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特開2022-128590一体型受動デバイス上に積み重ねられたバルク音響波共振器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128590
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】一体型受動デバイス上に積み重ねられたバルク音響波共振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/17 20060101AFI20220826BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20220826BHJP
   H03H 9/56 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
H03H9/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022022554
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】17/182,988
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ガリポー
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・エム・リア
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA07
5J108BB08
5J108EE03
5J108GG03
5J108GG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一体BAW共振器及びBAWベースフィルタの性能を改善し、かつ、それらに関連するコスト及びサイズを減少させるバルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】BAWアシストフィルタ構造50は、BAWフィルタ構造52と、一体型受動デバイス(IPD)54と、ベース56と、を有する。IPD54は、電極と、圧電層と、を有するBAW共振器に電気的に結合され、高周波動作を提供する。BAWアシストフィルタ構造は、IPD上に積み重ねられたBAW共振器に電気的に近接しており、低い挿入損失を有し、電気的長さの寄生損失を軽減する。BAWアシストフィルタ構造は、高周波のフィルタリング性能を改善する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造であって、
電気回路を含む少なくとも1つの一体型受動デバイス(IPD)と、
前記IPD上の少なくとも1つのBAW共振器と、を備え、
基板と、
前記基板上の少なくとも1つのトランスデューサであって、前記少なくとも1つのトランスデューサが、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の圧電層と、を備える、少なくとも1つのトランスデューサと、を備え、前記少なくとも1つのIPDの前記電気回路が、前記BAW共振器に電気的に結合されている、バルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造。
【請求項2】
前記少なくとも1つのIPDが、ガラスIPDを備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項3】
前記少なくとも1つのIPDが、楕円フィルタを備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つのIPDが、高域通過フィルタまたは低域通過フィルタのうちの少なくとも一方を備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項5】
前記IPDが、直列コンデンサを備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項6】
前記IPDが、並列LCタンク回路を備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項7】
前記IPDが、直列コンデンサと、並列LCタンク回路と、を備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項8】
前記IPDが、前記少なくとも1つのBAW共振器に電気的に結合するための導電性ランディングパッドを備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項9】
前記少なくとも1つのBAW共振器が、前記IPDに電気的に結合するためのピラーを備える、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項10】
前記IPDが、導電性ランディングパッドを備え、
前記少なくとも1つのBAW共振器が、前記IPDの前記導電性ランディングパッドと整合され、かつ電気的に結合されたピラーを備える、
請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項11】
前記IPDが、RF信号入力を受信するように構成されており、前記少なくとも1つのBAW共振器が、前記RF信号入力から下流の2つ以上の接合部で前記IPDに電気的に結合されている、請求項1に記載のBAWアシストフィルタ構造。
【請求項12】
バルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造を製造する方法であって、
少なくとも1つの一体型受動デバイス(IPD)上に、少なくとも1つのBAW共振器を積み重ねることであって、前記BAW共振器が、基板と、前記基板上の少なくとも1つのトランスデューサであって、前記少なくとも1つのトランスデューサが、第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極との間の圧電層、を備える、少なくとも1つのトランスデューサと、を備える、積み重ねることと、
前記少なくとも1つのBAW共振器を前記少なくとも1つのIPDの電気回路に電気的に結合させることと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのIPDが、ガラスIPDを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記IPDが、直列コンデンサを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記IPDが、並列LCタンク回路を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記IPDが、直列コンデンサと、並列LCタンク回路と、を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記IPDが、前記少なくとも1つのBAW共振器に電気的に結合するための導電性ランディングパッドを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのBAW共振器が、前記IPDに電気的に結合するためのピラーを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記IPDが、導電性ランディングパッドを備え、
前記少なくとも1つのBAW共振器が、前記IPDの前記導電性ランディングパッドと整合され、かつ電気的に結合されたピラーを備える、
請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記IPDが、RF信号入力を受信するように構成されており、前記少なくとも1つのBAW共振器が、前記RF信号入力から下流の2つ以上の接合部で前記IPDに電気的に結合されている、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波処理のために一体型受動デバイス上に積み重ねられた少なくとも1つのBAW共振器を有するバルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
音響共振器、および特にバルク音響波(BAW)共振器は、多くの高周波通信用途において使用される。特に、BAW共振器は、フィルタ回路網で採用されることが多く、そのフィルタ回路網は、1.5GHzを超える周波数で動作し、平坦な通過帯域を必要とし、通過帯域の上端および下端に非常に急峻なフィルタ裾部および矩形の肩部を有し、かつ通過帯域の外側に優れた阻止帯を提供する。BAWベースフィルタはまた、比較的低い挿入損失を有し、動作周波数が増加するにつれてサイズも減少する傾向があり、また広い温度範囲にわたって比較的安定している。したがって、BAWベースフィルタは、多くの第3世代(3G)、第4世代(4G)、および第5世代(5G)の無線デバイスに対して選択されるフィルタである。これらの無線デバイスのほとんどは、同じ無線デバイス上で、携帯電話、ワイヤレスフィディリティ(Wi-Fi)、Bluetooth、および/または近距離通信をサポートし、したがって、非常に困難なフィルタリング要求を突きつける。これらの要求により、無線デバイスの複雑さが上昇し続ける一方で、BAW共振器およびBAWベースフィルタの性能を改善し、かつそれらに関連するコストおよびサイズを減少させる必要性が常に存在する。
【0003】
現在、BAWベースフィルタは、約6GHzを超える信号をフィルタリングすることが困難である。特に、典型的には、周波数が増加するにつれて、損失も同様に増加する。BAWベースフィルタを用いて高周波でフィルタリングするには、課題が残る。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態は、一体型受動デバイス(IPD)上に積み重ねられたBAW共振器を有するバルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造を対象とする。本明細書に開示される例示的な態様では、BAWフィルタ構造は、電極、およびそれらの電極間の圧電層を有するトランスデューサを含む。IPDは、BAW共振器に電気的に結合され、高周波動作を備える。このような構成では、BAWアシストフィルタ構造は、IPD上に積み重ねられたBAW共振器に電気的に近接しているため、低い挿入損失を有し、かつ電気的長さの寄生損失を軽減する。さらに、BAWアシストフィルタ構造は、高周波をフィルタリングすることができ、フィルタ性能を改善し、フィルタ伝達関数の設計においてより大きな柔軟性を提供する。
【0005】
