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特開2022-128535錠剤コーティング方法及び錠剤コーティングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128535
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】錠剤コーティング方法及び錠剤コーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20220826BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220826BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220826BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20220826BHJP
   B05B 12/02 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
B05D1/02 H
B05D7/00 K
B05D3/00 D
B05B12/12
B05B12/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026856
(22)【出願日】2021-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】一色 利浩
(72)【発明者】
【氏名】北原 淳平
【テーマコード(参考)】
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA35
4D075AA39
4D075AA51
4D075AA59
4D075AA67
4D075AA76
4D075AA81
4D075AE01
4D075BB18Y
4D075BB23X
4D075BB33Y
4D075BB57Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA11
4D075DC30
4D075EA05
4F035AA03
4F035BA02
4F035BB01
(57)【要約】
【課題】コーティング処理におけるスプレー工程の終点を自動にて管理し、コーティング処理の無人化・省人化を図る。
【解決手段】予熱工程後コーティング前にサンプリングSP1を行い、初期錠剤重量Wiを測定し、所望のコーティング量Wcを加えて目標錠剤重量Wtgtを算出する。スプレー工程中にサンプリングSP2を行い、参照錠剤重量Wrを取得する。スプレー工程終了時にサンプリングSP3を行い、工程終了錠剤重量Wfを取得する。工程終了錠剤重量Wfが目標錠剤重量Wtgt以上であるときスプレー工程を完了させ次工程に移る。工程終了錠剤重量Wfが目標錠剤重量Wtgt未満のとき、目標錠剤重量Wtgt及び工程終了錠剤重量Wf、工程終了錠剤重量Wf及び参照錠剤重量Wrに基づいて、追加スプレー時間または追加スプレー量を決定して再スプレー処理を実施する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング装置内に収容された錠剤にコーティング液を噴霧し、前記錠剤に対しコーティング処理を行う錠剤コーティング方法であって、
前記コーティング液を噴霧する前に、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を初期錠剤重量とし、
前記初期錠剤重量に所望のコーティング量を加えて目標錠剤重量を算出し、
前記錠剤に対し前記コーティング液を噴霧するスプレー工程中に、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を参照錠剤重量とし、
前記スプレー工程終了時に、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を工程終了錠剤重量とし、
前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、
前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び前記工程終了錠剤重量、前記工程終了錠剤重量及び前記参照錠剤重量に基づいて、追加スプレー時間または追加スプレー量を決定して再スプレー処理を実施することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項2】
請求項1記載の錠剤コーティング方法において、
前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、
前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、
前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、
前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の時間に基づいて、前記追加スプレー時間を算出することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項3】
請求項1記載の錠剤コーティング方法において、
前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、
前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、
