(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128633
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ブラスト加工用噴射ガン
(51)【国際特許分類】
B24C 5/04 20060101AFI20220829BHJP
B24C 5/02 20060101ALN20220829BHJP
【FI】
B24C5/04 A
B24C5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026963
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 五郎
(57)【要約】
【課題】狭小空間内において良好なブラスト加工を行えるようにする。
【解決手段】ブラスト加工用噴射ガンAは、ガンボディ10と、ガンボディ10の前方へ延出した圧送路15とを備え、圧送路15は、アウタチューブ16と、アウタチューブ16内に挿通されたインナチューブ14とを有し、アウタチューブ16の内周面とインナチューブ17の外周面との間の空間が、スラリーSを流動させる研磨材流路23として機能し、インナチューブ17の内部空間が、加圧エアを流動させるガス流路22として機能し、インナチューブ17の前方で合流したスラリーSと加圧エアが、圧送路15の前方へ噴射される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンボディと、
前記ガンボディの前方へ延出した圧送路とを備え、
前記圧送路は、アウタチューブと、前記アウタチューブ内に挿通されたインナチューブとを有し、
前記アウタチューブの内周面と前記インナチューブの外周面との間の空間と、前記インナチューブの内部空間とのうち一方の空間が、ブラスト研磨材を流動させる研磨材流路として機能し、
前記アウタチューブの内周面と前記インナチューブの外周面との間の空間と、前記インナチューブの内部空間とのうち他方の空間が、高圧ガスを流動させるガス流路として機能し、
前記インナチューブの前方で合流した前記ブラスト研磨材と前記高圧ガスが、前記圧送路の前方へ噴射されるブラスト加工用噴射ガン。
【請求項2】
前記アウタチューブと前記インナチューブのうち少なくとも一方が、可撓性を有している請求項1に記載のブラスト加工用噴射ガン。
【請求項3】
前記インナチューブの前端から前記アウタチューブの前端までの長さをLとし、前記アウタチューブの内径寸法をDとしたときに、0<L<6Dである請求項1又は請求項2に記載のブラスト加工用噴射ガン。
【請求項4】
前記研磨材流路の断面積は、前記ガス流路の断面積よりも大きい請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のブラスト加工用噴射ガン。
【請求項5】
1つの前記ガンボディに、複数本の前記圧送路が取り付けられている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のブラスト加工用噴射ガン。
【請求項6】
前記アウタチューブの前端部にノズルが取り付けられ、
前記ノズルは、前記アウタチューブの前端の開口部とは開口形状又は内径寸法が異なる噴射口を有している請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のブラスト加工用噴射ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラスト加工用噴射ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークの表面処理を行うための湿式ブラスト装置が開示されている。この湿式ブラスト装置は、砥粒と液体とが混合されたスラリーを、高圧ガス(エアー)と混合させることによって固気液三相流とし、この固気液三相流のスラリーを筒状の噴射ノズルから噴射してワークに吹き付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のブラスト装置を用いてパイプ内等の狭小空間でブラスト加工を行う場合、筒状の噴射ノズルを細長く延びた形状にすることが考えられる。しかし、噴射ノズルを長くすると、噴射ノズルの内壁面との間の流動抵抗によって固気液三相流の勢いが減衰するため、良好なブラスト加工を行うことができない。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、狭小空間内において良好なブラスト加工を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブラスト加工用噴射ガンは、
