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特開2022-128415連通管ユニット、遮水構造、および遮水工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128415
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】連通管ユニット、遮水構造、および遮水工法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20220825BHJP
   A01G 25/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B09B1/00 F ZAB
A01G25/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016171
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2021026444
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】井塲 道夫
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA46
4D004AC07
4D004BB07
(57)【要約】
【課題】施工現場での連通管ユニットと遮水シートとの接合作業を容易化・短時間化することができる連通管ユニット、当該連通管ユニットを用いた遮水構造および遮水工法を提供する。
【解決手段】一端が凹部2内に露出するように凹部2の側面2aに埋設される、熱可塑性樹脂製の集排水管31と、集排水管31を通す貫通孔32を有する第1遮水板331、第1遮水板331の底辺から凹部2内側に張り出した第2遮水板332、第1遮水板331の一方の側辺から凹部2内側に張り出した第3遮水板333、及び、第1遮水板331の他方の側辺から凹部2内側に張り出した第4遮水板334を有する、熱可塑性樹脂製の桝部33と、熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、第1遮水板331の貫通孔32の縁部と集排水管31の外周面とを全周にわたって接合する接合部34とを有する連通管ユニット3。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、前記凹部の内外を連通管によって連通させる遮水構造に用いられ、
一端が前記凹部内に露出するように前記凹部の側面に埋設される、熱可塑性樹脂製の前記連通管と、
前記連通管を通す貫通孔を有する第1遮水板、前記第1遮水板の底辺から前記凹部内側に張り出した第2遮水板、前記第1遮水板の一方の側辺から前記凹部内側に張り出した第3遮水板、及び、前記第1遮水板の他方の側辺から前記凹部内側に張り出した第4遮水板を有する、熱可塑性樹脂製の桝部と、
熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、前記第1遮水板の前記貫通孔の縁部と前記連通管の外周面とを全周にわたって接合する接合部と、を有することを特徴とする連通管ユニット。
【請求項2】
前記遮水シートの一部を形成し、前記連通管の外周の少なくとも一部、前記接合部、及び、前記桝部の内面を覆うように接合された、桝部遮水シートを有することを特徴とする、請求項1に記載の連通管ユニット。
【請求項3】
前記桝部遮水シートは、前記桝部の内面から張り出した接合代を有することを特徴とする請求項2に記載の連通管ユニット。
【請求項4】
前記第3遮水板及び前記第4遮水板は、前記凹部の側面に沿って傾斜していることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の連通管ユニット。
【請求項5】
前記連通管と前記桝部と前記接合部が、同一の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の連通管ユニット。
【請求項6】
前記連通管と前記桝部と前記接合部が、ポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の連通管ユニット。
【請求項7】
地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、前記凹部の内外を連通管によって連通させる遮水構造であって、
一端が前記凹部内に露出するように前記凹部の側面に埋設される、熱可塑性樹脂製の前記連通管と、
