(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128397
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ローエッジVベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 5/06 20060101AFI20220825BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20220825BHJP
C08K 5/43 20060101ALI20220825BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220825BHJP
F16G 5/20 20060101ALI20220825BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20220825BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F16G5/06 Z
C08L23/08
C08K5/43
C08K3/04
F16G5/06 A
F16G5/20 B
C08K3/06
C08K5/14
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144767
(22)【出願日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021025914
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍵 洋介
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜也
(72)【発明者】
【氏名】清水 藤孝
(72)【発明者】
【氏名】松田 清隆
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002DA037
4J002DA046
4J002EK006
4J002EV167
4J002EV267
4J002EV277
4J002FD117
4J002FD146
4J002FD157
4J002GM01
(57)【要約】
【課題】耐寒性が優れるローエッジVベルトを提供する。
【解決手段】ローエッジVベルトBは、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主成分とするゴム組成物で形成されたベルト内周側の圧縮ゴム層11を備える。前記ゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主成分とするゴム組成物で形成されたベルト内周側の圧縮ゴム層を備えたローエッジVベルトであって、
前記ゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5以下であるローエッジVベルト。
【請求項2】
請求項1に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-35℃における貯蔵たて弾性係数が5.0×108Pa以下であるローエッジVベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記tanδがピーク値を示す温度が-40℃以上-25℃以下であるローエッジVベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物は、硫黄が用いられて前記ゴム成分が架橋しているローエッジVベルト。
【請求項5】
請求項4に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物は、前記硫黄とともに有機過酸化物が併用されて前記ゴム成分が架橋しているローエッジVベルト。
【請求項6】
請求項4又は5に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物がスルフェンアミド系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤を含有しているローエッジVベルト。
【請求項7】
請求項6に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物における前記スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量が前記チウラム系加硫促進剤の含有量よりも少ないローエッジVベルト。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物がカーボンブラックを含有しているローエッジVベルト。
【請求項9】
請求項8に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物における前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して60質量部以上80質量部以下であるローエッジVベルト。
【請求項10】
請求項8又は9に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記カーボンブラックがFEFを含むローエッジVベルト。
【請求項11】
請求項10に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記カーボンブラックが前記FEFに加えてHAFを含むローエッジVベルト。
【請求項12】
請求項11に記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物における前記FEFの含有量が前記HAFの含有量よりも少ないローエッジVベルト。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載されたローエッジVベルトにおいて、
