(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128417
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】捕捉されるガスを減少させるX線管の液体金属軸受構造
(51)【国際特許分類】
H01J 35/10 20060101AFI20220825BHJP
F16C 17/10 20060101ALI20220825BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01J35/10 N
H01J35/10 M
F16C17/10 A
F16C33/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016909
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】17/181,303
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】イアン・ストライダー・ハント
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・トーマス・クロス
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011AA08
3J011BA06
3J011CA02
3J011EA01
3J011JA02
3J011KA04
3J011LA05
3J011MA12
3J011RA01
(57)【要約】
【課題】X線管用の軸受構造を提供する。
【解決手段】軸受構造は、径方向突起スラスト軸受を備えたジャーナル軸受シャフトを軸受スリーブの内部に収容して含んでおり、スリーブ及びシャフトの一方が他方に対して回転する。固定構成要素、例えばジャーナル軸受及び/又はスラスト軸受は、少なくとも一つの通気溝を形成して含んでおり、軸受アセンブリの内部で液体金属によって捕捉されたガスを、通気溝を通してX線管の外部へ逃散させるジャーナル軸受構造の能力を改善している。ジャーナル軸受又はスラスト軸受の少なくとも一方に、巧妙に配置された十分な寸法の流路又は通気溝を付加することにより、軸受アセンブリの負荷容量を保ちつつ、液体金属と軸受構成要素の通気溝との間に生成されたシールが耐える圧力は著しく低下し、ガスを逃散させてX線管の動作への悪影響を回避する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管用の軸受アセンブリであって、
・シャフトと、
・該シャフトの周りに配設されたスリーブであって、回転構成要素及び固定構成要素を形成するように前記シャフト及び当該スリーブの一方が他方に関して回転可能である、スリーブと、
・前記シャフトと前記スリーブとの間で前記スリーブと前記シャフトとの間の間隙の内部に配設された潤滑流体と、
・前記固定構成要素に配設された少なくとも一つの通気溝と
を備えた軸受アセンブリ。
【請求項2】
前記シャフトは、前記固定構成要素であって、
・ジャーナル軸受と、
・該ジャーナル軸受から径方向外向きに延在するスラスト軸受と
を含んでおり、
前記少なくとも一つの通気溝は、前記ジャーナル軸受及び前記スラスト軸受の少なくとも一方に配設されている、請求項1に記載の軸受アセンブリ。
【請求項3】
前記シャフトに配設された所定数の軸受溝をさらに含んでいる、請求項2に記載の軸受アセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも一つの通気溝は、少なくとも一つの軸受溝の少なくとも一つのより深い区画として形成されている、請求項3に記載の軸受アセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも一つの通気溝は、より深い軸受溝として形成されている、請求項4に記載の軸受アセンブリ。
【請求項6】
前記少なくとも一つの通気溝は、軸方向通気溝として前記ジャーナル軸受に形成されている、請求項2に記載の軸受アセンブリ。
【請求項7】
前記ジャーナル軸受に配設されて前記軸方向通気溝に交差する少なくとも一つの円周方向通気溝をさらに含んでいる請求項6に記載の軸受アセンブリ。
【請求項8】
前記少なくとも一つの通気溝は、前記スラスト軸受に配設されている、請求項2に記載の軸受アセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも一つの通気溝は、少なくとも一つの1対の対向する通気溝を含んでいる、請求項8に記載の軸受アセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも一つの通気溝は、前記シャフトと前記スリーブとの間の最小アプローチの点の低圧側の所定位置において前記固定構成要素に配設されている、請求項1に記載の軸受アセンブリ。
【請求項11】
前記少なくとも一つの通気溝は、14.1psi未満の圧力に耐える前記潤滑流体による圧力シールを形成する、請求項1に記載の軸受アセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも一つの通気溝は、少なくとも10μmの幅を有する、請求項1に記載の軸受アセンブリ。
【請求項13】
前記少なくとも一つの通気溝は、少なくとも10μmの深さを有する、請求項1に記載の軸受アセンブリ。
【請求項14】
動作しているX線管の利用中に、軸受アセンブリに捕捉されたガスが軸受アセンブリから排出されることを可能にする方法であって、
・軸受アセンブリを用意するステップであって、該軸受アセンブリは、
