IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128456
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】バインダシステム
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/587 20120101AFI20220825BHJP
   D04H 1/4218 20120101ALI20220825BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20220825BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220825BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
D04H1/587
D04H1/4218
C09D129/04
C09D7/61
F16L59/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084274
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2019516094の分割
【原出願日】2017-06-06
(31)【優先権主張番号】62/345,885
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507220187
【氏名又は名称】オウェンス コーニング インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】アルバーニ ブライアン アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス-トーレス ヘスス エム
(72)【発明者】
【氏名】メンデス-アンディーノ ホセ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガー スコット ウィリアム
(57)【要約】
【課題】繊維状絶縁材および不織マットを製造する際に使用するためのバインダを提供すること。
【解決手段】金属塩およびポリオールを含む、環境に優しい水性バインダ組成物が提供される。金属塩は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、ジルコニウム、タリウム、鉛、およびビスマスの塩を含めて、水溶性塩であってもよい。ポリオールは、ポリビニルアルコールを含めて、水混和性または水溶性ポリマーアルコールを含んでもよい。バインダ組成物は、とりわけ、絶縁材料および不織マットの形成に使用されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状絶縁材および不織マットの形成における使用のためのバインダ組成物であって、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、金属塩およびポリオールは、1:99~1:1の質量比で存在する、バインダ組成物。
【請求項2】
金属塩とポリオールとの質量比が、1:9~1:1の範囲である、請求項1に記載の水性バインダ組成物。
【請求項3】
金属塩が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の水性バインダ組成物。
【請求項4】
金属塩が、アルミニウムの塩である、請求項3に記載の水性バインダ組成物。
【請求項5】
金属塩が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の水性バインダ組成物。
【請求項6】
ポリオールが、芳香族アルコール、グリセロール、ポリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪族アルコール、未変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の水性バインダ組成物。
【請求項7】
ポリオールが、ポリビニルアルコールである、請求項6に記載の水性バインダ組成物。
【請求項8】
ポリビニルアルコールが、3~5センチポイズの粘度を有する、請求項7に記載の水性バインダ組成物。
【請求項9】
ポリビニルアルコールが、少なくとも50%加水分解されている、請求項8に記載の水性バインダ組成物。
【請求項10】
複数の繊維、および
繊維の少なくとも一部に適用されるバインダ組成物
を含む、繊維状絶縁製品であって、バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオールを含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:99~1:1の範囲であり、かつ
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在する、繊維状絶縁製品。
【請求項11】
金属塩とポリオールとの質量比が、1:9~1:1の範囲である、請求項10に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項12】
金属塩が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項10に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項13】
金属塩が、アルミニウムの塩である、請求項12に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項14】
金属塩が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項15】
ポリオールが、芳香族アルコール、グリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、脂肪族アルコール、未変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項16】
ポリオールが、ポリビニルアルコールである、請求項15に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項17】
ポリビニルアルコールが、3~5センチポイズの粘度を有する、請求項16に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項18】
ポリビニルアルコールが、少なくとも50%加水分解されている、請求項17に記載の水性バインダ組成物。
【請求項19】
添加されたホルムアルデヒドを含まない、請求項10に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項20】
繊維が、ガラス繊維である、請求項10に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項21】
第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態の複数の繊維と、
前記マットの前記第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティングするバインダ組成物と
を含む、不織マットであって、前記バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:99~1:1の範囲であり、かつ
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で不織マット中に存在する、不織マット。
【請求項22】
繊維が、ガラス繊維であり、繊維は、6.5μm~24μmの範囲内の平均直径を有する、請求項21に記載の不織マット。
【請求項23】
繊維状絶縁製品を作製する方法であって、
複数の繊維を含む繊維状ブランケットを形成する工程と、
前記ガラス繊維の少なくとも一部にバインダ組成物を適用する工程であって、前記バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:99~1:1の範囲内である、工程と、
繊維状ブランケットをオーブンに通過させて、繊維状ブランケット上のバインダを少なくとも部分的に硬化させ、絶縁製品を形成する工程であって、
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在する、工程と
を含む、方法。
【請求項24】
線維が、ガラス繊維である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年6月6日に出願された、米国仮特許出願第62/345,885号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、その内容は、あたかも本明細書に具陳されるかのごとくここにその全体が参照により組み込まれる。
本発明は概して、繊維状絶縁材および不織マットに関し、より詳細には、繊維状絶縁材および不織マットを製造する際に使用するためのバインダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の繊維、例えば、グラスファイバ、ミネラルウール、およびタキライト(basalt)は、強化材、テキスタイル、ならびに遮音および断熱材料を含む、様々な用途で有用である。繊維状絶縁材は、典型的には、ポリマー、ガラス、または他の鉱物の溶融組成物を繊維化し、繊維化装置、例えば、回転スピナーから微細繊維を紡糸することによって製造される。絶縁製品を形成するために、回転スピナーにより製造された繊維は、ブロアによりコンベヤに向けてスピナーから下方に延伸される。繊維が下方に移動する間に、バインダ材料が、繊維をスプレーまたはディップすることによって適用(applied)される。次いで、繊維は、コンベヤ上の厚手の連続ブランケットへと収集される。バインダ材料は、絶縁製品にパッケージング後の回復弾性を付与し、かつ例えば、建築物の絶縁空洞において、必要に応じて絶縁製品を取扱い、適用することができるように剛性および取扱い性を付与する。バインダ組成物はまた、繊維に対してフィラメント間の摩耗から保護し、個々の繊維間の適合性を促進する。