前記ゴム組成物の電気抵抗値が10MΩ以下であるローエッジVベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローエッジVベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途において、ローエッジVベルトが用いられている。特許文献1には、ローエッジVベルトのベルト内周側の圧縮ゴム層を、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分とするゴム組成物で形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐寒性が優れるローエッジVベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主成分とするゴム組成物で形成されたベルト内周側の圧縮ゴム層を備えたローエッジVベルトであって、前記ゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベルト内周側の圧縮ゴム層を形成するゴム組成物が、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主成分とするとともに、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5以下であることにより、優れた耐寒性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るコグドVベルトの一片の斜視図である。
【
図2】実施形態に係るコグドVベルトのベルト幅方向に沿った断面図である。
【
図3】実施形態に係るコグドVベルトのベルト長さ方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1乃至3は、実施形態に係るコグドVベルトB(ローエッジVベルト)を示す。実施形態に係るコグドVベルトBは、例えば、乗用車、バス、トラックなどの四輪車用途、スクーターなどの二輪車用途、工作機械や建設機械などの一般産業用機械等において、冷寒地の屋外での動力伝達に好適に用いられるゴム製のエンドレスベルトである。実施形態に係るコグドVベルトBは、例えば、ベルト長さが200mm以上5000mm以下、ベルト最大幅が10mm以上30mm以下、及びベルト最大厚さが7.0mm以上14.0mm以下である。
【0010】
実施形態に係るコグドVベルトBは、Vベルト本体10と、心線20と、内側補強布30と、外側補強布40とを備える。
【0011】
Vベルト本体10は、ベルト幅方向に沿った断面形状が等脚台形に形成されている。Vベルト本体10の両側面のなす角度は、例えば24°以上42°以下である。Vベルト本体10は、ベルト内周側に設けられた圧縮ゴム層11と、中間部に設けられた接着ゴム層12と、ベルト外周側に設けられた伸張ゴム層13とを有する。圧縮ゴム層11の内周には、ベルト長さ方向に沿った断面形状がサインカーブ状に形成された下コグ形成部11aが一定ピッチで配設されている。
【0012】
圧縮ゴム層11は、ゴム成分に種々のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋したゴム組成物で形成されている。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、その列理方向がベルト幅方向に一致するように設けられている。この圧縮ゴム層11が有する両側面が、ゴム組成物で形成された動力伝達面を構成している。
【0013】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主成分とする。ゴム成分におけるエチレン-α-オレフィンエラストマーの含有量は50質量%以上であるが、後述する優れた耐寒性を得る観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。なお、ゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマー以外に、クロロプレンゴム(以下「CR」という。)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H-NBR)等を含んでいてもよい。
【0014】
エチレン-α-オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(以下「EPDM」という。)、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン共重合体等が挙げられる。ゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマーとして、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐寒性を得る観点から、EPDMを含むことがより好ましい。
【0015】
エチレン-α-オレフィンエラストマーのエチレン含量は、優れた耐寒性を得る観点から、好ましくは50質量%以上75質量%以下、より好ましくは56質量%以上65質量%以下、更に好ましくは56質量%以上60質量%以下である。なお、ゴム成分が複数種のエチレン-α-オレフィンエラストマーを含む場合、エチレン含量は、それらの平均値として算出される。
【0016】
エチレン-α-オレフィンエラストマーがEPDMを含む場合、そのジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、優れた耐寒性を得る観点から、これらのうちのエチリデンノボルネン(ENB)が好ましい。この場合、EPDMのENB(ジエン)含量は、好ましくは3.5質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以上4.7質量%、更に好ましくは4.2質量%以上4.7質量%である。ゴム成分が複数種のEPDMを含む場合、ENB含量は、それらの平均値として算出される。
【0017】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5以下である。この-20℃以下で現れるtanδのピーク値は、優れた耐寒性を得る観点から、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下である。tanδがピーク値を示す温度は、優れた耐寒性を得る観点から、好ましくは-40℃以上-25℃以下、より好ましくは-40℃以上-30℃以下、更に好ましくは-40℃以上-35℃以下である。
【0018】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-35℃における貯蔵たて弾性係数が、優れた耐寒性を得る観点から、好ましくは5.0×108Pa以下、より好ましくは3.0×108Pa以下である。
【0019】
この温度を走査して測定される引張方法での動的粘弾性は、JIS K6394:2007に基づいて、短冊状の試験片を用い、初荷重:0.294MPa、動歪:0.1%、周波数:10Hz、及び昇温速度:2K/分として測定される。
