(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128631
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】竹繊維を主成分とした芯糸を用いたカバーリング糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D02G 3/38 20060101AFI20220829BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20220829BHJP
D02G 3/28 20060101ALI20220829BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
D02G3/38
D02G3/04
D02G3/28
D06M11/00 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026961
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】520387195
【氏名又は名称】株式会社 infoBANK
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 紀夫
【テーマコード(参考)】
4L031
4L036
【Fターム(参考)】
4L031AA02
4L031AB23
4L031BA08
4L031CA15
4L036MA04
4L036MA08
4L036MA37
4L036PA26
4L036PA46
4L036PA47
4L036RA25
4L036UA01
4L036UA21
(57)【要約】
【課題】 芯糸の周りに鞘糸を巻き付けて構成されるカバーリング糸の提供。
【解決手段】 芯糸2は竹繊維を含有し、この芯糸2の竹繊維に備わっている竹毛羽が表面化することを抑制する為に、竹繊維を有さない糸で構成される鞘糸3を巻き付けて芯糸2を被覆しているカバーリング糸。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸の周りに鞘糸を巻き付けて構成されるカバーリング糸において、該芯糸は竹繊維を含有し、この芯糸の竹繊維に備わっている竹毛羽が表面化することを抑制する為に、竹繊維を有さない糸で構成される鞘糸を巻き付けて芯糸を被覆したことを特徴とするカバーリング糸。
【請求項2】
上記芯糸の周りに、右回転にて巻き付けた鞘糸と左回転にて巻き付けた鞘糸を有す請求項1記載のカバーリング糸。
【請求項3】
上記芯糸の周りに巻き付けられる鞘糸を水溶性の糸とした請求項1、又は請求項2記載のカバーリング糸。
【請求項4】
上記芯糸の周りに巻き付けられる鞘糸を、加熱した液体に浸すことで少なくとも1部が溶けて残りは芯糸の周りに融着することが出来る熱融着性の繊維で構成した請求項1、又は請求項2記載のカバーリング糸。
【請求項5】
芯糸の周りに鞘糸を巻き付けて構成されるカバーリング糸において、該芯糸の周りには竹繊維を含有する鞘糸が巻き付けられ、さらに巻き付けられた鞘糸の周りには、上記竹繊維の竹毛羽が表面化することを抑制する為に、竹繊維を有さない糸で構成される鞘糸を巻き付けて被覆したことを特徴とするカバーリング糸。
【請求項6】
上記芯糸としてポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、天然ゴム、合成ゴムなどで構成される伸縮可能な糸とした請求項5記載のカバーリング糸。
【請求項7】
竹繊維を含有した芯糸の周りに鞘糸を巻き付けてカバーリング糸を製造する方法において、上記鞘糸として水溶性の糸を芯糸に巻き付け、鞘糸を巻き付けた後で水に浸して鞘糸を溶かして除去することを特徴とするカバーリング糸の製造方法。
【請求項8】
竹繊維を含有した芯糸の周りに鞘糸を巻き付けてカバーリング糸を製造する方法において、上記鞘糸として熱融着性の糸を巻き付け、その後で加熱した液に浸して巻き付けた鞘糸の少なくとも1部を溶かし、他の一部は芯糸の周りに融着して竹毛羽を被覆するカバーリング糸の製造方法。
【請求項9】
竹繊維を含有した芯糸の周りに鞘糸を巻き付けてカバーリング糸を製造する方法において、上記芯糸を撚糸すると同時に鞘糸を巻き付けることを特徴とするカバーリング糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は竹繊維を含有した混紡糸を芯糸として使用したカバーリング糸、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