次いで、バインダでコーティングされた繊維を含むブランケットを、硬化オーブンに通過させ、ブランケットを所望の厚さに設定するために、バインダを硬化する。バインダが硬化した後、繊維絶縁材は、ある長さに切断して個別の絶縁製品を形成してもよく、絶縁製品は、顧客の場所に出荷するためにパッケージングされてもよい。製造された典型的な絶縁製品の一つは、絶縁性中入れ綿またはブランケットであり、これは、住宅における壁絶縁材としての、または建築物の屋根裏および床絶縁空洞における絶縁材としての使用に適する。絶縁製品の別のタイプは、絶縁ボードである。絶縁ボードは、絶縁性中入れ綿またはブランケットと同様の様式で使用されてもよいが、より剛く、かつ一般により密度が高い。
【0003】
不織マット、例えば、遮音天井板に使用されるものは、従来の湿式法によって形成されてもよい。このような一法では、ウェットチョップド繊維は、界面活性剤、粘度調節剤、消泡剤、および/または他の化学薬剤を含有する水スラリー中に分散される。次いで、チョップド繊維を含有するスラリーは、繊維がスラリー全体を通してより均一に分散されるように撹拌される。繊維を含有するスラリーは、移動スクリーン上に堆積され、ここで、相当量の水が除去されて、ウェブを形成する。次いで、バインダが適用され、得られたマットは乾燥されて、すべての残りの水を除去し、バインダを硬化する。形成された不織マットは、分散された個々のガラスフィラメントの集合体である。
不織マットはまた、乾燥チョップド繊維および/または連続フィラメントから調製されてもよい。例えば、繊維はブッシングから分与され、所望の長さに細断される(chopped)。繊維には、ある特定の化学薬剤が細断前に施されても、されなくてもよい。次いで、チョップド繊維は、表面、例えばコンベヤベルトに施されて、マットを形成する。バインダがマットに適用され、これは、硬化オーブンに運搬される。
連続フィラメント繊維製品に関しては、繊維は、表面に分与され(最初に施される化学薬剤とともに、またはそれなしで)、マットを形成することができる。次いで、バインダ組成物がマットに適用され、次いで、これは硬化用オーブンに運搬される。したがって一般に、この硬化マットは、チョップド繊維マットよりも少ない繊維から構成される。
ホルムアルデヒド系樹脂、例えば、フェノール樹脂からの望ましくないホルムアルデヒド放出を減少させるために様々な試みがなされてきた。例えば、様々なホルムアルデヒド捕捉剤、例えば、アンモニアおよび尿素が、絶縁製品からホルムアルデヒド放出を減少させようとしてホルムアルデヒド系樹脂に添加されてきた。
【0004】
ポリアクリル酸バインダは、フェノール樹脂を上回るいくつかの利点を与える。しかしながら、ポリアクリル酸から主として形成されているバインダは、その酸性度および付随する機械部分の腐食に起因する問題を本質的に有する。加えて、ポリアクリル酸バインダは、高い粘度、高い硬化温度、および付随する高い硬化コストを有する。ある特定の天然系システムが同様に知られているが、それら自体の特定の欠点をこうむる。例えば、デンプン/炭水化物系製品(または、メイラード反応に依存するもの)は、硬化後に望ましくない暗褐色を示し得る。また、バインダを作るために必要とされる大量のアンモニアの使用は、安全上のリスクおよび潜在的な放出問題を提示する。
繊維状ガラス製品のために、上記のものに対する代替的なポリマー性バインダシステムも提案されてきた。しかしながら、これらの代替的なポリマー性バインダシステムは、ある特定の場合には問題を抱えたままである。例えば、移行ゾーンにおいて絶縁材パックの最大垂直膨張を可能にする、低分子量で低粘度のバインダは、一般に、硬化すると完成製品において可塑的な非硬質マトリックスを形成し、それにより、取り付けられるときの完成絶縁製品の達成可能な垂直高さの回復を減少させる。逆に、硬化すると完成製品において硬質マトリックスを一般に形成する高粘度バインダは、コーティングされた未硬化パックの所望の最大垂直膨張を可能にしない。
繊維を一緒に結合させるように反応する成分に加えて、大部分の従来のバインダシステムは、完成製品の様々な特性(例えば、防塵、静電防止)を調整するためのいくつかの他の成分を含む。これらの個別の成分のそれぞれは、繊維の最終的な結合を妨げないことに加えて、安全かつ他の成分と適合性であると立証されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-153395号公報
【特許文献2】特表2008-542451号公報
【特許文献3】特表2013-536904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のバインダに関する既存の問題を考慮すると、機械部品を腐食せず、添加されたホルムアルデヒドを含まず、環境に優しく、製造後に保存安定であり、完成製品を製造するために必要とされる原料全体から見てより簡単であり、および/または加工上の利点をもたらすバインダシステムに対する当技術分野での必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一般的概念は、絶縁材、絶縁ボード、不織マット、炭素繊維製品の形成における使用のための、ならびに製品において、有機繊維、例えば、セルロースおよび木質系繊維のためのバインダとしての使用のための、バインダ組成物に関する。一般に、本バインダは、金属塩およびポリオールを含む。ある特定の実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:99~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。
ある特定の実施形態では、本発明の一般的概念は、複数のランダムに配向された繊維と、繊維の少なくとも一部に適用され、繊維を相互に連結させるバインダ組成物とを含む繊維状絶縁製品に関する。バインダは、1:99~1:1の質量比で金属塩およびポリオールを含む。
ある特定の実施形態では、本発明の一般的概念は、第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態で絡み合わされた、個別の長さを有する複数のランダムに配向された繊維と、マットの第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティングし、またはある特定の実施形態では、マットに少なくとも部分的に含浸するバインダ組成物から形成される不織マットに関する。バインダは、金属塩およびポリオールを含む。金属塩およびポリオールは、一般に1:99~1:1の質量比で存在する。いずれの適当な繊維が使用されてもよい。ある特定の実施形態では、繊維はガラス繊維である。繊維は、6.5μm~24μmの範囲内の平均直径を有する。ある特定の実施形態では、繊維は、ミネラルウール繊維である。バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で不織マット中に存在する。
【0008】
ある特定の実施形態では、本発明の一般的概念は、繊維状絶縁製品の製造方法に関する。この方法は、複数のランダムに配向された繊維を含む繊維状ブランケットを形成する工程と、バインダ組成物をガラス繊維の少なくとも一部に適用する工程であって、バインダ組成物は、1:99~1:1の質量比で金属塩およびポリオールを含む、工程と、繊維状ブランケットをオーブンに通過させて、繊維上のバインダを少なくとも部分的に硬化させ、絶縁製品を形成する工程であって、バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在する、工程と、を含む方法に関する。
本発明の一般的概念の様々な実施形態は、典型的には以下の例示的な特徴の1つまたは複数を示す。
本発明のバインダ組成物が、添加されたホルムアルデヒドを含まないことは、本発明の一般的概念の特徴である。
本発明のバインダ組成物が、満足な製品を製造するために必要とする原料がより少ないことは、本発明の一般的概念の特徴である。
本発明のバインダ組成物を用いる絶縁製品および不織マットが、現在の製造ラインを使用して製造され、それにより、時間および資金を節約することができることは、本発明の一般的概念の特徴である。ある特定の実施形態では、本発明のバインダ組成物を用いる絶縁製品および不織マットは、典型的には従来のバインダシステムを硬化させるために使用されるものよりも低い温度で製造され、全体的な性能標準をなお維持し得る。
【0009】
本発明のバインダ組成物を用いる絶縁製品および不織マットが、増加された量の添加される水を使用して製造され、現在の温度/時間で、またはそれ未満で硬化され得ることは、本発明の一般的概念の特徴である。これは、本発明のバインダ組成物が、製造時間またはコストを実質的に増加させることなく、および性能に実質的に影響を与えることなく、従来のバインダシステムで見られない様式で過剰の水を「流し」、必要に応じて、追加の水がバインダ組成物に添加されることを可能にする(加工し易さのために)、驚くべき能力のためである。
本明細書で提供される例示的水性バインダ組成物で作られた最終絶縁製品が、絶縁製品のための様々な色を生じさせるための染料、顔料、または他の着色剤の使用を可能にする所望の強熱減量(LOI)レベルで薄い色を示すことは、本発明の一般的概念の特徴である。
本発明のバインダ組成物が、酸性条件下でミネラルウールを結合することは、本発明の一般的概念の特徴である。一般的に言えば、適当に架橋/硬化させるために酸性環境を必要とするバインダは、ミネラルウールを結合する場合に有効でないか、または性能の低下を示す。驚くべきことに、本明細書に記載される本発明のバインダは、2.5~3のpHを含めて、1~4.5のpHで絶縁性中入れ綿を形成するためにミネラルウールを結合するのに有効であることが見出された。
【0010】
ある特定の実施形態では、本発明のバインダ組成物は、従来のバインダ組成物よりも低い温度で硬化されてもよい。ポリオールおよび金属塩を含むバインダ組成物は、水を前硬化製品からより容易に逃がすことを可能にする。含水量の減少により、硬化プロセスの間に製品から過剰の水を放出するのに必要な熱が少なくなる。
バインダ組成物(例えば、ポリビニルアルコールおよび金属塩)が、スプレーアプリケータを含めて、従来のバインダアプリケータにより適用され得る水性混合物を形成し得ることは、本発明の一般的概念の特徴である。
本発明のバインダ組成物が、複合強化材を含有するマットの製造に有用であり得ることも、本発明の一般的概念の特徴である。
【0011】
本発明の一般的概念の上述および他の目的、特徴、および利点は、次に続く詳細な説明の検討から以後により十分に明らかになる。しかしながら、図面は、例証的な目的のためであり、本発明の限界を規定すると解釈されるべきでないことは、明確に理解されるべきである。
本発明の様々な例示的利点は、特に以下の添付の図面と併せ考えることによって、本発明の以下の詳細な開示に基づいて明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、いくつかのバインダ組成物で作られたハンドシート試料について引張り強度を補正LOIで除した値(引張り強度/補正LOI)を示すグラフである。