【0020】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物の電気抵抗値は、蓄電によるスパークや火花の発生を抑制する観点から、好ましくは10MΩ以下、より好ましくは6MΩ以下である。この電気抵抗値は、ベルト側面に露出した圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物に、ベルト長さ方向に長さ216mmの間隔をおいて一対の電極を接触させ、それらの電極間に500Vの電圧を印加してから5秒後に計測される電流値に基づいて計算される値である。
【0021】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、優れた耐寒性を得る観点から、硫黄が用いられてゴム成分が架橋していることが好ましい。架橋前の未架橋ゴム組成物における硫黄の含有量は、優れた耐寒性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.5質量部以上3質量部以下である。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、有機過酸化物が用いられてゴム成分が架橋してもよい。
【0022】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、硫黄が用いられてゴム成分が架橋している場合、優れた耐寒性を得る観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤を含有していることが好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤は、同様の観点から、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドであることが好ましい。チウラム系加硫促進剤は、同様の観点から、テトラメチルチウラムジスルフィドであることが好ましい。ゴム組成物におけるスルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上2質量部以下、より好ましくは1質量部以上1.5質量部以下である。ゴム組成物におけるチウラム系加硫促進剤の含有量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上4質量部以下、より好ましくは2.5質量部以上3.5質量部以下である。ゴム組成物におけるスルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、同様の観点から、チウラム系加硫促進剤の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0023】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、優れた耐寒性を得るとともに、導電性を付与して蓄電によるスパークや火花の発生を抑制する観点から、カーボンブラックを含有することが好ましい。ゴム組成物におけるカーボンブラックの含有量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以上80質量部以下である。
【0024】
カーボンブラックは、優れた耐寒性を得るとともに、導電性を付与して蓄電によるスパークや火花の発生を抑制する観点から、FEFを含むことが好ましい。ゴム組成物におけるFEFの含有量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上80質量部以下、より好ましくは30質量部以上40質量部以下である。カーボンブラックは、同様の観点から、FEFに加えてHAFを含むことが好ましい。ゴム組成物におけるHAFの含有量は、同様の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上60質量部以下、より好ましくは30質量部以上50質量部以下である。ゴム組成物におけるFEFの含有量は、同様の観点から、HAFの含有量よりも少ないことが好ましい。
【0025】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、オイルを含有していてもよい。オイルは、パラフィン系オイルを含むことが好ましい。ゴム組成物におけるオイルの含有量は、例えばゴム成分100質量部に対して10質量部以上20質量部以下である。
【0026】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、ベルト幅方向に配向するように分散した短繊維を含有していてもよい。短繊維は、ナイロン短繊維、及び/又は、パラ系アラミド短繊維(ポリパラフェニレンテレフタルアミド短繊維、コポリパラフェニレン-3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド短繊維)を含むことが好ましい。ゴム組成物における短繊維の含有量は、例えば、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上30質量部以下である。短繊維の繊維長は、例えば1mm以上5mm以下である。
【0027】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、その他に、例えば、加工助剤、加硫促進助剤、充填剤、老化防止剤等を含有していてもよい。
【0028】
接着ゴム層12及び伸張ゴム層13もまた、ゴム成分に種々のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。接着ゴム層12及び伸張ゴム層13は、圧縮ゴム層11と同一のゴム組成物で形成されていても、また、異なるゴム組成物で形成されていても、どちらでもよい。
【0029】
心線20は、Vベルト本体10の接着ゴム層12の厚さ方向の中間部に、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設されている。心線20は、例えば撚り糸で構成されている。心線20を形成する繊維材料としては、例えば、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられる。心線20には、接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前に、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物を含有する下地処理剤に浸漬した後に加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理のうちの1つ又は2つ以上が施されていることが好ましい。
