(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128657
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ワイパーモジュール
(51)【国際特許分類】
B60S 1/04 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B60S1/04 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021026998
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 隆志
【テーマコード(参考)】
3D025
3D225
【Fターム(参考)】
3D025AB01
3D025AD03
3D025AE02
3D225AB01
3D225AD03
3D225AE02
(57)【要約】
【課題】質量・コスト増大につながるダイナミックダンパを設定することなく、こもり音の原因となるバックドア振動の低減を可能とする。
【解決手段】ワイパーモジュール20は、車両後方に設けられたバックドアパネルインナ10の中央部分に設けられる。ワイパーモジュール20は、ワイパーブレードを揺動させるワイパーモータ32を備えるワイパーモータユニット30と、ワイパーモータユニット30に締結されるとともにバックドアパネルインナ10にも締結されるブラケット40とを備える。ブラケット40は、三点でバックドアパネルインナ10に締結される。さらに、三点の締結点60A,60B,60Cで生成される三角形64から離隔してワイパーモータユニット30の重心62が位置するように、ワイパーモータユニット30がブラケット40に締結される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方に設けられたバックドアパネルの中央部分に設けられる、ワイパーモジュールであって、
ワイパーブレードを揺動させるワイパーモータを備えるワイパーモータユニットと、
前記ワイパーモータユニットに締結されるとともに前記バックドアパネルにも締結されるブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、三点で前記バックドアパネルに締結され、
前記三点の締結点で生成される三角形から離隔して前記ワイパーモータユニットの重心が位置するように、前記ワイパーモータユニットが前記ブラケットに締結される、
ワイパーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパーモジュールであって、
前記三点の締結点により鈍角を含む鈍角三角形が生成され、
前記ワイパーモータユニットの重心は、前記鈍角の対辺を挟んで、前記鈍角と対向配置される、
ワイパーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、バックドアに取り付けられるワイパーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の悪路走行中に車体が揺らされ、ボデー骨格を通して輻射パネルに振動が伝わり、それにより車内空間が膨張及び圧縮させられ、車室内にこもり音が発生する。こもり音を抑制するために、主要発音パネルであるバックドア振動を低減する必要がある。そのためバックドアにはダイナミックダンパ(動吸振器)が設けられることがある。
【0003】
例えば特許文献1では、バックドア後端部の左右いずれかの片寄った位置にリアワイパー装置が取り付けられ、該リアワイパー装置と左右方向で対称な位置のバックドア内部にダイナミックダンパを設定しバックドア振動を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ダイナミックダンパを設定することにより、バックドア振動の抑制をすることはできるが、バックドアの重量・コストが増大する課題がある。
【0006】
そこで本明細書では、質量・コストが増大するダイナミックダンパを設定することなくバックドア振動低減を実現する、ワイパーモジュールが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示されるワイパーモジュールは、車両後方に設けられたバックドアパネルの中央部分に設けられる。ワイパーモジュールは、ワイパーブレードを揺動させるワイパーモータを備えるワイパーモータユニットと、ワイパーモータユニットに締結されるとともにバックドアパネルにも締結されるブラケットとを備える。ブラケットは、三点でバックドアパネルに締結される。さらに、三点の締結点で生成される三角形から離隔してワイパーモータユニットの重心が位置するように、ワイパーモータユニットがブラケットに締結される。
【0008】
上記構成によれば、ブラケットをバネとしワイパーモータユニットをマスとしたバネ-マス系のダイナミックダンパをバックドアに構築可能となる。
【0009】
また上記構成において、三点の締結点により鈍角を含む鈍角三角形が生成されてよい。この場合、ワイパーモータユニットの重心は、鈍角の対辺を挟んで、鈍角と対向配置される。
【0010】
上記構成によれば、他の辺の脇に配置される場合と比較して、ワイパーモータユニットの慣性モーメントを大きく取ることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示されるワイパーモジュールによれば、ダイナミックダンパを設定することなく、こもり音の原因となるバックドア振動の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るワイパーモジュールが取り付けられたバックドアパネルを例示する車両背面図である。
