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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128360
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】対象者特定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220825BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220825BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A61B5/00 C
G08B25/04 K
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026838
(22)【出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】517044465
【氏名又は名称】メディトリーナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】和田 典子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋隆
(72)【発明者】
【氏名】小宮 康宏
【テーマコード(参考)】
4C117
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
4C117XA07
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB06
4C117XC01
4C117XE26
4C117XE29
4C117XE30
4C117XE52
4C117XE75
4C117XF03
4C117XG15
4C117XG18
4C117XH02
4C117XJ09
4C117XJ13
4C117XJ45
4C117XM13
4C117XP01
4C117XP11
4C117XP12
4C117XQ11
4C117XR02
5C086AA22
5C086AA49
5C086BA01
5C086CA01
5C086CA09
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA02
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA17
5C087AA10
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE06
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG10
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】操作が容易な対象者特定システムを提供する。
【解決手段】生体情報センサ30が対象者を含む複数のメンバが同居している施設内に設置された生体情報を検出する。情報検出センサ10が施設内に設置され、離床センサ、人感センサ、ドア開閉センサ、転倒センサ、監視カメラおよび音声センサの少なくともひとつを含む。確信度推定部が情報検出センサ10により検出された情報を参照して、生体情報センサ30により検出された生体情報が対象者の生体情報である確からしさを推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者を含む複数のメンバが同居している施設内に設置された生体情報を検出する生体情報センサと、
前記施設内に設置され、離床センサ、人感センサ、ドア開閉センサ、転倒センサ、監視カメラおよび音声センサの少なくともひとつを含む情報検出センサと、
前記情報検出センサにより検出された情報を参照して、前記生体情報センサにより検出された前記生体情報が前記対象者の生体情報である確からしさを推定する確信度推定部と、
を有することを特徴とする対象者特定システム。
【請求項2】
前記メンバの前記生体情報の基本情報を記憶する家族基本情報記録部を有し、
前記確信度推定部は、前記情報検出センサにより検出された情報とともに、前記家族基本情報記録部に記憶された前記基本情報を参照して、前記生体情報センサにより検出された前記生体情報が前記対象者の生体情報である確からしさを推定することを特徴とする請求項1記載の対象者特定システム。
【請求項3】
さらにスマートスピーカーを有し、前記スマートスピーカーは自動で問いかけして返答情報を記憶する返答情報記録部を有し、前記確信度推定部は、さらに前記返答情報記録部に記憶された前記返答情報を参照して、前記生体情報センサにより検出された前記生体情報が前記対象者の生体情報である確からしさを推定することを特徴とする請求項1または2記載の対象者特定システム。
【請求項4】
さらに危険情報発出部を有し、前記情報検出センサ、前記生体情報センサまたは前記スマートスピーカは異常を検出する機能を有し、
