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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128635
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】光学レンズ系
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
G02B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026966
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 達也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕輝
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087LA06
2H087MA04
2H087PA06
2H087PA18
2H087PA19
2H087PB07
2H087PB08
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA32
2H087RA44
(57)【要約】
【課題】全長を短縮すると共に良好な光学性能を有する光学レンズ系を提供すること。
【解決手段】2枚の正メニスカスレンズ(L1,L2)と第1負レンズL3を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSTO、および、第1正レンズL5、第2負レンズL6fと第2正レンズL6rからなる接合レンズL6と最終正レンズL7を有する第2レンズ群G2が物体OBJの側から結像面IMGの側へ記載順に配設され、第1レンズ群G2の2枚の正メニスカスレンズ(L1,L2)と第2レンズ群G2の少なくとも1枚の正レンズにおけるd線屈折率ndおよびアッベ数νdが、nd>1.82、および、νd<44であって、全系の焦点距離fと第2レンズ群G2における最終レンズ面から結像面IMGまでの距離BFとしたとき、0.35<BF/f<0.75の光学条件を満たすように設定されていることを特徴とする光学レンズ系100である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から結像面側へ順に、正の屈折率を有する第1レンズ群、開口絞り、正の屈折率を有する第2レンズ群が配設され、
前記第1レンズ群は前記物体側から前記結像面側へ順に、前記物体側に凸面を向けた2枚の正メニスカスレンズと前記物体側に凸面を向けた負レンズとを有し、
前記第2レンズ群は、前記物体側から前記結像面側へ順に正レンズ、前記物体側へ凹面を向けた前記負レンズと前記正レンズからなる接合レンズ、および、最終正レンズを有し、
全系のd線における屈折率をnd、アッベ数をνdとした場合、
前記第1レンズ群における2枚の前記正メニスカスレンズと、前記第2レンズ群における少なくとも1枚の前記正レンズが、
nd>1.82、および、νd<44
なる条件式を満たし、前記全系の焦点距離をf、前記第2レンズ群における最終正レンズ面から前記結像面までの距離をBFとすると、
0.35<BF/f<0.75
なる条件式を満たすことを特徴とする光学レンズ系。
【請求項2】
前記第2レンズ群における、nd>1.82、および、νd<44の条件式を満たす少なくとも1枚の正レンズには、前記最終正レンズを含むことを特徴とする請求項1記載の光学レンズ系。
【請求項3】
前記第1レンズ群における2枚目の前記正メニスカスレンズと前記負レンズとにより接合レンズが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学レンズ系。
【請求項4】
前記第2レンズ群における前記最終正レンズが前記第2レンズ群において最大径寸法に形成されていることを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項記載の光学レンズ系。
【請求項5】
前記第1レンズ群には、前記開口絞り側に収差補正レンズがさらに配設されていることを特徴とする請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載の光学レンズ系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体側から結像面側へ順に、第1レンズ群、開口絞り、第2レンズ群を配設した光学レンズ系に関する。
【背景技術】
【0002】
写真及びビデオ撮影用の光学機器に用いられる交換レンズにおいて、いわゆるダブルガウス型の光学レンズ系の構成に関する提案が多数なされている。
例えば、特許文献1(特許第5217693号公報)においては、諸収差を良好に補正するために、第1レンズ群のうちの最も屈折率の高いレンズの条件を規定している。
