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  • 特開-水分計測装置および荷受システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128607
(43)【公開日】2022-09-02
(54)【発明の名称】水分計測装置および荷受システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20220826BHJP
   G01N 5/00 20060101ALI20220826BHJP
   G01G 19/02 20060101ALI20220826BHJP
   A01F 25/00 20060101ALN20220826BHJP
【FI】
G01N27/22 C
G01N5/00 B
G01G19/02 B
A01F25/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085350
(22)【出願日】2022-05-25
(62)【分割の表示】P 2017135187の分割
【原出願日】2017-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000163501
【氏名又は名称】近江度量衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】アシェナフィ テセマ アベベ
(57)【要約】
【課題】穀物などの粉粒体に含まれる水分の計測精度を向上させた水分計測装置、及び荷受システムを提供する。
【解決手段】粉粒体(籾M)を収容する収容体40内に設けられ、該粉粒体(籾M)に没する複数の電極42,44を有する検出部18と、前記複数の電極42,44間の静電容量を計測する計測部(静電容量計測器38)と、前記計測された静電容量に基づいて前記水分を導出する水分導出部64と、を備える水分計測装置16。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックに積載された粉粒体の重量を計測するトラックスケールと、
前記トラックスケール上において、前記トラックに積載された状態にある前記粉粒体の
水分を計測する水分計測装置と、
を備え、
前記水分計測装置は、
前記粉粒体を収容する収容体内に設けられ、該粉粒体に没する複数の電極を有する検
出部と、
前記複数の電極間の静電容量を計測する計測部と、
前記計測された静電容量に基づいて前記水分を導出する水分導出部と、
を備える荷受システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体に含まれる水分を計測する水分計測装置、及び粉粒体の荷受システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農家が収穫した籾や麦などの穀物は、カントリーエレベーターやライスセンターなどの乾燥貯蔵施設へ運ばれる。そこでは、各農家から荷受した穀物を一括で乾燥処理し、その後、出荷されるまで貯蔵している。各農家から荷受された穀物は一括して処理されるため、農家に対する代価の算定は荷受時に計測された穀物の重量によって算定される。ここで、荷受時における穀物は、その乾燥程度(穀物内の水分)が農家ごとに異なっているため、荷受時に計測した穀物の重量をそのまま代価の算定に用いると不平等になる。そこで、荷受時の重量を平均的な水分における重量へと換算し、換算後の重量に基づいて代価が算定されている。
【0003】
特許文献1には、荷受時における穀物の重量計測装置が記載されている。この重量計測装置は、所定の重量単位(100kg)の穀物を収容可能なホッパーと、当該ホッパー内に設けられた電極と、を備えており、グランドに接続されたホッパーと電極の間に生じる静電容量を計測し、当該静電容量に基づいて穀物の水分を算出し、算出された水分に応じて荷受時の重量を換算することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭61-30695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記重量計測装置では、ホッパー全体が電極として機能しているため、例えば、ホッパーに充填された穀物の表層部分(上層部分)が、平坦であるか傾斜しているかによって、ホッパーと穀物の接触面積、すなわち静電容量を計測するための電極面積が異なることとなり、計測される静電容量にばらつきが生じ、水分の計測精度をより向上させるのが困難となっている。
【0006】
