IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小島プレス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電池モジュール 図1
  • 特開-電池モジュール 図2
  • 特開-電池モジュール 図3
  • 特開-電池モジュール 図4
  • 特開-電池モジュール 図5
  • 特開-電池モジュール 図6
  • 特開-電池モジュール 図7
  • 特開-電池モジュール 図8
  • 特開-電池モジュール 図9
  • 特開-電池モジュール 図10
  • 特開-電池モジュール 図11
  • 特開-電池モジュール 図12
  • 特開-電池モジュール 図13
  • 特開-電池モジュール 図14
  • 特開-電池モジュール 図15
  • 特開-電池モジュール 図16
  • 特開-電池モジュール 図17
  • 特開-電池モジュール 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128335
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6557 20140101AFI20220825BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220825BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220825BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220825BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M10/613
H01M10/647
H01M2/10 E
H01M2/10 S
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026800
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】田口 佑介
(72)【発明者】
【氏名】刑部 友敬
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA28
5H040AY05
5H040CC33
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】電池セルに対する拘束機能および冷却機能の双方を確保するとともに、装置規模の小型化を図ることができる電池モジュールを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である電池モジュールは、複数の電池セルが積層状に配列されて収容される収容空間を有する筐体と、前記複数の電池セルの配列方向に前記複数の電池セルの各々を挟む間隔で、前記複数の電池セルの各別に前記収容空間を仕切るように前記筐体に設けられる複数の仕切り板とを備える。前記複数の仕切り板の各々は、前記配列方向と交差する交差方向に貫通して冷媒を流通させる冷却流路と、前記複数の電池セルのうち前記配列方向に対向する電池セルに対し、前記冷却流路内の前記冷媒の圧力に応じて荷重を加えるとともに、前記電池セルと前記冷媒との熱交換を行う作用部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが積層状に配列されて収容される収容空間を有する筐体と、
前記複数の電池セルの配列方向に前記複数の電池セルの各々を挟む間隔で、前記複数の電池セルの各別に前記収容空間を仕切るように前記筐体に設けられる複数の仕切り板と、
を備え、
前記複数の仕切り板の各々は、
前記配列方向と交差する交差方向に貫通して冷媒を流通させる冷却流路と、
前記複数の電池セルのうち前記配列方向に対向する電池セルに対し、前記冷却流路内の前記冷媒の圧力に応じて荷重を加えるとともに、前記電池セルと前記冷媒との熱交換を行う作用部と、を備える、
ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
配管を通じて前記冷却流路へ前記冷媒を流量可変に送出するポンプと、
前記電池セルと前記冷媒との間の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによって検出された圧力が前記電池セルに許容される範囲内となるように、前記ポンプに前記冷媒の流量を調整させる制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記冷却流路よりも前記冷媒の流通方向の上流側の配管に設けられる上流弁と、
前記冷却流路よりも前記冷媒の流通方向の下流側の配管に設けられる下流弁と、
を備え、
前記制御部は、前記ポンプの動作状態を監視し、前記ポンプが停止した状態である場合、前記上流弁および前記下流弁を閉じるように制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記作用部は、前記複数の仕切り板の各々の板面から前記配列方向に突起するように設けられ、前記冷却流路内における前記冷媒の圧力の増減に伴って突起量を増減させる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記冷却流路は、前記作用部の内部に形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記冷却流路は、横断面が円形状をなすように形成されている、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記複数の仕切り板は、前記筐体と一体成形されている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに隣り合うように配列された複数の電池セルを当該複数の電池セルの配列方向に拘束した状態にして備える電池モジュールが提案されている。例えば、特許文献1には、所定の方向に配列された複数の電池セルと、これら複数の電池セルとともに配列方向に荷重が加えられた状態で拘束される緩衝板と、これら複数の電池セルを冷却するための冷却板とを備えた電池モジュール(組電池)が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電池モジュールにおいて、緩衝板は、電池セルの厚さ方向の変形を許容する変形部を有し、電池セルの厚さ方向の一端面と接触するように複数の電池セルの間に配置されている。このような緩衝板は、電池セルの厚さ方向の膨張に伴って当該変形部を変形させることにより、当該電池セルの膨張を吸収している。また、この緩衝板の変形部の内部圧力は、油圧式の圧力調整機構によって調整され、電池セル間の圧力センサによって測定された圧力に基づき、電池セルに加わる荷重(面圧)が一定に保たれるように制御されている。一方、冷却板は、電池セルの厚さ方向の他端面(上記緩衝板とは反対側の面)と接触するように複数の電池セルの間に配置されている。このような冷却板は、冷媒の供給路を有し、当該供給路内を流通する冷媒と電池セルとの熱交換により、当該電池セルを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-157747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の電池モジュールでは、電池セルの厚さ方向の変形を吸収しながら複数の電池セルを適切な荷重で拘束する機能(以下、拘束機能という)と、拘束した複数の電池セルを冷却する機能(以下、冷却機能という)との双方を確保するために、互いに別体の緩衝板と冷却板とを複数の電池セルの各間に交互に配置しなければならない。このため、複数の電池セルの各間には、緩衝板の配置に要するスペースと冷却板の配置に要するスペースとが必要であり、それ故、電池モジュールの規模を小型化することが困難である。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電池セルに対する拘束機能および冷却機能の双方を確保するとともに、装置規模の小型化を図ることができる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電池モジュールは、複数の電池セルが積層状に配列されて収容される収容空間を有する筐体と、前記複数の電池セルの配列方向に前記複数の電池セルの各々を挟む間隔で、前記複数の電池セルの各別に前記収容空間を仕切るように前記筐体に設けられる複数の仕切り板と、を備え、前記複数の仕切り板の各々は、前記配列方向と交差する交差方向に貫通して冷媒を流通させる冷却流路と、前記複数の電池セルのうち前記配列方向に対向する電池セルに対し、前記冷却流路内の前記冷媒の圧力に応じて荷重を加えるとともに、前記電池セルと前記冷媒との熱交換を行う作用部と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、配管を通じて前記冷却流路へ前記冷媒を流量可変に送出するポンプと、前記電池セルと前記冷媒との間の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサによって検出された圧力が前記電池セルに許容される範囲内となるように、前記ポンプに前記冷媒の流量を調整させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記冷却流路よりも前記冷媒の流通方向の上流側の配管に設けられる上流弁と、前記冷却流路よりも前記冷媒の流通方向の下流側の配管に設けられる下流弁と、を備え、前記制御部は、前記ポンプの動作状態を監視し、前記ポンプが停止した状態である場合、前