(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128395
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】閉端型燃料電池およびそのアノード双極板
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220825BHJP
H01M 8/0223 20160101ALI20220825BHJP
H01M 8/0241 20160101ALI20220825BHJP
H01M 8/0263 20160101ALI20220825BHJP
H01M 8/0232 20160101ALI20220825BHJP
H01M 8/0234 20160101ALI20220825BHJP
H01M 8/0239 20160101ALI20220825BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0223
H01M8/0241
H01M8/0263
H01M8/0232
H01M8/0234
H01M8/0239
H01M8/02
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130119
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】110106100
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】張 嵩駿
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 建銘
(72)【発明者】
【氏名】▲フアン▼ 秋萍
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗端
(72)【発明者】
【氏名】陳 耿陽
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA12
5H126EE22
5H126EE24
5H126GG02
5H126GG05
5H126GG18
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】反応効率の向上と安定した反応/出力の維持
【解決手段】閉端型燃料電池およびそのアノード双極板を提供する。アノード双極板は、気密導電性フレームと、この気密導電性フレーム内に配置された導電性多孔質基板とを含む。気密導電性フレームにおいて、第1の側部の縁は燃料入口を有し、第2の側部の縁は燃料出口を有する。導電性多孔質基板は、少なくとも1つの流路を有し、流路の第1の端は燃料入口と連通し、流路の第2の端は燃料出口と連通する。流路には、燃料入口付近に遮断部が設けられ、流路を2つの領域に分ける。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉端型燃料電池のアノード双極板であって、
気密導電性フレームであって、前記気密導電性フレームの第1の側部の縁は、燃料入口を有し、前記気密導電性フレームの第2の側部の縁は、燃料出口を有する、前記気密導電性フレームと、
気密導電性フレーム内に配置された、導電性多孔質基板であって、前記導電性多孔質基板は、少なくとも1つの流路を有し、前記少なくとも1つの流路の第1の端は、前記燃料入口と連通し、前記少なくとも1つの流路の第2の端は、前記燃料出口と連通し、前記少なくとも1つの流路には、前記燃料入口付近に少なくとも1つの遮断部が配置され、前記少なくとも1つの流路を2つの領域に分割する、前記導電性多孔質基板と、を備えた、
閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項2】
前記遮断部の厚さは、前記導電性多孔質基板の厚さ以下である、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項3】
前記遮断部と前記燃料入口との間の距離は、前記少なくとも1つの流路のうちの対応する1つの全長の0~40%を占める、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項4】
前記遮断部と前記燃料入口との間の距離は、前記少なくとも1つの流路のうちの対応する1つの全長の0~20%を占める、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項5】
前記遮断部の長さは、前記少なくとも1つの流路のうちの対応する1つの全長の0.1%~1%を占める、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項6】
前記遮断部の長さは、前記少なくとも1つの流路の縁から中央に向かって短くなる、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項7】
