い屈折率を有して当該シングルコアファイバの前記コアを囲うトレンチ層を有し、当該シングルコアファイバにおける前記接合部の幅が前記トレンチ層の直径以下であることが好ましい。
【0021】
この場合、接合部の幅がトレンチ層の直径超の場合に比べて、コアから漏洩する光が隣接するコアに伝わり難くなり得、コア間のクロストークが抑制され得る。
【0022】
また、前記接合部の幅が当該接合部を有する前記シングルコアファイバの前記コアの直径以下であってもよい。
【0023】
この場合、接合部の幅がコアの直径超の場合に比べて、コアから漏洩する光が互いに接合されるシングルコアファイバのコアに伝わり難くなり得、コア間のクロストークが抑制され得る。
【0024】
また、前記コアの少なくとも1つが楕円状であってもよい。
【0025】
このようにコアを楕円状にすることで、コアを伝搬する光の偏波モードを維持しやすくなり得る。
【0026】
また、上記目的の達成のため、本発明のマルチコアファイバの製造方法は、中心に配置されるコアガラス体と当該コアガラス体を囲うクラッドガラス体とを含むシングルコアファイバ用ロッドを束ねるバンドル工程と、溶融状態において前記クラッドガラス体の外周面の一部同士が前記クラッドガラス体の直径よりも小さい幅に亘って接するように、束ねられた前記シングルコアファイバ用ロッドを線引きする線引工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0027】
このマルチコアファイバの製造方法によれば、溶融状態で接したクラッドガラス体の外周面の一部同士が、シングルコアファイバにおけるそれぞれのクラッド部の外周面の一部同士が当該クラッド部の直径よりも小さな幅に亘って一体とされる接合部となり得る。また、それぞれのクラッドガラス体の外周面における他の一部は、シングルコアファイバにおけるクラッド部の外周面のうちコアの中心からの距離が一定の傾向がある部位である。したがって、このマルチコアファイバの製造方法によれば、上記のいずれかのマルチコアファイバを製造することができる。
【0028】
また、上記マルチコアファイバの製造方法では、前記バンドル工程において、隣り合う前記シングルコアファイバ用ロッド同士が接するように複数の前記シングルコアファイバ用ロッドを束ねることが好ましい。
【0029】
この場合、隣り合うシングルコアファイバ用ロッド同士が接した状態で線引きされるため、シングルコアファイバ用ロッドのそれぞれの外周面の一部同士をより効果的に一体化させることができる。
【0030】
また、上記マルチコアファイバの製造方法では、前記バンドル工程において、隣り合う前記シングルコアファイバ用ロッドの前記クラッドガラス体の外周面同士を溶着することが好ましい。
【0031】
この場合、隣り合うシングルコアファイバ用ロッド同士の位置ずれを抑制し得る。特に、溶着される部位が、シングルコアファイバ用ロッドにおける線引が開始される端部を含む場合、線引工程において、クラッドガラス体の外周面の一部同士を接しさせるきっかけとなるため好ましい。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、軽量化し得るともにコア間の位置ずれを抑制し得るマルチコアファイバ及び当該マルチコアファイバを製造することが可能なマルチコアファイバの製造方法が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。
【
図3】
図1に示すマルチコアファイバの製造方法の工程を示す図である。
【
図5】バンドル工程の後半及び前処理工程の様子を示す図である。
【
図6】前処理工程後のマルチコアファイバ用母材の側面図である。
【
図7】
図6に示すマルチコアファイバ用母材を溶断された先端側から見る図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバを
図1と同様の視点で示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るマルチコアファイバを
図1と同様の視点で示す図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係るマルチコアファイバを
図1と同様の視点で示す図である。
【
図12】本発明の変形例を
図1と同様の視点で示す図である。
【
図13】本発明の他の変形例を
図1と同様の視点で示す図である。
【
図14】本発明の更に他の変形例を
図2と同様の視点で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るマルチコアファイバ及びマルチコアファイバの製造方法を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、本明細書では、理解を容易にするために、各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。なお、
図1では、図が複雑になる事を避けるためにハッチングが省略されている。
図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のシングルコアファイバ10と、それぞれのシングルコアファイバ10のそれぞれを被覆する単一の内側被覆層30と、内側被覆層30を被覆する外側被覆層40と、を主な構成として備える。なお、
図1では、シングルコアファイバ10が3つの例が示されている。
【0036】
内側被覆層30及び外側被覆層40は樹脂から形成されている。このような樹脂としては、例えば熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂等を挙げることができる。また、内側被覆層30及び外側被覆層40が熱硬化樹脂から形成される場合、外側被覆層40は内側被覆層30とは異なる種類の熱硬化樹脂から形成されてもよい。また、内側被覆層30及び外側被覆層40が紫外線硬化樹脂から形成される場合、外側被覆層40は内側被覆層30とは異なる種類の紫外線硬化樹脂から形成されてもよい。
