(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128586
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】TEMグリッド用途のためのツール
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220826BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220826BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
H01J37/20 A
G01N1/00 101B
G01N1/28 W
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019290
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】21158699.5
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513307690
【氏名又は名称】ブルーカー アーイクスエス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Bruker AXS GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト クンムンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ナディア リンダ レングヴァイラー
【テーマコード(参考)】
2G052
5C101
【Fターム(参考)】
2G052CA04
2G052CA45
2G052GA34
2G052JA04
2G052JA05
2G052JA08
5C101AA04
5C101FF47
5C101FF49
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物グリッドをキャリア内に確実に固定することを可能にする、ハンドリングツールを提供する。
【解決手段】電子撮像装置における試料キャリア組立体20を組み立てるためのツール10であって、当該試料キャリア組立体が、試料ホルダ21と、分析装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッド22と、対象物グリッドを試料ホルダの溝24に取外し可能に固定するためのC字形弾性固定リング23と、を含むツールであって、円筒ピン11’’を囲む保持スリーブ11’を有する細長い中空ハンドリングデバイス11を備え、ピンが、保持スリーブの下端において保持スリーブから突起する第1の位置からピンが保持スリーブ内へ引き込まれる第2の位置までの方向と、その逆の方向との両方向に、並進移動可能であり、ピンをその第1の位置に移動させることによってC字形固定リングが試料ホルダの溝に押し込まれることができる。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子撮像装置における使用に適合された試料キャリア組立体(20)を組み立てるためのツール(10)であって、前記試料キャリア組立体(20)は、試料ホルダ(21)と、分析装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッド(22)と、前記対象物グリッド(22)を前記試料ホルダ(21)の溝(24)に取外し可能に固定するためのC字形弾性固定リング(23)と、を含み、
前記ツール(10)は、円筒ピン(11’’)を囲む保持スリーブ(11’)を有する細長い中空ハンドリングデバイス(11)を備え、
前記円筒ピン(11’’)は、前記ピン(11’’)が前記保持スリーブ(11’)の下端において前記保持スリーブ(11’)から突起する第1の位置から前記ピン(11’’)が前記保持スリーブ(11’)内へ引き込まれる第2の位置までの方向と、その逆の方向との両方向に、前記保持スリーブ(11’)内で並進移動可能であり、
前記中空ハンドリングデバイス(11)は、前記円筒ピン(11’’)をその第1の位置に移動させることによって前記C字形固定リング(23)が前記試料ホルダ(21)の前記溝(24)に押し込まれることができるように、設計および寸法決めされている
ことを特徴とする、ツール(10)。
【請求項2】
前記中空ハンドリングデバイス(11)は、前記円筒ピン(11’’)がその第2の位置にあるときは前記固定リング(23)が前記中空保持スリーブ(11’)の内側に受け入られることができ、前記円筒ピン(11’’)がその第1の位置にあるときに前記固定リング(23)上へ押されるときは前記固定リング(23)が前記保持スリーブ(11’)から外へスライドすることができるように、設計および寸法決めされていることを特徴とする請求項1に記載の装置のためのツール。
【請求項3】
前記ツール(10)は、好ましくは、中央の特にテーパ状または円錐の突起(31)を有する、保持デバイス(30)を備え、前記固定リング(23)は、前記保持デバイス(30)上に配置されることができ、前記固定リング(23)は、後に前記保持デバイス(30)から前記中空ハンドリングデバイス(11)で取り上げられることができることを特徴とする請求項2に記載のツール。
【請求項4】
前記保持デバイス(30)の前記突起(31)は、フォーク形グリッパ(40)のための係合部として機能することができる凹部(32)から、中心で突出していることを特徴とする請求項3に記載のツール。
【請求項5】
突出部が、前記凹部(32)から垂直に突出している前記保持デバイス(30)の前記突起(31)に取り付けられて、前記固定リング(23)を前記突起(31)上に正しく位置付けることができるようになっていることを特徴とする請求項4に記載のツール。
【請求項6】
前記フォーク形グリッパ(40)は、前記フォーク形グリッパ(40)を確実な嵌合で前記保持スリーブ(11’)の前記下端に配置することができるように且つ前記フォーク形グリッパ(40)のフォークを前記保持デバイス(30)の前記凹部(32)に挿入することができるように、設計されていることを特徴とする請求項4または5に記載のツール。
【請求項7】
前記フォーク形グリッパ(40)が前記固定リング(23)と共に前記保持デバイス(30)上に配置されるとき、前記フォークのテーパ状部分が一緒に押圧することで、前記リング(23)が前記フォークの内側で前記ハンドリングデバイス(11)の前記スリーブ(11’)内へスライドすること、前記リング(23)が前記試料ホルダ(21)内に押し込まれて前記対象物グリッド(22)をクランプする前に、前記固定リング(23)の予張力によって前記リング(23)は壁に対して保持されていること、を特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項8】