記上流弁および前記下流弁を閉じるように制御する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記作用部は、前記複数の仕切り板の各々の板面から前記配列方向に突起するように設けられ、前記冷却流路内における前記冷媒の圧力の増減に伴って突起量を増減させる、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記冷却流路は、前記作用部の内部に形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記冷却流路は、横断面が円形状をなすように形成されている、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る電池モジュールは、上記の発明において、前記複数の仕切り板は、前記筐体と一体成形されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電池モジュールによれば、電池セルに対する拘束機能および冷却機能の双方を確保するとともに、装置規模の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電池モジュールに適用される組電池の一構成例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る電池モジュールに適用される組電池の一構成例を示す上視図である。
図3図3は、図2に示す組電池のA-A線断面の一構成例を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態における電池セルの一構成例を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態における組電池の筐体の一構成例を示す斜視図である。
図6図6は、図5に示す筐体の上視図である。
図7図7は、本発明の実施形態における仕切り板の一構成例を示す模式図である。
図8図8は、図7に示す仕切り板のB-B線断面の一構成例を示す断面模式図である。
図9図9は、本発明の実施形態における仕切り板の作用部の状態変化の一例を示す模式図である。
図10図10は、本発明の実施形態における第1チャンバーおよび第2チャンバーの一構成例を示す斜視図である。
図11図11は、本発明の実施形態における組電池での冷媒の流れを説明する説明図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る電池モジュールの一構成例を示す模式図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係る電池モジュールの動作の一例を示すフロー図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係る電池モジュールが取り得る電池セル11の熱暴走対策の一例を示す模式図である。
図15図15は、本発明の変形例1に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。
図16図16は、本発明の変形例2に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。
図17図17は、本発明の変形例3に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。
図18図18は、本発明の変形例4に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る電池モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0017】
(組電池)
まず、本発明の実施形態に係る電池モジュールに適用される組電池の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電池モジュールに適用される組電池の一構成例を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る電池モジュールに適用される組電池の一構成例を示す上視図である。図3は、図2に示す組電池のA-A線断面の一構成例を示す断面図である。図1~3に示すように、本実施形態における組電池10は、複数の電池セル11と、複数の電池セル11を収容する筐体20と、筐体20の収容空間29を仕切る複数の仕切り板30とを備える。また、組電池10は、複数の電池セル11を冷却するための冷媒の流入口41が設けられている第1チャンバー40と、複数の電池セル11の冷却に用いられた冷媒の流出口51が設けられている第2チャンバー50とを備える。
【0018】
複数の電池セル11は、図1~3に示すように、積層状に配列されて筐体20の収容空間29に収容される。本実施形態において、電池セル11の個数は、例えば6個である。図4は、本発明の実施形態における電池セルの一構成例を示す斜視図である。図4に示すように、電池セル11は、外装ケース12と、蓋部16と、一対の電極端子17、18とを備える。外装ケース12は、腹面部13a、13bと側面部14a、14bと底部15とを有する有底の箱状体であり、電池セル11を構成する内部電極やセパレータ等(図示せず)を収容する。この外装ケース12において、腹面部13a、13bは電池セル11の厚さ方向に対向する端面部であり、側面部14a、14bは電池セル11の幅方向に対向する端面部である。また、腹面部13a、13bの各面積は、側面部14a、14bおよび底部15に比べて大きい。蓋部16は、外装ケース12の開口部に溶接等によって取り付けられており、当該開口部を閉じる。蓋部16には、一対の電極端子17、18が設けられている。例えば、一対の電極端子17、18のうち、一方はプラス極の端子であり、他方はマイナス極の端子である。これらの外装ケース12、蓋部16および電極端子17、18の各構成材料として、例えば、アルミニウム等の金属が挙げられる。
【0019】
このような電池セル11は、図1~3に示すように、電池セル11の厚さ方向に腹面部13a、13bを対向させるように配列されて筐体20の収容空間29に複数収容される。すなわち、これら複数の電池セル11の積層状の配列方向D1は、電池セル11の厚さ方向と同じである。また、本実施形態において、組電池10の幅方向D2は、筐体20に収容された状態の電池セル11の幅方向と同じである。組電池10の高さ方向D3は、上述した配列方向D1および幅方向D2に対して垂直な方向であり、例えば、筐体20に収容された状態の電池セル11の高さ方向と同じである。なお、上述した配列方向D1、幅方向D2および高さ方向D3は、組電池10の各構成部においても同様である。
【0020】
筐体20は、複数の電池セル11を収容するものである。図5は、本発明の実施形態における組電池の筐体の一構成例を示す斜視図である。図6は、図5に示す筐体の上視図である。詳細には、図5、6に示すように、筐体20は、底部21と一対の側部22、23とを有し、高さ方向D3の上側が開口した有底のコの字状体である。一対の側部22、23のうち、一方の側部22は底部21の幅方向D2の一端部に設けられ、他方の側部23は底部21の幅方向D2の他端部に設けられている。この側部23には、図5に示すように、複数の仕切り板30の各冷却流路32(図3参照)に通じる開口部23aが形成されている。これと同様に、一方の側部22にも、当該各冷却流路32に通じる開口部(図示せず)が形成されている。
【0021】
また、筐体20は、図5、6に示すように、一対のエンドプレート24、25と、バンド26、27と、支持板28とを備えている。詳細には、図6に示すように、支持板28は、底部21と側部22、23とに接合される。支持板28は、複数の仕切り板30のうち配列方向D1の一端部(負側の端部)に位置する仕切り板30-1と配列方向D1に対向し、且つ配列方向D1に仕切り板30-1と所定の間隔をあけるように設けられている。この支持板28と仕切り板30-1との間隔は、例えば図3に示すように、電池セル11を配列方向D1に挟む間隔である。また、図5、6に示すように、一対のエンドプレート24、25のうち一方のエンドプレート24は、筐体20における配列方向D1の一端部に位置するように、支持板28に接触している。他方のエンドプレート25は、筐体20における配列方向D1の他端部(正側の端部)に位置するように、仕切り板30-6に接触している。バンド26、27は、筐体20の幅方向D2に所定の間隔をあけて配置され、エンドプレート24、25の各底部に接合される。なお、バンド26、27は、さらに、筐体20の底部21に接合されてもよい。このようなエンドプレート24、25は、筐体20の収容空間29を配列方向D1に挟んで筐体20の強度を強化する。バンド26、27は、筐体20の底部21側(高さ方向D3の下側)から筐体20の強度を強化する。また、バンド26、27に接合された状態のエンドプレート24、25は、筐体20の収容空間29内に複数の電池セル11を拘束するに足る拘束荷重を維持する。
【0022】
また、図5、6に示すように、筐体20は、複数の電池セル11(図1~3参照)が積層状に配列されて収容される収容空間29を有する。筐体20の収容空間29は、筐体20の底部21と一対の側部22、23と支持板28とによって形成される内部空間である。この収容空間29は、筐体20に設けられた複数の仕切り板30によって電池セル11別に仕切られている。例えば、この収容空間29は、図6に示すように、6個の仕切り板30-1~30-6によって電池セル11別の収容室29-1~29-6に仕切られている。
【0023】