前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、
前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の前記コーティング液の噴霧量に基づいて、前記追加スプレー量を算出することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項4】
請求項1記載の錠剤コーティング方法において、
前記再スプレー処理終了後、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を新たに工程終了錠剤重量とし、
新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、
新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び新たな前記工程終了錠剤重量に基づいて、追加スプレー量または追加スプレー時間を決定して更なる再スプレー処理を実施し、
前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上になるまで、前記再スプレー処理を繰り返し実施することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の錠剤コーティング方法において、
前記初期錠剤重量の測定前に、前記錠剤を加温する予熱工程を実施することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の錠剤コーティング方法において、
前記スプレー工程は複数回に分けて実施され、前記参照錠剤重量は、最終回の前記スプレー工程にて測定されることを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項7】
回転自在に設けられた処理容器を備え、前記処理容器内に収容された錠剤にコーティング液を噴霧し、前記錠剤に対しコーティング処理を行うコーティング装置と、
前記コーティング装置から前記錠剤を採取するサンプル取得装置と、
前記サンプル取得装置によって前記コーティング装置から採取された前記錠剤の重量を測定するサンプル重量測定装置と、
前記コーティング装置、前記サンプル取得装置、及び前記サンプル重量測定装置を制御する制御装置と、を有する錠剤コーティングシステムであって、
前記制御装置は、
前記サンプル重量測定装置から取得したデータに基づいて、前記コーティング装置から採取した前記錠剤の重量を算出するサンプル重量算出部と、
前記コーティング液を噴霧するスプレー工程の開始前に採取された前記錠剤の重量を初期錠剤重量として設定する初期錠剤重量設定部と、
前記初期錠剤重量に所望のコーティング量を加えて目標錠剤重量を算出する目標錠剤重量算出部と、
前記サンプル重量算出部にて算出された前記錠剤の重量を比較する重量比較部と、
前記重量比較部における比較結果に基づいて、前記スプレー工程完了とするか、更なる追加スプレーが必要か、を判断する工程完了判定部と、
前記工程完了判定部にて、追加スプレーが必要と判断された場合、更なる追加スプレー時間または追加スプレー量を算出し、再スプレー処理を実施する終点算出指示部と、を有し、
前記重量比較部は、前記スプレー工程終了時に採取された前記錠剤の重量を示す工程終了錠剤重量と前記目標錠剤重量とを比較し、
前記工程完了判定部は、前記工程終了錠剤重量と前記目標錠剤重量の比較結果に基づき、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び前記工程終了錠剤重量、前記工程終了錠剤重量及び前記スプレー工程中に採取された前記錠剤の重量を示す参照錠剤重量に基づいて、追加スプレー時間または追加スプレー量を決定して再スプレー処理を実施することを特徴とする錠剤コーティングシステム。
【請求項8】
請求項7記載の錠剤コーティングシステムにおいて、
前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、
前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、
前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、
前記工程完了判定部は、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の時間に基づいて、前記追加スプレー時間を算出することを特徴とする錠剤コーティングシステム。
【請求項9】
請求項7記載の錠剤コーティングシステムにおいて、
前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、
前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、
前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、
前記工程完了判定部は、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の前記コーティング液の噴霧量に基づいて、前記追加スプレー量を算出することを特徴とする錠剤コーティングシステム。
【請求項10】
請求項7記載の錠剤コーティングシステムおいて、
前記工程完了判定部は、
前記再スプレー処理終了後、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を新たに工程終了錠剤重量とし、
新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、
