(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012863
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】繰り返しモーメント発生装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/34 20060101AFI20220107BHJP
B06B 1/12 20060101ALI20220107BHJP
B06B 1/16 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G01N3/34 D
B06B1/12 K
B06B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114995
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正浩
【テーマコード(参考)】
2G061
5D107
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AA08
2G061AB06
2G061BA01
2G061BA15
2G061DA01
2G061DA19
2G061EA01
2G061EA07
2G061EB03
5D107BB09
5D107DD08
5D107DD09
(57)【要約】
【課題】疲労試験機に用いることができ、偏心重錘の回転中においても供試体に負荷する繰り返しモーメントの振幅を変更可能な繰り返しモーメント発生装置を提供する。
【解決手段】繰り返しモーメント発生装置100は、回転自在に保持された軸体4,5と交差する状態で且つ軸体4,5と交差する方向に沿ってスライド可能な状態で軸体4,5に設けられた偏心重錘部材6c,7cと、軸体4,5の軸心4c,5c方向に沿って摺動可能な状態で且つ軸体4,5が空転可能な状態で軸体4,5に取り付けられたスライダ31,32と、スライダ31,32の軸心4c,5c方向の摺動運動を、軸体4,5と交差する方向のスライド運動に変換して偏心重錘部材6c,7cに伝達するリンク機構34,35と、スライダ31,32を軸体4,5の軸心4c,5c方向に沿って摺動させる操作手段であるハンドル44などを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体に繰り返しモーメントを負荷して疲労強度特性を試験する疲労試験機に使用する繰り返しモーメント発生装置であって、
前記疲労試験機にセットされた供試体に繰り返しモーメントを伝達するため回転自在に保持された主軸と、
前記主軸の軸心方向に離れた位置にそれぞれ前記主軸と直交する状態で前記主軸に取り付けられた一対の梃子部材と、前記梃子部材が対向する領域において前記主軸を挟んで対称をなす位置にそれぞれ前記主軸と平行な軸心を中心に回転自在に保持された軸体と、
前記軸体を同期して回転させる駆動手段と、
前記軸体と交差する状態で且つ前記軸体と交差する方向に沿ってスライド可能な状態で前記軸体に取り付けられた偏心重錘部材と、
前記軸体の軸心方向に沿って摺動可能な状態で且つ前記軸体が空転可能な状態で前記軸体に取り付けられたスライダと、
前記スライダの前記軸体の軸心方向の摺動運動を、前記偏心重錘部材の前記軸体と交差する方向のスライド運動に変換して前記偏心重錘部材に伝達する連接手段と、
前記スライダを前記軸体の軸心方向に沿って摺動させる操作手段と、を備えた繰り返しモーメント発生装置。
【請求項2】
前記連接手段が、
一方の端部側が前記スライダに回動可能に軸支され、他方の端部側が前記偏心重錘部材に回動可能に軸支された第一リンク部材と、
一方の端部側が前記軸体に回動可能に軸支され、他方の端部側が前記第一リンク部材に回動可能に軸支された第二リンク部材と、を備えたリンク機構である請求項1記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項3】
前記連接手段が、
前記スライダと前記偏心重錘部材とを、前記軸体に回動可能に軸支されたプーリを経由して連結するワイヤである請求項1記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項4】
前記軸体に対する前記偏心重錘部材のスライド距離を所定範囲に制限するストッパを前記偏心重錘部材に設けた請求項1または2記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項5】
