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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012866
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】位置決め器具、位置決め器具セット
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/14 20060101AFI20220107BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F16B7/14 K
A63F7/02 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115000
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】396008576
【氏名又は名称】株式会社スリーストン
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】白石 光男
【テーマコード(参考)】
2C088
3J039
【Fターム(参考)】
2C088EA48
3J039AA03
3J039BB01
3J039CA01
3J039CA14
3J039DA01
(57)【要約】
【課題】対象物の取付けが可能であり、且つ鉛直方向に伸びる線状体の高さ方向に位置決め可能に移動可能とされた位置決め器具を、位置決め器具及び対象物の過度な勢いのついた落下を生じさせないように改良する。
【解決手段】線状体110に上部材130と下部材140とが取付けられる。操作により上部材130及び下部材140は第1状態と第2状態を採る。第1状態の上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。第2状態にある上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。下部材140の挙動は上部材130と上下逆となる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に伸びる所定の線状体に対して、前記線状体の長さ方向に沿って移動可能であり且つ前記線状体の長さ方向の適宜の位置に位置決め可能として取付けて用いられる上部材、及び前記上部材の下に位置する下部材を含んで構成される、前記上部材及び前記下部材の少なくとも一方に取付けられた所定の部材である対象物を、前記線状体に沿う所定の高さ位置に位置決め固定するために用いられる位置決め器具であって、
前記上部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である上貫通孔を備える部材である上本体と、前記上本体に設けられた、前記上本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える上摩擦体と、その操作により、前記上摩擦体を、前記上部材を下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記上部材の下方向への移動を規制するとともに、前記上部材を上方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記上摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記上部材の上方向への移動を許容する第1状態から、前記上部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記上部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記上部材に取付けられた上操作部材と、を備えているとともに、
前記下部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である下貫通孔を備える部材である下本体と、前記下本体に設けられた、前記下本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える下摩擦体と、その操作により、前記下摩擦体を、前記下部材を上方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記下部材の上方向への移動を規制するとともに、前記下部材を下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記下摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記下部材の下方向への移動を許容する第1状態から、前記下部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記下部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記下本体に取付けられた下操作部材と、を備えている、
位置決め器具。
【請求項2】
前記上部材と、前記下部材とが、一体とされている、
請求項1記載の位置決め器具。
【請求項3】
前記上操作部材は、前記上本体に対して下方向へ移動させることにより、前記上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、
前記下操作部材は、前記下本体に対して上方向へ移動させることにより、前記下摩擦体を前記第1状態から前記第2状態へ変化させるようになっている、
請求項1記載の位置決め器具。
【請求項4】
前記上操作部材は、前記上本体から上向きに突出しており、前記上本体に対して下向きに押し込むことにより、前記上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、
前記下操作部材は、前記下本体から下向きに突出しており、前記下本体に対して上向きに押し込むことにより、前記下摩擦体を前記第1状態から前記第2状態へ変化させるようになっている、
請求項3記載の位置決め器具。
【請求項5】
前記上部材は、前記上摩擦体を第1状態とする位置にあるように前記上操作部材に対して、前記上摩擦体を第2状態とする位置から前記上摩擦体を第1状態とする位置に向かう方向の力を常に与える弾性体である上弾性体を含んでいるとともに、