【0037】
なお、マルチコアファイバ1の構成として内側被覆層30及び外側被覆層40は必須ではない。内側被覆層30及び外側被覆層40を有さないマルチコアファイバ1はマルチコアファイバ裸線とも呼ばれる。
【0038】
それぞれのシングルコアファイバ10は、中心に配置される円形状のコア11と、コア11を囲う内側クラッド層13と、内側クラッド層13を囲うトレンチ層14と、トレンチ層14を囲うクラッド部12とを含んでいる。これは、それぞれのシングルコアファイバ10のコア11が互いに離間していると理解できる。このように、本実施形態では、クラッド部12は、内側クラッド層13及びトレンチ層14を介してコア11を囲んでおり、外形が円形状である。従って、クラッド部12の外周面はコア11の中心からの距離が概ね一定となる傾向にある。コア11、内側クラッド層13、及びトレンチ層14を合わせてコア要素と呼ぶことがある。なお、内側クラッド層13を設けずにトレンチ層14がコア11を直接囲うようにしてもよい。
【0039】
内側クラッド層13及びクラッド部12はコア11よりも低い屈折率を有し、トレンチ層14は内側クラッド層13及びクラッド部12よりも低い屈折率を有する。マルチコアファイバ1がこのようなトレンチ層14を有することにより、トレンチ層14を有さない場合に比べて、互いに隣り合うシングルコアファイバ10のコア11間のクロストークを抑制することができる。
【0040】
図1に示すように、互い隣接する一対のシングルコアファイバ10におけるそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士は接合部21において一体化している。したがって、本実施形態のマルチコアファイバ1は3つの接合部21を有している。こうして、本実施形態のマルチコアファイバ1では、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12からなる1つのクラッド20が形成されている。ここで、クラッド20は、クラッド部12と接合部21とを含んでいる。このため、クラッド20は、それぞれのシングルコアファイバ10のそれぞれのコア11を囲っている。従って、内側被覆層30は、クラッド20の外周面を囲う単一の被覆層である。
【0041】
図2は、接合部21の様子を示す拡大図である。なお、
図2では、1つの接合部21のみを示す。それぞれの接合部21におけるクラッド20の外周面は、接合部21中心に向かって弧状に凹んでいる。つまり、接合部21の外面である谷の底21Bは丸みを帯びた弧状に凹んでいる。それぞれの接合部21の幅Wは、クラッド部12の直径よりも小さい。なお、それぞれの接合部21の幅Wは、上記一対のシングルコアファイバ10のコア11の中心同士を結ぶ線に垂直な方向に沿った長さである。なお、本実施形態では、それぞれの接合部21の幅Wは概ね同じ大きさである。しかし、これらのうち少なくとも1つが異なる大きさであってもよい。また、クラッド20の外周面が弧状に凹んでいる接合部21の数は、特に限定されず、1つ以上あれば良い。
【0042】
また、
図1において破線で示すクラッド20の外接円Coの直径は、特に限定されないが、例えば、125μmであってもよい。
【0043】
本実施形態では、それぞれの接合部21の幅Wは、それぞれのシングルコアファイバ10のトレンチ層14の直径よりも小さく、さらに、それぞれのシングルコアファイバ10のコア11の直径よりも小さい。このように接合部21の幅Wをトレンチ層14の直径やコア11の直径よりも小さくすることで、コア11から漏洩する光が接合部21を介して隣接するコア11に伝わり難くなり、コア11間のクロストークをより効果的に抑制し得る。ただし、接合部21の幅Wは、コア11の直径以上であってもよく、トレンチ層14の直径以上であってもよい。
【0044】
上記のようにそれぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12の一部は接合部21とされる。また、本実施形態では、それぞれのクラッド部12の外周面の他の一部は、2つの接合部21によって、当該2つの接合部21の間に位置する面12F1と、面12F1以外の面12F2に分割されている。面12F1及び面12F2は、シングルコアファイバ10の外周面の形状を概ね保っており、コア11の中心からの距離が一定の面である。なお、コアからの距離が一定には、製造上の誤差等によるずれを含む。互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれの面12F2は、接合部21から円弧を描きながら互いに離間している。従って、クラッド20にはくびれが形成されている。ここで、接合部21は、マルチコアファイバ1の長手方向全体に亘って設けられている。
【0045】
本実施形態のマルチコアファイバ1の中央には、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12の面12F1によって囲われる多角形状の空隙Gが形成されている。この空隙Gには樹脂やガラスなどが充填されていない。本実施形態では、シングルコアファイバが3つであるため、空隙Gの外形は正三角形状である。
【0046】
本実施形態では、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12の外周面のうち空隙Gを形成する部位である面12F1は、面12F1に最も近いコア11を囲うように湾曲している。このような構成によれば、コア11から漏洩する光が空隙Gに遮られやすくなり、コア間のクロストークが抑制され得ると考えられる。
【0047】
ここで、