前記情報検出センサ、前記生体情報センサまたは前記スマートスピーカが異常を検出して前記確信度推定部により推定された前記確からしさが所定以上のとき、前記危険情報発出部は警報を発する構成を有することを、特徴とする請求項1、2または3記載の対象者特定システム。
【請求項5】
前記危険情報発出部は所定の手段で、家族介護者、家族などの予め設定された受信者へ緊急メッセージを発することを、特徴とする請求項4記載の対象者特定システム。
【請求項6】
さらに健康情報判断部を有し、前記健康情報判断部は前記情報検出センサ、前記生体情報センサまたは前記スマートスピーカにより検出された情報を所定の基準値と比較して基準値外であって前記確信度推定部により推定された前記確からしさが所定以上のとき、前記対象者に対して前記スマートスピーカーから所定の健康情報を発信させる構成を有することを特徴とする請求項第3講記載の対象者特定システム。
【請求項7】
前記健康情報判断部は、所定の手段で、医療機関やリハビリ施設などの予め設定された機関へ健康情報を通知することを、特徴とする請求項6記載の対象者特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のメンバが同居している施設内で用いられる対象者特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で体重や体温などの生体情報を測定し、要介護者の健康管理を行うことが盛んになってきている。さらには、要介護者の安全の見守りや心身の健康管理を増進することが要望されている。
しかしながら、家庭には複数のメンバがいることが多く、測定した生体情報が誰のデータなのかを対応付けることが難しい。被介護者は健常者に比べて、身体能力や判断能力が低下しており、生体情報の計測や個人の特定において複雑で煩わしい操作をすることは困難である。
【0003】
そこで、対象者などの個人を特定するシステムが種々開発されている。
しかし、個人を特定(推定)する際にカメラによる顔認証は、プライバシーの観点で相応しくない(特に、トイレや脱衣所など)。
カメラを用いない個人の特定方法としては、便器と便座の間に重量センサを設置し、便座に座った人の体重を無意識に測定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、訪問介護や健康診断の時に、被検体が携帯するIDカードを読み取り、個人を特定する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、暗証番号や指紋を用いて、個人を特定する方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-119859号公報
【特許文献2】特開平10-179526号公報
【特許文献3】特開2005-168834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、本人が誰であるかを入力するか、体重データを用いて個人を識別する必要があり、本人が入力するため煩雑な操作が伴う上、入力ミスが生じる場合があるという課題があった。また、体重が似たメンバがいる場合、識別するのは困難であるという課題があった。
特許文献2に記載の方法では、IDカードを常に持っている必要があり、面倒であるうえ、IDカードをリーダ部に近づける必要があるため、高齢者や被介護者には困難な場合があるという課題があった。
特許文献3に記載の方法では、暗証番号を忘れたり間違えたりする場合があるという課題があった。また、指紋センサに適切に指紋を接触させることは被介護者や高齢者には困難な作業であるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、操作が容易な対象者特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る対象者特定システムは、対象者を含む複数のメンバが同居している施設内に設置された生体情報を検出する生体情報センサと、前記施設内に設置され、離床センサ、人感センサ、ドア開閉センサ、転倒センサ、監視カメラおよび音声センサの少なくともひとつを含む情報検出センサと、前記情報検出センサにより検出された情報を参照して、前記生体情報センサにより検出された前記生体情報が前記対象者の生体情報である確からしさを推定する確信度推定部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る対象者特定システムは、前記メンバの前記生体情報の基本情報を記憶する家族基本情報記録部を有し、前記確信度推定部は、前記情報検出センサにより検出された情報とともに、前記家族基本情報記録部に記憶された前記基本情報を参照して、前記生体情報センサにより検出された前記生体情報が前記対象者の生体情報である確からしさを推定することが好ましい。
【0009】
本発明に係る対象者特定システムは、さらにスマートスピーカーを有し、前記スマートスピーカーは自動で問いかけして返答情報を記憶する返答情報記録部を有し、前記確信度推定部は、さらに前記返答情報記録部に記憶された前記返答情報を参照して、前記生体情報センサにより検出された前記生体情報が前記対象者の生体情報である確からしさを推定することが好ましい。
【0010】