図2図2は、ポリビニルアルコール/塩化アルミニウムおよびポリビニルアルコール/硝酸アルミニウムを含む本発明のバインダ組成物を含む、いくつかのバインダで作られたハンドシート試料について引張り強度を補正LOIで除した値(引張り強度/補正LOI)を示すグラフである。
図3図3は、ポリビニルアルコール/硝酸アルミニウムを含む本発明のバインダを含む、いくつかのバインダ組成物の動的機械分析を示すグラフである。
図4図4は、ポリビニルアルコール/塩化アルミニウムを含む本発明のバインダを含む、いくつかのバインダ組成物の動的機械分析を示すグラフである。
図5図5は、ポリビニルアルコール/硝酸アルミニウムを含むいくつかのバインダ組成物の動的機械分析を示すグラフである。
図6図6は、ポリビニルアルコール/硫酸アルミニウムを含むいくつかのバインダ組成物の動的機械分析を示すグラフである。
図7図7は、ポリビニルアルコールおよび硝酸アルミニウムを含むいくつかのバインダ組成物の回復パーセントを示すグラフである。
図8図8は、いくつかのバインダ組成物の回復パーセントを示すグラフである。
図9図9は、ポリビニルアルコール/硝酸アルミニウムを含む本発明のバインダ組成物で作られた実験室ボードについての最大負荷(LOIについて補正)を示すグラフである。
図10図10は、ポリビニルアルコール/硝酸アルミニウムを含む本発明のバインダ組成物についての補正LOIを示すグラフである。
図11図11は、250°F~450°Fの温度で硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた一連のハンドシートの引張り強度を示すグラフである。
図12図12は、250°F~450°Fの温度で硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた一連のハンドシートのLOIについて正規化された引張り強度を示すグラフである。
図13図13は、250°F~450°Fの温度で硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られたハンドシートについてのLOIを示すグラフである。
図14図14は、300°F~400°Fの温度で硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた試料についての回復パーセントを示すグラフである。
図15図15は、300°F~400°Fの温度で硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた試料について面積質量について正規化された回復パーセントを示すグラフである。
図16図16は、300°F~400°Fの温度で硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた試料についての補正LOIを示すグラフである。
図17図17は、4.65%の目標LOIで高温(中入れ綿中で測定して415~425°F)または低温(中入れ綿中で測定して350~360°F)のいずれかで硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた一連の中入れ綿試料の剛性測定値を示すグラフである。
図18図18は、4.65%の目標LOIで高温(中入れ綿中で測定して415~425°F)または低温(中入れ綿中で測定して350~360°F)のいずれかで硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた試料の結合強度を示すグラフである。
図19図19は、4.65%の目標LOIで高温(中入れ綿中で測定して415~425°F)または低温(中入れ綿中で測定して350~360°F)のいずれかで硬化された、本発明のバインダ組成物を使用して作られた試料の引張り強度を示すグラフである。
図20図20は、様々なバインダ組成物を使用して作られたハンドシートの引張り強度測定値を示すグラフである。PVおよび塩化アルミニウムを90:10の質量比で含む(PVAと称する)本発明のバインダ組成物を、対照MDCAバインダ組成物と比較した。他のバインダ組成物は、PVGAF=ポリビニルアルコール、没食子酸、および硝酸鉄;ならびにPVGAA=ポリビニルアルコール、没食子酸、および塩化アルミニウムである。
図21図21は、PVおよび塩化アルミニウムを90:10の質量比で含む(PVAと称する)バインダ組成物を使用して作られたハンドシートの引張り強度を示すグラフである。
図22図22は、LOIについて補正するように調整された実施例25からの結果を示すグラフである。
図23図23は、様々なバインダ組成物を使用して作られたハンドシートについての引張り強度測定値を示すグラフである。
図24図24は、対照MDCAバインダ、ならびにポリビニルアルコールを含む2種の追加のバインダ、すなわち、ポリビニルアルコール、没食子酸、塩化アルミニウム(PVGAAlと称する);およびポリビニルアルコール、没食子酸、硝酸鉄(PVGAFeと称する)と比較した本発明のバインダ組成物の剛性測定値を示すグラフである。
図25図25は、実施例28で試験したバインダ組成物についての平均LOIを示すグラフである。
図26図26は、実施例28のバインダ組成物についての回復パーセントを示すグラフである。PVAlは、ポリビニルアルコールおよび塩化アルミニウムであり、ポリビニルアルコール、没食子酸、塩化アルミニウム(PVGAAlと称する);ならびにポリビニルアルコール、没食子酸、硝酸鉄(PVGFeと称する)。
図27図27は、ミネラルウール中入れ綿の、それに適用された様々なバインダによるサグ測定値を示すグラフである。
図28図28は、ミネラルウール中入れ綿の、それに適用された様々なバインダによる引張り強さ測定値を示すグラフである。
図29図29は、ミネラルウール中入れ綿の、それに適用された様々なバインダによる反発弾性測定値を示すグラフである。
図30図30は、ミネラルウール中入れ綿の、それに適用された様々なバインダによる圧縮強度測定値を示すグラフである。
図31図31は、バインダについてのバインダ固体の量を示すグラフである。
図32図32は、貯蔵後の、PV/Al(NO33バインダシステムで調製されたミネラルウールハンドシートの引張り強度を示すグラフである。
図33図33は、貯蔵後の、PV/Al(NO33バインダシステムで調製されたミネラルウールハンドシートの引張り強度を示すグラフである。
図34図34は、PVフィルムの動的機械分析のプロットである。
図35図35は、PV/Al(NO33バインダの動的機械分析のプロットである。
図36図36は、比較のためのPV/KNO3バインダの動的機械分析のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
別に規定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等のいずれの方法および材料も、本発明の実施または試験で使用され得るが、好ましい方法および材料が本明細書に記載されている。公開されている、または対応する米国または外国特許出願、発行された米国または外国特許、および任意の他の参考文献を含めて、本明細書に引用されたすべての参考文献は、その中に提示されたすべてのデータ、表、図、および本文を含めて、それぞれ、その全体が参照により組み込まれる。
層、領域、基材、またはパネルなどの要素が、別の要素の「上に」あると称される場合、それは、直接その他の要素の上に存在してもよく、または介在要素が存在してもよいことが理解される。また、ある要素が別の要素に「隣接」して存在すると称される場合、その要素は、その他の要素に直接隣接していてもよく、または介在要素が存在してもよい。用語「上部」、「底部」、「側部」などは、説明のみを目的として本明細書で使用される。図の全体を通して見られる類似の数字は、類似の要素を表す。
【0014】
本明細書に示される用語は、例示的実施形態の説明のためだけであり、全体として本開示を限定すると解釈されるべきでない。本開示の単数の特性または限定へのすべての言及は、言及がなされる文脈により別に特定されないか、または明らかに反対に暗示されない限り、対応する複数の特性または限定を含むものとし、逆もまた同様である。別に特定されない限り、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、「その(the)」および「少なくとも1つ」は、交換可能に使用される。さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により明らかに別に示されない限り、それらの複数形を包含する。
用語「含む(includes)」または「含む(including)」が本明細書または特許請求の範囲で使用される限り、用語「含む(comprising)」が特許請求の範囲の移行語として用いられる場合に解釈されるとおりにその用語と同様に包括的であることが意図される。さらに、用語「または」が用いられる(例えば、AまたはB)限り、「AもしくはBまたは両方」を意味することが意図される。
【0015】
本明細書で使用される場合の百分率、部、および比のすべては、特に断らない限り、全組成物の質量による。限定されないが、百分率、部、および比を含めて、本明細書に開示される範囲およびパラメータのすべては、想定されるおよびその中で一部とされる任意およびすべての下位範囲、ならびに端点間のあらゆる数を包含すると理解される。例えば、「1~10」の明記された範囲は、1またはそれより大きい最小値で始まり、10またはそれより小さい最大値で終わる任意およびすべての下位範囲(例えば、1~6.1、または2.3~9.4)、ならびにその範囲内に含まれる各整数(1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10)を含むと見なされるべきである。
本明細書で使用される場合の方法(method)またはプロセス(process)ステップの任意の組み合わせは、特に断りがないか、または言及される組み合わせがなされる文脈により反対に明らかに暗示されない限り、任意の順序で行われてもよい。
本明細書に記載される組成物の様々な実施形態はまた、本明細書に記載されるいずれの任意選択または選択された成分または特徴を実質的に含まなくてもよいが、ただし、残存する組成物は、本明細書に記載されるとおりの必要な成分または特徴のすべてを依然として含むものとする。この文脈で、特に断りのない限り、用語「実質的に含まない(substantially free)」は、選択されたバインダ組成物が含有する任意選択の原料が機能量未満である、典型的にはこのような任意選択または選択された本質的原料が質量で1%未満、例えば0.5%未満、0.1%未満、またゼロパーセントであることを意味する。
