IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2022-128609油圧制御システム、油圧機器の制御方法
<>
  • 特開-油圧制御システム、油圧機器の制御方法 図1
  • 特開-油圧制御システム、油圧機器の制御方法 図2
  • 特開-油圧制御システム、油圧機器の制御方法 図3
  • 特開-油圧制御システム、油圧機器の制御方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128609
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】油圧制御システム、油圧機器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F15B20/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026917
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅彦
【テーマコード(参考)】
3H082
【Fターム(参考)】
3H082AA24
3H082CC02
3H082DA46
3H082DE05
(57)【要約】
【課題】
油圧機器を駆動制御する油圧制御システムにおいて、油圧の脈動周波数が変化した場合であっても、油圧機器の安定した制御が可能な信頼性の高い油圧制御システムを提供する。
【解決手段】
油圧源から油圧機器へ高圧制御油を供給する高圧制御油配管に接続され、前記高圧制御油の脈動を減衰するサイドブランチと、前記高圧制御油配管から分岐された分岐ラインに配置され、前記分岐ライン内の高圧制御油を増圧する増圧器と、前記増圧器で増圧された高圧制御油の圧力を調整し、前記サイドブランチへ供給するサーボ弁と、前記高圧制御油配管の振動を計測する振動センサと、前記振動センサの計測値に基づいて前記サーボ弁を制御し、前記サイドブランチへ供給する高圧制御油の圧力を調整することで前記サイドブランチのブランチ長を調節する制御装置とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源から油圧機器へ高圧制御油を供給する高圧制御油配管に接続され、前記高圧制御油の脈動を減衰するサイドブランチと、
前記高圧制御油配管から分岐された分岐ラインに配置され、前記分岐ライン内の高圧制御油を増圧する増圧器と、
前記増圧器で増圧された高圧制御油の圧力を調整し、前記サイドブランチへ供給するサーボ弁と、
前記高圧制御油配管の振動を計測する振動センサと、
前記振動センサの計測値に基づいて前記サーボ弁を制御し、前記サイドブランチへ供給する高圧制御油の圧力を調整することで前記サイドブランチのブランチ長を調節する制御装置と、
を備えることを特徴とする油圧制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御システムであって、
前記サイドブランチは、ピストンを有し、
前記サーボ弁から供給された高圧制御油により前記ピストンのストローク位置を調節することで前記サイドブランチのブランチ長を調節することを特徴とする油圧制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御システムであって、
前記サイドブランチは、前記ピストンのストローク位置を検出する開度センサを有し、
前記制御装置は、前記振動センサにより計測した前記高圧制御油配管の振動および前記開度センサにより検出した前記ピストンのストローク位置に基づいて前記高圧制御油配管の振動が最小となる前記ピストンのストローク位置を演算し、
当該演算結果に基づいて前記ピストンのストローク位置を調節することを特徴とする油圧制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧制御システムであって、
前記制御装置は、前記振動センサの応答レベルの変化率を演算し、
当該演算結果に基づいて前記サーボ弁を制御し、前記ピストンのストローク位置を調節することを特徴とする油圧制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の油圧制御システムであって、
前記制御装置は、前記振動センサの応答レベルの変化率がマイナスから0近傍に落ち着いた点を振動応答の最小点と判定し、前記ピストンのストローク位置を固定することを特徴とする油圧制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧制御システムであって、
前記制御装置は、前記振動センサの応答レベルの変化率が上昇した場合、振動応答の最小点から外れたと判定し、前記ピストンのストローク動作を再開することを特徴とする油圧制御システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の油圧制御システムであって、