ガンボディと、
前記ガンボディの前方へ延出した圧送路とを備え、
前記圧送路は、アウタチューブと、前記アウタチューブ内に挿通されたインナチューブとを有し、
前記アウタチューブの内周面と前記インナチューブの外周面との間の空間と、前記インナチューブの内部空間とのうち一方の空間が、ブラスト研磨材を流動させる研磨材流路として機能し、
前記アウタチューブの内周面と前記インナチューブの外周面との間の空間と、前記インナチューブの内部空間とのうち他方の空間が、高圧ガスを流動させるガス流路として機能し、
前記インナチューブの前方で合流した前記ブラスト研磨材と前記高圧ガスが、前記圧送路の前方へ噴射される。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、ガンボディの前方へ延出した圧送路を狭小空間内に挿入することによって、狭小空間内でブラスト加工を行うことができる。圧送路内におけるブラスト研磨材と高圧ガスの合流後の流路は、インナチューブの前端からアウタチューブの前端に至る範囲である。インナチューブは、アウタチューブ内に挿通された状態でガンボディの前方へ延出しているので、アウタチューブ内におけるブラスト研磨材と高圧ガスの合流後の流路の長さは、インナチューブがガンボディ内のみに配索されているものに比べると短い。したがって、合流後のブラスト研磨材と高圧ガスの勢いが減衰し難く、狭小空間内において良好なブラスト加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ブラスト加工用噴射ガンの一部を省略した側断面図
【
図4】実施例2のブラスト加工用噴射ガンの一部を省略した側断面図
【
図6】実施例3のブラスト加工用噴射ガンの一部を省略した側断面図
【
図8】実施例4のブラスト加工用噴射ガンの一部を省略した側断面図
【
図9】実施例5のブラスト加工用噴射ガンの一部を省略した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図1及び
図2における左方を前方と定義する。本実施例1のブラスト加工用噴射ガンA(以下、「噴射ガンA」という)は、ウエットブラスト加工装置30を構成するハンドガンである。噴射ガンAは、スラリーSと加圧エアを混合することによって得られた固気液三相の噴射流Jを、ワークWに向けて射出する。スラリーSは、研磨材と水を混合したブラスト研磨材である。スラリーSの研磨材としては、ガラスビーズ、金属粒、セラミックスや合成樹脂等の砥粒等がある。加圧エアは、スラリーSを加速するための高圧ガスである。
【0010】
ウエットブラスト加工装置30は、
図3の概略図に示すように、密閉された加工室31と、加工室31内の噴射ガンAにスラリーSを圧送するためのポンプ32と、噴射ガンAに加圧エアを圧送するためのコンプレッサ33とを有する。加工室31内には、スラリーSを貯留しておくための貯留タンク34が設けられている。貯留タンク34と加工室31内の噴射ガンAとの間にはスラリー供給路35が配索され、スラリー供給路35の途中にポンプ32が接続されている。コンプレッサ33と噴射ガンAとの間には加圧エア供給路36が配索されている。加工室31内では、スラリーSと加圧エアが噴射ガンAに圧送され、ワークWの孔部Hに対して噴射ガンAから噴射流Jが噴射される。
【0011】
図1,2に示すように、噴射ガンAは、ガンボディ10と、1本の可撓性を有する細長い圧送路15とを有する。
図2に示すように、圧送路15は、1本のアウタチューブ16と1本のインナチューブ17とによって構成されている。ガンボディ10は、合成樹脂や金属等からなる複数の部品を組み付けて構成されている。ガンボディ10の内部には、スラリー供給路35の下流端と連通するスラリー供給室11が形成されている。
【0012】
スラリー供給室11の前端部には、軸線を前後方向に向けた円形断面の接続孔12が、ガンボディ10の前端面に開口した状態で形成されている。スラリー供給室11のうち接続孔12の後方には、前方に向かって内径寸法が縮小するように傾斜したテーパ状の加速室13が形成されている。加速室13の前端の内径寸法は接続孔12の後端の内径寸法と同じであり、加速室13の前端部が接続孔12の後端に連通している。