【
図2】本実施形態に係るワイパーモジュールがバックドアパネルに取り付けられた時の様子を例示する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るワイパーモジュールを例示する単体斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るワイパーモジュールの締結点と重心を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1-
図4を用いて、本実施形態に係るワイパーモジュール20が説明される。なお
図1-
図4において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示され、車幅方向が記号RWで表される軸で示され、鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは車両前方を正方向とする。記号RWはRight Widthの略であり、幅方向軸RWは右幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
図1に示されているように、これらFR軸、RW軸、UP軸は互いに直交する。
【0014】
なお以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、本実施形態に係るワイパーモジュールの仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0015】
図1には、車両の背面図が例示される。車両背面には、車両後方に設けられるバックドアが設けられる。このバックドアは外側パネル材であるバックドアパネルアウタ(図示せず)と、内側パネル材であるバックドアパネルインナ10を備える。これらのパネル材は、例えばアルミパネル等の金属パネルから構成される。
【0016】
バックドアパネルインナ10は、車体18への取付点を3点備える。具体的には、バックドアパネルインナ10は、車体18への取付点として、パネル側ドアヒンジ12A,12Bとロッカ14を備える。
【0017】
パネル側ドアヒンジ12A,12Bは、バックドアパネルインナ10の上端に、車幅方向に間隔を空けて一対設けられ、車体18の後部開口上端に設けられた一対の車体側ドアヒンジ(図示せず)に枢動可能に取り付けられる。ロッカ14は、車体18の後部開口下端に設けられたストライカ(図示せず)と係合可能となっている。
【0018】
このようにバックドアパネルインナ10は、その上端と下端とを車体18との取付点としており、車両が揺らされると、この3点の取付点を支持点として、例えば車両前後方向に変形振動する。この振動において、取付点から離隔された、バックドアパネルインナ10の車両上下方向中央部分かつ車幅方向中央部分が、振動振幅(変形量)が最も大きくなる領域となる。
【0019】
バックドアパネルインナ10には、部品取り付けのための開口が複数形成される。例えばリアワイパー用のワイパーモジュール20が取り付けられるワイパー開口11、バックドアガラスが取り付けられる窓開口13、ならびに、テールランプ及びブレーキランプが取り付けられるランプ開口15がバックドアパネルインナ10に形成される。
【0020】
ワイパー開口11は、バックドアパネルインナ10の車両上下方向中央部分、かつ、車幅方向中央部分に形成される。後述されるように、このワイパー開口11にワイパーモジュール20が取り付けられる。つまりバックドアパネルインナ10の振動時に、その振動振幅(変形量)が最大となる領域にワイパーモジュール20が取り付けられる。本実施形態では、このワイパーモジュール20をダイナミックダンパとして利用することで、バックドアパネルインナ10の振動が抑制可能となる。
【0021】
図2には、バックドアパネルインナ10の、ワイパーモジュール20近傍の拡大図が例示される。ワイパーモジュール20は、バックドアパネルインナ10の車室側の面(紙面から見て裏側の面)に取り付けられる。ワイパーモジュール20は、ワイパーモータユニット30及びブラケット40を備える。
【0022】
ワイパーモータユニット30は、図示しないワイパーブレードを、バックドアガラス上で揺動させるための駆動ユニットである。ワイパーモータユニット30は、ワイパーモータ32、減速機構34、及びピボット軸36(出力軸)を含んで構成される。
【0023】
図示しないステアリングコラムに設けられたリアワイパースイッチがOFF状態からON状態に切り替わると、ワイパーモータ32が回転駆動する。ワイパーモータ32の駆動力は減速機構34を経由してピボット軸36を回転させる。ピボット軸36には図示しないワイパーリンクの一端が接続され、当該一端が回転されることで、ワイパーブレードがバックドアガラス上を往復揺動する。ワイパーリンクからワイパーブレードへの動力伝達経路は、既知であることからここでは省略される。
【0024】
図4には、ワイパーモータユニット30の重心62が例示される。重心62は、ワイパーモータユニット30の各部分に働く重力の合力の作用点(着力点)である。例えばワイパーモータユニット30の3次元形状及び材料がデータとして記憶された、3D-CADデータ等を用いて、ワイパーモータユニット30の重心62を求めることが出来る。
【0025】