前記油圧機器は、蒸気タービンの蒸気加減弁またはガスタービンの燃料制御弁であることを特徴とする油圧制御システム。
【請求項8】
以下のステップを有する油圧機器の制御方法;
(a)油圧源から油圧機器へ高圧制御油を供給する高圧制御油配管の振動を計測するステップ、
(b)前記(a)ステップで計測した前記高圧制御油配管の振動が最小となるサイドブランチのブランチ長を演算するステップ、
(c)前記(b)ステップで演算したブランチ長に基づいて前記高圧制御油配管から分岐された分岐ライン内の高圧制御油の圧力を調整し、前記サイドブランチへ供給することで前記サイドブランチのブランチ長を調節するステップ。
【請求項9】
請求項8に記載の油圧機器の制御方法であって、
前記(c)ステップにおいて、前記分岐ライン内の高圧制御油により前記サイドブランチのピストンのストローク位置を調節することで前記サイドブランチのブランチ長を調節することを特徴とする油圧機器の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の油圧機器の制御方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記高圧制御油配管の振動が最小となる前記ピストンのストローク位置を演算し、
当該演算結果に基づいて前記ピストンのストローク位置を調節することを特徴とする油圧機器の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の油圧機器の制御方法であって、
前記(b)ステップにおいて、前記高圧制御油配管の振動の変化率を演算し、
当該演算結果に基づいて前記ピストンのストローク位置を調節することを特徴とする油圧機器の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の油圧機器の制御方法であって、
前記高圧制御油配管の振動の変化率がマイナスから0近傍に落ち着いた点を振動応答の最小点と判定し、前記ピストンのストローク位置を固定することを特徴とする油圧機器の制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の油圧機器の制御方法であって、
前記高圧制御油配管の振動の変化率が上昇した場合、振動応答の最小点から外れたと判定し、前記ピストンのストローク動作を再開することを特徴とする油圧機器の制御方法。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか1項に記載の油圧機器の制御方法であって、
前記油圧機器は、蒸気タービンの蒸気加減弁またはガスタービンの燃料制御弁であることを特徴とする油圧機器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧機器を駆動制御する油圧制御システムの構成とその制御に係り、特に、油圧の脈動周波数が変化する油圧系統に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプで加圧した作動流体(作動油)により油圧シリンダや油圧モータなどの油圧アクチュエータを駆動する油圧制御システムは、小型であっても大きな動力を得ることができるため、建設機械や産業車両、農業機械、工作機械など、さまざまな装置や機械で広く採用されている。
【0003】
電力分野においても、例えば、蒸気タービンの蒸気加減弁やガスタービンの燃料制御弁などに利用されており、長寿命で信頼性の高い油圧制御システムが求められている。
【0004】
ところで、油圧ポンプとして一般的に用いられる容積式ポンプは、ピストンやベーン、ギヤなどの固体壁が移動することによりポンプ作用を行うため、この機構に起因した圧力脈動が発生する。この圧力脈動は、油圧ポンプに接続されている配管や油圧機器の振動あるいは騒音の原因となるばかりでなく、配管や油圧機器が損傷に至る可能性もある。そのため、この圧力脈動を低減することが望まれている。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「脈動を検出してこれを脈動減衰用アクチュエータにより能動的に打ち消すようにした流体脈動減衰装置」が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には「油圧ポンプから吐出された作動油における圧力脈動の脈動周波数に応じて、分岐閉塞管路の管路長を制御し、その分岐閉塞管路の終端部で反射された反射圧力波を主管路中の圧力波に対してこれを打ち消すように作用させる油圧脈動抑制装置」が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には「ギアポンプ等を作動油の吐出源とした装置において、油圧管路中に絞り、ベンチュリ等を設け、その上流側と下流側との圧力差(流量増加にともない圧力差も増加)を利用してサイドブランチ型共鳴管の共鳴管路長を変化させることにより、脈動の広い範囲の周波数(回転数)を低減できる脈動低減装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-126383号公報