前記保持デバイス(30)の周りの追加のガイドスリーブ(33)が、前記ハンドリングデバイス(11)を前記保持デバイス(30)上に垂直に位置付けるために設けられていることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載のツール。
【請求項9】
前記ガイドスリーブ(33)は、前記ガイドスリーブ(33)が前記保持デバイス(30)上に同心円状に配置されることができるように、中空円筒形であり、且つ、前記ガイドスリーブ(33)の内径が前記保持デバイス(30)の外径と合うように設計されていることを特徴とする請求項8に記載のツール。
【請求項10】
フォーク形グリッパ(40)の外径が前記保持デバイス(30)の外径以下であることで、前記ガイドスリーブ(33)が前記保持デバイス(30)上に配置されるとき、フォークが前記保持デバイス(30)の凹部(32)内に垂直に係合するように、前記フォーク形グリッパ(40)を有する前記ハンドリングデバイス(11)が配置されることを特徴とする請求項9に記載のツール。
【請求項11】
その第2の位置にある、前記保持スリーブ(11’)内に引き込まれた前記円筒ピン(11’’)を保持するために、リセット要素(12)、特に戻しばねが設けられており、このため、前記ピン(11’’)が前記保持スリーブ(11’)の下端において前記保持スリーブ(11’)から突起する、その第1の位置に、前記円筒ピン(11’’)を移動または保持するために前記円筒ピン(11’’)に力を加えなければならないことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のツール。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のツール(10)によって、電子撮像装置における試料キャリア組立体(20)を組み立てるための方法であって、
(a)測定サンプルを収容する前記対象物グリッド(22)を、前記試料ホルダ(21)の貫通ホール(26)内の前記溝(24)上に付けるステップと、
(b)前記C字形固定リング(23)を、その前記貫通ホール(26)を覆って前記試料ホルダ(21)の上に置くステップと、
(c)前記細長い中空ハンドリングデバイス(11)を、前記固定リング(23)を覆って配置するステップと、
(d)前記円筒ピン(11’’)をその第1の位置に移動することによって、前記固定リング(23)を前記対象物グリッド(22)の上の位置に押し込むステップと、
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項2から11のいずれか1項に記載のツール(10)によって、電子撮像装置における試料キャリア組立体(20)を組み立てるための方法であって、
(a)測定サンプルを収容する前記対象物グリッド(22)を、前記試料ホルダ(21)の貫通ホール(26)内の前記溝(24)上に付けるステップと、
(c)前記細長い中空ハンドリングデバイス(11)を、前記C字形固定リング(23)を覆って配置するステップと、
(e)前記ハンドリングデバイス(11)の前記円筒ピン(11’’)を、前記中空保持スリーブ(11’)の内側の、その第2の位置に引き込むステップと、
(f)前記保持スリーブ(11’)の下端を、前記固定リング(23)上へ押すことによって、前記固定リング(23)を受け入れて前記円筒ピン(11’’)の下の位置に保持するステップと、
(g)前記固定リング(23)を伴う前記ハンドリングデバイス(11)を、その前記貫通ホール(26)を覆って前記試料ホルダ(21)の上に置くステップと、
(d)前記円筒ピン(11’’)をその第1の位置に移動することによって、前記固定リング(23)を、前記試料ホルダ(21)の前記貫通ホール(26)の内側の、前記対象物グリッド(22)の上の位置に押し込むステップと、
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子撮像装置内の試料キャリア組立体を組み立てるためのツールに関するものであり、試料キャリア組立体は、試料ホルダと、分析装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッドと、対象物グリッドを試料ホルダの溝に取外し可能に固定するためのC字形弾性固定リングとを備える。
【0002】
このツールで組み立てることができ、かつ試料ホルダと、対象物グリッドと、C字形弾性固定リングとを備える、上記で定義された種類の試料キャリア組立体は、それ自体、特許文献1(=参考文献[1])によって知られている。しかしながら、そのような試料キャリア組立体を組み立てるためのツールは、知られていない。
【背景技術】
【0003】
一般に、本発明は、電子ベースの撮像技術の技術分野における装置、特に透過型電子顕微鏡法に関するが、単一分子に対する電子線回折および類似の分析方法にも関する。
【0004】
透過型電子顕微鏡(=「transmission electron microscopy:TEM」)を適用する場合、電子のビームが試料を通して透過させられ、画像を形成する。試料は、対象物グリッド上の、厚さ100nm未満の極薄切片または懸濁液である場合が非常に多い。ビームが試料を通して透過すると、電子とサンプルとの相互作用によって画像が形成される。次いで、画像は、拡大されて、撮像デバイス上に集束される。この技術は、光学顕微鏡よりも著しく高い解像度で撮像することができ、原子の一列ほどに小さくても、細かな詳細を機器がキャプチャすることを可能にする。TEMは、物理、化学および生物科学における主要な分析方法である。TEM機器は、従来の撮像、走査型TEM撮像(scanning TEM:STEM)、回折、分光法、およびこれらの組み合わせを含む、非常に豊富な動作モードを備える。TEMは、並外れて多様な、ナノメートルおよび原子分解能の、情報を返すことができる。このため、TEMは、生物分野と材料分野の両方におけるナノ科学に必須のツールと見なされている。
【0005】
単一分子電子線回折またはTEMのためのデバイスでは、着目する対象物(通常はタンパク質)は、導電性の対象物グリッドに付けられる。これらのグリッドは、典型的にはCuまたはAuからなり、数マイクロメートルの非常に小さいグリッドピッチを有する。グリッド自体は、直径が3mmしかなく、標的分子を観察するためにキャリアを電子ビーム内で数自由度で移動させるので、試料ホルダ内に遊びなくクランプされなければならない。標準化された顕微鏡スライドグリッドは、スライド内の、最大直径3mmの、通常は円形である、アパーチャに固定される。したがって、ユーザがグリッドをキャリア内にしっかりと手動でクランプすることは、難題である。