前記少なくとも1つの流路は、サーペンタイン型流路である、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項8】
前記少なくとも1つの流路は、複数の流路であり、前記複数の流路の各々は、直線状流路である、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項9】
前記気密導電性フレームの前記第1の側部と前記第2の側部とは、対向する側部である、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項10】
前記導電性多孔質基板の材料は、炭素系材料、金属材料、導電性プラスチック材料、またはこれらの材料の組み合わせを備える、請求項1に記載の閉端型燃料電池のアノード双極板。
【請求項11】
閉端型燃料電池であって、
アノード側部とカソード側部とを有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の前記アノード側部上に配置された、請求項1から10のいずれか一項に記載のアノード双極板と、
前記膜電極接合体の前記カソード側部上に配置されたカソード双極板と、
を備える、閉端型燃料電池。
【請求項12】
前記膜電極接合体は、前記アノード側部上にアノード電極層とアノードガス拡散層とを備え、前記アノードガス拡散層は、前記アノード双極板と接触する、請求項11に記載の閉端型燃料電池。
【請求項13】
前記膜電極接合体は、前記アノード側部と前記カソード側部との間に配置されたイオン伝導膜を備える、請求項11に記載の閉端型燃料電池。
【請求項14】
前記膜電極接合体は、前記カソード側部上にカソード電極層とカソードガス拡散層とを備える、請求項11に記載の閉端型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、閉端型燃料電池およびそのアノード双極板に関する。
【背景技術】
【0002】
閉端型燃料電池は、補助システム(リサイクル装置および温度制御装置など)の一部を省略して、電池システムを大幅に簡素化し、構造をよりコンパクトおよびモバイル機器に適したものにする、アノード閉端型の電池システムである。これは、現在、燃料電池開発の中核分野の1つである。
【0003】
閉端型燃料電池内の流路は、反応効率を最大化し、安定した反応/出力を維持するように設計されている。反応効率の最大化は、主に活性領域(触媒層)内に燃料を均一に分配することによって達成され、燃料の均一の分配のために、安定した反応/出力を維持するには、三重点(すなわち、固相、液相、気相についての)での反応の動的つりあいが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、サーペンタイン型または直線状流路は、グラファイトまたは金属製の双極板を鋳造/旋盤加工することで形成されていた。しかしながら、これらの双極板の構造は、孔を有しないため、流路から流路間の活性領域に輸送される燃料は、活性領域に到達する前に流路から膜電極接合体内のガス拡散層に水平方向に拡散される必要があり、これによって燃料濃度勾配が著しく大きくなり、燃料が均一に分散する可能性が低くなる。
【0005】
別の方法では、流路を有する双極板を導電性の多孔質材料の一体プレートに置き換えることによって、著しい濃度勾配を生じさせることなく、燃料が多孔質材料の孔を通って活性領域の表面上に拡散し得るようにすることが含まれる。しかしながら、この設計ではサーペンタイン型流路のような主要な誘導流路が存在しないため、燃料を導入した後の流軌道を予測することが難しい。さらに、導電性多孔質材料の小さな孔は、燃料輸送の抵抗をも増加させるため、生成物中の水分またはその他の流体がそこに滞留し得、容易に除去できない場合があり得る。そのため、生成物中に含まれる水分が多孔質流路の一部を塞ぎ始めると、効果的な活性領域の割合が徐々に減少し、これは同時に反応/出力の低下を起こし、さらに長期的には動作の安定性が悪くなる。
【0006】
一方、いくつかの研究では、平行または分岐した相互嵌合流路が設計され、導電性多孔質材料内に配置されている。しかしながら、多孔質材料内に平行または分岐した相互嵌合流路を使用すると、燃料の流が2回に分けられ、異なる流路に燃料が偏って分布することとなる。その結果、流量の少ない流路ではフラッディングおよび閉塞が発生し得、対応する活性領域の反応/出力がさらに低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的な実施形態の閉端型燃料電池のアノード双極板は、気密導電性フレームと導電性多孔質基板とを含む。気密導電性フレームの第1の側部の縁は、燃料入口を有し、気密導電性フレームの第2の側部の縁は、燃料出口を有する。導電性多孔質基板は、気密導電性フレーム内に配置される。導電性多孔質基板は、少なくとも1つの流路を有し、流路の第1の端は、燃料入口と連通し、流路の第2の端は、燃料出口と連通する。流路は、燃料入口付近に遮断部が配置され、流路を2つの領域に分ける。
【0008】