【特許文献2】実開平4-84890号公報
【特許文献3】特開2005-201323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した圧力脈動を低減する手段として、油圧系統の主流に分岐した閉鎖端の管路を設け、その分岐管路の長さが1/4波長に相当する周波数成分とその奇数倍周波数成分の振幅を減少させる「サイドブランチ」と呼ばれる油圧サイレンサが従来から用いられている。
【0010】
しかしながら、このサイドブランチは、共振現象によって圧力脈動を低減させるため、共振周波数近傍では高い減衰効果を得られるものの、そこから外れた周波数の圧力脈動に対しては有効でない。
【0011】
サイドブランチは、脈動解析結果に合わせた長さで設置するため、解析結果に誤差が生じた場合や、機械駆動もしくはインバータ駆動のポンプを採用するなどの理由で脈動源の周波数が変化する場合に、期待した効果が得られない可能性がある。
【0012】
上記特許文献1では、脈動減衰用アクチュエータに圧電素子を用いており、圧電素子の応答速度が極めて高速であるとしても、圧力脈動を低減できる位置に移動するまでにはある程度時間が掛かり、圧力脈動を十分に低減できない恐れがある。また、計測した圧力脈動に基づいて圧電素子が動作するタイミングを補正して脈動減衰用アクチュエータを動作させた場合であっても、脈動周波数が頻繁に変化するような場合は、圧電素子の特性によっては圧力脈動の低減効果を十分に得られない可能性がある。
【0013】
また、上記特許文献2では、制御バルブ(電磁切換えバルブ)42を介して駆動シリンダ41に供給される作動油は、主管路MLにおける分岐管21の分岐位置よりも下流(油圧ポンプPから遠い位置)から取り出されており、駆動シリンダ41が圧力脈動を十分に低減できる応答性を担保する作動油圧を得られない可能性がある。
【0014】
また、上記特許文献3では、主管路(吐出管路24)の途中に絞り10aやベンチュリ10bを設けており、アクチュエータ23を駆動させるための油圧に圧力損失が生じてしまう。
【0015】
そこで、本発明の目的は、油圧機器を駆動制御する油圧制御システムにおいて、油圧の脈動周波数が変化した場合であっても、油圧機器の安定した制御が可能な信頼性の高い油圧制御システム及びそれを用いた油圧機器の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、油圧源から油圧機器へ高圧制御油を供給する高圧制御油配管に接続され、前記高圧制御油の脈動を減衰するサイドブランチと、前記高圧制御油配管から分岐された分岐ラインに配置され、前記分岐ライン内の高圧制御油を増圧する増圧器と、前記増圧器で増圧された高圧制御油の圧力を調整し、前記サイドブランチへ供給するサーボ弁と、前記高圧制御油配管の振動を計測する振動センサと、前記振動センサの計測値に基づいて前記サーボ弁を制御し、前記サイドブランチへ供給する高圧制御油の圧力を調整することで前記サイドブランチのブランチ長を調節する制御装置とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、(a)油圧源から油圧機器へ高圧制御油を供給する高圧制御油配管の振動を計測するステップ、(b)前記(a)ステップで計測した前記高圧制御油配管の振動が最小となるサイドブランチのブランチ長を演算するステップ、(c)前記(b)ステップで演算したブランチ長に基づいて前記高圧制御油配管から分岐された分岐ライン内の高圧制御油の圧力を調整し、前記サイドブランチへ供給することで前記サイドブランチのブランチ長を調節するステップ、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、油圧機器を駆動制御する油圧制御システムにおいて、油圧の脈動周波数が変化した場合であっても、油圧機器の安定した制御が可能な信頼性の高い油圧制御システム及びそれを用いた油圧機器の制御方法を実現することができる。
【0019】
これにより、油圧機器を安定に制御しつつ、油圧の脈動による油圧系統や油圧機器の損傷を防止することができる。
【0020】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る油圧制御システムの概略構成を示す図である。
