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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128518
(43)【公開日】2022-09-01
(54)【発明の名称】測距カメラ
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G01C3/06 120S
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108209
(22)【出願日】2022-07-05
(62)【分割の表示】P 2018051643の分割
【原出願日】2018-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】安食 賢
(57)【要約】
【課題】複数の画像間の平行視差を用いず、かつ、被写体への一定パターンの照射を行わずに、被写体までの距離を算出することが可能な測距カメラを提供すること。
【解決手段】測距カメラ1は、第1の光学系OS1と、第2の光学系OS2と、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像するための撮像部Sと、第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離を算出するための距離算出部4と、を備える。距離算出部4は、第1の被写体像の倍率と第2の被写体像の倍率との像倍比に基づいて、被写体100までの距離を算出する。第1の被写体像の倍率と第2の被写体像の倍率との像倍比は、被写体までの距離に応じて変化する。第1の光学系OS1の焦点距離と、第2の光学系OS2の焦点距離とは、互いに異なる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を集光し、第1の被写体像を形成するための第1の光学系と、
前記被写体からの前記光を集光し、第2の被写体像を形成するための第2の光学系と、
前記第1の光学系によって形成された前記第1の被写体像および前記第2の光学系によって形成された前記第2の被写体像を撮像するための撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記第1の被写体像および前記第2の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離を算出するための距離算出部と、を備え、
前記距離算出部は、前記第1の被写体像の倍率と前記第2の被写体像の倍率との像倍比に基づいて、前記被写体までの前記距離を算出し、
前記第1の光学系は、固定焦点光学系であり、
前記第2の光学系は、前記第2の光学系を構成するレンズの少なくとも1つが駆動可能に構成された自動焦点光学系であり、
前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比は、前記被写体までの前記距離に応じて変化し、
前記第1の光学系および前記第2の光学系は、前記第1の光学系の焦点距離と、前記第2の光学系の焦点距離とが、互いに異なるよう構成されており、これにより、前記被写体までの前記距離に応じた前記第1の被写体像の前記倍率の変化が、前記被写体までの前記距離に応じた前記第2の被写体像の前記倍率の変化と異なるようになっていることを特徴とする測距カメラ。
【請求項2】
前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比の値と、前記被写体までの距離との間には、一対一関係が成立している請求項1に記載の測距カメラ。
【請求項3】
前記距離算出部は、
前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比と、
前記第1の光学系の前記焦点距離と、
前記第2の光学系の前記焦点距離と、
前記第1の光学系の射出瞳から、無限遠に位置する前記被写体の前記第1の被写体像の結像位置までの距離と、
前記撮像部の撮像面で前記第1の被写体像がベストピントとなる場合の前記第1の光学系の前側主点から、前記被写体までの距離と、
前記第1の光学系が前記無限遠にピントが合うように構成された場合の前記第1の光学系の前記前側主点の位置からの前記第1の光学系の前記前側主点の位置のシフト量の総量と、を用いて、前記被写体までの前記距離を算出する請求項1または2に記載の測距カメラ。
【請求項4】
被写体からの光を集光し、第1の被写体像を形成するための第1の光学系と、
前記被写体からの前記光を集光し、第2の被写体像を形成するための第2の光学系と、
前記第1の光学系によって形成された前記第1の被写体像および前記第2の光学系によって形成された前記第2の被写体像を撮像するための撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記第1の被写体像および前記第2の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離を算出するための距離算出部と、を備え、
前記距離算出部は、
前記第1の被写体像の倍率と前記第2の被写体像の倍率との像倍比と、
前記第1の光学系の焦点距離と、
前記第2の光学系の焦点距離と、
前記第1の光学系の射出瞳から、無限遠に位置する前記被写体の前記第1の被写体像の結像位置までの距離と、
前記撮像部の撮像面で前記第1の被写体像がベストピントとなる場合の前記第1の光学系の前側主点から、前記被写体までの距離と、
前記第1の光学系が前記無限遠にピントが合うように構成された場合の前記第1の光学系の前記前側主点の位置からの前記第1の光学系の前記前側主点の位置のシフト量の総量と、を用いて、前記被写体までの前記距離を算出することを特徴とする測距カメラ。
【請求項5】
前記第1の光学系は、固定焦点光学系であり、
前記第2の光学系は、前記第2の光学系を構成するレンズの少なくとも1つが駆動可能に構成された自動焦点光学系である請求項4に記載の測距カメラ。
【請求項6】
前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比の値と、前記被写体までの距離との間には、一対一関係が成立している請求項4または5に記載の測距カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、被写体までの距離を測定するための測距カメラに関し、より具体的には、被写体までの距離に応じた被写体像の倍率の変化が互いに異なる少なくとも2つの光学系によって形成された少なくとも2つの被写体像の像倍比に基づいて、被写体までの距離を測定する測距カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体を撮像することにより、被写体までの距離を測定する測距カメラが提案されている。このような測距カメラとしては、被写体からの光を集光し、被写体像を形成するための光学系と、該光学系によって形成された被写体像を画像信号に変換するための撮像素子とを2対以上備えるステレオカメラ方式の測距カメラや、被写体に対して一定パターン(例えば、格子パターン)の光を照射するためのプロジェクターと、一定パターンの光が照射された被写体を撮像するための撮像系とを備えるパターン照射式の測距カメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ステレオカメラ方式の測距カメラでは、光学系と撮像素子の組み合わせを2対以上用いることにより、異なる平行視差を有する複数の画像を取得し、取得した複数の画像間の平行視差に基づいて、被写体までの距離を算出する。複数の画像間の平行視差に基づいて被写体までの距離を正確に算出するためには、大きな平行視差を取得する必要がある。そのため、1つの測距カメラ内において、2つ以上の光学系を、光軸方向と直交する平行方向にそれぞれ大きく離間して配置する必要があり、測距カメラのサイズが増大してしまう。また、ステレオカメラ方式の測距カメラでは、被写体が測距カメラから非常に近い位置にある場合、得られる画像間の平行視差が重複せず、被写体までの距離を算出することができないという問題があった。
【0004】
パターン照射方式の測距カメラでは、被写体に対して一定パターンの光を照射し、被写体に投影された一定パターンの歪みを解析することにより被写体までの距離を測定している。そのため、パターン照射方式の測距カメラでは、被写体に対して一定パターンの光を照射するためのプロジェクターが必要となり、測距カメラの構成が大規模になってしまう。また、一般的に被写体に対して照射する一定パターンの光は、可視光外の波長の光であるため、パターン照射方式の測距カメラでは、特殊な光源が必要となり、通常の撮影用には使用が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-190394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、複数の画像間の平行視差を用いず、かつ、被写体への一定パターンの照射を行わずに、被写体までの距離を算出することが可能な測距カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、以下の(1)~(6)の本発明により達成される。
(1)被写体からの光を集光し、第1の被写体像を形成するための第1の光学系と、
前記被写体からの前記光を集光し、第2の被写体像を形成するための第2の光学系と、
前記第1の光学系によって形成された前記第1の被写体像および前記第2の光学系によって形成された前記第2の被写体像を撮像するための撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記第1の被写体像および前記第2の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離を算出するための距離算出部と、を備え、
前記距離算出部は、前記第1の被写体像の倍率と前記第2の被写体像の倍率との像倍比に基づいて、前記被写体までの前記距離を算出し、
前記第1の光学系は、固定焦点光学系であり、
前記第2の光学系は、前記第2の光学系を構成するレンズの少なくとも1つが駆動可能に構成された自動焦点光学系であり、
前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比は、前記被写体までの前記距離に応じて変化し、
前記第1の光学系および前記第2の光学系は、前記第1の光学系の焦点距離と、前記第2の光学系の焦点距離とが、互いに異なるよう構成されており、これにより、前記被写体までの前記距離に応じた前記第1の被写体像の前記倍率の変化が、前記被写体までの前記距離に応じた前記第2の被写体像の前記倍率の変化と異なるようになっていることを特徴とする測距カメラ。
【0008】
(2)前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比の値と、前記被写体までの距離との間には、一対一関係が成立している上記(1)に記載の測距カメラ。
【0009】
(3)前記距離算出部は、
前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比と、
前記第1の光学系の前記焦点距離と、
前記第2の光学系の前記焦点距離と、
前記第1の光学系の射出瞳から、無限遠に位置する前記被写体の前記第1の被写体像の結像位置までの距離と、
前記撮像部の撮像面で前記第1の被写体像がベストピントとなる場合の前記第1の光学系の前側主点から、前記被写体までの距離と、