【0013】
接続孔12には、アウタチューブ16の後端部16Rが同軸状に接続されている。アウタチューブ16は、断面形状が円形をなし、肉厚寸法が全周に亘って一定の細長い部材である。アウタチューブ16の内径寸法Dは、全長に亘って一定の寸法であり、接続孔12の後端部の内径寸法と同一の寸法である。アウタチューブ16は、可撓性を有する合成樹脂材料からなる。本実施例1では、アウタチューブ16の材料として、ポリウレタン(PU)製の熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーが用いられている。
【0014】
接続孔12に接続されたアウタチューブ16は、ガンボディ10の前端からガンボディ10の外部前方へ延出している。アウタチューブ16のうちガンボディ10の外部へ延出した部位は、可撓性外筒部18として機能する。可撓性外筒部18の軸線方向の長さは、アウタチューブ16のうちガンボディ10内(接続孔12内)に収容された後端部16Rに比べると充分に長い。アウタチューブ16の前端の開口は、固気液三相の噴射流Jを噴射するための円形の噴射口19として機能する。
【0015】
ガンボディ10の後端部には、軸線を前後方向に向けた筒状の接続部材20が、貫通した状態で固着されている。接続部材20の後端部には加圧エア供給路36の下流端が接続されている。接続部材20の前端部は、スラリー供給室11内へ突出している。接続部材20の前端部は、アウタチューブ16の後端部16Rに対して後方に離隔し、且つアウタチューブ16の後端部16Rに対して同軸状に対向するように配置されている。接続部材20の前端部には、インナチューブ17の後端部17Rが同軸状に接続されている。インナチューブ17内には、接続部材20を介して加圧エアが圧送される。
【0016】
インナチューブ17は、断面形状が円形をなし、肉厚寸法が全周に亘って一定の細長い部材である。インナチューブ17の外径寸法は、全長に亘って一定の寸法であり、アウタチューブ16の内径寸法Dよりも小さい寸法である。インナチューブ17の内径寸法は、インナチューブ17の全長に亘って一定の寸法である。インナチューブ17は、可撓性を有する合成樹脂材料からなる。本実施例1では、インナチューブ17の材料として、ポリウレタン(PU)製の熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーが用いられている。
【0017】
接続部材20に固着されたインナチューブ17は、アウタチューブ16内に挿入された状態で、ガンボディ10の前端からガンボディ10の外部前方へ延出している。インナチューブ17のうちガンボディ10の外部へ延出した部位は、可撓性内筒部21として機能する。可撓性内筒部21の軸線方向の長さは、インナチューブ17のうちガンボディ10内に収容された部位に比べると充分に長い。アウタチューブ16のうちガンボディ10の外部へ延出した可撓性外筒部18と、インナチューブ17のうちガンボディ10の外部に延出した可撓性内筒部21が、可撓性を有する圧送路15を構成する。
【0018】
インナチューブ17の内部空間は、加圧エア供給路36に接続されているので、加圧エアをアウタチューブ16の噴射口19に向けて圧送するためのガス流路22として機能する。アウタチューブ16の内周面とインナチューブ17の外周面との間の筒状空間は、スラリー供給室11に連通しているので、スラリーSを噴射口19に向けて圧送するための研磨材流路23として機能する。インナチューブ17の前端は、噴射口19よりも後方に位置する。インナチューブ17の前端の開口は、加圧エアをアウタチューブ16内に吐出するための吐出口24として機能する。
【0019】
アウタチューブ16内のうち研磨材流路23として機能するのは、インナチューブ17の前端(吐出口24)よりも後方の領域だけである。アウタチューブ16内のうち研磨材流路23よりも前方の領域(吐出口24から噴射口19までの間の領域)は、スラリーSと加圧エアが合流する合流路25として機能する。
【0020】
本実施例1の噴射ガンAを用いてワークWの孔部H内にブラスト加工を施す際には、アウタチューブ16の前端部(先端部)を孔部H内に挿入した状態で、噴射ガンAにスラリーSと加圧エアを圧送する。研磨材流路23内に圧送されたスラリーSと、ガス流路22内に圧送された加圧エアが、合流路25内で合流して固気液三相流となり、噴射口19からワークWの孔部H内に噴射される。噴射口19から噴射したスラリーSの噴射流Jによって、孔部H内のバリの除去や、孔部Hの内周面の研磨等のブラスト加工が行われる。