新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び新たな前記工程終了錠剤重量に基づいて、追加スプレー量または追加スプレー時間を決定して更なる再スプレー処理を実施し、
前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上になるまで、前記再スプレー処理を繰り返し実施することを特徴とする錠剤コーティングシステム。
【請求項11】
請求項7~10の何れか1項に記載の錠剤コーティングシステムにおいて、
前記初期錠剤重量の測定前に、前記錠剤を加温する予熱工程を実施することを特徴とする錠剤コーティングシステム。
【請求項12】
請求項7~11の何れか1項に記載の錠剤コーティングシステムにおいて、
前記スプレー工程は複数回に分けて実施され、前記参照錠剤重量は、最終回の前記スプレー工程にて測定されることを特徴とする錠剤コーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤のコーティング処理に関し、特に、パンコーティング装置におけるフイルムコーティング処理の終点制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤を被処理物とするコーティング処理では、コーティング工程管理として、処理中の錠剤を採取し、そこで取得したサンプルの重量を測定することにより、コーティングの進行状況を把握している。被処理物のサンプリングは、コーティング処理の間、定期的あるいは必要に応じて行われ、コーティングパン(以下、適宜「パン」と略記する)内から一定量の錠剤サンプルを取り出して実施される。取り出されたサンプルは、その重量を測定することにより、錠剤表面のコーティング皮膜量が算出され、サンプル錠剤の重量が所定値以上となり、コーティング量が予め決めた値以上であることが確認されたところでスプレー工程完了となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2637203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコーティング処理では、サンプリングを行って錠剤を一定量取り出したとき、そのコーティング量が予め決めた値に達していない場合は、追加のスプレー時間やスプレー量をその都度作業者が設定し、そのままコーティング処理を続行している。そして、一定のサイクルにてさらにサンプリングを行い、その際の測定値に基づいてスプレー工程の終点を決定している。このため、スプレー工程では、複数回のサンプリングを行いつつ工程を管理する必要があり、コーティング処理を無人化・省人化できない一因ともなっていた。
【0005】
本発明の目的は、スプレー工程の終点を自動にて管理し、コーティング処理の無人化・省人化に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の錠剤コーティング方法は、コーティング装置内に収容された錠剤にコーティング液を噴霧し、前記錠剤に対しコーティング処理を行う錠剤コーティング方法であって、前記コーティング液を噴霧する前に、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を初期錠剤重量とし、前記初期錠剤重量に所望のコーティング量を加えて目標錠剤重量を算出し、前記錠剤に対し前記コーティング液を噴霧するスプレー工程中に、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を参照錠剤重量とし、前記スプレー工程終了時に、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を工程終了錠剤重量とし、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び前記工程終了錠剤重量、前記工程終了錠剤重量及び前記参照錠剤重量に基づいて、追加スプレー時間または追加スプレー量を決定して再スプレー処理を実施することを特徴とする。
【0007】
前記錠剤コーティング方法において、前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の時間に基づいて、前記追加スプレー時間を算出しても良い。
【0008】
また、前記錠剤コーティング方法において、前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の前記コーティング液の噴霧量に基づいて、前記追加スプレー量を算出しても良い。
【0009】
さらに、前記再スプレー処理終了後、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を新たに工程終了錠剤重量とし、新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び新たな前記工程終了錠剤重量に基づいて、追加スプレー量または追加スプレー時間を決定して更なる再スプレー処理を実施し、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上になるまで、前記再スプレー処理を繰り返し実施しても良い。
【0010】
加えて、前記初期錠剤重量の測定前に、前記錠剤を加温する予熱工程を実施しても良く、前記スプレー工程を複数回に分けて実施し、前記参照錠剤重量は、最終回の前記スプレー工程にて測定するようにしても良い。
【0011】