前記第1の光学系が前記無限遠にピントが合うように構成された場合の前記第1の光学系の前記前側主点の位置からの前記第1の光学系の前記前側主点の位置のシフト量の総量と、を用いて、前記被写体までの前記距離を算出する上記(1)または(2)に記載の測距カメラ。
【0010】
(4)被写体からの光を集光し、第1の被写体像を形成するための第1の光学系と、
前記被写体からの前記光を集光し、第2の被写体像を形成するための第2の光学系と、
前記第1の光学系によって形成された前記第1の被写体像および前記第2の光学系によって形成された前記第2の被写体像を撮像するための撮像部と、
前記撮像部によって撮像された前記第1の被写体像および前記第2の被写体像に基づいて、前記被写体までの距離を算出するための距離算出部と、を備え、
前記距離算出部は、
前記第1の被写体像の倍率と前記第2の被写体像の倍率との像倍比と、
前記第1の光学系の焦点距離と、
前記第2の光学系の焦点距離と、
前記第1の光学系の射出瞳から、無限遠に位置する前記被写体の前記第1の被写体像の結像位置までの距離と、
前記撮像部の撮像面で前記第1の被写体像がベストピントとなる場合の前記第1の光学系の前側主点から、前記被写体までの距離と、
前記第1の光学系が前記無限遠にピントが合うように構成された場合の前記第1の光学系の前記前側主点の位置からの前記第1の光学系の前記前側主点の位置のシフト量の総量と、を用いて、前記被写体までの前記距離を算出することを特徴とする測距カメラ。
【0011】
(5)前記第1の光学系は、固定焦点光学系であり、
前記第2の光学系は、前記第2の光学系を構成するレンズの少なくとも1つが駆動可能に構成された自動焦点光学系である上記(4)に記載の測距カメラ。
【0012】
(6)前記第1の被写体像の前記倍率と前記第2の被写体像の前記倍率との前記像倍比の値と、前記被写体までの距離との間には、一対一関係が成立している上記(4)または(5)に記載の測距カメラ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の測距カメラでは、被写体までの距離に応じた被写体像の倍率の変化が互いに異なるよう構成された2つの光学系を用い、該2つの光学系によってそれぞれ形成された2つの被写体像の像倍比(倍率の比)に基づいて、被写体までの距離を測定することができる。そのため、本発明の測距カメラでは、従来の複数の画像間の平行視差を用いたステレオカメラ方式の測距カメラと異なり、大きな平行視差を確保する必要がないため、2つの光学系を、光軸方向と直交する平行方向において近接して配置しても、被写体までの距離を正確に算出することができる。これにより、従来のステレオカメラ方式の測距カメラと比較して、測距カメラの小型化を実現することができる。また、本発明によれば、平行視差を考慮して測距カメラを設計する必要がなくなるため、測距カメラの設計の自由度を増大させることができる。また、本発明の測距カメラでは、被写体までの距離を算出するために平行視差を用いていないため、被写体が測距カメラから非常に近い位置にあり、得られる画像間の平行視差が重複しないような場合であっても、被写体までの距離を測定することができる。
【0014】
また、本発明の測距カメラでは、従来のパターン照射方式の測距カメラと異なり、一定パターンの光を被写体に照射するプロジェクター等の特殊な光源を用いる必要がない。そのため、測距カメラのシステム構成をシンプルにすることができる。これにより、従来のパターン照射方式の測距カメラと比較して、測距カメラの小型化、軽量化、低消費電力化、および低コスト化を実現することができる。また、本発明の測距カメラでは、従来のパターン照射方式の測距カメラと異なり、可視光外の波長の光を照射するための特殊な光源を用いる必要がないため、通常の撮影を実行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の測距カメラの測距原理を説明するための図である。
図2】本発明の測距カメラの測距原理を説明するための図である。
図3】本発明の測距カメラの測距原理を説明するための図である。
図4】非合焦状態で撮像された第1の被写体像の倍率と、合焦状態で撮像された第1の被写体像の倍率との関係を説明するための図である。
図5図3に示す第1の光学系によって形成される第1の被写体像の倍率と、図2に示す第2の光学系によって形成される第2の被写体像の倍率との像倍比が、被写体までの距離に応じて変化することを説明するためのグラフである。
図6】本発明の第1実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
図9】本発明の測距カメラによって実行される測距方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本発明の測距カメラにおいて用いられている、被写体までの距離を算出するための測距原理について説明する。
【0017】
最初に、図1に示すように、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2を用いて、無限遠に位置する被写体100を撮像する場合を考える。第1の撮像系IS1は、被写体100からの光を集光して、第1の被写体像を形成するための第1の光学系OS1と、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像を撮像するための第1の撮像素子S1とを備えている。第1の光学系OS1は、固定焦点光学系であり、第1の光学系OS1のフォーカス動作は実行不可能に構成されている。そのため、第1の撮像系IS1は、固定焦点撮像系であり、第1の撮像系IS1の合焦位置は、第1の撮像系IS1の構成時に設定される第1の光学系OS1と第1の撮像素子S1との離間距離によって決定される。図1に示す例では、第1の光学系OS1および第1の撮像素子S1は、無限遠にピントが合うように構成および配置されている。
【0018】
第2の撮像系IS2は、被写体100からの光を集光して、第2の被写体像を形成するための第2の光学系OS2と、第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つ(例えば、フォーカスレンズ)を駆動することにより、第2の光学系OS2のフォーカス動作(または、オートフォーカス動作)を実行するためのレンズ駆動部AFと、第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像するための第2の撮像素子S2とを備えている。第2の光学系OS2は、自身を構成するレンズの少なくとも1つ(例えば、フォーカスレンズ)が駆動可能に構成された自動焦点光学系であり、レンズ駆動部AFによるフォーカス動作が実行可能となっている。
【0019】
第2の光学系OS2および第2の撮像素子S2は、レンズ駆動部AFが第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つを駆動する(繰り出す)ことによるフォーカス動作を実行していない初期状態において、無限遠にピントが合うように配置されている。図1に示す例では、第2の撮像系IS2のピントが無限遠に位置する被写体100に合わせられている。また、図1から明らかなように、第1の撮像素子S1の第1の光学系OS1の光軸と、第2の撮像素子S2の第2の光学系OS2の光軸は、平行であるが、一致していない。なお、図示の形態では、説明の簡略化のため、第1の光学系OS1は、第1の光学系OS1の後側主点が、第1の光学系OS1の中心位置にあるものとして概略的に示されており、同様に、第2の光学系OS2は、第2の光学系OS2の後側主点が、第2の光学系OS2の中心位置にあるものとして概略的に示されている。
【0020】
図1のように、同一の被写体距離にある被写体100を、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2で撮像すると、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の焦点距離等に関わらず、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離と、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離とは、互いに等しくなる。
【0021】
図1に示すように、被写体100が無限遠に位置し、さらに、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2のピントが無限遠に合っている場合、第1の光学系OS1の後側主点から第1の撮像素子S1の撮像面までの距離は、第1の光学系OS1の焦点距離fと等しくなり、さらに、第2の光学系OS2の後側主点から第2の撮像素子S2の撮像面までの距離は、第2の光学系OS2の焦点距離fと等しくなる。
【0022】
一方、第1の撮像系IS1のような固定焦点撮像系は、被写界深度を有効に使うためや、所望の距離に位置する被写体100を撮像する場合に、予め設定された任意の距離にピントが合うように構成されることがある。このように、任意の距離にピントが合うように構成された固定焦点撮像系である第1の撮像系IS1と、フォーカス動作(オートフォーカス動作)を実行可能な自動焦点撮像系である第2の撮像系IS2とを用いて、無限遠に位置する被写体100を撮像する場合を考える。図2には、任意の距離にピントが合うよう構成された第1の撮像系IS1と、第2の撮像系IS2とを用いて、無限遠に位置する被写体100を撮像する場合の例が示されている。
【0023】
図2に示す状態では、第1の撮像系IS1は、任意の距離にピントが合うよう構成されているので、第1の撮像系IS1の前側主点の位置は、第1の撮像系IS1が無限遠にピントが合うよう構成された場合の前側主点の位置よりも、被写体100側に、dFCだけシフトしている。また、第1の光学系OS1の後側主点から第1の撮像素子S1の撮像面までの距離は、第1の光学系OS1の焦点距離fよりも長くなっている。そのため、図2に示す状態において、第1の撮像系IS1は、非合焦状態で被写体100の撮像を実行する。一方、第2の撮像系IS2のピントは、無限遠に合っている。そのため、図2に示す状態において、第2の撮像系IS2は、合焦状態で被写体100の撮像を実行する。なお、図2中において、EPは、第1の光学系OS1の射出瞳から、無限遠に位置する被写体100の第1の被写体像の結像位置までの距離である。
【0024】
この場合、同一の被写体100を撮像しているにも関わらず、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離(被写体距離)Aと、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離(被写体距離)aは、一致しない。この2つの距離A、aの関係は、下記式(1)で表すことができる。
【0025】
【数1】
【0026】
次に、任意の距離にピントが合うよう構成された第1の撮像系IS1と、第2の撮像系IS2とを用いて、第1の光学系OS1の前側主点から距離Aだけ離れて位置(第2の光学系OS2の前側主点から距離aだけ離れて位置)する被写体100を撮像する場合を考える。図3には、任意の距離にピントが合うよう構成された第1の撮像系IS1と、第2の撮像系IS2を用いて、第1の光学系OS1の前側主点から距離Aだけ離れて位置(第2の光学系OS2の前側主点から距離aだけ離れて位置)する被写体100を撮像する場合の例が示されている。
【0027】