本開示の一実施形態は、積層体を含むバルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造に関する。このBAWアシストフィルタ構造は、その積層体上に、少なくとも1つの一体型受動デバイス(IPD)をさらに含む。その少なくとも1つのIPDは、電気回路を含む。このBAWアシストフィルタ構造は、基板を含む、IPD上に少なくとも1つのBAW共振器をさらに含む。この少なくとも1つのBAW共振器は、基板上に少なくとも1つのトランスデューサをさらに含む。この少なくとも1つのトランスデューサは、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間の圧電層を含む。この少なくとも1つのIPDの電気回路は、BAW共振器に電気的に結合される。
【0006】
本開示の別の実施形態は、積層体上に少なくとも1つの一体型受動デバイス(IPD)を位置決めすることを含む、バルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造を製造する方法に関する。この方法は、少なくとも1つのIPD上に少なくとも1つのBAW共振器を積み重ねることをさらに含み、そのBAW共振器は、基板と、その基板上の少なくとも1つのトランスデューサと、を備える。この少なくとも1つのトランスデューサは、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極との間の圧電層を含む。この方法は、少なくとも1つのBAW共振器を少なくとも1つのIPDの電気回路に電気的に結合することをさらに含む。
【0007】
当業者は、添付図面の図と関連して、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後に、本開示の範囲を理解し、その追加の態様を認識するであろう。
【0008】
この明細書の一部に組み込まれ、かつそれを形成する添付図面の図は、本開示のいくつかの態様を例示し、その説明とともに、本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来のバルク音響波(BAW)共振器を例示する。
図2】理想的なBAW共振器の周波数の関数としての、周波数応答にわたるインピーダンスの大きさおよび位相のグラフである。
図3A】各種のBAW共振器構成の位相応答のグラフである。
図3B】各種のBAW共振器構成の位相応答のグラフである。
図3C】各種のBAW共振器構成の位相応答のグラフである。
図4】境界リングを有する従来のBAW共振器を例示する。
図5A】従来のはしご形回路網の概略図である。
図5BC図5Aの従来のはしご形回路網におけるBAW共振器の周波数応答、および図5Aの従来のはしご形回路網についての周波数応答のグラフである。
図6ABCDE図5Cで特定されている周波数ポイント1、2、3、4、および5における、図5Aのはしご形回路網の等価回路である。
図7】一体型受動デバイス(IPD)上に積み重ねられたBAW共振器を有するBAWアシストフィルタ構造の断面側面図である。
図8図7のBAWアシストフィルタ構造の例示的な実施形態の斜視図である。
図9図7および8のBAWアシストフィルタ構造のBAW共振器とIPDとの間の電気フィルタ回路の分岐を例示する回路図である。
図10】IPDを有さないBAWフィルタ構造と比較した、図7~9のBAWアシストフィルタ構造の性能改善を例示するグラフである。
図11図7~10のBAWアシストフィルタ構造を製造するためのステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載される実施形態は、当業者がその実施形態を実践するのを可能にするための必要な情報を表し、その実施形態を実践する最良のモードを例示する。添付図面の図に照らして以下の説明を読むと、当業者は、本開示の概念を理解し、本明細書に具体的には扱われないこれらの概念の用途を認識するであろう。これらの概念および用途は、本開示の範囲内、および添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0011】
第1、第2などの用語は、様々な要素を説明するために本明細書で使用される場合があるが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、第1の要素が、第2の要素と称される場合があり、同様に、第2の要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素と称される場合がある。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のいずれかおよびすべての組み合わせを含む。
【0012】
また、ある要素が別の要素に「接続されている」または「結合されている」ものと称される場合、その要素は、他の要素に直接接続もしくは結合されている可能性があり、または間に介在する要素が存在する可能性があることも理解されたい。対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続されている」または「直接結合されている」ものと称される場合、間に介在する要素は存在しない。
【0013】
様々な要素を説明するために、本明細書では、「上部」、「下部」、「底部」、「中間」、「中央」、「頂部」などの用語が使用される場合があるが、これらの要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、第1の要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、「上部」要素と称される場合があり、同様に、第2の要素が、これらの要素の相対的な配向に応じて、「上部」要素と称される場合がある。
