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特開2022-128392天吊り空調ユニットの搬送用台車及び搬送方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128392
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】天吊り空調ユニットの搬送用台車及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0047 20190101AFI20220825BHJP
   F24F 1/0317 20190101ALI20220825BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F1/0317
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104924
(22)【出願日】2021-06-24
(62)【分割の表示】P 2021026661の分割
【原出願日】2021-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 潤
(72)【発明者】
【氏名】堀場 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】福田 航
(57)【要約】
【課題】本願は、吊り下げ状態での据え付けを前提とする空調機器をフレームへ取り付けた天吊り空調ユニットの製作方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、天吊り空調ユニットの製作方法であって、複数の天吊り用の空調機器同士を互いに組み付ける機器組み付け工程と、互いに組み付けられた複数の空調機器に、上側から、複数の空調機器を一体的に保持するフレームの上部を形成する上フレームを取り付ける上フレーム取り付け工程と、複数の空調機器が取り付けられた上フレームを上げて、複数の空調機器の下側から、フレームの下部を形成する下フレームを取り付ける下フレーム取り付け工程と、を有する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の天吊り用の空調機器同士を互いに組み付ける機器組み付け工程と、
互いに組み付けられた前記複数の空調機器に、上側から、前記複数の空調機器を一体的に保持するフレームの上部を形成する上フレームを取り付ける上フレーム取り付け工程と、
前記複数の空調機器が取り付けられた前記上フレームを上げて、前記複数の空調機器の下側から、前記フレームの下部を形成する下フレームを取り付ける下フレーム取り付け工程と、を有する、
天吊り空調ユニットの製作方法。
【請求項2】
複数の天吊り用の空調機器を一体的に保持するフレームの部材を用意する準備工程と、
前記フレームの上部を形成する上フレームを組み立てる上フレーム組立工程と、
前記フレームの下部を形成する下フレームを組み立てる下フレーム組立工程と、を更に有する、
請求項1に記載の天吊り空調ユニットの製作方法。
【請求項3】
前記上フレーム組立工程では、前記上フレームを上下逆の状態で組み立てた後、上下を反転させる、
請求項2に記載の天吊り空調ユニットの製作方法。
【請求項4】
前記上フレーム組立工程によって組み立てられた前記上フレーム、及び、前記下フレーム組立工程によって組み立てられた前記下フレームを移送するフレーム移送工程を更に有し、
前記機器組み付け工程、前記上フレーム取り付け工程、及び、下フレーム取り付け工程は、前記フレーム移送工程によって他の場所から移送された前記上フレームと前記下フレームを用いる、
請求項3又は4に記載の天吊り空調ユニットの製作方法。
【請求項5】
前記フレームが前記空調機器と共に前記空調機器の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、前記フレームに対する前記空調機器の相対移動を規制するための規制手段を、前記空調機器が有する天吊り用の取付部分に取り付ける規制手段取り付け工程を更に有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の天吊り空調ユニットの製作方法。
【請求項6】
前記下フレーム取り付け工程では、前記複数の空調機器が取り付けられた前記上フレームを巻上機で吊り上げて、前記複数の空調機器の下側から前記下フレームを取り付ける、
請求項1から5の何れか一項に記載の天吊り空調ユニットの製作方法。
【請求項7】
前記空調機器に備わる配管を支持する補助フレームを前記上フレームに取り付ける補助フレーム取り付け工程を更に有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の天吊り空調ユニットの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天吊り空調ユニットの製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天井裏に据え付ける隠蔽式の空調機やチャンバー等の空調機器の据え付けを容易にする各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1-2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5208841号公報
【特許文献2】特開2019-207092号公報
【特許文献3】特開2019-207095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井裏に据え付ける隠蔽式の空調機器は、通常、建物の構造材に固定された棒ネジ(「全ネジ」と呼ばれる場合もある)に取り付けられ、当該棒ネジによって吊り下げられたような形態で据え付けられる。よって、市販されている隠蔽式の空調機器の取付部分は、このような吊り下げ状態で据え付けることを前提とした構造になっている。したがって、現場における空調機器の据え付けを容易にするために、例えば、チャンバー等の付帯部品を工場内でフレームにより空調機本体等と予め一体化しておき、工場から遠隔の工事現場へ車両等で輸送する形態を採るような場合であっても、吊り下げ状態での据え付けを前提とした構造の空調機器を工場でフレームに取り付けるためには、空調機器に設けられた取付部分の破損等を防ぐために、空調機器を適正な姿勢で取り扱う必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吊り下げ状態での据え付けを前提とする空調機器をフレームへ取り付けた天吊り空調ユニットの製作方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、互いに組み付けられた複数の空調機器に上側から上フレームを取り付けた後に、上フレームを上げ、複数の空調機器の下側から下フレームを取り付けることにした。
