(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128358
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/04 20100101AFI20220825BHJP
H01L 33/20 20100101ALI20220825BHJP
【FI】
H01L33/04
H01L33/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026836
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】特許業務法人プロウィン特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石本 聖治
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA04
5F241AA05
5F241AA08
5F241AA22
5F241AA24
5F241AA41
5F241AA43
5F241CA02
5F241CA03
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA48
5F241CA51
5F241CA57
5F241CA64
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA73
5F241CA74
5F241CA75
5F241CA85
5F241CA92
5F241CA99
5F241CB05
5F241CB11
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】トンネル接合層とコンタクト層で良好に電流拡散が可能であり、かつp型不純物の活性化率を高めることが可能な半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】n型半導体層(11)を成長するn型半導体層成長工程と、n型半導体層成長工程の後に、p型半導体層(13)を成長するp型半導体層成長工程と、p型半導体層(13)上にトンネル接合層(16)を成長するトンネル接合層成長工程と、トンネル接合層(16)上にn型コンタクト層(18)を成長するコンタクト層成長工程と、n型コンタクト層(18)からトンネル接合層(16)を貫通してp型半導体層(13)の少なくとも一部を露出させる活性化用溝(19a)を形成する溝形成工程と、溝形成工程後に加熱処理によりp型半導体層(13)を活性化する活性化工程を備える半導体素子の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層を成長するn型半導体層成長工程と、
前記n型半導体層成長工程の後に、p型半導体層を成長するp型半導体層成長工程と、
前記p型半導体層上にトンネル接合層を成長するトンネル接合層成長工程と、
前記トンネル接合層上にn型コンタクト層を成長するコンタクト層成長工程と、
前記n型コンタクト層から前記トンネル接合層を貫通して、前記p型半導体層の少なくとも一部を露出させる活性化用溝を形成する溝形成工程と、
前記溝形成工程後に、加熱処理により前記p型半導体層を活性化する活性化工程を備えることを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体素子の製造方法であって、
前記溝形成工程では、前記p型半導体層の膜厚の半分未満の深さで前記活性化用溝を形成することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体素子の製造方法であって、
前記活性化工程の後に、前記n型半導体層の少なくとも一部が露出するまで、前記活性化用溝を深くするn型層露出工程を備えることを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体素子の製造方法であって、
前記溝形成工程と、前記n型層露出工程とは、同じマスク層を用いることを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の半導体素子の製造方法であって、
前記n型コンタクト層および前記n型半導体層に、電極を形成する電極形成工程を備えることを特徴とする半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法に関し、窒化物半導体材料を用いp型半導体層上にトンネル接合層を備える半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LED(Light Emitting Diode)や半導体レーザなどの半導体発光素子として、バンドギャップが大きい窒化物系の化合物半導体材料を用いたものが提案されている。また、これらの材料は絶縁破壊電場強度が高く、電子移動度も高いため、パワーデバイスである高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)等の半導体素子への適用も検討されている。
