(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128558
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】尿酸産生抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/47 20060101AFI20220826BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220826BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20220826BHJP
A61K 36/9062 20060101ALI20220826BHJP
A61K 36/70 20060101ALI20220826BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20220826BHJP
A61K 36/67 20060101ALI20220826BHJP
A61K 36/575 20060101ALI20220826BHJP
A61K 35/644 20150101ALN20220826BHJP
【FI】
A61K36/47
A23L33/105
A61P19/06
A61K36/9062
A61K36/70
A61K36/53
A61K36/67
A61K36/575
A61K35/644
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026894
(22)【出願日】2021-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】521318697
【氏名又は名称】株式会社ナチュファルマ琉球
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 章夫
(72)【発明者】
【氏名】米澤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】禹 済泰
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD18
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB22
4C087CA06
4C087CA37
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZC31
4C088AB36
4C088AB38
4C088AB43
4C088AB46
4C088AB65
4C088AB81
4C088AC01
4C088BA08
4C088BA32
4C088CA03
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZC31
(57)【要約】
【課題】 尿酸産生抑制剤、および高尿酸血症や痛風の予防又は改善用組成物、医薬、飲食物の提供
【解決手段】 月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物とそれらに由来する化合物、プロポリス由来化合物、コブシ由来化合物のうち少なくとも1種以上を有効成分とする、尿酸産生抑制剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシン、のうち少なくとも1種以上を有効成分とする、尿酸産生抑制剤。
【請求項2】
請求項1に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする高尿酸血症の予防及び/又は治療剤。
【請求項3】
請求項1に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする痛風の予防及び/又は治療剤。
【請求項4】
請求項1に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする高尿酸血症及び/又は痛風の予防及び/又は治療用の飲食物、又は健康食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿酸産生抑制剤、高尿酸血症予防または改善剤、高尿酸血症治療剤、並びにそれらを有効成分とする組成物、医薬品、飲食物、及び健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸やプリン体はヒトにおいては肝臓などで代謝されて尿酸となり、主に腎臓や腸管から排泄され、合成と排泄のバランスが保たれているが、プリン体の過剰摂取、尿酸の合成促進、尿酸の排泄低下などによって、体内の尿酸が蓄積されて、高尿酸血症を発症する。この高尿酸血症が続くと、関節内又は関節周囲に尿酸塩の結晶が沈着し、急性関節炎発作、痛風結節、関節機能障害、関節の変形等のいわゆる痛風の症状を発症し、さらに、尿路結石(尿酸結石)などの腎障害や心血管障害等、多くの合併症を引き起こす原因となる。
【0003】
キサンチンオキシダーゼは核酸代謝においてヒポキサンチンからキサンチン、さらに尿酸への変換を触媒する酵素であり、キサンチンオキシダーゼの阻害剤であるアロプリノールは痛風の治療薬として用いられてい。しかし、アロプリノールには肝障害などの副作用が知られていることから、より安全な天然由来の尿酸産生抑制剤が求められており、天然由来のキサンチンオキシダーゼ阻害剤としては、ザクロ抽出物を有効成分とする血中尿酸値低下剤などが知られている(特許文献1)。