前記偏心重錘部材の一方のストッパと前記軸体との間に、前記偏心重錘部材の重心が前記軸体の軸心に位置する状態を保持するように前記ストッパと前記軸体とを連結する弾性部材を配置した請求項1~4の何れかの項に記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項6】
前記操作手段が、
前記スライダに開設された雌ネジ孔に前記軸体と平行をなす状態で螺合された雄ネジ部材と、
前記雄ネジ部材を、前記雄ネジ部材の長手方向の移動を拘束した状態で回動可能に保持する軸受け部材と、
前記雄ネジ部材を回動させる回動機構と、を備えた請求項1~5の何れかの項に記載の繰り返しモーメント発生装置。
【請求項7】
前記回動機構が、
前記雄ネジ部材と同心をなすように前記雄ネジ部材に取り付けられた斜歯ギアと、
前記斜歯ギアに噛合されたウォームギアと、
前記ウォームギアを回動させるハンドルと、を備えた請求項6記載の繰り返しモーメント発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体に繰り返しモーメントを負荷して疲労強度特性を試験する疲労試験機に使用可能な繰り返しモーメント発生装置であり、特に、供試体に負荷する繰り返しモーメントの振幅を変更する機能を有する繰り返しモーメント発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
供試体に繰り返しモーメントを負荷して材料(供試体)の疲労強度特性を試験する疲労試験機については、従来、繰り返し捩りモーメントを供試体に伝達するための主軸に交差状に接続された梃子部材の先端側において電気モータ駆動の偏心重錘を回転させることによって主軸に繰り返し捩りモーメントを発生させる共振型の曲げ捩り疲労試験機が知られている。
【0003】
しかしながら、前記曲げ捩り疲労試験機は、運転中(偏心重錘の回転中)、供試体に負荷する繰り返し捩りモーメントの振幅を変更・調整することができないので、振幅の変更・調整が必要となったときは、その都度、電気モータを停止して偏心重錘の回転を止めて変更・調整作業を行う必要がある。このため、変更・調整作業のたびに疲労試験が中断したり、運転の中断・再開の度に試験振幅とは異なる大きさの振幅の捩りモーメントが供試体に過渡的に負荷されたりする、という問題がある。
【0004】
一方、本発明に関連する従来技術として、例えば、特許文献1に記載された「捩り疲労試験機」や特許文献2に記載された「可変型振動テーブル用振動装置」などがある。
【0005】
特許文献1に記載された「捩り疲労試験機」は、被試験体の一端部を回転自在に保持する回転側保持体と、被試験体の他端部を回転不能に保持する固定側保持体と、回転側保持体を介して被試験体に捩りトルクを負荷するトルク負荷手段と、トルク負荷手段にてトルク負荷された状態での被試験体の捩りトルクを検出するトルク検出器とを備えた捩り疲労試験機において、トルク負荷手段は、被試験体に捩りトルクを負荷する電気サーボモータと、この電気サーボモータの出力を制御するサーボコントローラと、設定したトルクをサーボコントローラに入力する入力手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
特許文献2に記載された「可変型振動テーブル用振動装置」は、所定の振動テーブル内に夫々独立のモータで駆動し同期させる一対の等価偏心重錘付き振動原軸を平行に軸承配設し、各振動原軸に夫々平行に等価偏心重錘と位相が変えられる互いに等価な偏心重錘付き振動従軸を軸承配設し4連軸構成とすると共に、各振動従軸端に設けた歯付きプーリに掛けるタイミングベルトを、夫々中央を枢着した揺動支持腕の上下端に配す歯付き張りプーリを介し各振動原軸端の歯付きプーリに掛け渡し対称の逆転伝達機構を形成し、且つ左右対向の揺動支持腕の枢軸を、単一のシリンダで制御される連動リンク機構に連結し対称回動とし、シリンダロッドの繰出し量に応じ振動テーブルの上下振幅のみを最大から最小まで可変することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-107955号公報
【特許文献2】特開平11-156296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、従来の前記曲げ捩り疲労試験機は、運転中(偏心重錘の回転中)に、供試体に負荷する繰り返し捩りモーメントの振幅を変更・調整することができない。
【0009】
また、特許文献1に記載された「捩り疲労試験機」は、電気サーボモータにより被試験体に捩りトルクを負荷する方式であり、被試験体に負荷すべき捩りトルクの設定値をパソコンにより変更することができるが、特許文献1に記載されている捩りトルク変更技術により、1秒間に50~100回転する偏心重錘部材を制御することは困難である。