前記下部材は、前記下摩擦体を第1状態とする位置にあるように前記下操作部材に対して、前記下摩擦体を第2状態とする位置から前記下摩擦体を第1状態とする位置に向かう方向の力を常に与える弾性体である下弾性体を含んでいる、
請求項1記載の位置決め器具。
【請求項6】
前記上部材は、断面円形の前記上貫通孔を軸とした筒状の部材であり、前記上摩擦体は前記軸を囲んで配列される複数個の球であり、前記上操作部材は、前記上貫通孔に、前記上貫通孔の長さ方向に移動可能として挿入され、その移動に伴い複数の前記球を移動させるための前記球のそれぞれを収める孔をその壁面に有する、前記線状体を貫通させる孔を有する円筒状の部材であり、且つ、前記上部材の前記上貫通孔の長さ方向の一部には、上に向かってその径が狭くなる上テーパー部が設けられており、前記上操作部材が操作されていない状態では複数個の前記球が前記上テーパー部に位置することで前記上摩擦体が前記第1状態に、前記上操作部材が下方向に移動させられた状態では複数個の前記球が前記上テーパー部のより径の大きい部分か又は前記上貫通孔の前記上テーパー部以外の部分に位置することで前記上摩擦体が前記第2状態になるようになっているとともに、
前記下部材は、断面円形の前記下貫通孔を軸とした筒状の部材であり、前記下摩擦体は前記軸を囲んで配列される複数個の球であり、前記下操作部材は、前記下貫通孔に、前記下貫通孔の長さ方向に移動可能として挿入され、その移動に伴い複数の前記球を移動させるための前記球のそれぞれを収める孔をその壁面に有する、前記線状体を貫通させる孔を有する円筒状の部材であり、且つ、前記下部材の前記下貫通孔の長さ方向の一部には、下に向かってその径が狭くなる下テーパー部が設けられており、前記下操作部材が操作されていない状態では複数個の前記球が前記下テーパー部に位置することで前記下摩擦体が前記第1状態に、前記下操作部材が上方向に移動させられた状態では複数個の前記球が前記下テーパー部のより径の大きい部分か又は前記下貫通孔の前記下テーパー部以外の部分に位置することで前記下摩擦体が前記第2状態になるようになっている、
請求項3記載の位置決め器具。
【請求項7】
鉛直方向に伸びる長尺の棒と、前記棒の最上部に取付けられた、前記線状体を通過させる孔又は切り欠きを備える水平な板である上板と、前記棒の前記上板の下に取付けられた、前記線状体を通過させる孔又は切り欠きを備える水平な板である下板とを備えた操作棒を更に備えており、
前記操作棒が、前記上板の前記孔又は前記切り欠きと、前記下板の前記孔又は前記切り欠きとを前記線状体に通過させた状態で前記線状体に取付けられたときに、前記上板は前記上部材の上に、前記下板は前記下部材の下に位置するようになっており、前記操作棒を下方向に移動させることにより、前記上操作部材を、前記上本体に対して下方向へ移動させることと、前記操作棒を上方向に移動させることにより、前記下操作部材を、前記下本体に対して上方向へ移動させることができるようになっている、
請求項4記載の位置決め器具。
【請求項8】
前記棒の前記最上部付近に、前記上部材の前記上本体及び前記下部材の前記下本体が固定されているとともに、
前記操作棒は、前記上板及び前記下板を上下方向に移動させるための操作部材を更に備えている、
請求項7記載の位置決め器具。
【請求項9】
前記上板と前記下板とは互いに接続されており、前記操作部材を操作したときに、互いの距離を保ちながら、同時に上下方向に移動するようになっている、
請求項8記載の位置決め器具。
【請求項10】
前記操作部材は、前記棒に沿って上下に延びる棒状体である、
請求項8~9のいずれかに記載の位置決め器具。
【請求項11】
前記対象物は、前記操作棒に取付けられている、
請求項7~10のいずれかに記載の位置決め器具。
【請求項12】
鉛直方向に伸びるように配される線状体と、前記線状体の長さ方向に沿って移動可能であり且つ前記線状体の長さ方向の適宜の位置に位置決め可能として取付けて用いられる上部材、及び前記上部材の下に位置する下部材を含んで構成される位置決め器具とを含んで構成されるものであり、前記上部材及び前記下部材の少なくとも一方に取付けられた所定の部材である対象物を、前記線状体に沿う所定の高さ位置に位置決め固定するために用いられる位置決め器具セットであって、
前記上部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である上貫通孔を備える部材である上本体と、前記上本体に設けられた、前記上本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える上摩擦体と、その操作により、前記上摩擦体を、前記上部材を下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記上部材の下方向への移動を規制するとともに、前記上部材を上方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記上摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記上部材の上方向への移動を許容する第1状態から、前記上部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記上部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記上部材に取付けられた上操作部材と、を備えているとともに、
前記下部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である下貫通孔を備える部材である下本体と、前記下本体に設けられた、前記下本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える下摩擦体と、その操作により、前記下摩擦体を、前記下部材を上方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記下部材の上方向への移動を規制するとともに、前記下部材を下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記下摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記下部材の下方向への移動を許容する第1状態から、前記下部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記下部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記下本体に取付けられた下操作部材と、を備えている、