また、特許文献2(特許第5966728号公報)においては、レンズ枚数を少なくし、且つ諸収差を良好に補正するために、第1レンズ群のうちの2つのレンズにおける曲率半径等を規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5217693号公報
【特許文献2】特許第5966728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示されている光学レンズ系は、少ないレンズ枚数で各種の収差を良好に補正できるとしているが、近年特に小型化の要請が大きくなっており、光学レンズ系の更なる小型化および高性能化が望まれているという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、全長を短縮して小型化を達成すると共に良好な光学性能を有する光学レンズ系の提供を目的としている。
【0006】
本発明は、物体側から結像面側へ順に、正の屈折率を有する第1レンズ群、開口絞り、正の屈折率を有する第2レンズ群が配設され、前記第1レンズ群は前記物体側から前記結像面側へ順に、前記物体側に凸面を向けた2枚の正メニスカスレンズと前記物体側に凸面を向けた負レンズとを有し、前記第2レンズ群は、前記物体側から前記結像面側へ順に正レンズ、前記物体側へ凹面を向けた前記負レンズと前記正レンズからなる接合レンズ、および、前記正レンズを有し、全系のd線における屈折率をnd、アッベ数をνdとした場合、前記第1レンズ群における2枚の前記正メニスカスレンズと、前記第2レンズ群における少なくとも1枚の前記正レンズが、nd>1.82、および、νd<44なる条件式を満たし、前記全系の焦点距離をf、前記第2レンズ群における最終レンズ面から前記結像面までの距離をBFとすると、0.35<BF/f<0.75なる条件式を満たすことを特徴とする光学レンズ系である。
【0007】
これにより、従来技術における光学系レンズに対して全長を短縮すると共に光学性能を向上させた光学レンズ系を提供することができる。
【0008】
また、前記第2レンズ群における、nd>1.82、および、νd<44の条件式を満たす少なくとも1枚の正レンズには、前記最終正レンズを含むことを特徴としてもよい。
【0009】
また、前記第1レンズ群における2枚目の前記正メニスカスレンズと前記負レンズとにより前記接合レンズが形成されていてもよい。
これにより、全長をさらに短縮することができる。
【0010】
また、前記第2レンズ群における最終レンズが前記第2レンズ群において最大径寸法に形成されていてもよい。
【0011】
また、前記第1レンズ群には、前記開口絞り側に収差補正レンズがさらに配設されていてもよい。
これにより、限られた空間の中で収差の補正をさらに良好にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明における光学レンズ系の構成によれば、従来構造の光学レンズ系に対して全長の短縮化および光学性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図2】第1実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図3】第2実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図4】第2実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図5】第3実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図6】第3実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図7】第4実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
図8】第4実施形態における光学レンズ系の無限遠時の縦収差図である。
図9】参考実施形態における光学レンズ系の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態における光学レンズ系は、写真及びビデオ撮影用の光学機器に用いられるものであって、特に3枚のレンズからなる第1レンズ群と、開口絞りと、4枚のレンズからなる第2レンズ群とを有する、いわゆるダブルガウス型の光学レンズ系である。
以下、各実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1に示す第1実施形態における光学レンズ系100は、物体OBJの側から結像面IMGの側に向かって順に配設された第1レンズ群G1、開口絞りSTOおよび第2レンズ群G2を具備する。
【0016】