【0021】
スラリーSは、研磨材流路23の前端から合流路25に進入した直後に、加圧エアによって加速される。加速されたスラリーSは、合流路25内を進む過程でアウタチューブ16の内周面との間の摩擦抵抗によって速度(パワー)が減衰する。しかし、合流路25の長さは、研磨材流路23の長さに比べると充分に短いので、速度の減衰は僅かである。したがって、スラリーSは噴射口19から高速で噴射され、良好なブラスト加工が実行される。
【0022】
合流路25の長さ寸法Lを長くすると、アウタチューブ16の前方におけるスラリーSと加圧エアの噴射流Jの広がり角度が小さくなり、噴射流Jの勢いが分散され難いので、ブラスト加工力が向上する。合流路25の長さ寸法Lを短くすると、アウタチューブ16の前方におけるスラリーSと加圧エアの噴射流Jの広がり角度が大きくなり、噴射流Jの勢いが分散されるので、ブラスト加工力が低下する。
【0023】
本実施例1では、アウタチューブ16の外径寸法は12mmであり、内径寸法Dは8mmである。インナチューブ17の外径寸法は4mmであり、内径寸法は2.5mmである。したがって、研磨材流路23の断面積はガス流路22の断面積よりも大きい。これにより、加圧エアに比べて流動抵抗の大きいスラリーSを、研磨材流路23内で円滑に流動させることができる。また、加圧エアの圧力を高めつつ、スラリーSの詰まりを抑制することができる。
【0024】
また、上記のように径寸法を設定した場合、インナチューブ17の断面二次モーメントはアウタチューブ16よりも小さくなる。ここで、アウタチューブ16とインナチューブ17の材質を適宜選択することによって、アウタチューブ16の曲げ剛性とインナチューブ17の曲げ剛性の大小関係を任意に設定することができる。
【0025】
例えば、インナチューブ17の曲げ剛性をアウタチューブ16よりも高く設定すれば、インナチューブ17をアウタチューブ16内に挿通する際に、インナチューブ17の先端がアウタチューブ16の内周面に突き当たって座屈する、という事象が起き難くなる。したがって、インナチューブ17をアウタチューブ16に挿通する際の作業性が良好となる。
【0026】
また、インナチューブ17の曲げ剛性をアウタチューブ16の曲げ剛性よりも低く設定すると、スラリーSが圧送されている間に、インナチューブ17がスラリーSの摺接によって振動する。インナチューブ17が振動することによって、インナチューブ17の外周面にスラリーSが堆積することを防止できる。また、インナチューブ17の振動によってアウタチューブ16の内周面に対するスラリーSの接触圧が常時変動するので、アウタチューブ16の内周面にスラリーSが堆積することも防止できる。一方、アウタチューブ16は殆ど振動しないので、ブラスト加工中は、ワークWの孔部H内におけるアウタチューブ16の噴射口19の位置及び向きが安定する。これにより、良好なブラスト加工を行うことができる。
【0027】
本実施例1のブラスト加工用噴射ガンAは、ガンボディ10と、ガンボディ10から前方へ延出して先端からブラスト研磨材を噴射する圧送路15とを有する。圧送路15は、ガンボディ10の前方へ延出したアウタチューブ16と、アウタチューブ16内に挿通された状態でガンボディ10の前方へ延出したインナチューブ17とを備えている。アウタチューブ16の内周面とインナチューブ17の外周面との間の空間は、スラリーSを流動させるための研磨材流路23として機能する。インナチューブ17の内部空間は、加圧エアを流動させるためのガス流路22として機能する。インナチューブ17の前方で合流したスラリーSと加圧エアは、アウタチューブ16内の短い合流路25内を通過し、圧送路15の前端の噴射口19から圧送路15の前方へ噴射される。
【0028】
本実施例1の噴射ガンAによれば、ガンボディ10の前方へ延出した圧送路15を狭小空間(ワークWの孔部H)内に挿入することによって、孔部H内でブラスト加工を行うことができる。圧送路15内(アウタチューブ16内)におけるスラリーSと加圧エアの合流後の合流路25は、インナチューブ17の前端(吐出口24)からアウタチューブ16の前端(噴射口19)に至る範囲である。インナチューブ17は、アウタチューブ16内に挿通された状態でガンボディ10の前方へ延出しているので、圧送路15内におけるブラスト研磨材と高圧ガスの合流路25の長さは、インナチューブ17がガンボディ10内のみに配索されているものに比べると短い。したがって、合流後のスラリーSと加圧エアの勢いが減衰し難く、狭小空間(ワークWの孔部H)内において良好なブラスト加工を行うことができる。
