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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128560
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220826BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220826BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220826BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20220826BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L29/78 658K
H01L29/78 658Z
H01L21/78 Q
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026896
(22)【出願日】2021-02-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 淳士
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB07
4E168FB00
4E168JA13
5F063AA44
5F063BA43
5F063CC49
5F063DD27
(57)【要約】
【課題】生産性の向上を図ることができる半導体チップの製造方法を提供する。
【解決手段】GaNウェハ1を用いた加工ウェハ10を構成することと、半導体素子の一面側素子構成部分11を形成することと、加工ウェハの他面10b側からレーザ光Lを照射することにより、加工ウェハ10の内部に面方向に沿った変質層15を形成することと、変質層15を境界として加工ウェハ10を分割することにより、チップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割することと、チップ構成ウェハ30から半導体チップS1を取り出すことと、リサイクルウェハ40を再びGaNウェハとして利用することと、を行う。変質層15を形成することでは、加工ウェハ10の他面10b側に、加工ウェハ10と反対側の表面210aが平坦となり、屈折率が1.8以上であって、GaNの屈折率以下の材料で構成される緩衝材210を配置した状態でレーザ光Lを照射する。
【選択図】図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された半導体チップの製造方法であって、
窒化ガリウムで構成され、一面(1a)および前記一面と反対側の他面(1b)を有し、前記一面側がガリウム面とされていると共に前記他面側が窒素面とされている窒化ガリウムウェハ(1)を用意することと、
前記窒化ガリウムウェハの前記一面上にエピタキシャル膜(3)を形成することにより、前記エピタキシャル膜側の面を一面(10a)とすると共に前記窒化ガリウムウェハ側の面を他面(10b)とし、前記一面側に複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、
前記複数のチップ形成領域に対し、前記半導体素子の一面側素子構成部分(11)を形成することと、
前記加工ウェハの他面側から当該加工ウェハの内部にレーザ光(L)を照射することにより、前記加工ウェハの内部に、前記加工ウェハの面方向に沿った変質層(15)を形成することと、
前記変質層を境界として前記加工ウェハを分割することにより、前記加工ウェハを、前記加工ウェハの一面側のチップ構成ウェハ(30)と、前記加工ウェハの他面側のリサイクルウェハ(40)とに分割することと、
前記チップ構成ウェハから半導体チップ(S1)を取り出すことと、
前記リサイクルウェハを再び前記窒化ガリウムウェハとして利用することと、を行い、
前記変質層を形成することでは、前記加工ウェハの他面側に、前記加工ウェハと反対側の表面(210a、230a、240a)が平坦となり、屈折率が1.8以上であって、前記窒化ガリウムの屈折率以下の材料で構成される緩衝材(210、230、240)を配置した状態で前記レーザ光を照射する半導体チップの製造方法。
【請求項2】
前記変質層を形成することでは、前記緩衝材として、所定の屈折率を有する添加粒子が分散された溶液(210)に前記加工ウェハを浸漬させた状態で前記レーザ光を照射する請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項3】