【0007】
詳細には、本発明は、天吊り空調ユニットの製作方法であって、複数の天吊り用の空調機器同士を互いに組み付ける機器組み付け工程と、互いに組み付けられた複数の空調機器に、上側から、複数の空調機器を一体的に保持するフレームの上部を形成する上フレームを取り付ける上フレーム取り付け工程と、複数の空調機器が取り付けられた上フレームを上げて、複数の空調機器の下側から、フレームの下部を形成する下フレームを取り付ける下フレーム取り付け工程と、を有する。
【0008】
上記の製作方法では、互いに組み付けられた複数の空調機器に上側から上フレームを取り付けた後に、上フレームを上げ、複数の空調機器の下側から下フレームを取り付けるので、取付部分が吊り下げ状態で据え付けることを前提とした構造の空調機器をフレームに取り付ける際、空調機器を適正な姿勢に保った状態で容易に製作作業を行うことができる。よって、空調機器に設けられた取付部分の破損等が生じない。したがって、天吊り空調ユニットを効率的に製作することが可能である。
【0009】
なお、上記の製作方法は、複数の天吊り用の空調機器を一体的に保持するフレームの部材を用意する準備工程と、フレームの上部を形成する上フレームを組み立てる上フレーム組立工程と、フレームの下部を形成する下フレームを組み立てる下フレーム組立工程と、を更に有していてもよい。これによれば、上フレームと下フレームの組み立てが行われるので、上フレームや下フレームが無い状態から天吊り空調ユニットの組み立てを開始することができる。
【0010】
また、上フレーム組立工程では、上フレームを上下逆の状態で組み立てた後、上下を反転させてもよい。これによれば、上フレームが、下フレームを取り付けるための部材を下方へ突出させる形態であっても、上フレームを安定した姿勢で組立可能である。
【0011】
また、上記の製作方法は、上フレーム組立工程によって組み立てられた上フレーム、及び、下フレーム組立工程によって組み立てられた下フレームを移送するフレーム移送工程を更に有し、機器組み付け工程、上フレーム取り付け工程、及び、下フレーム取り付け工程は、フレーム移送工程によって他の場所から移送された上フレームと下フレームを用いてもよい。これによれば、各工程を適宜の場所で行うことができる。
【0012】
また、上記の製作方法は、フレームが空調機器と共に空調機器の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、フレームに対する空調機器の相対移動を規制するための規制手段を、空調機器が有する天吊り用の取付部分に取り付ける規制手段取り付け工程を更に有していてもよい。これによれば、製作した天吊り空調ユニットを横倒しの姿勢で運搬することができる。
【0013】
また、下フレーム取り付け工程では、複数の空調機器が取り付けられた上フレームを巻上機で吊り上げて、複数の空調機器の下側から下フレームを取り付けてもよい。これによれば、複数の空調機器が取り付けられた上フレームを容易に上げることができる。
【0014】
また、上記の製作方法は、空調機器に備わる配管を支持する補助フレームを上フレームに取り付ける補助フレーム取り付け工程を更に有してもよい。これによれば、空調機器に備わる配管を、天吊り空調ユニットの製作中から当該補助フレームで保護することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記の天吊り空調ユニットの製作方法であれば、吊り下げ状態での据え付けを前提とする空調機器を、適正な姿勢に保った状態でフレームへ容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、天吊り空調ユニットを斜め上から見た状態を示した図である。
図2図2は、天吊り空調ユニットを真横から見た状態を示した図である。
図3図3は、完成状態の天吊り空調ユニットにおけるフレームを示した図である。
図4図4は、上部フレームの組立工程の一例を示した図である。
図5図5は、上部フレームの上下を反転する作業の一例を示した図である。
図6図6は、下部フレームの組立工程の一例を示した第1の図である。
図7図7は、下部フレームの組立工程の一例を示した第2の図である。
図8図8は、空調機器を組み付ける工程の一例を示した第1の図である。
図9図9は、空調機器を組み付ける工程の一例を示した第2の図である。
図10図10は、空調機本体の天吊り用取付部分における取り付け方法を示した図である。
図11図11は、空調機器に下部フレームを取り付ける工程の一例を示した図である。
図12図12は、下部フレームの取り付けが完了した様子を示した図である。
図13図13は、補助フレームを取り付ける様子を示した図である。
図14図14は、天吊り空調ユニットを車両に搭載する方法を示した図である。
図15図15は、天吊り空調ユニットに設けられている部材を示した図である。
図16図16は、仮止めを示した図である。
図17図17は、仮止めの取り付け状態を示した図である。
図18図18は、天吊り空調ユニットを載せる台車の一例を示した図である。
図19図19は、台車の使用方法を示した図である。
図20図20は、天吊り空調ユニットの第1変形例である。
図21図21は、実施形態と変形例の天吊り空調ユニットの外寸を比較した図である。
図22図22は、補助フレームに設けた障害物防止手段の一例を示した図である。
図23図23は、障害物の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0018】
図1は、天吊り空調ユニット1を斜め上から見た状態を示した図である。また、図2は、天吊り空調ユニット1を真横から見た状態を示した図である。図1では、天吊り空調ユニット1が天井から吊りボルトKによって吊り下げられた状態を示している。説明の便宜上、本実施形態では、図1及び図2においてZ軸方向を天吊り空調ユニット1の上方向と定義し、X軸とY軸によって確定されるXY平面に沿った方向を天吊り空調ユニット1の横方向と定義する。また、天吊り空調ユニット1を建物の天井から吊り下げる吊りボルトKには、通常、図1に示されるような振れ止めFが設けられているが、吊りボルトKに設けられる振れ止めはこのような形態に限定されるものではない。振れ止めFに設けられる振れ止めは、例えば、上面視において対角線状に交差するクロス式の形態であってもよい。また、振れ止めは、例えば、天吊り空調ユニット1が天井に直付けされている場合や、天吊り空調ユニット1を吊り下げる吊りボルトKが極めて短い場合、吊りボルトKよりも強固な金具で天吊り空調ユニット1が天井に剛接続される場合には、省略される。また、振れ止めは、吊りボルトKの上部と下部とに取り付ける形態に限定されるものでなく、例えば、上端が天井へ埋め込まれ、下端が天吊り空調ユニット1に連結されるものであってもよい。