【0003】
これらの窒化物系半導体材料を用いた半導体素子では、p型半導体層の電流拡散性が低いため、p型半導体層上にITOなどの透明電極材料で電流拡散層を形成し、p型半導体層の全域に電流を注入する方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、LEDや半導体レーザなどの技術分野では、電流拡散層のITOで光の一部が吸収されるため、外部量子効率が低下するなどの課題があった。そこで、ITO等による電流拡散層に代えて、窒化物系半導体で構成されるトンネル接合層とコンタクト層を有機金属化合物気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等で形成することも提案されている。しかし、トンネル接合層およびコンタクト層がp型半導体層を覆っているため、p型半導体層に取り込まれた水素を熱処理で離脱してp型不純物の活性化率を高めることが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、トンネル接合層とコンタクト層で良好に電流拡散が可能であり、かつp型不純物の活性化率を高めることが可能な半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の半導体素子の製造方法は、n型半導体層を成長するn型半導体層成長工程と、前記n型半導体層成長工程の後に、p型半導体層を成長するp型半導体層成長工程と、前記p型半導体層上にトンネル接合層を成長するトンネル接合層成長工程と、前記トンネル接合層上にコンタクト層を成長するコンタクト層成長工程と、前記コンタクト層から前記トンネル接合層を貫通して、前記p型半導体層の少なくとも一部を露出させる活性化用溝を形成する溝形成工程と、前記溝形成工程後に、加熱処理により前記p型半導体層を活性化する活性化工程を備えることを特徴とする。
【0008】
このような本発明の半導体素子の製造方法では、トンネル接合層を貫通して活性化用溝を形成してp型半導体層の一部を露出させるため、活性化工程における加熱処理でp型半導体層に取り込まれた水素を離脱させ、活性化用溝を介して外部に放出してp型半導体層の活性化率を高めることができる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記溝形成工程では、前記p型半導体層の膜厚の半分未満の深さで前記活性化用溝を形成する。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記活性化工程の後に、前記n型半導体層の少なくとも一部が露出するまで、前記活性化用溝を深くするn型層露出工程を備える。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記溝形成工程と、前記n型層露出工程とは、同じマスク層を用いる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記コンタクト層および前記n型半導体層に、電極を形成する電極形成工程を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、トンネル接合層とコンタクト層で良好に電流拡散が可能であり、かつp型不純物の活性化率を高めることが可能な半導体素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る半導体素子の製造方法を示す工程図であり、
図1(a)は半導体層成長工程を示し、
図1(b)は溝形成工程を示し、
図1(c)はn型層露出工程を示し、
図1(d)は電極形成工程を示し、
図1(e)は素子分離工程を示している。
【
図2】溝形成工程において活性化用溝19aを形成する深さを示す模式拡大図である。
【
図3】素子分離工程後における半導体素子の電極構造を示す模式平面図である。
【
図4】第2実施形態に係る半導体素子の構造を示す模式拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る半導体素子の製造方法を示す工程図であり、
図1(a)はコンタクト層成長工程までを示し、
図1(b)は溝形成工程を示し、
図1(c)はn型層露出工程を示し、
図1(d)は電極形成工程を示し、
図1(e)は素子分離工程を示している。本実施形態では、半導体素子としてLEDを製造する例を示す。
【0016】
はじめに
図1(a)に示す半導体層成長工程では、半導体成長用基板上にn型半導体層11、活性層12、p型半導体層13、p型高濃度ドープ層14とn型高濃度ドープ層15からなるトンネル接合層16、n型電流拡散層17、n型コンタクト層18を成長させる。ここで各層の成長には、公知のMOCVD法やMBE法(分子線エピタキシー法:Molecular Beam Epitaxy)、HVPE法(ハイドライド気相成長法:Hydride Vapor Phase Epitaxy)等を用いることができる。半導体成長用基板としては、サファイア基板やSiC基板などの異種基板を用いるとしてもよい。