上述した構成を有する筐体20は、例えば、樹脂の射出成形等により、底部21と一対の側部22、23と支持板28とが一体化されるように形成される。このような筐体20を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン等が挙げられる。或いは、筐体20は、樹脂の射出成形等により、複数の仕切り板30と一体成形されてもよい。この場合、筐体20を構成する樹脂材料としては、複数の仕切り板30と同じ樹脂、例えば、オレフィン系エラストマやシリコンゴム等が挙げられる。一方、エンドプレート24、25およびバンド26、27を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン等、複数の仕切り板30よりも硬質な樹脂、鉄またはアルミニウム等の金属が挙げられる。なお、エンドプレート24、25は、筐体20の本体に対して溶着等の手法によって接合されてもよいし、インサート成形等の手法によって筐体20に一体成形されてもよい。
【0024】
複数の仕切り板30は、筐体20の収容空間29を電池セル11別に仕切る機能と、収容空間29に収容された複数の電池セル11の各々を冷却する機能と、これら複数の電池セル11を収容空間29内に拘束する機能とを兼ね備える。
【0025】
詳細には、図1~3に示すように、複数の仕切り板30は、複数の電池セル11の各々を配列方向D1に挟む間隔で複数の電池セル11の各別に筐体20の収容空間29(図6参照)を仕切るように、筐体20に設けられている。これら複数の仕切り板30は、樹脂の射出成形等により、筐体20の底部21および側部22、23と接合または一体成形されている。例えば、図3に示すように、仕切り板30-1の高さ方向D3の下端部は、筐体20の底部21と接合または一体成形によって一体化されている。図1、2に示すように、仕切り板30-1の幅方向D2の両端部は、筐体20の側部22、23と接合または一体成形によって一体化されている。仕切り板30-1~30-6は、このように筐体20と一体化され、電池セル11の配列方向D1に上記間隔で収容空間29を電池セル11別の収容室29-1~29-6(図6参照)に仕切る。
【0026】
また、図3に示すように、複数の仕切り板30の各々は、複数の電池セル11の各々を冷却するための冷媒を流通させる冷却流路32と、当該冷媒の圧力を利用して電池セル11に作用する作用部33とを有する。冷却流路32は、複数の電池セル11の配列方向D1と交差する交差方向に複数の仕切り板30の各々を貫通する内部流路である。本実施形態において、冷却流路32は、作用部33の内部を上記交差方向に貫通している。冷却流路32における上記交差方向は、筐体20および仕切り板30の幅方向D2と同じである。作用部33は、冷却流路32内の冷媒の圧力を利用して膨張収縮または拡大縮小を行い、これにより、仕切り板30の板面から配列方向D1に突起して電池セル11と接触する。このような作用部33は、複数の電池セル11のうち配列方向D1に対向する電池セルに対し、冷却流路32内の冷媒の圧力に応じて荷重を加えるとともに、当該電池セルと当該冷媒との熱交換を行う。
【0027】
例えば、図3に示すように、仕切り板30-1は、配列方向D1に突起した状態の作用部33を、電池セル11-1の配列方向D1の一端面(図4に示す腹面部13b)に接触させている。当該作用部33は、冷却流路32内の冷媒の圧力を利用して、電池セル11-1の配列方向D1の膨張変形または収縮変形を吸収しながら電池セル11-1に荷重を加える。これにより、仕切り板30-1は、支持板28と協同して配列方向D1に電池セル11-1を挟み、この電池セル11-1を適切な荷重で筐体20の収容空間29(図6に示す収容室29-1)内に拘束する。これと同時に、当該作用部33は、電池セル11-1と冷却流路32内の冷媒との熱交換を行う。これにより、仕切り板30-1は、電池セル11-1を冷却する。
【0028】
また、仕切り板30-2は、配列方向D1から接触する電池セル11-2に対し、上記仕切り板30-1と同様に作用する。この電池セル11-2は、図3に示すように、2つの仕切り板30-1、30-2によって配列方向D1に挟まれた状態にある。すなわち、仕切り板30-2は、上記仕切り板30-1と協同して配列方向D1に電池セル11-2を挟み、この電池セル11-2を適切な荷重で筐体20の収容空間29(図6に示す収容室29-2)内に拘束する。これと同時に、仕切り板30-2は、作用部33を介して電池セル11-2と冷却流路32内の冷媒との熱交換を行い、これにより、電池セル11-2を冷却する。この電池セル11-2の冷却は、2つの仕切り板30-1、30-2が協同して行ってもよい。
【0029】
なお、残りの仕切り板30-3~30-6の電池セル11に対する作用は、上述した仕切り板30-1、30-2と同様である。また、本実施形態において、6個の仕切り板30-1~30-6の各々は、仕切り板30と総称される。すなわち、仕切り板30といえば、筐体20に設けられる複数の仕切り板の各々(本実施形態では仕切り板30-1~30-6の各々)を意味する。
【0030】
第1チャンバー40は、複数の仕切り板30の各冷却流路32(図3参照)に冷媒を流入させる入口側チャンバーである。図1、2に示すように、第1チャンバー40は、上記冷媒の流入口41を有し、筐体20における幅方向D2の一端部である側部22に設けられている。このような第1チャンバー40は、複数の仕切り板30における上記交差方向の一端部において、上記各冷却流路32に通じる流通空間を内部に形成する。第1チャンバー40は、当該流通空間を介して流入口41と上記各冷却流路32とを連通させる。ここで、仕切り板30における上記交差方向は、複数の電池セル11の配列方向D1と交差する方向であり、本実施形態において、筐体20および仕切り板30の幅方向D2と同じである。すなわち、上記交差方向の一端部は、筐体20における幅方向D2の一端部である側部22を意味する。
【0031】
第2チャンバー50は、複数の仕切り板30の各冷却流路32から冷媒を流出させる出口側チャンバーである。図1、2に示すように、第2チャンバー50は、上記冷媒の流出口51を有し、筐体20における幅方向D2の他端部である側部23に設けられている。このような第2チャンバー50は、複数の仕切り板30における上記交差方向の他端部において、上記各冷却流路32に通じる流通空間を形成する。第2チャンバー50は、当該流通空間を介して上記各冷却流路32と流出口51とを連通させる。ここで、上記交差方向は本実施形態において筐体20および仕切り板30の幅方向D2と同じであるから、上記交差方向の他端部は、筐体20における幅方向D2の他端部である側部23を意味する。
【0032】
つぎに、本発明の実施形態における仕切り板30について詳細に説明する。図7は、本発明の実施形態における仕切り板の一構成例を示す模式図である。図7には、配列方向D1から見た仕切り板30が図示されている。図8は、図7に示す仕切り板のB-B線断面の一構成例を示す断面模式図である。図7、8に示すように、仕切り板30は、板本体31と、冷却流路32と、作用部33とを備える。
【0033】
板本体31は、図7、8に示すように、複数の作用部33が一体形成された板状の部材である。冷却流路32は、図7、8に示すように、複数の電池セル11の配列方向D1と交差する交差方向に貫通するように、板本体31に複数設けられている。詳細には、冷却流路32は、板本体31と一体化された複数の作用部33の各内部に形成されている。上記交差方向は仕切り板30の幅方向D2と同じであるから、複数(例えば8個)の冷却流路32の各々は、仕切り板30の幅方向D2に作用部33を貫通する内部流路である。仕切り板30において、冷却流路32の内部を流通する冷媒の圧力が板本体31および作用部33に対して一定に加わるようにするという観点から、冷却流路32は、横断面が円形をなすように形成されていることが好ましい。
【0034】
作用部33は、冷却流路32内の冷媒の圧力に応じて膨張収縮または拡大縮小しながら、仕切り板30の厚さ方向(配列方向D1)に対向する電池セル11(図3参照)に作用する。詳細には、作用部33は、冷却流路32内の冷媒の圧力に応じて変形し得る軟質な樹脂によって構成される。図7に示すように、作用部33は、仕切り板30の幅方向D2に延在するように板本体31に複数(本実施形態では8個)設けられている。また、図8に示すように、これら複数の作用部33の各々は、仕切り板30の板面(板本体31の外表面)から配列方向D1に突起するように設けられている。このような作用部33は、冷却流路32内における冷媒の圧力の増減に伴って反力を増減させる。本実施形態において、作用部33の反力は、作用部33に加えられた外力を押し返す力(例えば弾力)である。このような作用部33は、冷却流路32の内部に冷媒が存在しない等、冷却流路32内の冷媒の圧力が極めて小さい場合、外力を押し返す反力を殆ど有さず、押圧によって容易に凹む状態となる。また、作用部33は、冷却流路32内の冷媒の圧力が増加するに伴い、上記反力を増大させて弾性をより強めた状態となり、冷却流路32内の冷媒の圧力が減少するに伴い、上記反力を減少させて弾性をより弱めた状態となる。このような作用部33は、配列方向D1に対向する電池セル11と接触し、当該電池セル11の膨張または収縮に伴って変形しながら、冷却流路32内の冷媒の圧力に応じた上記反力を荷重として当該電池セル11に加える。
【0035】
図9は、本発明の実施形態における仕切り板の作用部の状態変化の一例を示す模式図である。図9に示すように、仕切り板30の作用部33は、冷却流路32内の冷媒80の圧力に応じた反力を有して板本体31の外表面から突起し、上述した配列方向D1に対向する電池セル11と接触した状態となる(状態S1)。この状態S1において、作用部33は、冷媒80の圧力の増加に伴って増大した反力により、電池セル11を押圧しながら、当該反力に相当する荷重を電池セル11に加える。
【0036】