【0006】
特別な従来技術
特許文献2(=参考文献[2])は、特にTEMシステムで使用するための、試料先端部および先端部ホルダ組立体を詳細に記載している。しかしながら、参考文献[1]におけるようなC字形弾性固定リングは、参考文献[2]において何も開示されておらず、そのような試料キャリア組立体を組み立てるためのいかなるツールも開示されていない。
【0007】
特許文献3(=参考文献[3])は、試料をAFMによって観察できるように構成された、原子間力顕微鏡(=「atomic force microscope:AFM」)用の試料ホルダを開示している。サンプルホルダは、本体と、本体の1つの側に形成された試料取付け溝と、サンプル取付け溝に取り付けられたサンプルグリッドと、サンプルグリッドを保持するための固定リングと、固定リングを挿入するために試料取付け溝の内壁面に形成された固定リング挿入溝とを含む。固定リングは、試料取付け溝の直径よりもわずかに大きい直径を有する閉じた円形リングの形状に形成され、サンプルグリッドに取り付けられ、試料取付け溝内でより安定して固定されることができ、振動するのを防止することができ、よって試料の損傷を防止できる。
【0008】
参考文献[3]は、AFMを使用して試料を観察するための方法であって、当該方法は、
-AFM用の試料搬送装置の本体内に形成された試料取付け溝に、サンプルグリッドを位置付けることと、
-試料取付け溝の内壁側に形成された保持リング挿入溝に、保持リングを挿入することと、
-試料取付け溝の上部端に形成された固定具取付け溝に、固定具を取り付けることと、
-サンプルグリッドが挿入された試料搬送装置を原子間力顕微鏡に移して取り付け、それによって観察を行うこと
を含む、方法をさらに開示している。
【0009】
グリッドは、リングおよびクランププレートを介して固定され、その結果、組立体の全体的な高さが比較的高くなる。
【0010】
特許文献4(=参考文献[4])には、電子顕微鏡で使用するための試料ホルダ先端部分が記載されており、ホルダは、試料セッティング座部と、試料を取り付けるための試料メッシュと、試料メッシュを保持するための試料保持部分と、試料保持部分をクランプするクランプ部分とを含む。
【0011】
さらに、離脱ツール、特に試料を保持するためのリングを取り付けるための治具が、開示される。試料を保持するためのリングを取り付けるための、治具のコレット部分が設けられる。試料保持部分は、試料を保持するためのリングである。さらに、試料を保持するためのリングを取り付けるための治具のコレット部分を開く機構を有するロッドが、示されている。
【0012】
参考文献[4]によれば、ロッドは押され、コレットは拡張されて、リング内の溝に首尾よく嵌め込まれる。これにより、リングと取付け治具は、瞬間的に一体化される。取付けのための治具がリングを固定している状態では、そのリングは、試料メッシュを通して試料ホルダ先端部分に固定されている。リングに設けられたテーパによって、リングは、クランプ部分とぴったり合って(meshes)試料ホルダ先端部分に固定される。
【0013】
特許文献5(=参考文献[5])は、円形の試料グリッドを支持する、電子顕微鏡用の移動可能な試料ホルダを開示している。グリッドは、カウンタボアを摩擦嵌めで係合するための外側円筒面を有する弾性分割バンドまたはリングによって、カウンタボア内に保持される。
【0014】
C字形リングは、ピンセット様ツールのばね脚部上の外側に突出する足を受け入れるように適合された、環状の凹部または溝によって中断された円筒内面を有する。ツールは、試料グリッドに隣接するカウンタボアに保持リングを挿入するために、また、リングを失うことなくカウンタボアからリングを取り外すために使用される。
【0015】
位置決めツールは、平行に離間しかつばね付勢された脚部分を有する、一般的な形態のピンセットに構成される。2つの脚部分は、対応する外向きに突出するタブまたは足を有し、当該タブまたは足は溝の直径部分内にはまり、挿入および取外し中に保持リングを支持する。
【0016】
上記トップページで既に引用した参考文献[1]には、試料ホルダ部材および試料ホルダと、試料ホルダ上に配置された試料メッシュと、試料メッシュを固定して保持するためのC字形リング様メッシュ保持ばねとを備える、TEM用の試料ホルダデバイスが記載されている。しかしながら、Cリングを固定するためのいかなるツールも、ばねリングのいかなる取り扱い方法も、参考文献[1]には一切開示されていない。
【0017】
対象物グリッドおよび通常はグラフェンカプセルを有する、従来技術から知られている試料キャリア組立体は、電子源と検出器との間でサンプルステージ上に真空ロードロックを介して位置付けられる。サンプルステージは、できる限り多くの側から対象物に電子ビームを照射可能にするために、最も多くの場合並進および回転の両方で、電子ビーム内で自由に移動可能である。
【0018】
この文脈における最大の制限要因は、試料グリッドを試料キャリアに取り付ける試料ステージのフレームおよびクランプによって、着目する対象物が陰になってしまうこと(shading)である。ほぼ完全な回折像を得るために、対象物は、可能な限り広い角度(通常は約±70°)で電子ビーム内で移動して露出されるべきであるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第4596934号明細書(参考文献[1])
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0029481号明細書(参考文献[2])
【特許文献3】韓国特許第10-1743146号明細書(参考文献[3])
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/170873号明細書(参考文献[4])
【特許文献5】米国特許第4954712号明細書(参考文献[5])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、対象物グリッドをキャリア内に確実に固定することを可能にする、ハンドリングツールを提供することである。さらに、本発明の目的は、試料キャリアシステムを容易に製造することができる方法、ならびに、組立てに便利なように特に設計された試料キャリア、対象物グリッド、および固定クランプを含む試料キャリアシステムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