本開示の例示的な実施形態の閉端型燃料電池は、膜電極接合体と上記のアノード双極板とカソード双極板とを含む。膜電極接合体は、アノード側部とカソード側部とを有する。アノード双極板は、膜電極接合体のアノード側部上に配置される。カソード双極板は、膜電極接合体のカソード側部上に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の例示的な実施形態において提供される閉端型燃料電池のアノード双極板は、製造および加工における利便性を示し、反応効率の最大化と安定した反応/出力の維持という要件を同時に満たし得る。
【0010】
本開示の別の例示的な実施形態で提供される閉端型燃料電池は、優れた反応効率を示し、安定した反応/出力を維持し得る。
【0011】
本開示の流路設計により、反応効率の最適化、安定した反応/出力の維持、流路/流路材料の厚さおよびインピーダンスの不変化の維持および製造加工における利便性の実現が可能となった。
【0012】
本開示をさらに詳細に説明するために、図を伴ったいくつかの例示的な実施形態を以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本開示の第1の実施形態による、閉端型燃料電池のアノード双極板の概略上面図である。
【
図2】本開示の第2の実施形態による、閉端型燃料電池のアノード双極板の概略上面図である。
【
図3A】本開示の第3の実施形態による、閉端型燃料電池のアノード双極板の概略側面図である。
【
図3B】第3の実施形態の変更例の概略側面図である。
【
図4】本開示の第4の実施形態による、閉端型燃料電池のアノード双極板の部分拡大概略上面図である。
【
図5】本開示の第5の実施形態による、閉端型燃料電池の概略断面図である。
【
図6】放電プロセス中の実験例1~7および比較例の電流変化曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態を、図面を参照して包括的に説明するが、本開示は、さらに多くの異なる形態で実施され得、および本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるべきではない。図面では、明確さのために、各領域、部分、層の大きさおよび厚さが実際の縮尺で描かれていない場合があり得る。
【0015】
図1Aは、本開示の第1の実施形態による閉端型燃料電池のアノード双極板の概略上面図である。
図1Bは、
図1Aの線分B-B’に沿った概略断面図である。
【0016】
図1Aおよび
図1Bを参照すると、第1の実施形態の閉端型燃料電池のアノード双極板100は、気密導電性フレーム102と導電性多孔質基板104とを含む。気密導電性フレーム102の第1の側部102aの縁は、燃料入口106を有し、気密導電性フレーム102の第2の側部102bの縁は、燃料出口108を有する。気密導電性フレーム102の材料は、例えば、金属、導電性グラファイト、導電性セラミック、または上記材料の複合物である。一実施形態において、気密導電性フレーム102の第1の側部102aと第2の側部102bとは、対向する側部である。他の実施形態において、第1の側部102aと第2の側部102bとは、隣接する側部であり得、本開示は上記に限定されるものではない。導電性多孔質基板104は、気密導電性フレーム102内に配置され、導電性多孔質基板104の材料は、例えば、炭素系材料、金属材料、導電性プラスチック材料、またはこれらの組み合わせである。導電性多孔質基板104は、少なくとも1つの流路110を有する。流路110の第1の端110aは、燃料入口106と連通し、流路110の第2の端110bは、燃料出口108と連通する。本実施形態では、一例として一つの単一流路110を説明する。単一流路110は、サーペンタイン型流路であるが、本開示は、これに限定されない。単一の流路110には、燃料入口106の近傍(つまり、流路110の第1の端110a)に遮断部112が配置され、流路110を2つの領域に分割する。遮断部112と燃料入口106との間の距離dは、例えば、対応する流路110の全長の0~40%を占める。一実施形態において、距離dは、対応する流路110の全長の0~20%を占め得る。遮断部112の長さlは、例えば、対応する流路110の全長の0.1%~1%を占める。遮断部112の厚さは、例えば、導電性多孔質基板104の厚さt1(流路110以外の部分)に等しい。
【0017】
第1の実施形態におけるアノード双極板100の導電性多孔質基板104は、流路110を有するので、連通の流動抵抗が小さく、閉端型燃料電池の生成物(水蒸気など)を活性領域(膜電極接合体)から効果的に除去し得る。加えて、導電性多孔質基板104は、多孔質材料であり、そのため導電性多孔質基板104の孔を介して燃料が活性領域の表面に拡散し得、濃度勾配が改善される。アノード双極板100の流路110内の遮断部112は、燃料入口106の近傍(すなわち、流路110の第1の端110a)にあるため、アノード双極板100を有する閉端型燃料電池は、反応効率を最大限に高め、安定した反応/出力を維持し得る。加えて、流路110は、導電性多孔質基板104を機械加工でくり抜いて製造されたものであり得、遮断部112は、導電性多孔質基板104の完全性を維持するためのものであり得、これにより、導電性多孔質基板104を気密導電性フレーム102に組み合わせることが容易になる。それゆえ、第1の実施形態のアノード双極板100は、製造および加工における利便性などの利点を示す。