・シャフトと、
・該シャフトに配設されたスリーブであって、回転構成要素及び固定構成要素を形成するように前記シャフト及び当該スリーブの一方が他方に関して回転可能である、スリーブと、
・前記シャフトと前記スリーブとの間で前記スリーブと前記シャフトとの間の間隙の内部に配設された潤滑流体と、
・前記固定構成要素に配設された少なくとも一つの通気溝と
を含む、用意するステップと、
・前記固定構成要素に対して前記回転構成要素を回転させるように前記X線管を動作させるステップと
を備えた方法。
【請求項15】
・陰極アセンブリと、
・該陰極アセンブリから隔設されている陽極アセンブリと
を備えたX線管であって、前記陽極アセンブリは、
・シャフトと、
・該シャフトに配設されたスリーブであって、回転構成要素及び固定構成要素を形成するように前記シャフト及び当該スリーブの一方が他方に関して回転可能である、スリーブと、
・前記シャフトと前記スリーブとの間で前記スリーブと前記シャフトとの間の間隙の内部に配設された潤滑流体と、
・前記固定構成要素に配設された少なくとも一つの通気溝と、
・前記スリーブに動作可能に接続されている陽極ターゲットと
を含んでいる、X線管。
【請求項16】
前記シャフトは、前記固定構成要素であって、
・ジャーナル軸受と、
・該ジャーナル軸受から径方向外向きに延在するスラスト軸受と
を含んでおり、
前記少なくとも一つの通気溝は、前記ジャーナル軸受及び前記スラスト軸受の少なくとも一方に配設されている、請求項15に記載のX線管。
【請求項17】
前記少なくとも一つの通気溝は、軸方向通気溝として前記ジャーナル軸受に形成されている、請求項16に記載のX線管。
【請求項18】
前記軸方向通気溝は、前記シャフトと前記スリーブとの間の最小アプローチの点の低圧側の所定位置において前記ジャーナル軸受に配設されている、請求項17に記載のX線管。
【請求項19】
前記少なくとも一つの通気溝は、前記スラスト軸受に配設されている、請求項16に記載のX線管。
【請求項20】
前記少なくとも一つの通気溝は、0psiと約1psiとの間の圧力に耐える前記潤滑流体による圧力シールを形成する、請求項15に記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、X線管に関し、さらに具体的には、X線管に用いられる軸受の構造及び組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムを含めたX線システムは、X線管、検出器、並びにX線管及び検出器用の支持構造を含み得る。動作時には、被写体を配置した撮像テーブルをX線管と検出器との間に配置することができる。X線管は典型的には、X線のような放射線を被写体へ向けて放出する。放射線は撮像テーブル上の被写体を通過して検出器に入射する。放射線が被写体を通過するにつれて、被写体の内部構造が、検出器において受光される放射線に空間的ばらつきを生ずる。次いで、検出器はデータを発生し、システムがデータを画像へ変換して、このデータを用いて被写体の内部構造を評価することができる。被写体は、限定しないがX線スキャナ又はCTスキャナにおいては医療撮像手順での患者及び例えば梱包品のような無生物体を含み得る。
【0003】
X線管は、高真空環境内に配置された陰極と陽極とを含んでいる。多くの構成において、陽極構造は、スリーブの内部に配設されたシャフトで形成された液体金属軸受構造、例えば動圧軸受としても知られるヘリンボーン溝付き又はスパイラル溝付き軸受(SGB)構造によって支持されており、スリーブに陽極ターゲットが取り付けられてシャフトの周りを回転する。スパイラル溝付き軸受構造はまた、シャフト及び/又はスリーブの様々な表面に渦状溝又は螺旋状溝のような溝を含んでおり、スリーブがシャフトの周りを回転するときにスリーブに作用する径方向及び軸方向の力を吸収するようになっている。
【0004】
典型的には、陽極を回転させるために誘導モータが用いられており、誘導モータは、陽極ターゲットを支持するスリーブで少なくとも部分的に形成されている心軸に内蔵された円筒形のロータと、X線管の長い首部を包囲する銅巻線を有するステータとを有している。回転式陽極アセンブリのロータはステータによって駆動される。X線管の陰極から収束した電子ビームが放出され、電子ビームは陰極から陽極への真空ギャップを横断して加速されて、陽極ターゲットに衝突するとX線を発生する。電子ビームがターゲットに衝突するときに高温が発生するので、陽極アセンブリを高速の回転速度で回転させる必要がある。このため、軸受、並びに陽極構造すなわち陽極ターゲット及びターゲットを支持するシャフトを形成する材料に厳しい要求が課せられる。
【0005】
X線管のスパイラル溝付き軸受のような液体金属軸受の利点として、大きい負荷容量、及び接触面積量が増すことによる高い熱伝達能力がある。他の利点としては、当技術分野で広く理解されているように低雑音動作がある。軸受構造の液体金属としては、特にガリウム、インジウム、又はスズの合金が典型的に用いられる。というのは、これらの金属は室温で液体となる傾向にあり、動作温度での蒸気圧が十分に低く、X線管の厳しい高真空要件を満たすからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、軸受の製造過程で、少量のガスが軸受構造の内部に捕捉される場合がある。X線管の内部は、X線管の最適なX線発生動作のために高真空環境を作るように構成されているので、X線管の内部のガスの存在は、たとえ少量であっても極めて望ましくない。軸受の構成に用いられる液体金属は、軸受構成要素同士の間の液体金属の容積を通してこのガスを逃散させ得るが、液体金属軸受の幾つかの観点の構成ではなかなか逃散させることができない。