キャリア内にサンプルを固定するときに、極小の小型Cリングばねクリップをハンドリングするためのツールに関して、本発明に従って、驚くほど簡単かつ効果的に、上記トップページで定義した通りの一般的な試料キャリアを組み立てるためのツールによって、上記の目的が達成され、ツールが、円筒ピンを囲む保持スリーブを有する細長い中空ハンドリングデバイスを備え、円筒ピンが、ピンが保持スリーブの下端において保持スリーブから突起する第1の位置からピンが保持スリーブ内へ引き込まれる第2の位置までの方向と、その逆の方向との両方向に、保持スリーブ内で並進移動可能であり、中空ハンドリングデバイスが、円筒ピンをその第1の位置に移動させることによってC字形固定リングが試料ホルダの溝に押し込まれることができるように、設計および寸法決めされていること、を特徴とする。
【0022】
試料ホルダは、対象物グリッドを挿入することができる円形の貫通ホールをその中心に有し、また、試料ホルダの上側から距離を置いて貫通ホールの内側を走り且つ貫通ホールの内壁からその中心に向かって半径方向に突出している突起を有する。
【0023】
サンプルホルダ内で対象物グリッドの取付け位置にある対象物グリッドは、突起の上方側に設置されている。
【0024】
対象物グリッドの上方側で貫通ホールに挿入された後の固定リングの取付け位置にある固定リングは、貫通ホールの内壁に対してクランプしており、且つ同時に対象物グリッドを突起に対して保持している。
【0025】
対象物グリッドが貫通ホールに挿入されて試料ホルダ内の突起の上に配置された後、円筒ピンをその第1の位置に移動させることでC字形固定リングを貫通ホールに、対象物グリッド上へと、押し込み、これによって、固定リングを対象物グリッドの上の位置に押し付けることができる。
【0026】
本発明によれば、1つだけのクリップリングが使用されており、したがって、その全高は低い。
【0027】
試料キャリアシステムを容易に製造することができる方法に関して、本発明の目的は、以下に詳細に説明する2つの代替的な方法によって解決される。
【0028】
本発明によれば、それ自体は参考文献[2]から知られている試料キャリアシステムだが、参考文献[1]におけるようなC字形弾性固定リング有しない試料キャリアシステムは、サンプルホルダのディスク形プレートが、プレートの両側(both sides)でその貫通開口部の周りでその中心に向かって円錐形に傾斜していることを特徴とする。
【0029】
さらに、試料キャリアシステムは、スライドまたは固定クランプによって陰になる(shaded)ことなく、電子ビーム内で平面から2方向に少なくとも60°、好ましくは70°の広い角度にわたって傾けることができるようにして、対象物グリッドが陰にならないように設計される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態およびさらなる発展
中空ハンドリングデバイスが、円筒ピンがその第2の位置にあるときは固定リングが中空保持スリーブの内側に受け入られることができ、円筒ピンがその第1の位置にあるときに固定リング上へ押されるときは前記固定リングが保持スリーブから外へ試料ホルダの貫通ホール内へスライドすることができるように、設計および寸法決めされていることを特徴とする、本発明の実施形態の類が好ましい。
【0031】
その基本バージョンでは、当該ツールの円筒ピンを使用して、C字形固定リングをその最終的な位置に簡単に押し込んでもよい。この実施形態については、固定リングが溝内へスライドできるように、サンプルホルダが、その貫通開口部の周りにおいてその中心に向かって円錐形に傾斜していることが、好ましい。
【0032】
実施形態のこの類の、特に好ましいさらなる発展では、ツールは、好ましくは、中央の特にテーパ状または円錐の突起を有する、保持デバイスを備え、固定リングは、当該保持デバイス上に配置されることができ、固定リングは、後に当該保持デバイスから中空ハンドリングデバイスで取り上げられることができる。
【0033】
C字形固定リングは小さいため、平坦な面からではなくそれを取り上げるための円錐上にそれを配置するほうが、ユーザにとってはより使いやすい。
【0034】
当該さらなる発展の、有利な変形では、保持デバイスの突起が、フォーク形グリッパのための係合部として機能することができる凹部から、中心で突出している。
【0035】
好ましくは、突出部が、凹部から垂直に突出している保持デバイスの突起に取り付けられて、固定リングを当該突起上に正しく位置付けることができるようになっている。
【0036】
突起は、「C」の開口部を突起と一致させながらC字形固定リングを円錐上に対称的に位置付けるためのものである。これは、予め張力がかけられた(予張力がかけられた)Cリングをフォーク形グリッパと係合させるステップにとって重要である。もし「C」が対称的に係合させられていないと、そのCリングがグリッパから滑って外れる可能性があるためである。
【0037】
上記の実施形態の好ましいさらなる発展では、フォーク形グリッパが、そのフォーク形グリッパを確実な嵌合で保持スリーブの下端に配置することができるように且つそのフォーク形グリッパのフォークを保持デバイスの凹部に挿入することができるように、設計されている。
【0038】
これは、フォーク形グリッパが固定リングと共に保持デバイス上に配置されるとき、フォークのテーパ状部分が一緒に押圧することで、リングがフォークの内側でハンドリングデバイスのスリーブ内へスライドすること、ここで、リングが試料キャリア内に押し込まれて対象物グリッドをクランプする前に、固定リングの予張力によってリングが壁に対して保持されている、という点でさらに改善することができる。
【0039】
上記の実施形態のさらなる発展の、有利な類では、保持デバイスの周りの追加のガイドスリーブが、ハンドリングデバイスを保持デバイス上に垂直に位置付けるために設けられている。
【0040】
さらなる発展の上記の類の、好ましい変形は、ガイドスリーブが、ガイドスリーブが保持デバイス上に同心円状に配置されることができるように、中空円筒形であり、且つ、そのガイドスリーブの内径が保持デバイスの外径と合うように設計されていることを特徴とする。
【0041】
これらの変形は、フォーク形グリッパの外径が保持デバイスの外径以下であることで、ガイドスリーブが保持デバイス上に配置されるとき、フォークが保持デバイスの凹部内に垂直に係合するように、フォーク形グリッパを有するハンドリングデバイスが配置される、という点で、なおさらに改善することができる。