前記変質層を形成することでは、集光レンズ(200)を介して前記レーザ光を照射すると共に、前記集光レンズを前記溶液内または前記溶液と外気との界面に配置する請求項2に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項4】
前記変質層を形成することでは、前記緩衝材として、所定の屈折率を有する添加粒子を分散させたレジスト(230)を前記加工ウェハの他面に配置した状態で前記レーザ光を照射する請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項5】
前記変質層を形成することでは、前記緩衝材として、所定の屈折率を有する添加粒子を分散させたシート(240)を前記加工ウェハの他面に配置した状態で前記レーザ光を照射する請求項1に記載の半導体チップの製造方法。
【請求項6】
前記緩衝材は、前記窒化ガリウムよりも透過率が高くされている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ガリウム(以下では、単にGaNともいう)を含んで構成される半導体チップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハにエピタキシャル膜を形成して加工ウェハを形成し、当該加工ウェハに半導体素子を形成した後にチップ単位に分割することで半導体チップを製造する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造方法では、加工ウェハのうちのエピタキシャル膜側の面を一面とし、加工ウェハのうちの半導体ウェハ側の面を他面とすると、まず、加工ウェハの一面側に拡散層や表面電極等の半導体素子の一面側の部分を構成する一面側素子構成部分を形成する。次に、加工ウェハの他面側を研削して所定の厚さまで薄くし、加工ウェハの他面側に、裏面電極等の半導体素子の他面側の部分を構成する他面側素子構成部分を形成する。その後、加工ウェハをチップ単位に分割する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-207908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、バンドギャップが広く、電子の飽和速度が大きい等の利点を有するGaNを含んで構成される半導体チップについて検討している。そして、このような半導体チップを上記製造方法を利用して製造する場合、以下のようになる。
【0005】
すなわち、半導体ウェハとしてGaNウェハを用意し、GaNウェハ上にGaNで構成されるエピタキシャル膜を成長させて加工ウェハを構成する。そして、加工ウェハに一面側素子構成部分を形成した後、加工ウェハの他面から研削する。その後、他面側素子部分を形成し、加工ウェハをチップ単位に分割する。
【0006】
しかしながら、この製造方法では、加工ウェハを他面から研削する。つまり、GaNウェハを研削する。このため、半導体チップを製造する毎にGaNウェハを用意する必要があり、生産性が低くなる可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、生産性の向上を図ることができる半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1では、半導体素子が形成された半導体チップの製造方法であって、GaNで構成され、一面(1a)および一面と反対側の他面(1b)を有し、一面側がガリウム面とされていると共に他面側が窒素面とされているGaNウェハ(1)を用意することと、GaNウェハの一面上にエピタキシャル膜(3)を形成することにより、エピタキシャル膜側の面を一面(10a)とすると共にGaNウェハ側の面を他面(10b)とし、一面側に複数のチップ形成領域(RA)を有する加工ウェハ(10)を構成することと、複数のチップ形成領域に対し、半導体素子の一面側素子構成部分(11)を形成することと、加工ウェハの他面側から当該加工ウェハの内部にレーザ光(L)を照射することにより、加工ウェハの内部に、加工ウェハの面方向に沿った変質層(15)を形成することと、変質層を境界として加工ウェハを分割することにより、加工ウェハを、加工ウェハの一面側のチップ構成ウェハ(30)と、加工ウェハの他面側のリサイクルウェハ(40)とに分割することと、チップ構成ウェハから半導体チップ(S1)を取り出すことと、リサイクルウェハを再びGaNウェハとして利用することと、を行う。そして、変質層を形成することでは、加工ウェハの他面側に、加工ウェハと反対側の表面(210a、230a、240a)が平坦となり、屈折率が1.8以上であって、GaNの屈折率以下の材料で構成される緩衝材(210、230、240)を配置した状態でレーザ光を照射する。
【0009】