【0014】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、本開示を限定することを意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈が特段明示的に他の場合を示さない限り、複数形もまた含まれることを意図される。本明細書で使用される場合、「備える」、「備える」、「含む」、および/または「含む」という用語は、記述された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在もしくは追加を排除しないことをさらに理解されるであろう。
【0015】
特段他の場合が定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、この開示が属する当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、この明細書および関連技術の文脈でそれらの意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書に明示的にそのように定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式化された意味で解釈されないことをさらに理解されるであろう。
【0016】
本開示の実施形態は、一体型受動デバイス(IPD)上に積み重ねられたBAW共振器を有するバルク音響波(BAW)アシストフィルタ構造を対象とする。本明細書に開示される例示的な態様では、BAWフィルタ構造は、電極、およびそれらの電極間の圧電層を有するトランスデューサを含む。IPDは、BAW共振器に電気的に結合され、高周波動作を提供する。このような構成では、BAWアシストフィルタ構造は、IPD上に積み重ねられたBAW共振器に電気的に近接しているため、低い挿入損失を有し、かつ電気的長さの寄生損失を軽減する。さらに、BAWアシストフィルタ構造は、高周波をフィルタリングすることができ、フィルタ性能を改善し、フィルタ伝達関数の設計においてより大きな柔軟性を提供する。
【0017】
これらの概念の詳細を掘り下げる前に、BAW共振器、およびBAW共振器を使用するフィルタの概要が提供される。BAW共振器は、多くの高周波フィルタ用途で使用されている。例示的なBAW共振器10が、図1に示される。このBAW共振器10は、固定搭載共振器(SMR)型のBAW共振器10であり、一般に、基板12、その基板12上に取り付けられた反射器14、およびその反射器14上に取り付けられたトランスデューサ16を含む。このトランスデューサ16は、反射器14上に載っており、頂部電極20と底部電極22との間に挟まれている圧電層18を含む。頂部電極20および底部電極22は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、または同様の材料で形成することができ、圧電層18は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)または他の適切な圧電材料で形成することができる。図1には、単一層を含むものとして示されているが、圧電層18、頂部電極20、および/または底部電極22は、同じ材料の複数の層、少なくとも2つの層が異なる層である複数の層、または各層が異なる材料である複数の層を含み得る。
【0018】
BAW共振器10は、活性領域24および外側領域26に分割される。この活性領域24は、通常、頂部電極20および底部電極22が重なり合うBAW共振器10のセクションに対応し、また、重なり合う頂部電極20および底部電極22の下方にも層を含む。外側領域26は、活性領域24を取り囲むBAW共振器10のセクションに対応する。
【0019】
BAW共振器10について、頂部電極20および底部電極22の両端に電気信号を印可することにより、圧電層18内に音響波が励起される。これらの音響波は、主に垂直方向に伝播する。BAW共振器設計における主な目標は、これらの垂直に伝播する音響波をトランスデューサ16内に制限することである。上向きに進行する音響波は、頂部電極20の上面における空気-金属境界によってトランスデューサ16内に反射して戻される。下向きに進行する音響波は、反射器14によって、または薄膜BAW共振器(FBAR)内のトランスデューサの直下に設けられている空気空洞によって、トランスデューサ16内に反射して戻される。
【0020】
反射器14は、典型的には、隣接する反射器層28の接合部において著しい反射係数を生成するように材料組成物で交互になっている、反射器層(RL)28A~28E(一般に、反射器層28と称される)の積み重ねによって形成されている。典型的には、反射器層28A~28Eは、タングステン(W)および二酸化ケイ素(SiO2)などの高い音響インピーダンスを有する材料と、低い音響インピーダンスを有する材料との間で交互になっている。図1には5つの反射器層28A~28Eのみが示されているが、反射器層28の数、および反射器14の構造は、設計によって異なることになる。
【0021】
比較的理想的なBAW共振器10について、周波数(GHz)の関数としての、電気インピーダンスの大きさ(Z)および位相(φ)が、図2に提供されている。電気インピーダンスの大きさ(Z)は、実線で示され、一方、電気インピーダンスの位相(φ)は、破線で示されている。BAW共振器10の固有の特徴は、それが共振周波数および反共振周波数の両方を有することである。共振周波数は、典型的には、直列共振周波数(fs)と称され、反共振周波数は、典型的には、並列共振周波数(fp)と称される。この直列共振周波数(fs)は、BAW共振器10のインピーダンスまたはリアクタンスの大きさがゼロに近づくときに生じる。この並列共振周波数(fp)は、BAW共振器10のインピーダンスまたはリアクタンスの大きさが著しく高いレベルでピークに達するときに生じる。一般に、直列共振周波数(fs)は、圧電層18の厚さ、ならびに底部電極22および頂部電極20の質量の関数である。