竹は気候が温暖で湿潤な地域に分布し、日本でも竹が群生している竹林と称される地域が多く見られる。そこで、竹を原材料としたものは数多く知られ、例えば、床材として、竹垣として、土壁の素地などの材木として、パイプや容器として、工芸品や日用品の材料として、さらには文具や玩具、漁業用具など、色々な分野で用いられている。竹はその生育が早く、その為に原材料としての竹は安くなり、竹製品は比較的低コストで提供され、その用途は限りなくあるように思われる。
【0003】
一方、竹をそのまま原材料として用いるのではなく、該竹から繊維を取出し、この繊維を使用した混紡糸も従来から知られている。
特開2007-277746号に係る「竹繊維含有繊維製品」は、ソフトな風合いを有し、肌へチクチクした感触を及ぼし難いだけでなく、吸湿性にも優れている。天然竹繊維を含有する紡績糸を用いてなる繊維製品であって、セルラーゼ処理してなる竹繊維含有繊維製品で、特に揉布処理されてなることが好ましい。
すなわち、竹繊維を混入した混紡糸を用いて織編みした生地は、竹繊維の混合比率にもよるが、肌に接するとチクチク感があり問題とされる。
【0004】
特開2014-136851号に係る「竹繊維シート」は、竹繊維の叩解度の大小に関わらず強度及び剛性を向上させたシートである。
すなわち、竹を解繊した竹繊維のうち0.3[mm]を超える繊維太さを持ち、外皮側の維管束を含むストランド状竹繊維と、竹繊維のうち0.3[mm]以下の繊維太さを持ち、内皮側の維管束を含むパルプ状竹繊維とを備え、ストランド状竹繊維とパルプ状竹繊維とを一体に混抄して構成している。
【0005】
このように、竹繊維を混入した混紡糸を用いて織編みした生地は、竹繊維の混合比率にもよるが、肌に接するとチクチク感があり、その為に、織編み生地の表面に形成される竹毛羽を後で除去する必要がある。
その為に、完成した織編み生地を二次加工にて発生した竹毛羽を除去しなくてはならず、作業工程が嵩んで織編み生地の製造コストは高くなっています。
一方、織編み生地の表面に形成される竹毛羽を除去することで、チクチク感は無くなり、少なくとも抑制されるが、含有される竹繊維の重量比率は減少してしまう。
【0006】
図9は竹繊維を含有した混紡糸(イ)を示す拡大図であり、該混紡糸(イ)の周囲には細かい無数の竹毛羽(ロ)、(ロ)・・・が形成されている。この竹毛羽(ロ)、(ロ)・・・は、混紡糸(イ)、(イ)・・・を用いて織編みした場合、織編み生地の表面に発生し、この竹毛羽(ロ)、(ロ)・・・が肌に接してチクチク感を与える。
図10、
図11も同じような竹繊維を含有した混紡糸(イ)を示す拡大図である。
【特許文献1】特開2007-277746号に係る「竹繊維含有繊維製品」
【特許文献2】特開2014-136851号に係る「竹繊維シート」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように竹繊維を含有した混紡糸を使用して織編みした生地は従来から知られている。しかし、竹繊維の含有率にもよるが、該生地を用いて作成した衣類を着用する場合、多少のチクチク感が残る。このチクチク感を除去する為に、完成した織編み生地を2次加工(後処理)することは可能であるが、上記のごとき問題がある。
本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、糸の段階で形成される竹毛羽が表面化しないように被覆することが出来るカバーリング糸を提供する。また、該カバーリング糸の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカバーリング糸は、芯糸の外周に鞘糸を巻き付けて構成し、外周に巻き付ける鞘糸によって芯糸の外周に形成される竹毛羽を被覆することが出来る。
カバーリング糸には、主として次のような形態が考えられる。
(1)竹繊維を主成分とした芯糸に竹以外の繊維から成る鞘糸をカバーリングする最も基本的な形態。
(2)芯糸に鞘糸をダブルカバーリングする形態。この場合、芯糸は竹繊維を主成分とした場合に限らず、鞘糸として竹繊維を用いることが出来る。
(3)芯糸として、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、天然ゴム、合成ゴムなどの伸縮可能な繊維を用いて構成することも出来る。