【0019】
天吊り空調ユニット1は、図1及び図2に示されるように、フレーム2に空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を組み付けて一体化した空調ユニットである。天吊り空調ユニット1は、給気チャンバー4や還気チャンバー5の他、冷媒配管、水配管、ドレン配管、ドレンポンプ、ダンパー、吸排気グリル、フィルター、その他各種の空調機器を有する。天吊り空調ユニット1は、建物の上部階あるいは屋上の床面を構成する床と、天吊り空調ユニット1が設置される階の天井面を構成する化粧用の天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置される。よって、天吊り空調ユニット1は、図1に示されるように、基本的に鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。
【0020】
また、天吊り空調ユニット1が天井パネルの裏側に設置される場合、天吊り空調ユニット1は隠蔽状態となる。しかし、天吊り空調ユニット1は、このように隠蔽状態で設置される形態に限定されるものではない。例えば、天井に化粧用の天井パネルが設置されない
場合、天吊り空調ユニット1は、居室の人から視認できる状態となる。
【0021】
また、吊りボルトKは、床を構成する床コンクリートに埋め込まれた吊りボルト支持用のナットに螺合されていてもよいが、代わりに、梁を構成するH鋼等の構造材に取り付けられたハンガー等の各種部材に螺合されていてもよい。
【0022】
天吊り空調ユニット1は、図1及び図2に示されるように、空調機本体3の排気口側に給気チャンバー4を連結し、空調機本体3の吸気口側に還気チャンバー5を連結している。よって、天吊り空調ユニット1は、空調機本体3をフレーム2の中心部に配置し、給気チャンバー4と還気チャンバー5で空調機本体3を挟み込むような形態となっている。空調機本体3と給気チャンバー4との連結部分、及び、還気チャンバー5と空調機本体3との連結部分は、ビスで接続されている。なお、空調機本体3と給気チャンバー4との連結部分、及び、還気チャンバー5と給気チャンバー4との連結部分は、柔接続されており、多少の相対移動が可能なようになっていてもよい。この場合、一方の開口部に嵌め込まれる他方の開口部をやや小さく製作し、開口部同士の隙間を気密用の柔軟なスポンジパッキン等のシール材で埋める形態を採ることにより、多少の相対移動が可能な柔接続構造となる。
【0023】
まず、空調機本体3について説明する。空調機本体3は、矩形の筐体31の内部に温度調整用の熱媒が流れるコイルと、送風用の電動ファンとを内蔵したパッケージユニットであり、筐体31の外部に補機32や付帯配管33も備わっている。補機32としては、例えば、コイルに流す熱媒が通る熱媒配管の流路を切り替える弁、コイルに凝縮した水を受けるドレンパンを排水するための排水ポンプ等が挙げられる。空調機本体3は、蒸発と凝縮を繰り返す冷凍サイクルの冷媒が付帯配管33を通じて供給され、機内のコイルを凝縮器または蒸発器として機能させる空調機であってもよいし、或いは、付帯配管33を通じて供給される冷水又は温水を機内のコイルに通して空気を冷却又は加熱する空調機であってもよい。また、空調機本体3は、補機32が省略されたものであってもよい。
【0024】
空調機本体3は、筐体31の外面に設けられた天吊り用取付部分34が、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26に取り付けられることにより、支持される。空調機本体3は、建物に設けられた吊りボルトK等の吊り下げ金具によって吊り下げ状態で使用されることを想定した既製品の装置であるため、天吊り用取付部分34も吊りボルトKのような吊り下げ金具に取り付けられることを想定した設計となっている。よって、本実施形態の天吊り空調ユニット1では、フレーム2に設けている吊り下げ金具26を、このような吊り下げ金具に見立てた形態にすることで、空調機本体3がフレーム2内で吊り下げ状態となるように設計されている。また、空調機本体3が電動ファンを内蔵しているため、天吊り用取付部分34には防振ゴム35が設けられており、空調機本体3からフレーム2へ伝達される振動を防振ゴム35で遮断する。これにより、空調機本体3が発する振動でフレーム2が共振することによる異音等の発生が可及的に抑制される。このような防振ゴム35には、防振のために動きを許容する防振許容方向が設計上定められているため、荷重を受けている状態で運搬される場合には防振許容方向と荷重の方向(重力の方向)とが概ね一致していることが望まれる。なお、空調機本体3の振動を遮断する手段としては、このようにフレーム2と空調機本体3との間に防振ゴム35を介する形態に限定されるものではない。例えば、フレーム2と吊りボルトKとの連結部分にバネあるいはゴムを設けてもよい。しかし、この場合、フレーム2は吊りボルトKに対して相対移動可能となるため、フレーム2自体は耐震性を有しないことになる。したがって、天吊り空調ユニット1全体の耐震性を確保する観点から、本実施形態では、フレーム2と吊りボルトKとの連結部分については剛接続することにより、フレーム2自体を耐震構造とし、その代わりにフレーム2と空調機本体3との間に防振ゴム35を介する形態にしている。
【0025】
次に、給気チャンバー4について説明する。給気チャンバー4は、空調機本体3から吹き出る空気調和された空気を、建物の各所に張り巡らせた複数の給気ダクトへ分流させるためのチャンバーである。よって、チャンバーの内部空間を形成する矩形の筐体41には、給気ダクトを連結するための連結用開口部42が複数設けられている。図1及び図2では、筐体41に連結用開口部42が6つ設けられているが、連結用開口部42の個数は、筐体41の大きさや連結用開口部42の口径等に応じて適宜変更される。また、給気チャンバー4は、6つの連結用開口部42全てに給気ダクトが連結される形態に限定されるものではない。給気チャンバー4に実際に接続される給気ダクトの本数は、天吊り空調ユニット1を設置する箇所に設けられる給気ダクトの本数に応じる。よって、天吊り空調ユニット1を設置する箇所に設けられる給気ダクトが例えば2本であれば、給気チャンバー4に6つある連結用開口部42のうちの4つについては、開口部分が閉止された状態で用いられる。したがって、このように開口部分が閉止される連結用開口部42を予め省略し、必要数の連結用開口部42だけを設けた給気チャンバー4を製作して天吊り空調ユニット1に組み込むことも考えられるが、本実施形態では、施工効率の向上や部材の製作期間の短縮を図るべく、様々な設置箇所へ適用できる、共通化された天吊り空調ユニット1を多数用意することを提案する。しかし、本願で開示する天吊り空調ユニット1は、このように各所で共通に適用できる形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、設置箇所に応じた数の連結用開口部42を有する給気チャンバー4を備えたものであってもよい。