【0042】
本発明の単純明快な実施形態では、作動要素、特にボタンが、円筒ピンの上方側に設けられ、作動要素の外径が保持スリーブの外径よりも大きいことが好ましい。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態は、その第2の位置にある、保持スリーブ内に引き込まれたその円筒ピンを保持するために、引込み要素、特に戻しばねが設けられており、このため、ピンが保持スリーブの下端において保持スリーブから突起する、その第1の位置に、その円筒ピンを移動または保持するために円筒ピンに力を加えなければならないことを特徴とする。
【0044】
これは、円筒ピンの下端に止まり穴(blind boring)が設けられる場合に、有利であり得る。
【0045】
本発明は、上記のようなツールによって試料キャリア組立体を組み立てるために使用することができ、試料キャリアシステムは、試料ホルダと、分析装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッドまたはメッシュと、を含み、対象物グリッドまたはメッシュを試料ホルダに可逆的にまたは取外し可能に固定するための固定機構を有し、ここで、試料ホルダは、プレートを有し、これは、上側と、隣接する下側とを有し、また、そのプレートは、その中心に貫通開口部を有し、その中に対象物グリッドまたはメッシュを挿入して、C字形弾性固定リングによってそこに固定することができ、ここで、サンプルホルダのディスク形プレートは、プレートの上側から距離を置いて貫通開口部の周りを走る突起を有し、かつ貫通開口部の内側からその中心に向かって半径方向に突起しており、ここで、サンプルホルダ内でその取付け位置にある対象物グリッドまたはメッシュは、突起の上方側に設置されており、ここで、対象物グリッドまたはメッシュの上方側で貫通開口部に挿入された後のその取付け位置にあるC字形固定リングは、貫通開口部の内壁に対してクランプしており、且つ対象物グリッドまたはメッシュを突起に対して押圧しており、ここで、サンプルホルダのディスク形プレートは、プレートの第1の側で、貫通開口部の周りでその中心に向かって円錐形に傾斜しているものであって、本発明は、サンプルホルダのディスク形プレートが、プレートの第2の側でも、貫通開口部の周りでその中心に向かって円錐形に傾斜していることを特徴とする。
【0046】
影を投じられること(shadowing)が低減されるため、傾斜している面によって、測定/撮像中におけるより大きな画角が可能になる。最後に取り付けられる試料キャリア組立体には、電子ビーム透過および回折によって構造が決定される単一分子サンプルが保持される。したがって、大きな角度の開口部で、すべての側から、分子を電子ビームに対して露出させることが重要である。したがって、両側の傾斜した面によって、より大きな画角が可能になる。
【0047】
特に好ましい実施形態では、試料キャリア組立体は、サンプルホルダのプレートが、プレートの中央平面に対して垂直な円形の貫通ボアを伴うディスク形であり、貫通開口部の内壁が、中央平面内で円周方向に走る溝を有し、且つC字形固定リングが、溝に嵌合するように設計されていることを特徴とする。
【0048】
本発明はまた、上記のツールによって、分析装置における試料キャリア組立体を組み立てるための方法であって、
(a)測定サンプルを収容する対象物グリッドを、試料ホルダの貫通ホール内の突起上に付けるステップと、
(b)C字形固定リングを、その貫通ホールを覆って試料ホルダの上に置くステップと、
(c)細長い中空ハンドリングデバイスを、固定リングを覆って配置するステップと、
(d)円筒ピンをその第1の位置に移動することによって、固定リングを対象物グリッドの上の位置に押し込むステップと、
を特徴とする、方法を包含する。
【0049】
ツールを使用することによって、予張力がかけられたCリングでグリッドをクランプするユーザの労力は大幅に少なくなる。
【0050】
さらなる方法変形であって、
(a)測定サンプルを収容する対象物グリッドを、試料ホルダの貫通ホール内の突起上に付けるステップと、
(c)細長い中空ハンドリングデバイスを、C字形固定リングを覆って配置するステップと、
(e)ハンドリングデバイスの円筒ピンを、中空保持スリーブの内側の、その第2の位置に引き込むステップと、
(f)保持スリーブの下端を、固定リング上へ押すことによって、固定リングを受け入れて円筒ピンの下の位置に保持するステップと、
(g)固定リングを伴うハンドリングデバイスを、その貫通ホールを覆って試料ホルダの上に置くステップと、
(d)円筒ピンをその第1の位置に移動することによって、固定リングを、試料ホルダの貫通ホールの内側の、対象物グリッドの上の位置に押し込むステップと、
を特徴とする、方法変形も好ましい。
【0051】
保持スリーブの直径が貫通ホールの内側リムの直径以下である場合、Cリングは、詰まることなく試料ホルダの溝に直接押し込まれ得る。
【0052】
さらなる利点は、説明および添付の図面から抽出することができる。上記および下記の特徴は、個別に、または任意の組み合わせで集合的に、本発明に従って使用することができる。言及される実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明の説明のための例示的な特徴を有する。
【0053】
本発明が、図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1a】試料キャリアの上にセットされた、本発明によるツールの実施形態の空間図を左側に示し、試料キャリア組立体であって、ツールがセットされ、かつ試料ホルダの上面とツールとの間に固定リングが配置され、中空ハンドリングデバイスの保持スリーブの内側に引き込まれたピンを有する、試料キャリア組立体の部分拡大断面図を右側に示す。
【
図1b】
図1aの右側に示されているのと同じ部分図であるが、保持スリーブの内側のピンは、固定リングを試料ホルダの溝に位置付けるために押し下げられている。
【
図2a】貫通開口部を有し当該貫通開口部内に溝が走っているディスク形プレートを有する試料ホルダと、分析装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッドと、C字形弾性固定リングと、を含む、従来技術による試料キャリア組立体の空間図である。
【
図2b】
図2aの組立体であり、対象物グリッドは、貫通開口部の内側に位置付けられて試料ホルダの溝に着座し、固定リングは、対象物グリッドの上に、その対象物グリッドを試料ホルダに固定するために配置されている。
【