【0004】
尿酸は主に、肝臓において、プリン体の代謝によって産生されることから、肝細胞において尿酸産生を抑制することが出来れば、高尿酸血症予防または改善剤、高尿酸血症治療剤、並びにそれらを有効成分とする組成物、医薬品、飲食物、及び健康食品として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、優れた尿酸産生抑制剤の提供であって、高尿酸血症予防または改善剤、高尿酸血症治療剤、並びにそれらを有効成分とする組成物、医薬品、飲食物、及び健康食品の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、肝細胞を用いて、前記課題を解決する食経験のある天然物素材を探索した結果、月桃抽出物及び月桃から単離した5,6-デヒドロカワイン(5,6-dehydrokawain)及びジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(dihydoro-5,6-dehydrokawain)、ギシギシ抽出物とその成分であるネポジン(nepodin)、オオバギ抽出物とその成分であるニムフェオール-A(nymphaeol-A)、ニムフェオール-B(nymphaeol-B)、ニムフェオール-C(nymphaeol-C)、イソニムフェオール-B(isonymphaeol-B)、3’-ゲラニルナリンゲニン(3’-geranyl-naringenin)、グリーンプロポリスの成分である、バッカリン(baccharin)、ドルパニン(drupanin)、アルテピリンC(Artepillin C)、クベバコショウ成分のヤテイン(yatein)、プルビアトリド(pulviatolide)、コブシ(辛夷)の成分のファルゲシン(fargesin)、コブシン(kobusin)、エピマグノリンA(epimagnolin A)、ガルグラビン(galgravin)、ベラグエンシン(veraguensin)、クミスクチン抽出物が、肝細胞において尿酸産生を抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、
本発明は以下のとおりである。
[1] 月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシン、のうち少なくとも1種以上を有効成分とする、尿酸産生抑制剤
[2] [1]に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする高尿酸血症の予防及び/又は治療剤。
[3] [1]に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする痛風の予防及び/又は治療剤。
[4] [1]に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする痛風の合併症の予防及び/又は治療剤。
[5] [1]に記載の尿酸産生抑制剤を有効成分とする高尿酸血症及び/又は痛風の予防及び/又は治療用の飲食物、又は健康食品。
[6] 高尿酸血症及び/又は痛風を予防及び/又は治療するための方法であって、
上記疾患を患っているヒトおよび動物に、 [1]~[5]に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の尿酸産生抑制剤は、肝臓をはじめとした各組織における尿酸産生を抑制する作用を有し、高尿酸血症の予防・改善用の組成物として用いることができ、痛風の予防・改善・治療用の組成物、医薬、飲食物、健康食品として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】肝細胞の尿酸産生に対するポジティブコントロールのアロプリノール(PC)、月桃抽出物(エタノール抽出物(EtOH Ex.)、90%メタノール画分(MeOH fr.)、60%アセトニトリル溶出画分(ACN fr.))、5,6-デヒドロカワイン(DK)、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(DDK)の抑制作用を示すグラフである。
【
図2】肝細胞の尿酸産生に対するポジティブコントロールのアロプリノール(PC)、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物の抑制作用を示すグラフである。
【
図3】肝細胞の尿酸産生に対するネポジン(Nep)、ヤテイン(Yat)、プルビアトリド(Plu)、バッカリン(Bac)、ドルパニン(Dru)、アルテピリンC(Art)の抑制作用を示すグラフである。
【
図4】肝細胞の尿酸産生に対するニムフェオール-A(NyA)、ニムフェオール-B(NyB)、ニムフェオール-C(NyC)、イソニムフェオール-B(IsB)、3’-ゲラニルナリンゲニン(3GN)、ファルゲシン(Far)、コブシン(Kob)、エピマグノリンA(EpA)、ガルグラビン(Gal)、ベラグエンシン(Ver)の抑制作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の尿酸産生抑制剤は、月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシン、のうち少なくとも1種以上を有効成分として含有する。