【0010】
一方、特許文献2に記載された「可変型振動テーブル用振動装置」は、振動テーブルの運転中に振幅を変更することができるものであるが、特許文献2に記載されている振幅変更機構を、電気モータ駆動の偏心重錘を回転させて主軸に繰り返し捩りモーメントを発生させる共振型の曲げ捩り疲労試験機に適用することは困難である。また、特許文献2に記載されている振幅変更機構は構造が複雑である。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、偏心重錘の回転により供試体に繰り返しモーメントを負荷する疲労試験機に用いることができ、偏心重錘の回転中においても供試体に負荷する繰り返しモーメントの振幅を変更可能な繰り返しモーメント発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る繰り返しモーメント発生装置は、
供試体に繰り返しモーメントを負荷して疲労強度特性を試験する疲労試験機に使用する繰り返しモーメント発生装置であって、
前記疲労試験機にセットされた供試体に繰り返しモーメントを伝達するため回転自在に保持された主軸と、
前記主軸の軸心方向に離れた位置にそれぞれ前記主軸と直交する状態で前記主軸に取り付けられた一対の梃子部材と、前記梃子部材が対向する領域において前記主軸を挟んで対称をなす位置にそれぞれ前記主軸と平行な軸心を中心に回転自在に保持された軸体と、
前記軸体を同期して回転させる駆動手段と、
前記軸体と交差する状態で且つ前記軸体と交差する方向に沿ってスライド可能な状態で前記軸体に取り付けられた偏心重錘部材と、
前記軸体の軸心方向に沿って摺動可能な状態で且つ前記軸体が空転可能な状態で前記軸体に取り付けられたスライダと、
前記スライダの前記軸体の軸心方向の摺動運動を、前記偏心重錘部材の前記軸体と交差する方向のスライド運動に変換して前記偏心重錘部材に伝達する連接手段と、
前記スライダを前記軸体の軸心方向に沿って摺動させる操作手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、
前記連接手段は、
一方の端部側が前記スライダに回動可能に軸支され、他方の端部側が前記偏心重錘部材に回動可能に軸支された第一リンク部材と、
一方の端部側が前記軸体に回動可能に軸支され、他方の端部側が前記第一リンク部材に回動可能に軸支された第二リンク部材と、を備えたリンク機構とすることができる。
【0014】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、
前記連接手段は、
前記スライダと前記偏心重錘部材とを、前記軸体に回動可能に軸支されたプーリを経由して連結するワイヤであってもよい。
【0015】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、
前記軸体に対する前記偏心重錘部材のスライド距離を所定範囲に制限するストッパを前記偏心重錘部材に設けることができる。
【0016】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、
前記偏心重錘部材の一方のストッパと前記軸体との間に、前記偏心重錘部材の重心が前記軸体の軸心に位置する状態を保持するように前記ストッパと前記軸体とを連結する弾性部材を配置することもできる。
【0017】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、
前記操作手段は、
前記スライダに開設された雌ネジ孔に前記軸体と平行をなす状態で螺合された雄ネジ部材と、
前記雄ネジ部材を、前記雄ネジ部材の長手方向の移動を拘束した状態で回動可能に保持する軸受け部材と、
前記雄ネジ部材を回動させる回動機構と、を備えたものとすることができる。
【0018】
前記繰り返しモーメント発生装置においては、
前記回動機構は、
前記雄ネジ部材と同心をなすように前記雄ネジ部材に取り付けられた斜歯ギアと、
前記斜歯ギアに噛合されたウォームギアと、
前記ウォームギアを回動させるハンドルと、を備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、偏心重錘の回転により供試体に繰り返しモーメントを負荷する疲労試験機に用いることができ、偏心重錘の回転中においても供試体に負荷する繰り返しモーメントの振幅を変更可能な繰り返しモーメント発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態である繰り返しモーメント発生装置を示す一部省略斜視図である。