例えば、軸受に用いられる液体金属の表面張力は高いので、軸受表面に対する液体金属の付着によって液体金属と軸受構成要素との間に高圧シールすなわち20psiまでの高圧シールが生ずるが、この圧力は軸受の内部に捕捉されたガスの圧力をしばしば超え、これにより軸受の内部にガスを保持してしまう。さらに、軸受構造の構成要素、例えば溝の構成は、液体金属が軸受流体として作用するための適正な位置に液体金属を保持する働きをし得るテクスチャ付き区域を含むことができ、さらにシールを強化して液体金属からのガスの逃散を阻止する。液体金属と軸受構造とによって形成されるこれらのシール、及びジャーナル軸受構造の内部にガスを保持するシールの能力は、様々なぬれ性表面及び非ぬれ性被膜によってさらに高められる。これらの表面及び被膜は、ジャーナル軸受の構成要素同士を互いに対して回転し易くしたい箇所に液体金属を保持するのを助けるためにジャーナル軸受構成要素の表面の区域に施工されるものである。
【0007】
結果として、ジャーナル軸受構成要素の構造、及びこれら構成要素同士の間に配設された液体金属は、スリーブがシャフトに関して回転するのを実効的に可能にするように作用するが、軸受は軸受構造の内部に配設された相当な量の捕捉ガスを保持するため、ジャーナル軸受を含むX線管の動作に対し、限定しないがX線管の故障を含め悪影響を及ぼす。
【0008】
従って、X線管用の液体金属軸受構造の構造、並びに形成方法及び動作方法であって、組立後の軸受に捕捉されたガスによるX線管の動作への悪影響を最小限に留めるために、これらのガスの液体金属軸受構造からの移行又は逃散を著しく改善する構造並びに方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示では、X線管用の液体金属又はスパイラル溝付き軸受構造、及び軸受構造を製造する関連する方法を開示し、この軸受構造は、ジャーナル軸受及び径方向突起スラスト軸受を有するシャフトを軸受ハウジング又はスリーブ内に収容して構成される。スリーブは、スラスト軸受の周りでスリーブに係合されたスラスト・シールを含んでおり、このスラスト・シールは、スリーブの内部でジャーナル軸受シャフトの周りに形成されている回転する液体金属シールについて同軸性を保つ態様で係合される。ジャーナル軸受シャフト上のスラスト軸受の周りでのスラスト・シールとスリーブとの係合によって、X線管の動作時に液体金属がジャーナル軸受シャフトとスリーブとの間に保持されることが可能になり、ジャーナル軸受シャフトの周りでのスリーブの自由回転を可能にする。
【0010】
ジャーナル軸受及びスラスト軸受の一方又は両方の構造が、少なくとも一つの通気溝を形成して含んでおり、軸受アセンブリの内部で液体金属によって捕捉されたガスを、通気溝を通してX線管の外部へ逃散させるジャーナル軸受構造の能力を改善している。ジャーナル軸受又はスラスト軸受の少なくとも一方に、巧妙に配置された十分な寸法の流路又は通気溝を付加することにより、軸受アセンブリの負荷容量を保ちつつ、液体金属と軸受構成要素の通気溝との間に生成されるシールが耐える圧力は著しく低下する。結果として、液体金属によるジャーナル軸受シャフト及びスラスト軸受の毛管ぬれによって収容されるガスの圧力レベルが、通気溝でのシールの圧力を上回ることができ、これにより、軸受性能に悪影響を及ぼすことなくガスを通気溝に沿って管内から逃散させることが可能になる。
【0011】
本発明の実施形態の一例では、X線管用の軸受アセンブリが、シャフトと、スリーブと、潤滑流体と、少なくとも一つの通気溝とを含んでおり、スリーブは、シャフトの周りに配設されて、回転構成要素及び固定構成要素を形成するようにシャフト及びスリーブの一方が他方に関して回転可能であり、潤滑流体は、シャフトとスリーブとの間でスリーブとシャフトとの間の間隙の内部に配設されており、少なくとも一つの通気溝は、固定構成要素に配設されている。
【0012】
本発明のもう一つの実施形態の例では、X線管が、陰極アセンブリと、陰極アセンブリから隔設されている陽極アセンブリとを含んでおり、陽極アセンブリは、シャフトと、スリーブと、潤滑流体と、少なくとも一つの通気溝と、陽極ターゲットとを含んでおり、スリーブは、シャフトの周りに配設されて、回転構成要素及び固定構成要素を形成するようにシャフト及びスリーブの一方が他方に関して回転可能であり、潤滑流体は、シャフトとスリーブとの間でスリーブとシャフトとの間の間隙の内部に配設されており、少なくとも一つの通気溝は、固定構成要素に配設されており、陽極ターゲットは、スリーブに動作可能に接続されている。
【0013】
本発明の方法のさらにもう一つの実施形態の例では、動作しているX線管の利用中に、軸受アセンブリに捕捉されたガスが軸受アセンブリから排出されることを可能にする方法であって、シャフトと、スリーブと、潤滑流体と、少なくとも一つの通気溝とを有する軸受アセンブリを用意するステップであって、スリーブは、シャフトの周りに配設されて、回転構成要素及び固定構成要素を形成するようにシャフト及びスリーブの一方が他方に関して回転可能であり、潤滑流体は、シャフトとスリーブとの間でスリーブとシャフトとの間の間隙の内部に配設されており、少なくとも一つの通気溝は固定構成要素に配設されている、軸受アセンブリを用意するステップと、固定構成要素に対して回転構成要素を回転させるようにX線管を動作させるステップとを含んでいる。
【0014】