【0012】
<実施形態1:医薬組成物>
本発明によれば、
月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシン、のうち少なくとも1種以上を有効成分として含有する、高尿酸血症及び/又は痛風を予防及び/又は治療のための医薬組成物が提供される。
【0013】
前記の有効成分はそれぞれ単独で使用してもよく、任意の割合で複数を組み合わせて配合してもよい。医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤等を含んでいてもよい。また、着色料、香料、防腐剤などを含んでいてもよい。賦形剤としては例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、滑沢剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、それぞれあげられる。使用する際の形態は特に限定されず、カプセル状、粉末、粒状、タブレット状、液状などの形態とでき、また、外用剤としてクリーム、ペースト状、ジェルなどののほか、貼付剤として徐放する形態などでも用いることもできる。
【0014】
<実施形態2:飲食用組成物>
本発明の月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンは、高尿酸血症や痛風の予防や改善用のサプリメントとして用いることができ、あるいは、飲食物に混合して、又は飲食用組成物として用いることもできる。
サプリメントとして用いる場合、錠剤や顆粒の形態で用いることができ、他の有用成分と混合してもよい。
飲食用組成物として用いる場合、健康飲食品、特定保健用飲食品、機能性表示食品、栄養機能飲食品、健康補助飲食品等として供することが可能である。これらの飲食品は、生活習慣病の予防や改善に有用な機能性食品として供することができ、特定保健用飲食品、機能性表示食品やその他のサプリメント、健康飲食品等には、尿酸値を下げる、尿酸値の上昇を抑制する、等の機能を表示することができる。
【0015】
飲食用組成物は、固形物、液状、粉末、顆粒状、ペースト状等の種々の形態であり、具体的には、例えば、清涼飲料、乳酸飲料、嗜好飲料、コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの飲料品;キャンディー、チョコレート、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類などの菓子類;果実飲料、野菜飲料、ジャム類、ペースト類などの野菜・果実加工品;日本酒、焼酎、ワイン、中国酒、ウイスキー、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム、酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実酒、リキュールなどのアルコ-ル飲料;ヨーグルト、アイスクリーム、バター、チーズ、練乳、粉乳のなどの乳製品;ドレッシング、マヨネーズ、てんぷら油、サラダ油などの油脂加工品;しょうゆ、ソース、酢、みりん、ドレッシングタイプ調味料などの調味料;粉末ジュース、粉末スープ、インスタントコーヒー、即席麺類、即席カレー、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープなどの乾燥飲食品、小麦粉加工品、でんぷん類加工品などの穀物加工品等が挙げられる。例えば飴、クッキー、チューインガム、ビスケットのような固形物として用いても、あるいは清涼飲料水、牛乳、ヨーグルト、シロップのような液状でもよい。飲食物とする場合、クエン酸、乳酸、カゼインなど、通常飲食物に使用される添加剤を配合することができる。
【0016】
医薬組成物や化粧料は、経口で投与してもよく、また静注、筋注、皮下投与、直腸投与、経皮投与等の非経口で投与してもよく、クリーム、ローション、軟膏、化粧水、乳液などの形態を取ることもできる。
月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンを含有する医薬組成物、サプリメント、あるいは飲食物等の飲食用組成物における有効成分の含有量は、その剤型に応じて異なるが、全組成物中の0.001~50重量%、好ましくは0.01~20重量%程度含まれていればよい。また、前記の有効成分の摂取量は、摂取者の年齢、性別、体重、症状の種類、症状の程度などを考慮して適宜増減できるが、一日当たりの摂取量が0.01~500 mg/kgになるように、各投与形態に合わせて設定するのが好ましい。医薬組成物、飲食用組成物、生体適合性材料のいずれの形態においても、1日1回又は、数回に分けて投与、又は摂取すればよい。
【0017】
本発明の月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンを含有する医薬組成物、サプリメント又は、飲食物等の飲食用組成物は、ヒトを含む哺乳動物を対象とする。ヒト以外の哺乳動物としては、サルなどの霊長類、ラット、マウスなどのげっ歯類、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ等が挙げられる。