【
図3】
図1に示す繰り返しモーメント発生装置の一部省略平面図である。
【
図4】本発明の第二実施形態である繰り返しモーメント発生装置を示す一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図4に基づいて、本発明の実施形態である繰り返しモーメント発生装置100,200について説明する。なお、
図1~
図4においては、視認性を高めるため、構成部材の一部を透明化して表現している部分がある。
【0022】
初めに、
図1~
図3に基づいて、本発明の第一実施形態である繰り返しモーメント発生装置100について説明する。
図1,
図2に示すように、繰り返しモーメント発生装置100は、供試体に繰り返しモーメントを負荷して疲労強度特性を試験する疲労試験機(図示せず)に使用するものである。繰り返しモーメント発生装置100は、前記疲労試験機にセットされた供試体(図示せず)に繰り返しモーメントを伝達するための主軸1と、主軸1を回転自在に保持するためテーブル24の上面に所定距離を隔てて起立状に設けられた主軸受け部材2a,2bと、主軸1の軸心1c方向に離れた位置にそれぞれ主軸1と直交する状態で主軸1に取り付けられた一対の梃子部材3a,3bと、梃子部材3a,3bが対向する領域において主軸1を挟んで対称をなす位置にそれぞれ主軸1と平行な軸心4c,5c(
図2参照)を中心に回転自在に設けられた軸体4,5と、軸心4c,5cを中心に軸体4,5と共に回転する偏心重錘ロータ6,7などを備えている。
【0023】
図2に示すように、偏心重錘ロータ6,7は、それぞれ軸体4,5の一部に設けられた拡径部6b,7bと、拡径部6b,7bに軸心4c,5cと直交する方向に開設された貫通孔6h,7hに軸体4,5と直交する状態で且つ軸体4,5と直交する方向に沿ってスライド可能な状態で挿通された偏心重錘部材6c,7cと、を備えている。また、軸体4,5を同期して回転させる駆動手段であるモータ14を備えている。
【0024】
偏心重錘部材6c,7cは、円柱状の本体部6e,7eと、本体部6e,7eのそれぞれの両端部に貫通孔6h,7hの内径よりも拡径した短円柱状に設けられたストッパ6f,6g,7f,7gと、を備えている。本体部6e,7eは、それぞれの外周面が貫通孔6h,7hの内周面に接触した状態でスライド可能であり、軸体4,5に対する偏心重錘部材6c,7cのスライド距離はそれぞれストッパ6f,6g(7f,7g)により本体部6e,7eの長さに制限されている。
【0025】
偏心重錘部材6c,7cの本体部6e,7eにおいて、一方のストッパ6f,7fと軸体4,5の拡径部6b,7bとの間に位置する部分の周りには弾性部材であるスプリング6d,7dが配置され、スプリング6d(7d)の両端部はそれぞれ拡径部6b(7b)、ストッパ6f(7f)に係止されている。偏心重錘部材6c,7cに長手方向の外力が加わっていない状態のとき、スプリング6d(7d)は、偏心重錘部材6(7)の重心がそれぞれ軸体4(5)の軸心4c(5c)に位置する状態を保持するようにストッパ6f(7f)と軸体4(5)の拡径部6b(7b)とを連結している。
【0026】
図3に示すように、主軸1において梃子部材3a,3bの間の部分の外周にはスライダ30が取り付けられている。スライダ30は、主軸1の軸心1c方向に沿って摺動可能であり、且つ、主軸1はスライダ30に対して空転可能である。また、軸体4(5)において偏心ロータ6(7)と梃子部材3bとの間の部分の外周にはスライダ31(32)が取り付けられている。スライダ31(32)は、軸体4(5)の軸心4c(5c)方向に沿って摺動可能であり、且つ、軸体4(5)はスライダ31(32)に対して空転可能である。
【0027】
一方、スライダ30,31,32の軸心1c,4c,5cの長手方向の移動を同期させるため、スライダ30,31,32を一体的に連結する連動部材33が設けられている。連動部材33は、偏心重錘ロータ6,7と梃子部材3bとの間の部分に、主軸1及び軸体4,5と直交し、梃子部材3a,3bと平行をなすように配置されている。
【0028】
後述する操作手段を用いて、連動部材33を軸心1c方向に沿って移動させることによりスライダ31(32)が軸体4(5)の軸心4c(5c)方向に摺動したとき、この摺動運動を、偏心重錘部材6c(7c)の軸体4(5)の軸心4c(5c)と直交する方向のスライド運動に変換して偏心重錘部材6(7)に伝達する連接手段としてリンク機構34(35)が設けられている。