以上の簡単な説明は、詳細な説明にさらに詳しく記載されている様々な概念を単純な形態で提示するために掲げられていることを理解されたい。以上の説明は、請求される主題の主要な又は本質的な特徴を特定するものではなく、請求される主題の範囲は、詳細な説明の後の特許請求の範囲によって一意に画定されるものとする。さらに、請求される主題は、上述又は本開示の如何なる部分に記載されたものでも、何らかの短所を解決する具現化形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施形態の例を組み入れたイメージング・システムのブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態の一例によるX線管であって、
図1に示すシステムと共に利用可能なX線管の部分断面図である。
【
図3】本開示の実施形態の一例によるX線管の軸受構造の側断面図である。
【
図4】本開示の実施形態の一例に従って形成された通気溝を含む
図3の軸受構造の等角図である。
【
図5】本開示のもう一つの実施形態の例に従って形成された
図4の軸受構造の概略断面図であって、軸受構造を形成するジャーナル軸受とスリーブとの間に形成される高圧領域に対する通気溝の位置を示す図である。
【
図6】本開示のもう一つの実施形態の例による通気溝を含む
図3の軸受構造のジャーナル軸受の前面図である。
【
図7】
図7(A)~
図7(C)は、本開示のさらに他の実施形態の例に従って形成された
図3の軸受構造のための通気溝の上面及び断面の概略図である。
【
図8】本開示のさらに他の実施形態の例に従って形成された
図3の軸受構造のための通気溝を含むスラスト軸受の遠近図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に従って原画像データを取得し、この画像データを表示用及び/又は解析用に処理するように設計されたイメージング・システム10の一実施形態のブロック図である。当業者は、本発明の様々な実施形態が、X線イメージング・システム又はフルオロスコピィ・イメージング・システムのようにX線管を実装した多くの医用イメージング・システムに適用可能であることを認められよう。また、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム及びディジタル・ラジオグラフィ(RAD)イメージング・システムのように、容積についての三次元画像データを取得する他のイメージング・システムも本発明から利益を享受する。X線イメージング・システム10についての以下の議論はかかる具現化形態の一例に過ぎず、モダリティに関して制限するものではない。
【0017】
図1に示すように、イメージング・システム10はX線管又はX線源12を含んでおり、X線源12は、被写体16を透過するX線14のビームを投射するように構成されている。被写体16は、人体、手荷物、又は走査が望まれる他の被写体を含み得る。X線源12は、典型的には30keVから200keVにわたるエネルギのスペクトルを有するX線14を発生する従来のX線管であってよい。X線14は、被写体16を通過して減弱された後に検出器アセンブリ18に入射する。検出器アセンブリ18の各々の検出器モジュールが、入射したX線ビームの強度、従って被写体16を通過するにつれて減弱したビームの強度を表わす電気信号を発生する。一実施形態では、検出器アセンブリ18はシンチレータ型検出器アセンブリであるが、直接変換型検出器(例えばCZT検出器及び光子計数検出器等)を具現化し得ることも思料される。
【0018】
プロセッサ20が検出器18からの信号を受け取って、被走査体16に対応する画像を形成する。コンピュータ22がプロセッサ20と連絡しており、操作者が操作者コンソール24を用いて走査パラメータを制御したり、形成された画像を観察したりすることを可能にする。すなわち、操作者コンソール24は、キーボード、マウス、音声作動式制御器、又は操作者がX線システム10を制御して再構成画像又はコンピュータ22からの他のデータを表示ユニット26で観察することを可能にする他の任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを含む。加えて、コンソール24は、形成された画像を操作者がハード・ドライブ、フロッピィ・ディスク、及びコンパクト・ディスク等を含み得る記憶装置28に記憶させることを可能にする。操作者はまた、コンソール24を用いて命令及び指示をコンピュータ22に与えて、電力信号及びタイミング信号をX線源12に与えるX線源制御器30を制御することができる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態を組み入れたX線源12の断面図を示す。図示の実施形態では、X線源12は、陽極アセンブリ42と陰極アセンブリ44とを含むX線管40である。陽極アセンブリ42及び陰極アセンブリ44は、インサート又はフレーム46の内部に支持されており、フレーム46は、ターゲット又は陽極48、軸受アセンブリ50、及び陰極52を収容している。フレーム46は、周囲に比較して相対的に低圧(例えば真空)の区域を画定しており、この区域に高電圧が存在し得る。フレーム46は、高電圧絶縁をも提供し得るオイルのような冷媒を充填したケーシング(不図示)の内部に配置され得る。上ではターゲット及び陽極がX線管40の共通の一構成要素であるように記述されているが、代替的なX線管の実施形態ではターゲット及び陽極が別個の構成要素であってもよい。
【0020】