本発明に係る対象者特定システムは、さらに危険情報発出部を有し、前記情報検出センサ、前記生体情報センサまたは前記スマートスピーカは異常を検出する機能を有し、前記情報検出センサ、前記生体情報センサまたは前記スマートスピーカが異常を検出して前記確信度推定部により推定された前記確からしさが所定以上のとき、前記危険情報発出部は警報を発する構成を有することが好ましい。
前記危険情報発出部は所定の手段で、家族介護者、家族などの予め設定された受信者へ緊急メッセージを発することが好ましい。
本発明に係る対象者特定システムは、さらに健康情報判断部を有し、前記健康情報判断部は前記情報検出センサ、前記生体情報センサまたは前記スマートスピーカにより検出された情報を所定の基準値と比較して基準値外であって前記確信度推定部により推定された前記確からしさが所定以上のとき、前記対象者に対して前記スマートスピーカーから所定の健康情報を発信させる構成を有することが好ましい。
前記健康情報判断部は、所定の手段で、医療機関やリハビリ施設などの予め設定された機関へ健康情報を通知することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作が容易な対象者特定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の対象者特定システムの全体構成を示すブロック図である。
図2図1の対象者特定システムの第1の構成を示すブロック図である。
図3図2の構成を有する対象者特定システムによる処理を示すフローチャートである。
図4図1の対象者特定システムの第2の構成を示すブロック図である。
図5図4の構成を有する対象者特定システムによる処理を示すフローチャートである。
図6図1の対象者特定システムの第3の構成を示すブロック図である。
図7図6の構成を有する対象者特定システムによる処理を示すフローチャートである。
図8図1の対象者特定システムの第4の構成を示すブロック図である。
図9図8の構成を有する対象者特定システムによる処理を示すフローチャートである。
図10図1の対象者特定システムの第5の構成を示すブロック図である。
図11図10の構成を有する対象者特定システムによる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の対象者特定システムの全体構成を示す。
対象者特定システムは、各種センサとスマートスピーカー20とパソコンやスマートホン(スマホ)などのコンピュータにより構成されている。コンピュータは、入力部、中央処理装置(情報処理部40)および出力部を有する。
【0014】
対象者特定システムでは、対象者(要介護者など)が家庭などの施設内で他の複数のメンバと同居している場合を想定する。最近は家庭内には様々なセンサがあるため、このセンサネットワークを利用する。この時にセンサ単体ではだれが対象者であるか、特定することは困難である。そこで、複数のセンサ情報を組み合わせ、対象者を特定/推定する際にある程度の曖昧さを許容する。つまり、人感センサなど位置を特定できるセンサや、ドア開閉センサなどの動作の時刻を特定できるセンサの情報を総合的に判断して、対象者である確からしさを算出する。例えば、「75%の確信度で対象者Aである」と判断する。
さらに、対象者の確信度がわかることから、確信度が高い時には緊急警報や健康情報の提供などのサービスを提供することが可能となる。
【0015】
確信度の計算に、情報センサーのみで行う場合を考える。例えば、起点センサーである離床センサーがベッドにいると判断している時間帯ならば、寝室以外で測定されたデータは、対象者ユーザーのものでないことが100%であり、逆の場合、その確率は、とりあえずは、1/(その時間帯に家にいた人の数)で推定できる。対象者が寝室以外にいる場合、(1)その時間帯に家に何人いるか、(2)何部屋で人感センサーが反応しているか、(3)3分前に寝室以外のドア開閉センサーが反応したか、等などの条件から、対象者がトイレなどのセンサーで検知された確度を推定できる。さらに、体組成計などでは、かなり個人を絞れる。人感センサー、ドア開閉センサーなどの反応状況を時系列で解析することで、この数値を精度良く推定できる。
【0016】
図1では、一般的な家庭を想定しており、寝室、リビング/キッチン、脱衣所/風呂場、トイレ、玄関がある。図1に示すように、各場所に情報検出センサ10、生体情報センサ30、スマートスピーカー20が備わっている。情報処理部40は、コンピュータにより構成される。情報処理部40は各センサやスマートスピーカー20からの情報を受け取り、確信度を算出するものである。情報処理部40と各センサやスマートスピーカー20は、WiFiやブルートゥース(登録商標)などの無線LANで通信する。
【0017】
各センサの働きは下記の特徴を持つ。
情報検出センサ10:施設内に設置され、離床センサ、人感センサ、ドア開閉センサ、転倒センサ、温度センサ、健康器具、監視カメラおよび音声センサを有する。情報検出センサ10は異常を検出する機能を有している。
離床センサ:対象者(要介護者など)がベッドに居るか否かを検出する。床を離れた時刻も検出できる。
人感センサ:各設置場所(部屋)に人が居るかを検出する。