本実施形態における第1レンズ群G1は、物体OBJの側から結像面IMGへ順に、第1正メニスカスレンズL1および第2正メニスカスレンズL2と、第1負レンズL3および収差補正レンズL4を有している。図1からも明らかなとおり、第2正メニスカスレンズL2(2枚目の正メニスカスレンズ)と第1負レンズL3は接合レンズに形成されている。第1正メニスカスレンズL1、第2正メニスカスレンズL2、第1負レンズL3および収差補正レンズL4は、いずれのレンズ面(1,2,3,4,5,6,7)も、レンズ中心側がレンズ外周縁側に対して物体OBJの側に膨出する凸面(湾曲面)に形成されている。
なお、レンズ面(1,2,3,4,5,6,7)の番号は、物体OBJの側から数えた番号である。このように、第1正メニスカスレンズL1、第2正メニスカスレンズL2、第1負レンズL3および収差補正レンズL4は、いずれも物体OBJの側に凸面を向けて配設されている。このようにして形成された第1レンズ群G1は正の屈折率を有している。
【0017】
このようにすべてのレンズ(L1~L4)をレンズ中心側がレンズ外周縁側に対して膨出する凸面に形成すると共に、物体OBJの側に凸面を向けて配設することにより、全てのレンズ(L1~L4)のレンズ中心側を一方向にオフセットできる。これにより、光軸方向における各レンズ(L1~L4)の配設間隔が最小化され、第1レンズ群G1の光軸方向長さを短くすることができる利点がある。また、第2正メニスカスレンズL2と第1負レンズL3とで接合レンズを形成しているため、両レンズの配設間隔をゼロにすることができ、収差補正レンズL4の追加配設による第1レンズ群G1の光軸方向長さの増加分の一部を相殺している。
【0018】
以上のような光学レンズ系100の構成を採用することで、光学レンズ系100の光軸方向の全長を短縮することが可能である。
【0019】
次に本実施形態における第2レンズ群G2について説明する。第2レンズ群G2は、第1レンズ群G1の結像面IMGの側に所要間隔をあけて配設された開口絞りSTOのさらに結像面IMGの側における所要間隔をあけた位置に配設されている。
本実施形態における第2レンズ群G2は、第1正レンズL5、接合レンズL6および最終正レンズL7が物体OBJの側から結像面IMGの側へ記載された順に配設されている。第2レンズ群G2における各レンズの面番号は、物体OBJの側から結像面IMGの側に向かって順に9,10,11,12,13,14,15である。第1正レンズL5と接合レンズL6とは所要間隔をあけて配設されており、接合レンズL6と最終正レンズL7は互いの凸部を突き合せた状態で配設されている。このようにして形成された第2レンズ群G2は正の屈折率を有している。
【0020】
第1正レンズL5は、物体OBJの側の面(面番号9)が光軸に対して略直交面をなすよう曲率半径に形成されていると共に結像面IMGの側の面(面番号10)がレンズ中心側がレンズ外周縁側に対してわずかに膨出する凸面に形成されている。第2レンズ群G2における接合レンズL6は、両凹面(面番号11,12)に形成された第2負レンズL6fと、第2負レンズL6fの結像面IMGの側の凹面(面番号12)に嵌合する両凸面(面番号12,13)に形成された第2正レンズL6rとにより形成されている。
このようにして形成された接合レンズL6は、凹面(面番号10)を物体OBJの側に向けると共に、凸面(面番号13)を結像面IMGの側に向けて配設されている。第2レンズ群G2における最終レンズである最終正レンズL7は、両凸面(面番号14,15)に形成されており、第2レンズ群G2において最大径寸法に形成されている。
【0021】
表1は本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データである。
【0022】
【表1】
【0023】
表1においてf、Fnoおよびωは、それぞれ、全系の焦点距離、Fナンバーおよび半画角を示す。また、物体OBJの側から数えたレンズ面の面番号をiとし、この面番号iは図1に記載した符号(数字)に一致している。この面番号(i)に対応するレンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)および各レンズの焦点距離f(i)の数値が表1に示されている。nd(i)およびνd(i)はd線(587.56nm)に対する数値である。軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚あるいは空気間隔を示す。なお、曲率半径R(i)と軸上面間隔D(i)の単位はmmである。面番号のOBJは物体を示し、同STOおよび同IMGはそれぞれ開口絞りおよび結像面を示す。
【0024】
表1に示すように、本実施形態における第1正メニスカスレンズL1と第2正メニスカスレンズL2、すなわち2枚の正レンズにおいて、ndおよびνdは、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。なお、本実施形態では収差補正レンズL4のndおよびνdにおいてもnd>1.82、およびνd<44の光学条件式が満たされている。
このため、本実施形態では、第1正メニスカスレンズL1および第2正メニスカスレンズL2には、高屈折率の硝材を用いる。