【0018】
<実施形態3:生活習慣病を予防又は治療するための方法>
本願発明によれば、
高尿酸血症や痛風を予防又は治療するための方法であって、上記方法は、
上記高尿酸血症や痛風を患っているヒトまたは動物に、月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンを含有する医薬組成物又は飲食物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0019】
上記医薬組成物又は飲食物を患者に投与する場合には、投与量は、患者の症状の重篤さ、年齢、体重、PSA値、尿流量及び健康状態等の諸条件によって異なる。一般的には、上述した用量及び用法で、1日1回若しくはそれ以上の回数にわたって投与すればよく、以上のような諸条件に応じて、投与の回数及び量を適宜増減すればよい。
上記医薬組成物又は生活習慣病予防又は治療用医薬製剤又は飲食物の1日当たりの投与量、投与期間及び投与回数は、上述した治療薬と同様であってもよい。上記医薬組成物又は生活習慣病予防又は治療用医薬製剤の投与は、医師による判断により終了してもよいし、患者の自己判断で終了してもよい。
【0020】
<有効成分>
本発明の有効成分は、月桃の抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンである。これらの製造方法は特に限定されないが、月桃抽出物の製造に用いるショウガ科の月桃は、シマ月桃(学名:Alpinia zerumbet)、あるいはタイリン月桃(学名:Alpinia uraiensis)を用いる。ギシギシ抽出物の製造にはタデ科のギシギシ(学名:Rumex japonicus)のほか、ナガバギシギシ、アレチギシギシ、エゾギシギシを用いても良い。オオバギ抽出物の製造にはトウダイグサ科のオオバギ(学名:Macaranga tanarius)を用いる。クミスクチン抽出物の製造には、シソ科のクミスクチン(別名:ネコノヒゲ、学名:Orthosiphon aristatus)を用いる。
【0021】
これらの抽出物の製造には実、花、蕾、葉、種、樹皮、根などのいずれの部位も用いることができ、各種加工後の残渣を用いることもできる。また、これらの抽出材料は乾燥などの加工をしてもよく、低温貯蔵したものでも良い。これらの抽出材料を抽出する溶媒としては、水、または、熱水、または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類のほか、酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル、アセトニトリル、アセトン、ヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。抽出液はそのまま各抽出物として用いることができるが、さらにろ過、遠心、濃縮、分配、分画等の公知の分離法を用いて、有効成分を濃縮することができる。
【0022】
5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンの製造方法は特に限定されないが、例えば、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワインは前記の月桃抽出物から、ネポジンは前記のギシギシ抽出物から、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニンは前記のオオバギの抽出物やオオバギを期限植物するプロポリスの抽出物などから、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンCはブラジル産グリーンプロポリスやキク科バッカリス属のアレクリン・ド・カンポ(学名:Baccharis dracunculifolia)の抽出物から、ヤテイン、プルビアトリドはクベバコショウ(学名:Piper cubeba)の抽出物から、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、ベラグエンシンはモクレン科のコブシ(辛夷)(学名:Magnolia kobus)や生薬のシンイから、公知の分離法を用いて、得ることができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
[実施例1] 肝細胞の尿酸産生に対する作用1
尿酸産生に対する作用をマウス由来AML12肝細胞(ATCCより入手)を用いて検討した。AML12肝細胞は10%ウマ胎児血清、ITS液体培地サプリメント(シグマアルドリッチ)、デキサメタゾンを含むDMEM/F-12培地に懸濁し、96ウェルプレートに25,000細胞/ウェルで播種して3日間培養し、1%ウマ胎児血清、ITS液体培地サプリメント(シグマアルドリッチ)、デキサメタゾン(40ng/mL)を含むDMEM/F-12培地に交換してさらに一晩培養した。その後、被験サンプルを所定の濃度となるように添加後、尿酸前駆体であるグアノシンおよびイノシンをそれぞれ100μMで含むクレブスバッファーにて、4時間培養後、培養上清中の尿酸濃度について、ウリカーゼ比色法で定量する尿酸C-テストワコー(富士フイルム和光純薬株式会社)を用いて測定して、尿酸産生量を解析した。尿酸産生を抑制することが知られるポジティブコントロールとしてアロプリノールを用いた。結果は尿酸前駆体を含み、被験サンプルを含まないコントロール群の値を100とした際の相対値(%)で表記した(