ドア開閉センサ:ドアの開閉があったかを検出する。検出した場合には、その時刻をパソコンなどに記録しておくことで、問い合わせしたときに何分前にドアの開閉があったかを知ることができる。
転倒センサ:人が転倒したか否かを検出する。
温度センサ:各設置場所(部屋)の温度を検出する。
健康器具:マッサージチェア、フィットネスバイクなど。器具を利用しているか否かを検出できる。
監視カメラ:玄関に設置されており、家に出入りがあった場合(ドア開閉センサ)と連動し、入退出したメンバを判定する。玄関に設置され、顔認識機能を有しており、メンバが誰かを特定できるため、問い合わせしたときに室内にいるのは誰で、何名いるか、を把握できる。
【0018】
生体情報センサ30:施設内に設置され、生体情報を検出する。
心拍センサ:心拍を検出する。腕時計タイプで主に寝るときに装着することを想定しているが、付けたまま室内を移動できる。
体温計:接触して体温を計測する。
非接触体温計:非接触で額などで体温を計測する。
体重・体組成計:体重や体脂肪率などを測定する。
非接触バイタルセンサ:脈や呼吸、体動などの情報を非接触で検出する。
【0019】
スマートスピーカー20:各設置場所(部屋)の音の情報を拾ったり、情報処理部40からの音声を発出することができる。さらに、声紋認識や問いかけの答えで、高い精度で対象を認識できる機能を有する。スマートスピーカー20は、自動で問いかけして返答情報を記憶する返答情報記録部41を有している。
【0020】
各センサはネットワークでつながれており、情報処理部40(パソコンやスマホなど)と通信できるように構成されている。
情報処理部40の第1の構成を図2に示す。
情報処理部40は、情報記録部41と確信度推定部42と生体情報記録部43と家庭情報記録部41とを機能的に有している。確信度推定部42は、情報検出センサ10により検出された情報を参照して、生体情報センサ30により検出された生体情報が対象者の生体情報である確からしさを推定する機能を有している。情報検出センサ10や生体情報センサ30で検出された信号は情報記録部41に記録される。この情報を基に確信度推定部42にて検出した生体情報が要介護者のものである確率を確信度として推定する。確信度がある一定以上(例えば70%以上)の場合には、検出した生体情報を生体情報記録部43に記録する。
表1はその例を示しているが、確信度と検出した日、時刻、検出したセンサとその値が記録されている。
【0021】
【表1】
【0022】
また、家族基本情報記録部44には表2のように、家族メンバの生体情報の基本情報が記録されている。確信度推定部42は、情報検出センサ10により検出された情報とともに、家族基本情報記録部44に記憶された基本情報を参照して、生体情報センサ30により検出された生体情報が対象者の生体情報である確からしさを推定する機能も有している。
【0023】
【表2】
【0024】
図2の構成による処理のフローチャートを図3に示す。システムが開始すると、生体情報センサ30に反応があったかどうかを監視する(図3のs1)。生体情報センサ30の一つ以上に反応があった場合に、まずは各部屋の情報検出センサ10の情報を情報記録部41に記録する(図3のs2)。そして、情報記録部41のデータ、および、家族基本情報から対象者のいる確信度を計算する(図3のs3)。確信度が一定以上(例えば70%以上)か否かを確認し(図3のs4)、一定以上の場合には生体情報センサ30で検出した生体情報を生体情報記録部43に記録する(図3のs5)。
【0025】
確信度推定部42は、さらにスマートスピーカー20の返答情報記録部41に記憶された返答情報を参照して、生体情報センサ30により検出された生体情報が対象者の生体情報である確からしさを推定する機能を有している。
確信度推定部42での働きについて表3を用いて説明する。
表3において、灰色箇所は反応があった情報検出センサ10を示し、●は測定された生体情報センサ30を示す。
【0026】
【表3】
【0027】
ケース1について説明する。このケースでは、トイレで体重・体組成計、非接触体温計2、非接触バイタルセンサ2の測定が行われ、この時に反応があったのは、
寝室 : 離床センサ1、人感センサ1、スマートスピーカー201
リビング/キッチン : 人感センサ2、スマートスピーカー202
トイレ : 人感センサ4、スマートスピーカー204、ドア開閉センサ4
である。このケースでは寝室の離床センサが反応し、対象者がベッドに居ると判断でき、トイレで測定されたデータは100%対象者のものではないため、対象者である確信度は0%となる。
【0028】
ケース2の場合について説明する。家の中の人感センサで反応があったのはリビング/キッチンの1名だけであるが、玄関の監視カメラで対象者以外の3名は外出中で室内にいるのはAであると判断できるため、リビング/キッチンの1名は対象者である確信度は100%となる。
【0029】
ケース3の場合は、監視カメラの情報から家の中にはA,Bの2名いることがわかっている(リビング/キッチンに1名、トイレに1名)。但し、このどちらかを特定することができないため、確信度は、1/(その時間帯に家にいた人の数)= 1/2 で50%となる。
以上は情報検出センサ10のみの信号から確信度を推定した。
