(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128601
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】建築物および建築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20220826BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20220826BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20220826BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
E04B1/58 511H
E02D27/12 Z
E02D27/00 D
E04B1/58 511A
E04B1/24 R
E04B1/58 503N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026261
(22)【出願日】2022-02-23
(31)【優先権主張番号】P 2021026911
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503318518
【氏名又は名称】株式会社アークリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大谷 智▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】内田 昌克
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2D046CA01
2E125AA04
2E125AA45
2E125AB11
2E125AB15
2E125AC02
2E125AC16
2E125AC28
2E125AG03
2E125AG43
2E125AG57
2E125BE10
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】地中梁がなくても層間変形角を小さくできる建築物および建築方法を提供すること。
【解決手段】 杭40の上端側の一部、第1プレート50、及び、柱21の下端側の一部から構成される柱脚部80の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体60と、地盤面上に沿って配設され複数の柱どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体70とを備え、複数の基礎体60と土間体70とが連結されることで、地盤G内において複数の柱どうしが互いに独立する建築物10の場合においても床の剛床仮定を成り立たせることができ、地震などの水平力が作用した場合における建築物10の層間変形角を小さくできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の上部構造であって金属材料から形成される複数の柱と、それら複数の柱のそれぞれの下部に設けられる建築物の下部構造であって少なくとも一部が金属材料から形成され地盤の所定の深さまで埋設される杭とを備え、地盤内において複数の前記柱および前記杭どうしが互いに独立する建築物において、
金属材料から形成され前記杭の上端および前記柱の下端が接続される中実鋼材と、少なくとも前記杭の上端側の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の前記基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備えることを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記基礎体は、前記杭の上端側の一部、前記中実鋼材、及び、前記柱の下端側の一部から構成される柱脚部の周囲に配設されることを特徴とする請求項1記載の建築物。
【請求項3】
前記中実鋼材は、前記杭との接続方向において前記杭の外形と同一の外形に形成され、前記杭の側面と前記中実鋼材の側面とが一致した状態で前記杭と溶接接合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築物。
【請求項4】
前記杭の上端側の一部または前記柱脚部と、前記基礎体および前記土間体との間に弾性体から形成される弾性部材が介在されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の建築物。
【請求項5】
建築物の上部構造を形成する複数の柱と、それら複数の柱のそれぞれの下部に設けられる建築物の下部構造であって地盤の所定の深さまで配設される杭とを備え、地盤内において複数の前記柱および前記杭どうしが互いに独立する建築物において、
少なくとも前記杭の上端側の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の前記基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備え、前記杭の上端および前記柱の下端が前記基礎体に接続されることを特徴とする建築物。
【請求項6】
前記土間体の少なくとも一部は、前記柱の下端側の一部の周囲に配設されることを特徴とする請求項5記載の建築物。
【請求項7】
前記柱は、金属材料から形成され柱上側に配設される柱本体と、金属材料から形成され柱下側に配設され前記柱本体に接続される柱側接続部材とを備え、
前記柱側接続部材は、前記柱本体側が前記土間体よりも上方側に突出する長さに設定されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の建築物。
【請求項8】
前記杭は、金属材料から形成され杭下側に配設される杭本体と、金属材料から形成され杭上側に配設され前記杭本体に接続される杭側接続部材とを備え、
前記杭側接続部材は、前記杭本体側が前記基礎体よりも下方側に突出する長さに設定されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の建築物。
【請求項9】
前記杭側接続部材は、前記杭本体との接続方向において前記杭本体の外形と同一の外形に形成され、前記杭本体の側面と前記杭側接続部材の側面とが一致した状態で溶接接合されることを特徴とする請求項8記載の建築物。
【請求項10】
前記基礎体の外側の側面は、上方から下方に向かって前記杭の軸心に近接する方向または離間する方向に傾斜して形成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の建築物。
【請求項11】
請求項1記載の建築物を建築する建築方法であって、
前記基礎体および前記土間体は、前記基礎体の鉄筋と前記土間体の鉄筋とのそれぞれが少なくとも一部で連結して配設され、前記基礎体および前記土間体のコンクリートが同時に打設されることを特徴とする建築方法。
【請求項12】
前記柱は、柱上側に配設される柱本体と、柱下側に配設され前記柱本体に接続される柱側接続部材とを備え、
地盤の所定の深さまで埋設された前記杭の上端に前記中実鋼材を接続する第1接続工程と、
前記杭に対する前記中実鋼材の接続位置に合わせて前記柱側接続部材の全長を所定の長さに変更する第1変更工程と、
所定の長さに変更した前記柱側接続部材を前記柱本体に接続した後で、前記柱側接続部材を前記中実鋼材に接続する第2接続工程と、を備えることを特徴とする請求項11記載の建築方法。
【請求項13】
前記杭は、杭下側に配設される杭本体と、杭上側に配設され前記杭本体に接続される杭側接続部材とを備え、
地盤の所定の深さまで前記杭本体を埋設する埋設工程と、
前記杭側接続部材を前記中実鋼材に接続する第3接続工程と、
前記中実鋼材に接続された前記杭側接続部材の全長を前記杭本体の埋設位置に合わせて所定の長さに変更する第2変更工程と、
所定の長さに変更した前記杭側接続部材を前記杭本体に接続する第4接続工程とを備えることを特徴とする請求項11又は12に記載の建築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物および建築方法に関し、特に、地中梁がなくても層間変形角を小さくできる建築物および建築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、一般的に建築物90は、複数の柱91及びそれら柱91を水平方向に連結する梁92を組み合わせて構成される上部構造93と、その上部構造93を支えるために地盤内に配設される基礎94とを備え、地盤の所定の深さまで埋設される杭95と、その杭95の上面に配設される柱脚部96と、その柱脚部96どうしを水平方向に連結すると共に、地盤内に配設される地中梁97とから基礎94が構成される。このような一般的な建築物90では、地中梁97により柱脚部96同士が連結されることで、地震などの水平力をすべての柱脚部96に伝達できるようになり、床の剛床仮定(床が水平に移動または回転しても、その床の形状が変形しないと仮定すること)が成立する。
【0003】
しかしながら、地中梁97を使用して建築物90の基礎94を構成するものでは、地中梁97の配設位置に沿って地盤を掘削する必要があり、その掘削に手間がかかる上に、掘削により生じる残土の処理費用が嵩むという問題点がある。
【0004】
この上記した問題を解消するために、地中梁をなくした建築物の基礎として、先端にスクリューを取り付けた鋼管杭を地盤にねじ込んで配設するものがある(特許文献1)。
【0005】
また、地中梁をなくした建築物の基礎において、杭と柱との接続部分の剛性を確保するために、建築物の柱と杭との間に中実鋼材を備え、その中実鋼材で建築物の柱と杭とを接続するものがある(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-181790号公報(段落0013~0017及び
図1など)
【特許文献2】特開2008-038586号公報(段落0027及び
図9など)
【特許文献3】特開2015-086692号公報(段落0011,0012及び
図6,7など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の建築物および建築方法では、地盤内において、地中梁が配設されず複数の柱どうしが互いに非連結とされるため床の剛床仮定が成り立たず、地震などにより水平力が作用した場合に層間変形角が大きくなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、地中梁がなくても層間変形角を小さくできる建築物および建築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明の建築物は、建築物の上部構造であって金属材料から形成される複数の柱と、それら複数の柱のそれぞれの下部に設けられる建築物の下部構造であって少なくとも一部が金属材料から形成され地盤の所定の深さまで埋設される杭とを備え、地盤内において複数の前記柱および前記杭どうしが互いに独立するものであり、少なくとも前記杭の上端側の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の前記基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備える。