(4)鞘糸として、水溶性の繊維を用い、カバーリング糸として完成した後で水に浸して巻き付けた鞘糸の少なくとも一部を溶かすことが出来る。また、カバーリング糸のままで織編みした生地を水に浸して鞘糸を除去することも出来る。
(5)鞘糸として、熱融着繊維を用い、カバーリング糸として完成した後で巻き付けた鞘糸を加熱した液体に浸して除去することもある。この場合、巻き付けた鞘糸を完全に除去することなく、芯糸の表面に融着して一部を残した状態とすることも可能である。
ところで、鞘糸は紡績(撚糸)した芯糸の周りに巻き付けられるが、鞘糸の巻き付け工程を芯糸の撚糸工程と分離することなく、撚糸と同時にカバーリングを行って、カバーリング糸を製造することも可能である。
【0009】
上記芯糸は竹繊維を主成分として構成した混紡糸、又は竹繊維のみで構成した糸を使用し、巻き付ける鞘糸を綿糸などでカバーリングする。また、芯糸は竹繊維を含有する混紡糸に限るものではなく、ポリウレタンなどの伸縮性を有す繊維を芯糸とすることもある。 すなわち、カバーリング糸を構成する芯糸の構成、及び周囲に巻き付ける鞘糸の具体的な構成は限定しない。
【0010】
一方、芯糸に巻き付ける鞘糸として竹繊維を有す糸を用いることも出来、竹繊維を有す糸を鞘糸として芯糸の周りに巻き付ける場合には、巻き付けた鞘糸から発生する竹毛羽をカバーする為に、その周りに竹繊維を含有しない鞘糸を巻き付ける必要がある。カバーリング形態は一重巻きに限らず、二重巻きとしたダブルカバーリングとすることも可能である。
【0011】
芯糸の外周に巻き付ける鞘糸として、水溶性の糸を使用することもある。すなわち、水溶性である鞘糸は織編みした生地を水に浸すことで溶けてなくなり、生地とした場合の竹繊維の含有率が維持される。
ところで、鞘糸を芯糸の周りに巻き付ける回数は限定しないが、一般的には1m当り100~5000回としている。また、鞘糸を巻き付ける硬さに関しても自由である。
【0012】
本発明に係る竹繊維を含有した混紡糸は、綿などの他の繊維が混紡することにより、天然竹繊維に備わっている竹固有の機能性、すなわち、優れた強度、抗菌作用、抗酸化作用、防臭作用、防音作用を有し、しかも風合い及び染色性にも問題がない繊維製品を製造することが出来る。
該混紡糸は、竹繊維と綿繊維などを混合して成る糸であって、天然竹繊維は重量比で15%~85%の割合で含まれている。
ここで、竹繊維の混紡率を高くするならば、竹固有の上記機能性は向上するが、その反面、該混紡糸製造の困難性は増加する。
【0013】
混紡糸の製造方法は自由であって限定しないが、例えば混打工程、調合工程、カーディング工程、練条工程、粗紡工程、精紡工程、巻糸工程などを経て製造される。
解繊することで平均繊維長が15mm~70mm、平均直径が30ミクロン~70ミクロンの竹繊維が使用され、これらの竹繊維は綿繊維などと混合される。
竹繊維と混合される上記綿繊維などの繊維長は平均40mm程度のものが用いられるが、短い繊維を用いると上記竹繊維との絡み合うことが容易でない。
【0014】
そして、竹繊維を解繊、乾溜、爆砕することでその機能性、すなわち吸臭、吸着、抗菌などをより高度に保つ混紡糸を得ることが出来る。解繊、乾溜、爆砕とは加熱加圧条件下(例えば、5~6気圧、140~200℃の状態)で、処理することを意味するものであり、解繊、乾溜、爆砕により、竹内部の油、水、虫などが除去される。解繊、乾溜、爆砕された竹繊維は、竹の持つリグニンがポリフェノールになり、抗酸化作用が高まるだけでなく、多孔質がより大となり、吸臭、吸着、抗菌などの作用がより顕著になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るカバーリング糸は、竹繊維を混入した混紡糸を芯糸とし、その周りに鞘糸を巻き付けた構造としている。したがって、芯糸の周りに発生する竹毛羽は鞘糸を巻き付けることでカバーされ、該カバーリング糸の周りには竹毛羽はなく、少なくとも竹毛羽の発生は抑制される。
よって、該カバーリング糸を用いて織編みした生地の表面には竹毛羽は少なく、その為に該生地を使用した衣類を着用しても、チクチク感は生じない。
そして、カバーリング糸を使用して織編みする際、鞘糸にてカバーされることで製造工程中に竹繊維が脱落することは殆どない。その為に織編みされた生地に含まれる竹繊維の重量比率はほぼ一定に保たれ、所定の品質を有す生地を提供することが出来る。
【0016】