動作時には、陰極アセンブリ44によって電子ビーム54が発生される。具体的には、陰極52は複数の電線56を介して1又は複数の電気信号を受け取る。これらの電気信号は電力信号及びタイミング/制御信号を含むことができ、これらの信号によって陰極52が1又は複数のエネルギで1又は複数の周波数の電子ビーム54を放出する。これらの電気信号はまた、陰極52と陽極48との間の電位差を少なくとも部分的に制御することもできる。陰極52は絶縁材58を含んでおり、ここからアーム60が延在している。アーム60は電線56を包囲しており、電線56は、アーム60の端部に装着された陰極カップ62内まで延在している。幾つかの実施形態では、陰極カップ62は、陰極カップ62の内部のフィラメントから放出された電子を集束させて電子ビーム54を形成する集束素子を含んでいる。
【0021】
陰極52からの電子ビーム54の高速の電子が、陽極ターゲット48に形成されているターゲット表面66に衝突して急激に減速するときに、X線64が発生される。電子ビーム54を形成する高速の電子は、CT応用の場合には陽極ターゲット48との間の例えば6万ボルト以上の電位差を介して陽極ターゲット48へ向けて加速される。X線64は、フレーム46に形成されており
図1の検出器18のような検出器アレイへ向けて配置されている放射線放出窓68を通して放出される。
【0022】
陽極アセンブリ42は、ロータ72とステータ(不図示)とを含んでおり、ステータはX線源40の外部に位置してロータ72を部分的に包囲し、動作時には陽極ターゲット48を回転させる。陽極ターゲット48は軸受アセンブリ50によって回転支持されており、軸受アセンブリ50が回転すると陽極ターゲット48も中心線70の周りを回転する。図示のように、陽極ターゲット48は円板のような全体的に円環状の形状を有し、円環状の開口74がその中心において軸受アセンブリ50を受け入れている。
【0023】
ターゲット48は、タングステン、モリブデン、又は電子による射突時のブレームスシュトラールング(Bremsstrahlung(すなわち制動放射))に寄与する任意の材料のような多くの金属又は複合材を含んで製造され得る。陽極ターゲット48のターゲット表面66は、ターゲット表面66に入射する電子によって生成される熱に耐えるように、相対的に高い耐火値を有するように選択され得る。さらに、インサート又はフレーム46の内部の空間、及び陰極アセンブリ44と陽極アセンブリ42との間の空間は、他の原子との電子衝突を最小限に留めると共に電位を最大限に高めるために真空圧となっている。
【0024】
電子による射突時のターゲット48の過熱を回避するために、ロータ72は、高速(例えば90Hzから250Hz)で中心線70の周りにターゲット48を回転させる。X線管フレーム46内での陽極ターゲット48の回転に加えて、CT応用ではX線源40は全体として、ガントリ(不図示)内で典型的には1Hz以上の高速で、
図1のX線イメージング・システム10の被写体16のような被写体を中心として回転する。
【0025】
軸受アセンブリ50は必要に応じて多数の適当な玉軸受(不図示)等によって形成され得るが、図示の実施形態の例では、
図1のイメージング・システム10内での動作について十分な負荷容量及び許容可能な雑音レベルを有する液体金属軸受のような液体潤滑軸受又は自動型(self-acting)軸受を含んでいる。本書で用いられる場合には、「自動型」及び「自己潤滑性(self-lubricating)」との用語は、軸受の潤滑流体が、外部のポンプが存在しなくても軸受構成要素の相対的な運動によって軸受の表面に分配された状態にあることを意味する。
【0026】
一般的には、軸受アセンブリ50は、シャフト76のような固定構成要素と、シャフト76を包囲すると共に陽極ターゲット48を取り付けたスリーブ78のような回転構成要素とを含んでいる。シャフト76は
図2に関して軸受アセンブリ50の固定部分と記述され、またスリーブ78は軸受アセンブリ50の回転部分と記述されているが、本発明の実施形態はまた、回転構成要素としてのシャフト76が固定構成要素としての固定スリーブ78の内部で回転するような実施形態にも適用可能である。かかる構成では、陽極ターゲット48はシャフト76が回転すると共に回転することになる。
【0027】
シャフト76は空洞部、ボア又は冷却材流路80を含んでおり、この流路を通ってオイルのような冷却材82(
図3)が流動して軸受アセンブリ50を冷却する。このようなものとして、冷却材82は、X線源40(
図2)の陽極ターゲット48から発生される熱がここから取り出されてX線源40の外部へ転移されることを可能にする。両持ち式(straddle)の軸受アセンブリ構成では、冷却材流路80はシャフト76の長手方向長さに沿って延在する。代替的な実施形態では、X線イメージング・システムに載置されたときにX線源40が片持ち式になる構成でのように、ボア80がシャフト76の一部のみを通して延在していてもよい。
【0028】
ここで
図3を参照すると、軸受アセンブリ又は構造50の部分断面図が本発明の実施形態に従って示されている。軸受アセンブリ50は、スリーブ78の内部に配置されたシャフト76を含んでおり、スリーブ78は、
図2の陽極ターゲット48のような陽極ターゲットを支持するように構成されている。潤滑流体84が、シャフト76とスリーブ78との間に形成された間隙86に配置されている。本発明の各実施形態では、潤滑流体84は、軸受アセンブリ50の動作温度で液体状態として存在する金属又は合金である。
【0029】
軸受アセンブリ50の回転構成要素と固定構成要素との間を流動する潤滑流体84は、多様な個別の流体、及び流体の混合物を含み得る。例えば、多数の液体金属及び液体合金を潤滑流体として用いることができ、これにはインジウム-ガリウム合金等がある。さらに一般的には、X線管の真空レベル圧力でも蒸発し難い相対的に低い蒸気圧を有する流体を用いることができる。本書の文脈では、低い蒸気圧は一般的には、1×10-5Torrの範囲にある。換言すると、X線管システムの動作時に、確立された真空に悪影響を及ぼさないように、X線管システムでの利用には真空において安定な流体が望ましい。本開示では、潤滑流体84は、非限定的な例としてガリウム又はガリウム合金であってよい。