【0029】
リンク機構34(35)は、第一リンク部材10(12)と第二リンク部材11(13)とを備えている。第一リンク部材10(12)の一方の端部側がスライダ31(32)の支軸10a(12a)に回動可能に軸支され、他方の端部側が偏心重錘部材6c(7c)のストッパ6g(7g)の支軸10b(12b)に回動可能に軸支されている。第二リンク部材11(13)の一方の端部側は軸体4(5)の拡径部6b(7b)の支軸11a(13a)に回動可能に軸支され、他方の端部側が第一リンク部材10(12)の中央部分の支軸11b(13b)に回動可能に軸支されている。
【0030】
図3においては、偏心重錘ロータ6,7の上面側のみにリンク機構34,35が表示されているが、
図2の偏心重錘ロータ6付近に一部表示されているように、リンク機構34,35は、
図2に示す偏心重錘ロータ6,7の下面側にも設けられている。即ち、一対のリンク機構34,34(35,35)が偏心重錘ロータ6(7)を挟んで鏡面対称をなすように配置されている。
【0031】
図2に示すように、スライダ30の下方に開設された雌ネジ孔36に軸体4,5並びに主軸1と平行をなす状態で雄ネジ部材37が螺合され、雄ネジ部材37の一方の端部(図示せず)は主軸1の直下のテーブル24上に配置された軸受け部材43に回動可能に保持されている。雄ネジ部材37の他方の端部側は主軸受け部材2bに開設された貫通孔38に回動可能に挿通され、貫通孔38から突出する雄ネジ部材37の先端に斜歯ギア39が取り付けられている。雄ネジ部材37は、軸受け部材43及び主軸受け部材2bの貫通孔38により、雄ネジ部材37の長手方向の移動が拘束された状態で回動可能に保持されている。
【0032】
斜歯ギア39は雄ネジ部材37と同心をなすように取り付けられ、斜歯ギア39の下方には、ウォームギア40aが形成された回転軸40が雄ネジ部材37と直角に立体交差するように配置され、斜歯ギア39はウォームギア40aに噛合されている。回転軸40の両端部分はそれぞれテーブル24上に配置された軸受け部材41,42に回動可能に保持され、軸受け部材41から突出する回転軸40の端部にハンドル44が取り付けられている。
【0033】
ハンドル44を回転させると回転軸40及びウォームギア40aが回転し、この回転が斜歯ギア39に伝わり、斜歯ギア39の回転に伴って雄ネジ部材37が回転し、雄ネジ部材37と螺合する雌ネジ孔36を有するスライダ30並びに連動部材33が雄ネジ部材37の長手方向(主軸1の軸心1c方向)に移動する。これに伴って、連動部材33と一体化したスライダ31,32が軸体4,5の軸心4c,5c方向に移動し、リンク機構34,35が作動する。
【0034】
例えば、
図2に示すように、ハンドル44を矢線W1方向に回転させると、ウォームギア40a及び斜歯ギア39を介して雄ネジ部材37が矢線W2方向に回転し、雄ネジ部材37と雌ネジ孔36との螺合によりスライダ30及び連動部材33が梃子部材3bから離隔する方向へ移動する。
【0035】
これにより、連動部材33と一体化したスライダ31,32も梃子部材3bから離隔する方向へスライドするので、このスライド運動がリンク機構34,35を介して偏心重錘部材6c,7cのストッパ6g,7gに伝達され、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bから離隔する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cから離れていく。
【0036】
一方、前述したようにハンドル44を矢線W1方向に回転操作した後、ハンドル44を矢線W1と逆方向に回転させると、ウォームギア40a及び斜歯ギア39を介して雄ネジ部材37が矢線W2と逆方向に回転し、雄ネジ部材37と雌ネジ孔36との螺合によりスライダ30及び連動部材33が梃子部材3bに接近する方向へ移動するので、前述とは逆に、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bに接近する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cに近づいていく。
【0037】
図3に示すように、偏心重錘部材6c,7cの一方のストッパ6f,7fと軸体4,5の拡径部6b,7bとの間に配置されたスプリング6d,7dは、偏心重錘部材6c,7cの重心が軸体4,5の軸心4c,5cに位置する状態を保持するようにストッパ6f,7fと軸体4,5とを連結している。これにより、リンク機構34,35を介して偏心重錘部材6c,7cを移動させるとき、偏心重錘部材6c,7cにはスプリング6d,7dによる付勢力(偏心重錘部材6c,7cの重心をそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cの位置に復帰させようとする力)が加わり続けるので、捩りモーメントの不連続変化(バックラッシュの影響)をなくすことができる。