【0010】
また、本発明の建築方法は、少なくとも前記杭の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の前記基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備えるものであり、前記基礎体および前記土間体は、前記基礎体の鉄筋と前記土間体の鉄筋とのそれぞれが少なくとも一部で連結して配設され、前記基礎体および前記土間体のコンクリートが同時に打設される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の建築物によれば、少なくとも杭の上端側の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備えるので、地盤内において複数の柱または杭どうしが互いに独立する建築物の場合においても床の剛床仮定を成り立たせることができる。よって、地震などの水平力が作用した場合における建築物の層間変形角を小さくできる。
【0012】
また、請求項1の建築物では、地中梁を備えていないので、地中梁を配設するための地盤の掘削や、その掘削により生じる残土の処理を不要とできる。
【0013】
さらに、請求項1の建築物では、金属材料から形成され杭の上端および柱の下端が接続される中実鋼材を備えるので、柱と杭とを一体の金属材料として接続することができる。よって、柱に水平力が作用した際に、その水平力を杭に伝達して柱を杭で支えやすくできる。その結果、柱に水平力が作用した際に柱が倒壊することを抑制できる。
【0014】
請求項2記載の建築物によれば、請求項1記載の建築物の奏する効果に加え、基礎体は、杭の上端側の一部、中実鋼材、及び、柱の下端側の一部から構成される柱脚部の周囲に配設されるので、中実鋼材と杭および柱との接続部分を基礎体で取り囲むことができ、それらの接続部分を基礎体により補強できる。その結果、地震などの水平力が作用する場合に、中実鋼材と杭および柱との接続部分が破損することを抑制できる。
【0015】
請求項3記載の建築物によれば、請求項1又は2に記載の建築物の奏する効果に加え、中実鋼材は、杭との接続方向において杭の外形と同一の外形に形成され、杭の側面と中実鋼材の側面とが一致した状態で杭と溶接接合されるので、中実鋼材を杭に接続する場合に、中実鋼材と杭との溶接作業性を向上できる。即ち、杭の外形よりも大きい外形の中実鋼材を配設する場合には、それらの溶接接合を接合部よりも下方側から上向きの姿勢で行う必要があり、溶接作業性が悪くなるところ、杭の外形と同一の外形に中実鋼材が形成されるので、横向きでの姿勢で溶接作業を行うことができ、溶接作業性が悪くなることを抑制できる。
【0016】
また、杭の外形と同一の外形に中実鋼材が形成されるので、中実鋼材を杭の上端に配設した際には、杭の側面と中実鋼材の側面とを合わせることで杭に対する中実鋼材の位置合わせが可能となる。その結果、中実鋼材と杭との溶接作業性を向上できる。
【0017】
また、杭と同一の外形に中実鋼材が形成されるので、柱脚部の周囲に基礎体を形成する生コンクリートを流し込んだ際に、杭および中実鋼材の周囲に生コンクリートを流動しやすくできる(即ち、杭径よりも大きい中実鋼材の下面側に空気だまりができて、杭の周囲に生コンクリートが流れなくなることを抑制できる)。これにより、杭および中実鋼材と基礎体との間に隙間が形成されることによる不具合が発生することを抑制できる。
【0018】
請求項4記載の建築物によれば、請求項1から3のいずれかに記載の建築物の奏する効果に加え、杭の上端側の一部または柱脚部と、基礎体および土間体との間に弾性体から形成される弾性部材が介在されるので、地震などの水平力が基礎体に一時的に作用する場合に、弾性部材を弾性変形させることで、基礎体から杭や柱に一時的に作用する水平力を弱めることができ、杭や柱にかかる曲げモーメントを低減できる。よって、杭や柱の強度を低減することができ、杭や柱を安価な部材から形成にできる。
【0019】
請求項5記載の建築物によれば、少なくとも杭の上端側の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備えるので、地盤内において複数の柱または杭どうしが互いに独立する建築物の場合においても床の剛床仮定を成り立たせることができる。よって、地震などの水平力が作用した場合における建築物の層間変形角を小さくできる。
【0020】
また、請求項5の建築物では、地中梁を備えていないので、地中梁を配設するための地盤の掘削や、その掘削により生じる残土の処理を不要とできる。
【0021】
さらに、請求項5の建築物では、杭の上端および柱の下端が基礎体に接続されるので、柱の下端の高さ調整を鉄筋コンクリートの基礎体で調整できる。従って、杭の打ち込み高さを高精度にする必要がなくなるので、杭の打ち込み作業を簡易にできる。また、柱の下端の高さを鉄筋コンクリートの基礎体で調整できるので、柱の上側に配設される梁(地中梁以外の梁)を設計図通りの高さで配設できる。
【0022】
請求項6記載の建築物によれば、請求項5記載の建築物の奏する効果に加え、土間体の少なくとも一部は、柱の下端側の一部の周囲に配設されるので、柱と基礎体の接続部分を土間体で補強できる。
【0023】
ここで、請求項5に従属する請求項6では、柱が基礎体に接続される。そのため、例えば、請求項1に記載の建築物のように柱が中実鋼材に接続される場合に比べて、柱に水平力が作用した場合に柱と基礎体との接続部分に力が集中しやすい。従って、柱に水平力が作用した場合に柱と基礎体との接続部分が破損して、柱が倒壊する恐れがある。
【0024】
これに対し、請求項6の建築物によれば、柱と基礎体との接続部分を土間体で補強できるので、柱に水平力が作用した場合に柱と基礎体との接続部分が破損して柱が倒壊することを抑制できる。
【0025】
請求項7記載の建築物によれば、請求項1から6のいずれかに記載の建築物の奏する効果に加え、金属材料から形成され柱上側に配設される柱本体と、金属材料から形成され柱下側に配設され前記柱本体に接続される柱側接続部材とを備え、柱側接続部材は、柱本体側が土間体よりも上方側に突出する長さに設定されるので、柱側接続部材の全体が、土間体によって拘束されることを抑制できる。
【0026】
そのため、地震などにより水平力が作用する場合には、柱側接続部材のうち土間体から突出して土間体に拘束されていない部分に、柱に働く最大の曲げモーメントを作用させることができる。よって、柱側接続部材に作用する曲げモーメントに対して、柱側接続部材を適した厚みや材料にすることで柱側接続部材を補強をすることができ、柱全体を不必要に大型化する必要がなくなる。その結果、建築物の製造コストを低減できる。
【0027】
請求項8記載の建築物によれば、請求項1から7のいずれかに記載の建築物の奏する効果に加え、杭は、金属材料から形成され杭下側に配設される杭本体と、金属材料から形成され杭上側に配設され前記杭本体に接続される杭側接続部材とを備え、杭側接続部材は、杭本体側が基礎体よりも下方側に突出する長さに設定されるので、杭側接続部材の全体が基礎体によって拘束されることを抑制できる。
【0028】
そのため、地震などにより水平力が作用する場合には、杭側接続部材のうち基礎体から突出して基礎体に拘束されていない部分に、杭に働く最大の曲げモーメントを作用させることができる。よって、杭側接続部材に作用する曲げモーメントに対して、杭側接続部材を適した厚みや材料にすることで杭側接続部材を補強することができ、杭全体を不必要に大型化する必要がなくなる。その結果、建築物の製造コストを低減できる。
【0029】
請求項9記載の建築物によれば、請求項8記載の建築物の奏する効果に加え、杭側接続部材は、杭本体との接続方向において杭本体の外形と同一の外形に形成され、杭本体の側面と杭側接続部材の側面とが一致した状態で溶接接合されるので、杭側接続部材を杭本体に接続する場合に、杭本体と杭側接続部材との溶接作業性を向上できる。即ち、杭本体の外形よりも大きい外形の杭側接続部材を配設する場合には、それらの溶接接合を接合部よりも下方側から上向きの姿勢で行う必要があり、溶接作業性が悪くなるところ、杭本体の外形と同一の外形に杭側接続部材が形成されるので、横向きでの姿勢で溶接作業を行うことができ、溶接作業性が悪くなることを抑制できる。
【0030】
また、杭側接続部材が、杭本体の外形と同一の外形に形成されるので、杭本体に杭側接続部材を配設した際には、杭側接続部材と杭本体との側面を合わせることで杭本体に対する杭側接続部材の位置合わせが可能となる。その結果、杭側接続部材と杭本体との溶接作業性を向上できる。
【0031】
請求項10記載の建築物によれば、請求項1から9のいずれかに記載の建築物の奏する効果に加え、基礎体の外側の側面は、上方から下方に向かって杭の軸心に近接する方向または離間する方向に傾斜して形成されるので、地震などにより基礎体に水平力が作用する場合に、その水平方向に作用する力のうちの少なくとも一部の力が作用する方向を上下方向に変更できる。これにより、柱脚部に作用する水平方向の力を低減できる。その結果、地震などの水平力が建築物に作用する場合に杭や柱が破損することを抑制できる。
【0032】
また、基礎体には土間体が連結されるので、水平方向に作用する力のうちの少なくとも一部の力が基礎体により上下方向に作用する力に変更された際に、その変更された上下方向の力により建築物が上下方向に揺れ動くことを土間体のせん断強度により抑制できる。
【0033】
請求項11記載の建築方法によれば、少なくとも杭の上端側の一部の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体と、地盤面上に沿って配設され複数の基礎体どうしを連結する鉄筋コンクリートの土間体とを備え、基礎体および土間体は、基礎体の鉄筋と土間体の鉄筋とのそれぞれが少なくとも一部で連結して配設され、基礎体および土間体のコンクリートが同時に打設されるので、基礎体のコンクリートが固まるのを待ってから土間体のコンクリートを配設する必要がなくなる。従って、コンクリートの配設にかかる時間作業を短くできる。
【0034】
また、鉄筋同士が少なくとも一部で連結されるので、基礎体にかかる水平力を土間体に伝達しやすくできる。よって、基礎体にかかる水平力が柱脚部に集中することを抑制でき、柱脚部が破損することを抑制できる。
【0035】
請求項12記載の建築方法によれば、請求項11記載の建築方法の奏する効果に加え、柱は、柱上側に配設される柱本体と、柱下側に配設され柱本体に接続される柱側接続部材とを備え、地盤の所定の深さまで埋設された杭の上端に中実鋼材を接続する第1接続工程と、杭に対する中実鋼材の接続位置に合わせて柱側接続部材の全長を所定の長さに変更する第1変更工程と、所定の長さに変更した柱側接続部材を柱本体に接続した後で、柱側接続部材を中実鋼材に接続する第2接続工程と、を備えるので、中実鋼材の高さ位置の精度が悪い場合であっても、柱の全長を変更して柱と中実鋼材とを接続できる。よって、柱本体の上側に配設される梁(地中梁以外の梁)を設計図通りの高さで配設できる。
【0036】
また、土間体に対する柱本体の配設高さを各柱で同一にできるので、地震などの水平力が基礎体に作用する場合に、柱本体に作用する最大の曲げモーメントの位置を各柱で同一にできる。その結果、構造計算を簡易にできる。