前記連通管を通す貫通孔を有する第1遮水板、前記第1遮水板の底辺から前記凹部内側に張り出した第2遮水板、前記第1遮水板の一方の側辺から前記凹部内側に張り出した第3遮水板、及び、前記第1遮水板の他方の側辺から前記凹部内側に張り出した第4遮水板を有する、熱可塑性樹脂製の桝部と、
熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、前記第1遮水板の前記貫通孔の縁部と前記連通管の外周面とを全周にわたって接合する接合部と、を有することを特徴とする遮水構造。
【請求項8】
地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、前記凹部の内外を連通管によって連通させる遮水構造を形成する遮水工法であって、
一端が前記凹部内に露出するように前記凹部の側面に埋設される、熱可塑性樹脂製の前記連通管と、
前記連通管を通す貫通孔を有する第1遮水板、前記第1遮水板の底辺から前記凹部内側に張り出した第2遮水板、前記第1遮水板の一方の側辺から前記凹部内側に張り出した第3遮水板、及び、前記第1遮水板の他方の側辺から前記凹部内側に張り出した第4遮水板を有する、熱可塑性樹脂製の桝部と、
熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、前記第1遮水板の前記貫通孔の縁部と前記連通管の外周面とを全周にわたって接合する接合部と、
前記遮水シートの一部を形成し、前記連通管の外周の少なくとも一部、前記接合部、及び、前記桝部の内面を覆うように接合された、桝部遮水シートとを有する、連通管ユニットを、前記凹部の側面の一部となる位置に配置する、連通管ユニット配置工程と、
前記連通管ユニットを、前記凹部の側面の一部となる位置に配置した状態で、前記凹部の側面を形成する、側面形成工程と、
前記側面形成工程の後、前記桝部遮水シートと、前記連通管ユニット以外の部分を遮水する凹部遮水シートとを接合して、前記凹部の側面および底面に前記遮水シートを敷設する、遮水シート敷設工程と、を含む遮水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば廃棄物処分場などの遮水構造に用いられる連通管ユニットと、この連通管ユニットを用いた遮水構造および遮水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃棄物を埋立処分する廃棄物処分場や、河川からの水や雨水を貯水する調整池やため池などにおいては、全面に遮水シートが敷設されており、その内外を連通させる連通管によって水を外部に排出または外部から流入させている。
【0003】
従来の廃棄物処分場では、上述の連通管として、溜まった水を外部に排出させる集排水管が、処分場の壁部に一部が埋設された状態で設けられている。この集排水管の外周面には接着剤によって遮水シートが接合されている。しかし、廃棄物処分場の壁部に一部が埋設された集排水管に対して、遮水シートを接合する作業は行いにくい。その上、ポリエチレン製である集排水管と、軟質樹脂またはゴムで形成された遮水シートとは、材質上、接着剤によって強固に接着することは困難であり、接合部の水密性を十分に確保することが困難であった。
【0004】
そこで、特許文献1では処分場の壁面に設置した集排水管(PE樹脂管)の周囲に遮水シートを接合する作業を処分場の工事現場で行う場合における、現場での接合作業の容易性、さらに接合部の十分な水密性の改善を目的として、集排水管(PE樹脂管)にPE樹脂板を接合した連通管ユニットを用いた構成が開示されている。さらに、特許文献2では、集排水管(PE樹脂管)にPE樹脂板を接合した連通管ユニットに一部の遮水シートも接合して、連通管底面の下側の狭い場所での作業性の向上を図った構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6527477号公報
【特許文献2】特許第6527478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の遮水工法は、遮水シートを施工する工事現場(施工現場)に連通管ユニットを適正な態様(連通管ユニットの方向、高さ、傾き、配置場所)で設置する作業をした後、その周囲の遮水シートと連通管ユニットとを接合する工法である。そのため、この遮水シートと連通管ユニットとの接合作業は、施工現場で行う必要があった。
【0007】