【0038】
また、偏心重錘ロータ6,7の回転中に、万一、リンク機構34,35が損傷して偏心重錘部材6c,7cを所定状態に保持できなくなったような場合、スプリング6d,7dの弾性復元力により、偏心重錘部材6c,7cはそれぞれの重心が軸体4,5の軸心4c,5cに位置する状態(偏心ゼロ状態)に復帰するので、所謂、フェール・セーフ機能も発揮する。
【0039】
図1に示すように、テーブル24は四角形平板状の部材であり、その四つのコーナ部24cの下面側に配置された四つの支持部材25により水平状態に保たれている。支持部材25は水平断面がL字状をなし、下面側に底板25bが設けられている。テーブル24の四つのコーナ部24cはそれぞれ四つの支持部材25の上面25aに載置した状態で固定され、四か所に位置する底板25bの上に四角形平板状のアンダーテーブル26が配置されている。
【0040】
二つの偏心重錘ロータ6,7を同期して回転させる駆動手段として、モータ14,中タイミングプーリ15,16、大タイミングプーリ18、小タイミングプーリ19a,19b並びにタイミングベルト21,22を備えている。モータ14が稼働すると、その回転力はギアボックス17を経由して回転軸14aに出力される。
【0041】
モータ14により回転する回転軸14aには中タイミングプーリ15が取り付けられ、主軸1には中タイミングプーリ16並びに大タイミングプーリ18が軸受を介して回転自在に取り付けられている。回転軸14aは主軸1と平行をなし、モータ14側の中タイミングプーリ15は、主軸1側の中タイミングプーリ16の直下に位置し、中タイミングプーリ15,16が上下方向に直列をなすように対向配置されている。
【0042】
軸体4,5には小タイミングプーリ19a,19bが取り付けられている。小タイミングプーリ19a,19bは大タイミングプーリ18を挟んで直列をなすように配置されている。小タイミングプーリ19a,19bのサイズ(外径)は互いに同一であり、中タイミングプーリ15,16のサイズ(外径)も互いに同一である。
【0043】
中タイミングプーリ15と中タイミングプーリ16とはタイミングベルト21で連係され、タイミングプーリ19a,19b及び大タイミングプーリ18はタイミングベルト22で連係されている。
【0044】
モータ14を稼働させると、回転軸14aに一体的に取り付けられた中タイミングプーリ15が回転し、中タイミングプーリ15の回転はタイミングベルト21を介して中タイミングプーリ16に伝達されるので、中タイミングプーリ16は回転軸14aと同じ方向に同じ回転数で回転する。中タイミングプーリ16の回転は、主軸1を介して中タイミングプーリ15と一体化した大タイミングプーリ18に伝達される。
【0045】
大タイミングプーリ18の回転はタイミングベルト22を介して小タイミングプーリ19a,19bに伝達されるので、小タイミングプーリ19a,19bがそれぞれ取り付けられた軸体4,5は互いに同じ方向に同じ回転数で回転する。従って、二つの偏心重錘ロータ6,7は互いに同期して同じ方向に同じ回転数で回転する。また、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転に伴ってリンク機構34,35及びスライダ31,32も一体的に回転するが、スライダ30及び連動部材33は静止状態に保持される。なお、繰り返しモーメント発生装置100において、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転中心線はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cと同一である。
【0046】
図1~
図3に示す繰り返しモーメント発生装置100においては、二つの偏心重錘ロータ6,7が、それぞれの偏心重錘部材6c,7cの重心の偏心方向(遠心力6a,7aの方向)がそれぞれの軸体4,5の軸心4c,5cを中心に互いに180度異なるように配置されている。従って、二つの偏心重錘ロータ6,7は、それぞれの遠心力6a,7aの方向が回転中心線(軸心4c,5c)を中心に互いに180度異なる関係を維持しながら回転する。
【0047】