位置決め器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鉛直な線状体に沿って移動可能であり、所定の対象物が取付けられる位置決め器具であって、対象物を、線状体に沿う所定の高さ位置に位置決めして固定するためのものに主に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直方向に伸びる線状体の所定の位置に対象物を取付けること、また、対象物の位置を上下方向に移動させることが必要となる場合があり、そのような目的で、対象物の取付けが可能であり、且つ線状体の高さ方向に位置決め可能に移動可能とされた位置決め器具が用いられている。
対象物の例は、例えば、広告が印刷された板である広告板や、広告が印刷されたシート(例えば、紙や布)を張り渡した枠である。
【0003】
そのような位置決め器具は例えば、対象物を取付けるための何らかの手段を備えている。また、位置決め器具は、線状体を貫通させる孔を備えており、線状体をその孔に貫通させた状態で使用される。位置決め器具は、孔を通った線状体に案内され、線状体に沿って上下方向に移動することができる。
位置決め器具は通常、線状体に対してロックされる状態と、線状体に対するロックが解除される状態の2つの状態を採ることができる。線状体に対するロックが解除された状態で位置決め器具は線状体に沿って上下方向に移動させられ、位置決めすべき適当な位置に位置決め器具が至ったときに線状体に対するロックが行われる。それにより、位置決め器具に取付けられた対象物は、線状体に沿う所定の高さ位置に固定されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如き位置決め器具にも改良すべき点がある。
従来の位置決め器具は、上述したように、線状体に対するロックが行われる状態とロックが解除された状態を選択的に採れるようになっている。
しかしながら、位置決め器具の位置を線状体に沿って移動させようとして、位置決め器具を線状体に対してロックが行われている状態からロックが解除された状態へと切換えたとき、ロックが解除された位置決め器具が、過度な勢いで線状体に沿って落下するという事態が生じうる。位置決め器具自体の重さも存在するが、位置決め器具に取付けられた対象物の重さが大きい場合には、位置決め器具及び対象物が落下する速さは、危険を伴う程のスピードとなることもあり得る。
【0005】
本願発明は、対象物の取付けが可能であり、且つ鉛直方向に伸びる線状体の高さ方向に位置決め可能に移動可能とされた位置決め器具を、位置決め器具及び対象物の過度な勢いのついた落下を生じさせないように改良することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、上述の課題を解決するため、以下のような発明を提案する。
本願発明者が提案するのは、鉛直方向に伸びる所定の線状体に対して、前記線状体の長さ方向に沿って移動可能であり且つ前記線状体の長さ方向の適宜の位置に位置決め可能として取付けて用いられる上部材、及び前記上部材の下に位置する下部材を含んで構成される、前記上部材及び前記下部材の少なくとも一方に取付けられた所定の部材である対象物を、前記線状体に沿う所定の高さ位置に位置決め固定するために用いられる位置決め器具である。
つまり、本願発明における位置決め器具は、上部材と下部材という2つの部材を備えて構成される。なお、後述するように、上部材と下部材とは一体とされる場合もあり、この場合上部材と下部材は1つの部材を構成する。
また、本願発明における位置決め器具が取付けられる鉛直方向に伸びる線状体は、上下の両端が何かに固定されていても良いし、上端のみが何かに固定されて吊られた状態になっていても構わない。
また、本願においては、対象物の上部材及び下部材の少なくとも一方への取付けは、上部材及び下部材の少なくとも一方への直接的な取付けだけではなく、上部材及び下部材の少なくとも一方へ他の部品を介して間接的に取付けられる場合も含まれる。更に、本願においては、対象物の上部材及び下部材の少なくとも一方への取付けは、両者の相対位置が完全に固定される必要はなく、上部材及び下部材の少なくとも一方に対象物が直接的或いは間接的に係止される(一般的には、対象物が落下しないような状態で上部材及び下部材の少なくとも一方に係止される。)場合も含む。
そして、位置決め器具に含まれる前記上部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である上貫通孔を備える部材である上本体と、前記上本体に設けられた、前記上本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える上摩擦体と、その操作により、前記上摩擦体を、前記上部材を下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記上部材の下方向への移動を規制するとともに、前記上部材を上方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記上摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記上部材の上方向への移動を許容する第1状態から、前記上部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記上部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記上部材に取付けられた上操作部材と、を備えている。
また、位置決め器具に含まれる前記下部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である下貫通孔を備える部材である下本体と、前記下本体に設けられた、前記下本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える下摩擦体と、その操作により、前記下摩擦体を、前記下部材を上方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記下部材の上方向への移動を規制するとともに、前記下部材を下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記下摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記下部材の下方向への移動を許容する第1状態から、前記下部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記下部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記下本体に取付けられた下操作部材と、を備えている。