【0022】
位相について、BAW共振器10は、直列共振周波数(fs)と並列共振周波数(fp)との間に、90°の位相シフトを与えるインダクタンスのようにふるまう。対照的に、BAW共振器10は、直列共振周波数(fs)の下方、および並列共振周波数(fp)の上方に、-90°の位相シフトを与える静電容量のようにふるまう。BAW共振器10は、直列共振周波数(fs)では非常に低くてほぼゼロの抵抗を、また並列共振周波数(fp)では非常に高い抵抗を提示する。BAW共振器10の電気的性質は、それ自体、比較的短い範囲の周波数にわたって非常に高い品質係数(Q)インダクタンスの実現に適しており、これは、高周波フィルタ回路網、特に1.8GHz付近およびそれ以上の周波数でのそれらの動作において、非常に有益であることが証明されている。
【0023】
残念なことに、図2の位相(φ)曲線は、理想的な位相曲線を表している。現実には、この理想に近づくことは、困難である。図1のBAW共振器10についての典型的な位相曲線が、図3Aに例示されている。図3Aの位相曲線は、平滑曲線ではなく、直列共振周波数(fs)の下方、直列共振周波数(fs)と並列共振周波数(fp)との間、および並列共振周波数(fp)の上方に、リップルを含む。このリップルは、対応する周波数で生じるスプリアス共振によって引き起こされるスプリアスモードの結果である。BAW共振器10内の音響波の大部分は、垂直方向に伝播するが、トランスデューサ16の周りの様々な境界条件により、横方向(水平方向)の音響波の伝播がもたらされ、これは、横方向定在波と称される。これらの横方向定在波の存在により、BAW共振器10に関連する潜在的な品質係数(Q)が低減する。
【0024】
図4に例示されているように、境界(BO)リング30が、頂部電極20の上または内部に形成されて、ある特定のスプリアスモードを抑制する。BOリング30によって抑制されるスプリアスモードは、図3Bの位相曲線における円AおよびBによって強調表示されているように、直列共振周波数(fs)の上方のものである。円Aは、リップル、すなわち、直列共振周波数(fs)と並列共振周波数(fp)との間に存在する、位相曲線の通過帯域内のスプリアスモードの抑制を示す。円Bは、リップル、すなわち、並列共振周波数(fp)の上方のスプリアスモードの抑制を示す。とりわけ、直列共振周波数(fs)と並列共振周波数(fp)との間、および並列共振周波数(fp)の上方における、平滑なまたは実質的にリップルのない位相曲線によって立証されているように、並列共振周波数(fp)のちょうど下方にある、通過帯域の上部肩にあるスプリアスモード、および通過帯域の上方にあるスプリアスモードは、抑制されている。
【0025】
BOリング30は、活性領域24の周辺部の周りに延在する頂部電極20の部分の質量負荷に対応する。BOリング30は、頂部電極20の厚くした部分、または頂部電極20上への適切な材料の追加の層を適用することに対応し得る。BOリング30を含み、その下方に存在するBAW共振器10の部分は、BO領域32と称される。したがって、BO領域32は、活性領域24の外側の外周部分に対応し、活性領域24の内側に存在する。
【0026】
BOリング30は、直列共振周波数(fs)の上方のスプリアスモードを抑制するのに有効であるが、図3Bに示すように、BOリング30は、直列共振周波数(fs)の下方のそれらのスプリアスモードに、ほとんどまたは全く影響を与えない。アポダイゼーションと称される技術を使用して、直列共振周波数(fs)を下回るスプリアスモードを抑制することが多い。
【0027】
アポダイゼーションは、BAW共振器10内、または少なくともそのBAW共振器のトランスデューサ16内における、任意の横方向の対称性を回避するか、または少なくとも大幅に低減するように働く。この横方向の対称性は、トランスデューサ16の設置場所に対応し、横方向の対称性を回避することは、設置場所の側面に関連付けられた対称性を回避することに対応する。例えば、正方形または長方形ではなく、五角形に対応する設置場所を選択してもよい。対称性を回避することは、トランスデューサ16内の横方向定在波の存在を低減するのに役立つ。図3Cの円Cは、直列共振周波数(fs)の下方のスプリアスモードが抑制されているアポダイゼーションの効果を示している。BOリング30が設けられていないと仮定すると、アポダイゼーションが直列共振周波数(fs)を超えるそれらのスプリアスモードを抑制することに失敗することは、図3Cで容易に理解することができる。したがって、典型的なBAW共振器10は、アポダイゼーションおよびBOリング30の両方を採用する。
【0028】
上述したように、BAW共振器10は、高周波で動作し、かつ高Q値を必要とするフィルタ回路網において使用されることが多い。基本的なはしご形回路網40が、図5Aに例示されている。このはしご形回路網40は、2つの直列共振器BSERおよび2つの並列共振器BSHを含み、それらは、従来のはしご形構成で整列されている。典型的には、図5Bに示すように、直列共振器BSERは、同じまたは同様の第1の周波数応答を有し、並列共振器BSHは、同じまたは同様の第2の周波数応答を有し、この第2の周波数応答は、第1の周波数応答とは異なる。多くの用途では、並列共振器BSHは、直列共振器BSERの離調版である。その結果、直列共振器BSERおよび並列共振器BSHの周波数応答は、一般に、非常に類似しているが、互いに対してなおもずれており、このため、並列共振器の並列共振周波数(fP,SH)は、直列共振器BSERの直列共振周波数(fS,SER)に近似する。並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)は、直列共振器BSERの直列共振周波数(fS,SER)よりも小さいことに留意されたい。並列共振器BSHの並列共振周波数(fP,SH)は、直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)よりも小さい。