ここで、電池セル11は、その充電状態等に起因して膨張または収縮する。なお、電池セル11の収縮は、膨張した電池セル11が膨張前の状態に戻る変形である。図9に示すように、電池セル11が膨張した場合、作用部33は、この膨張した状態の電池セル11を反力によって受け止めながら、冷媒80の圧力により、この電池セル11に接触した状態を維持する(状態S2)。この状態S2において、作用部33は、電池セル11の膨張を上記反力によって吸収するとともに、冷媒80の圧力に応じた反力(荷重)を電池セル11に加える。また、電池セル11が収縮した場合、作用部33は、この収縮した状態の電池セル11に反力を加えながら、冷媒80の圧力を利用して、この電池セル11に接触した状態を維持する。すなわち、作用部33は、図9に示す状態S2から状態S1に変化する。この状態S1において、作用部33は、電池セル11の収縮を反力によって吸収するとともに、冷媒80の圧力に応じた反力(荷重)を電池セル11に加える。上述したように、作用部33は、電池セル11の膨張または収縮に伴って状態S1、S2の変化を繰り返す。
【0037】
なお、仕切り板30の板本体31および作用部33を構成する樹脂としては、例えば、オレフィン系エラストマまたはシリコンゴム等の弾性樹脂、当該弾性樹脂に比べて弾性が低い低弾性樹脂が挙げられる。当該低弾性樹脂としては、例えば、可撓性樹脂等が挙げられる。
【0038】
また、仕切り板30は、接着や嵌合等の手法によって筐体20に接合されてもよいが、接合の手間を低減するという観点から、インサート成形によって筐体20と一体に接合されることが好ましく、樹脂の射出成形によって筐体20と一体成形されることが特に好ましい。筐体20と複数の仕切り板30との一体成形の手法としては、例えば、一種類の樹脂を用いた射出成形、二種類の樹脂を用いた二色成形等が挙げられる。
【0039】
つぎに、本発明の実施形態における第1チャンバー40および第2チャンバー50について詳細に説明する。図10は、本発明の実施形態における第1チャンバーおよび第2チャンバーの一構成例を示す斜視図である。図10には、筐体20に取り付けられる前の第1チャンバー40および第2チャンバー50が図示されている。
【0040】
図10に示すように、第1チャンバー40は、上述したように流入口41を有し、外周に沿って流入口41とは反対側に突起した外枠が設けられた凹状に形成される。特に図10には図示されていないが、筐体20の側部22には、他方の側部23と同様に、複数の仕切り板30の各冷却流路32に通じる開口部が複数(例えば冷却流路32と同数)形成されている。第1チャンバー40は、この側部22に形成された複数の開口部を内側に囲うように、筐体20の側部22の外表面に取り付けられる。これにより、第1チャンバー40は、筐体20の側部22との間に流通空間を形成する。この流通空間は、複数の仕切り板30の各冷却流路32と流入口41とを連通させる空間である。流入口41は、第1チャンバー40の厚さ方向(図10では幅方向D2)に延在し、第1チャンバー40の開口部に設けられている。例えば、図10に示すように、流入口41は、第1チャンバー40における高さ方向D3の上端側の部位に設けられている。
【0041】
また、図10に示すように、第2チャンバー50は、上述したように流出口51を有し、外周に沿って流出口51とは反対側に突起した外枠が設けられた凹状に形成される。筐体20の側部23には、図10に示すように、複数の仕切り板30の各冷却流路32に通じる開口部23aが複数(例えば冷却流路32と同数)形成されている。第2チャンバー50は、この側部23に形成された複数の開口部23aを内側に囲うように、筐体20の側部23の外表面に取り付けられる。これにより、第2チャンバー50は、筐体20の側部23との間に流通空間を形成する。この流通空間は、複数の仕切り板30の各冷却流路32と流出口51とを連通させる空間である。流出口51は、第2チャンバー50の厚さ方向(図10では幅方向D2)に延在し、第2チャンバー50の開口部に設けられている。例えば、図10に示すように、流出口51は、第2チャンバー50における高さ方向D3の上端側の部位に設けられている。
【0042】
これらの第1チャンバー40および第2チャンバー50は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂によって構成される。また、図10に示すように、第1チャンバー40の流入口41と第2チャンバー50の流出口51とは、互いに対極な位置関係にある。例えば、図1、2に示すように、第1チャンバー40の流入口41は、複数の電池セル11の配列方向D1の一端部側に位置し、第2チャンバー50の流出口51は、上記配列方向D1の他端部側に位置する。
【0043】
つぎに、本実施形態の組電池10における冷媒の流れについて説明する。図11は、本発明の実施形態における組電池での冷媒の流れを説明する説明図である。図11には、組電池10の上視図が模式的に示されている。また、図11において、破線矢印は、冷媒80の流れを模式的に示している。
【0044】
組電池10には、上述した複数(例えば6個)の仕切り板30-1~30-6の各冷却流路32(図3等参照)と第1チャンバー40および第2チャンバー50とによって流通経路が形成されている。本実施形態における冷媒80は、この流通経路に沿って組電池10内を流通する。
【0045】
詳細には、図11に示すように、冷媒80は、流入口41から第1チャンバー40内の流通空間に流入する。流入した冷媒80は、第1チャンバー40内の流通空間に貯留されるとともに、第1チャンバー40側から仕切り板30-1~30-6の各冷却流路32に流入する。その後、冷媒80は、仕切り板30-1~30-6の各冷却流路32内を、第1チャンバー40側から第2チャンバー50側へ向かう一方向(図11では幅方向D2の正方向)に流通しながら、複数の電池セル11の各々を冷却する。
【0046】
例えば、仕切り板30-1は、図3に示すように、高さ方向D3に並ぶ複数(本実施形態では8個)の冷却流路32を有している。また、仕切り板30-1は、配列方向D1に対向する電池セル11-1の腹面部と複数の作用部33とを接触させている。このような仕切り板30-1において、冷媒80は、各冷却流路32の内部を上記一方向に流通しながら、仕切り板30-1の各作用部33を介して電池セル11-1と熱交換を行い、これにより、当該電池セル11-1を冷却する。本実施形態において、冷媒80は、他の仕切り板30-2~30-6においても、上記仕切り板30-1の場合と同様に、各冷却流路32の内部を上記一方向に流通しながら、作用部33を介して電池セル11を冷却する。
【0047】
また、図3に示すように、仕切り板30-1の板本体は、配列方向D1に対向する電池セル11-2の腹面部と面接触している。このような仕切り板30-1において、冷媒80は、各冷却流路32の内部を上記一方向に流通しながら、仕切り板30-1の板本体を介して電池セル11-2と熱交換を行い、これにより、当該電池セル11-2を冷却することが可能である。上記仕切り板30-1の板本体を介した電池セル11の冷却は、配列方向D1に電池セル11と板本体とを面接触させている仕切り板30-2~30-5においても同様である。
【0048】
上述したように冷媒80を組電池10内の流通経路に沿って流通させることにより、複数の電池セル11の各々を冷媒80との熱交換によって電池セル11の腹面部側から冷却することができる。この結果、電池セル11の冷却効率を向上させることができる。電池セル11を冷却した後の冷媒80は、図11に示すように、仕切り板30-1~30-6の各冷却流路32から第2チャンバー50の流通空間に流出する。その後、冷媒80は、第2チャンバー50内の流通空間に貯留されるとともに、流出口51から組電池10の外部へ流出する。
【0049】
なお、冷媒80は、仕切り板30の各冷却流路32内を流通可能な流体であれば、特に限定されない。例えば、冷媒80として、冷却水等の液体、冷気等の気体、これらの液体と気体との混合流体等が挙げられる。
【0050】
(電池モジュール)
つぎに、本発明の実施形態に係る電池モジュールの構成について説明する。図12は、本発明の実施形態に係る電池モジュールの一構成例を示す模式図である。図12に示すように、本発明の実施形態に係る電池モジュール1は、上述した組電池10と、ポンプ61と、圧力センサ62と、上流弁63と、下流弁64と、制御部68とを備える。また、電池モジュール1は、組電池10に対する冷媒80の流入出を行うための配管70を備える。この配管70には、冷媒80を冷却するための冷却装置69が設けられている。
【0051】
図12に示すように、組電池10の流入口41には供給管71が接続され、組電池10の流出口51には流出管72が接続されている。供給管71は、上流弁63を介してポンプ61と組電池10の流入口41とを連通する。流出管72は、下流弁64を介して組電池10の流出口51と冷却装置69とを連通する。また、冷却装置69およびポンプ61には、これらを連通する循環管73が接続されている。上記の供給管71と流出管72と循環管73とによって、ポンプ61から組電池10と冷却装置69とを順に通って再びポンプ61に戻る冷媒80の循環経路をなす配管70が構成される。
【0052】
ポンプ61は、電動式ポンプ等によって構成され、図12に示すように、配管70の中途部に設けられている。例えば、ポンプ61の出側には供給管71が接続され、ポンプ61の入側には循環管73が接続されている。ポンプ61は、配管70を通じて組電池10の上記冷却流路32(図3参照)へ冷媒80を流量可変に送出する。詳細には、ポンプ61は、配管70の内部における冷媒80の一定方向の流れ(図12の破線矢印参照)を発生させる。すなわち、ポンプ61は、流出管72および循環管73等を通じて冷媒80を吸引するとともに、この冷媒80を、供給管71等を通じて組電池10へ圧送する。この際、ポンプ61は、制御部68による制御に基づいて冷媒80の流量を調整し、調整した流量の冷媒80を組電池10へ送出する。