これによれば、リサイクルウェハを再びGaNウェハとして利用する。このため、半導体チップを製造する度にGaNウェハを新たに用意する必要がなく、GaNウェハを有効利用できる。したがって、半導体チップの生産性の向上を図ることができる。また、レーザ光を照射して加工ウェハに変質層を形成する際、緩衝材を介してレーザ光を加工ウェハに照射する。このため、レーザ光が乱反射することを抑制でき、加工ウェハの内部に好適に変質層を形成することができる。したがって、さらに半導体チップの生産性の向上を図ることができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】第1実施形態における半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1B図1Aに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1C図1Bに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1D図1Cに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1E図1Dに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1F図1Eに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1G図1Fに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1H図1Gに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1I図1Hに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1J図1Iに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図1K図1Jに続く半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図2】溶液の屈折率と反射率との関係を示す図である。
図3】第2実施形態における半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図4】第3実施形態における半導体チップの製造工程を示す断面図である。
図5】他の実施形態における半導体チップの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、GaNを用いて構成された半導体チップS1の製造方法について説明する。
【0014】
まず、図1Aに示されるように、一面1aおよび他面1bを有し、バルクウェハ状とされているGaNウェハ1を用意する。例えば、GaNウェハ1は、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~5×1019cm-3とされたものが用いられる。GaNウェハ1の厚みについては任意であるが、例えば400μm程度のものを用意している。なお、本実施形態のGaNウェハ1は、一面1aがガリウム面とされ、他面1bが窒素面とされている。また、このGaNウェハ1は、下記半導体チップS1の製造工程を行った後では、後述する図1Kのリサイクルウェハ40を再利用することで用意される。
【0015】
次に、図1Bに示されるように、GaNウェハ1の一面1a上に、10~100μm程度のGaNで構成されるエピタキシャル膜3を形成することにより、複数のチップ形成領域RAを有する加工ウェハ10を用意する。本実施形態では、エピタキシャル膜3は、n型エピタキシャル層3aと、n型エピタキシャル層3bとがGaNウェハ1側から順に成膜されて構成される。例えば、n型エピタキシャル層3aは、シリコン、酸素、ゲルマニウム等がドーパントされ、不純物濃度が5×1017~5×1019cm-3程度とされる。n型エピタキシャル層3bは、シリコン等がドーパントされ、不純物濃度が1×1017~4×1017cm-3程度とされる。
【0016】
なお、n型エピタキシャル層3bは、後述する拡散層12等の一面側素子構成部分11が形成される部分であり、例えば、厚さが8~10μm程度とされる。n型エピタキシャル層3aは、後述する半導体チップS1の厚さを確保するための部分であり、例えば、厚さが40~100μm程度とされる。また、n型エピタキシャル層3aとn型エピタキシャル層3bとの厚みの大小については任意であるが、ここでは半導体チップS1の厚みを確保できるようにn型エピタキシャル層3aをn型エピタキシャル層3bよりも厚くしてある。
【0017】