図3a】中央に円錐突起を有し、その上に固定リングが後で取り出せるように配置される、保持デバイスの実施形態を示す図であり、保持デバイスは、フォーク形グリッパのための係合部として機能することができる凹部を有する。
【
図3b】本発明による位置決めツール全体の実施形態を示す図であり、
図3aの保持デバイスは、追加のガイドスリーブ(ここでは断面図)と、追加のガイドスリーブの上の、フォーク形グリッパを有するハンドリングデバイスとによって囲まれている。
【
図4a】フォーク形グリッパが装備された
図3aの保持デバイスを使用して、
図3bのツールにクランプリングを挿入するための手順ステップを示す図である。
【
図4b】フォーク形グリッパが装備された
図3aの保持デバイスを使用して、
図3bのツールにクランプリングを挿入するための手順ステップを示す図である。
【
図4c】フォーク形グリッパが装備された
図3aの保持デバイスを使用して、
図3bのツールにクランプリングを挿入するための手順ステップを示す図である。
【
図4d】フォーク形グリッパが装備された
図3aの保持デバイスを使用して、
図3bのツールにクランプリングを挿入するための手順ステップを示す図である。
【
図5a】左側に示されるのは、試料キャリアの上にセットされた、
図1aに示すものと同様の、本発明によるツールの実施形態の空間図であって、ハンドリングデバイスの下部および試料キャリアは、さらなるガイドスリーブによって囲まれている。右側に示されるのは、試料キャリア組立体の部分拡大断面図であって、その上にツールがセットされ、且つ試料ホルダの上面とツールとの間に固定リングが配置され、その保持スリーブの内側にある、引き込まれたピンを有する、やはり
図1aの右側に示すものと同様のものである。
【
図5b】
図5aの右側に示されているツールの部分拡大断面図である。ただし、保持スリーブの内側のピンは、
図1bに示すものと同様に固定リングを試料ホルダの溝に位置付けるために、ボールペンのように押し下げられている。
【発明を実施するための形態】
【0055】
電子線回折における必須の構成要素は、顕微鏡の高真空範囲内のステージに取り付けられる、試料ホルダシステムである。
図2aの分解図に示すように、システムは、試料ホルダ21と、分析装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッド22と、対象物グリッド22を試料ホルダ21のディスク形プレート25を介して貫通開口部26内の溝24に取外し可能に固定するための、弾性を有するC字形固定リング23と、を有する試料キャリア組立体20を備える。
【0056】
サンプルの可能な限り広い角度を露出させるために、リング形スライドは、中心に向かって円錐形に傾斜している。内側開口部は、本質的に対象物グリッド22のサイズに対応し、試料ホルダ21の突出部は、グリッドの支持縁として機能する。グリッドの直径は3mmしかないため、C字形固定リング23がキャリアの縁を超えて突起しないような小さな厚みを有するものとして、その結果、クランプリングが陰を作ってしまわない(遮蔽を引き起こさない)ようにすることが、重要である。同時に、クランプリングは、対象物グリッド22が可能な限り少ない動きで固定されることを確実にするために、十分なクランプ力を有するべきである。
【0057】
対象物グリッド22が試料ホルダ21の開口部に挿入されるとき、C字形固定リング23は、開口部の他方側からクランプとして挿入されて溝24内にクランプされ、その結果、対象物グリッド22がスライドに遊びなく摩擦連結される。
【0058】
図2bは、対象物グリッド22が、容易に組み立てられる試料キャリア20内で、固定リング23によって試料ホルダ21内にどのようにクランプされるかを示す。これらの非常に小さな寸法に作られた部品を、廃物を作り出すことなく組み立てることは、ユーザにとって決してささいなことではないということが想像できる。
【0059】
この文脈において、特に
図2aおよび
図2bに示すように、キャリアの傾斜した幾何学的形状が、特に、縁に向かってよりも中心に向かってより急な角度が配置される場合が有用であり得る。斜面は主に、ビームコーン(beam cone)が理由となって、かつキャリアが電子ビーム内で回転されるときに遮蔽を回避するように、形づくられる。しかし、より急な角度は、Cリングクリップ組立体を適切にクランプするのにも役立つ。クリップリングは、所定の経路で斜面を越えて溝へ滑り込む。
【0060】
特に、試料ホルダ21は、ディスク形プレート25を有し、これは、上側と、隣接する下側とを有し、また、ディスク形プレート25は、その中心に貫通開口部26を有し、その中に対象物グリッド22またはメッシュを挿入して、C字形弾性固定リング23によってそこに固定することができる。試料ホルダ21のプレート25は、プレート25の上側から距離を置いて貫通開口部26の周りを走る溝24を有し、かつ貫通開口部26の内側からその中心に向かって半径方向に突起している。試料ホルダ21内でその取付け位置にある対象物グリッド22は、溝24の上方側に設置されている。対象物グリッド22の上方側で貫通開口部26に挿入された後のその取付け位置にある固定リング23は、貫通開口部26の内壁に対してクランプしており、且つ対象物グリッド22を溝24に対して押圧している。試料ホルダ21のディスク形プレート25は、プレート25の第1の側で、貫通開口部26の周りでその中心に向かって円錐形に傾斜している。
【0061】
図1aおよび
図1bに示す本発明の好ましい実施形態では、試料ホルダ21のディスク形プレート25は、プレート25の第2の側でも、貫通開口部26の周りでその中心に向かって円錐形に傾斜している。影を投じられること(shadowing)が低減されるため、両方の面の傾斜によって、測定/撮像中におけるより大きな画角が可能になる。特に、試料ホルダ21のプレート25は、プレート25の中央平面に対して垂直な円形の貫通ボア26を伴うディスク形であり、貫通開口部26の内壁は、中央平面内で円周方向に走る溝24を有し、且つC字形固定リング23は、溝24に嵌合するように設計されている。
【0062】
対象物の準備中の誤りを回避するために、本発明は、試料キャリア組立体20を組み立てるための特別に設計されたツール10を提案する。
図1a、
図3bおよび
図5aに示すこのツール10で、クランプリング23は、確実に且つ時間を節約する態様で、試料ホルダ21の溝24に挿入されることができる。最も単純なバージョンにおいては、ツール10は、円筒ピン11’’を囲む保持スリーブ11’を有する細長い中空ハンドリングデバイス11を備え、当該中空ハンドリングデバイス11は、対象物グリッド22および固定リング23が試料ホルダ21に挿入されると、ピン11’’がその上に押し付けられるとき、当該C字形固定リング23が溝24内へスライドすることができるように、寸法決めされる。