【0026】
次に、還気チャンバー5について説明する。還気チャンバー5は、建物の各所に張り巡らせた複数の還気ダクトから流れる空気を合流させるためのチャンバーである。よって、還気チャンバー5についても給気チャンバー4と同様、還気ダクトを連結するための連結用開口部が複数設けられている。還気チャンバー5も給気チャンバー4と同様、様々な設置箇所へ適用できるように、連結用開口部を多数設けた形態を採るが、天吊り空調ユニット1は、上述したのと同様、設置箇所に応じた数の連結用開口部を有する還気チャンバー5を備えたものであってもよい。なお、還気チャンバー5は、建物によっては省略される場合がある。
【0027】
なお、給気チャンバー4と還気チャンバー5は、空調機本体3のように電動ファン等の駆動部を内蔵するものではないため、基本的に振動を発しない。よって、本実施形態において、給気チャンバー4と還気チャンバー5は、防振ゴムといった振動伝達を遮断する部品を介さずにフレーム2へ取り付けられている。しかし、天吊り空調ユニット1は、このような形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、例えば、給気チャンバー4や還気チャンバー5を、防振ゴムを介してフレーム2に取り付けたものであってもよい。また、天吊り空調ユニット1は、例えば、給気チャンバー4や還気チャンバー5を空調機本体3と同様に吊り下げ構造の部材でフレーム2に取り付けた形態であってもよい。
【0028】
このように、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を一体化した天吊り空調ユニット1は、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5のそれぞれの単体と比べると、当然に重量が大きい。よって、屋内用の高所作業車で持ち上げて建物の天井付近へ取り付け可能にするためには軽量化が求められる。そこで、本実施形態の天吊り空調ユニット1では、フレーム2をアルミニウム製の部材で構成している。このため、フレーム2を構成するアングル材21同士を締結する部分においても、リブプレート22,23とボルトで締結することにより、アングル材21同士を溶接する場合よりも十分な強度が発揮されるようにしている。また、フレーム2の端部付近の強度を強化するため、アングル材21の端部同士をフレーム2の角に相当する部位で互いに締結する棒ネジ25が設けられている。また、フレーム2に複数あるアングル材21同士の締結部分の中でも、リブプレートの板面に沿った方向(面方向)へ荷重が加わる部位(符号23の部位)については1箇所につき1枚のリブプレート23を設けているのに対し、リブプレートを曲げ
る方向の荷重が加わる部位(符号22の部位)については、強度を確保するために必要な厚みを満たすことが可能な枚数のリブプレート22を設けている。強度を確保するために必要な厚みを満たすことが可能な枚数が、例えば2枚であれば、2枚のリブプレート22でアングル材21を挟み込むような状態でアングル材21同士を締結することにより、荷重によるリブプレート22の変形や破損を防いでいる。例えば、図1を見ると判るように、天吊り空調ユニット1を吊り下げる吊りボルトKへ取り付けるためにフレーム2に設けられている吊り下げ部24が、横方向に延在するアングル材21の途中に設けられているため、天吊り空調ユニット1が吊りボルトKによって吊り下げられると、当該アングル材21の端部には天吊り空調ユニット1全体の荷重が加わる。よって、このような箇所に複数枚のリブプレート22を設けることは、フレーム2の強度を確保するうえで有効である。
【0029】
上述した天吊り空調ユニット1は、工場で製作された後、トラック等の運搬用車両を使って工事現場へ運搬される。以下、天吊り空調ユニット1の製作方法について説明する。
【0030】
図3は、完成状態の天吊り空調ユニット1におけるフレーム2を示した図である。図3では、理解を容易にするために、フレーム2のみを示した図を、天吊り空調ユニット1の完成図と並べて示している。
【0031】
図3を見ると判るように、フレーム2は、立体的な構造となっており、天吊り空調ユニット1の上部を形成する部分や、天吊り空調ユニット1の下部を形成する部分を有している。そして、本実施形態における天吊り空調ユニット1の製作方法は、フレーム2のうち天吊り空調ユニット1の上部を形成する部分を製作する工程や、フレーム2のうち天吊り空調ユニット1の下部を形成する部分を製作する工程といった、いくつかの工程を有している。そこで、説明の便宜上、以下、フレーム2のうち天吊り空調ユニット1の上部を形成する部分を上部フレーム2U、フレーム2のうち天吊り空調ユニット1の下部を形成する部分を下部フレーム2Bと称する。
【0032】
本実施形態における天吊り空調ユニット1の製作方法においては、上部フレーム2Uと下部フレーム2Bを別々に組み立てる。図4は、上部フレーム2Uの組立工程の一例を示した図である。図4に示すように、上部フレーム2Uは、複数のアングル材21同士をボルトとナットで締結した構造体である。上部フレーム2Uの製作工程においては、資材の加工機等を使って用意した複数のアングル材21同士を突き合わせ、この状態でボルトとナットを使って締結することにより、構造体にする。アングル材21同士を直角に締結する部分については、リブプレート22が適宜併用される。これにより、アングル材21同士を締結して出来上がる上部フレーム2Uの全体的な強度が確保される。
【0033】
なお、上述したように、フレーム2の各部のうち、天吊り空調ユニット1全体の荷重が加わる箇所については、強度を確保するために必要な厚みを満たすことが可能な枚数のリブプレート22を設けてフレーム2の強度を確保していることは上述した通りである。このような箇所に、例えば2枚のリブプレート22を設ける場合、アングル材21の締結部分に対し、2枚のリブプレート22を両側から挟み込むように配置する。そして、2枚のリブプレート22のうちの一方にあるネジ穴にボルトを差し込む。ネジ穴に差し込まれたボルトは、1つ目のリブプレート22のネジ穴、アングル材21のネジ穴、2つ目のリブプレート22のネジ穴を通る。そして、ボルトの先端が、2つ目のリブプレート22のネジ穴から突き出る。ボルトの先端にナットを螺合することにより、アングル材21の締結部分が、2枚のリブプレート22で両側から挟み込まれた状態になる。
【0034】
図4に示す上部フレーム2Uのうち、四辺が何れもアングル材21によって囲まれる四角枠(上部フレーム2Uに形成される3つの枠のうちの中央部の枠)は、空調機本体3の