【0053】
なお、ポンプ61は、電池モジュール1が搭載される移動体または装置の動力源からのエネルギー(電力等)によって駆動する。例えば、電池モジュール1が車両に搭載された場合、ポンプ61は、車両の動力源から供給されるエネルギーによって駆動する。この場合、ポンプ61は、車両が停止する等して、動力源からエネルギーが供給されない状態であれば、駆動を停止する。この結果、冷媒80は、ポンプ61から組電池10へ供給されなくなる。
【0054】
圧力センサ62は、組電池10内の電池セル11(図1~3参照)と冷媒80との間の圧力を検出する。詳細には、図12に示すように、圧力センサ62は、例えば流出管72の中途部(本実施形態では下流弁64の下流側近傍の部位)に設けられる。圧力センサ62は、組電池10内の電池セル11と冷媒80との間の圧力の一例として、流出管72を通じて組電池10から流出する冷媒80の圧力を検出する。ここで、当該冷媒80の圧力は、ポンプ61によって組電池10へ送出される冷媒80の流量の増減に伴って増減し、組電池10においては冷却流路32内の冷媒80から上記作用部33(図3参照)を介して電池セル11に加えられる。圧力センサ62は、このような冷媒80の圧力を検出した場合、その都度、検出した圧力を示す電気信号を制御部68へ送信する。
【0055】
上流弁63および下流弁64は、組電池10へ冷媒80が供給されない状態において、この組電池10における各冷却流路32内の冷媒80の圧力を維持するための弁である。詳細には、図12に示すように、上流弁63は、組電池10の流入口41に通じる供給管71の中途部、例えば組電池10の流入口41とポンプ61との間の部位に設けられる。本実施形態において、供給管71は、組電池10の冷却流路32よりも冷媒80の流通方向の上流側の配管である。また、下流弁64は、組電池10の流出口51に通じる流出管72の中途部、例えば組電池10の流出口51の下流側近傍に設けられる。本実施形態において、流出管72は、組電池10の冷却流路32よりも冷媒80の流通方向の下流側の配管である。
【0056】
このような上流弁63および下流弁64は、ポンプ61によって冷媒80が流通している場合、双方とも開状態になっている。一方、ポンプ61の駆動停止によって冷媒80の流通が停止している場合、上流弁63および下流弁64は、双方とも閉状態になっている。これにより、上流弁63および下流弁64は、組電池10からの冷媒80の流出を阻止して、この組電池10における各冷却流路32内の冷媒80の圧力を維持する。
【0057】
制御部68は、電池モジュール1の各構成部を制御するものである。詳細には、制御部68は、メモリおよびCPU等によって構成され、上述したポンプ61、上流弁63および下流弁64の各動作を制御する。
【0058】
例えば、制御部68は、圧力センサ62によって検出された圧力が組電池10の電池セル11に許容される範囲内となるように、ポンプ61に冷媒80の流量を調整させる。本実施形態において、組電池10の電池セル11に許容される上記圧力の範囲は、組電池10における冷却流路32内の冷媒80と電池セル11との間の圧力の上下限によって設定される。上記圧力の上限値は、以下の第1条件および第2条件の双方を満足する冷媒80の最大圧力である。上記第1条件は、組電池10内の電池セル11の外装ケース12(図4参照)と内部電極(図示せず)とが接触した状態を維持する、という条件である。上記第2条件は、組電池10内の電池セル11が破損しない、という条件である。一方、上記圧力の下限値は、組電池10において仕切り板30の作用部33が冷却流路32内の冷媒80の圧力によって電池セル11を拘束する際の当該冷媒80の最小圧力である。これら冷媒80の圧力の上下限値は、例えば、実験やシミュレーション等によって導出することができる。
【0059】
また、制御部68は、連続的または所定の間隔で断続的にポンプ61の動作状態を監視し、ポンプ61が停止した状態である場合、上流弁63および下流弁64を閉じるように制御する。一方、ポンプ61が駆動している状態である場合、制御部68は、上流弁63および下流弁64を開くように制御する。
【0060】
冷却装置69は、組電池10内における電池セル11の冷却に使用された冷媒80を冷却するものである。詳細には図12に示すように、冷却装置69は、配管70の中途部に設けられている。例えば、冷却装置69の入側には流出管72が接続され、冷却装置69の出側には循環管73が接続されている。冷却装置69は、流出管72を通じて組電池10の流出口51から使用済みの冷媒80を回収し、回収した冷媒80を冷却する。冷却装置69によって冷却された冷媒80は、循環管73を通じてポンプ61に吸引され、再度、ポンプ61から供給管71を通じて組電池10へ圧送される。なお、冷却装置69は、空調用のエアーコンディショナと共用してもよい。
【0061】
つぎに、本発明の実施形態に係る電池モジュール1の動作について説明する。図13は、本発明の実施形態に係る電池モジュールの動作の一例を示すフロー図である。電池モジュール1は、筐体20内に収容された複数の電池セル11に対する拘束機能と冷却機能との双方を確保するために、図13に示すステップS101~S107の各処理を適宜実行する。
【0062】
詳細には、図13に示すように、電池モジュール1は、組電池10内の電池セル11と冷媒80との間の圧力を検出する(ステップS101)。ステップS101において、圧力センサ62は、上記電池セル11と冷媒80との間の圧力として、組電池10の流出口51に通じる流出管72内の冷媒80の圧力を測定する。本実施形態において、流出管72内の冷媒80の圧力は、ポンプ61から圧送された後に組電池10内を流通して当該組電池10から流出した冷媒80の圧力である。当該冷媒80の圧力は、組電池10において、仕切り板30の作用部33が電池セル11に加える反力(荷重)を発生させる。圧力センサ62は、このような冷媒80の圧力を検出し、検出した圧力を示す電気信号を制御部68へ送信する。
【0063】
ステップS101を実行後、電池モジュール1は、検出した圧力(以下、圧力Pという)が組電池10の電池セル11に許容される圧力の範囲内であるか否かを判断する(ステップS102)。ステップS102において、制御部68は、圧力センサ62から電気信号を受信し、受信した電気信号に示される圧力、すなわち、圧力センサ62によって検出された冷媒80の圧力Pを取得する。ついで、制御部68は、この冷媒80の圧力Pと、圧力Pに関する上側基準値PHおよび下側基準値PLとを比較する。
【0064】
ここで、上側基準値PHおよび下側基準値PLは、冷媒80の圧力Pが電池セル11に許容される範囲(以下、圧力許容範囲という)内であるか否かを判断するための基準値であり、制御部68に予め設定されている。例えば、上側基準値PHは、下側基準値PL超、電池セル11の圧力許容範囲の上限値Pmax未満の範囲内(PL<PH<Pmax)に設定される。下側基準値PLは、当該圧力許容範囲の下限値Pmin超、上側基準値PH未満の範囲内(Pmin<PL<PH)に設定される。制御部68は、これらの圧力Pと上側基準値PHおよび下側基準値PLとを比較し、これにより、当該圧力Pが電池セル11の圧力許容範囲内であるか否かを判断する。
【0065】
上記ステップS102において、冷媒80の圧力Pが上側基準値PH以上である場合(ステップS102,P≧PH)、電池モジュール1は、組電池10へ供給する冷媒80の流量を減少させる(ステップS103)。ステップS103において、制御部68は、冷媒80の流量を減少するようにポンプ61を制御する。ポンプ61は、この制御部68による制御に基づいて、冷媒80の流量を下げるとともに、この流量低下後の冷媒80を、供給管71を通じて組電池10へ圧送する。これにより、上記流量低下後の冷媒80は、流入口41から組電池10内に流入し、仕切り板30の冷却流路32内を流通して流出口51から流出管72へ流出する。すなわち、冷却流路32内の冷媒80の流量は、上記ポンプ61による低下後の流量に調整される。当該冷媒80の圧力は、上記冷媒80の流量低下に伴って減少する。
【0066】
ここで、冷媒80の圧力Pが上側基準値PH以上である場合において、組電池10内の電池セル11は、仕切り板30の作用部33を押圧する方向に膨張した状態にある。それ故、作用部33が冷却流路32内の冷媒80の圧力に応じて電池セル11に加える荷重は、当該電池セル11に許容される上限に迫るように上昇している。しかし、ステップS103において冷却流路32内の冷媒80の圧力が減少することにより、上記荷重の上昇は抑制される。この結果、上記荷重は、当該電池セル11の許容範囲内の荷重(好ましくは一定の荷重)に制御される。
【0067】
一方、上記ステップS102において、冷媒80の圧力Pが下側基準値PL超、上側基準値PH未満である場合(ステップS102,PL<P<PH)、電池モジュール1は、組電池10へ供給する冷媒80の流量を現状維持する(ステップS104)。ステップS104において、制御部68は、冷媒80の流量を現状維持するようにポンプ61を制御する。ポンプ61は、この制御部68による制御に基づいて、冷媒80の流量を現行の流量に維持するとともに、この流量の冷媒80を、供給管71を通じて組電池10へ圧送する。これにより、上記流量の冷媒80は、上述したステップS103の場合と同様に組電池10内を流通して流出管72へ流出する。すなわち、冷却流路32内の冷媒80の流量および圧力は、現状維持される。ここで、冷媒80の圧力PがPL<P<PHである場合、組電池10において、作用部33が冷却流路32内の冷媒80の圧力に応じて電池セル11に加える荷重は、当該電池セル11の許容範囲内の荷重に制御されている。