さらに、芯糸の周りに鞘糸をカバーリングすることで、太さが均一化する。すなわち、竹繊維が混入することで混紡糸の太さは一定でなく、しかも、その断面は円形でなく歪であるが、該鞘糸を巻き付けることで断面は円形となり、太さは均一化する。したがって、均一なカバーリング糸を用いて織編みした生地は、その面に凹凸はなく奇麗な生地面が形成される。
【0017】
一方、芯糸として竹繊維を含有する場合に限らず、周囲に巻き付ける鞘糸として竹繊維を有す混紡糸を使用することも可能であり、この場合には巻き付けた鞘糸の周りに、別の鞘糸を巻き付けて竹繊維の脱落を防止できる。
そして、竹繊維を含有する混紡糸を使用した織物や編物は、綿糸のみの生地と比較するとその強度は約2倍になり、また、解繊、乾溜、爆砕した竹繊維を含む生地は、竹の持つリグニンが熱分解され、フェノールとなり、抗酸化作用を持ち、極多孔質によるホルムアルデヒドの吸着、消臭作用、防音作用が顕著である。
【0018】
竹本来の持つ抗菌作用など、特に黄色ブドウ球菌などに対しては、その抗菌作用が特に顕著である。さらに、カバーリング糸を用いて織編みした生地は、竹繊維の脱落が防止されることで、洗濯による抗菌性、消臭性の低下は殆どなく、抗酸化作用、抗菌作用、消臭作用を求める布製品には特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るカバーリング糸を示す模式図であって、芯糸の周りに鞘糸を巻き付けている。
【
図2】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す模式図であって、芯糸の周りに鞘糸を巻き付けている。
【
図3】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに鞘糸を巻き付けている。
【
図4】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに鞘糸を巻き付けている。
【
図5】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに鞘糸を巻き付けている。
【
図6】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに水溶性の鞘糸を巻き付けている。
【
図7】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに水溶性の鞘糸を巻き付けている。
【
図8】本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに水溶性の鞘糸を巻き付けている。
【
図9】竹繊維を含有した混紡糸を示す外観図であり、周囲には無数の竹毛羽が発生している。
【
図10】竹繊維を含有した混紡糸を示す外観図であり、周囲には無数の竹毛羽が発生している。
【
図11】竹繊維を含有した混紡糸を示す外観図であり、周囲には無数の竹毛羽が発生している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るカバーリング糸は、芯糸の周りに鞘糸を巻き付けて構成し、巻き付ける鞘糸によって芯糸を構成している竹繊維から発生する竹毛羽が表面化しないように被覆することが出来る。
竹繊維を含有する糸は必ずしも芯糸に限ることなく、巻き付ける鞘糸として使い、鞘糸の周りに別な鞘糸を巻き付けることもあり、ダブルカバーリングすることで、竹繊維から生じる竹毛羽を被覆することが出来る。従来のように、生地として織編みした後で、2次加工を施して生地表面に形成される竹毛羽を除去するのではない。
【0021】
本発明のカバーリング糸を使用して製作した生地の用途は多岐にわたっている。例えば、病院やホテルなどで使うベッド用シーツ、布団カバー、枕カバー、タオル、織物クロス、じゅうたん、カーテン、衣類としてはジャケット、ワンピース、スカート、Yシャツ、ジーンズ、Tシャツ、スカーフ、マフラー、ソックス、下着など、また車の座席用シート、日傘など、色々の商品に使うことが出来る。
【0022】
図1は本発明に係るカバーリング糸1を示す模式図であり、2は芯糸、3は鞘糸を表している。ここで、上記芯糸2、鞘糸3の具体的な種類は限定しないが、芯糸2としては一般的に竹繊維を含有した混紡糸が用いられ、鞘糸3としては竹繊維を含まないその他の繊維で構成した糸が使用される。
竹繊維を含有した芯糸2は、周囲に無数の竹毛羽が発生し、この竹毛羽を周囲に巻き付けられる鞘糸3にて被覆することが出来る。
【0023】