この場合、第1の撮像系IS1の合焦距離に、被写体100が位置していなければ、第1の撮像系IS1は、非合焦状態で被写体100の撮像を実行する。一方、第2の撮像系IS2では、レンズ駆動部AFによって第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つが被写体100側に、シフト量Δbだけ繰り出され、第2の光学系OS2のフォーカス動作(オートフォーカス動作)が実行される。そのため、第2の撮像系IS2は、合焦状態で被写体100の撮像を実行する。なお、レンズ駆動部AFによって第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つが被写体100側に繰り出され、第2の光学系OS2のフォーカス動作が実行される際、第2の光学系OS2の前側主点の位置が、被写体100側に、sだけシフトする。そのため、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離は、第2の光学系OS2のフォーカス動作実行前からシフト量sだけ少なくなる。このように、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離は、第2の光学系OS2のフォーカス動作実行によってシフト量sだけ変動するが、一度第2の光学系OS2のフォーカス動作実行が実行され、被写体100に対してピントが合わせられると、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離は、固定される。
【0028】
この第2の光学系OS2の前側主点の位置のシフト量sおよび第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つのシフト量Δbは、被写体100の位置と、第2の光学系OS2の焦点距離fとの関係によって決定される。なお、図3中において、Dは、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間の光軸方向の奥行視差である。
【0029】
この場合も図2に示す場合と同様に、同一の被写体100を撮像しているにも関わらず、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aと、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aは、一致しない。この2つの距離A、aの関係は、下記式(2)で表すことができる。
【0030】
【数2】
【0031】
また、第1の撮像系IS1の前側主点の位置のシフト量は、第1の光学系OS1と第1の撮像素子S1間の距離の変更による第1の撮像系IS1の合焦距離の調整以外の要因、例えば、第1の撮像系IS1の位置の変更によっても、変化する。第1の光学系OS1と第1の撮像素子S1間の距離の変更による第1の撮像系IS1の合焦距離の調整以外の要因を考慮した場合、上記式(2)は、下記式(3)のように表すことができる。
【0032】
【数3】
【0033】
ここで、dFCは、第1の光学系OS1と第1の撮像素子S1間の距離の変更による第1の撮像系IS1の合焦距離の調整により生じた第1の光学系OS1の前側主点の位置のシフト量であり、dは、第1の撮像系IS1の合焦距離の調整以外の要因により生じた第1の光学系OS1の前側主点の位置のシフト量であり、dallは、第1の光学系OS1の前側主点の位置のシフト量の総量であり、dall=dFC+dで表される。
【0034】
一方、第2の撮像系IS2の第2の光学系OS2の前側主点のシフト量sは、レンズの公式から、下記式(4)で表すことができる。
【0035】
【数4】
【0036】
第1の光学系OS1は、固定焦点光学系であるため、第1の撮像系IS1の合焦距離は、第1の撮像系IS1の構成時に固定される。そのため、被写体100が第1の撮像系IS1の合焦距離に位置している場合以外は、第1の撮像系IS1は、非合焦状態で被写体100の撮像を実行する。
【0037】
このような非合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率Mは、合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率mとは異なるものとなる。図4には、非合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率Mと、合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率mとの関係を説明するための図が示されている。
【0038】
図4には、第1の光学系OS1の焦点距離f、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が無限遠に存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EP、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が距離Aに存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EPOD1、および第1の光学系OS1の射出瞳から、第1の撮像素子S1の撮像面までの距離EPFD1が示されている。
【0039】
第1の光学系OS1の前側主点から距離Aだけ離れて位置(第2の光学系OS2の前側主点から距離aだけ離れて位置)する被写体100の第1の被写体像は、図4中の結像位置(Focal Plane)において合焦状態となり、それ以外の箇所、例えば、第1の撮像素子S1の撮像面上において非合焦状態となる。合焦状態の第1の被写体像のサイズと、非合焦状態の第1の被写体像のサイズとの比は、図4中の射出瞳を頂点とする2つの直角三角形の相似関係から、EPFD1/EPOD1で得ることができる。非合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率Mと合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率mとの比も、EPFD1/EPOD1になるので、非合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率Mは下記式(5)で表すことができる。
【0040】
【数5】
【0041】
また、合焦状態で撮像された被写体100の第1の被写体像の倍率mは、レンズの公式から、下記式(6)で表すことができる。
【0042】
【数6】
【0043】
また、第1の光学系OS1の後側主点から第1の撮像素子S1の撮像面までの距離は、レンズの公式から、(1/f-1/FC-1で表すことができる。ここで、FCは、第1の撮像系IS1の合焦距離を調整する際に用いられた任意の被写体距離(焦点調整距離)である。すなわち、被写体100が、第1の光学系OS1の前側主点から距離FCだけ離れて位置する場合、合焦状態の第1の被写体像が第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される。そうすると、図4に示す位置関係から、第1の光学系OS1の射出瞳から、第1の撮像素子S1の撮像面までの距離EPFD1を下記式(7)で表すことができる。
【0044】
【数7】
【0045】
さらに、第1の光学系OS1の後側主点から被写体100の第1の被写体像の結像位置までの距離は、レンズの公式から、(1/f-1/A)-1で表すことができる。そうすると、図4に示す位置関係から、第1の光学系OS1の射出瞳から、被写体100が距離Aに存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離EPOD1を下記式(8)で表すことができる。
【0046】
【数8】
【0047】
さらに、上記式(6)~(8)を用いて、非合焦状態で撮像された第1の被写体像の倍率Mについての上記式(5)を変形すると、下記式(9)を得ることができる。
【0048】
【数9】
【0049】
図3に戻り、第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の倍率Mを考える。上述のように、第2の撮像系IS2の第2の光学系OS2は、自動焦点光学系であり、レンズ駆動部AFは、第2の光学系OS2のフォーカス動作を実行可能である。したがって、第2の撮像系IS2が、第2の光学系OS2の前側主点から距離aだけ離れて位置する被写体100を撮像する際、レンズ駆動部AFによって第2の光学系OS2のフォーカス動作が実行され、第2の撮像系IS2のピントが距離aに位置する被写体100に合う。このように、第2の撮像系IS2は自動焦点撮像系であるため、第2の撮像系IS2は、合焦状態で、第2の光学系OS2の前側主点から距離aだけ離れて位置する被写体100を撮像する。
【0050】
合焦状態で撮像された被写体100の第2の被写体像の倍率Mは、レンズの公式から、下記式(10)で表すことができる。
【0051】
【数10】
【0052】
したがって、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率Mと、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRは、下記式(11)で表すことができる。
【0053】
【数11】
【0054】
さらに、下記式(12)~(14)で表される関係式を上記式(11)に代入すると、像倍比MRについての下記式(15)を得ることができる。
【0055】
【数12】
【0056】
【数13】
【0057】
【数14】
【0058】
【数15】
【0059】
さらに、上記式(3)で表される第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aについての関係式A=a+s-dallを上記式(15)に代入すると、像倍比MRについての下記式(16)を得ることができる。
【0060】
【数16】
【0061】
ここで、上記式(16)から、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aについての下記式(17)を得ることができる。
【0062】
【数17】
【0063】
さらに、下記式(18)および(19)で表される関係式を上記(17)に代入すると、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aについての下記式(20)を得ることができる。
【0064】
【数18】
【0065】
【数19】
【0066】
【数20】
【0067】
さらに、上記式(20)に、上記式(4)で表される第2の光学系OS2の前側主点のシフト量sについての関係式s=-f /(f-a)を代入すると、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aについての下記式(21)を得ることができる。
【0068】
【数21】
【0069】
さらに、上記式(21)を、距離aについて整理すると、下記式(22)で表される距離aについての二次方程式を得ることができる。
【0070】
【数22】
【0071】
上記式(22)の二次方程式を解くと、下記一般式(23)および(24)で表される距離aについての2つの解が得られる。
【0072】
【数23】
【0073】
【数24】
【0074】
上記一般式(23)および(24)によって表される距離aについての2つの解の内、いずれの解が距離aとして適当であるかは、以下の方法によって判別される。
【0075】
まず、上記一般式(23)によって表される解と、上記一般式(23)によって表される解が共に正の値であり、かつ、互いに等しい場合、両方の解が距離aとして適当となる。一方、上記一般式(23)によって表される解と、上記一般式(23)によって表される解とが一致しない場合は、以下の手順により、上記一般式(23)および(24)で得られる2つの解の内、いずれが距離aとして適当であるかが判別される。