【0029】
図5Cは、図5Bに関連しており、はしご形回路網40の応答を例示する。並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)は、通過帯域の裾部の低い側に対応し(位相2)、直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)は、通過帯域の裾部の高い側に対応する(位相4)。直列共振器BSERの実質的に整合された直列共振周波数(fS,SER)、および並列共振器BSHの並列共振周波数(fP,SH)は、通過帯域内に入っている。
【0030】
図6A~6Eは、はしご形回路網40の応答の5つの位相の等価回路を提供する。第1の位相(位相1、図5C、6A)の間、はしご形回路網40は、入力信号を減衰させるように機能する。並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)に近づくにつれ、並列共振器BSHのインピーダンスは、急激に落ち、その結果、並列共振器BSHは、並列共振器(位相2、図5C、6B)の直列共振周波数(fS,SH)において、実質的に接地への短絡を与える。並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)において(位相2)、入力信号は、はしご形回路網40の出力から実質的に阻止される。
【0031】
並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)と、直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)との間は、通過帯域に対応し、そこでは、入力信号は、減衰が比較的ほとんどなく、または全くない状態で出力まで通過する(位相3、図5C、6C)。通過帯域内において、直列共振器BSERは、比較的低いインピーダンスを提示し、これに対して、並列共振器BSHは、比較的高いインピーダンスを提示しており、平坦な通過帯域への2つのリードの組み合わせにより、急峻な低い側の裾部、および高い側の裾部が得られた。直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)に近づくにつれ、直列共振器BSERのインピーダンスは、非常に高くなり、その結果、直列共振器BSERは、それ自体、直列共振器の並列共振周波数(fP,SER)における開口部として、実質的に提示する(位相4、図5C、6D)。直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)において(位相4)、入力信号は、再度、はしご形回路網40の出力から実質的に阻止される。最後の位相の間(位相5、図5C、6E)、はしご形回路網40は、位相1で提供されたものと同様の方法で、入力信号を減衰させるように機能する。直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)を通過すると、直列共振器BSERのインピーダンスは減少し、並列共振器BSHのインピーダンスは正常化する。したがって、はしご形回路網40は、並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)と、直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)との間に、高Q通過帯域を設けるように機能する。はしご形回路網40は、並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)、および直列共振器の並列共振周波数(fP,SER)の両方で極めて高い減衰を提供する。はしご形回路網40は、並列共振器BSHの直列共振周波数(fS,SH)の下方、および直列共振器BSERの並列共振周波数(fP,SER)の上方で良好な減衰を提供する。
【0032】
BAW共振器、およびBAW共振器を使用するフィルタの概要を提供したので、図7A~11は、BAWアシストフィルタ構造の詳細について考察する。
【0033】
図7は、一体型受動デバイス(IPD)54上に積み重ねられたBAWフィルタ構造52(BAWダイとも称され得る)を有するBAWアシストフィルタ構造50の断面側面図である。このBAWフィルタ構造52は、1つ以上のBAW共振器10(図1を参照)を含む。特に、BAWアシストフィルタ構造50は、ベース56、ベース層56上のIPD54、およびIPD54上のBAW共振器52を含む。ある特定の実施形態では、ベース56は、積層体(例えば、高周波(RF)積層体)またはプリント回路基板(PCB)を含む。さらに、ある特定の実施形態では、BAWアシストフィルタ構造は、BAWフィルタ構造52、IPD54、および/またはベース56のうちの少なくとも一部分を覆うカバー58(例えば、プラスチックカバー)を含む。
【0034】
