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特開2022-128405複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具及びその製造方法
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  • 特開-複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128405
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/06 20060101AFI20220825BHJP
   B23P 15/28 20060101ALI20220825BHJP
   B23B 51/08 20060101ALI20220825BHJP
   B23C 5/28 20060101ALI20220825BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220825BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220825BHJP
【FI】
B23B51/06 F
B23P15/28 Z
B23B51/06 E
B23B51/08 K
B23C5/28
B33Y80/00
B33Y10/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021204922
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】21158333.1
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・ブーベンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ・ヴュイユ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ティオネ
(72)【発明者】
【氏名】パウロ・アレーデ
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037DD06
3C037EE01
3C037FF08
(57)【要約】
【課題】 本体に複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具を提供する。
【解決手段】 本発明は、複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具(10)を製造する方法に関し、ポリマーによって作られたインサート(20)を作成するステップ(300)と、型内に注入することによって前記インサート(20)に対して切削工具(10)の本体をオーバーモールドするステップ(310)と、前記インサート(20)の一部の形に対して相補的である形を有する潤滑用オリフィスを前記切削工具(10)の前記本体に形成するように、前記インサート(20)を除去するステップ(320)と、前記切削工具(10)の前記本体における「アクティブ部」である少なくとも1つの部分に対して機械加工するステップ(340)と、及び前記切削工具(10)の前記本体の前記アクティブ部の面上に研削用被覆を堆積させるステップ(350)とを備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具(10)を製造する方法であって、
可塑化ポリビニルブチラール、可塑化酢酸セルロースブチレート、又はポリブチルメタクリレートアクリル樹脂によって作られたインサート(20)を作成するステップ(300)と、
型内に注入することによって前記インサート(20)に対して切削工具(10)の本体をオーバーモールドするステップ(310)と、
前記インサート(20)の一部の形に対して相補的である形を有する潤滑用オリフィスを前記切削工具(10)の前記本体に形成するように、前記インサート(20)を除去するステップ(320)と、
前記切削工具(10)の前記本体を焼結するステップ(330)と、
前記切削工具(10)の前記本体における「アクティブ部」である少なくとも1つの部分に対して機械加工するステップ(340)と、及び
前記切削工具(10)の前記本体の前記アクティブ部の面上に研削用被覆を堆積させるステップ(350)と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記インサート(20)を除去するステップ(320)は、前記インサート(20)を槽内に入れることによって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インサート(20)は、積層造形法によって作成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
潤滑用オリフィスが形成された本体を備える切削工具(10)であって、
前記切削工具には、工具ホルダーチャックに固定されるように意図された把持部(11)と、アクティブ面があるアクティブ部があり、このアクティブ面に沿ってらせん状の溝が形成されており、
前記溝は、放射方向のチャネル(132)を介して前記切削工具の前記本体内にて軸方向に形成されている中央空欠部(13)に連通しており、