本明細書に記載される組成物は、バインダ用途または関連用途で本明細書に記載されるか、またはそうでなければ有用な任意の追加または任意選択の要素のみならず、本明細書に記載されるとおりの製品および方法の本質的な要素を含み、それからなり、またはそれから本質的になってもよい。
【0016】
本発明の一般的概念は、より環境に優しいバインダ組成物に関する。ある特定の実施形態では、バインダは、水性バインダ組成物である。バインダ組成物は、典型的には金属塩およびポリオールから構成される。バインダは、繊維、例えば、グラスファイバ、ミネラルウール、炭素繊維、ならびにセルロースおよび木質系繊維を含めて、有機繊維を含む製品を形成するために使用されてもよい。
ある特定の例示的実施形態では、本発明のバインダは、少なくとも1種のポリオールを含む。ある特定の例示的実施形態では、ポリオールには、化合物、例えば、脂肪族アルコール、グリセロール、トリエタノールアミン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、未変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、およびポリアクリル酸が含まれる。ある特定の例示的実施形態では、ポリオールは、ポリマーアルコールであってもよい。本明細書で使用される場合の用語ポリオールは、脂肪族または芳香族主鎖、および少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する化合物を指すことが意図される。しかしながら、他の官能基がまた、ヒドロキシル官能基に加えて存在してもよく、またはある特定の実施形態では、官能基が同様の様式でガラス表面および金属塩と相互作用することが予想される限り、他の官能基がヒドロキシル官能基の1個もしくは複数を置き換えてもよいことを理解するべきである。したがって、用語ポリオールは、ある特定の実施形態では、ヒドロキシル官能基を少ししかまたはまったく有しないが、ポリオールに関連しており、および同様の相互作用を保持する化合物、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、および変性ポリビニルアルコールを指してもよい。用語「ポリオール」および「ポリマーアルコール」は、本明細書で交換可能に使用され、少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する化合物を指す。これらの用語は、特定の官能基による化合物を指す一方で、当業者は、多種多様な他の官能基が、他の基が、本明細書で検討される本発明の一般的概念を妨げ、または実質的に妨害しない限り、化合物中に存在してもよいことを認識する。
【0017】
ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、添加されたホルムアルデヒドを含まない。
ある特定の例示的実施形態では、本発明のバインダ組成物を用いる繊維状絶縁製品および不織マットは、既存の製造ラインを使用して製造し、それにより、時間および資金を節約することができる。
ある特定の例示的実施形態では、本明細書で提供される例示的バインダ組成物で作製された最終絶縁製品は、染料、顔料、または他の着色剤の使用を可能にして、絶縁製品のための様々な色を生じさせる所望の強熱減量(LOI)レベルで薄い色を有する。
ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物(例えば、少なくとも50%の加水分解度を有するポリビニルアルコールおよびアルミニウム塩)は、スプレーアプリケータを含めて、従来のバインダアプリケータにより適用され得る水性混合物を形成し得る。
【0018】
ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、絶縁材(例えば、絶縁性中入れ綿)、絶縁ボード、不織マット、炭素繊維製品の形成において、ならびに有機繊維、例えば、セルロースおよび木質系繊維のためのバインダとして製品における使用のために使用される。一般に、バインダは、金属塩およびポリオールを含む。
ある特定の例示的実施形態では、本発明の一般的概念は、複数の繊維、および繊維の少なくとも一部に適用され、繊維を相互に連結させるバインダ組成物を含む繊維状絶縁製品に関する。ある特定の例示的実施形態では、繊維はランダムに配向している。
ある特定の例示的実施形態では、本発明の一般的概念は、第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態で絡み合わされた、個別の長さに細断されている複数のランダムに配向したガラス繊維と、マットの第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティング、またはある特定の実施形態では、マットの第1の主要表面に少なくとも部分的に含浸するバインダ組成物とから形成される、不織マットに関する。
【0019】
ある特定の例示的実施形態では、本発明の一般的概念は、第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態で絡み合わされた複数のランダムに配向したガラス繊維と、マットの第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティング、またはある特定の実施形態では、マットの第1の主要表面に少なくとも部分的に含浸するバインダ組成物とから形成される、不織マットに関する。
ある特定の例示的実施形態では、本発明の一般的概念は、第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態での複数のランダムに配向したミネラルウール繊維と、マットの第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティング、またはある特定の実施形態では、マットの第1の主要表面に少なくとも部分的に含浸するバインダ組成物とから形成される、不織マットに関する。
【0020】
ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、少なくとも1種の金属塩を含む。ある特定の例示的実施形態では、金属は、第13族元素、ポスト遷移金属、メタロイド、または酸素に容易に配位する任意の他の金属の少なくとも1種である。ある特定の実施形態では、金属は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、亜鉛、鉄、ジルコニウム、およびチタンから選択される。ある特定の実施形態では、金属塩は、2種以上の金属、例えば、アルミニウムとジルコニウムとの組み合わせまたは錯体などを含んでもよい。ある特定の例示的実施形態では、金属塩は、アルミニウムの少なくとも1種の塩から構成される。ある特定の例示的実施形態では、金属塩は、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
ある特定の実施形態では、ポリオールは、水混和性合成ポリマーアルコールを含めて、ポリマーアルコールである。ある特定の実施形態では、ポリオールは、水溶性ポリマーアルコール、例えば、ポリビニルアルコールである。
ポリビニルアルコール(PV)=
【化1】
当業者は、PV(代わりに、PVOH)が一般に、ポリ酢酸ビニルのエステル官能基の加水分解から生じる化合物のクラスを指すことを理解する。他の材料がポリビニルアルコールを形成するために使用されてもよい一方で、一般に、PVは、ポリ酢酸ビニルへの酢酸ビニルの重合によって製造される。次いで、ポリ酢酸ビニルは、加水分解を受けて、所望の加水分解度(ポリ酢酸ビニルポリマーに対して)を有するPVを与える。したがって、様々な加水分解度を有するPVが、ポリビニルアルコールと称される一方で、当業者は、用語ポリビニルアルコールが、加水分解度により決定される正確な組成を有して、酢酸塩部分およびアルコール部分から構成される「コポリマー」を指すことを認識する。
PVを特徴付ける方法の一つは、それが加水分解される度合いへの言及による。ある特定の実施形態では、PVは、少なくとも50%の加水分解度を有する。ある特定の実施形態では、PVは、50%~98%、またはそれ以上の加水分解度を有する。ある特定の実施形態では、PVは、75%加水分解されているポリマーを含めて、80%加水分解されているポリマーを含めて、85%加水分解されているポリマーを含めて、90%加水分解されているポリマーを含めて、95%加水分解されているポリマーを含めて、98%加水分解されているポリマーを含めて、99%またはそれ以上加水分解されているポリマーを含めて、高い加水分解度を有する。
【0022】
ある特定の例示的実施形態では、PVは、加水分解後に変性されてもよい。ある特定の例示的実施形態では、ポリオールは、未変性PVである。未変性PVは、PVを作製するために加水分解されているポリ酢酸ビニルと見なされてもよく、ポリマーのヒドロキシル基のさらなる変性なしで使用される。変性ポリビニルアルコールは、PVを形成するための一次加水分解後に残存するペンダント官能基の少なくとも一部を変性させるように反応させたPVである。PVは、シランまたは酸で変性されて(またはグラフトされて)、コポリマーを形成してもよい。ある特定の実施形態では、ポリオールは、変性ポリビニルアルコールである。
PVを特徴付ける別の方法は、ある特定の百分率のPVを含有する溶液の粘度測定値による。PVの粘度は、PVの4%溶液を作製し、周囲温度(すなわち、およそ20℃)でホップラ落球粘度計を使用して粘度を測定することによって測定されてもよい。ある特定の例示的実施形態では、PVは、3センチポイズの粘度を有する。ある特定の例示的実施形態では、PVは、4センチポイズの粘度を有する。ある特定の例示的実施形態では、PVは、5センチポイズの粘度を有する。
【0023】
理論により拘束されることを望まないが、金属塩は、以下に例証されるとおりに、例えば、ガラス(例えば、グラスファイバ)のヒドロキシル官能基とポリオール(例えば、ポリビニルアルコール)のヒドロキシル基との間に配位錯体を形成し得ることが考えられる。加えて、加熱中に、金属イオンは、ガラス繊維とポリオールとの間の反応を触媒して、その2つの間の共有結合を形成し、または隣接するポリオール分子を「架橋し」得る。以下は、アルミニウム、ガラス表面、およびポリオール(例えば、ポリビニルアルコール)の間の1つの可能な相互作用を例証する代表図である。加えて、アルミニウムはまた、隣接するポリオール分子と相互作用し(以下の右に示されるとおりに)、繊維状材料の全体的強度をさらに増加させ得る。