図1には、2つの接合部21を最短距離で結ぶ線分Lが破線で示されている。この線分Lの長さを面12F1の幅とすると、本実施形態では、面12F1の幅は、当該面12F1に最も近いシングルコアファイバ10のコア11の直径及びトレンチ層14の直径よりも大きい。このような構成によれば、空隙Gを形成する部位である面12F1の幅がコア11の直径以下の場合に比べて、コア11から漏洩する光が他のコア11に伝わり難くなり得、コア間のクロストークが抑制され得る。ただし、面12F1の幅はコア11の直径以下であってもよく、トレンチ層14の直径以下であってもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11と、複数のコア11をそれぞれ囲うクラッド20と、を備え、クラッド20は、それぞれのコア11が中心に配置されクラッド部12が当該コア11を囲う複数のシングルコアファイバ10におけるそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士が当該クラッド部12の直径よりも小さな幅に亘って一体とされる接合部21を有し、クラッド20の外周面は、それぞれのクラッド部12の外周面の他の一部である面12F1及び面12F2を含む。
【0049】
このような構成によれば、シングルコアファイバ10のクラッド部12同士が一体化しているため、例えば切断時などにおいてマルチコアファイバ1に外力が作用する場合において、シングルコアファイバ同士の位置がずれることが抑制される。したがって、コア間の位置ずれを抑制することができる。
【0050】
また、このマルチコアファイバ1のクラッド20における接合部21の幅はシングルコアファイバ10のクラッド部12の直径よりも小さい。ところで、クラッド部12の中心にはコア11が配置されるため、クラッド部12の外周面のうち接合部21を除く他の一部である面12F2は、コア11の中心からの距離が一定となる傾向にある。このため、接合部21で一体となる一対のシングルコアファイバ10のそれぞれにおける面12F2同士は、上述のように、接合部21から円弧を描きながら互いに離間する。したがって、このマルチコアファイバ1のクラッド20には、接合部21近傍において一対の面12F2から成るくびれが存在する。このマルチコアファイバ1のクラッド20は、このようなくびれを有するため、断面における外周面の形状が例えば各シングルコアファイバ10のクラッド部12を内側に含む
図1に示す外接円Coを外周面とするクラッドと比べて、断面積が小さくなり得、クラッド20のガラスの量が少なくなり得る。なお、コア11及びクラッド20となるガラスは被覆で覆われることが一般的であるが、被覆となる樹脂は一般的にガラスよりも軽い。このため、本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、軽量化し得る。また、本実施形態のマルチコアファイバ1は、クラッド20の外周面が、少なくとも2つのクラッド部12の外周面の他の一部を含んでいる為、クラッド20の外周面が、少なくとも2つのクラッド部12の外周面の他の一部を含んでいない場合と比べ、上記他の一部において、クラッド20の厚さを必要最低限の厚さにすることが可能であり、より効果的に軽量化に寄与し得るマルチコアファイバ1を実現し得る。
【0051】
また、このマルチコアファイバ1によれば、クラッド部12同士が一体化しているため、マルチコアファイバ1の切断時において、切断用の刃を入れる部分を起点として劈開の力が接合部21を介してそれぞれのシングルコアファイバ10に伝搬し易く、切断面をより平坦に近づけ得る。
【0052】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、接合部21におけるクラッド20の外周面が接合部21中心に向かって弧状に凹んでいる。このように、接合部21におけるクラッド20の外周面が弧状に凹んでいることで、クラッド20の外周に内側被覆層30が設けられた場合において、クラッド20と内側被覆層30との剥離起点を抑制し、クラッド20からの内側被覆層30の剥離を抑制し得る。このため、内側被覆層30の剥離に起因した応力の不均一性を抑制し、マイクロベンドが抑制され得、コア11を伝搬する光の伝送損失が抑制され得る。
【0053】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1によれば、クラッド20には、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12の外周面によって囲われる多角形状の空隙Gが存在する。このような構成によれば、空隙Gが存在せず当該空隙Gの部位が例えばガラスなどで埋められている場合に比べて、マルチコアファイバを軽量化し得る。また、このような空隙Gが存在することによって、コア間のクロストークが抑制され得る。
【0054】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1は、上記のように3つのシングルコアファイバ10のコア11の中心が正三角形の頂点上に配置された構成を有する。従って、マルチコアファイバ1同士を融着接続する際に、例えば、一対のシングルコアファイバ10の両方に接する面と、他の一対のシングルコアファイバ10の両方に接する面との2つの非平行な面を有するV字状の溝に、一対のマルチコアファイバ1の端部同士を対向させて配置すれば、一方側のマルチコアファイバ1のそれぞれのコア11の位置と他方側のマルチコアファイバ1のそれぞれのコア11の位置とを概ね一致させることができる。このため、このマルチコアファイバ1によれば、マルチコアファイバ1同士を融着接続する際に、一方側のマルチコアファイバ1と他方側のマルチコアファイバ1とを調心する工程を簡易にし得る。
【0055】
次に、マルチコアファイバ1の製造方法について説明する。
【0056】