吊り位置に対応する。そして、上部フレーム2Uのうち、四辺が3つのアングル材21と1つの棒ネジ25で囲まれる2つの四角枠(上部フレーム2Uに形成される3つの枠のうちの外側2つの枠)は、給気チャンバー4と還気チャンバー5に対応する。よって、上部フレーム2U全体が形作る外側の四角枠は、フレーム2の外骨格を形成することになる。下部フレーム2Bも同様である。したがって、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5は、上部フレーム2Uの最外部分を形作る四角枠や下部フレーム2Bの最外部分を形作る四角枠によって形成されるフレーム2の外骨格の内側に収まり、天吊り空調ユニット1の輸送時等においても外骨格に守られることになる。棒ネジ25は、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5をフレーム2に保持させる上では特に必要無い構成であるが、アングル材21の端部に衝突する物体の衝撃力に耐え、フレーム2が外骨格としての構造的な強度を発揮するために必要な構成として機能する。
【0035】
なお、上部フレーム2Uの製作中は、上部フレーム2Uが上下反転した状態で作業が行われる。そして、上部フレーム2Uの製作が完了すると、上部フレーム2Uの上下が正しい方へ向くように、上部フレーム2Uの上下を反転する作業が行われる。図5は、上部フレーム2Uの上下を反転する作業の一例を示した図である。上部フレーム2Uの製作が完了すると、例えば、図5に示すように、上部フレーム2Uの上下を反転する作業が行われる。
【0036】
図6は、下部フレーム2Bの組立工程の一例を示した第1の図である。また、図7は、下部フレーム2Bの組立工程の一例を示した第2の図である。図6図7に示すように、下部フレーム2Bは、上部フレーム2Uと同様、複数のアングル材21同士をボルトとナットで締結した構造体である。下部フレーム2Bの製作工程においては、資材の加工機等を使って用意した複数のアングル材21同士を突き合わせ、この状態でボルトとナットを使って締結することにより、構造体にする。また、上部フレーム2Uを連結するためのリブプレート23が上方へ突き出るようにアングル材21やリブプレート23を締結する。下部フレーム2Bでは、アングル材21同士の締結部分に、リブプレート22やリブプレート23のみならずL字金具29も用いる。また、図7に示すように、下部フレーム2Bには後述する支持部材27や、フレーム2に取り付けた空調機器類がフレーム2に対して振れるのを防ぐ耐震用の振れ止め2Aも取り付けられる。
【0037】
上部フレーム2Uと下部フレーム2Bを組み立てた後は、空調機器の組み付けを行う。図8は、空調機器を組み付ける工程の一例を示した第1の図である。また、図9は、空調機器を組み付ける工程の一例を示した第2の図である。天吊り空調ユニット1を製作する現場には、空調機本体3や給気チャンバー4、還気チャンバー5が用意される。そして、空調機本体3は、上下が正しい方へ向いた状態で作業台等に置かれる。よって、空調機器を組み付ける際は、まず、図8に示すように、上下を正しい方へ向けた状態の上部フレーム2Uを空調機本体3の上側から被せるように配置し、空調機本体3の取付部分を上部フレーム2Uに取り付ける。その次に、図9に示すように、給気チャンバー4と還気チャンバー5を組み付ける。給気チャンバー4は、空調機本体3の吹出口に連結される。また、還気チャンバー5は、空調機本体3の吸い込み口に連結される。空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5は、何れも上下が正しい方へ向いた状態で互いにビスで連結される。
【0038】
上述したように、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5は、天井からの吊り下げを前提とした設計となっている。例えば、空調機本体3は、筐体31の外面に設けられた天吊り用取付部分34が、フレーム2の吊り下げ金具26に取り付けられることにより、支持される。図9の部分拡大図は、空調機本体3に設けられている天吊り用取付部分34とその周辺を示している。そして、図10は、空調機本体3の天吊り用取付部分34における取り付け方法を示した図である。天吊り用取付部分34は、図10に示すよ
うに、上部フレーム2Uのアングル材21に設けられているネジ穴に挿通されてナットで
固定された棒ネジ状の吊り下げ金具26が挿通され、防振ゴム35や仮止め6を介して、吊り下げ金具26に螺合されたナットで挟み込むような状態で固定される。仮止め6は、天吊り空調ユニット1が据え付け箇所の現場に移送された後は取り外される。空調機本体3は、給気チャンバー4や還気チャンバー5とビスで接続され、仮止めのような状態であったが、このように天吊り用取付部分34で吊り下げ金具26に固定されることにより、フレーム2に取り付けられる各空調機同士が強固に固定された状態となる。
【0039】
図11は、空調機器に下部フレーム2Bを取り付ける工程の一例を示した図である。上述したように、上部フレーム2Uには、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5が取り付けられている。よって、下部フレーム2Bを上部フレーム2Uへ取り付けてフレーム2を完成させる場合は、図11に示すように、上部フレーム2Uを巻上機(「ホイスト」とも呼ばれる)で吊り上げる。上述したように、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5は、天井から吊り下げるために各空調機器に設けられている取付部分を使って、上部フレーム2Uへ取り付けられている。よって、上部フレーム2Uを巻上機で吊り上げると、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5は、上部フレーム2Uから吊り下がった状態で上部フレーム2Uと共に吊り上がる。上部フレーム2Uを巻上機で吊り上げた後は、上部フレーム2Uから吊り下がる空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5の下側から下部フレーム2Bを上部フレーム2Uへ取り付ける。下部フレーム2Bを空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5の下側へ配置する際は、上部フレーム2Uを吊っている巻上機を下部フレーム2B上へ移動させるか、或いは、上部フレーム2Uから吊り下がる空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5の下側へ下部フレーム2Bを移動させる。移動の際は、上部フレーム2Uから吊り下がる空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5が、下部フレーム2Bに設けられている支持部材27や振れ止め2Aに干渉しない位置、例えば、空調機本体3が2つの支持部材27の間に位置するように、移動作業を行う。そして、下部フレーム2Bのリブプレート23を、上部フレーム2Uのアングル材21へボルトとナットで締結することにより、下部フレーム2Bが上部フレーム2Uへ取り付けられた状態になり、フレーム2が形成される。