【0018】
図2は、本開示の第2の実施形態による閉端型燃料電池のアノード双極板の概略上面図である。
【0019】
図2を参照すると、第2の実施形態の閉端型燃料電池のアノード双極板200は、気密導電性フレーム202と導電性多孔質基板204とを含む。本実施形態では、気密導電性フレーム202の第1の側部202aの縁は、複数の燃料入口206を有し、気密導電性フレーム202の第2の側部202bの縁は、複数の燃料出口208を有する。
図2に示すように、本実施形態における気密導電性フレーム202内に配置された導電性多孔質基板204は、例えば、複数の流路210を有し、流路210の各々は、直線状流路である。本実施形態では、気密導電性フレーム202の第1の側部202aと第2の側部202bとは、対向する側部であるが、しかし、他の実施形態では、第1の側部202aと第2の側部202bとは、隣接する側部であり得る。また、複数の流路210は、サーペンタイン型流路または湾曲流路としても設計され得るが、しかし、本開示は、これらに限定されるものではない。導電性多孔質基板204の材料は、例えば、炭素系材料、金属材料、導電性プラスチック材料、またはこれらの組み合わせである。導電性多孔質基板204において、流路210の各々の第1の端210aは、燃料入口206の一つと連通し、流路210の各々の第2の端210bは、燃料出口208の一つと連通する。第1の実施形態で説明したように、流路210の各々には、燃料入口206の近傍に遮断部212が配置され、対応する流路210を2つの領域に分ける。遮断部212と燃料入口206との間の距離dは、例えば、対応する流路210の全長Lの0~40%を占める。一実施形態においては、距離dは、対応する流路210の全長Lの0~20%を占め得る。遮断部212の長さlは、例えば、対応する流路210の全長Lの0.1%~1%を占める。
【0020】
第2の実施形態におけるアノード双極板200の導電性多孔質基板204は、複数の流路210を有しているため、連通の流動抵抗が小さく、および導電性多孔質基板204は多孔質材料であるため、燃料は、導電性多孔質基板204の孔を介して活性領域の表面にわたって拡散し得、濃度勾配を低減する。アノード双極板200を有する閉端型燃料電池が反応効率を最大化し安定した反応/出力を維持し得るように、流路210の各々の内の遮断部212は、燃料入口206の近傍に配置される。加えて、遮断部212は、導電性多孔質基板204の完全性を維持し、これにより、導電性多孔質基板204を気密導電性フレーム202に組み合わせることが容易になる。それゆえ、第2の実施形態のアノード双極板200は、製造および加工における利便性などの利点をも示す。
【0021】
図3Aは、本開示の第3の実施形態による閉端型燃料電池のアノード双極板の概略側面図であり、この図においては、第2の実施形態と同じ参照数字を使用して、同一または類似の構成要素を示している。さらに、同一または類似の構成要素の説明については、第2の実施形態における関連する記載を参照し得るので、ここではその詳細を説明しない。
【0022】
図3Aを参照すると、第3の実施形態の閉端型燃料電池のアノード双極板300は、第2の実施形態におけるものと実質的に同じであるが、導電性多孔質基板302内の遮断部304の厚さt2は、導電性多孔質基板302の厚さt1(流路以外の部分)よりも小さい。すなわち、
図3Aは、
図2における遮断部212を通過する線分に対応する線分に沿って描写した概略断面図であり、遮断部304の各々は、導電性多孔質基板302をカットすることなく、導電性多孔質基板302内に設けられた凹部であることを意味している。
【0023】
図3Bは、第3の実施形態の変更例を示す模式的な側面図である。
図3Bにおいて、遮断部304’の厚さt2’もまた、導電性多孔質基板302の厚さt1(流路以外の部分)よりも小さいが、遮断部304’は、気密導電性フレーム202と接触していない。上記の実施形態によれば、遮断部304、304’は、流路210を部分的に遮断するように構成され得、流路210の連通を完全に遮断することに限定されない。
【0024】
図4は、本開示の第4の実施形態による閉端型燃料電池のアノード双極板の部分拡大概略上面図であり、この図において、第1の実施形態と同じ参照数字は、同一または類似の構成要素を示すために使用される。さらに、同一または類似の構成要素の説明については、第1の実施形態における関連する記載を参照し得るので、ここではその詳細を説明しない。
【0025】
図4を参照すると、第4の実施形態における閉端型燃料電池のアノード双極板400は、第1の実施形態におけるものと実質的に同じであるが、しかし、遮断部402の長さlは、流路110の縁から中央に向かって徐々に減少し、流動抵抗をさらに低減する。
【0026】
図5は、本開示の第5の実施形態による閉端型燃料電池の概略断面図である。