しかしながら、連通管ユニットの形状が複雑であるため、十分な水密性を確保できる程まで、連通管ユニットへ遮水シートを接合する作業は手間がかかり、作業時間を多く要する。また、施工現場は屋外であるため、作業は昼間に限られたり、天候や気温にも制約されたりすることから、施工現場での作業の短時間化が望まれている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、施工現場での連通管ユニットと遮水シートとの接合作業を容易化・短時間化することができる連通管ユニット、当該連通管ユニットを用いた遮水構造および遮水工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つは、地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、前記凹部の内外を連通管によって連通させる遮水構造に用いられ、
一端が前記凹部内に露出するように前記凹部の側面に埋設される、熱可塑性樹脂製の前記連通管と、
前記連通管を通す貫通孔を有する第1遮水板、前記第1遮水板の底辺から前記凹部内側に張り出した第2遮水板、前記第1遮水板の一方の側辺から前記凹部内側に張り出した第3遮水板、及び、前記第1遮水板の他方の側辺から前記凹部内側に張り出した第4遮水板を有する、熱可塑性樹脂製の桝部と、
熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、前記第1遮水板の前記貫通孔の縁部と前記連通管の外周面とを全周にわたって接合する接合部と、を有することを特徴とする連通管ユニットである。
【0010】
上記構成によれば、第1遮水板~第4遮水板で形成された桝形状の桝部の貫通孔に連通管を貫通させて、熱可塑性樹脂からなる融着材によって第1遮水板の貫通孔の縁部と連通管の外周面とを接合することで、本発明の連通管ユニットを形成することができる。これにより、連通管ユニットは、桝形状をした桝部(第2遮水板)を凹部の底面に置くことにより、自立して配置することができる。
遮水構造において、連通管ユニットは、桝部が、地面に形成された凹部の側面の一部を形成するように自立して配置され、遮水シート等との接合作業後、連通管が、その一端が凹部内に露出するように、凹部の側面に埋設される。
これにより、予め工場等で連通管ユニットを製造して、施工現場に運び、連通管ユニットを凹部の側面の成形場所に配置するだけで、連通管を適正な態様(連通管の方向、高さ、傾き、配置場所)で正確に配置することができるとともに、連通管ユニットと遮水シートとの接合作業の容易化を図ることができる(工程の省略化)。
【0011】
また、本発明の1つは、上記連通管ユニットが、前記遮水シートの一部を形成し、前記連通管の外周の少なくとも一部、前記接合部、及び、前記桝部の内面を覆うように接合された、桝部遮水シートを有することを特徴としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、連通管や接合部や桝部の内面といった形状が複雑な場所に、凹部の側面および底面に敷設される遮水シートと接合可能な桝部遮水シートを、予め接合しておくことにより、施工現場での連通管ユニットへの遮水シートの接合作業及び敷設作業の容易化・短時間化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の1つは、上記連通管ユニットにおいて、前記桝部遮水シートが、前記桝部の内面から張り出した接合代を有することを特徴としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、桝部遮水シートに、遮水シートを接合するための接合代を設けることにより、桝部遮水シートと遮水シートとの接合を、より容易化することができる。
【0015】
また、本発明の1つは、上記連通管ユニットにおいて、前記第3遮水板及び前記第4遮水板が、前記凹部の側面に沿って傾斜していることを特徴としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、桝部を、予め、凹部の側面に沿った傾斜形状にしておくことにより、施工現場において、連通管ユニットを凹部の側面に埋設する作業の容易化・短時間化を図ることができる。
【0017】
また、本発明の1つは、上記連通管ユニットにおいて、前記連通管と前記桝部と前記接合部が、同一の熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、接合部の接合強度をより高めて、接合部の水密性をより向上できる。
【0019】