【化2】
【0024】
この配位または架橋は、個別の成分間の三次元網状組織の形成を助け、完成製品(例えば、絶縁性中入れ綿またはボード)に追加の結合強度を与え得る。アルミニウムと原子価で電子的に同様である、ホウ素は、水性媒体中でPVと組み合わされる場合に不溶性ゲルを形成する。驚くべきことに、アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)とPVとの組み合わせは、そのようなゲル化をまったく示さず、事実、混合物をかなり長時間貯蔵した後でさえも、バインダ組成物としてガラス繊維およびミネラルウールへの適用に適する水性混合物となることが見出された。
相互作用の提案機構にもかかわらず、上記検討は、本発明のバインダとガラス基材の表面との間の相互作用に関連し、本発明のバインダ組成物は、表面でのヒドロキシル官能基なしのものを含めて、他の材料(例えば、ミネラルウールまたはスラグウール)を同様に結合し得る。
【0025】
ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、互いに特定の質量比で水性バインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:99~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:50~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:20~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:10~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:9~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:4~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、3:7~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、2:3~1:1の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:4~3:7の質量比でバインダ組成物中に存在する。ある特定の例示的実施形態では、金属塩およびポリオールは、1:4~2:3の質量比でバインダ組成物中に存在する。
【0026】
ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量(LOI)の量で繊維状絶縁製品または不織マット中に存在する。用語強熱減量は、製品を加熱してバインダを熱分解し、燃焼性の材料を放出するプロセスを指す。例えば、繊維状絶縁製品は、本明細書に記載されるある特定の方法によって調製されてもよい。次いで、製品を高熱にかけて、熱分解性材料を除去すると、例えば、グラスファイバ基材および熱分解すると予想され得ない材料が後に残る。次いで、このプロセス中に失われた質量が、製品の元の質量の百分率(すなわち、LOI)として報告される。ある特定の例示的実施形態では、強熱減量値は、非燃焼性材料、例えば、バインダからの金属塩を明らかにするために一次測定後に補正される。
ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、限定されないが、二次バインダ組成物、架橋剤、カップリング剤、耐湿気剤、ダスト抑制剤、触媒、無機酸または塩基、および有機酸または塩基の1種または複数を含めて、追加の成分を含んでもよい。バインダ組成物は、添加されたホルムアルデヒドを含まず、したがって、一般に同様のホルムアルデヒド含有バインダよりも環境に優しい。
【0027】
加えて、ある特定の例示的実施形態では、バインダは、従来の添加剤、例えば、限定されないが、腐食防止剤、染料、顔料、充填剤、着色剤、UV安定剤、熱安定剤、消泡剤、酸化防止剤、乳化剤、保存剤(例えば、安息香酸ナトリウム)、殺生物剤、および殺真菌剤の1種または複数を含有してもよい。他の添加剤が、プロセスおよび/または製品性能の改善のためにバインダ組成物に添加されてもよい。そのような添加剤には、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、静電防止剤、および/または撥水剤が含まれる。添加剤はバインダ組成物中に、痕跡量(例えば、バインダ組成物の<約0.1質量%)~バインダ組成物中の全固形分の約10質量%まで存在してもよい。ある特定の実施形態では、添加剤は、バインダ組成物中全固形分の約0.1質量%~約5質量%、約1質量%~約4質量%、または約1.5質量%~約3質量%の量で存在する。
バインダ組成物は、繊維上への適用のための活性固体を溶解または分散させるための水をさらに含んでもよい。水は、繊維へのその適用に適する粘度に水性バインダ組成物を希釈し、繊維上の所望の固体含有量を達成するのに十分な量で添加されてもよい。特に、バインダ組成物は、バインダ組成物の約50質量%~約98質量%の量で水を含有してもよい。ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、バインダ組成物の60質量%を超える量の水を含む。ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、バインダ組成物の70質量%を超える量の水を含む。ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、バインダ組成物の80質量%を超える量の水を含む。ある特定の例示的実施形態では、バインダ組成物は、バインダ組成物の90質量%~97質量%を含めて、バインダ組成物の90質量%を超える量の水を含む。
【0028】
ある例示的実施形態では、バインダ組成物は、絶縁製品を形成するため使用される。一般に、繊維状絶縁製品は、硬化熱硬化性ポリマー材料により一緒に結合されたマット化された無機繊維(例えば、グラスファイバ)から形成される。適当な無機繊維の例には、ガラスウール、ストーンウール、スラグウール、ミネラルウール、およびセラミックが含まれる。任意選択で、他の強化繊維、例えば、天然繊維および/または合成繊維(例えば、炭素繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、アラミド、および/またはポリアラミド繊維)が、例えば、ガラス繊維またはミネラルウールに加えて、またはその代わりに絶縁製品に存在してもよい。本明細書で使用される場合の用語「天然繊維」は、限定されないが、茎、種子、葉、根、または師部を含めて、植物の任意の部分から抽出された植物繊維を指す。絶縁製品は、全体的に1種類の繊維から形成されてもよいか、またはそれらは、2種以上の異なる種類の繊維の組み合わせから形成されてもよい。例えば、絶縁製品は、絶縁材に対する所望の用途に依存して、様々な種類のガラス繊維の組み合わせ、または異なる無機繊維および/もしくは天然繊維の様々な組み合わせから形成されてもよい。本明細書に記載される実施形態は、全体的にガラス繊維から形成された絶縁製品に関連している。
【0029】
ガラス繊維絶縁材の製造は、溶融ガラスを繊維化し、移動コンベヤ上で繊維状ガラス中入れ綿を直ちに形成し、繊維状ガラス中入れ綿上に適用されたバインダを硬化させて、絶縁ブランケットを形成することによって連続プロセスで行われてもよい。ガラスは、槽内で溶融され、繊維形成デバイス、例えば、繊維化スピナーに供給される。スピナーは、高速で回転される。遠心力によって、溶融ガラスは繊維化スピナーの周辺側壁中の穴を通過して、ガラス繊維を形成する。ランダムな長さのガラス繊維は、繊維化スピナーから細くされ、形成チャンバ内に配置されたブロワにより一般に下方に吹き付けられてもよい。ブロワは、繊維を下方に向きを変えて、繊維状中入れ綿を形成する。当業者は、ガラス繊維が最終製品の意図された使用に基づいて様々な直径を有してもよいことを理解する。
ガラス繊維には、形成チャンバ内を通過中に、かつ延伸操作からの高温のまま、本発明の水性バインダ組成物がスプレーされる。また、水が形成チャンバ中のガラス繊維に適用されてもよい。
【0030】
未硬化樹脂性バインダが接着したガラス繊維は、集められ、形成コンベヤの下方から繊維状パックを通した真空引きによって形成チャンバ内の形成コンベヤ上において、未硬化絶縁材パックに形成されてもよい。
次いで、形成チャンバ中のパックを通しての空気の流れのために圧縮状態にあるコーティングされた繊維状パックは、形成チャンバから出て移行ゾーンに移送され、ここで、パックは、ガラス繊維の反発弾性により垂直に膨張する。次いで、膨張した絶縁材パックは、硬化オーブン中で加熱され、ここでは、加熱空気が絶縁材パックを通って吹き付けられて、バインダ中の残存する水をすべて蒸発させ、バインダを硬化させ、繊維を一緒に固く結合させる。絶縁材パックは、圧縮されて、繊維状絶縁ブランケットを形成してもよい。絶縁ブランケットは、上面および下面を有することが理解されるべきである。ある特定の実施形態では、パックは、様々な密度のいずれか一つに圧縮されてもよい。
次いで、面仕上げ材が絶縁ブランケット上に置かれて、面層を形成してもよい。適当な面仕上げ材の非限定的例には、クラフト紙、ホイル-スクリム-クラフト紙ラミネート、再生紙、およびカレンダ加工紙が含まれる。面仕上げ材は、結合剤によって絶縁ブランケットの表面に接着されて、面仕上げ絶縁製品が形成されてもよい。適当な結合剤には、面仕上げ材にコーティングされ、またはそうでなければそれに適用され得る接着剤、ポリマー樹脂、アスファルト、および瀝青質材料が含まれる。面仕上げ繊維状絶縁材は、その後に保存および/または出荷のために巻かれてもよい。ある特定の実施形態では、面仕上げ繊維状絶縁材は、パッケージング前に切断デバイスで所定の長さに切断されてもよい。そのような面仕上げ絶縁製品は、例えば、地下仕上げシステムにおけるパネルとして、ダクト覆いとして、ダクトボードとして、面仕上げ住宅絶縁材として、およびパイプ絶縁材として使用されてもよい。
【0031】
ある例示的実施形態では、本発明のバインダ組成物は、不織マットを形成するために使用されてもよい。特に、バインダは、湿式マット加工ラインでのチョップドストランドマットの形成の間に添加される。チョップドガラス繊維は、繊維を分散させ、チョップドガラス繊維スラリーを形成するための撹拌とともに様々な界面活性剤、粘度調節剤、消泡剤、および/または他の化学薬剤を収容する混合槽への運搬のための保存容器から運搬装置に供給されてもよい。ガラス繊維スラリーは、ヘッドボックスに移送され、ここで、スラリーは運搬装置、例えば、移動スクリーンまたは小孔のあるコンベヤ上に堆積され、スラリーから水の実質的部分は、除去されて、絡み合わされた繊維のウェブ(マット)を形成する。ある特定の例示的実施形態では、水は、従来の真空または空気吸引システムによりウェブから除去されてもよい。ガラス繊維またはガラスウールに言及される一方で、マットは、非ガラス繊維、例えば、ミネラルウールから形成され、またはそれを含み得ることが理解されるべきである。当業者は、ガラス繊維以外の材料を含む絶縁製品が、絶縁製品を形成する詳細においてある特定の必要な変化を有する一方で、これらの変化は、本明細書に記載される本発明の一般的概念内に依然として入ることを理解する。