ここで、鞘糸3の巻き数は、1m当り100~5000回とし、巻取り固さは25~101%、また芯糸2の伸び率は72~800%としており、これらのカバーリング条件は、使用される芯糸2及び巻き付ける鞘糸3の種類やカバーリング糸の用途によって適した条件下でカバーリングされる。
【0024】
図2はダブルカバーリング糸4を示す模式図である。同図の2は芯糸、5a,5bは鞘糸を表し、一方の鞘糸5aは芯糸2の周囲に巻かれ、他方の鞘糸5bは巻き付いた鞘糸5aの周囲に巻かれている。
ここで、芯糸2としては
図1に示すカバーリング糸1と同じく、竹繊維を含有した混紡糸が用いられ、カバーリングされる鞘糸5a,5bとしては竹繊維を含まない糸を使用することが出来る。
【0025】
ところで、ダブルカバーリング糸4を構成する具体的な糸は色々あり、上記芯糸2としては、竹繊維を含有した混紡糸を使用する場合に限らない。
例えば、芯糸2の外周に巻き付く鞘糸5aとして竹繊維を含有した混紡糸を使用し、その外周に巻き付ける鞘糸5bとして、竹繊維を含有しない糸を使用することが出来、該鞘糸5bを巻き付けることで鞘糸5aの竹繊維から発生する竹毛羽を抑えることが可能となる。
【0026】
また、芯糸2としてポリウレタンなどの伸縮性に優れた糸を使用し、このポリウレタン製の芯糸2の周囲に竹繊維を含有した鞘糸5aを巻き付け、さらに該鞘糸5aの周りに綿糸などにて竹毛羽を抑える鞘糸5bをカバーリングすることが出来る。
一方、芯糸2として竹繊維を含有した混紡糸とし、該芯糸2に巻き付く鞘糸3、5a,5bを水溶性の糸とする。そして、該カバーリング糸1,4を用いて織編みした生地を水に浸すならば、水溶性の鞘糸3,5a,5bは水に溶けて流れてしまい、その結果、芯糸だけの織編み生地となる。
【0027】
図3、
図4、
図5は本発明に係るダブルカバーリング糸4を示す具体例である。
鞘糸5a,5bにてカバーリングしても、芯糸2に形成される竹毛羽6,6・・・が鞘糸5a,5bの付近に発生している。しかし、カバーリングしない前記
図9、
図10、
図11に示した混紡糸に比較して竹毛羽6,6・・・の本数は少なくなっていることが分かる。
【0028】
したがって、竹繊維を含有したカバーリング糸を用いて織編みした生地は、生地の表面に竹繊維から延びる竹毛羽が表面化することが抑制され、織編みした生地を用いて製作した衣類はチクチクすることなく着用することが出来る。その為に、涼しく、チクチク感じない肌着用の糸として適している。
また、カバーリング糸は、織編みする際に、竹繊維が脱落して生地全体としての竹繊維の比率が低下することなく、規定通りの生地を織編みすることが可能となる。
【0029】
ところで、
図1に示したカバーリング糸1の場合、竹繊維を含有した芯糸2の周りに鞘糸3を巻き付けることで、芯糸2を構成する竹繊維の竹毛羽が表面化しないように被覆することが出来る。そして、該カバーリング糸1を使用して織編みするならば、織編み工程中に竹毛羽が脱落することなく所定の重量が保たれる。すなわち、織編み生地に含まれる竹繊維の重量比率が低下することはない。
そして、織編みした生地を水に浸すならば、水溶性の鞘糸3は溶けて除去され、竹繊維を含有した芯糸2だけで構成される織編み生地となる。
【0030】
一方、水溶性の鞘糸3の代わりに、熱融着ナイロン繊維から成る鞘糸3を用いることも可能である。熱融着ナイロン繊維は110℃の液体に浸すことで溶け出し、一部は芯糸2に融着することが出来る。
したがって、ナイロン繊維から成る鞘糸3の一部が融着することで竹毛羽を被覆し、該カバーリング糸1を使用して織編みするならば、織編み工程中に竹毛羽が脱落することなく所定の重量が保たれる。すなわち、織編み生地に含まれる竹繊維の重量比率が低下することはない。
勿論、織編みした後で、織編み生地を110℃の液体に浸して鞘糸3を除去することも可能である。
図6、
図7、
図8は本発明に係るダブルカバーリング糸を示す外観図であって、芯糸の周りに水溶性の鞘糸を巻き付けている場合の具体例を示している。
【0031】
カバーリング糸1,4は、芯糸2を紡績(撚糸)加工した後で鞘糸3、5a,5bが巻き付けられる。ところで、鞘糸3,5a,5bの巻き付け工程を紡績工程から分離することなく、同時に行うことが出来る。紡績工程とカバーリング工程を同時に行うことで、加工工数の大幅な削減を図ることが出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 カバーリング糸
2 芯糸
3 鞘糸
4 ダブルカバーリング糸
5 鞘糸
6 竹毛羽