また、本発明の1つは、上記連通管ユニットにおいて、前記連通管と前記桝部と前記接合部が、ポリエチレンで形成されていることを特徴としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、連通管、遮水板、および接合部の耐久性を向上できる。
【0021】
また、本発明の1つは、地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、前記凹部の内外を連通管によって連通させる遮水構造であって、
一端が前記凹部内に露出するように前記凹部の側面に埋設される、熱可塑性樹脂製の前記連通管と、
前記連通管を通す貫通孔を有する第1遮水板、前記第1遮水板の底辺から前記凹部内側に張り出した第2遮水板、前記第1遮水板の一方の側辺から前記凹部内側に張り出した第3遮水板、及び、前記第1遮水板の他方の側辺から前記凹部内側に張り出した第4遮水板を有する、熱可塑性樹脂製の桝部と、
熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、前記第1遮水板の前記貫通孔の縁部と前記連通管の外周面とを全周にわたって接合する接合部と、を有することを特徴とする遮水構造である。
【0022】
また、本発明の1つは、地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、前記凹部の内外を連通管によって連通させる遮水構造を形成する遮水工法であって、
一端が前記凹部内に露出するように前記凹部の側面に埋設される、熱可塑性樹脂製の前記連通管と、
前記連通管を通す貫通孔を有する第1遮水板、前記第1遮水板の底辺から前記凹部内側に張り出した第2遮水板、前記第1遮水板の一方の側辺から前記凹部内側に張り出した第3遮水板、及び、前記第1遮水板の他方の側辺から前記凹部内側に張り出した第4遮水板を有する、熱可塑性樹脂製の桝部と、
熱可塑性樹脂からなる融着材によって形成され、前記第1遮水板の前記貫通孔の縁部と前記連通管の外周面とを全周にわたって接合する接合部と、
前記遮水シートの一部を形成し、前記連通管の外周の少なくとも一部、前記接合部、及び、前記桝部の内面を覆うように接合された、桝部遮水シートとを有する、連通管ユニットを、前記凹部の側面の一部となる位置に配置する、連通管ユニット配置工程と、
前記連通管ユニットを、前記凹部の側面の一部となる位置に配置した状態で、前記凹部の側面を形成する、側面形成工程と、
前記側面形成工程の後、前記桝部遮水シートと、前記連通管ユニット以外の部分を遮水する凹部遮水シートとを接合して、前記凹部の側面および底面に前記遮水シートを敷設する、遮水シート敷設工程と、を含む遮水工法である。
【発明の効果】
【0023】
施工現場での連通管ユニットと遮水シートとの接合作業を容易化・短時間化することができる連通管ユニット、当該連通管ユニットを用いた遮水構造および遮水工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る廃棄物処分場の断面図である。
図2】連通管ユニットの桝部に集排水管を取り付けた状態の上面図である。
図3】連通管ユニットの桝部に集排水管を取り付けた状態の側面図である。
図4】連通管ユニットの桝部に集排水管を取り付けた状態の正面図である。
図5】連通管ユニットの斜視図である。
図6】連通管ユニットの断面図である。
図7】連通管ユニットの桝部遮水シートの接合態様の説明図である。
図8】本実施形態の遮水工法の説明図である。
図9】本実施形態の遮水工法の説明図である。
図10】本実施形態の遮水工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態は、廃棄物処分場の遮水構造に本発明を適用した一例である。
図1に示すように、廃棄物処分場の遮水構造1は、地面に形成された凹部2の側面2aおよび底面2bに敷設される遮水シート4と、連通管ユニット3とを有する。凹部2の大部分はコンクリートで形成されている。
【0026】
図2図4に示すように、連通管ユニット3は、集排水管31(連通管に相当)と、集排水管31を通す貫通孔32を有する桝部33と、集排水管31と桝部33を接合する接合部34と、更に、桝部33の内面(集排水管31及び接合部34を含む)を覆うように接合された桝部遮水シート35で構成されている。
【0027】
集排水管31は、その一端が凹部2内に露出するように凹部2の側面2aに埋設される円筒管である。凹部2内に溜まった水は集排水管31内を通り外部に排出される。また、図1に示すように、集排水管31の凹部2内に露出する一端は、側面に複数の孔が形成された有孔集排水管5に連結される。図示は省略するが、有孔集排水管5の周囲は、砕石または栗石によって覆われている。図1に示すように、集排水管31の他端には、排水管6が接続されており、この排水管6は廃棄物処分場の外部に設けられた汚水処理施設まで延びている。