【0007】
上述したように、本願発明における位置決め器具は、上部材と下部材という2つの部材を含んで構成される。
上部材は、線状体を鉛直方向に貫通させる孔である上貫通孔を備える部材である上本体を備えている。上部材は、上本体の上貫通孔を線状体に貫通させた状態で線状体に取付けられ、上貫通孔を線状体に案内させつつ、線状体に沿って上下方向に移動可能となる。
上部材は、上本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える上摩擦体が設けられている。上部材には、また、上摩擦体の状態を切り替える上操作部材が取付けられている。上摩擦体が採りうる状態は第1状態と、第2状態である。第1状態は、上部材を下方向に移動させようとした場合に、上摩擦体が線状体に対して与える摩擦力が増大することで上部材の下方向への移動を規制するとともに、上部材を上方向に移動させようとした場合に、上摩擦体が線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで上摩擦体が線状体に与える所定の摩擦力に抗しての上部材の上方向への移動を許容する状態である。つまり、第1状態にある上部材は(正確には、「上部材に含まれる上摩擦体が第1状態にある上部材は」であるが、簡単のためにこのように記載した。以下も同様の記載を行うことがある。)、線状体に沿って、線状体から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。他方、第2状態は、上部材を上下方向に移動させようとした場合に、上摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで上部材の上下方向双方への移動を許容する状態である。つまり、第2状態にある上部材は、線状体に沿って、線状体から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。なお、上操作部材を操作していないときのいわゆるデフォルトでの状態では、上摩擦体は第1状態にある。
他方、下部材は、基本的に上部材と同じ構造であり、上部材と同じ機能を有しているが、概ね上部材と上下を反転させた構造となっている。下部材は、上部材の上下を反転させたものと完全に一致する構造であってもよい。下部材は、上部材における上貫通孔、上本体、上摩擦体、上操作部材に相当する、下貫通孔、下本体、下摩擦体、下操作部材を備えている。その結果、下部材における下摩擦体も、上部材における上摩擦体と同様に、第1状態と第2状態とを採ることになる。そして、第1状態にある下部材は、線状体に沿って、線状体から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。また、第2状態にある下部材は、線状体に沿って、線状体から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。なお、下操作部材を操作していないときのいわゆるデフォルトでの状態では、下摩擦体は第1状態にある。
位置決め器具をこのような上部材と下部材を含むものとすることによる利点は2つある。1つは、対象物の取付けが可能であり、且つ鉛直方向に伸びる線状体の高さ方向に位置決め可能に移動可能とされた位置決め器具を、位置決め器具及び対象物の過度な勢いのついた落下を生じさせないようにすることができる、という点である。
この位置決め器具が線状体の所定高さに位置決めされた状態にあるとき(つまり線状体に対して固定されているとき)、位置決め器具に含まれている上部材における上摩擦体は、デフォルトの第1状態にある。したがって、このとき、上部材は、線状体に沿って、線状体から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。また、位置決め器具が線状体に対して固定されているとき、位置決め器具に含まれている下部材における下摩擦体は、デフォルトの第1状態にある。したがって、このとき、下部材は、線状体に沿って、線状体から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。第1状態にある上部材は下方向に移動できず、第1状態にある下部材は下方向に移動できない。それにより、この位置決め器具は、上操作部材も下操作部材も操作されていない状況では、下部材が上方向に移動できないから上方向には移動できず、上部材が下方向に移動できないから下方向にも移動できない。したがって、位置決め器具は、結果として線状体に対して上下方向のいずれにも移動することができないから、線状体に対して固定された状態となる。
この位置決め器具を線状体に対して下方向に移動させる場合には、上部材における上操作部材を操作して、上部材における上摩擦体を第2状態とする。そうすると、上部材は、線状体に沿って上下方向のどちらにも移動することができるようになる。他方、下部材における下摩擦体は、デフォルトの第1状態にあるから、下部材は、線状体に沿って、線状体から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない状態となる。都合、上部材と下部材とを含む位置決め器具の全体は、下部材が線状体から受ける幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるようになる。下部材が線状体から受ける「幾らかの摩擦抵抗」の大きさを適切な範囲とするように設計する必要があるが、そうすることにより、対象物が取付けられた位置決め器具は、下方向に移動するときにおいて、過度な勢いのついた落下を生じさせないようにすることができる。