【0032】
本発明のバインダは、適当なバインダアプリケータ、例えば、スプレーアプリケータまたはカーテンコータによりウェブに適用される。一旦バインダがマットに適用されると、バインダでコーティングされたマットは、少なくとも1つの乾燥オーブンに通過させて、残存する水を除去し、バインダ組成物を硬化させる。オーブンから現れる形成された不織マットは、ランダムに配向され、分散された、個別のガラス繊維の集合体である。チョップドストランドマットは、その後の使用のために保存用の巻取りロール上に巻かれてもよい。不織マットの例示的使用には、限定されないが、屋根葺き材、床用途、天井用途、壁用途、フィルタとしての使用、地上車両における使用、および航空機における使用、が含まれる。
本発明を一般的に記載してきたが、さらなる理解は、特に断りのない限り、例証の目的のみのために提供され、すべて包括的または限定的であること意図しない、以下に例証されるある特定の実施例に対する参照により得ることができる。
【実施例0033】
(例1)
ポリビニルアルコール(PV)と塩化アルミニウム(AlCl3)との混合物(合わせてPVAl)を90:10の質量比で含むバインダ組成物を、マルトデキストリンとクエン酸との混合物を70:30の質量比で含む対照バインダ組成物(MDCA)(3.5%の次亜リン酸ナトリウムを含む)と比較した。別に示されない限り、全固形分をバインダ組成物にわたって一定に保った。バインダを用いて、以下に詳細に記載される様式でハンドシートを形成した。不織グラスファイバハンドシートを乾燥させ、475°Fで3分間硬化させた。各試料について引張り強度、LOI、および引張り強度を補正LOIで除した値(引張り強度/補正LOI)を周囲および高温/湿潤条件下で決定し、結果を図1に示す。強化繊維のLOIは、繊維からバインダの有機部分を燃焼または熱分解するのに十分な温度にグラスファイバ製品を加熱した後の質量の減少である。補正LOIは、熱分解すると予想されないバインダからのアルミニウム塩の存在について補正する。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で30分間試料をオートクレーブ中に置くことを含む。これらの結果から、ポリビニルアルコールおよび塩化アルミニウムを含む本発明のバインダは、有効なグラスファイババインダを生じることが示された。
(例2)
図2は、いくつかのバインダ組成物で作られたハンドシートの引張り強度測定値の結果を示す。グラフは、グラフの上位および下位で第1および第2の対照バインダの結果を示す。PVおよびAlCl3(90:10)を、ポリビニルアルコールおよび硝酸アルミニウムAl(NO33(すなわち、90:10、85:15、および80:20)を含むいくつかのバインダと比較した。ハンドシートは、400°Fで3分間硬化させた。次いで、試料を実施例1に記載された手順に従って試験した。図2に示されたデータから、ポリビニルアルコールおよびアルミニウム塩を組み合わせたバインダ組成物は、ハンドシートに関して良好な性能を達成することが結論づけられた。
【0034】
(例3)
図3は、対照MDCAバインダ(次亜リン酸ナトリウムを3.5%含む)と比較した、ポリビニルアルコール単独(PVOH)、ならびに70:30の質量比でPVおよびAl(NO33(70-30PVAl)を含むバインダの動的機械分析を示すグラフである。本発明のバインダは、ポリビニルアルコール単独よりもはるかに良く、対照バインダと同程度の性能であることがグラフからわかる。図3に示されたデータから、ポリビニルアルコールおよびアルミニウム塩を組み合わせた本バインダ組成物が、動的機械分析について良好な性能を達成することが結論づけられた。
(例4)
図4は、対照MDCAバインダと比較した、70:30の質量比のPVおよびAlCl3(70-30塩化物と称する)を含むバインダの動的機械分析を示すグラフである。本発明のバインダは、対照バインダと同程度の性能であることがグラフからわかる。
【0035】
(例5)
図5は、それぞれ、70:30、80:20、および90:10の質量比でPVおよびAl(NO33を含む3種類のバインダ組成物の動的機械分析を示すグラフである。グラフは、増加するAl(NO33含有量とともに貯蔵モジュラスの改善を示す。
(例6)
図6は、70:30、80:20、および90:10の質量比でPVおよび硫酸アルミニウム(Al2(SO43)を含む3種類のバインダ組成物の動的機械分析を示すグラフである。グラフは、Al2(SO43含有量の増加とともに貯蔵モジュラスが改善することを示す。
【0036】
(例7)
図7は、ポリビニルアルコール単独(100PVと称する)および対照MDCAバインダと比較した、それぞれ、90:10および80:20の質量比でPVおよびAl(NO33を含む2種類のバインダ組成物(PVAl)の回復パーセントを示す。回復パーセントは、周囲条件で、および高温/湿潤条件下で決定した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で7日間湿度チャンバ中に試料を置くことを含む。PV含有バインダについての回復パーセントは、周囲条件下の対照バインダと同様またはそれよりも良かった。増加するアルミニウム塩含有量は、高温/湿潤性能を改善した。
(例8)
図8は、周囲および高温/湿潤条件の両方の下で、対照MDCAバインダと比較した、いくつかのアルミニウム塩と組み合わせてPVを含むバインダ組成物の回復パーセントを示す。アルミニウム塩は、塩化アルミニウム(70:30PV:Al質量比)、硝酸アルミニウム(80:20および70:30PV:Al質量比)、および硫酸アルミニウム(80:20および70:30質量比)である。回復パーセントは、周囲条件で、および高温/湿潤条件下で決定した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で7日間湿度チャンバ中に試料を置くことを含む。図8に示されたデータから、これらのバインダ処方物が、回復パーセントについて良好な性能を達成することが結論づけられた。
【0037】
(例9)
例えば、繊維状絶縁製品を形成するために使用される機械装置の腐食は、バインダシステムを比較するときに考慮すべき重要な因子である。バインダシステムのpHは、金属機械装置を腐食させる潜在性を示す。加えて、バインダシステムのpHは、成分(例えば、バインダ中の酸)が硬化プロセス中に消費され、したがって、酸性がより低い最終組成物をもたらし得るにつれて、加熱(硬化)中に変わり得る。表1は、いくつかのバインダシステムのpH測定値を三通りで示す。初期pHは、適用プロセスにおけるスプレー前のバインダ溶液のpHである。最終pHは、水中硬化後のパイロット材料の浸漬から得られた溶液のpHである。本発明のバインダシステムについてのより低い酸性での硬化は、機械腐食の潜在性が低いことを示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(例10)
図9は、2種類の本発明のバインダシステムについての、補正LOIについて調整した、最大負荷容量測定値を示すグラフである。最大負荷は、周囲条件で、および高温/湿潤条件下(実施例1について記載されたとおり)で決定した。本発明のバインダシステムは、それぞれ、90:10および80:20の質量比でPVAl(NO33を含む。本発明のバインダ組成物を、対照フェノール樹脂(PUFと称する)およびポリビニルアルコール単独と比較した。すべてのバインダシステムを、全固形分について正規化した。PVAl(NO33の80:20質量比が、対照バインダシステムと同程度、またはそれらよりも良い性能となった。
(例11)
図10は、実施例10で用いたバインダシステムについての補正LOIを示すグラフである。
(例12)
ハンドシートは、2種類のPVアルミニウム塩バインダの70:30質量比を使用して形成した。ハンドシートは、Al(NO33またはAl2(SO43を含むバインダで形成し、250°F、300°F、350°F、400°F、および450°Fの温度で硬化させた。図11は、周囲および高温/湿潤の両方の条件下での(実施例1について記載されたとおりの)ハンドシートの引張り強度測定値を示す。
(例13)
図12は、実施例12に記載されたハンドシートについての引張り強度測定値を示し、引張り強度はLOI測定値について補正されている。
【0040】
(例14)
図13は、実施例12に記載されたハンドシートについてのLOI測定値を示すグラフである。図12図13、および図14に示されたデータから、これらのバインダ処方物は、典型的には例示的な製造プロセスで使用される比較的低い温度でハンドシートに関して良好な性能を達成した。
(例15)
図14は、異なる硬化温度での2種類のバインダシステムについての回復パーセントを示すグラフである。70:30の質量比でPVAl(NO33を含むバインダ組成物を、300°F、350°F、および400°Fの温度で硬化させた。本発明のバインダを、300°Fおよび400°Fで硬化させた対照MDCAバインダと比較した。回復パーセントは、周囲および高温/湿潤の両方の条件下で測定した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で3日間湿度チャンバ中に試料を置くことを含む。
【0041】
(例16)
図15は、面積質量により正規化した回復パーセントとともに実施例14で試験したバインダについての回復パーセントを示す。
(例17)
図16は、実施例14で試験したバインダについての補正LOIを示す。図14図15、および図16に示されたデータから、MDCAのみは高い硬化温度で性能を保持する一方で、これらのバインダ処方物は、低い(300°F)および高い(400°F)硬化温度の両方でLOIについて補正する場合でさえも、回復パーセントで良好な性能を達成することが結論づけられた。
(例18)