【0040】
図12は、下部フレーム2Bの取り付けが完了した様子を示した図である。下部フレーム2Bを上部フレーム2Uへ取り付けた後は、上部フレーム2Uを吊っている巻上機を下降動作させ、上部フレーム2Uに取り付けた吊り上げ用のワイヤを上部フレーム2Uから取り外す。そして、取り付け作業が残っている部品類の取り付けや養生等を行い、天吊り空調ユニット1を工事現場へ運搬可能な状態にする。
【0041】
図13は、補助フレーム103を取り付ける様子を示した図である。空調機本体3には、上述したように、各種の配管が設けられている。よって、天吊り空調ユニット1の組み立てにおいては、これらの配管を支持するための補助フレーム103が上部フレーム2Uに取り付けられる。補助フレーム103は、下部フレーム2Bが上部フレーム2Uへ取り付けられた後に行ってもよいが、天吊り空調ユニット1を組み立てている最中に空調機本体3の配管を保護するべく、例えば、上部フレーム2Uの組み立て時に上部フレーム2Uへ取り付けてもよい。
【0042】
以上の製作方法により、天吊り空調ユニット1が完成する。上記の製作方法によれば、市販されている隠蔽式の空調機器のように、取付部分が吊り下げ状態で据え付けることを前提とした構造の空調機器を工場でフレーム2に取り付ける際、空調機器を適正な姿勢に保った状態で容易に取り付けができるため、空調機器に設けられた取付部分の破損等が生じない。よって、天吊り空調ユニット1を効率的に製作することが可能である。
【0043】
なお、天吊り空調ユニット1は、例えば、次のような方法で工場から工事現場へ運搬可能である。図14は、天吊り空調ユニット1を車両に搭載する方法を示した図である。上述したように、天吊り空調ユニット1は、床と天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置するために、鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。そして、空調機本体3は、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26によってフレーム2内で吊り下げられた状態となっている。このため、例えば、工場で組み立てた天吊り空調ユニット1を工事現場へ運搬する場合、通常であれば、図14(A)に示されるように、天吊り空調ユニット1を横倒しせずに車両Vの荷台へそのまま平積みすることになる。しかし、この場合、天吊り空調ユニット1の荷台の上部空間が有効活用されず、天吊り空調ユニット1を効率的に搬送できない。そこで、例えば、図14(B)に示されるように、天吊り空調ユニット1を横倒しの状態で車両Vの荷台に積むことが考えられる。天吊り空調ユニット1を横倒しにして天吊り空調ユニット1の荷台に積めば、車両Vの荷台の上部空間を有効活用できる。
【0044】
しかしながら、天吊り空調ユニット1を上記のように横倒しで運搬すると、吊り下げ金具26の吊り下げ方向に対して横向きの方向へ空調機本体3がフレーム2に対して相対移動する可能性がある。空調機本体3が吊り下げ金具26の吊り下げ方向に対して横向きの方向に相対移動すると、フレーム2と空調機本体3とを連結している吊り下げ金具26が変形したり、天吊り用取付部分34と吊り下げ金具26との間にある防振ゴム35が破損したりする可能性がある。
【0045】
そこで、本実施形態の天吊り空調ユニット1を運搬する際には、このような不具合を防止するための以下の処置が講じられる。図15は、天吊り空調ユニット1に設けられている部材を示した図である。図15に示すように、本実施形態の天吊り空調ユニット1には、天吊り用取付部分34に仮止め6が設けられる。また、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を所定範囲に制限する支持部材27がフレーム2に設けられている。支持部材27はフレーム2に対する空調機本体3の相対移動を所定範囲に制限するものであるため、天吊り空調ユニット1が通常の姿勢をとっている場合、支持部材27はフレーム2に接触しない。そして、天吊り空調ユニット1が横倒しにされて、空調機本体3が重力方向へ自重で移動すると、フレーム2に設けられている支持部材27に空調機本体3が接触し、空調機本体3が支持部材27によって下側から支持されたような状態になる。また、防振ゴム35についても、フレーム2に対する空調機本体3の横方向への荷重が加わらないように、仮止め6が吊り下げ金具26と天吊り用取付部分34との相対移動を規制している。仮止め6や支持部材27は、上述した天吊り空調ユニット1の製作過程における適宜のタイミングでフレーム2に取り付けられる。そして、仮止め6は、天吊り空調ユニット1の運搬完了後は取り外される。
【0046】
図16は、仮止め6を示した図である。仮止め6は、断面視コの字型の金物であり、平坦で矩形の天板部61と、天板部61に2つある長辺沿いにそれぞれ設けられる側壁部62とを有する。天板部61には、吊り下げ金具26の外径よりもやや大きい切り欠き部63が設けられている。仮止め6は、天吊り空調ユニット1を搬送する際に装着される搬送用の仮止めである。このような仮止め6が、以下のような状態で天吊り用取付部分34に取り付けられる。
【0047】
図17は、仮止め6の取り付け状態を示した図である。仮止め6は、吊り下げ金具26に螺合されているナットによって天板部61の上面が押圧される。そして、天板部61の長辺沿いにある2つの側壁部62の下端が、天板部61の上面を押圧するナットの押圧力で天吊り用取付部分34を押圧することにより、吊り下げ金具26と天吊り用取付部分34が防振ゴム35の変形によって相対移動するのを防ぐ。また、仮止め6の側壁部62が天吊り用取付部分34へ加える押圧力は、防振ゴム35の設計上想定されている荷重の方
向に一致している。よって、天板部61の上面を押圧するナットを過度に締め付けない限り、当該押圧力が防振ゴム35を破壊する可能性は極めて低い。
【0048】