この位置決め器具を線状体に対して上方向に移動させる場合には、下部材における下操作部材を操作して、下部材における下摩擦体を第2状態とする。そうすると、下部材は、線状体に沿って上下方向のどちらにも移動することができるようになる。他方、上部材における上摩擦体は、デフォルトの第1状態にあるから、上部材は、線状体に沿って、線状体から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない状態となる。都合、上部材と下部材とを含む位置決め器具の全体は、上部材が線状体から受ける幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるようになる。このとき、位置決め器具に含まれる上部材は下方向への移動が規制されているから、都合、対象物が取付けられた位置決め器具は、上方向に移動するときにおいて、予期せぬ落下を生じることがない。
このように、本願発明の位置決め器具を用いれば、位置決め器具が上方向に移動するときにおいても、下方向に移動するときにおいても、位置決め器具及び対象物の過度な勢いのついた落下を生じさせないようにすることができる。
そして、本願発明の位置決め器具の利点の2つ目は、製造コストを低廉としやすいということである。上述したように、上部材と下部材とは、互いに上下逆さまの関係で用いることを前提とすれば、完全に同じものでも良い。そうすることにより、位置決め器具の製造コストを下げることができるのは自明であろう。後述するように、上部材と下部材とは一体とすることもできるが、そうすると上部材から下部材に跨る部品(例えば、上本体と下本体とが一体となり、上部材から下部材に跨る構成を採用しうる。)も生じうる。とはいえ、上部材における上摩擦体、及び上操作部材と、下部材における下摩擦体、及び下操作部材は同じ部品を使い回すことが可能であるから、やはり本願発明の位置決め器具の製造コストは一定の範囲で抑制可能である。
【0008】
上述したように、本願発明の位置決め器具は、上部材と下部材とを含む。上部材と下部材とは既に述べたように別体とすることもできるが、一体とされていても良い。
上部材と下部材とを一体とすることにより、位置決め器具の扱いやすさが向上する。上部材と下部材とを一体とする場合当然に、両者に跨る部品が出てくる場合がある。例えば、上本体と下本体とを一体の部品とすることにより、上部材と下部材とを一体とすることができる。
【0009】
上述したように、本願発明の位置決め器具は、上部材の上操作部材を操作して上摩擦体を第1状態から第2状態とすることにより、線状体に沿う下方向の移動を行えるようになり、下部材の下操作部材を操作して下摩擦体を第1状態から第2状態とすることにより、線状体に沿う上方向の移動を行えるようになる。
ここで、前記上操作部材は、前記上本体に対して下方向へ移動させることにより、前記上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、前記下操作部材は、前記下本体に対して上方向へ移動させることにより、前記下摩擦体を前記第1状態から前記第2状態へ変化させるようになっていてもよい。こうすると、上操作部材の移動の方向と、それにより位置決め器具が線状体に沿って移動する方向(下向き)とが一致し、且つ下操作部材の移動の方向と、それにより位置決め器具が線状体に沿って移動する方向(上向き)とが一致する。それにより作業者は、位置決め器具の直感的な操作が可能となるだけでなく、上操作部材又は下操作部材に力を加えた方向にそのまま位置決め器具の全体が移動するため、位置決め器具の線状体に沿う移動を楽に行えるようになる。
上操作部材が、上本体に対して下方向へ移動させることにより、上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、下操作部材が、下本体に対して上方向へ移動させることにより、下摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっている場合、例えば、前記上操作部材は、前記上本体から上向きに突出しており、前記上本体に対して下向きに押し込むことにより、前記上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、前記下操作部材は、前記下本体から下向きに突出しており、前記下本体に対して上向きに押し込むことにより、前記下摩擦体を前記第1状態から前記第2状態へ変化させるようになっていてもよい。
上部材における上本体の上側から上方に突出する上操作部材を下方に押し下げるのは作業者にとって操作が楽であり、下部材における下本体の下側から下方に突出する下操作部材を上方に押し上げるのも作業者にとって操作が楽である。このような構成を採用することにより、作業者は上操作部材と下操作部材とを直感的に操作することができるようになるとともに、位置決め器具の線状体に沿う移動を楽に行えるようになる。
【0010】
本願発明の位置決め装置における前記上部材は、前記上摩擦体を第1状態とする位置にあるように前記上操作部材に対して、前記上摩擦体を第2状態とする位置から前記上摩擦体を第1状態とする位置に向かう方向の力を常に与える弾性体である上弾性体を含んでいるとともに、前記下部材は、前記下摩擦体を第1状態とする位置にあるように前記下操作部材に対して、前記下摩擦体を第2状態とする位置から前記下摩擦体を第1状態とする位置に向かう方向の力を常に与える弾性体である下弾性体を含んでいてもよい。
こうすることにより、上部材における上摩擦体と下部材における下摩擦体との双方を、上操作部材と下操作部材とに操作が行われていない、デフォルトの状態で、確実に第1状態とすることができるようになる。
【0011】
本願発明の位置決め器具は、鉛直方向に伸びる長尺の棒と、前記棒の最上部に取付けられた、前記線状体を通過させる孔又は切り欠きを備える水平な板である上板と、前記棒の前記上板の下に取付けられた、前記線状体を通過させる孔又は切り欠きを備える水平な板である下板とを備えた操作棒を更に備えていてもよい。そして、前記操作棒が、前記上板の前記孔又は前記切り欠きと、前記下板の前記孔又は前記切り欠きとを前記線状体に通過させた状態で前記線状体に取付けられたときに、前記上板は前記上部材の上に、前記下板は前記下部材の下に位置するようになっており、前記操作棒を下方向に移動させることにより、前記上操作部材を、前記上本体に対して下方向へ移動させることと、前記操作棒を上方向に移動させることにより、前記下操作部材を、前記下本体に対して上方向へ移動させることができるようになっていてもよい。