R-15絶縁性中入れ綿を、当業者により公知の様式でいくつかのバインダ組成物を使用して製造した。図17は、周囲および高温/湿潤の両方の条件下での絶縁性中入れ綿の剛性測定値(撓み角)を示すグラフである。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で3日間オートクレーブに試料を置くことを含む。バインダ組成物は、4.65%の目標LOIで、高温(中入れ綿内で測定して415~425°F)または低温(中入れ綿内で測定して350~360°F)のいずれかで硬化させた。本発明のバインダ組成物を、対照MDCAバインダ、PAG(ポリアクリレート/グリセロール)とPVAl2(SO43との混合物、およびPAG(ポリアクリレート/グリセロール)とPVAl2(SO43との混合物と比較した。
【0042】
(例19)
実施例18に記載されたバインダ組成物で作られた絶縁性中入れ綿の結合強度を測定した。結果を図18に示す。結合強度は、周囲および高温/湿潤の両方の条件下で測定した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で3日間オートクレーブ中に試料を置くことを含む。
(例20)
図19は、実施例18に記載されたバインダ組成物で作られた絶縁性中入れ綿の引張り強度測定値を示すグラフである。引張り強度は、周囲および高温/湿潤の両方の条件下で測定した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で3日間オートクレーブ中に試料を置くことを含む。
(例21)
強熱減量平均パーセントを測定し、実施例18に記載された絶縁性中入れ綿についてアルミニウム塩の質量に対して補正した。結果を表2に示す。目標LOIは、4.65%であった。
【0043】
【表2】
【0044】
(例22)
繊維状絶縁製品が吸収する水分の量は、時間にわたる絶縁容量の減少を決定する際に重要な尺度である。水分収着率を、実施例18に記載された絶縁性中入れ綿について測定した。試料についての水分収着率測定値を、表3に示す。すべての試料は、目標値である5%の水分収着率未満であった。
【0045】
【表3】

(例23)
腐食試験は、ASTM C665の方法によって実施例18に記載された絶縁性中入れ綿試料に対して行った。この標準によれば、3種のPVOH:Al(NO33バインダ組成物は、許容される腐食性能を呈した。実施例18~実施例23に提示したデータから、本発明のバインダ組成物は、典型的な製造条件下で硬化させ、繊維状絶縁製品のためのバインダとして良好な製品性能を達成し得ることが結論づけられた。
【0046】
(例24)
ハンドシートを様々なバインダ組成物を使用して作製した。90:10の質量比でPVおよび塩化アルミニウムを含む本発明のバインダ組成物(PVAと称する)を、対照MDCAバインダ組成物と比較した。不織グラスファイバハンドシートを乾燥させ、475°Fで3分間硬化させた。各試料についての引張り強度を、周囲および高温/湿潤条件下で決定し、結果は図20に示す。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で30分間オートクレーブ中に試料を置くことを含む。
(例25)
90:10の質量比でPVおよび塩化アルミニウムを含むバインダ組成物(PVAと称する)を使用するハンドシートを作製し、様々な温度で硬化させた。各試料についての引張り強度を、周囲および高温/湿潤条件下で決定した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で30分間オートクレーブ中に試料を置くことを含む。結果を図21に示す。
【0047】
(例26)
実施例25からの結果をLOIについて補正するように調整した。引張り強度測定値/LOIについての結果を図22に示す。
(例27)
ハンドシートを様々なバインダ組成物を使用して作製した。90:10の質量比でPVおよび塩化アルミニウムを含む本発明のバインダ組成物(PVAと称する)を、対照MDCAバインダ組成物と比較した。他の処方物は、MDCAPV=マルトデキストリン、クエン酸およびポリビニルアルコール、PVCA=ポリビニルアルコールおよびクエン酸、PVSi=ポリビニルアルコールおよびケイ酸ナトリウムを含む。不織グラスファイバハンドシートを乾燥させ、425°Fで3分間硬化させた。各試料についての引張り強度を周囲および高温/湿潤条件下で決定した。次いで、引張り強度をLOIについて補正した。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%湿度で30分間オートクレーブ中に試料を置くことを含む。結果は、図23に示す。
【0048】
(例28)
図24は、対照MDCAバインダならびにポリビニルアルコールを含む2種類の追加のバインダ、すなわち、ポリビニルアルコール、没食子酸、および塩化アルミニウム(PVGAAlと称する)、ならびにポリビニルアルコール、没食子酸、硝酸鉄(PVGAFeと称する)と比較した、本発明のバインダ組成物の剛性測定値を示すグラフである。
(例29)
実施例28で試験したバインダ組成物についての平均LOIを、図25に示す。
(例30)
実施例28に記載されたバインダについての回復パーセントを、図26に示す。
(例31)~(例38)
一連のバインダ処方物を、様々な特性の比較試験のために調製した。バインダをミネラルウールに適用して、軽い密度の中入れ綿(すなわち、3ポンド/フィート3~4ポンド/フィート3)を製造した。表4は、バインダの組成物および適用中のそれぞれのバインダの流速を示す。
【0049】
【表4】
流量は、設定点中に注入された水の速度(ガロン/分)を指す。inc fanは、硬化中の絶縁材パックを通る気流速度の増加を指す。添加剤Aおよび添加剤Bは、バインダ処方物の加工および流量を改善するための加工助剤として、それぞれ、SP6およびSP6Aに含まれる。
【0050】
(例31)
図27は、表4に記載された8種類のミネラルウール中入れ綿のサグ測定値を示すグラフである。中入れ綿の寸法は、以下のとおりである:長さ=48インチ、幅=16インチ、厚さ=3インチ。サグは、中入れ綿の1つの各端部を支持し、中入れ綿の中間点の撓み(インチ)を測定することによって決定する。高温/湿潤条件は、90°Fおよび90%相対湿度で3日間である。
(例32)
引張り強さは、硬化中入れ綿を引き離すのに必要とされる力の測定値である。図28は、表4に記載された8種類のミネラルウール中入れ綿の引張り強さ測定値を示すグラフである。
(例33)
反発弾性は、中入れ綿の厚さを測定し、周囲または高温/湿潤条件のいずれかの下で所与の時間量の間ある特定の負荷で圧縮し、負荷を除去し、厚さを再測定することによって決定する。圧縮後の厚さを初期の厚さで除し、100を乗じて、反発弾性%を得る。反発弾性は、軽い密度の中入れ綿以外は、回復と同様である。図29は、表4に記載された8種類のミネラルウール中入れ綿の反発弾性測定値を示すグラフである。
【0051】
(例34)
圧縮強度は、その高さの10%、中入れ綿(ポンド/フィート2)を圧縮するのに必要とされる力の量である。図30は、表4に記載された8種類のミネラルウール中入れ綿の圧縮強度測定値を示すグラフである。
(例35)
図31は、表4に記載された8種類のバインダについてのバインダ固体の量を示すグラフである。
(例36)
ある特定のバインダシステムは、貯蔵すると挙動が異なることが知られている。バインダプレミックスは多くの場合、比較的短い貯蔵寿命を有することが知られている。図32は、貯蔵後に、20%および25%で適用された70:30PV/Al(NO33バインダシステムを用いて調製されたミネラルウールハンドシートについての引張り強度を示すグラフである。グラフからわかるように、2カ月後、本発明のバインダシステムは、性能の低下をほとんど、またはまったく示さなかった。
【0052】
(例37)
図33は、貯蔵後、PV/Al(NO33バインダシステムを用いて調製されたミネラルウールハンドシートについての引張り強度を示すグラフである。引張り強度は、バインダの量(強熱減量により測定された)について補正する。
(例38)
バインダ処方物から形成されたフィルムの動的機械分析(DMA)は、フィルムのガラス転移温度(Tg)を評価するのに役立つツールである。Tgのより高温へのシフトは、架橋を示す。図34は、PVOH単独から形成されたフィルムのDMAのプロットである。図35は、PV/Al(NO33のDMAのプロットである。Al(NO33を添加すると、フィルムのTgがより高い温度にシフトする。図36は、PV/KNO3のDMAのプロットである。アルミニウムの代わりにカリウムを用いると、PVOHフィルムにより近いTgがもたらされる。同様の測定を、酸性条件を模倣するようにリン酸を添加することによって行った。これも、PV/Al(NO33バインダシステムほど良好には働かなかった。これらの結果は両方とも、バインダシステムの全体的性能においてアルミニウムの役割が必要であることを示す。
【0053】
例からわかるとおりに、本発明のバインダ組成物は、ある特定の場合に、従来のバインダシステムのものを満たすか、または超える性能を有する絶縁性製品を製造することができる。ある特定の場合では、硬化温度の低下は、製品の品質を改善したが、統計的に有意な性能変化は呈さなかった。加工助剤、例えば、ポリエチレングリコールおよびグリセロールの添加は、ある特定の試験で製品性能を改善した。概して、本発明のバインダシステムは、高温/湿潤条件下で試験した場合、性能を犠牲にしなかった。
本発明の一般的概念について、総称的に、また特定の実施形態に関して上述してきた。本発明は、一部の好ましい実施形態であると考えられるもので示してきたが、当業者に公知の多種多様な代替案が、より広い開示の範囲内で選択され得る。本発明は、以下に示される特許請求の範囲の記載以外に、別途限定されることはない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維、および
繊維の少なくとも一部に適用されるバインダ組成物
を含む、繊維状絶縁製品であって、バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオールを含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:20~1:1の範囲であり、
前記ポリオールが、少なくとも50%加水分解されているポリビニルアルコールであり、
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在し、かつ
前記バインダ組成物は、硬化して金属塩を含む網状を形成する、繊維状絶縁製品。
【請求項2】
金属塩が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項1記載の繊維状絶縁製品。
【請求項3】
金属塩が、アルミニウムの塩である、請求項に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項4】