【0030】
内側補強布30は、Vベルト本体10の圧縮ゴム層11の内周面を被覆するように設けられている。内側補強布30は、例えば、織布、編布、不織布等で構成されている。内側補強布30を形成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、綿、アラミド繊維等が挙げられる。内側補強布30には、圧縮ゴム層11に対する接着性を付与するために、成形加工前に、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物を含有する下地処理剤に浸漬した後に加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、ゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理、及びVベルト本体10側となる面上に高粘度のゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理のうちの1つ又は2つ以上が施されていることが好ましい。この内側補強布30で圧縮ゴム層11の下コグ形成部11aが被覆されることにより下コグ15が構成されている。
【0031】
外側補強布40は、Vベルト本体10の伸張ゴム層13の外周面を被覆するように設けられている。外側補強布40は、例えば、織布、編布、不織布等で構成されている。外側補強布40を形成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、綿、アラミド繊維等が挙げられる。外側補強布40には、伸張ゴム層13に対する接着性を付与するために、成形加工前に、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物を含有する下地処理剤に浸漬した後に加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、ゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理、及びVベルト本体10側となる面上に高粘度のゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理のうちの1つ又は2つ以上が施されていることが好ましい。
【0032】
以上の実施形態に係るコグドVベルトBは、公知の方法によって製造することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、下コグ15のみを有するコグドVベルトBとしたが、特にこれに限定されるものではなく、コグを有さないローエッジVベルトであってもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、内側補強布30及び外側補強布40を備えたコグドVベルトBとしたが、特にこれに限定されるものではなく、内側補強布30及び外側補強布40のうちの一方だけを備えたものであってもよい。
【実施例0035】
(コグドVベルト)
以下の実施例1及び2並びに比較例1及び2のコグドVベルトを作製した。また、市販のコグドVベルトを入手し、それを比較例3とした。なお、コグドVベルトは、内側補強布を有さない点を除いて上記実施形態と同様の構成である。
【0036】
<実施例1>
EPDM1(EP123 JSR社製、エチレン含量:58質量%、ENB(ジエン)含量:4.5質量%)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックのFEF(シーストSO 東海カーボン社製)35質量部、HAF(シースト3 東海カーボン社製)40質量部、パラフィン系プロセスオイル(サンパー2280 日本サン石油社製)14質量部、加工助剤のステアリン酸1質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛4.9質量部、架橋剤の硫黄(セイミOT 日本乾溜工業社製)1.6質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤(ノクセラーMSA-G 大内新興化学工業社製、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1.2質量部、チウラム系加硫促進剤(サンセラーEM-2 三新化学工業社製、テトラメチルチウラムジスルフィド)2.8質量部、及びナイロン短繊維(CFN1000 帝人社製、繊維長1mm)25質量部を配合した未架橋ゴム組成物シートを調製した。この未架橋ゴム組成物シートを、列理方向がベルト幅方向になるように配置して架橋させたゴム組成物で圧縮ゴム層を形成したコグドVベルトを作製し、それを実施例1とした。
【0037】
なお、接着ゴム層及び伸張ゴム層は、別のEPDMゴム組成物で形成した。心線は、ポリエステル繊維製の撚り糸で構成した。外側補強布は、ナイロン66繊維製の織布で構成した。
【0038】
<実施例2>
EPDM2(NORDEL4770 ダウケミカル社製、エチレン含量:70質量%、ENB(ジエン)含量:4.9質量%)20質量部とEPDM3(エスプレン301 住友化学社製、エチレン含量:62質量%、ENB(ジエン)含量:3.0質量%)80質量部とのブレンドゴム(平均エチレン含量:63.6質量%、平均ENB(ジエン)含量:3.38質量%)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックのFEF65質量部、充填剤の超高分子量ポリエチレン粒子(ハイゼックスミリオンMIL-240S 三井化学社製)10質量部、パラフィン系プロセスオイル10質量部、加工助剤のステアリン酸0.3質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、アミン-ケトン系老化防止剤(ノクラック224 大内新興化学工業社製、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)0.5質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤(ノクラックMB 大内新興化学工業社製、2-メルカプトベンズイミダゾール)、架橋剤の有機過酸化物1(パーヘキサ25B-40 日油社製、有効成分40質量%)9.5質量部(3.8質量部)、架橋剤の硫黄0.2質量部、ナイロン短繊維(繊維長1mm)13質量部、及びパラ系アラミド短繊維(テクノーラカットファイバーCFH3050 帝人社製、繊維長3mm)2質量部を配合した未架橋ゴム組成物シートを調製した。この未架橋ゴム組成物シートを、列理方向がベルト幅方向になるように配置して架橋させたゴム組成物で圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例1と同一構成のコグドVベルトを作製し、それを実施例2とした。