かかる操作棒は、「上操作部材は、上本体から上向きに突出しており、上本体に対して下向きに押し込むことにより、上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、下操作部材は、下本体から下向きに突出しており、下本体に対して上向きに押し込むことにより、下摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっている場合」に使用可能である。
「上操作部材は、上本体から上向きに突出しており、上本体に対して下向きに押し込むことにより、上摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっているとともに、下操作部材は、下本体から下向きに突出しており、下本体に対して上向きに押し込むことにより、下摩擦体を第1状態から第2状態へ変化させるようになっている場合」においては、操作棒を下方に引き下げると、上板の下面が上操作部材の上端を下方に押し下げることにより、上摩擦体は第1状態から第2状態に変化し、且つ操作棒を上方に持ち上げると、下板の上面が下操作部材の下端を上方に押し上げることにより、下摩擦体は第1状態から第2状態に変化する。
このような操作棒は、上部材及び下部材を含む位置決め器具が、作業者の手の届かない高さにある場合に有効である。作業者は、操作棒を下方に引き下げることにより位置決め器具を線状体に沿って下方に移動させることができ、また、操作棒を上方に持ち上げることにより位置決め器具を線状体に沿って上方に移動させることができるようになる。
前記棒の前記最上部付近に、前記上部材の前記上本体及び前記下部材の前記下本体が固定されているとともに、前記操作棒は、前記上板及び前記下板を上下方向に移動させるための操作部材を更に備えていてもよい。この場合における上部材の上本体及び下部材の下本体と、棒との固定は、両者の相対的な位置関係が変わらないのであれば係止でも良い。このような操作棒を用いる場合、操作棒の全体(或いは棒)ではなく、操作部材を操作することにより上板及び下板を上下方向に移動させ、それにより上操作部材を下方向に押し込むか、下操作部材を上方向に押し上げることになる。そのとき、上部材が操作棒の棒に対して固定されているので、上板により上操作部材を下方向に押圧するときに上部材が下方に逃げようとすることを防ぐことが可能となるので、上板で上操作部材を確実に押し下げられるようになる。同様に、下部材が操作棒の棒に対して固定されているので、下板により下操作部材を上方向に押圧するときに下部材が上方に逃げようとすることを防ぐことが可能となるので、下板で下操作部材を確実に押し上げられるようになる。操作部材の操作によって上操作部材を下方に押し下げたら、操作棒全体(或いは棒)を下方に移動させることにより、位置決め器具の全体を下方に移動させることができる。操作部材の操作によって下操作部材を上方に押し上げたら、操作棒全体(或いは棒)を上方に移動させることにより、位置決め器具の全体を上方に移動させることができる。
操作棒が操作部材を備える場合、前記上板と前記下板とは互いに接続されており、前記操作部材を操作したときに、互いの距離を保ちながら、同時に上下方向に移動するようになっていてもよい。操作部材は、上板の操作のためのものと、下板の操作のためのものの2つを準備しても良いが、上板と下板とを接続することにより、1つの操作部材で上板と下板の双方を操作できるようになる。前記操作部材は、前記棒に沿って上下に延びる棒状体であってもよい。棒状体である操作部材は、互いに接続された上板及び下板のどこか(一般的には下板のどこか)適当な箇所に接続することができる。そうすれば、操作部材を上下させればそれに応じて、上板と下板が上下方向に同時に移動することになる。
前記対象物は、前記操作棒に取付けられていてもよい。上述したように、対象物は上部材及び下部材の少なくとも一方に間接的に取付けられていても良い。対象物を操作棒に取付けるのは、そのような間接的な対象物の取付けの一態様である。対象物の操作棒に対する取付けは、固定的なものではなく係止でもよい。
また、上述したように、対象物は上部材及び下部材の少なくとも一方に固定的に取付けられなくても良く、それらの少なくとも一方に係止されるだけでも良い。そして、操作棒を用いる場合、操作棒はその上板の下面で上部材に係止される。このように、本願発明では、上部材及び下部材の少なくとも一方に他の部材を介して間接的に対象物が取付けられる場合においては、当該他の部材は、対象物と同様に、上部材及び下部材の少なくとも一方に固定的に取付けられず、係止されるだけでも良い。
【0012】
上部材と下部材とはともに上述したような構成であり、大雑把にいえばともに、線状体に上下動可能でまた適宜な位置に位置決めして固定可能であり、それを行うために、上述した第1状態と第2状態を上摩擦体と下摩擦体とに採らせることが可能となっていれば良い。
例えば、前記上部材は、断面円形の前記上貫通孔を軸とした筒状の部材であり、前記上摩擦体は前記軸を囲んで配列される複数個の球であり、前記上操作部材は、前記上貫通孔に、前記上貫通孔の長さ方向に移動可能として挿入され、その移動に伴い複数の前記球を移動させるための前記球のそれぞれを収める孔をその壁面に有する、前記線状体を貫通させる孔を有する円筒状の部材であり、且つ、前記上部材の前記上貫通孔の長さ方向の一部には、上に向かってその径が狭くなる上テーパー部が設けられており、前記上操作部材が操作されていない状態では複数個の前記球が前記上テーパー部に位置することで前記上摩擦体が前記第1状態に、前記上操作部材が下方向に移動させられた状態では複数個の前記球が前記上テーパー部のより径の大きい部分か又は前記上貫通孔の前記上テーパー部以外の部分に位置することで前記上摩擦体が前記第2状態になるようになっていてもよい。
また、前記下部材は、断面円形の前記下貫通孔を軸とした筒状の部材であり、前記下摩擦体は前記軸を囲んで配列される複数個の球であり、前記下操作部材は、前記下貫通孔に、前記下貫通孔の長さ方向に移動可能として挿入され、その移動に伴い複数の前記球を移動させるための前記球のそれぞれを収める孔をその壁面に有する、前記線状体を貫通させる孔を有する円筒状の部材であり、且つ、前記下部材の前記下貫通孔の長さ方向の一部には、下に向かってその径が狭くなる下テーパー部が設けられており、前記下操作部材が操作されていない状態では複数個の前記球が前記下テーパー部に位置することで前記下摩擦体が前記第1状態に、前記下操作部材が上方向に移動させられた状態では複数個の前記球が前記下テーパー部のより径の大きい部分か又は前記下貫通孔の前記下テーパー部以外の部分に位置することで前記下摩擦体が前記第2状態になるようになっていてもよい。