本発明の錠剤コーティングシステムは、回転自在に設けられた処理容器を備え、前記処理容器内に収容された錠剤にコーティング液を噴霧し、前記錠剤に対しコーティング処理を行うコーティング装置と、前記コーティング装置から前記錠剤を採取するサンプル取得装置と、前記サンプル取得装置によって前記コーティング装置から採取された前記錠剤の重量を測定するサンプル重量測定装置と、前記コーティング装置、前記サンプル取得装置、及び前記サンプル重量測定装置を制御する制御装置と、を有する錠剤コーティングシステムであって、前記制御装置は、前記サンプル重量測定装置から取得したデータに基づいて、前記コーティング装置から採取した前記錠剤の重量を算出するサンプル重量算出部と、前記コーティング液を噴霧するスプレー工程の開始前に採取された前記錠剤の重量を初期錠剤重量として設定する初期錠剤重量設定部と、前記初期錠剤重量に所望のコーティング量を加えて目標錠剤重量を算出する目標錠剤重量算出部と、前記サンプル重量算出部にて算出された前記錠剤の重量を比較する重量比較部と、前記重量比較部における比較結果に基づいて、前記スプレー工程完了とするか、更なる追加スプレーが必要か、を判断する工程完了判定部と、前記工程完了判定部にて、追加スプレーが必要と判断された場合、更なる追加スプレー時間または追加スプレー量を算出し、再スプレー処理を実施する終点算出指示部と、を有し、前記重量比較部は、前記スプレー工程終了時に採取された前記錠剤の重量を示す工程終了錠剤重量と前記目標錠剤重量とを比較し、前記工程完了判定部は、前記工程終了錠剤重量と前記目標錠剤重量の比較結果に基づき、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び前記工程終了錠剤重量、前記工程終了錠剤重量及び前記スプレー工程中に採取された前記錠剤の重量を示す参照錠剤重量に基づいて、追加スプレー時間または追加スプレー量を決定して再スプレー処理を実施することを特徴とする。
【0012】
前記錠剤コーティングシステムにおいて、前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、前記工程完了判定部は、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の時間に基づいて、前記追加スプレー時間を算出しても良い。
【0013】
また、前記錠剤コーティングシステムにおいて、前記初期錠剤重量を取得する時点を第1サンプリングポイント、前記参照錠剤重量を取得する時点を第2サンプリングポイント、前記工程終了錠剤重量を取得する時点を第3サンプリングポイント、としたとき、前記工程完了判定部は、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量と前記工程終了錠剤重量との差、前記工程終了錠剤重量と前記参照錠剤重量との差、及び前記第2サンプリングポイントと前記第3サンプリングポイントとの間の前記コーティング液の噴霧量に基づいて、前記追加スプレー量を算出しても良い。
【0014】
さらに、前記工程完了判定部は、前記再スプレー処理終了後、前記コーティング装置から前記錠剤を採取して重量を測定し、該重量を新たに工程終了錠剤重量とし、新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上であるとき、前記スプレー工程を完了させ、新たな前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量未満のとき、前記目標錠剤重量及び新たな前記工程終了錠剤重量に基づいて、追加スプレー量または追加スプレー時間を決定して更なる再スプレー処理を実施し、前記工程終了錠剤重量が前記目標錠剤重量以上になるまで、前記再スプレー処理を繰り返し実施しても良い。
【0015】
加えて、前記初期錠剤重量の測定前に、前記錠剤を加温する予熱工程を実施しても良く、前記スプレー工程を複数回に分けて実施し、前記参照錠剤重量は、最終回の前記スプレー工程にて測定するようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の錠剤コーティング方法によれば、所定のコーティング工程を終えたところで、サンプル錠剤重量とスプレー工程完了後の目標錠剤重量とを比較し、追加スプレーの要否が判断され、スプレーの追加が必要な場合には、それまでに得たサンプル錠剤重量のデータに基づいて、残りの追加スプレー時間または追加スプレー量を自動的に算出し再スプレー処理を実施するので、コーティング工程の終点を自動で制御することが可能となる。
【0017】
本発明の錠剤コーティングシステムによれば、所定のコーティング工程を終えたところで、重量比較部によりサンプル錠剤重量とスプレー工程完了後の目標錠剤重量とを比較し、工程完了判定部によって追加スプレーの要否を判断し、スプレーの追加が必要な場合には、それまでに得たサンプル錠剤重量のデータに基づいて、残りの追加スプレー時間または追加スプレー量を自動的に算出し再スプレー処理を実施するので、コーティング工程の終点を自動で制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態である錠剤コーティングシステムの構成を示す説明図である。
図2図1の錠剤コーティングシステムに使用されるパンコーティング装置の正面図である。
図3図1の錠剤コーティングシステムを制御する制御装置の構成を示すブロック図である。
図4図1の錠剤コーティングシステムにおけるコーティング処理の制御過程を示すフローチャートである。
図5】コーティング処理の終点制御過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態である錠剤コーティングシステム10の構成を示す説明図であり、本発明による錠剤コーティング方法も当該システムにて実施される。錠剤コーティングシステム10(以下、コーティングシステム10と略記する)は、パンコーティング装置1(粉粒体処理装置)によって、錠剤のフイルムコーティング処理を行うシステムであり、スプレー工程の終点が自動にて管理される。