本発明は、穀物などの粉粒体に含まれる水分の計測精度を向上させた水分計測装置、及び荷受システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、粉粒体の水分を測定する水分測定装置であって、前記粉粒体を収容する収容体内に設けられ、該粉粒体に没する複数の電極を有する検出部と、前記複数の電極間の静電容量を計測する計測部と、前記計測された静電容量に基づいて前記水分を導出する水分導出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記電極は、絶縁性の隔壁を介して前記収容体に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
また、前記複数の電極は、前記収容体の中心部に設けられ、前記収容体と導通する内側電極と、前記絶縁体を介して前記収容体の内壁に取り付けられた複数の外側電極と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記内側電極は丸棒状であり、前記複数の外側電極は、前記内側電極の周面に対向するよう円弧状に湾曲していることを特徴とする。
【0011】
前記検出部を複数備え、前記計測部は、前記検出部ごとに前記静電容量を計測し、前記水分導出部は、前記計測された静電容量の平均値に基づいて前記水分を導出する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の荷受システムは、上記の水分測定装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電容量を計測するための複数の電極が、粉粒体内に没するように設けられている。このため、静電容量を計測するための電極面積が、収容された粉粒体の表層態様に関わらず、常に一定となるので、従来と比較して静電容量の計測結果にばらつきが少なく、そのため、水分計測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る荷受システムの概略図
図2】上記荷受システムのブロック図
図3】(a)水分計測装置の検出部を中心軸に沿って切断した場合の断面図、(b)検出部を中心軸に直交して切断した場合の断面図、(c)検出部の使用態様を示した図
図4】水分計測装置の検出部の変形例であり、(a)中心軸に沿って切断した場合の断面図、(b)中心軸に直交して切断した場合の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る水分計測装置および荷受システムの実施形態を、穀物である籾を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の荷受システム10は、籾Mの乾燥貯蔵施設に設けられており、図1に示すように、トラックスケール12(図2)の検出部14と水分計測装置16(図2)の検出部18が制御盤20に配線接続された構成となっている。
【0017】
トラックスケール12(図2)の検出部14は、一般に、矩形平板状の計量台22が、一方の主面を上方に向けた状態で、その四隅近傍に配された4つのロードセル24によって支持された構成となっている。各ロードセル24は、計量台22の下方に位置する水平かつ極めて頑丈な基礎26との間に設けられている。本実施形態では、地面を掘り下げて形成された窪みに基礎26を設置しており、計量台22が地面と同じレベルに配されている。各ロードセル24の出力は配線58により制御盤20へと接続されている。
【0018】
図2に示すように、制御盤20には各ロードセル24の出力に基づいて重量を計測する重量計測器28が設けられている。重量計測器28は、各ロードセル24から出力されたアナログ信号をデジタル信号へと変換して重量を算出している。重量計測器28は、制御盤20に設けられたコンピュータ30と通信可能に接続されており、計測結果をコンピュータ30へと送信する。
【0019】
上記の検出部14と重量計測器28によって、トラックT及びその積載物である籾Mの重量を計測するトラックスケール12が構成されている。当該トラックスケール12による計測は、図1に示すように、先ず、籾Mが収容されたフレキシブルコンテナバック(以下、「フレコンバックF」という。)をトラックTに積載した状態で重量が計測され、計測された重量がコンピュータ30へと送信される。その後、施設内に設けられた荷受ホッパー(不図示)に籾Mを投入して空になった状態のフレコンバックFをトラックTに積載した状態で重量が計測され、計測された重量がコンピュータ30へと送信される。コンピュータ30は、不図示の中央処理装置(以下、「CPU」という。)およびメモリ(不図示)を備えており、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することで、図2に示すように、重量計測器28から重量を取得する重量取得部34、及びフレコンバックFに籾Mが収容された状態における重量からフレコンバックFが空になった状態における重量を減じて入荷量を算出する入荷量算出部36として機能する。