【0013】
本願発明者は、本願発明の一態様として、ここまでに説明したいずれかの位置決め器具に、位置決め器具を取付けるための線状体を加えた位置決め器具セットをも提案する。位置決め器具セットの作用効果は、それに含まれる位置決め器具の作用効果に等しい。
一例となる位置決め器具セットは、鉛直方向に伸びるように配される線状体と、前記線状体の長さ方向に沿って移動可能であり且つ前記線状体の長さ方向の適宜の位置に位置決め可能として取付けて用いられる上部材、及び前記上部材の下に位置する下部材を含んで構成される位置決め器具とを含んで構成されるものであり、前記上部材及び前記下部材の少なくとも一方に取付けられた所定の部材である対象物を、前記線状体に沿う所定の高さ位置に位置決め固定するために用いられる位置決め器具セットである。
そして、位置決め器具セットに含まれる位置決め器具における前記上部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である上貫通孔を備える部材である上本体と、前記上本体に設けられた、前記上本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える上摩擦体と、その操作により、前記上摩擦体を、前記上部材を下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記上部材の下方向への移動を規制するとともに、前記上部材を上方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記上摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記上部材の上方向への移動を許容する第1状態から、前記上部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記上摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記上部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記上部材に取付けられた上操作部材と、を備えている。
位置決め器具セットに含まれる位置決め器具における前記下部材は、前記線状体を鉛直方向に貫通させる孔である下貫通孔を備える部材である下本体と、前記下本体に設けられた、前記下本体を貫通している前記線状体に対して摩擦力を与える下摩擦体と、その操作により、前記下摩擦体を、前記下部材を上方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が増大することで前記下部材の上方向への移動を規制するとともに、前記下部材を下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して与える摩擦力が変化しないことで前記下摩擦体が前記線状体に与える所定の摩擦力に抗しての前記下部材の下方向への移動を許容する第1状態から、前記下部材を上下方向に移動させようとした場合に、前記下摩擦体が前記線状体に対して付勢されていないことで前記下部材の上下方向双方への移動を許容する第2状態へ変化させる、前記下本体に取付けられた下操作部材と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願の第1実施形態による島の斜視図。
図2図1に示した島に取付けられる上部材の(A)分解斜視図と、(B)斜視図。
図3図2に示した上部材の第1状態にあるときの一部破断図。
図4図2に示した上部材の第2状態にあるときの一部破断図。
図5図1に示した島に取付けられる下部材の第1状態にあるときの一部破断図。
図6図1に示した広告梁付近の(A)側面図と、(B)正面図。
図7図1に示した広告梁の他の例の正面図。
図8】操作棒の斜視図。
図9】操作棒の使用状態を示す、広告梁付近の正面図。
図10】他の例の操作棒の使用状態を示す、広告梁付近の正面図。
図11】第2実施形態で使用される位置決め部材の一部破断図。
図12】第2実施形態で使用される位置決め部材及び操作棒の斜視図。
図13図12に示した位置決め部材付近の拡大側面図(操作棒に関しては断面図)。
図14】第2実施形態で使用される位置決め部材及び操作棒の斜視図(操作部材が下がった状態)。
図15】第2実施形態で使用される位置決め部材及び操作棒の斜視図(操作部材が上がった状態)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための第1、及び第2実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態と第2実施形態とで、共通する対象には共通の符号を付すものとし、共通する説明は場合によって省略するものとする。
【0016】
≪第1実施形態≫
以下、図面を参照しつつ、第1実施形態の位置決め器具セット(位置決め器具セットには位置決め器具が含まれる)について説明する。
この実施形態の位置決め器具セットは、パチンコ遊技機(以下、単に「遊技機」という。)が多数設置される遊技場(ホール)にて使用される。
【0017】
遊技場において、遊技機は、島と通称される構造物に取付けられる。以下、簡単に、その剛性を担保するための基本的な構成を中心として、島の構成の概略について説明する。
島10は、金属製であることもあるが、多くの場合は木製であり、遊技機20を多数並列に取付けられるような構造となっている。多くの場合、島10の両面に遊技機20が取付けられる。
島10には遊技機20の他に、遊技用の玉を作業者に貸し出す玉貸機、遊技機の状態を作業者やホールの店員に知らせる呼び出しランプ、玉貸機及び遊技機に玉を供給し、また、遊技機から外れ玉を回収して玉を循環させるための玉の循環機構、などが必要に応じて適宜取付けられるが、これらについての図示も省略する。
島10は、島10の土台となる、金属製の棒を矩形に組合せて作られたベース11と、ベース11の幅方向の両端付近からそれぞれ鉛直上向きに伸びる支柱12とを備えている。ベース11は、平行に例えば等間隔で複数配列される。
複数配列されるベース11の幅方向の両端にそれぞれ支柱12が設けられていることもあり、支柱12は、ベース11の間隔に応じた所定の間隔で、島10の長さ方向に沿って2列に配列されることになる。そして、同じ列に属する隣接する支柱12の間に、遊技機20が配置される。これには限られないが、この実施形態では、隣接する2本の支柱12の間に遊技機20が2つずつ配列される。図1では図示を省略しているが、島10の奥側にも、島10の手前側に配列されるのと同様の態様で、遊技機20が配列される。