【0029】
アウタチューブ16とインナチューブ17は可撓性を有している。したがって、狭い空間や屈曲した空間内でブラスト加工を行う際に、アウタチューブ16とインナチューブ17を屈曲させることによって、作業性が向上する。スラリーSの流動中は、可撓性を有するアウタチューブ16とインナチューブ17のうち少なくとも一方が振動することによって、圧送路15内(研磨材流路23内)におけるスラリーSの詰まりを防止することができる。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ17の前端(吐出口24)からアウタチューブ16の前端(噴射口19)に至る合流路25の長さをLとし、アウタチューブ16の内径寸法をDとしたときに、0<L<6Dである。L≧6Dに設定すると、アウタチューブ16から噴射されるスラリーSと加圧エアの噴射流Jに、脈動が生じ、加工力が低下する。これに対し、0<L<6Dに設定することによって、脈動の発生を抑制又は防止し、加工力の低下を回避することができる。
【0031】
研磨材流路23の断面積はガス流路22の断面積よりも大きい。この設定によれば、ガス流路22内における加圧エアの圧力を高めつつ、研磨材流路23内におけるスラリーSの詰まりを防止することができる。これにより、ハイパワーの固気液三相流を生成して良好なブラスト処理を実行することができる。
【0032】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図4~
図5を参照して説明する。本実施例2のブラスト加工用噴射ガンBは、1つのガンボディ40と、4本(複数本)の可撓性を有する圧送路15とを有する。1本の圧送路15は、1本のアウタチューブ16と、アウタチューブ16内に挿入された1本のインナチューブ17とによって構成されている。ガンボディ40内には、スラリー供給路35に接続された1つの供給室41が形成されている。供給室41は、4本の圧送路15と連通している。
【0033】
ガンボディ40の前端部には4つの接続孔42が形成されている。4つの接続孔42には、4本のアウタチューブ16の後端部16Rが個別に接続されている。ガンボディ40の後端部には、4本の筒状の接続部材43が貫通した状態で取り付けられている。4本の接続部材43には、4本のインナチューブ17の後端部17Rが個別に接続されている。各圧送路15におけるアウタチューブ16とインナチューブ17の構成は、実施例1と同じである。同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。4本の圧送路15は、夫々、他の圧送路15とは独立して個別に湾曲変形させることができる。
【0034】
本実施例2の噴射ガンBは、1つのガンボディ40に、複数本の圧送路15(アウタチューブ16とインナチューブ17)が取り付けられているので、複数のワーク又は、1つのワークの複数箇所に対して、同時にブラスト加工を行うことができる。また、複数本の圧送路15に対してガンボディ40を共用化したので、複数本の圧送路15に対してガンボディ40を1つずつ設ける場合に比べると、コストを低減することができる。
【0035】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3を
図6~
図7を参照して説明する。本実施例3のブラスト加工用噴射ガンCは、1つのガンボディ50と、1本の可撓性を有する圧送路15と、圧送路15の先端部に取り付けたノズル60とを有する。圧送路15は、1本のアウタチューブ16と、アウタチューブ16内に挿入された1本のインナチューブ17とによって構成されている。ガンボディ50の基本的な構成と圧送路15の構成は、実施例1と同じである。同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。詳細な説明は省略する。
【0036】
ノズル60は、チューブホルダ61、リテーナ64、グリップ65、スペーサ66、ノズルチップ67、チップホルダ73、ボルト74、ナット75、及びを組み付けて構成されている。チューブホルダ61は、リング状をなし、アウタチューブ16の前端部外周に固着されている。チューブホルダ61には、前方へ突出したリング状の受圧部62が形成され、受圧部62の外周面は、前方に向かって縮径したテーパ面63となっている。