以下では、加工ウェハ10のうちのエピタキシャル膜3側の面を加工ウェハ10の一面10aとし、加工ウェハ10のうちのGaNウェハ1側の面を加工ウェハ10の他面10bとする。また、上記のように、GaNウェハ1の一面1aがガリウム面とされていると共に他面1bが窒素面とされているため、加工ウェハ10は、一面10aがガリウム面となると共に他面10bが窒素面となる。そして、各チップ形成領域RAは、加工ウェハ10の一面10a側に構成される。
【0018】
ここで、この工程では、エピタキシャル膜3を成長させる場合等のプロセス温度が1000℃程度になる。このため、各エピタキシャル膜3を成膜する際、加工ウェハ10は、当該加工ウェハ10から窒素がガス化して抜け易くなる。具体的には、窒素は、化学的に活性化し易い窒素面から抜け易くなる。したがって、本実施形態では、加工ウェハ10の他面10bが窒素面とされているため、他面1bから窒素が抜け易くなる。そして、加工ウェハ10の他面10bでは、窒素が抜け出ることによって微細な凹凸Uが形成された状態となる。
【0019】
次に、図1Cに示されるように、一般的な半導体製造プロセスのうちの一面10a側に対するプロセスである表面側プロセスを行う。具体的には、表面側プロセスとして、イオン注入、蒸着、ウェットプロセス等を適宜行い、各チップ形成領域RAに、拡散層12やゲート電極13、図示しない表面電極や配線パターンやパッシベーション膜等の半導体素子における一面側素子構成部分11を形成する工程を行う。なお、ここでの半導体素子は、種々の構成のものが採用され、例えば、縦型MOSトランジスタ等のパワーデバイスや、発光ダイオード等の光半導体素子、半導体レーザ等が採用される。その後、必要に応じ、加工ウェハ10の一面10a側に、レジスト等で構成される表面保護膜を形成する。
【0020】
ここで、この工程では、ウェットプロセスによる薬液と加工ウェハ10とが反応する可能性がある。この場合、化学的に活性し易い窒素面が薬液と反応し易いため、加工ウェハ10の他面10bは、さらに微細な凹凸Uが形成された状態となる。
【0021】
続いて、図1Dに示されるように、加工ウェハ10の一面10a側に保持部材20を配置する。保持部材20は、例えば、支持台21と粘着剤22とを有するダイシングテープ等が用いられる。支持台21は、製造工程中に反り難い材料で構成され、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成される。粘着剤22は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。この場合、粘着剤22は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。但し、粘着剤22は、後述する図1Gの他面側素子構成部分60を形成する際にも粘着力を維持する材料で構成される。
【0022】
次に、図1Eに示されるように、加工ウェハ10の他面10bからレーザ光Lを照射し、加工ウェハ10の一面10aから所定深さDとなる位置に、加工ウェハ10の面方向に沿った変質層15を形成する。
【0023】
具体的には、図示しない、レーザ光Lを発振するレーザ光源、レーザ光の光軸、すなわち光路の向きを変えるように配置されたダイクロイックミラー、加工ウェハ10が配置される変位可能なステージ等を有すると共に、レーザ光を集光するための集光レンズ200を備えたレーザ装置を用意する。そして、変質層15を形成する際には、レーザ光Lの集光点が加工ウェハ10の面方向に沿って相対的に走査されるように、ステージ等の位置を調整しつつ、集光レンズ200を介してレーザ光Lを照射する。これにより、加工ウェハ10には、面方向に沿った変質層15が形成される。より詳しくは、レーザ光Lを照射することにより、窒素がガスとして蒸発すると共にガリウムが析出された変質層15が形成される。
【0024】
ここで、上記のように、加工ウェハ10の他面10bには、微細な凹凸Uが形成されている。このため、そのままレーザ光Lを加工ウェハ10の他面10b側から照射すると、レーザ光Lが加工ウェハ10の他面10bで乱反射し、好適に変質層15を形成できない可能性がある。
【0025】
このため、本実施形態では、加工ウェハ10の他面10b側に、加工ウェハ10と反対側の表面が平坦となり、屈折率が1.8以上であって、GaNの屈折率以下の材料で構成される緩衝材を配置した状態でレーザ光Lを照射する。なお、GaNの屈折率は、約2.38である。
【0026】
本実施形態では、高屈折率材料を水系、または油系の溶媒に分散させて屈折率を1.8~2.38とした溶液210を容器220内に用意する。なお、高屈折材料は、TiO、ZrO、ZnSe等のナノ粒子が用いられる。また、本実施形態では、このナノ粒子が添加粒子に相当し、この溶液210が緩衝材に相当し、溶液210の液面210aが緩衝材の表面に相当する。
【0027】