前記中央空欠部(13)は、潤滑剤の出口開口(130)の反対側にある潤滑剤の入口開口の間に形成されており、
前記出口開口は、ベンチュリ効果を発生させるように構成している。
ことを特徴とする切削工具(10)。
【請求項5】
前記周部溝(124)は、前記切削工具(10)の自由端へと開いている第1の端と、前記切削工具(10)の前記把持部(11)の近くであって前記切削工具(10)の前記自由端よりも前記把持部(11)の近くの箇所にて開いている第2の端の間にて、らせん状に形成されている。
ことを特徴とする請求項4に記載の切削工具(10)。
【請求項6】
前記アクティブ面は、実質的に、周面(120)と端面(121)がある回転体の円筒状の形を有し、
前記端面(121)は、前記切削工具(10)の前記本体の前記自由端を形成し、
前記出口開口(130)は、凹部(123)へと開いており、
前記切削工具(10)には、前記端面(121)にて前記凹部(123)から前記周面(120)へと放射方向に形成されている端溝(122)がある
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の切削工具(10)。
【請求項7】
各放射方向のチャネル(132)は、その長手方向が前記切削工具(10)の前記本体の縦方向の軸と鋭角を形成する方向に沿って形成され、
前記鋭角は、前記切削工具(10)の前記本体の前記自由端の方に向けて広がる
ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の切削工具(10)。
【請求項8】
各放射方向のチャネル(132)が形成されている長手方向の前記方向は、らせん状の形を形成する
ことを特徴とする請求項7に記載の切削工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工の分野、特に、工作機械及びその付属品の分野、に関する。本発明は、特に、複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具、及び複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具を製造する方法に関する。
【0002】
本発明に係る切削工具は、具体的には、部品、特に、計時器用部品、を機械加工するように意図されている。
【背景技術】
【0003】
機械加工の分野において、潤滑の目的は、一方では切削工具と被削部品の間の界面を潤滑して摩擦を低減することであり、他方では前記界面を冷却することである。潤滑の他の目的として、切削操作の進行中、すなわち、機械加工中、に切りくずを排除することがある。全体として、潤滑によって効果的な機械加工が可能になる。
【0004】
一部の切削工具には、加工中の潤滑効果を高めるために内部に潤滑用オリフィスがある。
【0005】
機械加工されて潤滑用オリフィスが形成されている本体がある切削工具は、従来技術によって知られており、この潤滑用オリフィスは、例えば、軸方向の貫通穴や、その貫通穴と切削工具のアクティブ面の間に放射方向に形成されているチャネルである。
【0006】
前記本体は、一般的に、高強度鋼によって作られており、前記アクティブ面にガルバニック堆積された砥粒が形成される。
【0007】
これらの工具には、特に、非常に複雑であり、製造コストが非常に大きいという課題がある。実際に、これらの工具の構成材料は硬く、その機械加工は複雑である。
【0008】
また、高張力鋼が硬いことによって、それらの切削工具、特に、その潤滑用オリフィス、の機械加工が比較的単純な形しか作れないように限定されてしまう。
【0009】
これらの理由によって、これらの潤滑用オリフィスが形成されている切削工具の使用は非常に限定される。例えば、特定のしきい値に達しない硬度しかない材料によって作られる部品の場合、研削用途での使用に限定されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、本体に複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具を製造するための手法を提案することによって上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具を製造する方法に関し、
ポリマーによって作られたインサートを作成するステップ300と、
型内に注入することによって前記インサートに対して切削工具の本体をオーバーモールドするステップ310と、
前記インサートの一部の形に対して相補的である形を有する潤滑用オリフィスを前記切削工具の前記本体に形成するように、前記インサートを除去するステップ320と、
前記切削工具10の前記本体を焼結するステップ330と、
前記切削工具の前記本体における「アクティブ部」である少なくとも1つの部分に対して機械加工するステップ340と、及び
前記切削工具の前記本体の前記アクティブ部の面(「アクティブ面」と呼ぶ)上に研削用被覆を堆積させるステップ350とを備える。
【0012】
これらの特徴のおかげで、前記潤滑用オリフィスは複雑な形を有することができる。
【0013】