【0028】
集排水管31は、熱可塑性樹脂で形成されている。集排水管31は、耐圧性に優れたポリエチレン製管を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。集排水管31は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂で形成されていてもよい。集排水管31の直径および長さは、廃棄物処分場に応じて適宜設定される。
【0029】
桝部33は、図2図4に示すように、集排水管31を通す円形の貫通孔32が設けられた平板状の第1遮水板331、第1遮水板331の底辺から凹部2内側に張り出した平板状の第2遮水板332、第1遮水板331の一方の側辺から凹部2内側に張り出した平板状の第3遮水板333、及び、第1遮水板331の他方の側辺から凹部2内側に張り出した平板状の第4遮水板334を有している。即ち、桝部33は、集排水管31が第1遮水板331の貫通孔32に貫通した状態で、集排水管31の一端を四方から囲った、第2遮水板332を底とした桝形状をしている。
【0030】
また、本実施形態では、第3遮水板333及び第4遮水板334は、図3に示すように、凹部2の側面2a(図1参照)に沿って傾斜した直角三角形状をしている。
【0031】
桝部33を構成する、第1遮水板331、第2遮水板332、第3遮水板333、及び第4遮水板334は、熱可塑性樹脂で形成されている。桝部33は、集排水管31と同じ熱可塑性樹脂で形成されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。桝部33は、ポリエチレン製が好ましい。桝部33は、後述する桝部遮水シート35よりも剛性が高い。桝部33を構成する、第1遮水板331、第2遮水板332、第3遮水板333、及び第4遮水板334の各板厚は、例えば20~50mm程度である。
【0032】
接合部34は、図7に示すように、桝部33の第1遮水板331の貫通孔32の縁部と集排水管31の外周面とを全周にわたって接合している。接合部34は、第1遮水板331の両面に形成されている。接合部34は、熱可塑性樹脂の融着材で形成されている。接合部34の接合強度を高めるために、接合部34を構成する熱可塑性樹脂は、集排水管31および第1遮水板331の少なくとも一方を構成する熱可塑性樹脂と同じであることが好ましい。集排水管31、第1遮水板331、および接合部34が同一の熱可塑性樹脂で形成されていることがより好ましい(本実施形態では、ポリエチレンで形成されている)。この場合、接合部34の接合強度をより高めて、接合部34の水密性をより向上させることができる。なお、本実施形態では、接合部34の下に検査用のピアノ線34aを集排水管31の外周面に沿って配置している。
【0033】
桝部遮水シート35は、図5に示すように、集排水管31の外周の一部、接合部34、及び、桝部33の内面を一体的に覆うように接合されている。また、桝部遮水シート35は、桝部33の内面から外側に張り出した接合代35aを有する。この桝部遮水シート35の接合代35aは、図8に示すように、桝部33を囲い、側面2aに沿った形状をしている。そして、桝部遮水シート35は、接合代35aが、連通管ユニット3以外の凹部2の側面2aおよび底面2bに敷設される遮水シート4と接合等され、遮水シート4と一体化される。なお、桝部遮水シート35の接合代35aと遮水シート4との接合は、融着材による接合でもよいし、単に隙間ができないように重ねて敷設するだけでもよい。
【0034】
桝部遮水シート35は、図6に示すように、下層遮水シート351と上層遮水シート352とカバーシート353が積層されて構成されている。
【0035】
下層遮水シート351には、集排水管31が挿通される矩形状の孔が形成されており、この孔の縁部が、第1遮水板331の表面に押出融着部355によって接合されている。押出融着部355は、第1遮水板331の表面の貫通孔32の周囲に全周にわたって形成されている。即ち、押出融着部355は、矩形状に形成されている(図7参照)。また、上層遮水シート352には、下層遮水シート351に形成された孔よりも小さい矩形状の孔が形成されており、この孔の縁部が、第1遮水板331の表面に押出融着部354によって接合されている。押出融着部354は、押出融着部355の内側に、第1遮水板331の表面の貫通孔32の周囲に全周にわたって形成されている。即ち、押出融着部354は、押出融着部355よりも小さい矩形状に形成されている(図7参照)。