図2図1の油圧制御システムの制御系統を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る油圧機器の制御方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る可変長サイドブランチの予想特性と制御を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0023】
図1から図4を参照して、本発明の実施例1に係る油圧制御システムとその制御方法について説明する。図1は、本実施例の油圧制御システムの概略構成を示す図であり、図2は、図1の油圧制御システムの制御系統を示すブロック図である。図3は、本実施例の油圧機器の制御方法を示すフローチャートである。図4は、本実施例の油圧機器の制御方法における可変長サイドブランチの予想特性と制御を概念的に示す図である。
【0024】
本実施例の油圧制御システム1は、図1に示すように、油圧源である高圧制御油ポンプ2から油圧機器3へ高圧制御油を供給する高圧制御油配管4に設置されており、高圧制御油ポンプ2のポンプ作用に伴い発生する高圧制御油配管4内の高圧制御油の圧力脈動を減衰させる。
【0025】
油圧制御システム1は、主要な構成として、可変長サイドブランチ5と、サーボ弁8と、増圧器9と、配管振動計(振動センサ)11と、制御装置16を備えている。
【0026】
可変長サイドブランチ5は、高圧制御油配管4から分岐されたサイドブランチ配管A12(分岐ライン)と、同じく高圧制御油配管4から分岐されたサイドブランチ配管B13との間に接続されている。また、可変長サイドブランチ5は、後述するブランチ長の調節機構を有しており、ブランチ長を調節することで、高圧制御油配管4内の高圧制御油の脈動を減衰する。
【0027】
増圧器9は、高圧制御油配管4から分岐されたサイドブランチ配管A12(分岐ライン)に配置されており、空気源10から供給される圧縮空気の圧力を利用してサイドブランチ配管A12内の高圧制御油を増圧する。
【0028】
サーボ弁8は、増圧器9で増圧された高圧制御油の圧力を調整し、可変長サイドブランチ5へ供給する。サーボ弁8による高圧制御油の圧力調整により不要となった高圧制御油は、ドレン配管14を介して、油タンク(ドレン)15に放出される。
【0029】
配管振動計(振動センサ)11は、高圧制御油配管4に設置されており、高圧制御油配管4内の高圧制御油の脈動に伴い発生する高圧制御油配管4の振動を計測し、制御装置16へ振動センサ出力信号(振動応答信号)20を出力する。
【0030】
制御装置16は、配管振動計(振動センサ)11から出力された振動センサ出力信号(振動応答信号)20に基づいて、サーボ弁8へサーボ弁指令信号18を出力し、サーボ弁8を制御することで、可変長サイドブランチ5へ供給する高圧制御油の圧力を調整し、可変長サイドブランチ5のブランチ長を調節する。
【0031】
可変長サイドブランチ5は、上述したブランチ長の調節機構として、内部にピストン6を備えており、サーボ弁8から供給された高圧制御油によりピストン6のストローク位置を調節することで可変長サイドブランチ5のブランチ長を調節する。
【0032】
また、可変長サイドブランチ5は、ピストン6のストローク位置を検出する開度発信器(開度センサ)7を備えており、制御装置16へサイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)19を出力する。
【0033】
制御装置16は、配管振動計(振動センサ)11により計測した高圧制御油配管4の振動が最小となるピストン6のストローク位置を演算し、当該演算結果とサイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)19に基づいてピストン6のストローク位置を調節する。
【0034】
次に、図2を用いて、図1の油圧制御システム1の制御系統について詳しく説明する。なお、図2では、制御系統を分かり易くするために、図1の構成を制御装置16とそれ以外の高圧制御油系統17に分けて図示している。
【0035】
図2に示すように、上述したサイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)19及び振動センサ出力信号(振動応答信号)20は、それぞれ入力信号IN1,IN2として制御装置16に入力される。制御装置16は、サイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)19及び振動センサ出力信号(振動応答信号)20に基づいて、高圧制御油配管4の振動が最小となるピストン6のストローク位置を演算し、当該演算結果を出力信号OUT1(サーボ弁指令信号18)としてサーボ弁8へ出力し、サーボ弁8を制御する。
【0036】