【0030】
図3に示す実施形態では、軸受アセンブリ50のシャフト76が固定構成要素であり、スリーブ78がシャフト76を中心として回転するように構成された回転構成要素である。但し、当業者は、本書に記載されている本発明の概念が代替的な軸受構成にも適用可能であることを認められよう。一例として、軸受アセンブリ50は代替的に、固定した外側構成要素又はシェルと、陽極ターゲットを取り付けて含む回転シャフトとを含んでいてもよい。もう一つの例として、軸受アセンブリ50は第一の液体金属軸受と第二の液体金属軸受との間で陽極ターゲットを支持するように構成されている「両持ち式」の軸受であってもよい。換言すると、陽極ターゲットを支持するために液体金属軸受を用いるあらゆる軸受構成に本発明の実施形態を組み入れてよい。かかる構成は、固定シャフト及び回転する外スリーブ、並びにこの反対を含み得る。さらに、当業者は、かかる応用がX線管に必ずしも限定されず、回転構成要素と固定構成要素とを真空内に有し、回転構成要素が液体金属軸受アセンブリの内部に支持されているようなあらゆる構造的構成に適用され得ることを認められよう。このように、本書に開示される発明の実施形態は、構成又は応用を問わず、回転構成要素及び固定構成要素と、両要素の間の潤滑流体とを有するあらゆる軸受構成に適用可能である。
【0031】
図3に示すように、軸受アセンブリ50のシャフト76はスラスト軸受88を含んでおり、スラスト軸受88は、シャフト76から延在してスリーブ78の径方向空洞部92に配置された径方向突起90を含んでいる。スラスト軸受88の径方向突起90は1対の軸受外面94、96を含んでおり、外面94、96はスリーブ78の径方向空洞部92の軸受内面98、100に対面している。径方向突起90はスリーブ78のシャフト76に対する軸方向運動を限定し、また図示のように、潤滑流体84は径方向突起90とスリーブ78との間にも含まれている。径方向突起90は軸長において必ずしも限定されておらず、各構成要素の付加的な機械的支持を提供するように軸長において延在し得る。
【0032】
シャフト76はまた、スラスト軸受88に隣接して位置してスラスト軸受88から軸方向に延在しているジャーナル軸受102を含んでいる。シャフト76のジャーナル軸受102の外面104がスリーブ78の内面106に対面している。ジャーナル軸受102はスラスト軸受88の第一の側で軸受外面94に隣接して位置するように図示されているが、当業者は、軸受アセンブリ50がスラスト軸受88の第二の側で軸受外面96に隣接して位置する第二のジャーナル軸受部分を含み得ることを認められよう。軸受アセンブリ50の接触面/軸受面に埋設される溝を含め、様々な被膜、テクスチャ、及びパタンを施工して、シャフト76とスリーブ78とが互いに対して回転するのに伴って軸受挙動を変化させることができる。
【0033】
図3に示す実施形態の例では、スリーブ78は、スリーブ部108とスラスト・シール110とを含む二部構成で形成され得る。スリーブ部108は、良好な機械加工性、良好なかじり(galling)/摩耗特性、及び良好な溶接性を備えた低費用の材料で形成される。さらに、これらの材料は熱を伝導するが、選択随意で軸受アセンブリ50と陽極ターゲット48との間に熱障壁を含めて、軸受アセンブリ50の温度を、軸受アセンブリ50を形成する材料の腐食限度未満に保つことができる。本発明の実施形態の一例では、スリーブ部108を形成する材料は、ステンレス鋼、中でもD2鋼のような炭素工具鋼を含む鉄合金のような非耐火金属であってよいが、モリブデンのような耐火材料及び金属を用いてもよい。スリーブ部108は、一端に閉じた円筒形キャップ部112を備え、他端に開いた座部114を備えた選択された材料の単一片として形成され得る。図示の実施形態の例では、米国特許出願公報第US2016/0133431号、標題『溶接式スパイラル溝付き軸受アセンブリ』(“Welded Spiral Groove Bearing Assembly”)に開示されているもののように、座部114が選択随意でキャップ部112と一体形成されてスリーブ部108として単体構造を形成していてよく、この単体構造の内部でシャフト76とスラスト・シール110とを係合させ得る。尚、この特許出願の全体を参照により本明細書に明示的に取り入れる。軸受アセンブリ50の代替的な実施形態の例では、スリーブ78が、スリーブ部108とスラスト・シール110との間にスペーサ(不図示)を配設して形成されていてもよく、この場合にはスペーサは、鋼を含めた金属のような適当な材料で形成され、スリーブ部108とスラスト・シール110とに直に隣接し接触して配設されて間にシールを形成する当該スペーサの表面に施工される溝(不図示)及び/又は適当な抗ぬれ性被膜(不図示)を含む。
【0034】
軸受アセンブリ50の様々な表面に沿って軸受溝200(
図4)がパタン形成されていることから、軸受アセンブリ50をスパイラル溝付き軸受(SGB)と呼んでもよい。溝200は、ジャーナル軸受102の外部、スリーブ部108の内面、並びに軸受外面94、96及び軸受内面98、100の一方又は両方等のような軸受の各表面に形成されることができ、これらの溝は溝無し区域118によって離隔され得る。幾つかの例では、溝200は、シェブロン形又は対数螺旋形で形成され得る。スパイラル溝付き軸受はまた同等に、流体力学的軸受又は動圧軸受と呼ばれたり、液体金属軸受と呼ばれたりもする。かかるスパイラル溝付き軸受では、潤滑流体84を収容する方法は二つの一般的な方法に分類され得る。第一の方法は、他の応用であればシャフト・シールが位置する筈の軸受の両端の近くに物理的障壁を設けることを含む。ゴム又は他の形式のシャフト・シールは、X線管の内部に真空が存在する状態では適当に作用せず、急速に劣化し、且つ/又はX線管の内部の圧力を破壊し得る。同様の理由で、O環、グリース、又は二つの構成要素の間の回転潤滑を助ける他の従来の手段も、X線管が真空であるため望ましいとは言えない。グリース及び他の潤滑流体は液体金属よりも蒸気圧が低いため、蒸発して真空を破壊し得る。幾つかの例では、相異なる形状及び寸法の物理的な壁を相異なる角度で配置して、軸受を通過する漏れを低減するように潤滑流体を捕捉する場合もある。