【0020】
図1に示すように、コーティングシステム10は、パンコーティング装置1(以下、コーティング装置1と略記する)と、コーティング装置1からサンプルを取り出すサンプル取得装置31と、取り出されたサンプルを搬送しつつ所定数のサンプルを重量測定用に振り分けるサンプル搬送装置35、所定数に振り分けられたサンプルの重量を測定するサンプル重量測定装置36を備えており、制御装置41によって制御される。
【0021】
コーティング装置1からは、サンプル取得装置31によってサンプル(コーティング処理中の錠剤)が取り出される。取り出されたサンプル錠剤は、サンプル搬送装置35によって搬送されつつ所定錠数に振り分けられ、サンプル重量測定装置36に送られる。サンプル重量測定装置36では、所定錠数のサンプル錠剤の重量が測定され、そこで得られたデータは制御装置41に送られて解析される。
【0022】
制御装置41は、サンプル錠剤の重量からコーティング処理状況を検出し、各種処理条件(コーティング液のスプレー量やスプレー時間等)をフィードバック制御する。さらに、当該コーティングシステム10では、制御装置41は、サンプル錠剤の重量に基づき、予め設定したコーティング量から残りの追加スプレー時間および/または追加スプレー量を算出し、自動でコーティング工程の終点を決定する。そして、サンプル錠剤の重量が予め設定されたコーティング量を超えるまで、処理条件を自動制御する。
【0023】
コーティング装置1は、いわゆる全面パンチングタイプのコーティングパン(回転ドラム:処理容器)2を使用したジャケットレスタイプの構成となっている。コーティングパン2(以下、パン2と略記する)内には、コーティング処理の対象となる錠剤(被処理物)3が収容され、そこにコーティング液を噴霧することにより、錠剤3のコーティング処理が行われる。図1に示すように、コーティング装置1は、筐体4のパン室4a内にパン2を回転自在に設置した構成となっている。パン2は、ほぼ水平な回転軸線Oを中心に回転し、その内部には錠剤3が投入される。
【0024】
パン2は、円筒形の胴部5と、胴部5の両端に形成された円錐台状のコニカル部6とを備えている。胴部5はステンレス製の多孔板(パンチングプレート)にて形成されており、胴部5の外周は多数個の通気孔7により通気可能な構成となっている。コニカル部6はステンレス製板材にて形成されており、一方のコニカル部6の端部(図1において右側:パン2の一端側)には前面開口部8が形成されている。他方のコニカル部6の端部(図1において左側:パン2の他端側)はエンドプレート9にて閉鎖されており、回転軸11が取り付けられる。
【0025】
パン室4aの図1において左側は機械室4bとなっており、電動のドラム駆動モータを用いた図示しないドラム回転機構が配置されている。パン2の左端側(他端側)には、前述のように回転軸11が固定されており、この回転軸11には図示しないスプロケットが取り付けられている。スプロケットは、チェーンを介して筐体4内に設置されたモータ側のスプロケットと接続されている。モータを回転させると、その回転に伴ってパン2がチェーン駆動され、回転軸線Oを中心に回転する。
【0026】
図2は、コーティング装置1の正面図である。図2に示すように、筐体4の正面(図1において右側)は3分割構造となっている。筐体正面の中央には前面ドア13が、その両側にはユニットカバー14a,14bが設けられている。前面ドア13は、一方のユニットカバー14aに回動自在に支持され、筐体4に対し開閉自在に設けられている。ユニットカバー14a,14bも筐体4に対し開閉自在に設けられている。前面ドア13の正面には点検扉15が取り付けられており、また、前面ドア13の下部には、処理後の製品を取り出すための製品排出口16が設けられている。
【0027】
コーティング装置1には、パン2内に処理気体を供給する給気部17と、給気部17からパン2内に供給された処理気体をパン外に排出する排気部18が設けられている。給気部17には給気ダクト19が接続されており、図示しない送気装置から、処理気体として温風や冷風が供給される。給気部17に供給された処理気体は、前面ドア13内に形成された給気チャンバ12を介して、前面開口部8からパン2内に送給される。排気部18には排気ダクト21が接続されており、パン2から排出された処理気体は排気ダクト21を介して装置外に送出される。給気ダクト19と排気ダクト21には、それぞれ給気ダンパ22と排気ダンパ23が設けられており、パン2に対する給排気量を適宜調節できるようになっている。また、コーティング装置1では、給気ダクト19と排気ダクト21との間に、パン2を介さずに両者を連通させるバイパスダクト24が設けられている。バイパスダクト24にはバイパスダンパ25が設けられており、バイパスダンパ25の開閉により、両ダクト19,21の間の連通状態を制御できるようになっている。
【0028】
パン2内には、コーティング液噴霧用のスプレーガン26が配置されている。スプレーガン26は、ガンホルダ27に取り付けられており、パン2の前面開口部8からパン内に挿入され、装置正面側からパン内に出し入れ自在に設けられている。スプレーガン26には、ガンホルダ27内に収容された図示しないホースを介して、コーティング液や噴霧エアが供給される。スプレーガン26は、パン2内にて錠剤層面に対して垂直方向に上下移動し、パン2内の錠剤3に対し、所定のスプレー位置から所望のタイミングでコーティング液等が適宜噴霧され、コーティング処理が実施される。
【0029】