上述したように、BAWフィルタ構造52の各BAW共振器10は、基板12、およびその基板12上のトランスデューサ16を含む。トランスデューサ16は、頂部電極20、底部電極22、および頂部電極20と底部電極22との間の圧電層18を含む。BAWフィルタ構造52のBAW共振器10は、共通基板12、頂部電極20、底部電極22、および/または圧電層18を共有することができる。さらに、BAWフィルタ構造52は、IPD54に電気的に結合するための導電性ピラー60を含む。ある特定の実施形態では、BAWフィルタ構造52は、BAW固定搭載共振器(SMR)を含む。ある特定の実施形態では、BAWフィルタ構造52は、複数のBAW共振器10(例えば、BAW-SMR共振器)を有するシリコンキャリアウェーハを含むダイ上に作製され、この場合、ダイは、導電性ピラー60(例えば、銅ピラー)をさらに含む。
【0035】
IPD54は、BAWフィルタ構造52に電気的に結合された電気回路を含む。ある特定の実施形態では、IPD54は、BAWフィルタ構造52に電気的に結合するように構成された導電性ランディングパッド62(導電性ビアとも称され得る)を含む。特に、IPD54のこの導電性ランディングパッド62(例えば、銅ランディングパッド)は、BAWフィルタ構造52の導電性ピラー60と整合され、かつそれに接触する(例えば、はんだ接合される)。ある特定の実施形態では、IPD54は、ガラスIPDを含むが、他の高Q材料を使用してもよい。ある特定の実施形態では、IPD54は、光画成されたダイ、およびエッチング可能なガラスの上に作製された、LC素子(インダクタおよびコンデンサ素子)を含む。
【0036】
ある特定の実施形態では、BAWフィルタ構造52は、IPD54上に反転されて、積み重ねられたダイ64を形成する。BAWフィルタ構造52(例えば、そのBAW共振器10)および/またはIPD54の内部電気ノードは、容易にアクセス可能であり、フィルタトポロジーの柔軟性を可能にする。次いで、積み重ねられたダイ64は、積層体(例えば、高周波(RF)積層体)またはプリント回路基板(PCB)などのベース層56にはんだ付けすることができる(はんだ接合とも称され得る)。
【0037】
BAWフィルタ構造52およびIPD54の積み重ねられたダイ64は、BAW共振器10自体が処理することができるものよりも高い周波数(例えば、6GHz超)を処理することができる。特に、IPD54上にBAWフィルタ構造52を積み重ねることにより、BAWフィルタ構造52からIPD54までの伝送路を低減し、これは、Qを増加させる。したがって、BAWアシストフィルタ構造50は、高いQで高周波をフィルタリングすることができる。ある特定の実施形態では、積み重ねられたダイ64(例えば、BAWフィルタ構造52および/またはIPD54)は、楕円フィルタを含む。楕円フィルタは、通過帯域および阻止帯域の両方で等化されたリップル挙動を有する信号処理フィルタである。各帯域でのリップルの量は、独立して調整可能である。ある特定の実施形態では、IPD54は、高域通過フィルタまたは低域通過フィルタ(例えば、高域通過楕円フィルタ、低域通過楕円フィルタなど)を含む通過帯域フィルタである。
【0038】
図8は、図7のBAWアシストフィルタ構造の例示的な実施形態の斜視図である。特に、上で考察したように、BAWフィルタ構造52が、IPD54上に積み重ねられて、積み重ねられたダイ64を形成する。上述したように、BAWフィルタ構造52は、IPD54の導電性ランディングパッド62(図7を参照)と整合され、かつ電気的に結合された導電性ピラー60(図7を参照)を含む。IPD54は、RF信号入力66を(例えば、入力平面導波路で)受信し、RF信号出力68を(例えば、出力平面導波路で)送信するように構成されている。BAWフィルタ構造52は、RF信号入力66から下流(RF信号入力66とRF信号出力68との間)の2つ以上の接合部70(1)~70(3)で、IPD54に電気的に結合されている。特に、BAWフィルタ構造52は、接合部70(1)~70(3)の各々において、それぞれ電気的に結合されたBAW共振器10(1)~10(3)を含む。
【0039】
ある特定の実施形態では、BAWフィルタ構造52のBAW共振器10(1)~10(3)は、(インダクタおよびコンデンサを含む)並列LCタンク回路72(1)、72(2)と電気通信する並列BAW共振器10(1)~10(3)である。BAW共振器10(1)~10(3)は各々、BAW共振器分岐74(1)~74(3)をそれぞれ形成する。並列BAW共振器10(1)~10(3)および/または並列LCタンク回路72(1)、72(2)は、電流のための低抵抗経路を作成するように構成されている。
【0040】
IPDは、BAW共振器分岐74(1)~74(3)の各々の間に、直列コンデンサ76(1)~76(4)(例えば、高Qコンデンサ)を含む。直列コンデンサ76(1)~76(4)は、RF入力66とRF出力68との間のエネルギーを結合する。
【0041】
ある特定の実施形態では、IPD54は、IPD54の上部からIPD54の底部へのRF信号の伝播を可能にするビア(例えば、ガラスビアを介して)を含む。さらに、このビアは、インダクタのために、熱を伝導し、かつ/または高いQを提供する。
【0042】
図9は、図7および8のBAWアシストフィルタ構造50のBAWフィルタ構造52とIPD54との間の電気フィルタ回路の分岐を例示する回路図である。
【0043】
上述したように、BAWフィルタ構造52は、IPD54上に積み重ねられて、積み重ねられたダイ64を形成する。IPD54は、RF信号入力66を受信するように構成されており、BAWフィルタ構造52は、RF信号入力66から下流の3つの接合部70(1)~70(3)でIPD54に電気的に結合されている。言い替えると、導電性ランディングパッド62(図7を参照)のピラー60(図7を参照)への結合は、接合部70(1)~70(3)の各々において存在する。さらに、BAWフィルタ構造52のBAW共振器10は、IPD54に設けられた並列LCタンク回路72(1)、72(2)(インダクタおよびコンデンサを含む)と電気通信する並列BAW共振器である。IPD54は、BAW共振器分岐74(1)~74(3)の各々の間に直列コンデンサ76(1)~76(4)を含む。