したがって、機械加工が既存の切削工具では複雑すぎたり面倒すぎたり不可能であったりすることがわかっているような斬新な硬い材料であっても、本発明に係る切削工具を用いて機械加工することができる。このような硬い材料は、例えば、窒化ケイ素、酸化ジルコニウムのようなセラミックス、又はサファイア、アルミナ、又は任意の硬質金属によって作られているものである。
【0014】
また、本発明に係る切削工具は、従来技術の切削工具とは異なり、硬い材料に対してフライス削りを行うために用いることができる。前記潤滑を最適化するように潤滑用オリフィスを形成することができるためである。
【0015】
特定の実装において、本発明は、さらに、単独で又は技術的に可能な任意の組み合わせにしたがって、以下の特徴のうちの1つ又は複数を備えることができる。
【0016】
特定の実装において、前記インサートは、可塑化ポリビニルブチラール(頭字語「PVB」として知られる)、可塑化セルロースアセテートブチレート(頭字語「CAB」として知られる)及びポリブチルメタクリレートアクリル樹脂(頭字語「PBMA」として知られる)から選択されるポリマーによって作られている。
【0017】
特定の実装において、前記インサートを除去するステップ320は、前記インサートを槽内に入れることによって行われる。
【0018】
特定の実装において、前記インサートは、積層造形法(additive manufacturing method)によって作成される。
【0019】
別の目的によると、本発明は、上記の方法を実行することによって製造することができる切削工具に関し、前記切削工具は、潤滑用オリフィスが形成された本体を備え、前記切削工具には、工具ホルダーチャックに固定されるように意図された把持部と、アクティブ面があるアクティブ部がある。このアクティブ面に沿ってらせん状の溝が形成されており、前記溝は、放射方向のチャネルを介して前記切削工具の前記本体内にて軸方向に形成されている中央空欠部に連通している。前記中央空欠部は、潤滑剤の出口開口の反対側にある潤滑剤の入口開口の間に形成されている。
【0020】
特定の実施形態において、前記周部溝は、前記切削工具の自由端へと開いている第1の端と、前記切削工具の前記把持部の近くであって前記切削工具の前記自由端よりも前記把持部の近くの箇所にて開いている第2の端の間にて、らせん状に形成されている。
【0021】
特定の実施形態において、前記出口開口は、ベンチュリ効果を発生させるように構成している。
【0022】
特定の実施形態において、前記アクティブ面は、実質的に、周面と端面がある回転体の円筒状の形を有し、前記端面は、前記切削工具の前記本体の前記自由端を形成し、前記出口開口は、凹部へと開いており、前記切削工具には、前記端面にて前記凹部から前記周面へと放射方向に形成されている端溝がある。
【0023】
特定の実施形態において、各放射方向のチャネルは、その長手方向が前記切削工具の前記本体の縦方向の軸と鋭角を形成する方向に沿って形成され、前記鋭角は、前記切削工具の前記本体の前記自由端の方に向けて広がる。
【0024】
好ましくは、前記放射方向のチャネルは、前記切削工具の前記本体の前記縦方向の軸に対して45°±10°を形成する方向に沿って形成されている。
【0025】
この特徴は、前記切削工具の前記本体のまわりの潤滑剤のより良い分布を可能にする点で有利である。
【0026】
特定の実施形態において、長手方向に形成されている各放射方向のチャネルは、らせん状である。
【0027】
この特徴によって、前記切削工具の前記本体のまわりの潤滑剤の分布をさらに改善することができる。
【0028】
以下の添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具を製造する方法の実施例の論理図である。
図2図1の方法を実行するためのインサートの実施例の斜視図である。
図3図1の方法を実行することによって得られる切削工具の実施例の斜視図である。
図4図2のインサート上にオーバーモールドされた図3の切削工具の横断方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具10を製造する方法と、複雑な形の潤滑用オリフィスが形成されている切削工具10に関する。
【0031】
本説明において、切削工具10が、回転されて部品を機械加工するように意図された機械加工用の工具、例えば、研削工具、であるような、本発明の好ましいアプリケーションについて説明する。
【0032】
図1の論理図に示しているように、本発明に係る方法には、前置的な、ポリマー材料によって作られたインサート20を作成するステップ320がある。
【0033】
インサート20は、図2の好ましい実施例に示されており、切削工具10の本体の全部又は一部の形に対するネガティブ形を有するように、例えば、成型されたり積層造形法を用いたりして作成される。
【0034】
すなわち、インサート20は、本発明に係る方法によって製造されるように意図された切削工具10の本体の形に対して相補的であるような形を有する。
【0035】
再び、すなわち、以下に詳細に説明するように、所望の切削工具10の形がインサート20の形を差し引くことによって得られるために、インサート20の形は所望の切削工具10の形にしたがって形成される。
【0036】
インサート20は、例えば、可塑化ポリビニルブチラール(頭字語「PVB」として知られる)、可塑化酢酸セルロースブチレート(頭字語「CAB」として知られる)及びポリブチルメタクリレートアクリル樹脂(頭字語「PBMA」として知られる)のような、ポリマー材料によって作られる。