【0025】
また、表1に示すように、本実施形態における光学レンズ系100の第2レンズ群G2におけるそれぞれの正レンズにおいて、第1正レンズL5、第2正レンズL6rおよび最終正レンズL7のすべては、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。つまり、本実施形態においては、第2レンズ群G2における少なくとも1枚の正レンズにおいてnd>1.82、およびνd<44の光学条件式が満たされている。
このため、本実施形態では、第1正レンズL5、第2正レンズL6rおよび最終正レンズL7には、高屈折率の硝材を用いる。
【0026】
さらに本実施形態における光学レンズ系100は、光学レンズ系100の焦点距離をf(34.45mm)、第2レンズ群G2における最終正レンズL7の結像面IMGの側の面(面番号15:最終レンズ面)から結像面IMGまでの距離(バックフォーカス:ここでは15.879mm)をBFとすると、BF/f=0.461である。すなわち、0.35<BF/f<0.75の光学条件式が満たされている。なお、本実施形態の光学レンズ系100は、いわゆるAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載する光学機器に用いられる。
【0027】
このような光学レンズ系100における縦収差について図2を参照しながら説明する。図2における縦収差図は、左側から(a)球面収差図(波長656.27nm,587.56nm,435.83nm)、(b)非点収差図(波長587.56nm)、(c)歪曲収差図(波長587.56nm)である。なお、各図における横軸スケールは、±0.50mm,±0.50mm,±3.0%である。また、(b)非点収差図内におけるTは焦点のタンジェンシャル面(yz面方向)をあらわし、Sはサジタル面(xz面方向)をあらわしている。
【0028】
図2から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては球面収差補正と像面湾曲補正の結果が特に良好であり、解像度およびコントラストが高く、フレアの発生を抑えると共に、周辺像を明確にすることができる。
【0029】
(第2実施形態)
本実施形態における光学レンズ系100の説明においては、第1実施形態における光学レンズ系100と共通する構成については、第1実施形態で用いた符号を付すことによりここでの詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施形態における第1レンズ群G1は、第2正メニスカスレンズL2と第1負レンズL3が接合レンズに形成されておらず独立している点と、収差補正レンズL4の配設が省略されている点で第1実施形態における第1レンズ群G1の構成と異なっている。
このような第1レンズ群G1の構成によれば、第1レンズ群G1としての光軸方向長さの短縮および開口絞りSTOとの配設間隔の短縮が可能になる。なお、本実施形態においても第1レンズ群G1は、正の屈折率を有している。
【0031】
本実施形態における第2レンズ群G2は、接合レンズL6を構成する第2負レンズL6fと第2正レンズL6rの外径寸法が等しく形成されており、最終正レンズL7の径寸法が物体OBJの側に隣接する接合レンズL6の外径寸法と同一径法に形成されている。本実施形態における第2レンズ群G2の接合レンズL6は、第1実施形態における接合レンズL6に対して大幅に薄くすることができ、第2レンズ群G2の光軸方向長さの短縮が可能である。なお、本実施形態の第2レンズ群G2におけるBFは、第1実施形態におけるBFよりわずかに長くなるものの、第2レンズ群G2としての光軸方向長さは第1実施形態における第2レンズ群G2に対して短くすることが可能である。
【0032】
以上のような光学レンズ系100の構成を採用することで、光学レンズ系100の光軸方向の全長を短縮することが可能である。
【0033】
表2は本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データである。
【0034】
【表2】
【0035】
表2は表1と同形式である。本実施形態における光学レンズ系100においても、表2に示すように、第1レンズ群G1における第1正メニスカスレンズL1、第2正メニスカスレンズL2、すなわち2枚の正レンズは、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。
このため、本実施形態では、第1正メニスカスレンズL1および第2正メニスカスレンズL2には、高屈折率の硝材を用いる。
【0036】
第2レンズ群G2における最終正レンズL7は、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。したがって、第2レンズ群G2は少なくとも1枚の正レンズがnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たしている。