そして、加工ウェハ10の他面10bが溶液210の液面210aと対向するように、加工ウェハ10を溶液210内に浸漬させる。その後、この状態で加工ウェハ10をステージに配置し、加工ウェハ10の他面10b側からレーザ光Lを照射する。これにより、溶液210の液面210aは平坦であるため、まず、レーザ光Lが溶液210と外気との界面での乱反射することが抑制される。
【0028】
また、溶液210と加工ウェハ10の他面10bとの境界の反射率は、反射率をRとし、溶液210の屈折率をN0とし、GaNの屈折率をN1とすると、下記数式1で示される。
【0029】
【数1】
【0030】
そして、反射率Rと溶液210の屈折率N0との関係は、図2のように示される。この場合、現状では、反射率Rが0.02以下である場合には、一般的に、表面に微小な凹凸Uが形成されていないと認識される。言い換えると、反射率Rが0.02以下である場合には、加工ウェハ10の他面10bが白濁していないと認識される。そして、本実施形態の溶液210の屈折率は、1.8~2.38とされている。このため、溶液210と加工ウェハ10の他面10bとの反射率Rが0.02以下となる。これにより、本実施形態では、レーザ光Lが加工ウェハ10と溶液210との界面で乱反射することも抑制される。したがって、本実施形態では、加工ウェハ10に好適に変質層15を形成することができる。
【0031】
また、上記のように構成される溶液210は、GaN以上の透過率を有するように構成されることが好ましい。これにより、溶液210内でレーザ光Lが吸収されることを抑制でき、加工ウェハ10の内部に、さらに好適に変質層15を形成することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、集光レンズ200が溶液210の外(すなわち、外気中)に配置された状態でレーザ光Lを照射する。また、特に限定されるものではないが、本実施形態では、変質層15を形成する際のレーザ光Lは、赤外線から可視光線の波長領域を有するものであって、対象となるウェハの透過率(すなわち、GaNの透過率)を考慮して設定されたものが用いられる。そして、本実施形態では、このようなレーザ光Lの加工点出力やパルス幅等を適宜調整して変質層15を形成する。
【0033】
また、変質層15を形成する際の所定深さDは、半導体チップS1のハンドリングのし易さや耐圧等に応じて設定され、10~200μm程度とされる。この場合、変質層15は、エピタキシャル膜3の厚さに応じて形成される場所が変更され、エピタキシャル膜3の内部、エピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界、またはGaNウェハ1の内部のいずれかに形成される。なお、図1E中では、エピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界に変質層15を形成する例を示している。
【0034】
但し、後述するように、加工ウェハ10におけるGaNウェハ1の少なくとも一部は、リサイクルウェハ40として再利用される。このため、変質層15は、エピタキシャル膜3の内部、またはエピタキシャル膜3とGaNウェハ1との境界に形成されることが好ましい。また、変質層15がGaNウェハ1の内部に形成される場合には、変質層15は、GaNウェハ1の一面1a側に形成されることが好ましい。そして、変質層15がエピタキシャル膜3の内部に形成される場合には、変質層15は、半導体素子を構成するn型エピタキシャル層3bではなく、n型エピタキシャル層3aの内部に形成されることが好ましい。
【0035】
以下では、加工ウェハ10のうちの変質層15より一面10a側の部分をチップ構成ウェハ30とし、加工ウェハ10のうちの変質層15より他面10b側の部分をリサイクルウェハ40として説明する。
【0036】
次に、特に図示しないが、変質層15を形成した加工ウェハ10を溶液210から取り出し、洗浄する。これにより、後述する図1Kの工程を行って再びGaNウェハ1を利用する際、異物が付着した状態で図1B以降の工程が行われることを抑制できる。
【0037】
続いて、図1Fに示されるように、加工ウェハ10の他面10b側に補助部材50を配置する。補助部材50は、図1Fでは簡略化して示しているが、例えば、基材と、粘着力を変化させることのできる粘着剤とで構成される。この場合、補助部材50における基材は、例えば、ガラス、シリコン基板、セラミックス等で構成され、補助部材50における粘着剤は、例えば、紫外線硬化樹脂、ワックス、両面テープ等で構成される。そして、支持台21および補助部材50を把持して加工ウェハ10の厚さ方向に引張力等を印加し、変質層15を境界(すなわち分岐の起点)としてチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割する。