コーティング装置1にはさらに、パン2内からサンプル錠剤を取り出すサンプル取得装置31が設けられている。サンプル取得装置31は、吸引式のサンプリング装置であり、パン2内に延びる吸引管32にてパン内の錠剤3を吸引する。パン2から吸引された錠剤3は、サンプル収容室33内にサンプルとして貯留される。サンプル収容室33では、吸引停止に伴い、サンプルの自重にて底部ドア34が開き、サンプルは収容室下方に配されたサンプル搬送装置35に送給される。取り出されたサンプルは、図示しない搬送ディスクを用いたサンプル搬送装置35にて吸引搬送されつつ所定の錠数に振り分けられ、サンプル重量測定装置36に搬送される。
【0030】
サンプル重量測定装置36では、所定錠数のサンプルの重量が測定され、そこで得られたデータは制御装置41に送られ、コーティング処理条件がフィードバック制御される。前述のように、制御装置41では、自動でコーティング工程の終点を決定し、コーティング装置1を自動的に制御する。図3は、制御装置41のシステム構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置41は、システム制御手段であるCPU(中央演算装置)42と、ROM(Read Only Memory)42やRAM(Random Access Memory)43、タイマ45などを有している。
【0031】
ROM43には、本発明による制御方法を実施するためのプログラムなど、システム制御用の各種プログラムやデータが格納されている。RAM44には、コーティング処理前のサンプル錠剤の重量(初期錠剤重量Wi)や、スプレー工程完了時のサンプル錠剤の重量(目標錠剤重量Wtgt)、サンプル重量測定装置36における測定データ、スプレー量やスプレー時間などのデータが適宜書き込まれる。CPU42には、パン制御部51と、スプレー制御部52、サンプル取得制御部53、サンプル搬送制御部54、サンプル重量測定制御部55、ダンパ制御部56が設けられている。パン制御部51は、コーティング装置1内のモータを制御してパン2の回転を制御する。スプレー制御部52は、スプレーガン26を制御し、スプレーガン26からのスプレー量やスプレー時間を制御する。
【0032】
サンプル取得制御部53は、サンプル取得装置31を制御し、パン2内からサンプル錠剤を取得させる。サンプル搬送制御部54は、サンプル搬送装置35を制御し、パン2内から取得したサンプルを搬送しつつ計数し、所定量をサンプル重量測定装置36に送る。サンプル重量測定制御部55は、サンプル重量測定装置36を制御し、サンプル搬送装置35にて送られてきた所定数のサンプルの重量を測定し、そのデータを制御装置41に送る。ダンパ制御部56は、給気ダンパ22、排気ダンパ23、バイパスダンパ25を制御し、パン2における処理気体の給排気量を制御する。
【0033】
CPU42にはさらに、コーティング量設定部61、初期錠剤重量設定部62、目標錠剤重量算出部63、サンプル重量算出部64、重量比較部65、工程完了判定部66、終点算出指示部67が設けられている。コーティング量設定部61には、コーティング処理開始時に所望のコーティング量(錠剤増加重量)が入力され、例えば10mg(1錠につき、以下同じ)が「コーティング量Wc」として設定される。「コーティング量Wc」は、制御装置41に設けられた操作パネル等によって、作業者が任意に設定する。
【0034】
初期錠剤重量設定部62は、コーティング液の噴霧に先立って実施される予熱工程後のサンプル錠剤の重量を取得し、その重量を「初期錠剤重量Wi」(例えば200mg)として設定する。目標錠剤重量算出部63は、コーティング量設定部61に設定された「コーティング量Wc」と、初期錠剤重量設定部62にて取得・設定した「初期錠剤重量Wi」に基づいて、コーティング処理後の目標とする錠剤重量(目標錠剤重量Wtgt)を算出する。先の例で言えば、ここでは、「目標錠剤重量Wtgt」として、Wtgt=Wi+Wc=200+10=210mgが算出・設定される。
【0035】
サンプル重量算出部64は、サンプル重量測定装置36にて得たデータに基づき、現在のサンプル錠剤の重量を算出する。サンプル錠剤の重量は、所定錠剤数(例えば100錠)の合計値が得られることから、サンプル重量算出部64はその重量データを錠剤数で除することにより、その時点におけるサンプル錠剤の単体重量(サンプル錠剤重量)を算出・取得する。重量比較部65は、サンプル重量算出部64にて得たサンプル錠剤重量と「目標錠剤重量Wtgt」とを比較し、両者の大小を判定する。
【0036】
工程完了判定部66は、重量比較部65における比較結果に基づき、サンプル錠剤重量が「目標錠剤重量Wtgt」に達しているか否かを判定する。終点算出指示部67は、工程完了判定部66にて、サンプル錠剤重量が「目標錠剤重量Wtgt」に達していないと判定された場合、目標到達までに必要となる重量を算出し、更なる追加スプレー時間や追加スプレー量を算出し、再スプレー処理を実行する。
【0037】
このような構成からなるコーティングシステム10では、つぎのようにしてコーティング処理が実施され、処理の終点制御が行われる。図4は、コーティングシステム10におけるコーティング処理の制御過程を示すフローチャートである。図4の処理は、ROM43に格納されている制御プログラムに基づき、制御装置41によって自動で実行される。コーティングシステム10では、まず、作業者によって、処理対象となっている錠剤へのコーティング量を設定する(ステップS1、以下、ステップを略しS1のように記載する)。ここでは、制御装置41の操作パネル等によって、「コーティング量Wc」(例えば10mg)を作業者が設定する。設定された「コーティング量Wc」は、コーティング量設定部61に入力され、RAM44に格納される。
【0038】