このため、本実施形態では、最終正レンズL7には、高屈折率の硝材を用いる。
【0037】
なお、本実施形態においては、第2レンズ群G2における正レンズ(L5,L6r,L7)のうち、最終正レンズL7にnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満足させているが、第1正レンズL5、第2正レンズL6r、最終正レンズL7のうちの少なくとも一枚が上記光学条件式を満たしていればよい。
【0038】
さらに本実施形態における光学レンズ系100は、光学レンズ系100の焦点距離をf(38.00mm)、第2レンズ群G2における最終正レンズL7の結像面IMGの側の面(面番号14:最終レンズ面)から結像面IMGまでの距離(19.299mm)をBFとすると、BF/f=0.508である。すなわち、0.35<BF/f<0.75の光学条件式が満たされている。なお、本実施形態の光学レンズ系100は、いわゆるAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載する光学機器に用いられる。
【0039】
このような光学レンズ系100における縦収差について図4を参照しながら説明する。図4における縦収差図は、図2と同様にあらわされている。図4から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては、球面収差補正が良好であり、解像度およびコントラストが高く、フレアの発生を抑えることができる。
【0040】
(第3実施形態)
本実施形態における光学レンズ系100の説明においては、第1実施形態および第2実施形態における光学レンズ系100と共通する構成については、第1実施形態および第2実施形態で用いた符号を付すことによりここでの詳細な説明は省略する。
【0041】
本実施形態における光学レンズ系100の構成は、図5に示すように第1実施形態と基本構成が共通しているが、第2レンズ群G2における接合レンズL6の具体的な構成が異なっている。すなわち、本実施形態における接合レンズL6は、両面(面番号11,12および面番号12,13)がいずれも結像面IMG側に湾曲する形状の第2負レンズL6fおよび第2正レンズL6rにより形成されている。また、第2負レンズL6fの外径寸法は第2正レンズL6rの外径寸法よりも小径に形成されている。さらには、最終正レンズL7は両面(面番号14,15)をいずれも結像面IMG側に湾曲する形状に形成している。このような構成を採用することにより、第2レンズ群G2の光軸方向長さを短縮させることができる。なお、本実施形態における第1レンズ群G1および第2レンズ群G2はいずれも正の屈折率を有している。
【0042】
以上のような光学レンズ系100の構成を採用することで、光学レンズ系100の光軸方向の全長を短縮することが可能である。
【0043】
表3は本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データである。
【0044】
【表3】
【0045】
表3は表1および表2と同様の形式である。本実施形態における光学レンズ系100においても、表3に示すように、第1レンズ群G1における第1正メニスカスレンズL1、第2正メニスカスレンズL2、すなわち2枚の正レンズは、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。
このため、本実施形態では、第1正メニスカスレンズL1および第2正メニスカスレンズL2には、高屈折率の硝材を用いる。
【0046】
第2レンズ群G2における第2正レンズL6rと最終正レンズL7は、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。すなわち、第2レンズ群G2では、少なくとも1枚以上の正レンズにおいてnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たしている。
このため、本実施形態では、第2正レンズL6rおよび最終正レンズL7には、高屈折率の硝材を用いる。
【0047】
なお、本実施形態においては、第2レンズ群G2における正レンズ(L5,L6r,L7)のうち、第2正レンズL6rと最終正レンズL7にnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満足させているが、第1正レンズL5、第2正レンズL6r、最終正レンズL7のうちの少なくとも一枚が上記光学条件式を満たしていればよい。
【0048】
さらに本実施形態における光学レンズ系100は、光学レンズ系100の焦点距離をf(36.50mm)、第2レンズ群G2における最終正レンズL7の結像面IMGの側の面(面番号15:最終レンズ面)から結像面IMGまでの距離をBF(20.010mm)とすると、BF/f=0.548である。すなわち、0.35<BF/f<0.75の光学条件式が満たされている。なお、本実施形態の光学レンズ系100は、いわゆるフルサイズのイメージセンサーを搭載する光学機器に用いられる。