【0037】
請求項13記載の建築方法によれば、請求項11又は12に記載の建築方法に加え、杭は、杭下側に配設される杭本体と、杭上側に配設され杭本体に接続される杭側接続部材とを備え、地盤の所定の深さまで杭本体を埋設する埋設工程と、杭側接続部材を中実鋼材に接続する第3接続工程と、中実鋼材に接続された杭側接続部材の全長を杭本体の埋設位置に合わせて所定の長さに変更する第2変更工程と、所定の長さに変更した杭側接続部材を杭本体に接続する第4接続工程とを備えるので、杭本体を地盤に埋設した後でも杭の全長を変更できる。よって、杭の高さ調整を簡易にできる。
【0038】
また、杭の高さを調整することで、基礎体および土間体に囲われる杭の長さを各杭で同一にすることができる。これにより、地震などの水平力を基礎体が受けた場合に杭に作用する力を各杭で同一にしやすくできる。その結果、構造計算を簡易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】第1実施形態における建築物の断面模式図である。
【
図2】(a)は、第2実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、第3実施形態における建築物の断面模式図である。
【
図3】(a)は、第4実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、杭および第2プレートの断面模式図であり、(c)は、柱脚部の断面模式図である。
【
図4】(a)は、第5実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、第6実施形態における建築物の断面模式図である。
【
図5】第7実施形態における建築物の断面模式図である。
【
図6】(a)は、第8実施形態における建築物の断面模式図であり、(b)は、第9実施形態における建築物の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態における建築物10について説明する。
図1は、第1実施形態における建築物10の断面模式図である。なお、
図1では、地盤Gに建築物10が建築された状態において、建築物10を杭40の軸心に沿って切断した断面が模式的に図示される。また、
図1では、理解を容易とするために、基礎体60と土間体70とが別々の部材として図示されるが、基礎体60と土間体70とは一体の鉄筋コンクリートとして形成される(なお、
図2以降においても同様に基礎体60と土間体70とは別々の部材として図示される)。
【0041】
図1に示すように、建築物10は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造20と、その上部構造20の下方に構成され上部構造20を支える基礎30とから構成される。上部構造20は、金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形成され上下方向に延設される複数の柱21と、金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形態され地盤Gよりも上方側で複数の柱21を水平方向に連結する複数の梁22とを組み合わせて構成される。
【0042】
なお、第1実施形態では、柱21は角型鋼管から形成され、梁22はH型鋼から形成される。また、第1実施形態における建築物10の上部構造20は、柱21に形成される仕口部21aに梁22の両端が接続されることで柱21と梁22とが連結される。
【0043】
基礎30は、地盤Gの所定の深さまで埋設される杭40と、その杭40の上端面40aに配設される金属製の第1プレート50と、杭40及び第1プレート50の周囲に配設される基礎体60と、地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)配設され複数の基礎体60を連結する土間体70とを主に備える。
【0044】
杭40は、円筒状に形成される金属製の丸型鋼管41と、その丸型鋼管41の内面に沿って所定の厚みで配設されるコンクリート42とを有する既製品のSC杭として構成される。また、杭40は、金属材料から形成されると共に、杭40の上端部に配設される円板状の杭天部材43を備え、その杭天部材43の上面(即ち、上端面40a)に第1プレート50が載置されて、杭天部材43に第1プレート50が溶接接合される。
【0045】
なお、杭40は、既製品のSC杭に限られるものでなく、PC杭やPHC杭などの他の既製品の杭を採用しても良い。この場合も同様に、杭40の上端面40aを構成する杭天部材43に第1プレート50が載置されて、杭天部材43と第1プレート50とが溶接接合される。
【0046】
また、杭40は、上端面40aが土間体70よりも下方に位置する打ち込み深さに設定され、第1プレート50を介して接続される柱21と杭40との接続部分が基礎体60及び土間体70に囲われた状態とされる。なお、第1実施形態では、杭40の上端側の一部、第1プレート50、及び、柱21の下端側の一部で構成される柱脚部80の全体が基礎体60及び土間体70により囲われる。
【0047】
第1プレート50は、所定の厚みを有する金属製の板部材として形成される。また、第1プレート50は、上面視において、円形状に形成される杭40の外径と同一の外径の円形状に形成され、外周面が杭40の外周面と一致した状態で杭40の杭天部材43に溶接接合される。さらに、第1プレート50の上面には、柱21の下端が載置され溶接接合される。これにより、第1プレート50を介して杭40と柱21とが接続される。
【0048】
なお、第1プレート50は、H型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形成される柱21の厚みよりも厚い板厚を有する中実状の板部材として形成される。これにより、柱21の強度よりも第1プレート50の強度を高めることができる。従って、柱21に大きな軸力が発生した場合に、第1プレート50が破損することを抑制できる。
【0049】
また、柱21は、上面視において、第1プレート50よりも外形の大きさが小さく形成される。これにより、杭40の軸心に対して柱21の配設位置がずれていた場合であっても、柱21を第1プレート50の上面に溶接接合可能とされる。
【0050】
基礎体60は、内部に鉄筋(図示しない)を配設したコンクリート体であり、杭40の上端側の一部、第1プレート50、及び、柱21の下端側の一部を取り囲む大きさに形成される。なお、基礎体60の配設領域は、杭40が埋設される地盤Gの周囲を掘削することで形成され、基礎体60が配設された後では基礎体60の外側の側面60aが地盤Gと当接した状態とされる。
【0051】
土間体70は、内部に鉄筋(図示しない)を配設したコンクリート体であり、上部構造20の複数の柱21が配設される領域の全域に亘って、地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)配設される。即ち、杭40と柱21とを接続したそれぞれの柱脚部80及びそれら柱脚部80の周囲に配設されるそれぞれの基礎体60が土間体70を介して連結される。建築物10は、地盤が弱い場合(例えば、標準貫入試験(JIS A 1219)により地盤Gの固さを示す指標のN値が2以上で10以下の場合)であっても、土間体70が地盤面GLに接して配設されることにより床が不同沈下することを抑制できる。
【0052】
なお、第1実施形態では、建築物10の外側端部(
図1における左側端部)において、基礎体60よりも水平方向の外側に土間体70が配設されるが、建築物10の外側端部(
図1における左側端部)においては、上部構造20の外側端部を構成する柱21のよりも外側に土間体70の一部が配設されていれば良く、上部構造20の外側端部を構成する柱21の柱脚部80の周囲に配設される基礎体60よりも水平方向の内側に土間体70が配設されても良い。
【0053】
次いで、第1実施形態における建築物10の建築方法について説明する。第1実施形態における建築物10は、初めに杭40が打ち込まれる地盤Gの周囲を掘削し基礎体60の配設空間を形成した後、地盤Gに杭40が所定の深さ(杭40の上端側の一部が地盤Gから突出し、上端面40aが土間体70よりも下方に位置する深さ)まで打ち込まれる(第1工程(埋設工程))。なお、基礎体60の配設空間は、少なくとも第1プレート50と杭40との溶接接合部分の水平方向外側に空間を有する。よって、後述する第2工程(第1接続工程)では、基礎体60の配設空間を利用して、第1プレートと杭40とを溶接接合することが可能とされる。
【0054】
第2工程(第1接続工程)では、杭40の上端面40aに第1プレート50が配設されると共に、それら杭40と第1プレート50とが溶接接合される。この場合、上述したように、上面視において、円形状に形成される杭40の外径と同一の外径の円形状に第1プレート50が形成され、その第1プレート50の外周面と杭40の外周面とが一致した状態で、第1プレート50と杭340とが溶接接合されるので、基礎体60の配設空間を利用して、第1プレート50と杭40との水平方向外側から第1プレート50と杭40とを溶接接合することができる。その結果、第1プレート50を杭40に配設する場合の溶接作業性を向上できる。
【0055】
即ち、上面視において、杭40よりも大きい外形に第1プレート50が形成される場合には、第1プレート50の少なくとも一部が杭40から張り出す。そのため、第1プレート50と杭40との溶接接合を、それらの接合部よりも下方側から上向きの姿勢で行う必要がある。そうなると、接合部よりも下方側に十分なスペース(基礎体60を配設するための配設領域)を確保していないため、溶接姿勢が悪い状態(手や頭のみを接合部よりも下方側に押し込んで地盤面GL上に寝そべった状態)で接合部を溶接する必要があり、溶接作業性が悪くなるという問題点がある。
【0056】
これに対し、上面視において、円形状に形成される杭40の外径と同一の外径の円形状に第1プレート50が形成され、その第1プレート50の外周面が杭40の外周面と一致した状態とされるので、第1プレート50と杭40との接合部の溶接作業を横向きの姿勢で行うことができる。従って、第1プレート50と杭40との溶接作業性を向上できる。
【0057】
また、上面視において、杭40の外周面と第1プレート50との外周面とを一致させることで、杭40に対する第1プレート50の位置を決めることができる。即ち、杭40の外径と第1プレート50の外径とが異なる場合には、杭40の軸心に対して、第1プレートの軸心を合わせる際に杭40に対する第1プレート50の配設位置を計測する必要があるところ、第1実施形態では、杭40の外径と同一の外径の円形状に第1プレート50が形成されるので、杭40の外周面と第1プレート50との外周面とを一致させることで、杭40の軸心と第1プレート50の軸心とを一致させることができる。従って、第1プレート50を配設する際に、その配設位置を計測する必要がない。そのため、第1プレート50と杭40との溶接作業性を向上できる。
【0058】