【0020】
上記のコンピュータ30は静電容量計測器38と通信可能に接続されている。静電容量計測器38には、複数の(本実施形態では4つの)検出部18(図1)が配線接続されている。検出部18は、図3に示すように、収容体40と、複数の電極42,44と、を備えている。
【0021】
収容体40は、フレコンバックF内の籾Mに入れられることで、その内部に籾Mを収容する。収容体40の形状は、特に限定されないが、本実施形態では施設の作業者が把持できる程度の大きさに形成された円筒部46と、当該円筒部46の上端を閉じる蓋部48と、から構成されている。収容体40は、銅や鉄などの導電性の部材により形成されている。
【0022】
上記の収容体40内には、1つの内側電極42、及び複数の(本実施形態では2つの)外側電極44が設けられている。これらの電極42,44としては、銅製のものが好ましい。
【0023】
内側電極42は、棒状の電極であり、円筒部46内に位置する丸棒部42aと、円筒部46の下端から突出した逆円錐状部42bと、から構成されている。当該内側電極42は、円筒部46の中心線C(筒軸)と同軸となるように配され、その上端が蓋部48にネジ50により固定されている。よって、内側電極42は、収容体40と導通しており、蓋部48に取り付けられた配線68aにより制御盤20に接続されている。制御盤20内において、内側電極42はグランドに接続されている。なお、本実施形態の内側電極42は、全体が銅などの導電性部材により形成されているが、非導電性の丸棒部42aと逆円錐状部42bの表面に導電層を形成したものであってもよいし、丸棒部42aの表面のみに導電層を形成したものであってもよい。
【0024】
外側電極44は、内側電極42と同じ方向に延在する板状の電極であり、その主面が内側電極42の周面と対向するように円弧状に湾曲している。このような2つの外側電極44が、上記の内側電極42の周りに、互いに対向するよう配置されており、それぞれ隔壁52を介して収容体40に取り付けられている。隔壁52は、フッ素樹脂などの絶縁性素材から成る半円筒状の部材であり、円筒部46の内周面46aに沿って、円筒部46の下端から上端にかけて延在している。隔壁52の外周面52bは、両面テープなどの接着手段によって円筒部46の内周面46aと面接合している。隔壁52の内周面52aの中央には凹部54が形成されており、当該凹部54に外側電極44が嵌め込まれている。これにより、外側電極44と収容体40とは隔壁52によって電気的に絶縁された状態となっている。各隔壁52と円筒部46を貫通する穴56が開設されおり、当該穴56に通された配線68bが各外側電極44に接続されている。
【0025】
図1に戻り、各検出部18の配線68a,68bは、制御盤20から計量台22の上方にかけて延在する案内管60を通じて制御盤20に接続されている。図2に示すように、制御盤20内では、各検出部18からの配線68a,68bが静電容量計測器38に接続されている。静電容量計測器38は、内側電極42と外側電極44の間の静電容量を検出部18ごとに計測し、各検出部18の静電容量をコンピュータ30へと送信する。
【0026】
コンピュータ30は、上記のCPU(不図示)がメモリ(不図示)に記憶されたプログラムを実行することで、静電容量計測器38から送信された各検出部18の静電容量を取得する静電容量取得部62、取得した静電容量を合算した値に検出部18の個数の逆数を乗じることで静電容量の平均値(以下「平均静電容量」という。)を算出し、当該平均静電容量に対応する水分を導出する水分導出部64、及び水分と上記入荷量をディスプレイに表示したり、プリンタに印刷する、又は当施設のメインコンピュータ(不図示)への送信などの出力を行う出力部66として機能する。
【0027】
ここで、上記水分の導出を行うために、本実施形態では、予め、籾Mの標準試料(既知の水分となるように乾燥調節された籾M)における静電容量を計測し、計測結果に基づいて静電容量と水分の関係を表す検量線の式を決定し、当該式をプログラムに定めることとしている。そして、CPUは、平均静電容量を算出すると、当該平均静電容量を当該式に代入して水分を算出している。
【0028】
このように、本実施形態では、複数の検出部18、静電容量計測器38、静電容量取得部62、及び水分導出部64によって、籾Mの水分を検出する水分計測装置16が構成されている。当該水分計測装置16は、図3(c)に示すように、フレコンバックF内の籾Mに検出部18が入れられると、収容体40内が籾Mで満たされ、外側電極44と内側電極42が籾Mに没することとなり、この状態で水分の計測が行われる。