ワイパーモータユニット30は、ブラケット40の締結点60A,60B,60Cで形成される三角形64から離隔するように、いいかえると当該三角形64の外に重心62が配置される。後述されるように、このような配置とすることで、ブラケット40のアーム42A,42B,42Cをバネとし、ワイパーモータユニット30をマスとするバネ-マス系が構築され、ワイパーモジュール20をダイナミックダンパとして利用することが可能となる。
【0026】
ワイパーモータユニット30は、ピン38によってブラケット40に締結される。ブラケット40は、ボルト50A~50C及びナット52A~52Cを介して、バックドアパネルインナ10にも締結される。
【0027】
ブラケット40は車両背面視で略T字型の支持部材であって、例えばアルミ板金等の金属板材から構成される。ブラケット40はバックドアパネルインナ10のワイパー開口11を跨ぐようにして架設される。
【0028】
ブラケット40は、三点にてバックドアパネルインナ10に締結される。すなわちブラケット40は、外側に延設されるアーム42A、車両下方向に延設されるアーム42B、及び車幅方向内側に延設される42Cを備える。
図3を参照して、これらアーム42A,42B,42Cの合流点から離隔された末端部には、C字形状のボルト孔44A,44B,44Cが形成される。
【0029】
図2を参照して、このボルト孔44A,44B,44Cとバックドアパネルインナ10に形成されたボルト孔(図示せず)とが軸合わせされる。これらのボルト孔及び当該ボルト孔と軸合わせされたナット52A,52B,52Cにボルト50A,50B,50Cが螺入されることで、ブラケット40がバックドアパネルインナ10に三点で締結される。ナット52A,52B,52Cは、例えばバックドアパネルインナ10の外側面(バックドアパネルアウタとの対向面)に溶接されたウェルドナットであってよい。
【0030】
ブラケット40は、アーム42A,42B,42Cの末端部(締結部)を除いて、バックドアパネルインナ10のワイパー開口11内に配置され、バックドアパネルインナ10から浮いた配置となっている。言い換えると、ブラケット40のみにてワイパーモータユニット30がバックドアパネルインナ10に支持される。
【0031】
図4には、ブラケット40の、バックドアパネルインナ10への締結点60A,60B,60Cが例示される。この締結点60A,60B,60Cは、例えばボルト孔44A,44B,44C(
図3参照)の中心点であってよく、
図4においてボルト50A,50B,50Cの軸心を通る点であってよい。
【0032】
図4に例示されるように、ブラケット40の締結点60A,60B,60Cで生成される三角形64から離隔されるようにして、ワイパーモータユニット30の重心62が配置される。このような配置とすることで、重心62が三角形64内に配置される場合と比較して、ワイパーモータユニット30による締結点60A,60B,60Cに対する慣性モーメントが大きくなり、ワイパーモータユニット30が振動し易くなる。
【0033】
例えば、ワイパーモータユニット30の重心62の、締結点60A,60B,60Cに対する離隔距離や、ブラケット40の板厚を調整することで、ワイパーモジュール20の共振周波数(固有振動数)を、バックドアパネルインナ10を含むバックドアパネルの共振周波数に近づけることが出来る。
【0034】
ワイパーモジュール20の共振周波数f0は、f0=√(k/(ML2))で表される。ここで、kはブラケット40の剛性で決まるバネ定数を示し、Mは重心62に代表されるワイパーモータユニット30の質量、Lは三角形64の中心から重心62までの距離を示す。
【0035】
例えば重心62を三角形64から離隔させることでスパンの長さLを増加させることができ、これによって共振周波数f0を従来よりも低下させ、バックドア共振に近接させることができる。これによりワイパーモジュール20をダイナミックダンパと作用させることが可能になる。
【0036】
なお、
図4を参照して、締結点60A,60B,60Cにより、締結点60Bにおける内角θが鈍角となるような鈍角三角形が形成される。ワイパーモータユニット30の重心62は、この鈍角の内角θの対辺L1を挟んで、内角θと対向配置される。
【0037】
このような配置とすることで、対辺L1と締結点60Bの距離を短くすることができる。例えばこれと比較して、重心62が、対辺L3を挟んで締結点60Aと対向する場合、対辺L3と締結点60Aの距離が長くなる。その結果、ブラケット剛性が高くなり、これによりワイパーモジュール20の共振周波数f0が高くなってしまい、ダイナミックダンパの効果が十分得られないおそれがある。
図4のように、三角形64の長辺L1を跨いで締結点60Bと重心62とを対向配置させ、重心62と締結点とを近接配置することで、ブラケット剛性が低くなる。例えばワイパーモジュール20の共振周波数f0がバックドアの共振周波数に近接する程度にまで低下される。その結果、ワイパーモジュール20をダイナミックダンパとして作用させることが可能になる。
【0038】
また、重心62は、三角形64の他の頂点、すなわち締結点60A,60Cからも十分に離隔されていることが好適である。例えば、長辺L1の中点付近の点と、締結点60Bとを結ぶ直線上に、重心62を配置することで、締結点60A,60Cからも十分な距離を持つことが出来る。
【符号の説明】
【0039】
10 バックドアパネルインナ、11 ワイパー開口、12A,12B パネル側ドアヒンジ、18 車体、20 ワイパーモジュール、30 ワイパーモータユニット、32 ワイパーモータ、34 減速機構、40 ブラケット、42A-42C アーム、60A-60C 締結点、62 重心、64 三角形。