第3工程では、第1プレート50の上部に柱21が配設され、第1プレート50の上面と柱21の下端とが溶接接合される。これにより、第1プレート50を介して柱21と杭40とが接続される。なお、第1プレート50と柱21とは、それらの接合部よりも上方外側から溶接接合される。この場合、第1プレート50と柱21との2部材のみを溶接設接合しても良いし、後述する第2プレート451と柱21との溶接接合(第4実施形態)のように、柱21の内部に配設する溶接部材と第1プレート50と柱21との3部材を溶接接合するものであっても良い。
【0059】
第4工程では、柱脚部80の周囲および地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)基礎体60及び土間体70の鉄筋が配設された後、その鉄筋が配設される領域に生コンクリートが流し込まれ(打設され)、柱脚部380の周囲に基礎体60及び土間体70が配設される。
【0060】
なお、第1実施形態では、基礎体60の鉄筋と、土間体70の鉄筋とが少なくとも一部で連結されて配設された後、生コンクリートが基礎体60の配設領域と土間体70の配設領域とに同時に流し込まれる(打設される)。これにより、基礎体60のコンクリートが固まるのを待ってから土間体70のコンクリートを打設する必要がなくなる。従って、コンクリートの打設にかかる時間作業を短くできる。
【0061】
また、この場合、上記したように、上面視において円形状に形成される杭40の外径と同一の外径の円形状に第1プレート50が形成され、その第1プレート50の外周面が杭40の外周面と一致した状態で、第1プレート50と杭40とが溶接接合されるので、柱脚部80の周囲に生コンクリートを流し込んだ際に、杭40及び第1プレート50の周囲に生コンクリートを流動させやすくできる(即ち、杭40の外径よりも大きい第1プレート50の下面側に空気だまりができて、杭40の周囲に生コンクリートが流れなくなることを抑制できる)。従って、杭40及び第1プレート50と基礎体60との間に隙間が形成されることによる不具合が発生することを抑制できる。
【0062】
さらに、建築物10では、基礎体60と土間体70との鉄筋どうしが少なくとも一部で連結されるので、基礎体60と土間体70とに別々に水平力が作用することを抑制でき、基礎体60にかかる水平力を土間体70に伝達しやすくできる。よって、基礎体60に水平力が働く場合に、その水平力が基礎体60から一部の柱脚部80に集中して作用することを抑制できる。その結果、柱脚部80が破損することを抑制できる。
【0063】
ここで、上記したように建築物10では、杭40と柱21とを接続したそれぞれの柱脚部80の周囲に配設される基礎体60が土間体70を介して連結されるので、地震などの水平力が建築物10に作用する場合に、基礎体60の側面60aで受けた水平力を土間体70を介して他の基礎体60に伝達できる。
【0064】
しかしながら、それぞれの柱脚部80を土間体70で連結しただけ(基礎体60を有していない柱脚部80)では、地盤Gが弱く地震などの水平力で地盤Gが移動する場合に、柱脚部80の地盤Gに対する受圧面(水平方向外側側面)の面積が小さいために、基礎30に対して地盤Gが水平方向に移動することが可能となる。この地盤Gの基礎30に対する移動により、柱脚部80が水平方向に倒れやすくなり、柱21が傾くという問題がある。
【0065】
これに対し、第1実施形態における建築物10では、柱脚部80の周囲に基礎体60を有するので、地震等の水平力が建築物10に作用する場合の受圧面(側面60a)を柱脚部80の側面よりも大きくすることができる。これにより、地盤Gからの水平力を側面60aで受け止めやすくでき、地盤Gからの水平力を確実に受けて柱脚部80に伝達し上部構造20を安定させることができる。
【0066】
従って、第1実施形態では、基礎体60と土間体70とにより、地震などの水平力を柱脚部80の周囲に配設される基礎体60で受けつつ、土間体70を介して他の基礎体60に伝達できるので、地盤G内において複数の柱21及び杭40どうしが互いに独立していても(即ち、地盤G内に柱21及び杭40どうしを連結する地中梁を有していない場合においても)、床の剛床仮定を成り立たせることできる。よって、地震などの水平力が作用した場合における建築物10の層間変形角を小さくできる。
【0067】
また、第1プレート50を介して杭40と柱21とが接続される柱脚部80が、鉄筋コンクリートの基礎体60に囲まれるので、第1プレート50及び杭40の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とを基礎体60により補強できる。これにより、第1プレート50及び杭40の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部との接合部が変形することを抑制できる。従って、地震などの水平力が基礎体60から柱脚部80に作用した場合に柱21が傾倒することを抑制できる。その結果、建築物10の層間変形角を小さくできる。
【0068】
さらに、柱脚部80が基礎体60により覆われることで、柱脚部80の周囲に水分が付着することを抑制できる。その結果、柱脚部80が腐食することを抑制できる。
【0069】
また、建築物10では、
図7に示す従来品の建築物90のように地盤G内において複数の柱21どうしを連結する地中梁(
図7における地中梁97)を有していないので、地中梁を配設するための地盤Gの掘削や、その掘削により生じる残土の処理を不要にできる。
【0070】
なお、第1実施形態では、上面視における基礎体60の外形が略正方形状に形成され、基礎体60の側面60aが梁22の延設方向に沿って延設される。これにより、基礎体60の側面60aが地盤Gからの水平力を受けた場合に、柱21が傾倒することを抑制できる。よって、地震などの水平力が作用した場合における建築物10の層間変形角を小さくできる。
【0071】
次いで、
図2(a)を参照して、第2実施形態における建築物210について説明する。上記第1実施形態では、上部構造20を構成する柱21が第1プレート50に直接配設される場合について説明したが、第2実施形態では、上部構造220を構成する柱221の柱本体223が柱側接続部材224を介して第1プレート50に接続される場合について説明する。なお、上記した第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0072】
図2(a)は、第2実施形態における建築物210の断面模式図である。なお、
図2(a)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0073】
図2(a)に示すように、第2実施形態における建築物210は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造220と、その上部構造220の下方に構成され上部構造20を支える基礎30とから構成される。上部構造220は、金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形成され上下方向に延設される複数の柱221と、金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形成され地盤Gよりも上方側で複数の柱221を水平方向に連結する複数の梁22とを組み合わせて構成される。
【0074】
柱221は、柱上側に配設されると共に梁22が連結されて建築物210の上部構造を構成する柱本体223と、柱下側に配設され第1プレート50及び柱本体223に接続される柱側接続部材224とを主に備える。なお、第2実施形態では、柱本体223と柱側接続部材224とが、上面視において略同一の寸法の角型鋼管から形成される場合について説明するが、必ずしもこれに限られるものではなく、柱本体223と柱側接続部材224とが異なる形状および大きさから形成されるものであって良い。
【0075】
次いで、第2実施形態における建築物210の建築方法について説明する。なお、第2実施形態における建築物210の建築方法は、地盤Gに打ち込まれた杭40に第1プレート50を溶接する第1及び第2工程((埋設工程および第1接続工程))までは第1実施形態と同一であるので、その説明は省略する。
【0076】
第3工程(第1変更工程)では、各杭40に配設される第1プレート50の高さを計測した後、その計測した高さに伴って各柱側接続部材224の上端面が同一の位置(高さ)になるよう柱側接続部材224を切断してその長さを調整する。これにより、各柱側接続部材224の上端面に溶接接合される各柱本体223を同一の高さに配設することができる。
【0077】
第4工程では、柱本体223の下部に柱側接続部材224を溶接接合する。なお、柱本体223と柱側接続部材224との接合部(柱本体223と柱側接続部材224との突き合わせ部分)には、それら柱本体223及び柱側接続部材224よりも一回り小さい外径の溶接部材225が接合部の内側に配設され、その溶接部材225と共に柱本体223及び柱側接続部材224が溶接接合される。これにより、柱本体223と柱側接続部材224との接合部の強度を向上できる。
【0078】
第5工程(第2接続工程)では、柱221が第1プレート50の上面側に配設され、柱側接続部材224と第1プレート50とが溶接接合される。これにより、第1プレート50を介して杭40と柱221とが接続される。なお、第1プレート50と柱221とは、上記第1実施形態における第1プレート50と柱21との溶接接合と同様に、それらの接合位置よりも上方外側から溶接接合される。この場合、第1プレート50と柱221(柱側接続部材224)との2部材のみを溶接接合しても良く、又、柱221(柱側接続部材224)の内部に配設する溶接部材と第1プレート50と柱221(柱側接続部材224)との3部材を溶接接合するものであっても良い。
【0079】
第6工程では、上記第1実施形態における第4工程と同様に、柱脚部280の周囲および地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)基礎体60及び土間体70の鉄筋が配設され、それら鉄筋が配設される領域に生コンクリートが流し込まれ(打設され)、柱脚部280の周囲に基礎体60及び土間体70が配設される。
【0080】
以上のように建築される建築物210によれば、第1プレート50の高さ位置にばらつきが生じる(即ち、杭40の打ち込み深さや、第1プレート50の厚みにばらつきがある)場合であっても、柱側接続部材224の切断(上記第3工程)により柱221の全長を変更して柱221と第1プレート50とを接続できる。よって、柱本体223に接続される梁22を設計図面通りの高さで配設することができる。
【0081】
また、土間体70に対する柱本体223の配設高さをそれぞれの柱本体223で同一にできるので、地震などの水平力が基礎体60から柱221に伝達される際に、柱本体223に作用する最大の曲げモーメントの位置をそれぞれの柱本体223で同一にできる。その結果、構造計算を簡易にできる。
【0082】
また、柱側接続部材224は、柱本体223側が土間体70よりも上方側に突出する長さに設定される。これにより、柱側接続部材224の全体が、基礎体60及び土間体70によって拘束されることを抑制できる。そのため、地震などにより水平力が作用する場合には、柱側接続部材224のうち土間体70から突出して土間体70に拘束されていない部分に、柱221に働く最大の曲げモーメントを作用させることができる。よって、柱側接続部材224に作用する曲げモーメントに対して、柱側接続部材224を適した厚みや材料にすることで柱側接続部材224を補強をすることができ、柱221全体を不必要に大型化する必要がなくなる。その結果、建築物210の製造コストを低減できる。