【0029】
本実施形態の水分計測装置16によれば、静電容量を計測するための複数の電極42,44が、籾M内に没するように設けられている。このため、フレコンバックFに入れられた籾Mの表層部分Ms(図1)が傾斜していたとしても、複数の電極42,44の全面が籾Mと接することとなり、静電容量を計測するための有効面積(接触面積)が常に一定となる。すなわち、電極の面積(S)に比例し、電極間距離(d)に反比例する静電容量の面積(S)を一定にすることが可能となる。
【0030】
したがって、従来では、ホッパー内に入れられた籾Mの表層部分が平坦であるか傾斜しているかによって、電極として機能するホッパー壁面と籾Mとの接触面積が異なったため、上記面積(S)にバラつきが生じて、静電容量の測定精度をより向上させるのが困難であったが、本実施形態では、上記のとおり籾Mとの接触面積が常に一定となるので静電容量の計測結果にばらつきが生じにくく、その結果、水分計測の精度を向上させることができる。
【0031】
また、外側電極44が隔壁52によって収容体40と電気的に絶縁されているので、外側電極44から収容体40に直接電気が流れることなく、内側電極42に向かってのみ電気が流れることとなる。すなわち、電極間距離(d)が一定となっており、静電容量の計測として理想的な電極の構成となっている。このため、精度の高い計測を実現することができる。
【0032】
また、水分計測装置16の検出部18は、手持ち可能な大きさであるため、取り扱いやすい。なお、1つの検出部18によって計測される静電容量は、搬入される籾M全体の一部分のものであるが、本実施形態では複数の検出部18を備え、各検出部18により計測された静電容量を平均化するため、計測箇所による静電容量のばらつきを軽減することができる。
【0033】
また、検出部18の収容体40、内側電極42、及び外側電極44の形状が、円(弧)形状であるため、検出部18を籾M内に埋没させ易い。
【0034】
また、内側電極42の下端が逆円錐形状であるため、フレコンバックF内に検出部18を入れやすい。
【0035】
以上、本発明に係る水分計測装置および荷受システムを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態で実施されても構わない。
【0036】
<変形例>
(1)上記実施形態では、水分計測装置16は複数の検出部18を有しているが、これに限られず、1つであっても構わない。
【0037】
(2)収容体40の円筒部46及び隔壁52において、外側電極44から離れた位置(2つの外側電極44の間)に、切欠きや貫通孔を形成しても構わない。また、蓋部48において内側電極42や隔壁52から離れた位置(内側電極42と隔壁52の間)に貫通孔を形成しても構わない。
【0038】
(3)また、収容体は、図4に示すように角筒部146と、方形の底部148と、を備えても構わない。また、角筒部146内に設けられる内側電極142と外側電極144は、主面が同一形状の平板状であっても構わない。なお、内側電極142は、L字金具147を介してネジ150により底部148に連結されている。また、外側電極144は、板状の隔壁152を介して角筒部146に取り付けられている。
【0039】
(4)また、収容体は、図4に示すように上向きに開口し、当該開口を通じて籾が収容体140内に充填されても構わない。なお、このような態様においては、内側電極142が収容体140内に収まるように配置される。例えば、内側電極142と外側電極144の上端が同じレベルになるように設けられるのが好ましい。
【0040】
(5)上記実施形態では、籾MがフレコンバックFに入れられた態様であったが、これに限られず、トラックTの荷台に組み立てられた籾コンテナに籾Mが入れられ、当該籾コンテナの複数個所に各検出部18が入れられることで、水分が測定される態様であっても構わない。
【0041】
(6)上記実施形態では、籾Mを例に説明したが、麦など他の穀物であってもよい。また、穀物に限られず水分を含む粉粒体であってもよい。
【0042】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【0043】
上記したトラックスケールの検出部は、実施形態の態様に限定されず、公知の他のトラックスケールの検出部であってもかまわない。
【符号の説明】
【0044】
10 … 荷受システム
16 … 水分計測装置
18 … 検出部
38 … 静電容量計測器
40 … 収容体
42,142 … 内側電極
44,144 … 外側電極
52,152 … 隔壁
64 … 水分導出部
M … 籾

図1
図2
図3
図4