偏心重錘部材6c,7cの重心が軸心4c,5cから偏心した状態において、後述するように、モータ14の駆動力により回転する軸体4,5の回転に伴って偏心重錘ロータ6,7が回転すると、偏心重錘部材6c,7cも軸心4c,5cを中心に回転し、偏心重錘部材6,7の重心の偏心量と回転数で決まる大きさの遠心力6a,7aが本体部6e,7eの軸心方向に発生する。この遠心力6a,7aが作用する方向は軸心4c,5cを中心に回転するので、回転に伴って遠心力6a,7aの方向は上下左右に変化する。
【0048】
このように、二つの偏心重錘ロータ6,7が、それぞれ回転中心線(軸心4c,5c)を中心に回転することによって振動が生じ、この振動は軸体4,5を介して梃子部材3a,3bの両端部分を交互に上下振動させるので、梃子部材3a,3bは主軸1の軸心1cを中心に細かいシーソー運動を繰り返し、これにより、梃子部材3a,3bと一体化された主軸1は細かい正逆回転を繰り返す。従って、主軸1の軸心1cの延長上に供試体(図示せず)をセットしておけば、この供試体に対して繰り返し荷重(繰り返しモーメント)を負荷することができる。
【0049】
前述したように、ハンドル44を矢線W1方向に回転させると、スライダ30,31,32が梃子部材3bから離隔する方向へスライドし、リンク機構34,35を介してストッパ6g,7gが軸体6,7の拡径部6b,7bから離隔する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cから離れていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が増大し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は大きくなっていく。
【0050】
一方、前述したようにハンドル44を矢線W1方向へ回転操作した後、ハンドル44を矢線W1と逆方向に回転させると、ウォームギア40a及び斜歯ギア39を介して雄ネジ部材37が矢線W2と逆方向に回転し、スライダ30,31,32が梃子部材3bに接近する方向へ移動し、前述とは逆に、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bに接近する方向へ移動し、偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体4,5の軸心4c,5cに近づいていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が減少し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は小さくなっていく。
【0051】
このように、ハンドル44を矢線W1方向または逆方向に回転操作することにより、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅を大きくしたり、小さくしたりすること(振幅調整すること)ができる。このような振幅調整作業は二つの偏心重錘ロータ6,7が停止しているときに限らず、回転しているときも行うことができる。
【0052】
また、モータ14の停止中に二つの偏心重錘ロータ6,7の偏心重錘部材6c,7cの重心を、それぞれ回転中心線(軸心4c,5c)の位置(振幅ゼロの位置)にセットした後、モータ14を始動させ、二つの偏心重錘ロータ6,7の回転中にハンドル44を操作して振幅を徐々に増大させることにより最適振幅にセットすることもできるので、所謂、オーバーシュートを回避することもできる。
【0053】
さらに、繰り返しモーメント発生装置100に、捩りモーメント計や回転角エンコーダを併用すれば、閉ループ制御も可能となり、捩りモーメント制御だけでなく、角変位制御やプログラム制御による試験が可能となり、高度な油圧式疲労試験機に匹敵する多彩な制御機能を低コストで具備することができる。
【0054】
なお、
図1~
図3に示す繰り返しモーメント発生装置100は、一本の主軸1に対して二本の軸体4,5と、二つの偏心重錘ロータ6,7と、二つのスライダ31,32と、二つのリンク機構34,35とを備え、それぞれに振幅調整機構を設けているが、これに限定するものではないので、一本の主軸1に対して一本の軸体4(または5)と、一つの偏心重錘ロータ6(または7)と、一つのスライダ31(または32)と、一つのリンク機構34(または35)と、を備えたものとすることも可能であり、この場合も前述と同様の振幅調整機能を得ることができる。
【0055】
次に、
図4に基づいて、本発明の第二実施形態である繰り返しモーメント発生装置200について説明する。なお、
図4に示す繰り返しモーメント発生装置200を構成する部分(部材)において、
図1~