【0068】
また、上記ステップS102において、冷媒80の圧力Pが下側基準値PL以下である場合(ステップS102,P≦PL)、電池モジュール1は、組電池10へ供給する冷媒80の流量を増加させる(ステップS105)。ステップS105において、制御部68は、冷媒80の流量を増加するようにポンプ61を制御する。ポンプ61は、この制御部68による制御に基づいて、冷媒80の流量を上げるとともに、この流量増加後の冷媒80を、供給管71を通じて組電池10へ圧送する。これにより、上記流量増加後の冷媒80は、上述したステップS103、S104の場合と同様に組電池10内を流通して流出管72へ流出する。すなわち、冷却流路32内の冷媒80の流量は、上記ポンプ61による増加後の流量に調整される。当該冷媒80の圧力は、上記冷媒80の流量増加に伴って上昇する。
【0069】
ここで、冷媒80の圧力Pが下側基準値PL以下である場合において、組電池10内の電池セル11は、膨張前の状態に戻る方向に収縮した状態にある。それ故、作用部33が冷却流路32内の冷媒80の圧力に応じて電池セル11に加える荷重は、当該電池セル11に許容される下限に迫るように減少している。しかし、ステップS103において冷却流路32内の冷媒80の圧力が上昇することにより、上記荷重の減少は抑制される。この結果、上記荷重は、当該電池セル11の許容範囲内の荷重(好ましくは一定の荷重)に制御される。
【0070】
上述したステップS103、ステップS104またはステップS105を実行後、電池モジュール1は、ポンプ61が停止した状態であるか否かを判断する(ステップS106)。ステップS106において、制御部68は、ポンプ61の動作状態を監視し、この結果に基づいて、ポンプ61が動作している状態または停止している状態の何れであるかを判断する。
【0071】
ポンプ61が動作している状態である場合(ステップS106,No)、電池モジュール1は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。この場合において、上流弁63および下流弁64は開状態であり、ポンプ61は組電池10へ冷媒80を圧送している。
【0072】
一方、ポンプ61が停止した状態である場合(ステップS106,Yes)、電池モジュール1は、上流弁63および下流弁64を閉鎖する(ステップS107)。ステップS107において、制御部68は、上流弁63および下流弁64の双方を閉じるように制御する。上流弁63は、この制御部68による制御に基づき、開状態から閉状態に切り替わって供給管71を閉鎖する。これに並行して、下流弁64は、この制御部68による制御に基づき、開状態から閉状態に切り替わって流出管72を閉鎖する。なお、制御部68は、これら上流弁63および下流弁64の制御を、何れの弁から先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。ステップS107を実行後、電池モジュール1は、上述したステップS106に戻り、このステップS106以降の処理を繰り返す。
【0073】
(電池セルの熱暴走対策)
つぎに、本発明の実施形態に係る電池モジュール1の電池セル11の熱暴走対策について説明する。電池モジュール1の組電池10に収容されている電池セル11は、過充電、経年劣化または異常な使用状態等に起因して、熱暴走を起こす場合がある。電池モジュール1では、組電池10が電池セル11の熱暴走対策を行う。
【0074】
図14は、本発明の実施形態に係る電池モジュールが取り得る電池セル11の熱暴走対策の一例を示す模式図である。組電池10において、筐体20の収容空間29に収容された複数の電池セル11のうち、何れかの電池セル11に熱暴走が生じた場合、この熱暴走した電池セル11は、冷媒80によって直に冷却される。例えば、図14に示すように、熱暴走した電池セル11を配列方向D1に挟む両側の仕切り板30-3、30-4は、当該電池セル11の高熱によって一部溶けて破損する。これにより、仕切り板30-3、30-4の板本体31または作用部33が破損して、冷却流路32が当該電池セル11側に開口した状態に破損する。このように破損した状態の冷却流路32から冷媒80が漏出し、漏出した冷媒80が当該電池セル11に降り掛かる。この結果、当該電池セル11は、冷媒80の気化熱等によって冷却され、熱暴走が解消される。なお、上記電池セル11の熱暴走対策に利用される冷媒80として、例えば、冷却水等、不燃性の液体が好ましい。
【0075】
また、複数の電池セル11の収容空間29は、上述したように、複数の仕切り板30によって電池セル11別に仕切られている。したがって、上記のように上記電池セル11の熱暴走対策に利用された冷媒80は、当該電池セル11の収容室29-4に留めることができる。この結果、熱暴走していない残りの電池セル11に当該冷媒80が広がる事態を抑制することができる。
【0076】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、複数の電池セル11が積層状に配列されて収容される収容空間29を有する筐体20に、複数の電池セル11の配列方向D1に各電池セル11を挟む間隔で収容空間29を電池セル11別に仕切るように仕切り板30が設けられている。また、仕切り板30は、配列方向D1と交差する交差方向(例えば幅方向D2)に貫通する冷却流路32と、電池セル11と配列方向D1に対向する作用部33とを備え、作用部33は、冷却流路32内を流通する冷媒80の圧力に応じて電池セル11に荷重を加えるとともに、電池セル11と冷媒80との熱交換を行うようにしている。
【0077】
このため、仕切り板30の作用部33により、電池セル11の厚さ方向(配列方向D1)の膨張または収縮を吸収しながら、冷媒80の圧力に応じた適切な荷重で複数の電池セル11を筐体20の収容空間29に拘束できるとともに、これら複数の電池セル11を冷媒80との熱交換で冷却することができる。したがって、上述の電池セル11に対する拘束機能および冷却機能を仕切り板30という一部品に兼備させることができ、これにより、上記拘束機能を担う緩衝板等の第1部品に要する配置スペースと、これとは別に上記冷却機能を担う冷却板等の第2部品に要する配置スペースとを、仕切り板30という一部品の配置スペースに集約することができる。この結果、電池セルに対する拘束機能および冷却機能の双方を確保するとともに、電池モジュールの装置規模の小型化を図ることができる。さらには、電池モジュールの低コスト化を図ることができる。
【0078】
また、電池セル11に作用する仕切り板30の作用部33は、冷却流路32内の冷媒80の圧力に応じて変形するように構成されている。したがって、冷却流路32および作用部33を有する仕切り板30を、弾性樹脂に限らず、低剛性の樹脂によって形成することができる。この結果、電池セル11の膨張または収縮を吸収した際の作用部33のクリープ性を考慮する必要が無くなることから、仕切り板30の構成材料として安価な樹脂を選定することができ、電池モジュール1の低コスト化を促進することができる。
【0079】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、ポンプ61が配管70を通じて組電池10の仕切り板30の冷却流路32へ冷媒80を流量可変に送出し、圧力センサ62が組電池10の電池セル11と冷媒80との間の圧力を検出し、圧力センサ62によって検出された圧力Pが組電池10の電池セル11の圧力許容範囲内となるように、制御部68がポンプ61に冷媒80の流量を調整させている。このため、仕切り板30の作用部33から冷却流路32内の冷媒80の圧力に応じて電池セル11に加えられる荷重が電池セル11の許容範囲の上限を超える前に、上記冷媒80の圧力を下げて当該荷重を上記許容範囲内に減少させることができ、また、当該荷重が電池セル11の許容範囲の下限未満となる前に、上記冷媒80の圧力を上げて当該荷重を上記許容範囲内に増加させることができる。これにより、電池セル11に対して常に上記許容範囲内の荷重を加えることができ、さらには、電池セル11に加える荷重を上記許容範囲内の一定値に制御することができる。
【0080】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、組電池10内の冷却流路32よりも冷媒80の流通方向の上流側の配管(供給管71)に上流弁63を設け、当該冷却流路32よりも冷媒80の流通方向の下流側の配管(流出管72)に下流弁64を設け、制御部68が、ポンプ61の動作状態を監視し、ポンプ61が停止した状態である場合、上流弁63および下流弁64を閉じるように制御している。このため、例えば電池モジュール1を搭載した車両が停止する等に起因して、ポンプ61が停止した状態となった場合、上流弁63および下流弁64を閉状態にして冷却流路32からの冷媒80の流出を抑制することができる。したがって、たとえ冷媒80の流通が停止しても、冷却流路32内に冷媒80を充填した状態を維持することができ、この結果、電池セル11に対する荷重の付与を維持することができる。
【0081】
本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、仕切り板30の板面から配列方向D1に突起するように作用部33を設け、当該作用部33は、冷却流路32内における冷媒80の圧力の増減に伴って反力を増減させるように構成されている。このため、仕切り板30の作用部33と電池セル11とを配列方向D1に効率よく接触させることができ、この結果、仕切り板30と電池セル11との間の熱抵抗を下げるためのギャップフィラーを用いる必要がないことから、電池モジュール1の製造コストの低減を図ることができる。さらには、筐体20の収容空間29に複数の電池セル11を収容する(組付ける)際、仕切り板30の冷却流路32内に冷媒80を充填しなければ、作用部33の反力を弱めて作用部33を容易に凹ませることができ、これにより、収容空間29への複数の電池セル11の収容を作用部33に阻害されず容易に行うことができる。