図3は、マルチコアファイバ1の製造方法の工程を示す図である。
図3に示すように、マルチコアファイバ1の製造方法は、バンドル工程SP1と、前処理工程SP2と、線引工程SP3と含んでいる。
【0057】
(バンドル工程SP1)
図4は本工程の概ね前半の工程の様子を示す図である。本工程では、まず、
図4に示すように、中心に配置されコアとなるコアガラス体11Rと当該コアガラス体11Rを囲いクラッド部12となるクラッドガラス体12Rとを含むシングルコアファイバ用ロッド10Rを複数準備する。本実施形態では、
図1に示すように、コア11の数が3つであるため、3つのシングルコアファイバ用ロッド10Rを準備する。また、本実施形態では、それぞれのシングルコアファイバ用ロッド10Rが互いに同じ大きさで同じ構成とされる。なお、本実施形態では、それぞれのシングルコアファイバ10が、内側クラッド層13及びトレンチ層14を有するため、それぞれのシングルコアファイバ用ロッド10Rは、コアガラス体11Rを囲い内側クラッド層13となる内側クラッドガラス体13R、及び、内側クラッドガラス体13Rを囲いトレンチ層14となるトレンチガラス体14Rを有する。
【0058】
次に、
図4に示すように、複数のシングルコアファイバ用ロッド10Rを束ねる位置に配置する。本実施形態では、3つのシングルコアファイバ用ロッド10Rのそれぞれの中心が正三角形の頂点上に位置するように配置する。次に、配置されたシングルコアファイバ用ロッド10Rを例えば結束バンド51により結束する。こうして、複数のシングルコアファイバ用ロッド10Rが束ねられた状態でシングルコアファイバ用ロッド10R同士が結束される。本実施形態では、隣り合うシングルコアファイバ用ロッド10R同士が接するように3つのシングルコアファイバ用ロッド10Rは束ねられている。なお、
図4の例と異なり、シングルコアファイバ用ロッド10R同士が束ねられた状態において、必ずしもシングルコアファイバ用ロッド10R同士が接していなくてもよい。
【0059】
図5は、本工程の概ね後半の工程及び前処理工程SP2の様子を示す図である。
図5に示すように、束ねられたシングルコアファイバ用ロッド10Rの両端部にダミーガラスロッド52を固定して、マルチコアファイバ用母材1Pを形成する。このようなダミーガラスロッド52を固定することによって、結束バンド51などの固定治具を取り外してもシングルコアファイバ用ロッド10Rが束ねられた状態が維持され、シングルコアファイバ用ロッド10R間の位置ずれが抑制される。なお、ダミーガラスロッド52を溶着によって固定することが好ましい。溶着による固定であれば、不純物がシングルコアファイバ用ロッド10Rに付着することを効果的に抑制し得る。また、束ねられたシングルコアファイバ用ロッド10Rの一端のみにダミーガラスロッド52を固定してもよい。また、結束バンド51を用いずに複数のシングルコアファイバ用ロッド10Rが束ねられてもよい。この場合、例えば、シングルコアファイバ用ロッド10Rを1本ずつダミーガラスロッド52に固定し、複数のシングルコアファイバ用ロッド10Rがダミーガラスロッド52に固定されることで、結果として、複数のシングルコアファイバ用ロッド10Rが束ねられてもよい。
【0060】
(前処理工程SP2)
次に、本工程を行う。
図6は、本工程後のマルチコアファイバ用母材の側面図である。本工程では、結束バンド51を取り外した後、
図5に示すように、束ねられたシングルコアファイバ用ロッド10Rの側面の一部を加熱しつつ、一方のダミーガラスロッド52を他方のダミーガラスロッド52側とは反対側に引っ張る。これにより、
図6に示すように、一方のダミーガラスロッド52と当該ダミーガラスロッド52側のシングルコアファイバ用ロッド10Rの部位が溶断されて取り除かれ、マルチコアファイバ用母材1Pのうち溶断された部位の近傍は、先細りした形状になる。
図7は、
図6に示すマルチコアファイバ用母材1Pを溶断された先端側から見る図である。
図7に示すように、上記のように溶断されることで、マルチコアファイバ用母材1Pの先端部1PFにおいて、近接するシングルコアファイバ用ロッド10Rのそれぞれのクラッドガラス体12Rの外周面同士が溶着され、3つの接合部21Rが形成される。マルチコアファイバ用母材1Pは、この先細りとなっている側から線引きされる。従って、本実施形態では、シングルコアファイバ用ロッド10Rにおける線引きが開始される端部を含んで、クラッドガラス体12Rの外周面同士が溶着されている。
【0061】
なお、上記では、マルチコアファイバ用母材1Pの先端部1PFのみに接合部21Rを形成する例を説明したが、マルチコアファイバ用母材1Pを長手方向の全長に亘って加熱することによって、マルチコアファイバ用母材1Pの長手方向の全長に亘って接合部21Rを形成してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように一方のダミーガラスロッド52が取り除かれる例を説明したが、当該一方のダミーガラスロッド52のみを加熱してこれを円錐状にしてもよい。こうして、一方側に円錐状のダミーガラスロッド52が固定され、他方側に円柱状のダミーガラスロッド52が固定されたマルチコアファイバ用母材1Pを形成してもよい。
【0063】
(線引工程SP3)
次に、本工程を行う。
図8は本工程の様子を示す図である。
図8に示すように、まず、本工程を行う準備段階として、前処理工程SP2を終えたマルチコアファイバ用母材1Pの先端部1PFが鉛直方向下側になるように、マルチコアファイバ用母材1Pを紡糸炉110に設置する。そして、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、マルチコアファイバ用母材1Pを先端部1PF側から加熱部111に挿入して、を加熱する。このとき、加熱部111内に位置するマルチコアファイバ用母材1Pの部位は、例えば1900℃~2300℃に加熱され溶融状態になる。本工程では、この溶融状態においてクラッドガラス体12Rの外周面の一部同士がクラッドガラス体12Rの直径よりも小さな幅に亘って接するように、マルチコアファイバ用母材1Pを線引きする。このような温度で線引きされることで、上記先端部1PF以外の部位においても、隣接するクラッドガラス体12R同士が溶融しながら互いの表面張力を介して一体化する。こうして、マルチコアファイバ用母材1Pの長手方向に沿って、3つの接合部21Rが形成される。