【0076】
まず、上記一般式(23)で得られる解を用いて、第1の被写体像の倍率Mおよび第2の被写体像の倍率Mを計算する。次に、上記一般式(23)で得られる解を用いて計算された第1の被写体像の倍率Mおよび第2の被写体像の倍率Mから、第1の被写体像のサイズと、第2の被写体像のサイズを算出する。さらに、ここで得られた第1の被写体像のサイズと、第2の被写体像のサイズとの差分ΔSz1(以下、第1のサイズ差分ΔSz1という)を得る。
【0077】
次に、上記一般式(24)で得られる解を用いて、第1の被写体像の倍率Mおよび第2の被写体像の倍率Mを計算する。次に、上記一般式(24)で得られる解を用いて計算された第1の被写体像の倍率Mおよび第2の被写体像の倍率Mから、第1の被写体像のサイズと、第2の被写体像のサイズを算出する。さらに、ここで得られた第1の被写体像のサイズと、第2の被写体像のサイズとの差分ΔSz2(以下、第2のサイズ差分ΔSz2という)を得る。
【0078】
一方、後述するように、第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzは、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2が第1の被写体像および第2の被写体像を撮像することにより取得される、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から算出することができる。そのため、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から、算出された第1の被写体像の実際のサイズSzと、第2の被写体像の実際のサイズSzを取得し、その差分ΔSz3(以下、実際のサイズ差分ΔSz3)を得る。
【0079】
上記一般式(23)および(24)によって表される距離aについての2つの解の内、距離aとして適当な一方を用いて算出された第1の被写体像のサイズと、第2の被写体像のサイズとの差分(第1のサイズ差分ΔSz1および第2のサイズ差分ΔSz2のいずれか一方)は、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から算出された第1の被写体像の実際のサイズSzと、第2の被写体像の実際のサイズSzの差分(実際のサイズ差分ΔSz3)と等しくなる。
【0080】
一方、上記一般式(23)および(24)によって表される距離aについての2つの解の内、距離aとして不適当な一方を用いて算出された第1の被写体像のサイズと、第2の被写体像のサイズとの差分(第1のサイズ差分ΔSz1および第2のサイズ差分ΔSz2のいずれか一方)は、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から算出された第1の被写体像の実際のサイズSzと、第2の被写体像の実際のサイズSzの差分(実際のサイズ差分ΔSz3)と一致しない。
【0081】
したがって、第1のサイズ差分ΔSz1および第2のサイズ差分ΔSz2を、実際のサイズ差分ΔSz3と比較した結果、第1のサイズ差分ΔSz1が実際のサイズ差分ΔSz3と一致した場合(ΔSz1=ΔSz3の場合)には、上記一般式(23)で表される解が、距離aとして適当となる。一方、第1のサイズ差分ΔSz1および第2のサイズ差分ΔSz2を、実際のサイズ差分ΔSz3と比較した結果、第2のサイズ差分ΔSz2が実際のサイズ差分ΔSz3と一致した場合(ΔSz2=ΔSz3の場合)には、上記一般式(24)で表される解が、距離aとして適当となる。本発明においては、このような方法により、上記一般式(23)および(24)によって表される距離aについての2つの解の内、いずれの解が距離aとして適当であるかを判別している。
【0082】
また、上記一般式(23)および(24)内における係数f、K、dall、X、Yの内、第2の光学系OS2の焦点距離fは、固定値である。第1の光学系OS1の前側主点のシフト量の総量dallは、第1の光学系OS1の構成および配置時に決定される固定値である。
【0083】
係数Kは、上記式(12)K=f・{EP・(FC-f)+f }から明らかなように、第1の光学系OS1の構成および配置時に決定される固定値である第1の光学系OS1の焦点距離f、第1の光学系OS1の射出瞳から、無限遠に位置する被写体100の第1の被写体像の結像位置までの距離EP、および第1の撮像素子S1の撮像面で第1の被写体像がベストピントとなる場合の第1の光学系OS1の前側主点から、被写体100までの距離FCから得られる。したがって、係数Kは、固定値である。
【0084】
一方、係数Xは、上記式(18)X=MR・Z・fから明らかなように、像倍比MRと、上記式(13)Z=EP・(FC-f)で表される係数Zと、第2の光学系OS2の焦点距離fから得られる。第2の光学系OS2の焦点距離fは、第2の光学系OS2の構成に決定される固定値である。さらに、係数Zを得るためのEP、FC、およびfは、第1の光学系OS1の構成および配置時に決定される固定値なので、係数Zは固定値である。そうすると、像倍比MRを得ることができれば、係数Xを得ることができる。
【0085】
同様に、係数Yは、上記式(19)Y=MR・W・fから明らかなように、像倍比MRと、上記式(14)W=-f・EP・(FC-f)+f ・(FC-f)で表される係数Wと、第2の光学系OS2の焦点距離fから得られる。第2の光学系OS2の焦点距離fは、第2の光学系OS2の構成に決定される固定値である。さらに、係数Wを得るためのEP、FC、およびfは、第1の光学系OS1の構成および配置時に決定される固定値なので、係数Wは固定値である。そうすると、像倍比MRを得ることができれば、係数Yを得ることができる。
【0086】
したがって、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率Mと、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MR(=M/M)を得ることができれば、上記一般式(23)または(24)を用いて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aを算出することができる。
【0087】
図5には、上記一般式(23)および(24)に基づいて算出された、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の倍率Mと、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の倍率M、および第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRと、被写体100までの距離aとの関係の1例が示されている。図5から明らかなように、被写体100までの距離aに応じて像倍比MRの値が変化するため、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを特定することができる。
【0088】
一方、像倍比MRは、下記式(25)によって、算出することができる。下記式(25)中において、szは、被写体100のサイズ(高さまたは幅)、Szは、第1の光学系OS1によって第1の撮像素子S1の撮像面上に形成される第1の被写体像の実際のサイズ(像高または像幅)、Szは、第2の光学系OS2によって第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される第2の被写体像の実際のサイズ(像高または像幅)である。
【0089】
【数25】
【0090】
第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzは、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2が第1の被写体像および第2の被写体像を撮像することにより取得される、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から算出することができる。そのため、実際に被写体100を第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2を用いて撮像することにより得られた第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から、第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzを実測し、それに基づいて、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRを得ることができる。
【0091】
本発明の測距カメラは、上述の原理により、実測される第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzに基づいて、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRを算出し、さらに、算出した像倍比MRを用いて、被写体100までの距離aを算出する。
【0092】
なお、像倍比MRに関する上記式(11)や上記式(16)から明らかなように、第1の光学系OS1の焦点距離fが第2の光学系OS2の焦点距離fと等しく(f=f)、かつ、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間の奥行方向(光軸方向)の差Dが存在しない(D=0、すなわち、第1の光学系OS1の前側主点のシフト量の総量dallが第2の光学系OS2の前側主点のシフト量sと等しい(dall=s)、かつ、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aが第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aと等しい(A=a))場合、像倍比MRが距離aの関数として成立せず、像倍比MRは定数となる。この場合、被写体100までの距離aに応じた第1の被写体像の倍率Mの変化が、被写体100までの距離aに応じた第2の被写体像の倍率Mの変化と同一になってしまい、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出することが不可能となる。
【0093】
したがって、本発明の測距カメラでは、像倍比MRが距離aの関数として成立するための以下の第1の条件および第2の条件の少なくとも1つが満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置され、これにより、被写体100までの距離に応じた第1の被写体像の倍率Mの変化が、被写体100までの距離に応じた第2の被写体像の倍率Mの変化と異なるようになっている。
【0094】
(第1の条件)第1の光学系OS1の焦点距離fと、第2の光学系OS2の焦点距離fとが、互いに異なる(f≠f
(第2の条件)第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に光軸方向の奥行視差Dが存在する(D≠0)
【0095】