【0037】
インサート20が作成された後に、図4の断面図に示しているオーバーモールドステップ310の間に、前記インサート20上に切削工具10の本体がオーバーモールドされる。具体的には、このオーバーモールドステップ310の間に、事前に作成された粉末混合物が、インサート20が配置されている型内に注入される。この粉末混合物は、例えば、タングステン又は他の金属と、及びポリマー又は金属性物質のようなバインダーとの粉末混合物である。
【0038】
前記粉末及びバインダーは、好ましいことに、オーバーモールドステップ310が完了した後に、硬い金属性材料によって作られた工具本体を形成するように選択される。
【0039】
そして、インサート20を除去するステップ320を行って、切削工具10の本体に潤滑用オリフィスを形成する。この潤滑用オリフィスの形は、前記インサート20の一部の形に対して相補的である。
【0040】
このインサート20を除去するステップ320の間に、オーバーモールドステップ310によって得られるアセンブリー、すなわち、インサート20と切削工具10が互いに連係するものを、好ましくは80℃に加熱されたアルコールの、槽内に入れる。
【0041】
このアルコール槽には、インサート20を溶解させて切削工具10のみを得ることができるという効果がある。
【0042】
切削工具10の構成材料を劣化させることなくインサート20の構成材料を除去することができる任意の方法を前記インサート20を除去するステップ320において行うことができることは注目に値する。
【0043】
そして、本発明に係る製造方法は、切削工具10の本体を焼結させるステップ330を備え、これは、切削工具10の前記本体を加熱することによって行い、構成材料の凝集を形成して硬化させる。
【0044】
切削工具10の本体は、実質的に円筒状であり、縦方向の軸に沿って延在している。この本体には、工具ホルダーチャックに固定されるように意図されている第1の部分11があり、この第1の部分11は、被削部分と接触するように意図されている第2の部分12に接続される。第1の部分11は、ここで「把持部」11と呼ばれ、第2の部分12は、「アクティブ部」12と呼ばれ、このアクティブ部12には、「アクティブ面」と呼ばれる外面がある。
【0045】
図3に示しているように、切削工具10の本体の少なくともアクティブ部12には、前記インサート20を除去するステップ320の後に、好ましいことに、潤滑用オリフィスが形成されており、この潤滑用オリフィスは、以下に説明するインサート20の部分の形に対して、切削工具10の本体にて前記部分を差し引くことによって形成される範囲内について、相補的な形である。
【0046】
したがって、潤滑用オリフィスは、インサート20の前記部分によって採用される形にしたがう複雑な形を有することができる。
【0047】
なお、インサート20の形、特に、インサート20の前記部分の形が、積層造形法によって作成される場合には、非常に複雑になることに留意する価値がある。
【0048】
そして、切削工具10の本体を機械加工するステップ340の間に、切削工具10の本体のアクティブ部12を機械加工する。
【0049】
このステップの間に、アクティブ部12は、研削用被覆を堆積させるステップ350を行うために適切な面状態を得るように整えられ、切削工具10の本体のアクティブ面が、ガルバニック堆積などによって研削剤の被覆でカバーされる。
【0050】
把持部11は、前記機械加工ステップの間に機械加工することができ、締め付けて工具ホルダーチャックと連係するように構成していることができる。
【0051】
代わりに、前記型は、オーバーモールドステップ310の間に把持部11が成型されるような形であることができる。
【0052】
好ましくは、前記アクティブ面は、実質的に、図3の斜視図に示しているように、周面120と端面121がある回転体の円筒状の形を有し、この端面121は、切削工具10の本体の自由端を形成する。
【0053】
また、図示している好ましい実施例において、インサート20は、切削工具10には、少なくともそのアクティブ部に、この切削工具10の本体の内側にて、第1の開口と第2の開口の間にて軸方向に形成され、断面が円形である中央空欠部13があるように形が作られる。前記第1の開口(図示せず)は、「入口開口」と呼ばれ、切削工具10の把持部11の方に位置しており又はその把持部11に位置しており、潤滑剤を受けるように意図されており、前記第2の開口は、「出口開口」130と呼ばれ、潤滑剤を排出するように意図されており、自由端へと開いている。
【0054】
出口開口130は、好ましいことに、ベンチュリ効果を発生させるように構成している。このために、図4の断面図に示しているように、中央空欠部13には、出口開口130において、前記中央空欠部13の断面を漸進的に小さくするように構成している放射方向のリップ部131がある。
【0055】
好ましいことに、出口開口130は、中央空欠部13の断面がリップ部131から前記自由端まで漸進的に大きくなるように、凹部123を介して自由端へと開いている。これらの特徴の技術的効果を以下に説明する。
【0056】
好ましいことに、アクティブ部には、凹部123から周面120へと、端面121にて放射方向に形成されている端溝122がある。これらの端溝122は、図3に示しているように、規則的な形態で切削工具10の本体の縦方向の軸のまわりに角度的に分布している。