金属塩が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の繊維状絶縁製品。
【請求項5】
ポリビニルアルコールが、3~5センチポイズの粘度を有する、請求項1記載の繊維状絶縁製品。
【請求項6】
添加されたホルムアルデヒドを含まない、請求項1記載の繊維状絶縁製品。
【請求項7】
繊維が、ガラス繊維である、請求項1記載の繊維状絶縁製品。
【請求項8】
第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態の複数の繊維と、
前記マットの前記第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティングするバインダ組成物と
を含む、不織マットであって、前記バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:20~1:1の範囲であり、
前記ポリオールが、少なくとも50%加水分解されているポリビニルアルコールであり、
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で不織マット中に存在し、かつ
前記バインダ組成物は、硬化して金属塩を含む網状を形成する、不織マット。
【請求項9】
繊維が、ガラス繊維であり、繊維は、6.5μm~24μmの範囲内の平均直径を有する、請求項8に記載の不織マット。
【請求項10】
繊維状絶縁製品を作製する方法であって、
複数の繊維を含む繊維状ブランケットを形成する工程と、
前記維の少なくとも一部にバインダ組成物を適用する工程であって、前記バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:20~1:1の範囲内であり、かつ前記ポリオールが、少なくとも50%加水分解されているポリビニルアルコールである、工程と、
繊維状ブランケットをオーブンに通過させ、繊維状ブランケット上バインダを少なくとも部分的に硬化させて金属塩を含む網状を形成し、絶縁製品を形成する工程であって、
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在する、工程と
を含む、方法。
【請求項11】
線維が、ガラス繊維である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
繊維状絶縁材および不織マットの形成における使用のためのバインダ組成物であって、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、金属塩およびポリオールは、1:20~1:1の質量比で存在し、
前記ポリオールが、少なくとも50%加水分解されているポリビニルアルコールであり、
前記繊維状絶縁材および不織マットが、1%~25%の強熱減量の量のバインダ組成物を含有し、かつ
前記繊維状絶縁材および不織マットが、硬化して金属塩を含む網状を形成したバインダ組成物を含む、バインダ組成物。
【請求項13】
金属塩が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項1に記載の水性バインダ組成物。
【請求項14】
金属塩が、アルミニウムの塩である、請求項3に記載の水性バインダ組成物。
【請求項15】
金属塩が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の水性バインダ組成物。
【請求項16】
ポリビニルアルコールが、3~5センチポイズの粘度を有する、請求項12に記載の水性バインダ組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
例からわかるとおりに、本発明のバインダ組成物は、ある特定の場合に、従来のバインダシステムのものを満たすか、または超える性能を有する絶縁性製品を製造することができる。ある特定の場合では、硬化温度の低下は、製品の品質を改善したが、統計的に有意な性能変化は呈さなかった。加工助剤、例えば、ポリエチレングリコールおよびグリセロールの添加は、ある特定の試験で製品性能を改善した。概して、本発明のバインダシステムは、高温/湿潤条件下で試験した場合、性能を犠牲にしなかった。
本発明の一般的概念について、総称的に、また特定の実施形態に関して上述してきた。本発明は、一部の好ましい実施形態であると考えられるもので示してきたが、当業者に公知の多種多様な代替案が、より広い開示の範囲内で選択され得る。本発明は、以下に示される特許請求の範囲の記載以外に、別途限定されることはない。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕繊維状絶縁材および不織マットの形成における使用のためのバインダ組成物であって、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、金属塩およびポリオールは、1:99~1:1の質量比で存在する、バインダ組成物。
〔2〕金属塩とポリオールとの質量比が、1:9~1:1の範囲である、前記〔1〕に記載の水性バインダ組成物。
〔3〕金属塩が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、前記〔1〕に記載の水性バインダ組成物。
〔4〕金属塩が、アルミニウムの塩である、前記〔3〕に記載の水性バインダ組成物。
〔5〕金属塩が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔4〕に記載の水性バインダ組成物。
〔6〕ポリオールが、芳香族アルコール、グリセロール、ポリグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪族アルコール、未変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の水性バインダ組成物。
〔7〕ポリオールが、ポリビニルアルコールである、前記〔6〕に記載の水性バインダ組成物。
〔8〕ポリビニルアルコールが、3~5センチポイズの粘度を有する、前記〔7〕に記載の水性バインダ組成物。
〔9〕ポリビニルアルコールが、少なくとも50%加水分解されている、前記〔8〕に記載の水性バインダ組成物。
〔10〕複数の繊維、および
繊維の少なくとも一部に適用されるバインダ組成物
を含む、繊維状絶縁製品であって、バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオールを含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:99~1:1の範囲であり、かつ
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在する、繊維状絶縁製品。
〔11〕金属塩とポリオールとの質量比が、1:9~1:1の範囲である、前記〔10〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔12〕金属塩が、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、亜鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、前記〔10〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔13〕金属塩が、アルミニウムの塩である、前記〔12〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔14〕金属塩が、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、第一リン酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔13〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔15〕ポリオールが、芳香族アルコール、グリセロール、ポリグリセロール、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、脂肪族アルコール、未変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔10〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔16〕ポリオールが、ポリビニルアルコールである、前記〔15〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔17〕ポリビニルアルコールが、3~5センチポイズの粘度を有する、前記〔16〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔18〕ポリビニルアルコールが、少なくとも50%加水分解されている、前記〔17〕に記載の水性バインダ組成物。
〔19〕添加されたホルムアルデヒドを含まない、前記〔10〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔20〕繊維が、ガラス繊維である、前記〔10〕に記載の繊維状絶縁製品。
〔21〕第1の主要表面および第2の主要表面を有するマットの形態の複数の繊維と、
前記マットの前記第1の主要表面を少なくとも部分的にコーティングするバインダ組成物と
を含む、不織マットであって、前記バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:99~1:1の範囲であり、かつ
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で不織マット中に存在する、不織マット。
〔22〕繊維が、ガラス繊維であり、繊維は、6.5μm~24μmの範囲内の平均直径を有する、前記〔21〕に記載の不織マット。
〔23〕繊維状絶縁製品を作製する方法であって、
複数の繊維を含む繊維状ブランケットを形成する工程と、
前記ガラス繊維の少なくとも一部にバインダ組成物を適用する工程であって、前記バインダ組成物は、
水、
金属塩、
およびポリオール
を含み、
金属塩とポリオールとの質量比は、1:99~1:1の範囲内である、工程と、
繊維状ブランケットをオーブンに通過させて、繊維状ブランケット上のバインダを少なくとも部分的に硬化させ、絶縁製品を形成する工程であって、
バインダ組成物は、1%~25%の強熱減量の量で繊維状絶縁製品中に存在する、工程と
を含む、方法。
〔24〕線維が、ガラス繊維である、前記〔23〕に記載の方法。
【外国語明細書】