そのため、本発明の測距カメラを用いて取得された第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号から実測される第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzから像倍比MRを算出することにより、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aを算出することができる。また、上記式(3)を用いて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aから、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aを算出することができる。
【0096】
以下、上述の原理を利用して、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離a(および第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離A)を算出する本発明の測距カメラを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳述する。
【0097】
<第1実施形態>
最初に、図6を参照して本発明の測距カメラの第1実施形態を説明する。図6は、本発明の第1実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
【0098】
図6に示す測距カメラ1は、測距カメラ1の制御を行う制御部2と、被写体100からの光を集光し、第1の被写体像を形成するための第1の光学系OS1と、被写体100からの光を集光し、第2の被写体像を形成するための第2の光学系OS2と、第2の光学系OS2のフォーカス動作(または、オートフォーカス動作)を実行するためのレンズ駆動部AFと、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像するための撮像部Sと、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRと、被写体100までの距離aとを関連付ける関連付情報を記憶している関連付情報記憶部3と、撮像部Sによって撮像された第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離aを算出するための距離算出部4と、撮像部Sが取得した第1の被写体像または第2の被写体像と、距離算出部4によって算出された被写体100までの距離aとに基づいて、被写体100の3次元画像を生成するための3次元画像生成部5と、液晶パネル等の任意の情報を表示するための表示部6と、使用者による操作を入力するための操作部7と、外部デバイスとの通信を実行するための通信部8と、測距カメラ1の各コンポーネント間のデータの授受を実行するためのデータバス9と、を備えている。
【0099】
なお、本実施形態における第1の光学系OS1の構成および第2の光学系OS2の構成は、説明のための1例にすぎず、本発明はこれに限られない。第1の光学系OS1および第2の光学系OS2のそれぞれは、上述の第1の条件および第2の条件の少なくとも1つを満たし、被写体100までの距離に対する第1の被写体像の倍率Mの変化が、被写体100までの距離に対する第2の被写体像の倍率Mの変化と異なっていれば如何なる態様であってもよい。しかしながら、本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の第1の条件および第2の条件の内、第1の光学系OS1の焦点距離fと、第2の光学系OS2の焦点距離fとが、互いに異なる(f≠f)という第1の条件が満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成されていることを特徴とする。一方、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、上述の第2の条件(D≠0)を満たすように構成および配置されていない。
【0100】
本実施形態の測距カメラ1は、撮像部Sによって被写体100を撮像することにより第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRを算出し、さらに、上記一般式(23)または(24)を用いて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aを算出する。また、本実施形態の測距カメラ1は、必要な場合には、上記式(3)を用いて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aから、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aを算出する。
【0101】
以下、測距カメラ1の各コンポーネントについて詳述する。制御部2は、データバス9を介して、各コンポーネントとの間の各種データや各種指示の授受を行い、測距カメラ1の制御を実行する。制御部2は、演算処理を実行するためのプロセッサーと、測距カメラ1の制御を行うために必要なデータ、プログラム、モジュール等を保存しているメモリーとを備えており、制御部2のプロセッサーは、メモリー内に保存されているデータ、プログラム、モジュール等を用いることにより、測距カメラ1の制御を実行する。また、制御部2のプロセッサーは、測距カメラ1の各コンポーネントを用いることにより、所望の機能を提供することができる。例えば、制御部2のプロセッサーは、距離算出部4を用いることにより、撮像部Sによって撮像された第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離aを算出するための処理を実行することができる。
【0102】
制御部2のプロセッサーは、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、メモリーコントロールユニット(MCU)、画像処理用演算処理装置(GPU)、状態機械、論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの組み合わせ等のコンピューター可読命令に基づいて信号操作等の演算処理を実行する演算ユニットである。特に、制御部2のプロセッサーは、制御部2のメモリー内に保存されているコンピューター可読命令(例えば、データ、プログラム、モジュール等)をフェッチし、信号操作および制御を実行するよう構成されている。
【0103】
制御部2のメモリーは、揮発性記憶媒体(例えば、RAM、SRAM、DRAM)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリー、ハードディスク、光ディスク、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク)、またはこれらの組み合わせを含む着脱式または非着脱式のコンピューター可読媒体である。
【0104】
第1の光学系OS1は、被写体100からの光を集光し、撮像部Sの第1の撮像素子S1の撮像面上に第1の被写体像を形成する機能を有する。第2の光学系OS2は、被写体100からの光を集光し、撮像部Sの第2の撮像素子S2の撮像面上に第2の被写体像を形成するための機能を有する。第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、1つ以上のレンズと絞り等の光学素子から構成されている。また、図示のように、第1の光学系OS1の光軸と、第2の光学系OS2の光軸は、平行であるが、一致してない。
【0105】
また、第1の光学系OS1は、固定焦点光学系である。そのため、第1の光学系OS1を構成するレンズは、フォーカス動作のために駆動可能に構成されていない。一方、第2の光学系OS2は、自動焦点光学系であり、第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つ(例えば、フォーカスレンズ)は、レンズ駆動部AFによって光軸方向に駆動(繰り出し)可能に構成されている。
【0106】
上述のように、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、第1の光学系OS1の焦点距離fと、第2の光学系OS2の焦点距離fとが、互いに異なるよう(f≠f)、構成されている。これにより、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像の倍率Mの被写体100までの距離に応じた変化が、第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の倍率Mの被写体100までの距離に応じた変化と異なるように構成されている。
【0107】
レンズ駆動部AFは、制御部2のプロセッサーからの制御に応じて、第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つ(例えば、フォーカスレンズ)を光軸方向に駆動させ(繰り出し)、第2の光学系OS2のフォーカス動作(または、オートフォーカス動作)を実行する機能を有している。レンズ駆動部AFは、制御部2のプロセッサーからの制御に応じて、第2の光学系OS2のフォーカス動作を実行できれば特に限定されず、例えば、DCモーター、ステッピングモーター、ボイスコイルモーター等のアクチュエーターにより構成することができる。
【0108】
なお、制御部2のプロセッサーは、コントラストオートフォーカス技術や位相差オートフォーカス技術等の任意のオートフォーカス技術を用いて、レンズ駆動部AFを駆動し、第2の光学系OS2のフォーカス動作を実現する。
【0109】
撮像部Sは、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像を撮像し、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号を取得する機能を有している。本実施形態では、撮像部Sは、第1の被写体像を撮像し、第1の被写体像の画像信号を取得するための第1の撮像素子S1と、第2の被写体像を撮像し、第2の被写体像の画像信号を取得するための第2の撮像素子S2と、を備えている。
【0110】
第1の光学系OS1の後側主点から第1の撮像素子S1の撮像面までの離間距離は、測距カメラ1の構成時に設定される任意の距離に位置する被写体100の第1の被写体像が、第1の撮像素子S1の撮像面上に合焦状態で形成されるよう設定されている。換言すれば、測距カメラ1の構成時に設定される任意の距離にピントが合うように、第1の光学系OS1および第1の撮像素子S1が配置されている。
【0111】
一方、第2の光学系OS2の後側主点から第2の撮像素子S2の撮像面までの離間距離は、レンズ駆動部AFによる第2の光学系OS2のフォーカス動作が実行されていない初期状態(図6中において、第2の光学系OS2が点線で示されている状態)において、無限遠に位置する被写体100の第2の被写体像が、第2の撮像素子S2の撮像面上に合焦状態で形成されるよう設定されている。換言すれば、レンズ駆動部AFによる第2の光学系OS2のフォーカス動作が実行されていない初期状態において、無限遠にピントが合うように、第2の光学系OS2および第2の撮像素子S2が配置されている。したがって、初期状態において、第2の光学系OS2の後側主点から第2の撮像素子S2の撮像面までの離間距離は、第2の光学系OS2の焦点距離fと等しい。そのため、任意の距離aに被写体100が位置する場合には、制御部2のプロセッサーからの制御に応じて、レンズ駆動部AFによって第2の光学系OS2を構成するレンズの少なくとも1つ(例えば、フォーカスレンズ)が繰り出され、第2の光学系OS2の前側主点および後側主点がシフト量sだけ、被写体100側にシフトし、任意の距離aに位置する被写体100にピントが合う。
【0112】