【0064】
紡糸炉110から出たマルチコアファイバ用母材1Pの部位は、すぐに固化する。こうして、それぞれのシングルコアファイバ用ロッド10Rにおいて、コアガラス体11Rが上述のコア要素となり、クラッドガラス体12Rがクラッド部12となる。その結果、それぞれのシングルコアファイバ用ロッド10Rが、コア11の中心からの距離が一定となる傾向にある外周面を有する3つのシングルコアファイバ10となる。また、溶融状態にある上記接合部21Rもすぐに固化して、3つの接合部21となる。こうして、
図1に示すマルチコアファイバ裸線が形成される。その後、
図8に示すように、このマルチコアファイバ裸線1Nは、冷却装置120を通過して適切な温度まで冷却される。例えば40℃~50℃まで冷却される。
【0065】
次に、マルチコアファイバ裸線1Nは、内側被覆層30となる第1熱硬化樹脂が入った第1コーティング装置131を通過し、クラッド20が第1熱硬化樹脂で被覆される。第1熱硬化樹脂で被覆されたマルチコアファイバ裸線1Nは、第1加熱炉132を通過し、第1加熱炉132内で加熱される。この加熱により、第1熱硬化樹脂を形成する材料が架橋して第1熱硬化樹脂が硬化し、内側被覆層30が形成される。
【0066】
なお、内側被覆層30を紫外線硬化樹脂から形成する場合は、第1紫外線硬化樹脂が入った第1コーティング装置131によってクラッド20を被覆したのち、当該樹脂を硬化させる。
【0067】
次に、内側被覆層30で覆われたマルチコアファイバ裸線1Nは、外側被覆層40となる第2熱硬化樹脂が入った第2コーティング装置133を通過し、内側被覆層30が第2熱硬化樹脂で被覆される。第2熱硬化樹脂で被覆されたマルチコアファイバ裸線1Nは、第2加熱炉134を通過し、第2加熱炉134内で加熱される。この加熱により、第2熱硬化樹脂を形成する材料が架橋して第2熱硬化樹脂が硬化し、外側被覆層40が形成される。
【0068】
なお、内側被覆層30を紫外線硬化樹脂から形成する場合は、第2紫外線硬化樹脂が入った第2コーティング装置133によってクラッド20を被覆したのち、当該樹脂を硬化させる。
【0069】
こうして、
図1に示すマルチコアファイバ1が形成される。
【0070】
その後、マルチコアファイバ1は、ターンプーリー141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
【0071】
本実施形態のマルチコアファイバ1の製造方法によれば、溶融状態で接したクラッドガラス体12Rの外周面の一部同士が、それぞれのシングルコアファイバ10におけるそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士が当該クラッド部12の直径よりも小さな幅に亘って一体とされる接合部となり得る。また、それぞれのクラッドガラス体12Rの外周面における他の一部は、シングルコアファイバ10におけるそれぞれのクラッド部12の外周面のうちコア11の中心からの距離が一定となる傾向にある部位である。したがって、このマルチコアファイバの製造方法によれば、上記のマルチコアファイバ1を製造することができる。
【0072】
また、このマルチコアファイバの製造方法によれば、複数のシングルコアファイバ用ロッド10Rを束ねた状態のまま線引するだけでマルチコアファイバを製造することができるため、クラッドとなるガラス部材に孔をあけてその孔にコアとなるガラス部材を挿入するような工程を省略することができる。よって、工程数の低減や製造コストの削減を実現し得る。
【0073】
また、このマルチコアファイバの製造方法では、バンドル工程SP1の際に隣り合うシングルコアファイバ用ロッド同士が接するようにシングルコアファイバ用ロッドを組み上げるため、シングルコアファイバ用ロッド同士が近接するが非接触の場合に比べて、クラッドガラス体同士が溶着し易い。よって、より効果的に接合部を形成することができる。
【0074】
また、本実施形態では、バンドル工程SP1において、互いに隣り合うシングルコアファイバ用ロッド10Rのクラッドガラス体12Rの外周面同士を溶着させる。このため、互いに隣り合うシングルコアファイバ用ロッド10R同士の位置ずれを抑制し得る。特に、本実施形態では、シングルコアファイバ用ロッド10Rにおける線引きが開始される側において、クラッドガラス体12Rの外周面同士が溶着されるため、線引工程SP3において、クラッドガラス体12Rの外周面の一部同士を接しさせるきっかけとすることができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0076】
図9は、本実施形態のマルチコアファイバ1を
図1と同様の視点で示す図である。
図9に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、4つのシングルコアファイバ10を有する点において、第1実施形態のマルチコアファイバ1と主に異なる。本実施形態において、4つのシングルコアファイバ10は、それぞれのコア11の中心が正方形の頂点上に位置するように配置されている。
【0077】