【0063】
円筒ピン11’’は、保持スリーブ11’によって囲まれており、それによって、ピン11’’は、ピン11’’が下端でスリーブ11’から突起する
図1bに示す第1の位置から、ピン11’’が保持スリーブ11’内へ引き込まれる
図1aに示す第2の位置まで、スリーブ11’内で並進移動可能である。両方の位置において、ピン11’’の上端は、スリーブ11’から突起し、その結果、ユーザは、ボールペンの機構と同様に、ピン11’’を2つの位置の間で移動させることができる。
【0064】
第2の位置では、
図1aに示すように、ツール10は、固定リング23が保持スリーブ11’の内側に受け入れられることを可能にする。スリーブ11’は、試料ホルダ21上に容易に配置されて、キャリアに挿入される試料グリッド22をクランプすることができる。ピン11’’を前方に押すことにより、固定リング23は、スリーブ11’から、所定の溝24内に押し出される。
【0065】
好ましくは、円筒ピン11’’がその第2の位置にあるとき、固定リング23が中空保持スリーブ11’の内側に受け入られることができ、円筒ピン11’’がその第1の位置で当該固定リング23上へ押されるとき、固定リング23が保持スリーブ11’から外へスライドすることができるように、中空ハンドリングデバイス11が設計および寸法決めされる。
【0066】
図4a~
図4dおよび
図5bに示すように、円筒ピン11’’を、保持スリーブ11’内に引き込まれた当該円筒ピン11’’の第2の位置に保持するために、リセット要素12、特に戻しばねが設けられている。ピン11’’が保持スリーブ11’の下端で当該保持スリーブ11’から突起する、その第1の位置に、円筒ピン11’’を移動または保持するためには、ボールペンの操作と同様に、当該円筒ピン11’’に力を加えなければならない。
【0067】
作動要素13、特にボタンは、円筒ピン11’’の上方側に設けられている。作動要素13の外径は、好ましくは、保持スリーブ11’の外径よりも大きい。
【0068】
部品が繊細であるため、固定リング23をツール10のスリーブ11’に挿入するときに困難が生じる可能性がある。本発明によれば、この目的のために保持デバイス30が提案され、当該保持デバイス30には、C字形弾性固定リング23が最初に配置される。
図3aに示すように、保持デバイス30は、固定リング23を保持するためのテーパ状または円錐突起31を含む。
図3bに示すように、円錐は、フォーク形グリッパ40のための係合部として機能することができる凹部32から中心において突起する。任意的に、小さな突出部(図示せず)を溝に対して90°で円錐に取り付けることができ、その結果、固定リング23を正しく位置付けることができる。
【0069】
フォーク形グリッパ40が確実な嵌合によって保持スリーブ11’の下端に配置することができ、且つそのフォーク形グリッパ40のフォークを保持デバイス30の凹部32に挿入することができるように、フォーク形グリッパ40が設計されている。好ましくは、フォーク形グリッパ40が固定リング23と共に保持デバイス30上に配置されるとき、フォークのテーパ状部分がCリング23を圧縮し、その結果、リング23がフォークの内側でハンドリングデバイス11のスリーブ11’内へスライドするものであって、この場合、そのリング23は、試料ホルダ21内に押し込まれて対象物グリッド22をクランプする前に、固定リング23の予張力によって壁に対して保持されている。
【0070】
図3bに示すような、保持デバイス30の周りの追加のガイドスリーブ33は、ハンドリングデバイス11を保持デバイス30上に垂直に位置付けるのに有用である。ガイドスリーブ33が保持デバイス30上に同心円状に配置されることができるように、ガイドスリーブ33は、中空円筒形でありかつその内径が保持デバイス30の外径と合うように設計されている。フォーク形グリッパ40の外径は、保持デバイス30の外径以下であり、その結果、ガイドスリーブ33が保持デバイス30上に配置されるとき、フォークが保持デバイス30の凹部32内に垂直に係合するように、フォーク形グリッパ40を有するハンドリングデバイス11が配置される。
【0071】
図4a~
図4dは、
図3bのツール10に固定リング23を挿入するための必須の手順ステップを示しており、ハンドリングデバイス11には、フォーク形グリッパ40が装備されている。
【0072】
図4aでは、固定リング23は、保持デバイス30の円錐突起31上に位置付けられ、ハンドリングデバイス11は、保持デバイス30の上方のガイドスリーブ33に挿入される。
【0073】
図4bでは、ハンドリングデバイス11のフォーク形グリッパ40は、保持デバイス30の凹部32に挿入される。
【0074】
図4cでは、保持スリーブ11’の下端は、固定リング23が保持スリーブ11’の中空端部に受け入れられるように、固定リング23を覆っている。
【0075】
図4dでは、ハンドリングデバイス11は、中空保持スリーブ11’の内側に位置付けられた固定リング23と一緒に保持デバイス30から引き込まれ、ガイドスリーブ33の内側の保持デバイス30上にフォーク形グリッパ40が残される。
【0076】
プレート25の貫通開口部26の内側の溝24上の対象物グリッド22の上に固定リング23を取り付けるための以下のステップは、
図5aおよび
図5bに示されている。
【0077】
図5aでは、ハンドリングデバイス11は、中空保持スリーブ11’の内側に位置付けられた固定リング23と一緒に、試料ホルダ21の周りに配置されたさらなるガイドスリーブ35に挿入され、対象物グリッド22は、プレート25の貫通開口部26内の溝24上に既に位置付けられており、一方、円筒ピン11’’は、依然としてその第2の位置で保持スリーブ11’の内側に引き込まれている。
【0078】
図5bでは、ハンドリングデバイス11の円筒ピン11’’は、その第1の位置まで、すなわち、ピン11’’が中空保持スリーブ11’の下端で当該中空保持スリーブ11’から突起する位置まで押し込まれ、それによって固定リング23を対象物グリッド22の上に配置する。
【符号の説明】
【0079】
10 試料キャリア組立体を組み立てるためのツール
11 ハンドリングデバイス
11’ 保持スリーブ
11’’ 円筒ピン
12 リセット要素
13 作動要素
20 試料キャリア組立体
21 試料ホルダ
22 対象物グリッド
23 C字形弾性固定リング
24 溝
25 プレート
26 貫通開口部
30 保持デバイス
31 中央の突起
32 凹部
33 ガイドスリーブ
35 さらなるガイドスリーブ