なお、図示の形態では、第1の撮像素子S1および第1の光学系OS1が、同一の筐体内に設けられており、第2の撮像素子S2、レンズ駆動部AF、および第2の光学系OS2が、別の同一の筐体内に設けられているが、本発明はこれに限られない。第1の光学系OS1、第2の光学系OS2、レンズ駆動部AF、第1の撮像素子S1、および第2の撮像素子S2がすべて同一の筐体内に設けられているような態様も、本発明の範囲内である。
【0113】
第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2は、ベイヤー配列等の任意のパターンで配列されたRGB原色系カラーフィルターやCMY補色系カラーフィルターのようなカラーフィルターを有するカラー撮像素子であってもよいし、そのようなカラーフィルターを有さない白黒撮像素子であってもよい。
【0114】
第1の光学系OS1によって、第1の撮像素子S1の撮像面上に第1の被写体像が形成され、第1の撮像素子S1によって第1の被写体像のカラーまたは白黒の画像信号が取得される。取得された第1の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。同様に、第2の光学系OS2によって、第2の撮像素子S2の撮像面上に第2の被写体像が形成され、第2の撮像素子S2によって第2の被写体像のカラーまたは白黒の画像信号が取得される。取得された第2の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。距離算出部4に送られた第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号は、被写体100までの距離aを算出するために用いられる。一方、制御部2に送られた第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号は、表示部6による画像表示や通信部8による画像信号の通信のために用いられる。
【0115】
関連付情報記憶部3は、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MR(M/M)と、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離aとを関連付ける関連付情報を記憶するための任意の不揮発性記録媒体(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリー)である。
【0116】
関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報は、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MR(M/M)から、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離aを算出するための情報である。典型的には、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するための上記一般式(23)および(24)、並びに、該式中の第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置によって決定される上述の固定値である。
【0117】
距離算出部4は、撮像部Sによって撮像された第1の被写体像および第2の被写体像に基づいて、被写体100までの距離aを算出する機能を有している。距離算出部4は、撮像部Sの第1の撮像素子S1から第1の被写体像の画像信号を受信し、さらに、撮像部Sの第2の撮像素子S2から第2の被写体像の画像信号を受信する。
【0118】
その後、距離算出部4は、第1の被写体像の画像信号および第2の被写体像の画像信号に対して、本分野において既知のエッジ抽出処理、例えば、Canny法のようなフィルター処理を施し、第1の被写体像の画像信号内における第1の被写体像のエッジ部および第2の被写体像の画像信号内における第2の被写体像のエッジ部を抽出する。距離算出部4は、抽出した第1の被写体像のエッジ部に基づいて、第1の被写体像の実際のサイズ(像幅または像高)Szを算出し、さらに、抽出した第2の被写体像のエッジ部に基づいて、第2の被写体像の実際のサイズ(像幅または像高)Szを算出する。
【0119】
距離算出部4が、抽出した第1の被写体像のエッジ部および第2の被写体像のエッジ部に基づいて、第1の被写体像のサイズSzおよび第2の被写体像のサイズSzを算出する方法は特に限定されないが、例えば、各画像信号中において、被写体像のエッジ部の最も上側にある部分と最も下側にある部分との離間距離を被写体像の像高としてもよいし、被写体像のエッジ部の最も左側にある部分と最も右側にある部分との離間距離を被写体像の像幅としてもよい。
【0120】
その後、距離算出部4は、算出した第1の被写体像の実際のサイズSzと第2の被写体像の実際のサイズSzとの比Sz/Szを、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRとして算出する。像倍比MRが算出されると、距離算出部4は、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報に含まれる上記一般式(23)および(24)および該式中の固定値を参照し、距離aについての2つの解を得る。その後、距離算出部4は、上述した距離aについての2つの解のいずれが距離aとして適当かを判別するための方法を用いて、距離aについての2つの解のいずれか一方または双方(距離aについての2つの解が互いに等しい場合のみ)を、被写体100までの距離aとして算出(特定)する。さらに、距離算出部4は、上記式(3)を用いて、算出した第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aから、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aを算出することができる。
【0121】
3次元画像生成部5は、距離算出部4によって算出された被写体100までの距離aおよび撮像部Sが取得した被写体100の2次元画像(第1の被写体像の画像信号または第2の被写体像の画像信号)に基づいて、被写体100の3次元画像を生成する機能を有している。ここで言う「被写体100の3次元画像」とは、通常の被写体100のカラーまたは白黒の2次元画像のピクセルに対して、算出された被写体100の距離aが関連付けられているデータを意味する。
【0122】
表示部6は、液晶表示部等のパネル型表示部であり、制御部2のプロセッサーからの信号に応じて、撮像部Sによって取得された被写体100の2次元画像(第1の被写体像の画像信号または第2の被写体像の画像信号)、距離算出部4によって生成された被写体100までの距離a、3次元画像生成部5によって生成された被写体100の3次元画像のような画像、測距カメラ1を操作するための情報等が文字または画像の様態で表示部6に表示される。
【0123】
操作部7は、測距カメラ1の使用者が操作を実行するために用いられる。操作部7は、測距カメラ1の使用者が操作を実行することができれば特に限定されず、例えば、マウス、キーボード、テンキー、ボタン、ダイヤル、レバー、タッチパネル等を操作部7として用いることができる。操作部7は、測距カメラ1の使用者による操作に応じた信号を制御部2のプロセッサーに送信する。
【0124】
通信部8は、測距カメラ1に対するデータの入力または測距カメラ1から外部デバイスへのデータの出力を行う機能を有している。通信部8は、インターネットのようなネットワークに接続されていてもよい。この場合、測距カメラ1は、通信部8を用いることにより、外部に設けられたウェブサーバーやデータサーバーのような外部デバイスと通信を行うことができる。
【0125】
このように、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が、第1の光学系OS1の焦点距離fと第2の光学系OS2の焦点距離fとが、互いに異なるよう(f≠f)、構成されており、これにより、被写体100までの距離に対する第1の被写体像の倍率Mの変化と、被写体100までの距離に対する第2の被写体像の倍率Mの変化とが、互いに異なるようになっている。そのため、本発明の測距カメラ1は、複数の画像間の平行視差を用いず、かつ、被写体100への一定パターンの照射を行わずに、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MR(M/M)に基づいて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離a(および第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離A)を算出(特定)することができる。
【0126】
<第2実施形態>
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図7は、本発明の第2実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
【0127】
以下、第2実施形態の測距カメラ1について、第1実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。本実施形態の測距カメラ1は、図7に示すように、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置が変更されている点を除き、第1実施形態の測距カメラ1と同様である。
【0128】
本実施形態の測距カメラ1は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の第1の条件および第2の条件の内、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に光軸方向の奥行視差Dが存在する(D≠0)という第2の条件が満たされるよう、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されていることを特徴とする。一方、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、上述の第1の条件および第2の条件の内、第1の条件(f≠f)を満たすように構成されていない。
【0129】
このように、本実施形態の測距カメラ1では、第1の光学系OS1の前側主点と、第2の光学系OS2の前側主点との間に光軸方向の奥行視差Dが存在するよう(D≠0)、構成および配置されており、これにより、被写体100までの距離に対する第1の被写体像の倍率Mの変化と、被写体100までの距離に対する第2の被写体像の倍率Mの変化とが、互いに異なるようになっている。そのため、本実施形態の測距カメラ1は、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MR(M/M)に基づいて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aを一意に算出することができる。また、本実施形態の測距カメラ1は、上記式(3)を用いて、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aから、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aを算出することができる。
【0130】