【0083】
次いで、
図2(b)を参照して第3実施形態における建築物310について説明する。上記第1実施形態では、地盤Gに打ち込まれる杭40が第1プレート50に直接接続される場合について説明したが、第3実施形態では、地盤Gに打ち込まれる杭本体345が杭側接続部材346を介して第1プレート50に接続される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0084】
図2(b)は、第3実施形態における建築物310の断面模式図である。なお、
図2(b)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0085】
図2(b)に示すように、第3実施形態における建築物310は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造20と、その上部構造20の下方に構成され上部構造20を支える基礎330とから構成される。
【0086】
基礎330は、地盤の所定の深さまで埋設される杭340と、杭340の上端面340aに配設される金属製の第1プレート50と、杭340及び第1プレート50の周囲に配設される基礎体60と、地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)配設され複数の基礎体60を連結する土間体70とを主に備える。
【0087】
杭340は、杭下側に配設される共に、地盤Gに打ち込まれる杭本体345と、杭上側に配設され第1プレート50及び杭本体345を接続する杭側接続部材346とを主に備える。
【0088】
杭本体345は、第1実施形態における杭40と同一の既製品のSC杭であり、第1実施形態と同様に、丸型鋼管41と、コンクリート42と、杭天部材43とから構成される。なお、杭本体345は、既製品のSC杭に限られるものでなく、PC杭やPHC杭などの他の既製品の杭を採用しても良い。
【0089】
杭側接続部材346は、金属材料から円筒状に形成される丸型鋼管であり、杭本体345の外径と同一の外径に形成される。また、杭側接続部材346は、上面視において、杭本体345の外周面と杭側接続部材346の外周面とを一致させた状態で、杭本体345の杭天部材43に溶接接合される。
【0090】
なお、第3実施形態では、杭側接続部材346よりも第1プレート50の外形が大きく形成される。これにより、杭340の軸心に対して柱21の軸心が水平方向に位置ずれする場合に、第1プレート50が大きく形成される分、杭340の軸心に対する柱21の軸心の位置ずれを吸収して、第1プレート50に柱21を溶接接合することができる。
【0091】
次いで、第3実施形態における建築物310の建築方法について説明する。なお、第3実施形態における建築物310の建築方法は、掘削された地盤Gに杭本体345(第1実施形態における杭40)を所定の深さまで打ち込む第1工程(埋設工程)までは、上記第1実施形態と同一であるので、その説明は省略する。
【0092】
第2工程(第2変更工程)では、各杭本体345の高さが計測され、その計測位置に応じて杭側接続部材346が切断され、杭340の上端面340aに配設される第1プレート50の高さが調整される。これにより、第1プレート50の上面側に溶接接合される各柱21を同一の高さに配設することができる。
【0093】
第3工程(第4接続工程)では、第1プレート50に溶接接合された状態の杭側接続部材346が杭本体345の杭天部材43に溶接接合される。これにより、杭側接続部材346を介して杭本体345と第1プレート50とが接続される。なお、第3実施形態では、第1プレート50と杭側接続部材346とは、第1プレート50や杭側接続部材346を製造する工場で溶接接合される(第3接続工程)。
【0094】
なお、上述したように、上面視において円形状に形成される杭本体345の外径と同一の外径の円形状に杭側接続部材346が形成され、杭本体345の外周面と杭側接続部材346の外周面とを一致させた状態で、杭側接続部材346と杭本体345とが溶接接合されるので、上記第3工程(第4接続工程)では、上記第1及び2実施形態における杭40と第1プレート50との接続部分の溶接作業と同様に、杭側接続部材346と杭本体345との溶接作業を横向きの姿勢で行うことができると共に、杭本体345に対して杭側接続部材346の軸心を合わせやすくできる。その結果、杭側接続部材346と杭本体345との溶接作業性を向上できる。
【0095】
第4工程では、第1プレート50の上面側に柱21が溶接により接合される。これにより、第1プレート50を介して杭340と柱21とが接続される。なお、第1プレート50と柱21とは、上記第1実施形態における第1プレート50と柱21との溶接接合と同様であるので、その溶接接合についての詳しい説明は省略する。
【0096】
第5工程では、上記第1実施形態における第4工程と同様に、柱脚部380の周囲および地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)基礎体60及び土間体70の鉄筋が配設された後、その鉄筋が配設される領域に生コンクリートが流し込まれ(打設され)、柱脚部380の周囲に基礎体60及び土間体70が配設される。
【0097】
以上のように建築される建築物310によれば、地盤Gへの打ち込み深さが各杭本体345でばらつきが生じる場合であっても、杭側接続部材346の切断(上記第3工程)により各杭340の全長を変更して、各杭340の上端面340aの高さ位置を変更できる。これにより、各第1プレート50の上面側に配設される各柱21の配設高さを各柱21で同一にできる。よって、柱21に接続される梁22を設計図通りの高さで配設することができる。
【0098】
また、杭340の高さを調整できるので、基礎体60及び土間体70に囲われる柱21及び杭340の全長(上下方向寸法)を各柱21及び各杭340で同一にすることができる。これにより、地震などの水平力を基礎体60の側面60aで受けた場合に、各柱脚部80に作用する力を各柱脚部80で同一にしやすくできる。その結果、構造計算を簡易にできる。
【0099】
さらに、杭側接続部材346は、杭本体345側が基礎体60よりも下方側に突出する長さに設定される。これにより、杭側接続部材346の全体が基礎体60によって拘束されることを抑制できる。そのため、地震などにより水平力が作用する場合には、杭側接続部材346のうち基礎体60から突出して基礎体60に拘束されていない部分に、杭340に働く最大の曲げモーメントを作用させることができる。よって、杭側接続部材346に作用する曲げモーメントに対して、杭側接続部材346を適した厚みや材料にすることで杭側接続部材346を補強することができ、杭340全体を不必要に大型化する必要がなくなる。その結果、建築物310の製造コストを低減できる。
【0100】
また、第3実施形態では、杭340及び柱21の外形よりも第1プレート50の外形が大きくされるので、柱21に軸力が発生した場合には、第1プレート50の上面および下面を基礎体60に当接させて、軸力に対する強度を確保することができる。
【0101】
次いで、
図3を参照して、第4実施形態における建築物410について説明する。上記第1実施形態では、全長を変更することが不可能な既製品の杭40が埋設される場合について説明したが、第4実施形態では、全長を変更可能な杭440が埋設される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0102】
図3(a)は、第4実施形態における建築物410の断面模式図であり、
図3(b)は、杭440及び第2プレート451の断面模式図であり、
図3(c)は、柱脚部480の断面模式図である。なお、
図3(a)~(c)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。また、
図3(b)及び(c)では、第4実施形態における柱脚部480の製造工程が順に図示され、溶接位置がYの符号を付して図示される。
【0103】
図3(a)に示すように、第4実施形態における建築物410は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造20と、その上部構造20の下方に構成され上部構造20を支える基礎430とから構成される。
【0104】
基礎430は、地盤Gの所定の深さまで埋設される杭440と、その杭440の上端部に配設される金属製の第2プレート451と、杭440及び第2プレート451の周囲に配設される基礎体60と、地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)配設され複数の基礎体60を連結する土間体70とを主に備える。
【0105】
第4実施形態における杭440は、中空状の鋼管杭から形成され、地盤Gの所定の深さまで打ち込まれた後、杭上部を所定の高さで切断可能に形成される。杭440は、杭上部を所定の高さで切断することにより、杭上部に配設される第2プレート451を所定の高さで配設可能に構成される。
【0106】
第2プレート451は、杭440の内径と略同一の外径の円形状に形成され杭440の内側に配設される内側部材451aと、杭440の外径と略同一の内径の貫通孔451b1を有し、杭440の外側に配設される外側部材451bとを備え、内側部材451a及び外側部材451bの上面が、杭440の上端に位置を合わせた状態で杭440に溶接接合される。
【0107】
なお、第4実施形態では、柱21の下端が第2プレート451の上部に当接した状態で配設され、柱21の下端と第2プレート451の上面とが溶接接合される。即ち、柱21と杭440とが第2プレート451を介して接続される。
【0108】
次いで、第4実施形態における建築物410の建築方法について
図3(a)~(c)を参照しつつ説明する。なお、第4実施形態における建築物410の建築方法は、掘削された地盤Gに杭440(第1実施形態における杭40)を所定の深さまで打ち込む工程までは、上記第1実施形態における第1工程(埋設工程)と同一であるので、その説明は省略する。
【0109】
第2工程では、上記したように、地盤Gに打ち込まれた杭440の杭上部が所定の高さで切断され、杭440の杭上部に配設される第2プレート451の配設高さが調整される。これにより、第2プレート451の上面側に配設される各柱21を同一の高さに配設することができる。
【0110】
第3工程では、
図3(b)に示すように、杭440の杭上部の内側および外側に第2プレート451の内側部材451a及び外側部材451bが配設され、それら内側部材451a及び外側部材451bの間の空間を介して内側部材451a、外側部材451b、及び、杭440が上方側からスロット溶接される。これにより、第2プレート451よりも下方側から第2プレート451と杭440とを溶接接合する必要がなくなり、杭440と第2プレート451との溶接作業性を向上できる。
【0111】
第4工程では、