【0017】
本実施形態の半導体層成長工程には、n型半導体層11を成長するn型半導体層成長工程と、活性層12を成長する活性層成長工程と、p型半導体層13を成長するp型半導体層成長工程と、トンネル接合層16を成長するトンネル接合層成長工程と、n型電流拡散層17を成長する電流拡散層成長工程と、n型コンタクト層18を成長するコンタクト層成長工程が含まれる。
【0018】
n型半導体層11は、半導体成長用基板上に形成されたn型の半導体層であり、一例としてはSi濃度が1×1018cm-3~5×1018cm-3のGaN層が挙げられる。ここではn型半導体層11を単層として示しているが、複数の層で構成されるとしてもよい。また、n型半導体層11を構成する材料はGaNに限定されず、クラッド層としてAlGaN等を含むとしてもよい。また、n型半導体層11には、意図的にSi等のn型不純物を添加するとしてもよく、意図的に不純物を添加せずにノンドープで形成してn型導電性を示すとしてもよい。ただし、後述するようにn型層露出工程で露出される位置では、n型不純物を高濃度に添加して電極とのオーミック接触をとることが好ましい。
【0019】
活性層12は、n型半導体層11上に形成された半導体層であり、キャリアの発光再結合により所定の波長で発光する層である。活性層12は、一例として厚さ3nmのGaInN量子井戸層と厚さ12nmのGaN障壁層を5周期重ねた多重量子井戸活性層が挙げられる。ここでは多重量子井戸活性層を挙げたが、単一量子井戸構造であってもよく、バルク活性層であってもよい。
【0020】
p型半導体層13は、活性層12上に形成されたp型の半導体層であり、一例としてはMg濃度が1×1019cm-3~1×1020cm-3のGaN層が挙げられる。ここではp型半導体層13を単層として示しているが、複数の層で構成されるとしてもよい。また、p型半導体層13を構成する材料はGaNに限定されず、クラッド層としてAlGaN等を含むとしてもよい。p型半導体層13の膜厚は限定されないが、例えば100~500nmの範囲とすることができる。
【0021】
トンネル接合層16は、p型半導体層13上に形成された半導体層であり、p型半導体層13に接して形成されたp型高濃度ドープ層14と、p型高濃度ドープ層14に接して形成されたn型高濃度ドープ層15の積層構造で構成されている。p型高濃度ドープ層14は、p型不純物が高濃度にドープされた半導体層であり、例えば厚さ10nmでMg濃度が1×1020cm-3~2×1020cm-3のGaNを用いることができる。n型高濃度ドープ層15は、例えば厚さ30nmでSi濃度が1×1019cm-3~1×1020cm-3のGaNを用いることができる。トンネル接合層16では、p型高濃度ドープ層14とn型高濃度ドープ層15によりトンネル接合が形成されている。
【0022】
n型電流拡散層17は、トンネル接合層16上に形成されたn型の半導体層であり、一例としてはSi濃度が1×1018cm-3~5×1018cm-3のGaN層が挙げられる。ここではn型電流拡散層17を単層として示しているが、複数の層で構成されるとしてもよい。n型電流拡散層17の膜厚は限定されないが、例えば100~1000nmの範囲とすることができる。
【0023】
n型コンタクト層18は、n型電流拡散層17条に形成されたn型の半導体層であり、一例としては、Si濃度が1×1019cm-3~1×1020cm-3のGaNが挙げられる。n型コンタクト層18の膜厚は限定されないが、例えば5~20nmの範囲とすることができる。
【0024】
次に
図1(b)に示す溝形成工程では、n型コンタクト層18まで形成した半導体成長用基板を反応室から取り出し、n型コンタクト層18からn型電流拡散層17、トンネル接合層16を貫通してp型半導体層13まで到達する活性化用溝19aを形成する。活性化用溝19aの幅とピッチは限定されないが、例えば300~500μm間隔で、幅80~100μmとすることができる。後述するように、半導体素子の周囲を囲むように活性化用溝19aのパターンを形成し、各半導体層の側面を露出させるメサ構造とするとしてもよい。
【0025】
活性化用溝19aの形成には、公知の異方性エッチングを用いることができ、例えばn型コンタクト層18上にマスク(図示省略)を形成し、マスクにフォトリソグラフィーで開口部を形成し、開口部を介してドライエッチングで半導体層をエッチングする方法が挙げられる。窒化物系半導体のドライエッチングとしては塩素系ガスを用いることができ、マスクとしてはレジスト膜、Ni膜、SiO2膜を用いることができる。
【0026】