【0035】
第二の一般的な方法は、潤滑流体の毛管力を利用することを含み、この場合には、対面する二つの軸受表面の間の微小な間隙が流体でぬれて、間隙の内部に流体を保持する。他の場合には、表面の抗ぬれ性(テクスチャ、被膜、又は両方を介した)によって、潤滑流体が微小な間隙の間を流動し難くなるようにする。幾つかの例では、よりぬれるように表面に被膜及び/又はテクスチャを施して、潤滑流体が微小な間隙に付着して、間隙を通して移動する潤滑流体を減少させるようにする。他の例では、より抗ぬれ性になるように表面に被膜及び/又はテクスチャを施して、潤滑流体が軸受アセンブリの両端の近くの微小な間隙から押し出されるようにする。本書の文脈では、微小な間隙は15ミクロンから150ミクロンの範囲にあってよい。
【0036】
図2及び
図3の軸受アセンブリ50のような液体軸受アセンブリのX線管システムにおける動作は、負荷容量と流体圧送力との間のトレードオフに少なくとも部分的に依存し得る。幾つかの例では、負荷容量及び流体圧送力は反比例し、軸受溝200の幾何学的形状に直接的に関係付けられる。例えば、液体軸受アセンブリの回転速度が実質的に定速であるとすると、溝200が深いほど高い圧送力を提供することができるが、シャフト76とスリーブ部108との間のクリアランスが増加して、軸受アセンブリ50の負荷容量を低減させ得る。圧送力は潤滑流体を収容するのに利用されることができ、シール表面に抗ぬれ性被膜を施して潤滑流体の収容をさらに助けることもできる。
【0037】
それぞれの軸受表面に設けられたシャフト76及びスリーブの溝200が互いに対して回転するのに伴って潤滑流体が軸受表面の間を移動する。溝200は山202によって離隔され、潤滑流体の移動を溝200に沿うように指向させて、軸受アセンブリ50の円周の周りに圧力を与えることにより、結果的にロータ・ダイナミクス的な安定性を与える。このようなものとして、潤滑流体は、限定しないが剪断作用、楔作用、及び圧搾作用を含む多くの方法で移動させられ、これにより圧力を生じ、シャフト76とスリーブ部108とを持ち上げて互いから離隔する。この効果のため、液体軸受が作用してシャフト76とスリーブ部108との間の低摩擦移動を提供することが可能になる。換言すると、潤滑流体の剪断が流体にエネルギを与えて流体を圧送し、ここではシャフト76とスリーブ部108との間の間隙への圧送作用が、液体軸受が果たす作用となる。表面から流体へのエネルギ伝達が軸受作用を可能にする。応用時には、X線管の文脈では、幾つかの軸受表面と潤滑流体との間にはぬれ性があるため、剪断によって流体にエネルギを与えることが可能になる。しかしながら、幾つかの軸受表面と潤滑流体との間には抗ぬれ性があるため、軸受表面同士の間の摩擦を低下させることが可能になり、これにより軸受アセンブリ50の動作温度を低下させる。
【0038】
ここで
図4を参照すると、潤滑流体84に捕捉されたガス及び気泡等を軸受アセンブリ50から逃散させるために、軸受アセンブリ50は1又は複数の通気溝300を形成して含んでいる。
図4に示す実施形態の例では、通気溝300は、シャフト76のジャーナル軸受102又はスラスト軸受88に配設され得る。通気溝300は所定の寸法すなわち深さ及び幅に形成され、この寸法は、捕捉されたガスが通気溝300を通過して軸受アセンブリ50の外部に排出され易くなるような圧力シールを、溝300が潤滑流体84によって生成することを可能にするものとする。実施形態の一例では、通気溝300は、潤滑流体84によって大気圧よりも低圧、近似的に14.1psi未満に耐え得る圧力シールを生成するように形成される。他の実施形態の例では、通気溝300は、潤滑流体84によって0psiと約1psiとの間の圧力に耐える圧力シールを生成するように形成される。もう一つの実施形態の例では、通気溝300は、少なくとも10μmの幅で少なくとも10μmの深さに形成され得る。他の実施形態の例では、通気溝300は、少なくとも20μmの幅で少なくとも20μmの深さに形成される。
【0039】
図4の実施形態の例に示すように、ジャーナル軸受102の通気溝300は、ジャーナル軸受102に沿って、ジャーナル軸受102に形成された溝200を横断して軸方向に延在することもできるし、スラスト軸受表面94、96の一方に配設された径方向通気溝301であってもよい。代替的な実施形態の例では、
図6に示すように、ジャーナル軸受102は、ジャーナル軸受102に配設された1又は複数の円周方向通気溝302を含むこともでき、この場合には、1又は複数の円周方向通気溝302は軸方向通気溝300と交差する。代替的には、軸方向通気溝300を1又は複数の円周方向通気溝302で置き換えることもできる。
【0040】
さらに他の代替的な実施形態では、
図7(A)から
図7(C)に示すように、通気溝300は、ジャーナル軸受102に形成された溝200の1又は複数について、より深い区画304として形成され得る。より深い区画304は、溝200の全長に沿って延在する(
図7(A))こともできるし、溝200の一部のみにわたって延在する(