図3(c)に示すように、第2プレート451の上方に柱21が配設された後、柱21の下部が第2プレート451の上面と溶接接合される。なお、柱21と第2プレート451とは、それらの接合位置よりも上方外側から、柱21の内部に配設された溶接部材425と共に溶接接合される。これにより、柱21と第1プレート50との溶接作業性を向上できる。
【0112】
第5工程では、上記第1実施形態における第4工程と同様に、柱脚部480(柱21の下端側の一部、第2プレート451、及び、杭440の上端側の一部)の周囲および地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)基礎体60及び土間体70の鉄筋が配設された後、その鉄筋が配設される領域に生コンクリートが流し込まれ(打設され)、柱脚部380の周囲に基礎体60及び土間体70が配設される。
【0113】
以上のように建築される建築物410によれば、第1実施形態における建築物10と同様に、柱脚部480の周囲に配設される基礎体60が土間体70を介して連結されるので、地震などの水平力が建築物10に作用する場合に、基礎体60の側面60aで受けた水平力を土間体70を介して他の基礎体60に伝達できる。
【0114】
従って、建築物410では、第1実施形態における建築物10と同様に、基礎体60と土間体70とにより、地震などの水平力を柱脚部480の周囲に配設される基礎体60で受けつつ、その水平力を土間体70を介して他の基礎体60に伝達できるので、地盤G内において複数の柱21及び杭440どうしが互いに独立していても(即ち、地盤G内に柱21及び杭440どうしを連結する地中梁を有していない場合においても)、床の剛床仮定を成り立たせることできる。よって、地震などの水平力が作用した場合における建築物410の層間変形角を小さくできる。
【0115】
また、建築物410では、杭440が中空状の鋼管杭から形成される場合であっても、第2プレート451により柱21と杭440とを接続することができ、柱21と杭440との接続部分が複雑化することを抑制できる。さらに、第2プレート451により柱21と杭440とが溶接接合されるので柱21に作用する軸力を杭440に伝達しやすくできる。
【0116】
なお、建築物410では、第2プレート451が、H型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形成される柱21の厚み、及び、鋼管杭として形成される杭440の厚みよりも厚い板厚を有する中実状の板部材として形成される。これにより、柱21及び杭440の強度よりも第2プレート451の強度を高めることができる。従って、柱21に大きな軸力が発生した場合に、第2プレート451が破損することを抑制できる。
【0117】
また、建築物410では、杭440及び柱21の外形よりも第1プレート50の外形が大きく形成される。これにより、柱21に軸力が発生した場合には、第2プレート451の上面および下面を基礎体60に当接させて、軸力に対する強度を確保することができる。
【0118】
次いで、
図4(a)を参照して、第5実施形態における建築物510について説明する。上記第1実施形態では、柱脚部80と基礎体60及び土間体70とが当接した状態で配設される場合について説明したが、第5実施形態では、柱脚部80と基礎体60及び土間体70との間に弾性部材581が介在される場合について説明する。なお、第5実施形態では、第1実施形態における建築物10に対して柱脚部80と基礎体60及び土間体70との間に弾性部材581を備えるのみであり、その他の構成は第1実施形態と同一であるので、弾性部材581以外についての説明は省略する。
【0119】
図4(a)は、第5実施形態における建築物510の断面模式図である。なお、
図4(a)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0120】
図4(a)に示すように、第5実施形態における建築物510は、第1プレート50を介して接続される柱21と、杭40との柱脚部80の周囲にゴム状の弾性体から形成される弾性部材581が配設される。
【0121】
第5実施形態における建築物510では、地震などにより基礎体60から柱脚部80に水平力が作用する場合に、弾性部材581を弾性変形させることで、柱21及び杭40に一時的に働く曲げモーメントを低減できる。よって、地震などにより基礎体60から柱脚部80に水平力が作用する場合に、柱21が傾くことを抑制でき、建築物510の層間変形角が大きくなることを抑制できる。
【0122】
また、柱脚部80の周囲に弾性部材581が配設されることで、柱脚部80の周囲に水が浸入することを抑制できる。よって、水分により柱脚部80が腐食することを抑制できる。
【0123】
即ち、第1実施形態における建築物10のように、鉄筋コンクリートから形成される基礎体60及び土間体70に柱脚部80が囲まれる場合には、基礎体60及び土間体70に亀裂が発生すると、その亀裂から水分が入り込み柱脚部80が腐食する可能性がある。これに対し、第5実施形態では、柱脚部80の周囲に配設される部材をゴム状の弾性部材581とすることで、柱脚部80の周囲に亀裂が発生することを抑制できる。その結果、水分により柱脚部80が腐食することを抑制できる。
【0124】
なお、弾性部材581は、柱脚部80の上下方向外側の外面(即ち、第1プレート50の上面側)には配設されず、柱脚部80の水平方向外側の側面のみに配設される。これにより、第1プレート50の上部を覆う位置に配設される基礎体60及び土間体70を第1プレート50で支えることができる。
【0125】
即ち、第1プレート50の上下方向外側の外面に弾性部材が配設されるものでは、基礎体60及び土間体70に作用する上下方向の力で弾性部材が弾性変形して、基礎体60及び土間体70が下方に沈み込む(変形する)ところ、柱脚部80の上下方向外側の外面に弾性部材581を非配設とすることで、弾性部材の弾性変形による基礎体60及び土間体70の沈み込み(変形)を抑制できる。
【0126】
次いで、
図4(b)を参照して、第6実施形態における建築物610について説明する。上記第1実施形態では、地盤面GLに対して基礎体60の側面60aが面直に形成される場合について説明したが、第6実施形態では、地盤面GLに対して基礎体60の側面660aが傾斜して形成される場合について説明する。なお、第6実施形態では、第1実施形態における基礎体60の側面60aの形状が異なるのみであり、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、側面660a以外についての説明は省略する。
【0127】
図4(b)は、第6実施形態における建築物610の断面模式図である。なお、
図4(b)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0128】
図4(b)に示すように、第6実施形態における建築物610は、柱脚部80の周囲に配設される基礎体60の側面660aが下方側から上方側に向かって柱脚部80から水平方向外側に離間する形状に形成される。よって、地震などにより基礎体60に水平力が作用する場合には、その水平方向に作用する力のうちの少なくとも一部の力が作用する方向を上方に変更できる。これにより、柱脚部80に作用する水平方向の力を低減できる。その結果、地震などの水平力が建築物610に作用する場合に杭40や柱21に作用する曲げモーメントを低減することができ、杭40及び柱21が破損することを抑制できる。
【0129】
また、基礎体60には土間体70が連結されるので、水平方向に作用する力のうちの少なくとも一部の力が基礎体60により上方向に作用する力に変更された際に、その変更された上方向の力により建築物610が上下方向に揺れ動くことを土間体70のせん断強度により抑制できる。
【0130】
次いで、
図5を参照して、第7実施形態における建築物710について説明する。上記第1実施形態では、杭40の上端が土間体70よりも下方に配置される場合について説明したが、第7実施形態では、杭740の上端が土間体70よりも上方に配置される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0131】
図5は、第7実施形態における建築物710の断面模式図である。なお、
図5では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0132】
図5に示すように、第7実施形態における建築物710は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造20と、その上部構造20の下方に構成され上部構造20を支える基礎730とから構成される。
【0133】
基礎730は、地盤Gの所定の深さまで埋設される杭740と、その杭740の上端面740aに配設される金属製の第1プレート50と、杭740の上端面740aよりも下方位置で杭740の一部の周囲に配設される基礎体60と、地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)配設され複数の基礎体60を連結する土間体70とを主に備える。
【0134】
杭740は、第1実施形態における杭40と同様に、丸型鋼管41と、コンクリート42と、杭天部材43とを備える既製品のSC杭として構成される。また、第1実施形態における杭40と同様に、PC杭やPHC杭などの他の既製品の杭を採用しても良い。
【0135】
また、第7実施形態における杭740は、土間体70よりも上方に上端面740aが位置する打ち込み深さに設定され、土間体70の上面に対し上端面740aが上方側に所定の距離離間される。従って、第7実施形態では、土間体70に対して上方側に所定の距離離間する位置に第1プレート50及び杭740の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とが配置される。
【0136】
なお、上記第1実施形態では、杭40の上端側の一部、第1プレート50、及び、柱21の下端側の一部から構成される柱脚部80が基礎体60及び土間体70により囲まれる場合について説明したが、第7実施形態においては、柱脚部80が土間体70よりも上方側に配設される。
【0137】
以上のように建築される建築物710によれば、第1実施形態における建築物10と同様に、杭740の一部の周囲に配設される基礎体60が土間体70を介して連結されるので、地震などの水平力が建築物710に作用する場合に、基礎体60の側面60aで受けた水平力を土間体70を介して他の基礎体60に伝達できる。
【0138】
従って、建築物710では、第1実施形態における建築物10と同様に、基礎体60と土間体70とにより、地震などの水平力を杭740の一部の周囲に配設される基礎体60で受けつつ、その水平力を土間体70を介して他の基礎体60に伝達できるので、地盤G内において複数の杭740どうしが互いに独立していても(即ち、地盤G内に杭740どうしを連結する地中梁を有していない場合においても)、床の剛床仮定を成り立たせることできる。よって、地震などの水平力が作用した場合における建築物710の層間変形角を小さくできる。
【0139】