溝形成工程の後に、活性化用溝19aが形成された半導体成長用基板を加熱処理炉に入れ、加熱処理を行ってp型半導体層13を活性化する活性化工程を実施する。本実施形態の活性化工程では、加熱処理によってp型不純物と結合した水素の結合が切断され、離脱した水素がp型半導体層13内を移動して活性化用溝19aまで到達する。離脱した水素は、活性化用溝19aで露出しているp型半導体層13の表面から活性化用溝19aを経て外部に放出される。したがって、活性化用溝19aがp型半導体層13の少なくとも一部を露出させるまで形成されていることで、活性化工程においてp型半導体層13から水素を効果的に離脱させることができる。
【0027】
よく知られているように、p型半導体層13内に水素が残留していると、p型不純物と水素が結合してキャリア濃度を高めることが困難になる。したがって、本実施形態では、活性化工程でp型半導体層13に取り込まれた水素を効果的に減少させて、キャリア濃度を高めて半導体素子の順方向電圧(Vf)を低減することができる。
【0028】
活性化工程は、活性層12にダメージを与えない範囲で、可能な限り高温で長時間の加熱処理を継続することが好ましい。活性化工程で用いる加熱処理の例としては、RTA装置(Rapid Thermal Annealing)を用い、窒素雰囲気または窒素と酸素の混合雰囲気で、500~800℃の範囲を10~60分間継続することが挙げられる。窒素と酸素の混合雰囲気では、窒素:酸素=4:1程度の疑似エアーを用いることができる。
【0029】
図2は、溝形成工程において活性化用溝19aを形成する深さを示す模式拡大図である。
図2に示すように、活性化用溝19aはp型半導体層13まで到達しており、活性化用溝19aの少なくとも底部においてp型半導体層13が部分的に露出している。活性化用溝19aは、p型半導体層13の内部まで到達している必要は無く、少なくともp型半導体層13とp型高濃度ドープ層14の界面まで形成されていればよい。
【0030】
また、p型半導体層13の上面から深さd(nm)まで活性化用溝19aを形成して、活性化用溝19aの底部と側面でp型半導体層13が露出することが好ましい。ここで、p型半導体層13の全膜厚をD(nm)とすると、活性化用溝19aのp型半導体層13上面からの深さdは、D/2>dであることが好ましい。p型半導体層13の膜厚の半分未満の深さで活性化用溝19aを形成することで、活性化用溝19aの底部より下に残されたp型半導体層13の厚さは、全膜厚の半分以上となる。
【0031】
上述したように、活性化工程ではp型半導体層13内に取り込まれていた水素の結合を切断し、p型半導体層13内を水素が移動して活性化用溝19aまで到達する必要がある。したがって、活性化用溝19aの下にp型半導体層13を半分以上残し、p型半導体層13内で水素が移動する経路を確保して、活性化用溝19aで露出したp型半導体層13表面まで水素が到達しやすくすることが好ましい。
【0032】
ここでp型半導体層13の全膜厚Dとは、活性層12とp型半導体層13の界面からp型半導体層13とp型高濃度ドープ層14の界面までの距離を意味している。したがって、p型半導体層13が単層である場合には単層の膜厚を意味し、複数層の積層構造である場合には複数層の合計膜厚を意味する。
【0033】
次に
図1(c)に示すn型層露出工程では、活性化用溝19aを再び異方性エッチングで深くし、p型半導体層13および活性層12を貫通して、n型半導体層の少なくとも一部が露出するまで伸びるn型層露出溝19bを形成する。n型層露出溝19bの形成には、溝形成工程と同様のドライエッチングを用いることができる。また、溝形成工程で用いたマスクを除去せず残しておくことで、溝形成工程とn型層露出工程での異方性エッチングに同じマスクを用いることができる。両工程で同じマスクを用いることで、活性化用溝19aとn型層露出溝19bを面内の同じ位置で同じ形状に形成することが容易となる。
【0034】
n型層露出溝19bは、
図1(c)に示したように、n型コンタクト層18からn型電流拡散層17、トンネル接合層16、p型半導体層13および活性層12を貫通してn型半導体層11の一部を露出させる溝である。n型層露出溝19bの深さは限定されないが、n型半導体層11のうち電極を形成する層の表面が露出するように形成することが好ましい。
【0035】
次に
図1(d)に示す電極形成工程では、n型層露出工程で異方性エッチングに用いたマスクを除去し、n型層露出溝19bの底部に露出したn型半導体層11の表面の一部にn側電極20を形成し、n型コンタクト層18の表面の一部にp側電極21を形成する。ここでn側電極20とp側電極21の形成には、電極形成用のマスクでn型半導体層11およびn型コンタクト層18の表面を覆い、フォトリソグラフィー技術を用いて電極の形成位置に開口部を形成し、蒸着等で金属膜を形成した後に、マスクを除去する方法を用いることができる。本実施形態では、n型半導体層11とn型コンタクト層18が共にn型の半導体層であるため、同一の金属材料を一括して蒸着し、同一のアニール処理を施すことで良好にn側電極20とp側電極21でオーミック接触を得ることができる。n側電極20とp側電極21を構成する材料は限定されないが、公知のTi/AlやTi/Al/Ni/Au、Al/Ti/Au等を用いることができる。