入力信号IN2として制御装置16に入力された振動センサ出力信号(振動応答信号)20は、LAGフィルタ21によりノイズ低減処理される。
【0037】
LAGフィルタ21によりノイズ低減処理された振動センサ出力信号(振動応答信号)20は、変化率演算器22に入力され、変化率演算器22は配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率を演算する。
【0038】
変化率演算器22により演算された配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率は、条件判定器23に入力され、配管振動計(振動センサ)11で検出された振動が所定の閾値と比較して配管振動低減域内であるか否か、つまり、低減すべきレベルの振動であるのか、或いは、放置しても問題ないレベルの振動であるのかを判定し、判定結果をスイッチ24へ出力する。
【0039】
一方、入力信号IN1として制御装置16に入力されたサイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)19は、条件判定器25に入力され、ピストン6のストローク位置(すなわち、可変長サイドブランチ5のブランチ長)を、最長位置及び最短位置と比較判定し、判定結果をスイッチ28へ出力する。
【0040】
スイッチ28では、条件判定器25の判定結果に基づいて、正動作指令26または逆動作指令27のいずれかを選択し、スイッチ24へ出力する。
【0041】
スイッチ24では、条件判定器23の判定結果に基づいて、スイッチ28から入力された正動作指令26または逆動作指令27、停止指令29のいずれかを選択し、サイドブランチ位置指令30へ出力する。
【0042】
制御装置16は、サイドブランチ位置指令30とサイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)19を演算(加減算処理)した後、出力信号OUT1(サーボ弁指令信号18)としてサーボ弁8へ出力し、サーボ弁8を制御する。
【0043】
次に、図3を用いて、上記で説明した油圧制御システム1による油圧機器の制御方法について説明する。
【0044】
図3に示すように、先ず、ステップS1において、制御装置16に振動応答信号20及びサイドブランチ位置(開度フィードバック信号19)がデータ入力される。
【0045】
次に、ステップS2において、振動応答信号20に対し、LAGフィルタ21によりノイズ低減処理が施される。
【0046】
続いて、ステップS3において、LAGフィルタ21によりノイズ低減処理された振動応答信号20に基づいて、変化率演算器22により配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率を演算する。
【0047】
次に、ステップS4において、条件判定器23により配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が低下傾向であるか否かを判定する。
【0048】
配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が低下傾向でないと判定された場合(N)、ステップS5に進み、条件判定器25により、ピストン6のストローク位置(すなわち、可変長サイドブランチ5のブランチ長)を、最長位置と比較判定する。
【0049】
ピストン6のストローク位置が最長位置以下であると判定された場合(N)、ステップS6に進み、スイッチ28において正動作指令(正動作ストローク指令)26を選択し、可変長サイドブランチ5のブランチ長を短くする方向へピストン6のストローク位置を調節する。
【0050】
ステップS4において、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が低下傾向であると判定された場合(Y)、ステップS9に進み、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が0(ゼロ)近傍であるか否かを判定する。
【0051】
ステップS9において、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が0(ゼロ)近傍でないと判定された場合(N)は、ステップS5に進む。
【0052】
一方、ステップS9において、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が0(ゼロ)近傍であると判定された場合(Y)、ステップS10に進み、条件判定器23により配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が上昇傾向であるか否かを判定する。
【0053】