【0049】
このような光学レンズ系100における縦収差について図6を参照しながら説明する。図6における縦収差図は、図2および図4に示す収差図と同形式である。図6から、本実施形態における光学レンズ系100はいずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては歪曲補正が良好であり、人間の視覚に忠実な画像の撮影が可能になる。
【0050】
(第4実施形態)
本実施形態における光学レンズ系100の説明においては、第1実施形態~第3実施形態における光学レンズ系100と共通する構成については、第1実施形態~第3実施形態で用いた符号を付すことによりここでの詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態における光学レンズ系100の構成は、図7に示すように第2実施形態と基本構成が共通しているが、第2レンズ群G2における第1正レンズL5と最終正レンズL7の具体的な形状が異なっている。すなわち、本実施形態における第1正レンズL5は両凸面形状(面番号8,9)に形成されており、最終正レンズL7の外径寸法が第2レンズ群G2の接合レンズの外径寸法よりも大径に形成されている。なお、本実施形態における第1レンズ群G1および第2レンズ群G2はいずれも正の屈折率を有している。
【0052】
表4は本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データである。
【0053】
【表4】
【0054】
表4は、表1、表2および表3と同形式である。本実施形態における光学レンズ系100においても、表4に示すように、第1レンズ群G1における第1正メニスカスレンズL1、第2正メニスカスレンズL2、すなわち2枚の正レンズは、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。
このため、本実施形態では、第1正メニスカスレンズL1および第2正メニスカスレンズL2には、高屈折率の硝材を用いる。
【0055】
第2レンズ群G2における第2正レンズL6rと最終正レンズL7は、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たすように設定されている。すなわち、第2レンズ群G2では、少なくとも1枚以上の正レンズがnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たしている。
このため、本実施形態では、第2正レンズL6rおよび最終正レンズL7には、高屈折率の硝材を用いる。
【0056】
なお、本実施形態においては、第2レンズ群G2における正レンズ(L5,L6r,L7)のうち、第2正レンズL6rと最終正レンズL7にnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満足させているが、第1正レンズL5、第2正レンズL6r、最終正レンズL7のうちの少なくとも一枚が上記光学条件式を満たしていればよい。
【0057】
さらに本実施形態における光学レンズ系100は、光学レンズ系100の焦点距離をf(42.00mm)、第2レンズ群G2における最終正レンズL7の結像面IMGの側の面(面番号14:最終レンズ面)から結像面IMGまでの距離をBF(22.180mm)とすると、BF/f=0.528である、0.35<BF/f<0.75の光学条件式を満たしている。なお、本実施形態の光学レンズ系100は、いわゆるフルサイズのイメージセンサーを搭載する光学機器に用いられる。
【0058】
以上のような光学レンズ系100の構成を採用することで、光学レンズ系100の光軸方向の全長を短縮することが可能である。
【0059】
このような光学レンズ系100における縦収差について図8を参照しながら説明する。図8における縦収差図は、図2図4および図6と同形式である。図8から、本実施形態における光学レンズ系100は、いずれの項目においても良好な収差補正が得られていること(良好な光学性能の具備)を確認できる。特に本実施形態においては球面収差補正と歪曲補正がいずれも極めて良好であり、解像度およびコントラストが高く、フレアの発生を抑えることができると共に人間の視覚に忠実な画像の撮影が可能になる。
【0060】
上述してきた第1実施形態~第4実施形態の光学レンズ系のように、第1レンズ群G1における高屈折率の2枚の正メニスカスレンズとして第1正メニスカスレンズL1および第2正メニスカスレンズL2を含むこととし、第2レンズ群G2における高屈折率の1枚の正レンズとして最終正レンズL7を含むこととすることで、いわゆるダブルガウス型の光学レンズ系の物体側と結像面側の両端のレンズを高屈折率のレンズで構成することとなり第1レンズ群G1および第2レンズ群G2の光軸方向の長さを短くできるとともに、球面収差および非点収差の補正を行うことができる。