本実施形態のマルチコアファイバ1は、4つの接合部21を有する。それぞれの接合部21では、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士がクラッド部12の直径よりも小さな幅に亘って一体化している。従って、本実施形態のマルチコアファイバ1のクラッド20は、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12から成る。クラッド20の外周面は、それぞれのクラッド部12の外周面における接合部21を除く他の一部は、コア11の中心からの距離が一定の面である。
【0078】
本実施形態においても、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10の上記他の一部は、接合部21から円弧を描きながら互いに離間しており、クラッド20にはくびれが形成されている。また、クラッド20には、4つのシングルコアファイバ10の外周面によって囲われる多角形状の空隙Gが存在し、本実施形態では、正方形状の空隙Gが存在する。
【0079】
このような構成によれば、第1実施形態と同様に、シングルコアファイバ10のクラッド部12同士が一体化しているため、コア11間の位置ずれを抑制することができる。また、このマルチコアファイバ1のクラッド20には第1実施形態と同様のくびれが存在するため、クラッドとされるガラスの量を減らすことができ、軽量化を実現し得る。また、上記のような空隙Gが存在するため、さらに軽量化を実現し得る。
【0080】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0081】
図10は、本実施形態のマルチコアファイバ1を
図1と同様の視点で示す図である。
図10に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、6つのシングルコアファイバ10を有する点において、第1実施形態のマルチコアファイバ1と主に異なる。本実施形態において、6つのシングルコアファイバ10は、それぞれのコア11の中心が正六角形の頂点上に位置するように配置されている。また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、6つのシングルコアファイバ10により囲われる空間に1つのダミーファイバ90が配置されている。このダミーファイバ90は、コアやトレンチ層を有しておらず、クラッド部12と同様の材料から構成されている。また、このダミーファイバ90は、クラッド部12よりも低屈折率となる部位を有していても良い。この場合、ダミーファイバ90の対角に存在するコアへのクロストークを抑制することができる。このようなダミーファイバ90を有している点において、本実施形態のマルチコアファイバ1は、ダミーファイバを有さない第1実施形態のマルチコアファイバ1と異なる。
【0082】
本実施形態のマルチコアファイバ1は、6つの接合部21と、6つの接合部22を有する。それぞれの接合部21では、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士がクラッド部12の直径よりも小さな幅に亘って一体化している。また、それぞれの接合部22では、それぞれのシングルコアファイバ10の外周面の一部とダミーファイバ90の外周面の一部とがクラッド部12の直径及びダミーファイバの直径よりも小さな幅に亘って一体化している。従って、本実施形態のマルチコアファイバ1のクラッド20は、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12とダミーファイバ90から成る。
【0083】
マルチコアファイバ1のクラッド20の外周面は、それぞれのクラッド部12の外周面における接合部21,22を除く他の一部を含んでおり、この他の一部はコア11からの距離が一定の面である。本実施形態においても、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれの上記他の一部は、接合部21から円弧を描きながら互いに離間しており、クラッド20にはくびれが形成されている。また、本実施形態のクラッド20には、6つの空隙Gが存在する。それぞれの空隙Gは、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれの外周面とダミーファイバ90の外周面とによって囲われている。
【0084】
このようなダミーファイバ90を有する本実施形態のマルチコアファイバ1は、上記バンドル工程SP1においてダミーファイバ90となるダミーファイバ用ロッドの周りに正六角形状に6つのシングルコアファイバ用ロッド10Rを配置して、第1実施形態と同様にして結束する。そして結束されたそれぞれのシングルコアファイバ用ロッドをダミーファイバ用ロッドと共に上記線引工程SP3と同様にして線引きすることによって製造し得る。
【0085】
本実施形態のマルチコアファイバ1の構成によれば、第1実施形態と同様に、シングルコアファイバ10のクラッド部12同士が一体化しているため、コア11間の位置ずれを抑制することができる。また、このマルチコアファイバ1のクラッド20には第1実施形態と同様のくびれが存在するため、クラッドとされるガラスの量を減らすことができ、軽量化を実現し得る。また、上記のような空隙Gが存在するため、さらに軽量化を実現し得る。
【0086】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、6つのシングルコアファイバ10によって囲われる空間にダミーファイバ90が配置され、このダミーファイバ90との接合部22が存在するため、ダミーファイバ90が存在しない場合に比べて、接合部の数が多い。したがって、マルチコアファイバ1の切断時において、切断用の刃を入れる部分を起点として劈開の力がマルチコアファイバ1に伝搬し易く、切断面をより平坦にし得る。また、このマルチコアファイバ1は、ダミーファイバがない場合と比べて、丈夫であり破断を抑止し得る。
【0087】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0088】