【0036】
カバーシート353は、集排水管31の外周の一部(第1遮水板331から張り出した集排水管31の根本部分)、接合部34、押出融着部354、押出融着部355を覆うように配置されており、カバーシート353の一端が、集排水管31の外周面への押出融着部357による接合、SUSバンド358、及び、シール材359によって集排水管31に固定されている(図6参照)。また、カバーシート353の他端は、押出融着部355の外側の上層遮水シート352の表面に、押出融着部356によって接合されている(図7参照)。
【0037】
下層遮水シート351及び上層遮水シート352は、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、オレフィン系、塩化ビニル系などの熱可塑性エラストマー、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)などの加硫ゴムで形成される。その中でも、押出融着部354~357を構成する熱可塑性樹脂と融着が可能な熱可塑性樹脂が好適に用いられる。例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等が好適に用いられる。下層遮水シート351及び上層遮水シート352の厚みは、例えば0.5~3.0mm程度である。
【0038】
カバーシート353は、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂で形成されている。カバーシート353の形態は、不織布、織布、発泡体、不織布と樹脂シートとの貼り合わせ材、不織布と発泡体との貼り合わせ材、または、発泡体と樹脂シートとの貼り合わせ材などである。具体的には、ポリエステル長繊維不織布、ポリエステル短繊維不織布などが挙げられる。カバーシート353の厚みは、例えば3~20mm程度であり。下層遮水シート351及び上層遮水シート352の厚みよりも厚い。
【0039】
押出融着部354~357は、例えばポリエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる融着材で形成されている。押出融着部354~357と第1遮水板331との接合強度を高めるためには、押出融着部354~357を構成する熱可塑性樹脂は、第1遮水板331を構成する熱可塑性樹脂と同じであることが好ましい。
【0040】
上記連通管ユニット3は、図1及び図8に示すように、桝部33の第2遮水板332を底に、凹部2の側面2aの一部を形成するように配置される。本実施形態では、第2遮水板332を凹部2の底面2bより上方に配置しているが、第2遮水板332が凹部2の底面2bと同じ高さに位置していてもよい。この連通管ユニット3であれば、集排水管31は、凹部2の底面2bより所定の高さ位置に配置される。
【0041】
更に、遮水シート4及び桝部遮水シート35には、図10に示すように、保護マット8が敷設される。遮水シート4は、桝部遮水シート35と同材料で形成されている。保護マット8は、可撓性を有する材料で形成されており、遮水シート4及び連通管ユニット3の桝部遮水シート35を覆って保護する。
【0042】
(遮水工法)
以下、廃棄物処分場の遮水構造1を形成する遮水工法について説明する。
【0043】
まず、工場や作業所など廃棄物処分場の工事現場以外の場所で、連通管ユニット3を作製する。
【0044】
具体的には、まず、桝部33を製作し、第1遮水板331に形成された貫通孔32に集排水管31を挿通し、所定の位置で仮固定する。そして、溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機(図示せず)によって棒状に押し出した融着材を、貫通孔32の縁部に沿って配置していく。融着材が冷却固化することで接合部34が形成されて、桝部33の第1遮水板331と集排水管31とが接合される。
【0045】
そして、桝部33の第1遮水板331に集排水管31が接合された状態で、下層遮水シート351に形成された矩形状の孔に集排水管31を挿通して、第1遮水板331の表面に下層遮水シート351の孔の縁部を接合する。具体的には、第1遮水板331と集排水管31とを接合する際と同様に、溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機(図示せず)によって棒状に押し出した融着材を、第1遮水板331の表面に仮固定した下層遮水シート351の孔の縁部に沿って配置していく。融着材が冷却固化することで押出融着部355が形成される。