【0037】
チューブホルダ61の後面には、アウタチューブ16を包囲するリング状のリテーナ64が当接している。リテーナ64の内周には、パイプ状をなすグリップ65の前端部がねじ込まれた状態で取り付けられている。グリップ65はアウタチューブ16を同軸状に包囲している。リテーナ64の後面には、リング状のスペーサ66が当接している。
【0038】
ノズルチップ67は、前後方向に貫通した貫通孔68を有する筒状の部品である。貫通孔68の前後方向中央部には、断面が円形であり、内径寸法が一定の円形断面の定径部69が形成されている。貫通孔68のうち定径部69の前方に連なる領域には、スリット部70が形成されている。ノズルチップ67を軸線と直角に切断したときのスリット部70の断面形状は、長方形である。スリット部70の断面における短辺の寸法は、スリット部70の全長に亘って一定である。スリット部70の断面における長辺の寸法は、前方に向かって次第に大きくなっている。ノズルチップ67を軸線及び長辺と平行に切断したときのスリット部70の側断面形状は、
図6に示すように、等脚台形をなす。スリット部70の前端の開口は、噴射口71として機能する。
【0039】
ノズルチップ67の後端部には、後方に向かって径寸法が次第に大きくなるように傾斜したフレア部72が形成されている。ノズルチップ67は、フレア部72をテーパ面63に密着させた状態でチューブホルダ61に取り付けられている。チップホルダ73は、ノズルチップ67を包囲した状態で、フレア部72のテーパ状をなす外周面に当接している。
【0040】
ボルト74は、チップホルダ73の前方から、チップホルダ73とチューブホルダ61とリテーナ64とスペーサ66を順に貫通している。スペーサ66の後方では、ボルト74の後端部にナット75がねじ込まれている。ボルト74とナット75を締め付けることによって、チップホルダ73とチューブホルダ61とリテーナ64とスペーサ66が前後方向に挟み付けられて固定されている。ボルト74とナット75の締付けにより、フレア部72と受圧部62が縮径し、受圧部62(チップホルダ73の内周面)がアウタチューブ16の外周前端部を強固に締め付ける。これにより、ノズル60の組付けが完了すると同時に、圧送路15(アウタチューブ16)に対するノズル60の組付けが完了する。
【0041】
圧送路15の前端部にノズル60を取り付けた状態では、ノズルチップ67が、アウタチューブ16の前端部と同軸状に配置され、アウタチューブ16の前端よりも前方へ突出している。ノズル60の前端面にはスリット状の噴射口71が開口している。圧送路15に圧送されたスラリーSと加圧エアは、合流路25内で合流して固気液三相流となり、定径部69とスリット部70を順に通過して、噴射口71から噴射される。噴射流Jは、スリット部70の台形形状に沿った偏平な扇状をなす。
【0042】
本実施例3のブラスト加工用噴射ガンCは、アウタチューブ16(圧送路15)の前端部にノズル60を取り付けたものである。ノズル60は、アウタチューブ16の前端の開口部76とは開口形状及び内径寸法が異なる噴射口71を有しているので、アウタチューブ16の開口部76から噴射する場合とは異なる任意の形状の噴射流Jを、噴射させることができる。
【0043】
<実施例4>
次に、本発明を具体化した実施例4を
図8を参照して説明する。本実施例4のブラスト加工用噴射ガンDは、圧送路15を構成するアウタチューブ80の噴射口81の形状を、実施例1の噴射口19とは異なる形状にしたものである。実施例1のアウタチューブ16の内径寸法は、研磨材流路23の後端から噴射口19に至る全長に亘って一定の寸法であった。これに対し、実施例4のアウタチューブ80の噴射口81は、アウタチューブ80のうち噴射口81以外の部位よりも小径となっている。
【0044】
即ち、アウタチューブ80の前端部の内周には、噴射口81以外の部位に対して同心状に且つ段差状に縮径した円環形の縮径部82が形成されている。縮径部82の中心孔が噴射口81として機能する。噴射口81の断面積は、合流路25の断面積よりも小さいので、合流路25内で合流したスラリーSと加圧エアからなる固気液三相流は、噴射口81を通過するときに加速される。他の構成、作用及び効果については、実施例1と同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0045】
<実施例5>
次に、本発明を具体化した実施例5を