【0038】
なお、以下では、チップ構成ウェハ30のうちの一面側素子構成部分11が形成されている側の面を一面30aとし、チップ構成ウェハ30のうちの分割された面側を他面30bとし、リサイクルウェハ40のうちの分割された面側を一面40aとして説明する。また、図1F以降の各図では、チップ構成ウェハ30の他面30bおよびリサイクルウェハ40の一面40aに残存する変質層15等を適宜省略して示している。
【0039】
その後、図1Gに示されるように、残りの半導体製造プロセスとして、チップ構成ウェハ30の他面30bに、裏面電極を構成する金属膜61等の半導体素子における他面側素子構成部分60を形成する裏面側プロセスを行う。
【0040】
なお、この他面側素子構成部分60を形成する工程の前に、必要に応じて、CMP(chemical mechanical polishingの略)法等でチップ構成ウェハ30の他面30bを平坦化する工程を行うようにしてもよい。図1Gは、チップ構成ウェハ30の他面30bを平坦化した場合の図を示している。また、他面側素子構成部分60を形成する工程を行った後、必要に応じて、金属膜61とチップ構成ウェハ30の他面30bとをオーミック接触とするためのレーザアニールなどの加熱処理を行うようにしてもよい。
【0041】
続いて、図1Hに示されるように、チップ構成ウェハ30のうちの他面30b側、つまり金属膜61側に保持部材51を配置する。保持部材51は、例えば、基材52と粘着剤53とを有するダイシングテープ等が用いられる。なお、粘着剤53は、粘着力を変化させることができる材料で構成され、例えば、温度や光によって粘着力が変化するものが用いられる。
【0042】
その後、図1Iに示されるように、チップ構成ウェハ30のうちの一面30a側に貼り付けてある支持台21を剥離する。ここでは、支持台21をチップ構成ウェハ30に貼り付けている粘着剤22の接着力を低下させる処理、例えば、粘着剤22をUV樹脂接着材で構成している場合にはUV照射を行う。
【0043】
続いて、図1Jに示されるように、ダイシングソー、またはレーザダイシングなどにより、チップ構成ウェハ30をチップ単位に個片化することで、各半導体チップS1を構成する。この際、チップ構成ウェハ30をチップ単位に分割しつつも、保持部材51については切断されること無く繋がったままの状態となるように、ダイシング深さを調整することが好ましい。
【0044】
半導体チップS1に関するこの後の工程については図示しないが、保持部材51をエキスパンドし、ダイシングカットした部分にて各半導体チップS1の間隔を広げる。その後、加熱処理や光を照射する等して粘着剤53の粘着力を弱まらせ、半導体チップS1をピックアップする。これにより、半導体チップS1が製造される。
【0045】
また、図1Kに示されるように、図1Fで構成されたリサイクルウェハ40には、一面40aに対して研磨装置70等を用いたCMP法を行うことにより、当該一面40aを平坦化する。そして、平坦化したリサイクルウェハ40をGaNウェハ1とし、再び上記図1A以降の工程を行う。これにより、GaNウェハ1は、半導体チップS1を構成するのに複数回利用されることができる。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、リサイクルウェハ40を再びGaNウェハ1として利用する。このため、半導体チップS1を製造する度にGaNウェハ1を新たに用意する必要がなく、GaNウェハ1を有効利用できる。したがって、半導体チップS1の生産性の向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、レーザ光Lを照射して加工ウェハ10に変質層15を形成する際、溶液210を介してレーザ光Lを加工ウェハ10に照射している。このため、変質層15を形成する際、溶液210の液面210aが平坦となるため、溶液210と外気との界面でレーザ光Lが乱反射することを抑制できる。そして、溶液210は、屈折率が1.8以上であって、GaNの屈折率以下とされている。このため、加工ウェハ10の他面10bと溶液210との界面でレーザ光Lが乱反射することも抑制できる。したがって、加工ウェハ10の内部に好適に変質層15を形成することができ、さらに半導体チップS1の生産性の向上を図ることができる。
【0048】