【0046】
また、同様の手順で、上層遮水シート352に形成された矩形状の孔に集排水管31を挿通して、下層遮水シート351の孔の内側に露出した第1遮水板331の表面に、上層遮水シート352の孔の縁部を接合する。具体的には、溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機によって棒状に押し出した融着材を、第1遮水板331の表面に仮固定した上層遮水シート352の孔の縁部に沿って配置していく。融着材が冷却固化することで押出融着部354が形成される。
【0047】
次に、カバーシート353の一端の筒状部分を集排水管31に通し、カバーシート353の他端を、押出融着部355の外側の上層遮水シート352の表面に仮固定する。そして、溶融した熱可塑性樹脂を加熱押出機によって棒状に押し出した融着材を、上層遮水シート352の表面に仮固定したカバーシート353の他端に沿って配置していく。融着材が冷却固化することで押出融着部356が形成される。
【0048】
その後、カバーシート353の一端が、集排水管31の外周面への押出融着部357による接合、SUSバンド358、及び、シール材359によって集排水管31に固定される(図6参照)。また、下層遮水シート351と上層遮水シート352を重ねて、桝部33の内面を一体的に覆うともに、桝部33の内面から外側に張り出した接合代35aを形成する。これにより、集排水管31が接合された桝部33に桝部遮水シート35が接合される。以上により、連通管ユニット3が作製される。
【0049】
なお、上記連通管ユニット3の作製工程で、連通管ユニット3に対して、接合部34の水密性(遮水性)の検査を行うことが好ましい。水密性検査の一例を以下に挙げる。集排水管31と第1遮水板331とを接合する前に予め、集排水管31の表面に電極(電線など)を配置しておく。そして、集排水管31と第1遮水板331とを接合した後、接合部34の表面に高電圧をかける(例えば高電圧をかけたブラシで接合部34の表面をなでる)。接合部34内部の電極と通電してスパークが発生した箇所を、接合部34の欠陥(ピンホール)として検出し、欠陥があれば水密性に問題があると判定する。
【0050】
次に、上記作製した連通管ユニット3を廃棄物処分場の工事現場に持ち込む。
【0051】
廃棄物処分場の工事現場においては、地面に形成された窪地に、コンクリートで底部を形成する。この底部の上面が、凹部2の底面2bとなる(図1参照)。そして、底面2bに連通管ユニット3を設置する(図1参照)。この際、桝部33(第2遮水板332)を底面2bに対して平行配置することにより、自立して配置することができる。以上より、連通管ユニット3を凹部2の側面2aの一部となる位置に配置する、連通管ユニット配置工程が完了する。
【0052】
次に、図1及び図8に示すように、連通管ユニット3の周りに土を入れて、連通管ユニット3の桝部33(第3遮水板333及び第4遮水板334)の傾斜に対応した傾斜面を有する側面2aを作る。この際、図8に示すように、桝部遮水シート35の接合代35aは、側面2aの表面に配置される。以上より、凹部2の側面2aを形成する、側面形成工程が完了する。
【0053】
次に、図9に示すように、連通管ユニット3の周りや、凹部2の側面2aおよび底面2bに遮水シート4(凹部遮水シートに相当)を敷設する。このとき、桝部遮水シート35の接合代35aと遮水シート4との接合は、融着材による接合でもよいし、単に隙間ができないように重ねて敷設するだけでもよい。以上により、遮水シート敷設工程が完了する。
【0054】
その後、連通管ユニット3の桝部遮水シート35及び遮水シート4の上に保護マット8を敷設する。そして、図10に示すように、保護マット8の上にモルタルや土を充填して、連通管ユニット3の集排水管31の一端が、凹部2内に露出するように、側面2aに埋設する。その後、集排水管31の一端には、有孔集排水管5が連結される。また、集排水管31の他端には、排水管6が接続される。以上により、廃棄物処分場において、凹部2の内外を集排水管31によって連通させる遮水構造1を形成することができる。
【0055】
上記遮水構造1及び連通管ユニット3によれば、第1遮水板331~第4遮水板334で形成された桝形状の桝部33の貫通孔32に集排水管31を貫通させて、熱可塑性樹脂からなる融着材によって第1遮水板331の貫通孔32の縁部と集排水管31の外周面とを接合することで、連通管ユニット3を形成することができる。これにより、連通管ユニット3は、桝形状をした桝部33(第2遮水板332)を凹部2の底面2bに置くことにより、自立して配置することができる。