また、建築物710では、土間体70に対して上方側に所定の距離離間する位置に第1プレート50及び杭740の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とが配設されるので、地震などの水平力が作用した場合に杭740及び柱21にかかる曲げモーメントが最大となる土間体70との境界から離間させた位置に第1プレート50及び杭740の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とを配設できる。よって、第1プレート50及び杭740の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とにかかる曲げモーメントを抑えることができる。その結果、第1プレート50及び杭740の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とが破損することを抑制できる。
【0140】
なお、建築物710では、地震などの水平力が作用した場合に杭740及び柱21にかかる曲げモーメントの反局点(曲げモーメントが「正から負」または「負から正」に切り替わる点)となる位置に杭740の上端面740aが配設されるよう杭740の打ち込み深さが設定される。これにより、第1プレート50及び杭740の接合部にかかる曲げモーメントを最小とすることができる。
【0141】
また、杭740及び柱21にかかる曲げモーメントの反局点となる位置に、第1プレート50の上面が配置されるよう杭740の打ち込み深さを設定しても良い。この場合には、第1プレート50及び柱21の接合部にかかる曲げモーメントを最小とすることができる。
【0142】
さらには、杭740及び柱21にかかる曲げモーメントの反局点となる位置に、柱21の下端と杭740の上端との中間位置が配設されるよう杭740の打ち込み深さを設定しても良い。この場合には、第1プレート50及び杭740の接合部と、第1プレート50及び柱21の接合部とにかかる曲げモーメントを小さくしやすくでき、それぞれの接合部の破損を抑制できる。
【0143】
即ち、第7実施形態では、杭740及び柱21にかかる曲げモーメントの反局点となる位置に、柱21の下端から杭740の上端までの間の位置のいずれかが配設されるよう杭740の打ち込み深さを設定することで、第1プレート50及び杭740の接合部、又は、第1プレート50及び柱21の接合部にかかる曲げモーメントを小さくしやすくできる。
【0144】
次いで、
図6(a)を参照して、第8実施形態における建築物810について説明する。上記第1実施形態では、杭40の上端および柱21の下端が第1プレート50に接続される場合について説明したが、第8実施形態では、杭40の上端および柱821の下端が基礎体860に接続される場合について説明する。なお、上記した各実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0145】
図6(a)は、第8実施形態における建築物810の断面模式図である。なお、
図6(a)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0146】
図6(a)に示すように、第8実施形態における建築物810は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造820と、その上部構造820の下方に構成され、上部構造820を支える基礎830とから構成される。
【0147】
上部構造820は、内部に鉄筋(図示しない)を配設したコンクリート体(鉄筋コンクリート)から形成され上下方向に延設される複数の柱821と、内部に鉄筋(図示しない)を配設したコンクリート体(鉄筋コンクリート)から形成され地盤Gよりも上方側で複数の柱821を水平方向に連結する複数の梁822とを組み合わせて構成される。
【0148】
基礎830は、地盤Gの所定の深さまで埋設される杭40と、杭40の上端側が下方側に埋設されると共に杭40の上端側の周囲に配設される鉄筋コンクリートの基礎体860と、地盤面GLに接して(地盤面GL上に沿って)配設され、複数の基礎体860を連結する土間体70とを主に備える。なお、第8実施形態では、基礎体860と土間体70との配設領域に別々に生コンクリートが打設され、基礎体860が形成された後に、土間体70が形成される。
【0149】
基礎体860は、杭40の上端と柱821の下端とを接続可能に構成されており、上端側が柱821の下面に接する高さに設定され、下端側が杭40の上端よりも下方に位置する高さに設定される。なお、杭40と基礎体860とは、杭40の上端側が基礎体60の内側に埋設されることにより両者が接続され、柱821と基礎体860とは、柱821及び基礎体860を構成する鉄筋コンクリートの鉄筋が少なくとも一部で連結して配設されることにより両者が接続される。
【0150】
また、第8実施形態における建築物810では、基礎体860の上端面が土間体70の上端面よりも下方の位置に設定され、基礎体860の上端面を土間体70が覆う状態とされる。これにより、基礎体860及び柱821の接続部分を土間体70で覆うことができ、基礎体860及び柱821の接続部分を土間体70で補強できる。
【0151】
ここで、第8実施形態における建築物810のように柱821の下端を鉄筋コンクリートの基礎体860に接続するものでは、第1実施形態における建築物10のように柱21が第1プレート50に接続され柱21及び第1プレート50の周囲が基礎体60に囲まれる場合に比べて、柱821に水平力が作用した際に柱821と基礎体860との接続部分に力が集中しやすくなる。従って、柱821に水平力が作用した場合に柱821と基礎体860との接続部分が破損して、柱821が倒壊する恐れがある。
【0152】
これに対し、第8実施形態における建築物810によれば、柱821と基礎体860との接続部分を土間体70で補強できるので、柱821に水平力が作用した場合に柱821と基礎体860との接続部分が破損して柱821が倒壊することを抑制できる。
【0153】
また、第8実施形態における建築物810では、杭40の上端および柱821の下端が基礎体860に接続されるので、柱821の下端の高さ調整を鉄筋コンクリートの基礎体860で調整できる。即ち、基礎体860の配設領域への生コンクリートの打設量により柱821の配設高さを調整できる。従って、第1実施形態における建築物10のように柱21と杭40とを第1プレート50で接続する場合に比べて、第8実施形態における建築物810では、杭40の打ち込み高さを高精度にする必要が無くなるので、杭40の打ち込み作業を簡易にできる。また、柱821の高さを鉄筋コンクリートの基礎体860で調整できるので、柱821の上側に配設される梁822を設計図通りの高さで配設できる。
【0154】
さらに、第8実施形態における建築物810では、杭40の上端および柱821の下端が基礎体860に接続されるので、第1実施形態における建築物10のように、基礎体60の生コンクリートの打設領域内にて杭40の上端と21の下端とを接続(溶接)する作業を不要にできる。そのため、第8実施形態における建築物810では、建築物810の建築作業性を向上できる。
【0155】
また、柱821の下端が基礎体860に接続される第8実施形態の建築物810では、第1実施形態における建築物10の柱21ように金属製の第1プレート50に柱21の下端を溶接しなくて良いので、柱821の材料が金属材料に限定されない。そのため、柱821を鉄筋コンクリートから形成でき、柱821の設計の自由度を向上できる。
【0156】
さらに、第8実施形態における建築物810では、基礎体860の上端面が地盤面GLよりも上方の位置に設定され、その基礎体860を覆う状態で土間体70が配設される。即ち、土間体70の一部が基礎体860の周囲を取り囲む状態で配設される。これにより、地震等により杭40に水平力が作用した際に、その水平力を基礎体860の側面60aを介して土間体70に伝達しやすくできる。その結果、地震などにより基礎体860に水平力が作用する場合に、建築物810の層間変形角を小さくできる。
【0157】
次いで、
図6(b)を参照して、第9実施形態における建築物910について説明する。
上記第8実施形態では、建築物810の上部構造820が鉄筋コンクリートで形成される場合について説明したが、第9実施形態では、建築物910の上部構造920が金属製のH型鋼、角型鋼管、又は、丸型鋼管などの一般的な型鋼から形成される場合について説明する。
【0158】
図6(b)は、第9実施形態における建築物910の断面模式図である。なお、
図6(b)では、
図1に示す第1実施形態の建築物10の断面と対応する位置の断面が模式的に図示される。
【0159】
図6(b)に示すように、第9実施形態における建築物910は、地盤Gよりも上方側に構成される上部構造920と、その上部構造920の下方に構成され、上部構造920を支える基礎830とから構成される。
【0160】
上部構造920は、柱21と、梁22と、柱21の下端に接続される金属板の接続プレート926とを組み合わせて構成される。
【0161】
接続プレート926は、柱21を基礎830の基礎体860に接続するための金属板であり、柱21の下端面に沿って柱21に溶接により接続される。また、接続プレート926の基礎体860側の下面には、複数本の鉄筋が溶接により接続されており、その鉄筋が基礎体860のコンクリート内に埋め込まれる(基礎体860の配設領域に生コンクリートを打設する際に基礎体860のコンクリート内に配設される)。これにより、柱21の下端が接続プレート926を介して基礎体860に接続される。
【0162】
なお、第9実施形態における土間体70は、基礎体860の上端面および接続プレート926の上端面を覆う状態で配設されており、第8実施形態における建築物810と同様に、柱21と基礎体860との接続部分が土間体70により補強される。これにより、柱21に水平力が作用して、柱21が倒壊することを抑制できる。
【0163】
また、第9実施形態における建築物910では、鉄筋コンクリートの基礎体860に柱21および杭40が接続されるので、第8実施形態における建築物810と同様に柱21の配設高さを基礎体860(基礎体860の配設領域への生コンクリートの打設量)で調整できる。
【0164】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0165】
上記各実施形態では、基礎体60,860を配設する領域分、地盤Gを掘削する(即ち、基礎体60,860を配設するスペースに対応した形状に地盤Gを掘削する)場合について説明したが、基礎体60,860を配設する配設領域よりも十分に大きく地盤Gを掘削して、地盤Gを埋め戻す際に基礎体60,860の配設領域分の凹みを形成するようにしても良い。また、この場合、地盤Gを埋め戻す際に、地盤改良の処理を行って地盤Gを強度を高めても良い。なお、地盤改良の種類としては、置換、浅層混合、深層混合、載荷、脱水、締固めなどが例示される。
【0166】
上記各実施形態では、上面視における基礎体60,860の外形が略正方形状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、上面視における基礎体60,860の外形が円形状に形成されるものであっても良い。この場合には、水平力がどの方向から基礎体60,860の側面60aに入力されたとしても、その水平力を同様に受圧することができる。
【0167】