(1)本実施形態では、溶液210の透過率がGaNよりも高くされることにより、溶液210内でレーザ光Lが吸収されることを抑制できる。このため、加工ウェハ10の内部に、さらに好適に変質層15を形成することができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、緩衝材の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、図1Eの工程にてレーザ光Lを照射する際には、図3に示されるように、加工ウェハ10の他面10bに、緩衝材としてのレジスト230を配置してレーザ光Lを照射する。なお、レジスト230は、TiO等の高屈折材料を分散させた液状のレジスト材料を硬化することで構成されている。また、レジスト230は、加工ウェハ10と反対側の表面230aが平坦となり、屈折率が1.8以上であって、GaNの屈折率以下の材料で構成されている。
【0051】
そして、レーザ光Lを照射して変質層15を形成した後は、リムーバ液での剥離処理や、アッシング等の剥離処理を行い、レジスト230を除去して加工ウェハ10を洗浄する。
【0052】
以上説明した本実施形態によれば、緩衝材としてのレジスト230を介してレーザ光Lを照射するため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、緩衝材の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、図1Eの工程にてレーザ光Lを照射する際には、図4に示されるように、加工ウェハ10の他面10bに、緩衝材としてのシート240を貼り付けた状態でレーザ光Lを照射する。なお、シート240は、TiO等の高屈折材料を分散させて製造したポリマー系のシートで構成される。また、シート240は、加工ウェハ10と反対側の表面240aが平坦となり、屈折率が1.8以上であって、GaNの屈折率以下の材料で構成される。シート240は、加工ウェハ10の他面10bに押圧されることで加工ウェハ10の他面10bに密着させられる。
【0055】
そして、レーザ光Lを照射して変質層15を形成した後は、シート240を剥がして加工ウェハ10を洗浄する。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、緩衝材としてのシート240を介してレーザ光Lを照射するため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0058】
例えば、上記各実施形態において、エピタキシャル膜3は、n型エピタキシャル層3bのみで構成されていてもよい。
【0059】
また、上記各実施形態において、図1Gの工程では、チップ構成ウェハ30の他面30bを研磨せずに金属膜61を形成するようにしてもよい。例えば、半導体素子として光半導体素子等を形成する場合には、半導体チップS1の他面側に凹凸構造を形成することにより、他面側から効果的に光を取り出すことが可能となる。そして、加工ウェハ10をチップ構成ウェハ30とリサイクルウェハ40とに分割した直後においては、チップ構成ウェハ30の他面30bは、変質層15が残存した状態となっており、微小な凹凸が形成された状態となっている。このため、光半導体素子を形成する場合には、チップ構成ウェハ30の他面30bを研磨せず、変質層15の凹凸を利用するようにしてもよい。
【0060】
さらに、上記各実施形態において、図1Bのエピタキシャル膜3を形成する工程では、GaNウェハ1の他面1b側にもエピタキシャル膜が形成されるようにしてもよい。これによれば、例えば、変質層15をGaNウェハ1内に形成する場合においても、リサイクルウェハ40として所定以上の厚さを残し易くなり、再利用できる回数の増加を図ることができる。なお、このような構成とする場合においても、加工ウェハ10の他面10bには微小な凹凸Uが形成されるため、上記のように緩衝材を介してレーザ光を照射することにより、好適に変質層15を形成することができる。
【0061】
また、上記第1実施形態では、図5に示されるように、集光レンズ200を溶液210と外気との界面に配置するようにしてもよい。これによれば、集光レンズ200で集光されたレーザ光Lがそのまま溶液210内に出射されるため、集光されたレーザ光Lが溶液210と外気との界面による影響を受けなくなる。したがって、加工ウェハ10の内部に、さらに好適に変質層15を形成することができる。なお、図5では、集光レンズ200を溶液210と外気との界面に配置する例を示しているが、集光レンズ200は、溶液210内に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1a 一面
1b 他面
1 GaNウェハ
3 エピタキシャル膜
10 加工ウェハ
10a 一面
10b 他面
11 一面側素子構成部分
15 変質層
30 チップ構成ウェハ
40 リサイクルウェハ
210a 液面
210 溶液
L レーザ光
S1 半導体チップ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図2
図3
図4
図5