【0036】
次に
図1(e)に示す素子分離工程では、n型半導体層11に分離溝22を形成し、応力を加えてブレーキングにより半導体素子(LED)を個別に分割する。分離溝22の形成には公知のレーザスクライブ技術等を用いることができ、分離溝22の幅は一例として5~40μm程度である。
図1(e)ではn型半導体層11の裏面に分離溝22を形成した例を示したが、サファイア基板やSiC基板等の半導体成長用基板が存在する場合には、半導体成長用基板の裏面に分離溝22を形成するとしてもよい。また、半導体成長用基板の裏面を研磨等で薄くしたのちに分離溝22を形成するとしてもよい。
【0037】
図3は、素子分離工程後における半導体素子の電極構造を示す模式平面図である。
図3に示した例では、LEDの周囲を囲むようにn型層露出溝19bを形成し、メサ構造を形成している。また、略矩形状の素子領域において、n型コンタクト層18の一つの角部にp側電極21が形成され、p側電極21の対角にもn型層露出溝19bが形成されてn側電極20が形成されている。
【0038】
本実施形態のLEDでは、p型半導体層13とn型電流拡散層17の間にはトンネル接合層16が形成されているため、両層間ではトンネル電流による電流注入が可能となっている。トンネル接合層16を介したトンネル電流による電流注入は抵抗が小さく、良好に電流注入を行うことができる。また、n型電流拡散層17はp型半導体層13よりも電流の拡散性が良好であるため、p側電極21がn型コンタクト層18上の一部領域上にのみ形成されていても、良好に面内で電流を拡散することができる。
【0039】
また本実施形態では、
図1および
図3に示したように、n型コンタクト層18上にはITO等の酸化物系の透明電極が形成されておらず、活性層12で発光した光が吸収されないため外部量子効率を高めることができる。
【0040】
上述したように本実施形態に係る半導体素子の製造方法では、トンネル接合層16を貫通して活性化用溝19aを形成してp型半導体層13の一部を露出させるため、活性化工程における加熱処理でp型半導体層13に取り込まれた水素を離脱させ、活性化用溝19aを介して外部に放出してp型半導体層13の活性化率を高めることができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る半導体素子の構造を示す模式拡大断面図である。本実施形態では、サファイア基板等の半導体成長用基板に代えて、GaN基板11aを用いる。
【0042】
図4に示したように、本実施形態のLEDはGaN基板11a上にn型下地層11bを形成し、活性層12、p型半導体層13、p型高濃度ドープ層14とn型高濃度ドープ層15からなるトンネル接合層16、n型電流拡散層17、n型コンタクト層18を形成している。GaN基板11aとn型下地層11bはどちらもn型の導電性を有しているため、GaN基板11aとn型下地層11bを合わせて本願におけるn型半導体層11が構成されている。また、本実施形態では、GaN基板11aの裏面にn側電極20が形成され(図示省略)、n型コンタクト層18の表面にp側電極21が形成される(図示省略)。
【0043】
本実施形態でも、
図1(b)に示したように、トンネル接合層16を貫通してp型半導体層13が露出するまで活性化用溝19aを形成し、活性化工程における加熱処理でp型半導体層13に取り込まれた水素を離脱させ、活性化用溝19aを介して外部に放出してp型半導体層13の活性化率を高めることができる。この際、第1実施形態と同様に、活性化用溝19aの下にp型半導体層13を半分以上残し、p型半導体層13内で水素が移動する経路を確保して、活性化用溝19aで露出したp型半導体層13表面まで水素が到達しやすくすることが好ましい。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、半導体素子としてLEDを示したが、本発明に係る半導体素子の製造方法はLEDの製造に限定されるものではなく、端面発光型半導体レーザや垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)、電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)等の製造方法としても用いることができる。
【0045】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
11…n型半導体層
11a…GaN基板
11b…n型下地層
12…活性層
13…p型半導体層
14…p型高濃度ドープ層
15…n型高濃度ドープ層
16…トンネル接合層
17…n型電流拡散層
18…n型コンタクト層
19a…活性化用溝
19b…n型層露出溝
20…n側電極
21…p側電極
22…分離溝