【0039】
<比較例1>
EPDM4(KELTAN2450 ARLANXEO社製、エチレン含量:48質量%、ENB(ジエン)含量:4.1質量%)をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックのHAF40質量部、ISAF(シースト6 東海カーボン社製)20質量部、パラフィン系プロセスオイル5質量部、加工助剤のステアリン酸0.25質量部、加硫促進助剤の酸化亜鉛5質量部、アミン-ケトン系老化防止剤1質量部、架橋剤の有機過酸化物2(ペロキシモンF40 日油社製、有効成分40質量%)4.3質量部(1.7質量部)、共架橋剤のトリメチロールプロパントリメタクリレート(ハイクロスM 精工化学社製)1質量部、ナイロン短繊維(繊維長3mm)18質量部、及びポリエステル短繊維(繊維長3mm)12質量部を配合した未架橋ゴム組成物シートを調製した。この未架橋ゴム組成物シートを、列理方向がベルト幅方向になるように配置して架橋させたゴム組成物で圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例1と同一構成のコグドVベルトを作製し、それを比較例1とした。
【0040】
<比較例2>
CR1(スカイプレンR-17 東ソー株式会社社製)65質量部とCR2(スカイプレンR-22 東ソー株式会社社製)35質量部とのブレンドゴムをゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックのFEF25質量部、GPF(シーストV 東海カーボン社製)20質量部、アロマ系プロセスオイル(シンタックHA-30 神戸油化学工業社製)10質量部、無機フィラー含有脂肪酸エステル(アフラックス12NS 平泉洋行社製)2質量部、ステアリン酸1質量部、芳香族第二級アミン系老化防止剤1(ノクラックAD-F 大内新興化学工業社製、オクチル化ジフェニルアミン)2質量部、芳香族第二級アミン系老化防止剤2(オゾノン35 精工化学社製、N-(1-メチルヘプチル)-N‘-フェニル-p-フェニレンジアミン)0.3質量部、架橋剤の酸化亜鉛5質量部、酸化マグネシウム(キョウワマグ150 協和化学工業社製)7.4質量部、チアゾール系加硫促進剤(ノクセラーDM 大内新興化学工業社製、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)1.1質量部、及びグアニジン系加硫促進剤(ノクセラーPR 大内新興化学工業社製、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩)0.2質量部を配合した未架橋ゴム組成物シートを調製した。この未架橋ゴム組成物シートを、列理方向がベルト幅方向になるように配置して架橋させたゴム組成物で圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例1と同一構成のコグドVベルトを作製し、それを比較例2とした。
【0041】
<比較例3>
比較例3の市販のコグドVベルトの圧縮ゴム層を形成するゴム組成物について分析したところ、ゴム成分がEPDMであり、カーボンブラックのFEFをゴム成分100質量部に対して35質量部含有する他、シリカ、酸化マグネシウム、軽灰、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、アミン-ケトン系老化防止剤、フェノール樹脂、及びポリエステル短繊維を含有し、且つ架橋剤として硫黄及び有機過酸化物が併用されて架橋していることが分かった。
【0042】
【0043】
(試験方法)
<動的粘弾性>
実施例1及び2並びに比較例1及び2のそれぞれについて、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物の列理方向を長さ方向とした短冊状の試験片を用い、JIS K6394:2007に基づいて、引張方法での動的粘弾性を、温度を走査して測定した。測定条件は、初荷重:0.294MPa、動歪:0.1%、周波数:10Hz、及び昇温速度:2K/分とした。そして、-20℃以下で現れるtanδのピーク値及びそのときの温度、並びに-35℃における貯蔵たて弾性係数を求めた。
【0044】
<電気抵抗値>
実施例1及び2並びに比較例1乃至3のそれぞれについて、ベルト側面に露出した圧縮ゴム層を形成するゴム組成物に、ベルト長さ方向に長さ216mmの間隔をおいて一対の電極を接触させ、それらの電極間に500Vの電圧を印加し、5秒後の電気抵抗値を測定した。そして、電気抵抗値が10MΩ以下の場合を導電性あり、及び10MΩより大きい場合を導電性なしと評価した。
【0045】
<耐寒ベルト走行試験>
実施例1及び2並びに比較例1乃至3のそれぞれについて、プーリ径が140mmの駆動プーリと、プーリ径が70mmの従動プーリとの間に巻き掛けるとともに、200Nのベルト取付張力を付与し、-35℃の温度雰囲気下で所定時間の予冷を行った。続いて、駆動プーリを回転数270rpmで1分間回転させてベルト走行させた後、駆動プーリの回転を停止して25分間ベルト走行を休止するサイクルのベルト走行試験を行った。そして、ベルトが破損に至るまでのサイクル数をカウントした。なお、ベルト走行は、最大1000サイクルで打ち切った。
【0046】
(試験結果)
【0047】
【0048】
試験結果を表2に示す。これによれば、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5以下である実施例1及び2では、低温でのベルト走行耐久性が高いことから、耐寒性が優れるのに対し、-20℃以下で現れるtanδのピーク値が0.5よりも大きい比較例1及び2では、それよりも耐寒性が劣ることが分かる。また、実施例1及び2は、市販品の比較例3と比べて高い導電性を有することが分かる。
本発明は、エチレン-α-オレフィンエラストマーをゴム成分の主成分とするゴム組成物で形成されたベルト内周側の圧縮ゴム層を備えたローエッジVベルトであって、前記ゴム組成物は、温度を走査して測定されるベルト幅方向の引張方法での動的粘弾性において、-40℃以上-25℃以下で現れるtanδのピーク値が0.45以下である。