コーティング量を設定した後、パン制御部51からの指令に基づきコーティング装置1が作動し、コーティング液の噴霧に先立ち予熱工程が実施される(S2:例えば30分)。予熱工程では、パン2を回転させつつ、ダンパ制御部56により給気ダンパ22と排気ダンパ23を開け、給気ダクト19から給気部17を介してパン2内に温風を供給し、パン2内の錠剤3を加温する。パン2内に供給された処理気体は、排気部18から排気ダクト21へと排気される。なお、予熱工程は、バイパスダンパ25を閉じた状態で実施する。
【0039】
予熱工程完了後、コーティング前の錠剤重量を初期値として得るため、第1回目のサンプリング(第1サンプリングポイント:SP1)が行われる(S3)。サンプリングに際しては、サンプル取得制御部53によりサンプル取得装置31を作動させ、パン2内から錠剤3を採取する。この場合、当該コーティングシステム10では、ダンパ制御部56の指示により、サンプリング時は、給気ダンパ22と排気ダンパ23を閉じた上でバイパスダンパ25を開け、給気ダクト19と排気ダクト21を直接連通させる(以下のサンプリング時も同様)。これにより、パン内の処理環境が維持され、サンプリングの最中に乾燥が進んだり、重量が変ってしまったりすることがなく、データの変化が抑えられる。したがって、正確なデータに基づくコーティング処理の制御、終点の設定が可能となり、製品品質の安定や向上が図られる。
【0040】
採取した錠剤サンプルは、サンプル搬送制御部54の指示に基づき、サンプル搬送装置35によって、所定数(例えば100錠)がサンプル重量測定装置36に送られる。サンプル重量測定装置36は、サンプル重量測定制御部55からの指示に基づき、サンプル錠剤の重量を測定し、初期錠剤重量設定部62に送る。初期錠剤重量設定部62は、ここで取得したサンプル錠剤重量を「初期錠剤重量Wi」として設定しRAM44に格納する(S4)。
【0041】
ステップS4にて「初期錠剤重量Wi」を得た後、ステップS5に進み、「初期錠剤重量Wi」と、S1にて入力された「コーティング量Wc」とにより、スプレー工程完了後の錠剤単体重量である「目標錠剤重量Wtgt」を算出する。「目標錠剤重量Wtgt」の算出は、目標錠剤重量算出部63にて「初期錠剤重量Wi」+「コーティング量Wc」の形で行われ(Wtgt=Wi+Wc)、例えば、200+10=210mgが「目標錠剤重量Wtgt」として算出・設定され、RAM44に格納される(S5)。
【0042】
このようにして「目標錠剤重量Wtgt」を設定した後、ステップS6,7に進み、スプレー工程を実施する。スプレー工程は、パン制御部51、スプレー制御部52、ダンパ制御部56の指示の下、所定のスプレー量、スプレー時間、パン回転数にて、処理気体(温風あるいは冷風)を適宜供給しつつ、複数回(例えば、10分・5Lを7回)に分けて実施される(スプレー工程(1)~(7))。ステップS7にて、スプレー工程が最終回(前例で言えば7回目)となったことが確認されたときは、ステップS8に進み、最終スプレー工程において所定時間が経過しているか否かが判断され(S8)、所定時間(例えば、10分間のスプレー工程にて5分間経過時点)に達している場合には、2回目のサンプリング(第2サンプリングポイント:SP2)が行われる(S9)。2回目のサンプリングを行った後、ステップS10に進み、SP2にて採取された錠剤のサンプル錠剤重量が測定され、その値は「参照錠剤重量Wr」として取得されRAM44に格納される。
【0043】
S9のサンプリングは最終スプレー工程の中盤に実施され、最終スプレー工程(ここでは7回目)が終了したところで(S11:Y)、3回目のサンプリング(第3サンプリングポイント:SP3)が行われる(S12)。3回目のサンプリングを行った後、ステップS13に進み、SP3にて採取された錠剤のサンプル錠剤重量が測定され、その値は「工程終了錠剤重量Wf」として取得されRAM44に格納される(S13)。「工程終了錠剤重量Wf」を取得した後、重量比較部65にて、S13で得た「工程終了錠剤重量Wf」と「目標錠剤重量Wtgt」が比較される(S14)。このとき、「工程終了錠剤重量Wf」が「目標錠剤重量Wtgt」に達していた場合には、工程完了判定部66により、所望のコーティング処理が行われたと判断される。そして、ステップS15に進み、終点算出指示部67によって、スプレー工程を完了させルーチンを抜ける。スプレー工程完了後、コーティングシステム10では、コーティング装置1にて次工程(乾燥工程、冷却工程)を実施する。
【0044】
一方、ステップS12にて、S13で得た「工程終了錠剤重量Wf」が「目標錠剤重量Wtgt」未満の場合には、ステップS16以下に進み、追加スプレー処理が行われる。その場合、ステップS16では、S13の「工程終了錠剤重量Wf」と、「参照錠剤重量Wr」や「目標錠剤重量Wtgt」との差に基づき、追加スプレー時間・追加スプレー量を算出する。追加スプレー時間Xt、追加スプレー量Xspは、終点算出指示部67によって、例えば、次のようにして自動で演算され(図5参照)、RAM44に格納される。
Xt=ΔW/(ΔW1/Δt)
Xsp=ΔW/(ΔW1/ΔW2)
ΔW:「目標錠剤重量Wtgt」と「工程終了錠剤重量Wf」との差
ΔW1:「工程終了錠剤重量Wf」と「参照錠剤重量Wr」との差
ΔW2:SP2時点からSP3時点の間のコーティング液スプレー量
Δt:SP2時点からSP3時点までの経過時間
【0045】
例えば、前述の例でWtgt=210mg、Wf=208mg、Wr=204mg、Δt=5分であった場合には、追加スプレー時間Xtは、
Xt=(210-208)/{(208-204)/(10-5)}
=2.5(min)
と算出される。