図1~4)。
【0026】
尿酸前駆体を含まないネガティブコントロール群(BL)と比較して尿酸前駆体であるグアノシンおよびイノシンを添加したコントロール群(CN)では、培養上清中の尿酸濃度が大きく上昇することが確認できる。0.1μMのアロプリノールを添加したポジティブコントロール群(PC)では、コントロール(CN)と比較して尿酸濃度が40%以下に減少した(
図1)。月桃のエタノール抽出物(EtOH Ex.)を添加したところ濃度依存的に、培養上清中の尿酸濃度が低下した(
図1)。また、同様に、月桃のエタノール抽出物をさらに分画した90%メタノール画分(90%MeOH fr.)および60%アセトニトリル溶出画分(60%ACN fr.)を添加した群においても、濃度依存的に、培養上清中の尿酸濃度の低下が認められた(
図1)。さらに、5,6-デヒドロカワイン(DK)およびジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン(DDK)を添加した群においても、濃度依存的に、培養上清中の尿酸濃度の低下が認められた(
図1)。これらの結果は、月桃抽出物、5,6-デヒドロカワイン、およびジヒドロ-5,6-デヒドロカワインが肝細胞において尿酸産生を抑制したことを示しており、高尿酸血症と痛風の予防や改善、治療に有用であることを示している。
【0027】
[実施例2] 肝細胞の尿酸産生に対する作用2
実施例1と同様に、別の被験サンプルにおける尿酸産生抑制作用を検討した。尿酸前駆体を含まないネガティブコントロール群(BL)と比較して尿酸前駆体であるグアノシンおよびイノシンを添加したコントロール群(CN)では、培養上清中の尿酸濃度が大きく上昇することが確認できる。0.1μMのアロプリノールを添加したポジティブコントロール群(PC)では、コントロール(CN)と比較して尿酸濃度が50%以下に減少した(
図2)。ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、または、クミスクチン抽出物を添加したところ、培養上清中の尿酸濃度が低下した(
図2)。これらの結果は、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、およびクミスクチン抽出物が肝細胞において尿酸産生を抑制したことを示しており、高尿酸血症と痛風の予防や改善、治療に有用であることを示している。
【0028】
[実施例3] 肝細胞の尿酸産生に対する作用3
実施例1と同様に、別の被験サンプルにおける尿酸産生抑制作用を検討した。尿酸前駆体を含まないネガティブコントロール群(BL)と比較して尿酸前駆体であるグアノシンおよびイノシンを添加したコントロール群(CN)では、培養上清中の尿酸濃度が大きく上昇することが確認できる(
図3)。ネポジン(Nep)、ヤテイン(Yat)、プルビアトリド(Plu)、バッカリン(Bac)、ドルパニン(Dru)、またはアルテピリンC(Art)を添加したところ濃度依存的に、培養上清中の尿酸濃度が低下した(
図3)。これらの結果は、ネポジン、ヤテイン、プルビアトリド、バッカリン、ドルパニン、およびアルテピリンCが肝細胞において尿酸産生を抑制したことを示しており、高尿酸血症と痛風の予防や改善、治療に有用であることを示している。
【0029】
[実施例4] 肝細胞の尿酸産生に対する作用4
実施例1と同様に、別の被験サンプルにおける尿酸産生抑制作用を検討した。尿酸前駆体を含まないネガティブコントロール群(BL)と比較して尿酸前駆体であるグアノシンおよびイノシンを添加したコントロール群(CN)では、培養上清中の尿酸濃度が大きく上昇することが確認できる(
図4)。ニムフェオール-A(NyA)、ニムフェオール-B(NyB)、ニムフェオール-C(NyC)、イソニムフェオール-B(IsB)、3’-ゲラニルナリンゲニン(3GN)、ファルゲシン(Far)、コブシン(Kob)、エピマグノリンA(EpA)、ガルグラビン(Gal)、またはベラグエンシン(Ver)を添加したところ濃度依存的に、培養上清中の尿酸濃度が低下した(
図4)。これらの結果は、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、またはベラグエンシンが肝細胞において尿酸産生を抑制したことを示しており、高尿酸血症と痛風の予防や改善、治療に有用であることを示している。
【0030】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲に含まれることは当業者に理解されるところである。
本発明の月桃抽出物、ギシギシ抽出物、オオバギ抽出物、クミスクチン抽出物、5,6-デヒドロカワイン、ジヒドロ-5,6-デヒドロカワイン、ネポジン、ニムフェオール-A、ニムフェオール-B、ニムフェオール-C、イソニムフェオール-B、3’-ゲラニルナリンゲニン、バッカリン、ドルパニン、アルテピリンC、ヤテイン、プルビアトリド、ファルゲシン、コブシン、エピマグノリンA、ガルグラビン、またはベラグエンシンのうち少なくとも1種以上を有効成分として含有する尿酸産生抑制剤は、高尿酸血症の予防または改善剤や高尿酸血症治療剤として用いることができ、痛風の予防、改善、治療のための、医薬品、飲食物、及び健康食品として利用可能である。