図3に示す繰り返しモーメント発生装置100と共通する部分(部材)については
図1~
図3中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、繰り返しモーメント発生装置200においては、スライダ31,32の軸体4,5の軸心4c,5c方向の摺動運動を、偏心重錘部材6c,7cの軸体4,5と交差する方向のスライド運動に変換して偏心重錘部材6c,7cに伝達する連接手段として、
図3に示すリンク機構34,35の代わりに、プーリ50,51及びワイヤ52,53を設けている。なお、ワイヤ52,53は、これに限定するものではないので、同様の機能を有するものであれば、可撓性を有する線材、紐状体、チェーンなどを用いることもできる。
【0057】
図4に示すように、偏心重錘ロータ6,7の拡径部6b,7bにそれぞれプーリ50,51が回動可能に軸支され、スライダ31(32)と偏心重錘部材6c(7c)とが、プーリ50(51)を経由してワイヤ52(53)で連結されている。ワイヤ52(53)の一方の端部はスライダ31(32)に係止され、ワイヤ52(53)の他方の端部は偏心重錘部材6c(7c)のストッパ6f(7f)に係止されている。
【0058】
ハンドル44を
図2中に示す矢線W1と逆方向に回転させると、連動部材33と共にスライダ31,32が梃子部材3bに接近する方向に移動するので、ワイヤ52(53)及びプーリ50(51)を介して偏心重錘部材6c(7c)のストッパ6f(7f)が拡径部6b(7b)に接近する方向にスライドし、偏心重錘部材6c(7c)の重心が軸体4(5)の軸心4c(5c)から離れていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が増大し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は大きくなっていく。
【0059】
一方、前述したようにハンドル44を矢線W1と逆方向へ回転操作した後、ハンドル44を矢線W1方向に回転させると、スライダ30,31,32が梃子部材3bから離隔する方向へ移動し、前述とは逆に、ストッパ6g,7gはそれぞれ軸体6,7の拡径部6b,7bに接近する方向へ移動し、スプリング6d,7dの弾性復元力により偏心重錘部材6c,7cの重心はそれぞれ軸体6,7の軸心6c,7cに近づいていくので、偏心重錘ロータ6,7の回転によって生じる振動が減少し、梃子部材3a,3bを介して主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅は小さくなっていく。
【0060】
このように、繰り返しモーメント発生装置200においても、偏心重錘ロータ6,7が回転中であるか否かを問わず、ハンドル44を回転操作することにより、主軸1に負荷される繰り返しモーメントの振幅を調整することができる。その他の部分の構造、機能並びに作用効果などについては前述した繰り返しモーメント発生装置100と同様である。
【0061】
なお、
図1~
図4に基づいて説明した繰り返しモーメント発生装置100,200は、本発明に係る繰り返しモーメント発生装置を例示するものであり、本発明に係る繰り返しモーメント発生装置は、前述した繰り返しモーメント発生装置100,200に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る繰り返しモーメント発生装置は、供試体に繰り返しモーメントを負荷して供試体の疲労強度特性を試験する疲労試験機などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 主軸
2a,2b 主軸受け部材
3a,3b 梃子部材
4,5 軸体
1c,4c,5c 軸心
6,7 偏心重錘ロータ
6a,7a 遠心力
6b,7b 拡径部
6c,7c 偏心重錘部材
6d,7d スプリング
6e,7e 本体部
6f,6g,7f,7g ストッパ
6h,7h,38 貫通孔
14 モータ
14a 回転軸
15,16 中タイミングプーリ
17 ギアボックス
18 大タイミングプーリ
19a,19b 小タイミングプーリ
21,22 タイミングベルト
24 テーブル
24a 上面
24b 下面
24c コーナ部
25 支持部材
25a 上面
25b 底板
26 アンダーテーブル
30,31,32 スライダ
33 連動部材
34,35 リンク機構
36 雌ネジ孔
37 雄ネジ部材
39 斜歯ギア
40 回転軸
40a ウォームギア
41,42,43 軸受け部材
44 ハンドル
50,51 プーリ
52,53 ワイヤ
100,200 繰り返しモーメント発生装置