図11は、本実施形態のマルチコアファイバ1を
図1と同様の視点で示す図である。本実施形態のマルチコアファイバ1は、1つのダミーファイバ91と、3つのダミーファイバ92とを有する。ダミーファイバ91,92は、コアやトレンチ層を有しておらず、クラッド部12と同様の材料から構成され、それぞれのシングルコアファイバ10の直径よりも小さな直径とされる。
【0089】
ダミーファイバ91は、3つのシングルコアファイバ10に囲われる空間内に配置されている。ダミーファイバ91の外周面の一部は、それぞれの接合部22において、それぞれのシングルコアファイバ10におけるクラッド部12の外周面の一部と、クラッド部12の直径及びダミーファイバ91の直径よりも小さな幅に亘って一体化している。こうして、マルチコアファイバ1のクラッド20には、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12の外周面の一部とダミーファイバ91の外周面の一部とによって囲われる3つの空隙G1が形成されている。空隙G1には樹脂やガラスなどが充填されていない。
【0090】
それぞれのダミーファイバ92は、それぞれのシングルコアファイバ10のそれぞれの外周面と、3つのシングルコアファイバ10のそれぞれの外周面に接する破線で示す外接三角形LAとによって囲われる空間内に配置されている。ダミーファイバ92の外周面の一部は、それぞれの接合部23において、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれのクラッド部12の外周面の一部と、クラッド部12の直径及びダミーファイバ92の直径よりも小さな幅に亘って一体化している。こうして、マルチコアファイバ1のクラッド20には、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれの外周面の一部とダミーファイバ92の外周面の一部とによって囲われる3つの空隙G2が形成されている。空隙G2には樹脂やガラスなどが充填されていない。
【0091】
本実施形態のマルチコアファイバ1のクラッド20は、それぞれのシングルコアファイバ10のクラッド部12とダミーファイバ91,92から成る。このクラッド20の外周面は、それぞれのクラッド部12の外周面における接合部21,22,23を除く他の一部を含んでいる。この他の一部はコア11からの距離が一定の面である。また、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれの上記他の一部は、接合部23から円弧を描きながら互いに離間している。従って、クラッド20にはくびれが形成されている。
【0092】
このようなダミーファイバ91,92を有する本実施形態のマルチコアファイバ1は、上記バンドル工程SP1において正三角形に束ねたシングルコアファイバ用ロッド10Rの間にダミーファイバ91,92となるダミーファイバ用ロッドを配置した上で、それぞれのシングルコアファイバ用ロッドとそれぞれのダミーファイバ用ロッドとを結束し、それぞれのシングルコアファイバ用ロッドをそれぞれのダミーファイバ用ロッドと共に上記線引工程SP3のように線引きすることによって製造し得る。
【0093】
このような構成によれば、第1実施形態と同様に、シングルコアファイバのクラッド部12同士が一体化しているため、コア11間の位置ずれを抑制することができる。また、このマルチコアファイバ1のクラッド20には第1実施形態と同様のくびれが存在するため、クラッドとされるガラスの量を減らすことができ、軽量化を実現し得る。
【0094】
また、本実施形態のマルチコアファイバ1では、ダミーファイバ91,92が配置され、ダミーファイバ91,92との接合部22,23が存在するため、ダミーファイバ90が存在しない場合に比べて、接合部の数が多い。したがって、マルチコアファイバ1の切断時において、切断用の刃を入れる部分を起点として劈開の力がマルチコアファイバ1に伝搬し易く、切断面をより平坦にし得る。また、このマルチコアファイバ1は、ダミーファイバがない場合と比べて、丈夫であり破断を抑止し得る。
【0095】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0096】
例えば、上記実施形態では、マルチコアファイバのクラッドに、3つ以上のシングルコアファイバのクラッド或いはダミーファイバに囲われる空隙が存在する例を説明した。しかし、このような空隙が存在することは必須ではない。
図12は、マルチコアファイバの変形例を
図1と同様の視点で示す図である。この変形例において、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0097】
図12に示すように、この変形例に係るマルチコアファイバ1は、3つのシングルコアファイバ10が並列している。本変形例では、それぞれの接合部21において、互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれのクラッド部12の外周面の一部同士がクラッド部12の直径よりも小さな幅に亘って一体化しており、接合部21を形成している。従って、このマルチコアファイバ1のクラッド20は、複数のシングルコアファイバ10のそれぞれのクラッド部12から成る。マルチコアファイバ1のクラッド20の外周面は、それぞれのクラッド部12の外周面における接合部21を除く他の一部を含んでいる。この他の一部は、コア11の中心からの距離が一定の面である。互いに隣り合う一対のシングルコアファイバ10のそれぞれの上記他の一部は、接合部21から円弧を描きながら互いに離間しており、クラッド20にはくびれが形成されている。
【0098】