【0030】
ケース4は情報検出センサ10だけでなく、生体情報センサ30の信号も用いて確信度を推定する。本ケースでは、トイレで検出した体重、体脂肪率、体温の情報を表2の家族基本情報と比較する。測定した数値は下記の表4のようになる。
【0031】
【表4】
【0032】
上記で類似目安値としているのは、家族基本情報の数値と今回測定したデータとの差がこの数値以下であればそのメンバである可能性がある、とした数値である。例えば、体脂肪率については測定値との差が2%未満であれば、その候補になるという意味で、今回の測定ではAさんのみであり、Aさんである確率が100%と推定できる。
【0033】
同様に体重に関しては、類似目安値以下となるのはAさんとCさんの2名となることから、Aさんである確率は1/2=50%となるが、監視カメラからの情報でCさんは不在であることからAさんである確率は100%となる。さらに、体温についてはAさん、Bさん、Cさんの3名が類似目安値以下であり、かつ、Cさんは不在であるため、確率は50%と推定できる。
情報検出センサ10からは確信度は50%であったが、生体情報センサ30から上記の情報がわかり、最終的に確信度は
(50+100+100+50)/4=75%
と計算することができる。
【0034】
なお、上記計算では特に重み計数をつけていないが、例えば体脂肪率は日々で変化が少なく変動も小さいことから、この重み計数を1.5として下記のように計算してもよい。
(50+100*1.5+100+50)/4=87.5%
確信度の求め方としては、1990年代に流行ったファジー理論やラフ集合論、Dempster-ShaferのMathematical Theory of Evidenceなどの理論があり、こういった理論体系を基に確信度を決定することもできる。
【0035】
情報処理部40の第2の構成を図4に示す。図4の構成による処理のフローチャートを図5に示す。
第2の構成では、スマートスピーカー20やスマホ50などの言語的インタラクティブ・センサーを使い、要介護者に問いかけを行い、その回答や声紋などを分析することで、さらに絞り込みが可能となる。
【0036】
確信度が低い場合、確信度を高くするため、スマートスピーカー20を用いてメンバに質問を投げかける(図5のs6)。例えば、表3のケース3の場合、対象者はリビング/キッチンかトイレのどちらかにいるため、リビング/キッチンのスマートスピーカー202とトイレのスマートスピーカー204に対して、次のような質問を投げかける。
リビング/キッチンのスマートスピーカー202に対して
「今、リビングには一人ですか」
トイレのスマートスピーカー204
「今日の調子は如何ですか」
【0037】
回答の音声データを元にして、音声分析部45にて回答したメンバが対象者であるかの確信度を再計算する(図5のs7)。例えば、家族の声紋データを予め登録しておき、そのデータと比較することで個人認証し、候補者を選定する。上記質問をして
リビング/キッチン の音声は Bさんと声紋データが一致
トイレ の音声はAさんの声紋データと一致
となれば、生体情報を検出したのは対象者のAさんである確信度を100%とする。
要介護者はスマホを持っていないことが多いため、スマートスピーカー20で問いかけることが有効である。
さらに、ケース3の場合、家族介護者のスマホ50などに通知をし、家族介護者がリビング/キッチンやトイレのスピーカーで質問を投げかけてもよい。
【0038】
その情報処理部40の第3の構成を図6に示す。図6の構成による処理のフローチャートを図7に示す。
確信度が低い場合、家族介護者に通知をする(図7のs9)。通知を受けた家族介護者は自分のスマホ50からスマートスピーカー20を用いてメンバに質問を投げかける(図7のs10)。例えば、
「リビング/キッチンでフィットネスバイクをしているのは、Cさん?」
「トイレに入っているのはAさん?」
と、相手を特定しやすい質問などをする。家族介護者は回答を聞けば誰かを判断できる(図7のs11)。例えば、「トイレに入っているのはAさん?」の質問の回答として、「はい、トイレにいます」とAさんの声で回答があれば、対象者Aさんはトイレに居ると判断できる。この場合、検出した生体情報を情報処理部40に記録する(図7のs5)。
【0039】
スマホ50で問い合わせる場合、ハッキングを避けるために、メッセージが正しいシステムから送られていることが分かる仕組みを施してもよい。例えば、メッセージと共にユーザーが設定した画像を表示する。
また、スマートスピーカー20で情報を求める際には、人数の問い合せだけでなく、天気予報やニュース、会話の話題、フィットネスのティップスなどの情報も付加、聴く側のメリットも提供してもよい。
【0040】
情報処理部40の第4の構成を図8に示す。図8の構成による処理のフローチャートを図9に示す。
情報処理部40の第4の構成では、危険情報発出部46を有している。情報検出センサ10が異常を検出して確信度推定部42により推定された確からしさが所定以上のとき、危険情報発出部46は警報を発する機能を有している。
【0041】