【0027】
図5を参照すると、第5の実施形態の閉端型燃料電池500は、膜電極接合体502と、アノード双極板100と、カソード双極板504とを含み、アノード双極板100は、第1の実施形態におけるアノード双極板である。本実施形態では、第1の実施形態と同じ参照数字を用いて、同一または類似の構成要素を示している。さらに、同一または類似の構成要素の説明については、第1の実施形態における関連する説明を参照し得るので、ここではその詳細を説明しない。ただし、第2~第4の実施形態において、アノード双極板100は、任意のアノード双極板に置き換えられ得る。膜電極接合体502は、互いに対向するアノード側部502aとカソード側部502bとを有する。アノード側部502a上にはアノード双極板100が配置され、カソード側部502b上にはカソード双極板504が配置される。膜電極接合体502は、アノード側部502a上にアノード電極層506とアノードガス拡散層508とを含み、アノードガス拡散層508は、アノード双極板100と接触している。膜電極接合体502は、カソード側部502b上に、カソード電極層510とカソードガス拡散層512とを含む。さらに、アノード側部502aとカソード側部502bとの間には、イオン伝導膜514が設けられている。上記の構成要素に加えて、閉端型燃料電池500は、必要に応じて、密封用のシール部材516などの他の部品をさらに含み得るが、しかし、本開示は、これに限定されるものではない。
【実施例0028】
以下に、本開示の効果を検証するためのいくつかの実験について説明するが、しかし、本開示は、以下の内容に限定されるものではない。
【0029】
(実験例1~6)
【0030】
第1の実施形態で示したアノード双極板を製造した。その発電セルの活性領域は、45cm2である。アノード双極板の遮断部の長さは、対応する流路の全長の0.5%を占め、遮断部の厚さは、導電性多孔質基板の厚さと同じである。しかしながら、実験例の間でも遮断部と燃料入口との距離は異なっている。実験例1においては、遮断部が燃料入口のすぐ近くに位置しているため、遮断部と燃料入口との間の距離は、対応する流路の全長の0%を占める。実験例2においては、遮断部と燃料入口との間の距離は、対応する流路の全長の5%を占める。実験例3においては、遮断部と燃料入口との間の距離は、対応する流路の全長の10%を占める。実験例4においては、遮断部と燃料入口との間の距離は、対応する流路の全長の20%を占める。実験例5においては、遮断部と燃料入口との間の距離は、対応する流路の全長の30%を占める。実験例6においては、遮断部と燃料入口との間の距離は、対応する流路の全長の40%を占める。
【0031】
この設計の発電セルを、10セルショートスタックとして組み立てた。完全に活性化した後、水素をアノードに、空気をカソードに導入した。定電圧で120分間、放電を行った。放電プロセス中の電流/電力値およびその変化傾向を測定し、
図6に示した。
【0032】
(実験例7)
【0033】
実験例3と同様の方法で、アノード双極板を製造した。異なる点は、遮断部の長さが対応する流路の全長の1%を占めていることである。
【0034】
この設計の発電セルを、10セルショートスタックとして組み立てた。完全に活性化した後、水素をアノードに、空気をカソードに導入した。定電圧で120分間、放電を行った。放電プロセス中の電流/電力値およびその変化傾向を測定し、
図6に示した。
【0035】
(比較例)
【0036】
導電性多孔質基板をくり抜き、互いに交互になる2つの相互嵌合流路を形成した。一方の流路は、導電性多孔質基板の一方の側部の縁上の燃料入口と連通し、もう一方の流路は、反対側の側部の縁上の燃料出口と連通し、流路内には遮断部が配置されない。
【0037】
その後、実験例1と同様にして、10セルショートスタックを組み立てた。完全に活性化した後、水素をアノードに、空気をカソードに導入した。定電圧で120分間、放電を行った。放電プロセス中の電流/電力値およびその変化傾向を測定し、
図6に示した。
【0038】
図6から、実験例1~7の反応/出力は、比較例のそれよりも安定していることがわかり得る。さらに、実験例1~4のスタック電流は、ほぼ同じで、他の実験例よりも高い値を示しており、これは、放電安定性の向上を示している。
【0039】
上記を要約すると、本開示のアノード双極板内の流路構造は、ガスバリア性を有する気密導電性フレームに組み込まれており、遮断部は、燃料入口の近傍に配置される。それゆえ、閉端型燃料電池のアノードの端は、フラッディングを起こしにくく、燃料/水分は、燃料出口に到達する前に、導電性多孔質基板に多くても一度だけ浸透する。したがって、改善した設計は、反応効率の最適化、安定した反応/出力の維持、流路/流路材料の厚さの制御などの利点を示す。
【0040】
本開示の範囲または趣旨を逸脱することなく、開示した実施形態の構造に様々な修正および変形を加え得ることは、当業者には明らかであろう。上記の観点から、本開示は、以下の請求項およびその均等物の範囲内に限り、本開示の修正および変形を範囲に含むことを意図している。