【0061】
(参考実施形態)
次に参考実施形態における光学レンズ系100について説明する。参考実施形態においては、第1実施形態~第4実施形態における光学レンズ系100と共通する構成については、第1実施形態~第4実施形態で用いた符号を付すことによりここでの詳細な説明は省略する。
【0062】
参考実施形態における光学レンズ系100の構成は、図9に示すように第1実施形態と基本構成は共通しているものの、具体的な形状が異なっている。すなわち、接合レンズL6における第2負レンズL6fの両面(面番号11,12)と第2正レンズL6rの両面(面番号12,13)はいずれも結像面IMGの側が凸面に形成されている点で第1実施形態と構成を異にしている。なお、参考実施形態における第1レンズ群G1および第2レンズ群G2はいずれも正の屈折率を有している。
【0063】
表5は本実施形態における光学レンズ系100を構成する各レンズの面データである。
【0064】
【表5】
【0065】
表5は、表1、表2、表3および表4と同形式である。参考実施形態における光学レンズ系100は、第1レンズ群G1における収差補正レンズにおいてのみ、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たしており、正レンズについては1枚もnd>1.82、およびνd<44の光学条件式を満たしていない。
また、第2レンズ群G2における正レンズの一部である第1正レンズL5においてのみ、nd>1.82、およびνd<44の光学条件式が満たされている。
【0066】
ちなみに、参考実施形態における光学レンズ系100の第2レンズ群G2における最終正レンズL7の結像面IMGの側の面(面番号15:最終レンズ面)から結像面IMGまでの距離をBF(15.880mm)とすると、BF/f=0.432であり、0.35<BF/f<0.75の光学条件式が満たされている。なお、参考実施形態の光学レンズ系100は、いわゆるAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載する光学機器に用いられる。
【0067】
参考実施形態における光学レンズ系100についても第1実施形態~第4実施形態と同様にして縦収差の実験を行った結果は以下の通りである。
(a)球面収差図(波長656.27nm,587.56nm,435.83nm)については、球面収差が大きく曲がり、解像力が低下し、フレアが生じ、コントラストが低下する。
(b)非点収差図(波長587.56nm)については、像面湾曲が大きくなり、周辺像がセンサー平面上に結像しない。
(c)歪曲収差図(波長587.56nm)については、歪曲が大きくなり、見た目通りの写真が撮影できない。
【0068】
さらに、参考実施形態においては、以下のような問題が生じることが明らかになった。
センサーサイズをカバーする光量を確保できずAPS-Cやフルサイズのイメージセンサーで使用できない。
コマ収差が大きく発生し、 MTF性能が劣化する。
倍率色収差が大きくなり, 画面周辺に行くにつれて像に色にじみが出る。
収差補正が不十分で、特に近距離側での上記性能劣化が顕著になる。
前方のレンズ径が大きくなり、製品の最大径が太くなる。
レンズの曲率半径が小さくなり、加工に困難を伴う。または生産に多額のコストがかかる。
製造誤差の許容量が極端に少なくなり、生産性が伴わない。
【0069】
したがって、参考実施形態における光学レンズ系100のように、nd>1.82、およびνd<44を満足する正レンズを第1レンズ群G1および第2レンズ群G2においてそれぞれ1枚ずつとして、0.35<BF/f<0.75の光学条件を満足させただけでは、実施形態1~実施形態4における光学レンズ系100に比較して、上述したような問題があり、本発明が解決しようとする課題の解決手段になり得なかった。
【0070】
以上に説明したように、第1実施形態~第4実施形態にかかる光学レンズ系100の構成によれば、従来技術や参考実施形態における光学レンズ系100に対して光軸方向における全長をコンパクトにすることができると共に、収差性能も向上させることができている。
【0071】
複数の実施形態に基づいて本発明にかかる光学レンズ系100の構成ついて詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
100 光学レンズ系
G1 第1レンズ群
STO 開口絞り
G2 第2レンズ群
L1 第1正メニスカスレンズ
L2 第2正メニスカスレンズ
L3 第1負レンズ
L4 収差補正レンズ
L5 第1正レンズ
L6 接合レンズ
L6f 第2負レンズ
L6r 第2正レンズ
L7 最終正レンズ
nd 全系のd線における屈折率
νd アッベ数
f 全系の焦点距離
BF 第2レンズ群における最終レンズ面から結像面までの距離(バックフォーカス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9