以上に述べたように、天吊り空調ユニット1には仮止め6や支持部材27が設けられているため、天吊り空調ユニット1を車両Vの荷台へ載せるために横向きにしても、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動が制限される。このため、フレーム2に吊り下げ状態で取り付けられている空調機本体3であっても、吊り下げ金具26や天吊り用取付部分34、防振ゴム35が空調機本体3の自重で破損しない。したがって、本実施形態の天吊り空調ユニット1であれば、車両Vの荷台という限られたスペースに効率的に搭載することが可能となる。なお、当然であるが、仮止め6や支持部材27といった規制手段は、天吊り空調ユニット1を横倒しの姿勢で運搬しない場合には、取り付けを省略してもよい。また、図14(A)では、天吊り空調ユニット1が積み重ならない形態で図示されていたが、本実施形態の天吊り空調ユニット1は、積み重ね不能なものに限定されるものではない。本実施形態の天吊り空調ユニット1は、平積みの状態で複数段に積み重ねられてもよい。
【0049】
図18は、天吊り空調ユニット1を載せる台車の一例を示した図である。天吊り空調ユニット1は、例えば、図18に示すような台車112で運搬することが可能である。台車112は、台車112の底部を形成する底部112A、天吊り空調ユニット1を側方から囲む側部112B、側部112Bを底部112Aに対し横倒し方向へ回動可能に連結するヒンジ112C、底部112Aの下側に設けられる車輪112Dを備える。台車112は、天吊り空調ユニット1を側方から支持する側部112Bが、底部112Aに対して横倒しになる方向へ回動可能であるため、例えば、以下のような運搬が可能である。
【0050】
図19は、台車112の使用方法を示した図である。台車112は、例えば、図19(A)に示すように、天吊り空調ユニット1を複数搭載可能である。また、天吊り空調ユニット1を側方から支持する側部112Bが、底部112Aに対して横倒しになる方向へ回動可能である。よって、例えば、天吊り空調ユニット1が製造される工場で天吊り空調ユニット1を搭載した台車112を、運送用のトラックや、建設現場にある仮設或いは本設のエレベータ等を使って天吊り空調ユニット1の設置場所付近まで移送した後、次のようにして天吊り空調ユニット1を台車112から降ろすことができる。すなわち、天吊り空調ユニット1を載せた台車112を、天吊り空調ユニット1の設置場所付近まで移送した後、図19(B)に示すように、側部112Bを天吊り空調ユニット1と共に横出し状態にする。天吊り空調ユニット1を台車112へ搭載する際、天吊り空調ユニット1を側部112Bと共に横倒し状態にすると天吊り空調ユニット1の姿勢が正しく上下方向となるように天吊り空調ユニット1を搭載しておけば、図19(B)の状態で、天吊り空調ユニット1の上面が上を向いた状態になる。よって、作業者は、天吊り空調ユニット1を、側部112Bを構成するフレームの一部に載せたままの状態で天井へ持ち上げて吊りボルトKに固定するか、或いは、側部112Bに載っている状態の天吊り空調ユニット1を、フォーク状の昇降部分を備えた昇降機等で天井まで直接持ち上げることにより、天吊り空調ユニット1を天井へ容易に設置することが可能となる。側部112Bを構成するフレームの一部は、天吊り空調ユニット1を天井へ取り付けた後に、天吊り空調ユニット1から取り外して台車112へ組み付け直す。
【0051】
天吊り空調ユニット1は、このようにして運搬することができる。天吊り空調ユニット1は、建設現場に空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を別々の状態で搬入して組み立て作業を行っていたような場合に比べると、極めて短時間で現場の作業を完了することができるため、建設現場の工期を大幅に短縮可能である。また、天吊り空調ユニット1は、工場で組み立てることができるため、天吊り空調ユニット1の組み立てに適した環境で効率的な組立が可能である。よって、建設現場に空調機本体3と給気チャンバ
ー4と還気チャンバー5を別々の状態で搬入して組み立て作業を行う場合に比べて、全体の工数を短縮することが可能である。もっとも、天吊り空調ユニット1は、工場で完成される形態に限定されるものではない。例えば、フレーム2を半製品として製造し、それをフレーム2の製造場所とは別の場所へ移送してから空調機本体3等の空調機器をフレーム2へ取り付け、その後に工事現場で据え付ける形態であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態の天吊り空調ユニット1は、以下のように変形してもよい。図20は、天吊り空調ユニット1の第1変形例である。本第1変形例の天吊り空調ユニット1では、給気チャンバー4に設けられている連結用開口部42の代わりにダクト連結部101が設けられている。また、フレーム2には、空調機本体3に取り付けられた冷温水配管接続部102を支持するための補助フレーム103が設けられる。
【0053】
ダクト連結部101は、給気チャンバー4の外面から殆ど突出しない。また、冷温水配管接続部102は、空調機本体3の内部に設けられているコイルに通す冷温水の配管を接続する部位であり、配管や電磁弁、工具を使わずにワンタッチで接続可能な配管接続用のカプラによって構成される。配管には保温材が適宜設けられる。冷温水配管接続部102は、空調機本体3の筐体から突出するような形態の部位であるため、冷温水配管接続部102に配管の荷重といった各種の外力が加わると、冷温水配管接続部102の付け根部分が損傷する可能性がある。そこで、このような冷温水配管接続部102を天吊り空調ユニット1に設ける場合、冷温水配管接続部102を支持する補助フレーム103をフレーム2に設けることが好ましい。補助フレーム103は、フレーム2のアングル材21と同様のアングル材104や、ボルト、ナット、その他各種の構造部材によって形成される。
【0054】
本第1変形例の給気チャンバー4には、このようなダクト連結部101が設けられているため、連結用開口部42が設けられている場合よりも天吊り空調ユニット1を小型化できる。図21は、上記実施形態と本変形例の天吊り空調ユニット1の外寸を比較した図である。ダクト連結部101は、連結用開口部42に比べると、給気チャンバー4の外面から殆ど突出しないため、図21を見ると判るように、変形例の天吊り空調ユニット1の方が、実施形態の天吊り空調ユニット1よりも距離L1だけ外寸を小さくすることが可能である。連結用開口部42の突出量は、一般的なダクトの連結部分の長さ(概ね5~15cm程度)であるため、距離L1は概ねこの長さに相当することになる。したがって、連結用開口部42の代わりにダクト連結部101を使った本変形例の天吊り空調ユニット1は、現場における搬送や据え付けをより容易にし、更に、連結用開口部42に物が接触することによる連結用開口部42の変形といった損傷リスクも可及的に抑制できる。このため、ダクト連結部101を使った本変形例は、施工性が極めて高い。
【0055】