一方、追加スプレー量Xspは、スプレー制御部52における制御データから把握されるコーティング液スプレー量ΔW2に基づいて算出される。
【0046】
ステップS16にて、追加スプレー時間または追加スプレー量を算出した後、ステップS17に進み、終点算出指示部67の指示に基づき、スプレー制御部52によって再スプレー処理が実施され、追加分のコーティング液が噴霧される。つまり、所定回数のスプレー工程が終了した場合も、追加スプレーが必要な場合は、スプレー工程を終了させずに延長する。そして、追加スプレーが終了したところで(S18:Y)、改めてサンプリングを行い、その値を新たな「工程終了錠剤重量Wf」としてRAM44に格納する(S19)。S19にて「工程終了錠剤重量Wf」を更新した後、改めてステップS14に行き、その値と「目標錠剤重量Wtgt」とを比較する。そして、更新された「工程終了錠剤重量Wf」が「目標錠剤重量Wtgt」以上であった場合は、ステップS15に進み、スプレー工程が完了する。
【0047】
一方、ステップS14にて、更新後の「工程終了錠剤重量Wf」が未だ「目標錠剤重量Wtgt」未満だった場合は、改めてS16以下の追加スプレー処理を行う。すなわち、更新後の「工程終了錠剤重量Wf」と「目標錠剤重量Wtgt」との差に基づいて、更なる追加スプレー時間・量を算出して実行する。したがって、追加スプレー処理は、S19におけるサンプル錠剤重量をフィードバックしつつ、「工程終了錠剤重量Wf」が「目標錠剤重量Wtgt」以上となるまで、つまり、サンプル錠剤重量が予め設定されたコーティング量を超えるまで自動でコーティング工程の終点が制御される。
【0048】
このように、本発明のコーティング方法及びコーティングシステムでは、サンプル錠剤重量と予め設定した所望のコーティング量に基づき、コーティング処理のフィードバック制御を行う。そして、所定のコーティング工程を終えたところで、サンプル錠剤重量とスプレー工程完了後の目標錠剤重量とが比較され、追加スプレーの要否が判断される。この際、スプレーの追加が必要な場合には、それまでに得たサンプル錠剤重量のデータに基づいて、残りの追加スプレー時間または追加スプレー量を自動的に算出し、実施する。このため、コーティング工程の終点が自動で制御され、コーティング処理を自動で完了し、無人化・省人化に寄与することが可能となる。
【0049】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態におけるサンプル錠剤数、初期錠剤重量、コーティング量、目標錠剤重量、スプレー量、スプレー時間などは一例であり、本発明は前述の値に限定されず、錠剤の種類やコーティング剤、仕込み量等に応じてそれらの値は適宜変更可能である。また、当該システムでは、サンプル錠剤重量として、錠剤単体の重量にて各制御を行っているが、複数錠(例えば100錠)を単位としてサンプル錠剤重量を設定して制御を行っても良い。ただし、その場合も、作業者によるコーティング量の設定や、目標錠剤重量の表示などは1錠単位の数値にて行う方が分かりやすく好ましい。さらに、前述の制御形態では、サンプリングを3回行う例を示したが、サンプリングの回数は3回には限定されず、各スプレー工程終了後や、作業者の指示などにより、適宜可能である。
【0050】
加えて、前述の実施形態では、パン2から錠剤をサンプリングするに際し、吸引式のサンプル取得装置31を用いているが、サンプリング方式はこれには限定されず、圧縮空気を用いてパン2から錠剤を取り出すブローサンプリングタイプの装置や、パン2にサンプル採取口を設けそこから錠剤サンプルを取り出すタイプの装置など、任意のタイプの装置を用いることが可能である。また、サンプル搬送装置35では、錠剤の搬送をディスク吸着にて行っているが、搬送手段はディスクには限られず、例えば、ベルトコンベヤーやシュート、空気搬送など、種々の方法を使用し得る。さらに、前述のコーティング装置1では、パン2として、円筒形の胴部5を備えたものを示したが、胴部5の形状は円筒形には限定されず、例えば、断面八角形状などの多角柱状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、薬や健康食品などの錠剤以外にも、ガムやチョコレートなどの菓子や他の食品のコーティング処理にも適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 パンコーティング装置
2 コーティングパン
3 錠剤
4 筐体
4a パン室
4b 機械室
5 胴部
6 コニカル部
7 通気孔
8 前面開口部
9 エンドプレート
10 錠剤コーティングシステム
11 回転軸
12 給気チャンバ
13 前面ドア
14a,14b ユニットカバー
15 点検扉
16 製品排出口
17 給気部
18 排気部
19 給気ダクト
21 排気ダクト
22 給気ダンパ
23 排気ダンパ
24 バイパスダクト
25 バイパスダンパ
26 スプレーガン
27 ガンホルダ
31 サンプル取得装置
32 吸引管
33 サンプル収容室
34 底部ドア
35 サンプル搬送装置
36 サンプル重量測定装置
41 制御装置
42 CPU
43 ROM
44 RAM
45 タイマ
51 パン制御部
52 スプレー制御部
53 サンプル取得制御部
54 サンプル搬送制御部
55 サンプル重量測定制御部
56 ダンパ制御部
61 コーティング量設定部
62 初期錠剤重量設定部
63 目標錠剤重量算出部
64 サンプル重量算出部
65 重量比較部
66 工程完了判定部
67 終点算出指示部
O 回転軸線
Wc コーティング量
Wi 初期錠剤重量
Wtgt 目標錠剤重量
Wr 参照錠剤重量
Wf 工程終了錠剤重量
Xt 追加スプレー時間
Xsp 追加スプレー量
図1
図2
図3
図4
図5