ステップS10において、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が上昇傾向であると判定された場合(Y)は、ステップS5に進む。配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が上昇傾向でないと判定された場合(N)、ステップS11に進み、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率がマイナスから0近傍に落ち着いた点を振動応答の最小点と判定し、スイッチ24において停止指令29を選択し、ピストン6のストローク位置を固定する。
【0054】
ステップS10において、配管振動計(振動センサ)11の応答レベルの変化率が上昇傾向でないと判定された場合(N)は、ステップS9に進む。
【0055】
ステップS5において、ピストン6のストローク位置が最長位置よりも長い位置にあると判定された場合(Y)、ステップS7に進み、条件判定器25により、ピストン6のストローク位置(すなわち、可変長サイドブランチ5のブランチ長)を、最短位置と比較判定する。
【0056】
ステップS7において、ピストン6のストローク位置が最短位置よりも短い位置にあると判定された場合(Y)、ステップS6に進む。一方、ピストン6のストローク位置が最短位置以上であると判定された場合(N)、ステップS8に進み、スイッチ28において逆動作指令(逆動作ストローク指令)27を選択し、可変長サイドブランチ5のブランチ長を長くする方向へピストン6のストローク位置を調節する。
【0057】
図4を用いて、上述した油圧機器の制御方法における、可変長サイドブランチ5の予想特性と制御概念について説明する。
【0058】
≪予想特性≫
油圧回路に可変長さ機構を持つサイドブランチを取り付けた場合、サイドブランチはある一点の長さで系の脈動周波数(波長)と同調し、そこに位置することで脈動(配管振動)の低減に寄与するが、それ以外の位置では配管振動に対しては何も寄与しないものと考えられる。
【0059】
サイドブランチを一定のレートで最短位置から最長位置まで動作させたときの時間(t)とサイドブランチ長さ(l)の関係を図4の(a)に示す。また、これと同時に、系の脈動を振動応答として捉えた挙動を図4の(b)に示す。そして、振動応答の変化率は、図4の(c)に示す曲線となることが予想される。
【0060】
≪制御概念≫
振動応答の変化率を捉え、サイドブランチの長さを増減する指令を制御装置16上で演算する。振動応答の最小点においてその変化率は0(ゼロ)であり、 その前後の急峻な変化域では変化率の符号が変化する。
【0061】
このことから、変化率がマイナスから0(ゼロ)近傍に落ち着いた点を振動応答の最小点と考え、この状態が成立したところで、サイドブランチの動作を固定する。
【0062】
外的変動等により、振動応答の変化率が上昇した場合、サイドブランチ位置が脈動低減域(振動応答の最小点)を外れたとみなし、ストローク動作を再開させる。最長位置もしくは最短位置に到達した場合は、動作指令方法を反転させ、動作を折り返す。この挙動を、図4の(a)~(c)に破線で示す。
【0063】
この動きを繰り返して自動で追従することで、常時脈動低減に寄与することが期待できる。
【0064】
以上説明したように、本発明の油圧制御システムとその制御方法によれば、油圧機器を駆動制御する油圧制御システムにおいて、油圧の脈動周波数が変化した場合であっても、油圧機器の安定した制御が可能な信頼性の高い油圧制御システム及びそれを用いた油圧機器の制御方法を実現することができる。
【0065】
これにより、油圧機器を安定に制御しつつ、油圧の脈動による油圧系統や油圧機器の損傷を防止することができる。
【0066】
例えば、本発明の油圧制御システムを蒸気タービンの蒸気加減弁やガスタービンの燃料制御弁などの油圧駆動弁の制御システムとして採用することで、蒸気タービンやガスタービンの信頼性向上に寄与することができる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…油圧制御システム
2…高圧制御油ポンプ(油圧源)
3…油圧機器
4…高圧制御油配管
5…可変長サイドブランチ
6…ピストン
7…開度発信器(開度センサ)
8…サーボ弁
9…増圧器
10…空気源
11…配管振動計(振動センサ)
12…サイドブランチ配管A
13…サイドブランチ配管B
14…ドレン配管
15…油タンク(ドレン)
16…制御装置
17…高圧制御油系統
18…サーボ弁指令信号
19…サイドブランチストローク位置信号(開度フィードバック信号)
20…振動センサ出力信号(振動応答信号)
21…LAGフィルタ
22…変化率演算器
23,25…条件判定器
24,28…スイッチ
26…正動作指令
27…逆動作指令
29…停止指令
30…サイドブランチ位置指令
31…AND回路A
32…AND回路B
図1
図2
図3
図4