本実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。なお、本実施形態における第1の光学系OS1の構成および第2の光学系OS2の構成および配置は、上述の第2の条件(D≠0)が満たされており、それにより、被写体100までの距離に対する第1の被写体像の倍率Mの変化と、被写体100までの距離に対する第2の被写体像の倍率Mの変化とが、互いに異なるようになっていれば、如何なる態様であってもよい。
【0131】
<第3実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第3実施形態に係る測距カメラ1について詳述する。図8は、本発明の第3実施形態に係る測距カメラを概略的に示すブロック図である。
【0132】
以下、第3実施形態の測距カメラ1について、第1実施形態および第2実施形態の測距カメラ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。第3実施形態の測距カメラ1は、図8に示すように、撮像部Sが第2の撮像素子S2のみから構成されている点、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一の筐体内に設けられている点、第1の被写体像を形成する光の波長を制限する第1の波長選択素子WS1が第1の被写体像を形成する光の光路上に設けられている点、および第2の被写体像を形成する光の波長を制限する第2の波長選択素子WS2が第2の被写体像を形成する光の光路上に設けられている点、第2の撮像素子S2がカラー撮像素子に限定される点を除き、第1実施形態の測距カメラ1と同様である。
【0133】
本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の第1の条件および第2の条件の少なくとも1つを満たすよう構成されている。すなわち、本実施形態の第1の光学系OS1および第2の光学系OS2は、上述した第1実施形態および第2実施形態の第1の光学系OS1および第2の光学系OS2のいずれか1つ、または、それらの組み合わせと同様に構成されている。
【0134】
また、図8に示すように、本実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が同一筐体内に配置されている。また、第1の光学系OS1によって集光され、第1の被写体像を形成する光の光路上に、第1の波長選択素子WS1が設けられている。さらに、第2の光学系OS2によって集光され、第2の被写体像を形成する光の光路上に、第2の波長選択素子WS2が設けられている。
【0135】
本実施形態において、第1の波長選択素子WS1は、波長選択プレート型ミラーであり、特定の波長帯域の光のみを選択的に反射する機能を有する。第2の波長選択素子WS2は、波長選択プリズム型ミラーであり、プリズムの一方の側から入射した光の波長帯域を制限し、制限された波長帯域の光のみを選択的に通過させる機能、および、プリズムの他方の側から入射した光を反射する機能を有している。第1の波長選択素子WS1および第2の波長選択素子WS2は、第1の波長選択素子WS1によって制限された光の波長帯域と、第2の波長選択素子WS2によって制限された光の波長帯域とが異なるよう、構成されている。
【0136】
第1の光学系OS1によって集光された被写体100からの光は、第1の波長選択素子WS1(波長選択プレート型ミラー)によって反射される。この際、第1の光学系OS1によって集光された光の波長帯域は、第1の波長選択素子WS1によって制限される。その後、第1の波長選択素子WS1によって反射された光は、第2の波長選択素子WS2(波長選択プリズム型ミラー)によって反射され、第2の撮像素子S2の撮像面に到達する。これにより、第1の被写体像が、第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される。なお、第2の波長選択素子WS2は、第1の被写体像を形成する光が第2の波長選択素子WS2で反射される際、第1の被写体像を形成する光の波長帯域をさらに制限するよう構成されていてもよいし、さらに制限しないよう構成されていてもよい。
【0137】
一方、第2の光学系OS2によって集光された被写体100からの光は、第2の波長選択素子WS2(波長選択プリズム型ミラー)を通過する。この際、第2の光学系OS2によって集光された光の波長帯域は、第2の波長選択素子WS2によって制限される。その後、第2の波長選択素子WS2を通過した光は、第2の撮像素子S2の撮像面に到達する。これにより、第2の被写体像が、第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される。
【0138】
したがって、本実施形態においては、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の双方が、第2の撮像素子S2の撮像面上に形成される。さらに、上述のように、第1の波長選択素子WS1によって制限された光の波長帯域と、第2の波長選択素子WS2によって制限された光の波長帯域とは異なるため、第1の被写体像を形成する光の波長帯域と、第2の被写体像を形成する光の波長帯域は互いに異なったものとなる。
【0139】
本実施形態において、第2の撮像素子S2は、ベイヤー配列のような任意のパターンで配列されたRGB原色系カラーフィルターやCMY補色系カラーフィルターのようなカラーフィルターを有するカラー撮像素子である。第1の波長選択素子WS1によって制限された光の波長帯域は、第2の撮像素子S2が有する複数のカラーフィルターのいずれか1つに対応しており、第2の波長選択素子WS2によって制限された光の波長帯域は、第2の撮像素子S2が有する複数のカラーフィルターの異なる1つに対応している。
【0140】
これにより、第2の撮像素子S2によって取得される各カラーフィルターに対応する画像信号(例えば、赤色画像信号、緑色画像信号、および青色画像信号)のいずれか1つが、第1の被写体像の画像信号に対応し、異なる1つが第2の被写体像の画像信号に対応する。そのため、第2の撮像素子S2は、第1の被写体像の画像信号と第2の被写体像の画像信号を分離して同時取得することができる。
【0141】
例えば、第1の波長選択素子WS1によって制限された光の波長帯域が、第2の撮像素子S2が有する複数のカラーフィルターの赤カラーフィルターの透過波長帯域に対応している場合、第2の撮像素子S2によって取得される赤色画像信号が、第1の被写体像の画像信号となる。一方、第2の波長選択素子WS2によって制限された光の波長帯域が、第2の撮像素子S2が有する複数のカラーフィルターの緑カラーフィルターの透過波長帯域に対応している場合、第2の撮像素子S2によって取得される緑色画像信号が、第2の被写体像の画像信号となる。
【0142】
このような態様により、撮像部Sを、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の双方を撮像する単一のカラー撮像素子(第2の撮像素子S2)で構成することができる。そのため、測距カメラ1の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0143】
なお、本実施形態では、第1の波長選択素子WS1として波長選択プレート型ミラーを用い、さらに、第2の波長選択素子WS2として波長選択プリズム型ミラーを用いたが、本発明はこれに限られない。第1の波長選択素子WS1および第2の波長選択素子WS2は、それぞれ、第1の被写体像を形成する光の波長帯域と第2の被写体像を形成する光の波長待機を制限することができれば如何なる態様であってもよい。例えば、第1の波長選択素子WS1として第1の光学系OS1の前側または後側に設けられた波長選択フィルターまたは波長選択機能を有する任意の光学部品を用い、さらに、第2の波長選択素子WS2として第2の光学系OS2の前側または後側に設けられた波長選択フィルターまたは波長選択機能を有する任意の光学部品を用いてもよい。この場合、本実施形態の第1の波長選択素子WS1が配置されている箇所に通常のミラーが配置され、第2の波長選択素子WS2が配置されている箇所に通常のプリズム型ミラーが配置される。
【0144】
また、本実施形態では、第1の波長選択素子WS1および第2の波長選択素子WS2を用いて、単一の撮像素子(第2の撮像素子S2)が第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像および第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の双方を撮像することを可能としたが、本発明はこれに限られない。例えば、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2のそれぞれの前側にシャッターが設けられ、第1の光学系OS1の前方に設けられたシャッターと第2の光学系OS2の前方に設けられたシャッターが交互に開かれることによって、単一の撮像素子(第2の撮像素子S2)が第1の被写体像および第2の被写体像の双方を個別に撮像するような態様も本発明の範囲内である。
【0145】
ここまで各実施形態を参照して詳述したように、本発明の測距カメラ1は、複数の画像間の平行視差を用いず、かつ、被写体への一定パターンの照射を行わずに、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MR(M/M)に基づいて、被写体100までの距離aを一意に算出することができる。
【0146】
そのため、本発明の測距カメラ1では、従来の複数の画像間の平行視差を用いたステレオカメラ方式の測距カメラと異なり、大きな平行視差を確保する必要がないため、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2を、光軸方向と直交する平行方向において近接して配置しても、被写体100までの距離aを正確に算出することができる。これにより、従来のステレオカメラ方式の測距カメラと比較して、測距カメラ1の小型化を実現することができる。また、平行視差を考慮して測距カメラ1を設計する必要がなくなるため、測距カメラ1の設計の自由度を増大させることができる。また、本発明の測距カメラ1では、被写体100までの距離aを算出するために平行視差を用いていないため、被写体100が測距カメラ1から非常に近い位置にあり、得られる画像間の平行視差が重複しないような場合であっても、被写体100までの距離aを測定することができる。
【0147】
また、本発明の測距カメラ1では、パターン照射方式の測距カメラと異なり、一定パターンの光を被写体に照射するプロジェクター等の特殊な光源を用いる必要がない。そのため、測距カメラ1のシステム構成をシンプルにすることができる。これにより、従来のパターン照射方式の測距カメラと比較して、測距カメラ1の小型化、軽量化、低消費電力化、および低コスト化を実現することができる。また、本発明の測距カメラ1では、従来のパターン照射方式の測距カメラと異なり、可視光外の波長の光を照射するための特殊な光源を用いる必要がないため、通常の撮影を実行することもできる。
【0148】
また、本発明の測距カメラ1では、第1の光学系OS1によって形成される第1の被写体像の倍率Mと、第2の光学系OS2によって形成される第2の被写体像の倍率Mの像倍比MR(M/M)に基づいて、被写体100までの距離aを算出する。そのため、個々の光学系および撮像部の各種パラメーター(例えば、焦点距離、射出瞳から撮像素子の撮像面までの距離)が既知であれば、これらのパラメーターが不揃いであっても、被写体100までの距離aを算出することができる。換言すれば、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2がそれぞれ異なる特性(例えば、異なる焦点距離、前側主点の位置、後側主点の位置等)を有している場合であっても、本発明によれば、そのような異なる特性の光学系によって構成された被写体像間の像倍比を用いて、被写体100までの距離aを算出することができる。