確信度が高い場合には(例えば70%以上)、安全の見守りに関わる情報を提供する。図8に示すように、情報処理部40の中に危険情報発出部46があり、スマートスピーカー20からの音情報や、生体検出センサ30の情報、情報検出センサ10の情報から対象者の危険状況を把握する(図9のs12)。確信度が高い場合、対象者が危険区域(風呂場など)に人が入っているかがわかっているが、風呂場の人感センサーが反応しなくなった、或いは、風呂場のスマートスピーカー20が何か不穏な音を検知した、或いは、風呂場の転倒センサーが反応した場合に対象者が危険な状況であると判断し(図9のs13)、緊急メッセージなどの危険情報を発する(図9のs14)。
【0042】
例えば、近くのスマートスピーカー20で対象者へ問い合わせる。問題ない旨の返事があった場合には、特に後の処置はない。反応がない、あるいは、助けを求める声を受けた場合(図9のs15)、所定の手段でその要請に応える(図9のs16)。例えば、家中のスマートスピーカー20、及び、ユーザーのスマホ50へ緊急メッセージを送信する。助けを求めた人が、誰にメッセージを送って欲しいか宛先を指定した場合、予め設定されたメンバに届くようにスマホ50にメッセージを送信する。予め設定されたメンバとは例えば、家族介護者と家族、家族介護者 、または、 家族である。トイレも危険が発生する場所なので、トイレに対しても同様である。なお、鍵がかかっているケースあるため、トイレの場合に「鍵を解除する」という機能も入れてもよい。
【0043】
ベッド付属の心拍センサーや活動量計(「Fitbit」(登録商標)など)の心拍に異常を検知した場合も、上記と同様のプロセスで助けを求めてもよい。
対象者が脱衣所の場合で、温度センサで室温がかなり低い時、そのまま風呂に入ると温度差で血圧があがり、心筋梗塞などを起こしかねない状況と判断した場合は、対象者に対して警報を発してもよい。
上記で、システム側は危険を通知するメッセージだけでなく、その後のアクション(救急車を呼ぶ、専門のホットライン・リンクを提示する、等)をガイドしてもよい。
【0044】
情報処理部40の第5の構成を図10に示す。図10の構成による処理のフローチャートを図11に示す。
確信度が高い場合には(例えば70%以上)、心身の健康増進に関わる情報を提供する。図10に示すように情報処理部40は健康情報判断部47を有する。健康情報判断部47は、情報検出センサ10により検出された情報を所定の基準値と比較して基準値外であって確信度推定部42により推定された確からしさが所定以上のとき、対象者に対してスマートスピーカー20から所定の健康情報を発信させる機能を有している。
【0045】
この健康情報判断部47では情報検出センサ10や、スマートスピーカー20からの音情報、生体検出センサ30の情報を分析し、対象者の健康状態を把握する(図11のs18)。離床センサーは、単に離床したかどうかを検知するだけでなく、何時に何分、床を離れたかを記録し、対象者のトイレのパターンを把握、センサー利用のタイミングを解析しやすくする。離床センサーと連動して、寝室のスマートスピーカー20は対象者へ問いかけ、各種の健康データを収集する。
【0046】
例えば、ある程度、長い時間の会話を録音できれば、そこから心的な状態を推定したり、会話の受け答えのレスポンス時間から認知機能の状態を測る。そして、健康情報判断部47で心身の増進が必要と判断した場合には(図11のs19)、離床センサーと連動して、寝室のスマートスピーカー20は対象者へ血圧計などの利用や、踏み台昇降などの運動を奨励、促す(図11のs20)。
また、スマートスピーカー20はネット接続機器とも連動、戸外の友人や家族とのオンライン・コミュニケーションを促したり、映像を使ってリハビリ・フィットネスのやる気をあげるコンテンツを表示したりする。
【0047】
健康情報から健康管理に関わるアドバイス/奨励の情報の提供をおこなってもよい。例えば、血圧が高いので食事の注意をしてもよい。或いは、認知症や健忘が激しくなった人などは、食事と食事の間なのに体重が増えている、という場合に、食事を取ったことを忘れて過食(昼食を2度とか)してしまう。これをいち早く検知、家族に対策を促してもよい。
健康情報に関しては、介護している人だけでなく、本人/介護者の承諾があれば(図11のs21)、スマホなど所定の手段で予め設定した機関(医療機関やリハビリ施設など)に健康情報を通知してデータを共有してもよい(図11のs22)。
【0048】
以上のとおり、対象者特定システムは、センサーネットを使い、操作が容易であり、手間なく、対象者(要介護者など)を特定(推定)し、科学的に対象者の健康を管理し、対象者の安全を見守り、対象者の心身の健康を増進できる。特に、身体能力や判断能力が低下している要介護者が生体情報の計測を行う際に、手間なく、要介護者を推定することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 情報検出センサ、20 スマートスピーカー、30 生体情報センサ、40 情報処理部、41 情報記録部、42 確信度推定部、43 生体情報記録部、44 家族基本情報記録部、45 音声分析部、46 危険情報発出部、47 健康情報判断部、50 スマートホン(スマホ)
図1
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図11