【0082】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、仕切り板30の作用部33の内部に冷却流路32が形成されている。このため、冷却流路32内の冷媒80の圧力を作用部33に効率よく伝えることができ、これにより、当該冷媒80の圧力に応じて作用部33から電池セル11に対して効率よく荷重を加えることができる。
【0083】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、冷却流路32の横断面が円形状をなすように冷却流路32が形成されている。このため、冷却流路32内の冷媒80の圧力を作用部33に対して均等に伝えることができ、これにより、電池セル11の腹面部に対して均等に荷重を加えることができる。
【0084】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、仕切り板30を筐体20と一体成形している。このため、仕切り板30と筐体20とを継ぎ目なく接合することができ、この結果、仕切り板30と筐体20との継ぎ目からの冷媒の漏れを防止できるとともに、仕切り板30および筐体20を各々別部品として接合した場合に比べ、仕切り板30と筐体20との一体構造を簡易に形成することができ、さらには、その成形加工費を低減することができる。
【0085】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、仕切り板30を樹脂によって構成している。このため、電池セル11と仕切り板30との間の絶縁性を簡易に確保することができ、金属製の仕切り板を採用した場合に必要な絶縁処理を省くことができる。
【0086】
また、本発明の実施形態に係る電池モジュール1では、複数の電池セル11を収容する収容空間29が仕切り板30によって電池セル11別に仕切られている。このため、たとえ仕切り板30に破損が生じて冷却流路32から冷媒が漏れ出たとしても、この冷媒の漏出を収容空間29の一区画(一つの電池セル11の収容室)内に留めることができる。この結果、冷媒による電池セル11の汚染や短絡等、電池モジュール1の被害を最小限に抑えることができる。
【0087】
(変形例1)
つぎに、本発明の実施形態における組電池10が備える仕切り板30の変形例1について説明する。図15は、本発明の変形例1に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。図15には、本変形例1に係る仕切り板30Aを幅方向D2から見た側視図が図示されている。図15に示すように、本変形例1に係る仕切り板30Aは、上述した実施形態に係る仕切り板30の板本体31に代えて板本体31Aを備え、冷却流路32に代えて冷却流路32Aを備え、作用部33に代えて作用部33Aを備える。特に図示しないが、本変形例1に係る組電池は、上述した実施形態における仕切り板30に代えて本変形例1の仕切り板30Aを備える。本変形例1に係る電池モジュールは、上述した実施形態における組電池10に代えて本変形例1の組電池を備える。その他の構成は、上述した実施形態と同じである。
【0088】
板本体31Aは、図15に示すように、内部に冷却流路32Aを有する中空構造の板状部材である。冷却流路32Aは、図15に示すように、仕切り板30Aの幅方向D2から見てスリット状をなし、複数の電池セル11の配列方向D1と交差する交差方向に貫通するように板本体31Aに設けられている。本変形例1において、上記交差方向は、仕切り板30Aの幅方向D2と同じである。すなわち、冷却流路32Aは、仕切り板30Aを幅方向D2に貫通する内部流路である。
【0089】
作用部33Aは、図15に示すように、板本体31Aの厚さ方向(配列方向D1)における両側の腹面部34a、34bによって構成される。作用部33Aは、冷却流路32A内の冷媒の圧力に応じて配列方向D1の両側に反力を発生させながら、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11に作用する。詳細には、作用部33Aは、冷却流路32A内の冷媒の圧力が増加するに伴い、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11へ加える反力を増大させる。また、作用部33Aは、冷却流路32A内の冷媒の圧力が減少するに伴い、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11へ加える反力を弱める。このような作用部33Aは、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11と接触し、当該各電池セル11の膨張または収縮を上記反力によって吸収するとともに、冷却流路32A内の冷媒の圧力に応じた荷重を当該各電池セル11に加える。これにより、作用部33Aは、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11の膨張または収縮を吸収するとともに、上記荷重の付与によって各電池セル11を組電池の筐体内に拘束する。また、作用部33Aは、上記のように配列方向D1の両側に接触する各電池セル11と冷却流路32A内の冷媒との熱交換を行い、これにより、各電池セル11を冷却する。
【0090】
本変形例1に係る電池モジュールは、上述した仕切り板30Aが設けられた組電池を備え、その他は上述した実施形態と同様に構成されている。このため、本変形例1では、上述した実施形態と同様の作用効果を享受し得る電池モジュールを提供することが可能である。
【0091】
(変形例2)
つぎに、本発明の実施形態における組電池10が備える仕切り板30の変形例2について説明する。図16は、本発明の変形例2に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。図16には、本変形例2に係る仕切り板30Bを幅方向D2から見た側視図が図示されている。図16に示すように、本変形例2に係る仕切り板30Bは、上述した実施形態に係る仕切り板30の作用部33に代えて作用部33Bを備える。特に図示しないが、本変形例2に係る組電池は、上述した実施形態における仕切り板30に代えて本変形例2の仕切り板30Bを備える。本変形例2に係る電池モジュールは、上述した実施形態における組電池10に代えて本変形例2の組電池を備える。その他の構成は上述した実施形態と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0092】
作用部33Bは、図16に示すように、仕切り板30Bにおける板本体31の厚さ方向(配列方向D1)の両側に突起する形状(例えば幅方向D2からの側視で矩形状)に形成され、当該板本体31に複数(本変形例2では8個)設けられている。これら複数の作用部33Bは、樹脂の射出成形等の手法により、板本体31と一体化されている。なお、図16には図示していないが、作用部33Bは、上述した実施形態の作用部33(図7参照)と同様に、仕切り板30Bの幅方向D2に延在している。また、図16に示すように、これら複数の作用部33Bの各内部には、横断面が円形状をなす冷却流路32が設けられている。本変形例2において、冷却流路32は、板本体31の厚さ方向の中心部に位置して、上記配列方向D1と交差する交差方向(例えば幅方向D2)に作用部33を貫通する内部流路である。
【0093】
上述した作用部33Bは、冷却流路32内の冷媒の圧力に応じて配列方向D1の両側に反力を発生させながら、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11に作用する。詳細には、作用部33Bは、冷却流路32内の冷媒の圧力が増加するに伴い、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11へ加える反力を増大させる。また、作用部33Bは、冷却流路32内の冷媒の圧力が減少するに伴い、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11へ加える反力を減少させる。このような作用部33Bは、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11と接触し、当該各電池セル11の膨張または収縮を上記反力によって吸収するとともに、冷却流路32内の冷媒の圧力に応じた荷重を当該各電池セル11に加える。これにより、作用部33Bは、配列方向D1の両側に対向する各電池セル11の膨張または収縮を吸収するとともに、上記荷重の付与によって各電池セル11を組電池の筐体内に拘束する。また、作用部33Bは、上記のように配列方向D1の両側に接触する各電池セル11と冷却流路32内の冷媒との熱交換を行い、これにより、各電池セル11を冷却する。
【0094】
本変形例2に係る電池モジュールは、上述した仕切り板30Bが設けられた組電池を備え、その他は上述した実施形態と同様に構成されている。このため、本変形例2では、上述した実施形態と同様の作用効果を享受するとともに、配列方向D1の両側から各電池セル11に対して拘束機能および冷却機能を発揮し得る電池モジュールを提供することが可能である。
【0095】
(変形例3)