40 フォーク形グリッパ
【0080】
従来技術の引用のリスト
本発明の特許性を評価するために考慮される刊行物:
[1]米国特許第4596934号明細書
[2]米国特許出願公開第2007/0029481号明細書
[3]韓国特許第10-1743146号明細書
[4]米国特許出願公開第2015/170873号明細書
[5]米国特許第4954712号明細書
【手続補正書】
【提出日】2022-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子撮像装置の試料キャリア組立体を組み立てるためのツールであって、前記試料キャリア組立体は、試料ホルダと、前記電子撮像装置での測定中にサンプルを収容する対象物グリッドと、前記対象物グリッドを前記試料ホルダの貫通開口部に隣接した溝に取外し可能に固定するための弾性のC字形固定リングと、を有し、
前記ツールは、円筒ピンを囲む保持スリーブを有する細長い中空ハンドリングデバイスであって、前記ピンが前記保持スリーブの下端において前記保持スリーブから突起する第1の位置から前記ピンが前記保持スリーブ内へ引き込まれる第2の位置までの方向と、その逆の方向との両方向に、前記保持スリーブ内で並進移動可能であるもの、を備え、
前記中空ハンドリングデバイスは、前記円筒ピンをその第1の位置に移動させることによって前記C字形固定リングが前記試料ホルダの前記溝に押し込まれることができるように構成されている
ことを特徴とする、ツール。
【請求項2】
前記中空ハンドリングデバイスは、前記円筒ピンがその第2の位置にあるときは前記固定リングが中空の前記保持スリーブの内側に受け入られることができ、前記円筒ピンがその第1の位置にあるときにその上へ押されるときは前記固定リングが前記保持スリーブから外へスライドすることができるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項3】
中央の突起を有する保持デバイスであって、前記固定リングが、前記保持デバイス上に配置され、後に前記保持デバイスから前記中空ハンドリングデバイスで取り上げられることができるもの、を更に備えることを特徴とする請求項2に記載のツール。
【請求項4】
前記保持デバイスの前記突起は、フォーク形グリッパのための係合部として機能することができる凹部から、中心に突出していることを特徴とする請求項3に記載のツール。
【請求項5】
前記固定リングをその上に正しく位置付けることができるように、前記凹部から垂直に突出している前記保持デバイスの前記突起に取り付けられた突出部を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のツール。
【請求項6】
前記フォーク形グリッパは、前記フォーク形グリッパを確実な嵌合で前記保持スリーブの前記下端に配置することができるように且つ前記フォーク形グリッパのフォークを前記保持デバイスの前記凹部に挿入することができるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のツール。
【請求項7】
前記フォーク形グリッパが前記固定リングと共に前記保持デバイス上に配置されるとき、前記フォークのテーパ状部分が一緒に押圧することで、前記リングが前記フォークの内側で前記ハンドリングデバイスの前記スリーブ内へスライドすること、それは、前記試料ホルダ内に押し込まれて前記対象物グリッドをクランプする前に、前記固定リングの予張力によって壁に対して保持されていること、を特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項8】
前記ハンドリングデバイスを前記保持デバイス上に垂直に位置付けるための、前記保持デバイスの周りの追加のガイドスリーブを更に備えることを特徴とする請求項3に記載のツール。
【請求項9】
前記ガイドスリーブは、前記ガイドスリーブが前記保持デバイス上に同心円状に配置されることができるように、中空円筒形であり、且つ、前記保持デバイスの外径と合う内径を有することを特徴とする請求項8に記載のツール。
【請求項10】
フォーク形グリッパの外径が前記保持デバイスの外径以下であることで、前記ガイドスリーブが前記保持デバイス上に配置されるとき、フォークが前記保持デバイスの凹部内に垂直に係合するように、前記フォーク形グリッパを有する前記ハンドリングデバイスが配置されることを特徴とする請求項9に記載のツール。
【請求項11】
その第2の位置にある、前記保持スリーブ内に引き込まれた前記円筒ピンを保持するためのリセット要素を更に備え、このため、前記ピンが前記保持スリーブの下端において前記保持スリーブから突起する、その第1の位置に、前記円筒ピンを移動または保持するために前記円筒ピンに力を加えなければならないことを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項12】
請求項2に記載のツールを使用して、電子撮像装置における試料キャリア組立体を組み立てるための方法であって、
(a)測定サンプルを収容する前記対象物グリッドを、前記試料ホルダの貫通開口部内の前記溝内に配置するステップと、
(b)前記細長い中空ハンドリングデバイスを、前記C字形固定リングを覆って配置するステップと、
(c)前記ハンドリングデバイスの前記円筒ピンを、中空の前記保持スリーブ内の、その第2の位置に引き込むステップと、
(d)前記保持スリーブの下端を前記固定リング(23)上に押圧し、これによって前記固定リングを受け入れて前記円筒ピンの下の位置に保持するステップと、
(e)前記固定リングを伴う前記ハンドリングデバイスを、前記試料ホルダの上に、その貫通開口部を覆って置くステップと、
(f)前記円筒ピンをその第1の位置に移動することによって、前記固定リングを、前記試料ホルダの前記貫通開口部の内側の前記対象物グリッドの上の位置に押し込むステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載のツールを使用して、電子撮像装置における試料キャリア組立体を組み立てるための方法であって、
(a)測定サンプルを収容する前記対象物グリッドを、前記試料ホルダの前記溝内に配置するステップと、
(b)前記C字形固定リングを、前記試料ホルダのその貫通開口部の上に配置するステップと、
(c)前記細長い中空ハンドリングデバイスを、前記固定リングを覆って配置するステップと、
(d)前記円筒ピンをその第1の位置に移動することによって、前記固定リングを、前記対象物グリッドの上の位置に押し込むステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【外国語明細書】