このような構成によれば、第1実施形態と同様に、シングルコアファイバのクラッド部同士が一体化しているため、コア間の位置ずれを抑制することができる。また、このマルチコアファイバ1のクラッド20には第1実施形態と同様のくびれが存在するため、クラッドとされるガラスの量を減らすことができ、軽量化を実現し得る。また、この変形例によれば、3つのシングルコアファイバ10が並列しているため、いわゆるテープファイバとして使用し得る。なお、本変形例では3つのシングルコアファイバからマルチコアファイバ1が構成される例を説明したが、2つのシングルコアファイバを並列させてマルチコアファイバを構成してもよく、4つ以上のシングルコアファイバを並列させてマルチコアファイバを構成してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、コア11が円形である例を説明したが、例えば
図13に示すように、コア11が楕円状であってもよい。
図13は、このようなマルチコアファイバの他の変形例を
図1と同様の視点で示す図である。なお、
図13では、内側クラッド層13及びトレンチ層14の図示が省略されている。
図13に示す変形例は、コア11が楕円である点を除いて第1実施形態のマルチコアファイバ1と同様の構成である。
【0100】
このような楕円状のコア11は、例えば上記線引工程SP3の際に形成することができる。例えば、第1実施形態のマルチコアファイバ1は、
図3に示すように、3つのシングルコアファイバ用ロッド10Rの中心を正三角形の頂点に配置してバンドル化した状態で線引きすることによって製造される。この線引きの際に、シングルコアファイバ用ロッド10Rには、溶着している他の2つのシングルコアファイバ用ロッド10Rの双方からの表面張力を受ける。この表面張力は、コアガラス体11Rを接合部21R方向に引っ張る力である。本例では、1つのコアガラス体11Rに対して、2つの接合部21Rの方向に表面張力がかかるため、この表面張力が合成された結果、
図13に示すように、複数のコア11のうちの少なくとも1つが楕円状に変形する場合がある。このようにコア11を楕円形状に変形させることは、線引工程SP3において、紡糸炉110の温度を調整して、表面張力の大きさを調整することで、実現することができる。コア11がこのように楕円状であれば、コア11を伝搬する光の偏波モードを維持し得る。
【0101】
また、上記実施形態では、接合部21におけるクラッド20の外周面が弧状に凹んでいる例を説明した。しかし、接合部21におけるクラッド20の外周面が弧状に凹んでいなくてもよい。
図14は、このようなマルチコアファイバ1における更に他の変形例を
図2と同様の視点で示す図である。
図14に示すように、本例では、接合部21の幅Wが、一定の部位が存在する。つまり、この例では、接合部21を互いに隣り合うコア11を結ぶ線に沿って移動する場合に接合部21の幅が一定である。このため、接合部21におけるクラッド20の外周面の少なくとも一部が平面状となる。接合部21におけるクラッド20の外周面がこのような形状があることで、内側被覆層30を剥がしやすくし得る。
【0102】
また、上記実施形態では、接合部21は、マルチコアファイバ1の長手方向全体に亘って設けられている例を説明した。しかし、接合部21は、マルチコアファイバ1の長手方向のうち一部の箇所のみ設けられていても良い。この場合、当該一部の箇所において、マルチコアファイバ1を軽量化し得るともにコア間の位置ずれを抑制し得る。
【0103】
また、上記実施形態では、接合部21は、少なくとも2つのクラッド部12の外周面の一部同士が当該クラッド部12の直径よりも小さな幅に亘って一体とされている例を説明した。しかし、接合部21は、少なくとも2つのクラッド部12の外周面の一部同士が当該クラッド部12の直径よりも大きな幅に亘って一体とされていても良い。この場合、接合部21が向けられている箇所において、マルチコアファイバ1におけるコア間の位置ずれを抑制し得る。また、クラッド20に外力が加わっても、クラッド部12の直径よりも大きな幅に亘って一体とされる接合部21が保護し得、クラッド部12へのダメージを低減し得る。また、接合部21の断面積が大きくなるので、マルチコアファイバ1の切断時において、切断用の刃を入れる部分を起点として劈開の力が断面積の大きい接合部21を介してそれぞれのシングルコアファイバ10に伝搬し易くなり得、切断面をより一層平坦に近づけ得る。
【0104】
また、上記実施形態では、シングルコアファイバ10が3つ以上設けられている場合において、接合部21は、それぞれのクラッド部12の外周面の一部同士が一体とされて設けられていることに限定されず、少なくとも2つのクラッド部12の外周面の一部同士が一体とされて設けられていても良い。この場合、クラッド20の外周面は、当該少なくとも2つのクラッド部12の外周面の他の一部を含む。
【0105】
また、上記実施形態では、マルチコアファイバ1の少なくとも2つのコア11を伝搬する光が互いにモード非結合な領域を有していてもよく、マルチコアファイバ1の少なくとも2つのコア11を伝搬する光が互いにモード結合可能な領域を有していてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、シングルコアファイバのクラッド部にトレンチ層が含まれる例を説明したが、このようなトレンチ層は必須の構成ではない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、軽量化し得るともにコア間の位置ずれを抑制し得るマルチコアファイバ及び当該マルチコアファイバの製造方法が提供され、例えば通信などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1・・・マルチコアファイバ
10・・・シングルコアファイバ
10R・・・シングルコアファイバ用ロッド
11・・・コア
12・・・クラッド部
14・・・トレンチ層
20・・・クラッド
21・・・接合部
G・・・空隙