遮水構造1において、連通管ユニット3は、桝部33が、凹部2の側面2aの一部を形成するように自立して配置され、遮水シート4との接合作業後、集排水管31の一端が凹部2内に露出するように、凹部2の側面2aに埋設される。
これにより、予め工場等で連通管ユニット3を製造して、施工現場に運び、連通管ユニット3を凹部2の側面2aの成形場所に配置するだけで、集排水管31を適正な態様(集排水管31の方向、高さ、傾き、配置場所)で正確に配置することができるとともに、連通管ユニット3と遮水シート4との接合作業の容易化を図ることができる(工程の省略化)。
【0056】
また、本実施形態では、連通管ユニット3が、集排水管31の外周の少なくとも一部、接合部34、及び、桝部33の内面を覆うように接合された、桝部遮水シート35を備えた構成にしている。このため、集排水管31や接合部34や桝部33の内面といった形状が複雑な場所に、凹部2の側面2aおよび底面2bに敷設される遮水シート4と接合可能な桝部遮水シート35を、予め連通管ユニット3に接合しておくことにより、施工現場での連通管ユニット3への遮水シート4の接合作業及び敷設作業の容易化・短時間化を図ることができる。
【0057】
また、上記連通管ユニット3では、桝部遮水シート35に、遮水シート4を接合するための接合代35aを設けることにより、桝部遮水シート35と遮水シート4との接合を、より容易化することができる。
【0058】
また、上記構成によれば、桝部33を、予め、凹部2の側面2aに沿った傾斜形状にしておくことにより、施工現場において、連通管ユニット3を凹部2の側面2aに埋設する作業の容易化・短時間化を図ることができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0060】
上記実施形態の連通管ユニット3は、桝部遮水シート35を備えた構成として説明しているが、桝部遮水シート35を備えない連通管ユニット3であってもよい。この場合、桝部33と集排水管31とが接合部34によって接合された連通管ユニット3を、予め、工場や作業所など廃棄物処分場の工事現場以外の場所で作製し、この連通管ユニット3(桝部遮水シート35は無い)を廃棄物処分場の工事現場に持ち込み、遮水シート敷設工程等において、桝部遮水シート35を連通管ユニット3に接合してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第3遮水板333及び第4遮水板334が、凹部2の側面2aに沿って傾斜した直角三角形状(図3参照)をした構成をしているが、その形状は限定されず、作成される側面2aの形状に対応した形状に加工されることが好ましい。
【0062】
上記実施形態は、本発明を廃棄物処分場の遮水構造に適用した一例であるが、本発明の適用対象は廃棄物処分場の遮水構造に限定されない。本発明は、地面に形成された凹部の側面および底面に遮水シートを敷設して、当該凹部の内外を連通管によって連通させた遮水構造であれば、廃棄物処分場以外の遮水構造にも適用可能である。例えば、河川増水時に水量を調整するための調整池や、河川水や雨水を貯水するため池などの遮水構造に本発明を適用してもよい。本発明の連通管は、凹部から外部に水を排出するものであってもよく、凹部内に水を流入させるものであってもよい。
【0063】
上記実施形態では、地面に形成された窪地の側面を利用してコンクリートにより凹部2を形成しているが、遮水シートが敷設される本発明の凹部の構造および形成方法はこれに限定されない。例えば、平地上に型枠を設けてコンクリートにより凹部の側壁部を形成してもよい。また、一部だけ地形を利用して型枠を設置して、コンクリートにより凹部の側壁部を形成してもよい。また、凹部の側壁部は、コンクリートブロックを並べることで形成されていてもよい。また、凹部の一部が土で形成されていてもよい。例えば、凹部の側壁部のうち、連通管ユニットの周囲をコンクリートで形成し、その他の部分を土で形成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 遮水構造
2 凹部
2a 側面
2b 底面
3 連通管ユニット
31 集排水管
32 貫通孔
33 桝部
331 第1遮水板
332 第2遮水板
333 第3遮水板
334 第4遮水板
34 接合部
35 桝部遮水シート
4 遮水シート
5 有孔集排水管
6 排水管
8 保護マット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10