図9を参照して説明する。本実施例5のブラスト加工用噴射ガンEは、実施例1のアウタチューブ16の前端部を治具85を用いて偏平となるように変形させ、噴射口83の開口形状を長円形、即ち実施例1の噴射口19とは異なる形状にしたものである。治具85は平面からなる一対の押圧面を有しており、この一対の押圧面がアウタチューブ16の前端部を潰すように変形させる。この変形によって、合流路25の前端部の断面形状と噴射口83の開口形状が長円形となるので、スラリーSと加圧エアからなる固気液三相流は、噴射口83から偏平な噴射流Jとなって噴射される。他の構成、作用及び効果については、実施例1と同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0046】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施例1~5では、スラリーと高圧ガス(加圧エア)を混合した固気液三相流を噴射するウエットブラストに適用した場合について説明したが、本発明は、液体を含まないブラスト研磨材と高圧ガスを合流させて噴射するドライブラストにも適用することができる。
上記実施例1~5では、インナチューブとアウタチューブとの間の筒状の空間を研磨材流路とし、インナチューブの内部空間をガス流路としたが、これとは逆に、インナチューブとアウタチューブとの間の筒状の空間をガス流路とし、インナチューブの内部空間を研磨材流路としてもよい。
上記実施例1~5では、インナチューブの前端をアウタチューブの前端よりも後方に配置したが、インナチューブの前端とアウタチューブの前端を前後方向において同じ位置に配置してもよい。
上記実施例1~5では、アウタチューブとインナチューブの両方が可撓性を有する材料からなるが、アウタチューブとインナチューブのうちいずれか一方のチューブのみが可撓性を有する材料からなり、他方のチューブが可撓性を有しない材料からなっていてもよい。この場合は、屈曲した空間内でのブラスト加工はできないが、可撓性を有するチューブが振動することによって、ブラスト研磨材の詰まり防止することができる。
上記実施例1~5では、研磨材流路の断面積がガス流路の断面積よりも大きいが、研磨材流路の断面積は、ガス流路の断面積より小さくてもよく、ガス流路の断面積と同じでもよい。
上記実施例1~5では、アウタチューブの材料がポリウレタンからなるエラストマーであるが、アウタチューブの材料として、オレフィン系、スチレン系、塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系等のエラストマーを用いることができる。
上記実施例1~5では、インナチューブの材料がポリウレタンからなるエラストマーであるが、インナチューブの材料として、オレフィン系、スチレン系、塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアミド系等のエラストマーを用いることができる。
【0047】
実施例1~3に、実施例4のアウタチューブの噴射口を小径にする構成を適用してもよい。
上記実施例2では、1つのガンボディに4本の圧送路(アウタチューブとインナチューブ)を取り付けたが、1つのガンボディに取り付ける圧送路の本数は、2本、3本又は5本以上であってもよい。
実施例2において、複数のアウタチューブの前端部に、実施例3で開示したノズルを取り付けてもよい。
実施例3のノズルはスリット状の噴射口から偏平な噴射流を扇形に噴射するが、これに限らず、ノズルは、複数の噴射口からシャワー状の噴射流を噴射するものや、アウタチューブの前端部の軸線に対して噴射流を横向きに噴射するものや、アウタチューブの内径よりも小径の噴射口から細いストレート状の噴射流を噴射するものや、アウタチューブの外径寸法よりも幅広の帯状の噴射流を噴射するもの等であってもよい。
実施例2,4に、実施例5のアウタチューブの前端部を治具によって偏平に変形させる構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
A,B,C,D,E…ブラスト加工用噴射ガン
D…アウタチューブの内径寸法
L…インナチューブの前端からアウタチューブの前端までの長さ
S…スラリー(ブラスト研磨材)
10,40…ガンボディ
15…圧送路
16,80…アウタチューブ
17…インナチューブ
19,71、83…噴射口
22…ガス流路
23…研磨材流路
60…ノズル
76…アウタチューブの開口部