【0057】
端溝122は、切削工具10の動作中に、出口開口130によって放出される潤滑剤の流れを放射方向に均質的に分布させることを可能にする。
【0058】
また、好ましいことに、同様に図3に示すように、アクティブ部には、第1の端と第2の端の間にて、らせん状に周面120にて形成されている周部溝124がある。前記第1の端は、切削工具10の自由端、すなわち、端面121、へと開いており、前記第2の端は、切削工具10の把持部11の近くにて開いている。すなわち、周部溝124の前記第2の端は、切削工具10の自由端よりも把持部11に近い。
【0059】
これらの周部溝124は、切削工具10の本体の縦方向の軸のまわりに規則的な形態で角度的に分布している。
【0060】
図3及び4に示しているように、切削工具10には、中央空欠部13を周部溝124に連通させる放射方向のチャネル132がある。具体的には、前記切削工具10には、周部溝124と同じ数の放射方向のチャネル132があり、各放射方向のチャネル132は、周部溝124の第2の端へと開いている。
【0061】
「チャネル」という用語は、本書類において、放射方向に開いており軸方向に閉じている導通路として定義される。
【0062】
したがって、切削工具10が動作していて切削工具10が回転している間に、中央空欠部13にて循環している潤滑剤の一部が放射方向のチャネル132によって排出され、各周部溝124において潤滑剤の流れを発生させる。
【0063】
これらの特徴は、切削工具10及び機械加工部品の潤滑及び冷却を最適化するために貢献し、したがって、窒化ケイ素、酸化ジルコニウムのようなセラミックスタイプのもの、サファイア又は他の石、又は任意の硬質金属である、非常に硬い材料によって作られた部品の機械加工を可能にする。
【0064】
周部溝124の第2の端が切削工具10の自由端よりも把持部11に近いことによって、切削工具10の動作中にアクティブ面の大部分又は全体が確実に潤滑されることが可能になる。
【0065】
好ましくは、各放射方向のチャネル132は、切削工具10の本体の縦方向の軸に対して、鋭角、例えば、45°、を形成する方向に沿って長手方向に形成され、前記鋭角は、切削工具10の前記本体の前記自由端の方に向けて広がる。
【0066】
別の例において、前記鋭角は、35~55°の範囲内であることができる。
【0067】
この機能は、切削工具10の本体のまわりにおいて潤滑剤の分布を良くすることを可能にする点で有利である。
【0068】
好ましくは、各放射方向のチャネル132が長手方向に形成される方向は、らせん状の形を形成する。すなわち、各チャネルは曲がった形である。
【0069】
この特徴は、切削工具10の本体のまわりの潤滑剤の分布を改善することを可能にし、したがって、機械加工中の切削工具10と被削部品の間の界面における温度上昇を抑えることに貢献し、また、このことはガルバニック堆積の早期摩耗を防ぐことに貢献する。
【0070】
リップ部131には、出口開口130における潤滑剤の排出圧力を大きくし、したがって、放射方向のチャネル132が発生させる中央空欠部13における潤滑剤の圧力損失を低減又はなくす効果がある。凹部123の効果の一部として、放出される潤滑剤の流れの放射方向の分布が均質的であることを確実にすることがある。
【0071】
本発明の本実施例において、特に図2に示しているように、インサート20には、切削工具10の本体を含み形成するように意図された円形の断面を有する非貫通の中空管21の形態である、インサート20の本体がある。
【0072】
中空管21は、放射方向のチャネル132を形成するように意図された放射方向のシャフト23によって、中央空欠部13を形成するように意図された中央シャフト22に接続されている。
【0073】
また、インサート20には、中空管21の内周面に、各放射方向のシャフト23から前記中空管21の底壁の内面へと、らせん状に形成されている隆起24がある。隆起24は、周部溝124を形成することを意図している。
【0074】
中央シャフト22は、底壁に接続されている端において、断面が小さくなっている部分があり、これによって、放射方向の溝25が形成され、リップ部131を形成するように意図されている。
【0075】
放射方向の溝25は、凹部123を形成するように意図されたネックモールディング26によって底壁の内面に接続されている。
【0076】
最後に、隆起27は、ネックモールディング26から中空管21の内周面へと、底壁の内面にて放射方向に延在している。これらの隆起27は、本発明に係る製造方法を実行するときに端溝122を形成するように意図されている。
【0077】
なお、本発明は、穴あけ、フライス削り又は他の任意の機械加工操作を行うように意図された切削工具、及びこの切削工具についての方法に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
10 切削工具
11 把持部
12 アクティブ部
13 中央空欠部
20 インサート
21 中空管
22 中央シャフト
23 放射方向のシャフト
24、27 隆起
120 周面
121 端面
122 端溝
123 凹部
124 周部溝
130 出口開口
132 放射方向チャネル
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】