上記第1実施形態から第7実施形態では、基礎体60の配設領域と、土間体70の配設領域とに同時に生コンクリートを打設する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、基礎体60の鉄筋の一部を土間体70の配設領域側に突出させた状態で配設し、基礎体60の配設領域に生コンクリートを流し込んで(打設して)基礎体60を配設した後、土間体70の配設領域側に突出した基礎体60の鉄筋と交わるように土間体70の鉄筋を配設し、土間体70の配設領域に生コンクリートを流し込んで(打設して)土間体70を配設するものであっても良い。
【0168】
この場合も同様に、基礎体60の鉄筋と土間体70との鉄筋により、基礎体60と土間体70とを連結できるので、基礎体60にかかる水平力を土間体70に伝達しやすくできる。よって、基礎体60に水平力が働く場合に、その水平力が基礎体60から一部の柱脚部80に集中して作用することを抑制できる。
【0169】
なお、上記したように基礎体60を配設した後に土間体70を配設する場合には、基礎体60のコンクリートと土間体70のコンクリートとの成分を異なるものにしても良い。
【0170】
上記第1及び第2実施形態では、上面視において、円形状に形成される杭40の外径と同一の外形の円形状に第1プレート50が形成される場合について説明したが、第1プレート50が杭40と異なる大きさ及び形状に形成されるものであっても良い。なお、第1プレート50を杭40よりも大きく形成するほど、杭40の軸心に対して柱21の配設位置がずれた場合に、第1プレート50を介して杭40と柱21とを接続しやすくできる。
【0171】
上記第2実施形態では、上面視において、柱本体223と柱側接続部材224とが同形状および同一厚さの角型鋼管から形成される場合について説明したが必ずしもこれに限られるものではなく、柱本体223と柱側接続部材224とを異なる形状および厚さの部材から形成しても良く、例えば、柱本体223を四角の角型鋼管から形成し、柱側接続部材224を六角の角型鋼管から形成して、柱本体223に対して柱側接続部材224の強度を異なるものとしても良い。
【0172】
また、柱本体223と柱側接続部材224とを異なる材料から形成して、柱側接続部材224の強度を柱本体223の強度よりも高めて、比較的曲げモーメントが大きくなりやすい柱側接続部材224が破損することを抑制できる。なお、この場合には、柱本体223と柱側接続部材224とを同一の形状および厚さで形成しても良く、異なる形状および異なる厚みで形成しても良い。
【0173】
なお、柱本体223と、柱側接続部材224との外形を異ならせる場合には、柱本体223及び柱側接続部材224の間にそれら柱本体223及び柱側接続部材224の外形よりも大きい中実状の板材を配設することが好ましい。これによれば、柱本体223及び柱側接続部材224の接続可能な面積を確保することができるからである。
【0174】
上記第2実施形態では、柱側接続部材224の柱本体223側が土間体70よりも上方に突出する長さに設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、柱側接続部材224の柱本体223側が土間体70よりも上方に非突出とされ、柱本体223が土間体70の上面よりも下方に突出する長さに設定されるものであっても良い。これによれば、柱側接続部材224と柱本体223との接続部分を土間体70の内側に配設できるので、柱側接続部材224と柱本体223との溶接接合部に力が集中して、柱側接続部材224と柱本体223との溶接接合部が破損することを抑制できる。
【0175】
上記第3実施形態では、上面視において、第1プレート50が杭側接続部材346の外形よりも大きく形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではく、例えば、上面視において、第1プレート50の外形が杭側接続部材346の外形と同一に形成されても良い。
【0176】
上記第3実施形態では、第1プレート50と杭側接続部材346とは、第1プレート50や杭側接続部材346を製造する工場で溶接接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。即ち、第1プレート50に杭側接続部材346が溶接接合された状態は、杭本体345の杭天部材43に杭側接続部材346を配設する前に形成されるものであれば良く、例えば、建築物310の建築現場において、杭本体345の杭天部材43に杭側接続部材346を配設する前に第1プレート50と杭側接続部材346と溶接接合するものであっても良い。
【0177】
上記第4実施形態では、第2プレート451の上面に柱21の下端が溶接接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、柱21の下端に第1プレート50を溶接すると共にその第1プレート50の下面を第2プレートの上面に当接させて、第2プレート451と第1プレート50とをメタルタッチ接合するものであっても良い。
【0178】
なお、上記のように柱21の下端に第1プレート50を溶接し、第2プレート451の上部に第1プレートを配設する場合には、第2プレート451及び第1プレート50の降伏点よりも小さい降伏点の金属材料(例えば、純鉄や極軟鋼材料)を第2プレート451と第1プレート50との間に配設して、第2プレート451と第1プレート50との間に形成される隙間を埋めても良い。これによれば、第2プレート451と第1プレート50との対向面における表面粗さが大きい場合であっても、第2プレート451と第1プレート50との密着性を高めることができるので、柱21に作用する軸力を杭440に伝達しやすくできる。
【0179】
また、第2プレート451と第1プレート50との間に高強度モルタルや金属粉を挿入するものであっても良い。この場合も小さい降伏点の金属材料を第2プレート451と第1プレート50との間に配設した場合と同様に、第2プレート451と第1プレート50との間の密着性を高めることができるので、柱21に作用する軸力を杭440に伝達しやすくできる。
【0180】
さらに、柱21の下端に第1プレート50を溶接し、第2プレート451の上部に第1プレートを配設する場合には、第2プレート451と第1プレート50とをメタルタッチ接合するのではなく、第2プレート451と第1プレート50とを溶接により接合しても良く、また、第2プレート451と第1プレート50とをボルト及びナットにより締結しても良い。
【0181】
上記第4実施形態では、第2プレート451が杭440に上方側からスロット溶接される場合について説明したが、第2プレート451と杭440とを別の溶接方法で接合するものであっても良い。例えば、第2プレート451を第1プレート50と同様に所定の厚みを有する金属製の一枚の板部材として形成し、杭440の上端に第2プレート451を配置した後、杭440と第2プレート451との当接部分を隅肉溶接するものであっても良い。この場合には、第2プレート451を内側部材451aと外側部材451bとから形成する必要がなくなるので、第2プレート451の製造を簡易にできる。
【0182】
上記第5実施形態では、ゴム状の弾性部材581が柱脚部80の周囲に配設される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、水分による柱脚部80の腐食を防止する目的で、ゴム系、又は、タールエポキシ系の塗料を柱脚部80の周囲に塗膜するものであっても良い。なお、この場合には、塗膜の伸び率が1%以上の塗料を用いることが好ましく、塗膜の伸び率が1%以上に設定されるものであれば、地震などにより柱21や杭40が変形した場合にも塗膜が剥がれることを抑制できるからである。
【0183】
上記第6実施形態では、側面660aが下方側から上方側に向かって柱脚部80から水平方向外側に離間する形状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、側面660aが上方側から下方側に向かって柱脚部80から水平方向外側に離間する形状に形成されるものであっても良い。この場合も同様に、地震などにより基礎体60に水平力が作用する場合に、柱脚部80に作用する水平方向の力を低減できる。その結果、地震などの水平力が建築物610に作用する場合に杭40や柱21が破損することを抑制できる。
【0184】
上記第8実施形態では、柱821及び梁822から構成される上部構造820と基礎体860とが別々に構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、上部構造820と基礎体860とを一体として構成するものであっても良い。例えば、上部構造820と基礎体860との配設領域への生コンクリートの打設を同時に行い、上部構造820と基礎体860とを一体に構成しても良い。
【0185】
上記第8実施形態および第9実施形態では、基礎体860の上端面が地盤面GLよりも高い位置に設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、地盤面GLと同一の高さ、又は、地盤面GLよりも低い位置に設定されるものであってもよい。
【0186】
上記第8実施形態および第9実施形態では、既製品の杭40がそのまま基礎体860に接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第3実施形態における杭340のように、杭本体345と杭側接続部材346とを備え、杭側接続部材346を基礎体860に接続しても良い。
【0187】
上記第8実施形態および第9実施形態では、基礎体860の上端面が土間体70の上端面よりも下方に設定される場合、即ち、基礎体860の上端面が土間体70に覆われる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、基礎体860の上端面が土間体70の上端面と同一の高さ、又は、土間体70の上端面よりも上方に位置するように設定して、基礎体860の側面60aに土間体70を接続するものであっても良い。
【0188】
上記第9実施形態では、柱21を接続プレート926に接続する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上記第2実施形態における柱221のように、柱本体223と柱側接続部材224とを備え、柱側接続部材224を接続プレート926に接続しても良い。
【0189】
上記第9実施形態では、接続プレート926の下面に溶接した鉄筋を基礎体860に埋め込んで柱21と基礎体860とを接続する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、基礎体860の上面側に打ち込んだアンカーボルトに接続プレート926を締結固定するものであっても良い。
【符号の説明】
【0190】
10,210,310,410,510,610,710,810,910 建築物
20,220,820,920 上部構造
21,221,821 柱
223 柱本体
224 柱側接続部材
30,330,430,730,830 基礎(下部構造)
40,340,440,740 杭
345 杭本体
346 杭側接続部材
50 第1プレート(中実鋼材)
451 第2プレート(中実鋼材)
60,860 基礎体
60a,660a 側面
70 土間体
80,280,380,480 柱脚部
581 弾性部材
G 地盤
GL 地盤面