図7(B))こともでき、より深い区画304は内側半部軸受又は外側半部軸受のいずれかに、既存の溝200の一部として形成される(
図7(C))。通気溝304についてのこれらの実施形態では、気泡は、内側半部の通気溝304によって中心の溜め118に入り、軸受アセンブリ50の外部に排出される。
【0041】
ここで
図5を参照すると、以上の各実施形態の任意のものに関し、他の実施形態の例として、通気溝300が軸受アセンブリ50の負荷容量、例えば潤滑流体84がスリーブ部108をシャフト76に対して支持する能力に関して、悪影響を最小限に留めるようなジャーナル軸受102上の位置に1又は複数の通気溝300を配置することが望ましく、間隙86の内部の流体84の圧力が全荷重条件において最低になるような位置に配置することが望ましい。このことを達成するために、通気溝300は、ジャーナル軸受102上で、潤滑流体84の高圧Pの領域の外部で、スリーブ部108とシャフト76のジャーナル軸受102との間の最も狭い点/最小アプローチh
0の点に配設される。スリーブ部108のジャーナル軸受102に対する回転によってスリーブ部108の角運動量ωが生ずるため、点h
0は、軸受アセンブリ50のガントリ側であるが軸受アセンブリ50とガントリ中心との整列中心からずれて配設されるものとして定義される。通気溝300が潤滑流体84の負荷容量に及ぼす悪影響を最小限に留めるために、高圧領域の低圧側に通気溝300を配置することが望ましい。このようなものとして、実施形態の一例では、ジャーナル軸受102上の通気溝300は、軸受アセンブリ50の運動構成要素の回転の方向において最小アプローチh
0の点に隣接するが最小アプローチh
0の点から離隔した位置、すなわち最小アプローチの点、又はキャビテーション(空洞)が生じている場合にはキャビテーション領域の低圧側の位置に配設される。さらに、最小アプローチh
0の点の位置は軸受アセンブリ50の動作条件に基づいて変わるので、幾つかの実施形態では、通気溝300は、軸受アセンブリ50の何らかの特定の動作条件について最適な位置というよりも、全ての望まれる動作条件について低圧側/領域となる等のように、全ての望まれる動作条件について最も実効的な位置に配置されるべきであり、如何なる臨界状態にあっても軸受アセンブリ50の性能を損なうことのないようにする。
【0042】
図4及び
図8を参照すると、実施形態の一例では、通気溝300は、スラスト軸受88のみに配設されるか、又はジャーナル軸受102に位置する通気溝300と併せて配設されている。スラスト軸受88の通気溝300は、スラスト軸受88の片面又は両面94、96に位置し、ジャーナル軸受102に形成された通気溝300と同様の態様で同様の寸法で形成され得る。スラスト軸受88の通気溝300は、スラスト軸受88のスリーブ部108及びスラスト・シール110に対する均衡及び/又は整列を保つために、表面94、96の両面で対をなして配設される。スラスト軸受88では、スラスト軸受88の片面又は両面94、96に任意数の対の通気溝300を形成することができる。
【0043】
他の実施形態の例では、通気溝300は、通気溝300がガスを軸受アセンブリ50から逃散させる動作を容易にするために、適当なぬれ性被膜及び/又は抗ぬれ性被膜(不図示)を含み得る。さらに、軸受アセンブリ50の適正な動作に必要とされる負荷圧力を保ちつつ、ガス排出作用を提供するように潤滑流体84を通気溝300の内部に保つために、配設された通気溝300に直に隣接して配設されたスラスト軸受88の表面及びジャーナル軸受102の表面に、被膜及び選択随意で表面テクスチャ(不図示)を用いることができる。加えて、軸受アセンブリ50用の幾つかの構成は、固定スリーブ108と、スリーブ108の内部に配設された回転シャフト76とを用いるので、代替的な実施形態では、通気溝300、304をシャフト76の表面に対面するスリーブ108の様々な表面に配設することもできる。
【0044】
本書面の記載は、最良の態様を含め、実例を用いて発明を開示しており、また任意の装置又はシステムを作製して利用すること、及び組み入れられた任意の方法を実行することを含め、あらゆる当業者が発明を実施することを可能にしている。発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって画定され、また当業者に想到される他の例を含み得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と些細な違いしかない均等構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0045】
10 イメージング・システム
14 X線
40 X線管
42 陽極アセンブリ
44 陰極アセンブリ
46 フレーム
48 ターゲット又は陽極
50 軸受アセンブリ
52 陰極
54 電子ビーム
56 電線
58 絶縁材
60 アーム
62 陰極カップ
64 X線
66 ターゲット表面
68 放射線放出窓
70 中心線
72 ロータ
74 開口
76 シャフト
78 スリーブ
80 冷却材流路
82 冷却材
84 潤滑流体
86 間隙
88 スラスト軸受
90 径方向突起
92 径方向空洞部
94、96 軸受外面
98、100 軸受内面
102 ジャーナル軸受
104 ジャーナル外面
106 スリーブ内面
108 スリーブ部
110 スラスト・シール
112 キャップ部
114 座部
118(
図4) 溝無し区域
118(
図6) 溜め
200 軸受溝
202 山
300 通気溝
301 径方向通気溝
302 円周方向通気溝
304 より深い区画の通気溝
【外国語明細書】