【0149】
近年、スマートフォン等の携帯デバイスにおいて、広角撮影用に用いられる広画角かつ低倍率の固定焦点光学系と、ズーム撮影用に用いられる狭画角かつ高倍率の自動焦点光学系という、互いに特性が異なる光学系を用いた撮像システムが幅広く用いられている。本発明は、このような既存の携帯デバイスにおいて広く用いられている撮像システムにも適用することができる。本発明を、互いに特性が異なる光学系を用いた既存の撮像システムに適用することにより、既存の携帯デバイスの構成を大きく変えることなく、被写体100までの距離aの測定や、被写体100の3次元画像の生成(被写体100の形状計測)が可能となる。このように、本発明によれば、既知の撮像システムによって提供される広角撮影およびズーム撮影を阻害することなく、被写体100までの距離aの測定および被写体100の3次元画像の生成(被写体100の形状計測)を実行可能とすることができる。そのため、本発明の測距カメラ1は、従来技術における測距カメラにない汎用性がある。
【0150】
なお、上記各実施形態では、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の2つの光学系が用いられているが、用いられる光学系の数はこれに限られない。例えば、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2に加え、追加的な光学系をさらに備えるような態様もまた本発明の範囲内である。この場合、追加的な光学系は、追加的な光学系によって形成される被写体像の倍率の被写体100までの距離に対する変化は、第1の被写体像の倍率Mの被写体までの距離に対する変化および第2の被写体像の倍率Mの被写体までの距離に対する変化と異なるように構成および配置されている。
【0151】
また、上述した各実施形態は、像倍比MRに基づいて被写体100までの距離aを算出するために要求される上述の第1の条件および第2の条件のいずれか1つを満たすよう第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されているが、上述の第1の条件および第2の条件の双方が満たされるように、第1の光学系OS1および第2の光学系OS2が構成および配置されている態様(例えば、図3に示すような第1の光学系OS1および第2の光学系OS2の構成および配置)も、本発明の範囲内である。
【0152】
<測距方法>
次に図9を参照して、本発明の測距カメラ1によって実行される測距方法について説明する。図9は、本発明の測距カメラによって実行される測距方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下に詳述する測距方法は、上述した本発明の第1~第3実施形態に係る測距カメラ1および測距カメラ1と同等の機能を有する任意の装置を用いて実行することができるが、説明のため、第1実施形態に係る測距カメラ1を用いて実行されるものとして説明する。
【0153】
図9に示す測距方法S100は、測距カメラ1の使用者が操作部7を用いて、被写体100までの距離aを測定するための操作を実行することにより開始される。工程S110において、撮像部Sの第1の撮像素子S1によって、第1の光学系OS1によって形成された第1の被写体像が撮像され、第1の被写体像の画像信号が取得される。第1の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。工程S120において、距離算出部4は、受信した第1の被写体像の画像信号から、第1の被写体像の実際のサイズ(像高または像幅)Szを算出する。
【0154】
一方、工程S130において、制御部2のプロセッサーからの制御に応じて、レンズ駆動部AFが駆動され、被写体100に対してピントを合わせるための第2の光学系OS2のフォーカス動作が実行される。その後、撮像部Sの第2の撮像素子S2によって、第2の光学系OS2によって形成された第2の被写体像が撮像され、第2の被写体像の画像信号が取得される。第2の被写体像の画像信号は、データバス9を介して、制御部2や距離算出部4に送られる。工程S140において、距離算出部4は、受信した第2の被写体像の画像信号から、第2の被写体像の実際のサイズ(像高または像幅)Szを算出する。
【0155】
なお、工程S110および工程S120における第1の被写体像の画像信号の取得と第1の被写体像の実際のサイズSzの算出は、工程S130および工程S140における第2の被写体像の画像信号の取得と第2の被写体像の実際のサイズSzの算出と同時に実行されてもよいし、別々に実行されてもよい。
【0156】
第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzの双方が算出されると、処理は、工程S150に移行する。工程S150において、距離算出部4は、第1の被写体像の実際のサイズSzおよび第2の被写体像の実際のサイズSzから、上記式(25)MR=Sz/Szに基づいて、第1の被写体像の倍率Mと第2の被写体像の倍率Mとの像倍比MRを算出する。
【0157】
次に、工程S160において、距離算出部4は、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報を参照し、算出した像倍比MRに基づいて、被写体100までの距離aを算出(特定)する。具体的には、像倍比MRが算出されると、距離算出部4は、関連付情報記憶部3に保存されている関連付情報に含まれる上記一般式(23)および(24)および該式中の固定値を参照し、距離aについての2つの解を得る。その後、距離算出部4は、上述した距離aについての2つの解のいずれが距離aとして適当かを判別するための方法を用いて、距離aについての2つの解のいずれか一方または双方(距離aについての2つの解が互いに等しい場合のみ)を、第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aとして算出(特定)する。工程S160において第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aが算出されると、処理は、工程S170に移行する。なお、工程S160において、距離算出部4は、上記式(3)を用いて、算出した第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aから、第1の光学系OS1の前側主点から被写体100までの距離Aをさらに算出してもよい。
【0158】
工程S170において、3次元画像生成部5が、距離算出部4によって算出された第2の光学系OS2の前側主点から被写体100までの距離aおよび撮像部Sが取得した被写体100の2次元画像(第1の被写体像の画像信号または第2の被写体像の画像信号)に基づいて、被写体100の3次元画像を生成する。その後、ここまでの工程において取得された被写体100の2次元画像、被写体100までの距離a、および/または被写体100の3次元画像が、表示部6に表示され、または通信部8によって外部デバイスに送信され、測距方法S100は終了する。
【0159】
以上、本発明の測距カメラを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明の各コンポーネントの構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、本発明の構成に任意の構成のものを付加することができる。
【0160】
本発明の属する分野および技術における当業者であれば、本発明の原理、考え方、および範囲から有意に逸脱することなく、記述された本発明の測距カメラの構成の変更を実行可能であろうし、変更された構成を有する測距カメラもまた、本発明の範囲内である。
【0161】
例えば、図6図8に示された測距カメラ1のコンポーネントの数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意のコンポーネントが追加若しくは組み合わされ、または任意のコンポーネントが削除された態様も、本発明の範囲内である。また、測距カメラ1の各コンポーネントは、ハードウェア的に実現されていてもよいし、ソフトウェア的に実現されていてもよいし、これらの組み合わせによって実現されていてもよい。
【0162】
また、図9に示された測距方法S100の工程の数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意の工程が、任意の目的で追加若しくは組み合され、または、任意の工程が削除される態様も、本発明の範囲内である。
【0163】
<利用例>
本発明の測距カメラ1の利用例は特に限定されないが、例えば、被写体のポートレートを撮像するとともに、被写体の顔の3次元画像を取得するために、測距カメラ1を用いることができる。このような利用形態では、本発明の測距カメラ1をスマートフォンや携帯電話等のモバイルデバイス内に組み込むことが好ましい。
【0164】
また、本発明の測距カメラ1は、精密機器の組み立てや検査のために用いられるハンドラーロボットにおいて利用することができる。測距カメラ1によれば、精密機器を組み立てる際に、ハンドラーロボット本体またはハンドラーロボットのアームから、精密機器または精密機器の部品までの距離を測定することができることから、ハンドラーロボットの把持部によって正確に部品を把持することができる。
【0165】
また、本発明の測距カメラ1によれば、被写体までの距離を測定することができることから、被写体の3次元情報を取得することができる。このような被写体の3次元情報は、3Dプリンターによる3次元構造体の作製に用いることができる。
【0166】
また、自動車内において、本発明の測距カメラ1を利用することにより、自動車から歩行者や障害物等の任意の物体までの距離を測定することができる。算出された任意の物体までの距離に関する情報は、自動車の自動ブレーキシステムや自動運転に用いることができる。
【符号の説明】
【0167】
1…測距カメラ 2…制御部 3…関連付情報記憶部 4…距離算出部 5…3次元画像生成部 6…表示部 7…操作部 8…通信部 9…データバス 100…被写体 AF…レンズ駆動部 IS1…第1の撮像系 IS2…第2の撮像系 OS1…第1の光学系 OS2…第2の光学系 S…撮像部 S1…第1の撮像素子 S2…第2の撮像素子 WS1…第1の波長選択素子 WS2…第2の波長選択素子 A…第1の光学系の射出瞳から被写体までの距離 a…第2の光学系の射出瞳から被写体までの距離 D…奥行視差 EP…第1の光学系の射出瞳から、被写体が無限遠にある場合の第1の被写体像の結像位置までの距離 EPFD1…第1の光学系の射出瞳から、第1の撮像素子の撮像面までの距離 EPOD1…第1の光学系の射出瞳から、被写体が距離Aに存在する場合の第1の被写体像の結像位置までの距離 M…第1の被写体像の倍率 M…第2の被写体像の倍率 MR…像倍比 dFC…第1の光学系と第1の撮像素子間の距離の変更による第1の撮像系の合焦距離の調整により生じた第1の光学系の前側主点の位置のシフト量 f…第1の光学系の焦点距離 Δb…第2の光学系を構成するレンズの少なくとも1つのシフト量 f…第2の光学系の焦点距離 s…第2の光学系の前側主点のシフト量 S100…測距方法 S110、S120、S130、S140、S150、S160、S170…工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9