ところで、補助フレーム103は、空調機本体3に設けられている配管を、天吊り空調ユニット1の組み立て時や輸送時に保護する役割を果たすことは上述した通りである。この、補助フレーム103は、天吊り空調ユニット1が設置された天井部分において、天吊り空調ユニット1のメンテナンスの障害となるものが天吊り空調ユニット1の周囲に誤って設置されるのを防ぐ目的に使うこともできる。図22は、補助フレーム103に設けた障害物防止手段の一例を示した図である。補助フレーム103には、例えば、障害物防止カバー107のような板状の部材や、或いは、箱等の障害物防止手段を設置することが可能である。障害物防止カバー107は、補助フレーム103にボルト等の固定手段で完全に固定されていてもよいし、ヒンジ等の可動部分を有する固定手段によって可動できる状態で固定されていてもよいし、或いは、着脱可能な状態で設けられていてもよい。また、障害物防止カバー107は、天吊り空調ユニット1の製作工程の任意のタイミングで取り付け可能である。障害物防止カバー107が着脱可能、或いは、ヒンジ等により可動であれば、天吊り空調ユニット1の運搬時に障害物防止カバー107が運搬の邪魔になるのを防ぐことができる。
【0056】
通常、空調機本体3には、空気中の浮遊物によってコイル等が汚れるのを防ぐためのフィルターが内蔵される。フィルターは、交換等の定期的なメンテナンスが必要である。このため、空調機本体3には、例えば、図22(A)に示されるように、フィルターを出し入れするためのフィルター交換口108が設けられる。天井埋め込みタイプの空調機において、図22(A)に示す空調機本体3のように、空調機本体3の筐体側面にフィルター交換口108が設けられる場合、フィルター交換作業は、通常、室内の天井を形成する天井パネルに設けられた点検口を通じて行われる。そして、図22(B)に示されるように、フィルター交換口108からフィルター109が引き出される。そして、図22(C)に示されるように、フィルター109が空調機本体3から外される。そして、交換作業が終了すると、点検口は閉鎖され、フィルター交換口108の周辺は天井パネルで隠された状態になる。
【0057】
天井パネルによって形成され、室内の居者から覆い隠される天井裏空間には、天吊り空調ユニット1の他、例えば、照明器具や通信機器、その他各種の機器類が設置される。そして、天井裏空間に設置される機器類は、基本的に天井スラブから吊り下がる吊り下げボルト等によって吊り下げられる。よって、障害物防止カバー107のように、天井スラブから吊り下がる吊り下げボルトの取り付けを邪魔する障害物防止手段を、フィルター交換口108付近や、その他、天吊り空調ユニット1のメンテナンス作業時に作業空間の確保が必要となる箇所を少なくとも上側から覆うように設けておくことにより、このような各種の機器類が天吊り空調ユニット1のメンテナンス作業の邪魔になる箇所へ設置されるのを防ぐことができる。
【0058】
図23は、障害物の一例を示した図である。障害物防止カバー107が無い場合、例えば、障害物110のような工作物がフィルター交換口108付近に設置される可能性がある。天井裏に各種機器類を設置する業者は、天吊り空調ユニット1にメンテナンス用の作業空間が必要なことを把握していない場合があるため、当該業者が障害物110を設置してしまう場合があり得る。この点、フィルター交換口108付近に障害物110の設置を防ぐための障害物防止カバー107が設置されていれば、障害物110を設置するための吊り下げボルトが天井スラブから吊り下げられるのを障害物防止カバー107が邪魔するため、障害物110が誤って設置される可能性を可及的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
K・・吊りボルト
F・・振れ止め
V・・車両
1・・天吊り空調ユニット
2・・フレーム
3・・空調機本体
4・・給気チャンバー
5・・還気チャンバー
6・・仮止め
2U・・上部フレーム
2B・・下部フレーム
21・・アングル材
22・・リブプレート
23・・リブプレート
24・・吊り下げ部
25・・棒ネジ
26・・吊り下げ金具
27,28・・支持部材
29・・L字金具
2A・・振れ止め
31・・筐体
32・・補機
33・・付帯配管
34・・天吊り用取付部分
35・・防振ゴム
41・・筐体
42・・連結用開口部
61・・天板部
62・・側壁部
63・・切り欠き部
101・・ダクト連結部
102・・冷温水配管接続部
103・・補助フレーム
104・・アングル材
107・・障害物防止カバー
108・・フィルター交換口
109・・フィルター
110・・障害物
112・・台車
112A・・底部
112B・・側部
112C・・ヒンジ
112D・・車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2021-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天吊り空調ユニットの搬送用台車であって、
前記天吊り空調ユニットを上面が横向きの姿勢で載せることが可能な底部と、
前記底部に載る前記天吊り空調ユニットを側方から支持可能な側部と、を備え、
前記側部には、前記側部を前記底部に対し回動可能に連結する部分を軸にして前記側部を前記底部に対し横倒し方向へ回動すると、前記側部と共に倒れて上面が上向きの姿勢になった前記天吊り空調ユニットを下側から支持する状態になる部材が、前記側部から取り外し可能な状態で設けられている、
天吊り空調ユニットの搬送用台車。
【請求項2】
前記部材は、前記側部を構成するフレームの一部である、
請求項1に記載の天吊り空調ユニットの搬送用台車。
【請求項3】
前記側部は、前記底部が有する2つの長辺のそれぞれの部分に設けられており、
前記底部は、2つの前記天吊り空調ユニットを、上面同士が対向する状態で載せることが可能な大きさを有する、
請求項1に記載の天吊り空調ユニットの搬送用台車。
【請求項4】
天吊り空調ユニットの搬送方法であって、
搬送用台車の底部に、前記天吊り空調ユニットを上面が横向きの姿勢で載せる工程と、
前記天吊り空調ユニットを前記搬送用台車で前記天吊り空調ユニットの据え付け箇所の現場へ移送する工程と、
前記底部に載る前記天吊り空調ユニットを側方から支持可能な前記搬送用台車の側部を、前記底部に対し回動可能に連結する部分を軸にして前記側部を前記底部に対し横倒し方向へ前記現場で回動することにより、前記天吊り空調ユニットを前記側部と共に倒して上面が上向きの姿勢にする工程と、
前記天吊り空調ユニットを前記搬送用台車から前記据え付け箇所へ上げる工程と、を有する、
天吊り空調ユニットの搬送方法。
【請求項5】
前記天吊り空調ユニットを前記搬送用台車から前記据え付け箇所へ上げる工程では、前記側部に取り外し可能に設けられており、前記側部と共に倒れて上面が上向きの姿勢にな
った前記天吊り空調ユニットを下側から支持する状態になる部材を、前記側部から取り外し、前記部材と共に前記天吊り空調ユニットを前記搬送用台車から前記据え付け箇所へ上げる、
請求項4に記載の天吊り空調ユニットの搬送方法。