つぎに、本発明の実施形態における組電池10が備える仕切り板30の変形例3について説明する。図17は、本発明の変形例3に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。図17には、本変形例3に係る仕切り板30Cを幅方向D2から見た側視図が図示されている。図17に示すように、本変形例3に係る仕切り板30Cは、上述した実施形態に係る仕切り板30の作用部33に代えて作用部33Cを備える。特に図示しないが、本変形例3に係る組電池は、上述した実施形態における仕切り板30に代えて本変形例3の仕切り板30Cを備える。本変形例3に係る電池モジュールは、上述した実施形態における組電池10に代えて本変形例3の組電池を備える。その他の構成は上述した実施形態と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0096】
作用部33Cは、図17に示すように、仕切り板30Cにおける板本体31の厚さ方向(配列方向D1)に突起する形状(例えば幅方向D2からの側視で矩形状)に形成され、当該板本体31に複数(本変形例3では8個)設けられている。本変形例3における作用部33Cの構成は、幅方向D2からの側視で矩形状をなすこと以外、上述した実施形態における仕切り板30の作用部33と同様である。例えば、図17に示すように、複数の作用部33Cの各内部には、横断面が円形状をなす冷却流路32が設けられている。
【0097】
本変形例3に係る電池モジュールは、上述した仕切り板30Cが設けられた組電池を備え、その他は上述した実施形態と同様に構成されている。このため、本変形例3では、上述した実施形態と同様の作用効果を享受し得る電池モジュールを提供することが可能である。
【0098】
(変形例4)
つぎに、本発明の実施形態における組電池10が備える仕切り板30の変形例4について説明する。図18は、本発明の変形例4に係る仕切り板の一構成例を示す模式図である。図18には、本変形例4に係る仕切り板30Dを幅方向D2から見た側視図が図示されている。図18に示すように、本変形例4に係る仕切り板30Dは、上述した実施形態に係る仕切り板30の板本体31に代えて板本体31Dを備え、作用部33に代えて作用部33Dを備える。特に図示しないが、本変形例4に係る組電池は、上述した実施形態における仕切り板30に代えて本変形例4の仕切り板30Dを備える。本変形例4に係る電池モジュールは、上述した実施形態における組電池10に代えて本変形例4の組電池を備える。その他の構成は上述した実施形態と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0099】
板本体31Dは、図18に示すように、複数の作用部33Dが一体成形された板状の部材であり、上述した実施形態における仕切り板30の板本体31に比べて薄肉に形成されている。板本体31Dの構成は、上記のように薄肉に形成されていること以外、上述した実施形態の板本体31と同様である。
【0100】
作用部33Dは、図18に示すように、仕切り板30Dにおける板本体31の厚さ方向(配列方向D1)に突起するように形成され、板本体31Dに複数(本変形例4では8個)設けられている。また、作用部33Dは、上述した実施形態における仕切り板30の作用部33に比べて薄肉に形成されている。作用部33Dの構成は、上記のように薄肉に形成されていること以外、上述した実施形態の作用部33と同様である。例えば、図18に示すように、複数の作用部33Dの各内部には、横断面が円形状をなす冷却流路32が設けられている。
【0101】
本変形例4に係る電池モジュールは、上述した仕切り板30Dが設けられた組電池を備え、その他は上述した実施形態と同様に構成されている。このため、本変形例4では、上述した実施形態と同様の作用効果を享受するとともに、仕切り板30Dの薄肉化によって装置規模の小型化および低コスト化をさらに促進し得る電池モジュールを提供することが可能である。
【0102】
なお、上述した実施形態および変形例1~4では、筐体の収容空間に6個の電池セルが収容される場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、当該収容空間に収容される電池セルの個数は、上述した6個に限らず、2個以上であってもよい。また、当該収容空間を仕切る仕切り板の個数は、上述した6個に限らず、収容される電池セル別に当該収容空間を仕切るために必要な個数であればよく、例えば2個以上であってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、仕切り板に設けられる冷却流路および作用部の各個数を8個または1個にした場合を例示していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、仕切り板に設けられる冷却流路および作用部の各個数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、これらの個数は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、仕切り板の幅方向に延在する冷却流路を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、仕切り板に設けられる冷却流路は、入側の第1チャンバーから出側の第2チャンバーに向かって電池セルを横切る方向に延在する流路であればよく、当該冷却流路の延在方向は、上記幅方向に対して傾斜する方向であってもよい。
【0105】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、仕切り板の作用部の内部に冷却流路を設けていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、当該冷却流路は、仕切り板の板本体の内部に設けられてもよい。
【0106】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、第1チャンバーの高さ方向の上端部に冷媒の流入口が設けられ、第2チャンバーの高さ方向の上端部に冷媒の流出口が設けられた場合を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、これら流入口および流出口は、第1チャンバーおよび第2チャンバーにおける所望部位(下端部または中心部等)に各々設けられもよい。また、第1チャンバーおよび第2チャンバーに各々設けられる流入口および流出口の各個数は、上述した1個に限らず、複数であってもよい。
【0107】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、組電池の流入口に通じる供給管に圧力センサを設け、この圧力センサにより、この供給管内の冷媒の圧力を組電池内の電池セルと冷媒との間の圧力として検出していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、組電池内に収容された複数の電池セルうち配列方向の一端部に位置する電池セルとエンドプレートとの間に圧力センサを設け、仕切り板の作用部から電池セルに掛かる圧力を組電池内の電池セルと冷媒との間の圧力として検出してもよい。
【0108】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、組電池に接続する配管として冷媒の循環経路を形成する配管を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。組電池の流入口に接続される配管と組電池の流出口に接続される配管とは、互いに連通していなくてもよく、すなわち、冷媒の循環経路を形成する配管でなくてもよい。
【0109】
また、上述した実施形態および変形例1~4では、圧力センサによって検出された冷媒の圧力をもとにポンプを駆動制御して、組電池内を流通する冷媒の流量を制御していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、電池セルの電圧が高い(すなわち充電量が多い)ほど当該電池セルの膨張は大きくなり、電池セルの電圧が低い(すなわち充電量が少ない)ほど当該電池セルの膨張は小さくなる、という現象に基づき、組電池内の電池セルの電圧をもとに、当該組電池内を流通する冷媒の流量を制御してもよい。詳細には、上述した圧力センサの代わりに電圧計を組電池に設け、この電圧計が組電池内の電池セルの電圧を計測し、制御部は、計測された電圧が上限側の基準値以上に高い場合、上記冷媒の流量を減少させるようにポンプを制御し、計測された電圧が下限側の基準値以下に低い場合、上記冷媒の流量を増加させるようにポンプを制御してもよい。
【0110】
また、上述した実施形態および変形例1~4によって本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態および変形例1~4に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 電池モジュール
10 組電池
11、11-1、11-2 電池セル
12 外装ケース
13a、13b 腹面部
14a、14b 側面部
15 底部
16 蓋部
17、18 電極端子
20 筐体
21 底部
22、23 側部
23a 開口部
24、25 エンドプレート
26、27 バンド
28 支持板
29 収容空間
29-1~29-6 収容室
30、30-1~30-6、30A、30B、30C、30D 仕切り板
31、31A、31D 板本体
32、32A 冷却流路
33、33A、33B、33C、33D 作用部
34a、34b 腹面部
40 第1チャンバー
41 流入口
50 第2チャンバー
51 流出口
61 ポンプ
62 圧力センサ
63 上流弁
64 下流弁
65 サーミスタ
66 電圧計
67 出力部
68 制御部
69 冷却装置
70 配管
71 供給管
72 流出管
73 循環管
80 冷媒
D1 配列方向
D2 幅方向
D3 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18