【0044】
結果として得られた信号経路は、第1の接合部70(1)に伝播する入力RF信号66を伴い、そこでは、第1の信号部分が、第1のBAW共振器分岐74(1)を通って接地に伝播し、残りの主信号部分が、第1の直列コンデンサ76(1)を伝播する。次いで、第2の信号部分が、第1の並列LCタンク回路72(1)を伝播し、残りの主信号部分が、第2の直列コンデンサ76(2)を伝播する。次いで、第3の信号部分が、第2のBAW共振器分岐74(2)を通って接地に伝播し、残りの主信号部分が、第3の直列コンデンサ76(3)を伝播する。次いで、第4の信号部分が、第2の並列LCタンク回路72(2)を伝播し、残りの主信号部分が、第4の直列コンデンサ76(4)を伝播する。次いで、第5の信号部分が、第3のBAW共振器分岐74(3)を通って接地に伝播し、残りの主信号部分が、出力RF信号68として伝播する。
【0045】
その結果、BAWアシストフィルタ構造は、低い挿入損失を有する。特に、ガラスIPD54の高Qインダクタおよびコンデンサ構造は、設計において活用することができ、積み重ねによって、フィルタ回路網の内部ノードに効率的に、かつ高QBAW共振器10に電気的に近接して、分散することができる。BAWアシストフィルタ構造は、高周波動作を有する。特に、ガラスIPD54および三次元インダクタ構造の高い自己共振(SRF)特性は、より高い周波数フィルタ(例えば、6GHzを上回る)につながる設計トポロジーにおいて活用することができる。
【0046】
BAWアシストフィルタ構造50は、伝達関数の有用性を有する。特に、電気的長さの寄生軽減は、ダイの積み重ね、および短い相互接続長の効力によって達成された。RF接地およびRF接地結合は、相互接続の電気的長さがフィルタRF伝達関数に著しく影響を与える高周波領域では、支配的になってくる。
【0047】
BAWアシストフィルタ構造52は、ダイの積み重ねがフィルタ伝達関数の設計におけるより大きな柔軟性を可能にするため、柔軟なフィルタトポロジーを与える。BAWフィルタ構造は、高域通過および低域通過の疑似楕円フィルタトポロジー、およびより広い達成可能な帯域幅を可能にする。これは、BAW共振器の他の帯域通過はしご形構造の帯域幅制限上での利点であり、この場合、固定されるインピーダンス特性は、並列および直列共振が音響結合係数(k2eff)によって調整される音響共振器に固有である。
【0048】
図10は、IPDを有さないBAWフィルタ構造と比較した、図7~9のBAWアシストフィルタ構造の性能改善を例示するグラフである。特に、このグラフは、同様の順序のLC高域通過フィルタ80に対するBAWフィルタ構造78の広い帯域幅および高周波動作を示す伝達関数を示す。図に示されているように、BAWアシストフィルタ構造は、より広い帯域幅を有するより急峻な裾部を提供している。ある特定の実施形態では、BAWアシストフィルタ構造は、15~25%の部分的な帯域幅を有する。ある特定の実施形態では、部分的な帯域幅は、18~22%である。ある特定の実施形態では、部分的な帯域幅は、約21%である。BAWアシストフィルタ構造は、低損失および急峻な遷移を提供する。
【0049】
図11は、図7~10のBAWアシストフィルタ構造を製造するためのステップのフローチャートである。ステップ1100は、IPD上に少なくとも1つのBAW共振器を積み重ねることを含む。BAW共振器は、基板と、少なくとも1つのトランスデューサと、を含み、その少なくとも1つのトランスデューサは、第1の電極、第2の電極、およびその第1の電極とその第2の電極との間の圧電層を備える。ステップ1102は、その少なくとも1つのBAW共振器をIPDに電気的に結合することを含む。
【0050】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのIPDは、ガラスIPDを含む。ある特定の実施形態では、IPDは、直列コンデンサを含む。ある特定の実施形態では、IPDは、並列LCタンク回路を含む。ある特定の実施形態では、IPDは、直列コンデンサおよび並列LCタンク回路を含む。ある特定の実施形態では、IPDは、少なくとも1つのBAW共振器に電気的に結合するための導電性ランディングパッドを含む。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのBAW共振器は、IPDに電気的に結合するためのピラーを備える。ある特定の実施形態では、IPDは、導電性ランディングパッドを備え、少なくとも1つのBAW共振器は、IPDの導電性ランディングパッドと整合され、かつ電気的に結合されたピラーを含む。ある特定の実施形態では、IPDは、RF信号入力を受信するように構成されており、少なくとも1つのBAW共振器は、RF信号入力から下流の2つ以上の接合部において、IPDに電気的に結合される。
【0051】
当業者であれば、本開示の好ましい実施形態に対する改善および修正を認識するであろう。このようなすべての改善および修正は、本明細書に開示された概念、および後続の特許請求の範囲の範囲内で考慮される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5BC
図6ABCDE
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】