同じ列に属する支柱12は、水平方向に伸びる梁13、上板14、テーブル15などにより互いに連結されている。梁13は、必ずしもこの限りではないが、長尺の板状である。上板14、テーブル15も長尺の板状である。
島10が備えるテーブル15は、足下(床)から70~80cm程度の高さに水平に取付けられている。テーブル15は、その上に、遊技機20を載置するためのものである。テーブル15を構成する板材の幅は、遊技機20を囲む後述する枠体をテーブル15に余裕をもって載せられるように、枠体の下側の板の幅よりも大きくされている。テーブル15から梁13までの距離は、遊技機20を収めた後述の枠体の高さよりも僅かに大きくされている。
テーブル15の上には遊技機20が載置される。テーブル15に載置される遊技機20は、公知或いは周知のように、枠と通称される部材である枠体21に囲まれた状態とされている。枠体21は、4枚の板材を、正面視した遊技機20よりも一回り大きな矩形に組んで構成されている。遊技機20はその枠体21の中に嵌め込まれ、枠体21に固定された状態で枠体21ごとテーブル15の上に載置され、テーブル15と梁13との間に収まる。この状態で、遊技機20を収めた枠体21は、公知或いは周知の方法で、梁13やテーブル15に固定されている。
図1では2つの遊技機20が横並びで島10に取付けられている。しかしながら、島10の長さはもっと長い場合が通常であり、1つの島10に横並びに取付けられる遊技機20の数ももっと多いことが通常である。
【0018】
以上で説明した島10及び遊技機20はいずれも、公知或いは周知のものであり、又は公知或いは周知のもので良い。
この実施形態における位置決め器具セットは、遊技機20の前側に、広告等を吊るすために用いられる。より詳細には、広告は、隣接する遊技機20同士の間に、島10の長さ方向に直交するような向きで配される。つまり、位置決め器具セットは、隣接する遊技機20同士の間に位置することになる。
本来であれば、隣接する遊技機20同士の間のすべての箇所、或いは大半の箇所に広告等を設けるべきであるが、図1では、簡単のために、2つの遊技機20の間の1箇所にのみ広告を設ける場合を図示している。
【0019】
広告等を設けるための仕組みとして、この実施形態の島10には以下のものが付加されている。
まず、支持アーム200である。支持アーム200は、後述する上部材及び下部材と、広告梁、仕切り梁等を、線状体によって吊り下げるためのアームである。支持アーム200は、島10のいずれかの部分、例えば、これには限られないがこの実施形態では上板14の幅方向の端の部分から鉛直上向きに延びる縦アーム210と、縦アームの210先端から島10の長さ方向に垂直な方向で水平に延びる横アーム220とからなる。縦アーム210、横アーム220ともに、この実施形態では金属製の棒状体でできている。縦アーム210と島10との固定方法、縦アーム210と横アーム220との固定方法は適宜の技術によればよく、公知技術、或いは周知技術をそれら固定に応用することができる。横アーム220の先端は、後述する線状体を吊り下げるのに相応しい、隣接する2つの遊技機20の間の島10から幾らか離れた位置の真上に位置することになる。横アーム220の先端の高さは、例えば、2.5m程度となり、通常の背丈の人間では作業を行うのが難しい高さとなる。
【0020】
横アーム220の先端と、基端付近の遊技機20よりも前方に位置する所定の位置から、線状体110が吊り下げられている。両線状体110、及びそれに取付けられる、後述する上部材及び下部材の構成は、両線状体110において、特に言及しない限り同じである。
線状体110の下端は床にまで及び、そして床と固定されていても構わないが、この実施形態の線状体110の下端は、床から浮いた状態となっており、固定されない自由端となっている。線状体110の下端は、後述する仕切り板の上端が位置することが予定された高さよりも若干低い位置にまで及んでいる。必ずしも必要ではないが、線状体110の下端には、後述する下部材が線状体110の下端から脱落するのを防止するため、図示を省略の抜け止部が設けられている。抜け止部は、公知或いは周知技術によって構成することが可能であり、大雑把にいえば、線状体110の径をそれより上の太さが一定の部分の径よりも太くすることによって構成されている。抜け止部は、例えば、線状体110の下端を1回から数回折り返して適当な金具でカシメたり、線状体110の下端に数cm程度の長さの棒状体の中央を固定したりすることによって構成することができる。
線状体110は、それに吊り下げられるものの荷重に耐えられる程度の強靭さがあれば良い。また、その表面は適度な粗面であるのが好ましく、そうすることにより、後述する上摩擦体及び下摩擦体との摩擦力を大きくしやすい。線状体110はこれには限られないが、公知或いは周知のワイヤで構成することができる。ワイヤである線状体110は、市販のもので十分である。
【0021】
線状体110には、上部材130と下部材140とが取付けられている。上部材130は、下部材140に対して相対的に上に位置する。
上部材130の構成について説明する。
図2(A)に上部材130の分解図を、同(B)に線状体110に取付けられた状態の上部材130の斜視図をそれぞれ示す。また、図3図4に、上部材130の破断図を示す。なお、図3、4では、後述する外筒はその全体において軸を通る平面で破断された状態が、後述する内筒は、図3、4の右半分において上記平面と同じ平面で破断された状態が示されている。
【0022】
上部材130は、全体としてこれには限られないがこの実施形態では筒状であり、これには限られないがより詳細には円筒形状である。上部材130はすべて金属製であり、例えば鉄製である。
上部材130は、外筒131、内筒132、球133、弾性バネ134を備えて構成されている。
外筒131は、本願発明でいう上本体に相当する。外筒131は筒状である。筒状とされた外筒131の中には外筒131を長さ方向に貫く孔が存在するが、この孔が本願発明で言う上貫通孔に相当する。筒状とされた外筒131を貫くその孔の内部には内筒132が挿入されるようになっている。外筒131の外周面には溝131Aが切られている。
外筒131の内径は基本的には全体として一定である。しかしながら、外筒131の内周面のうち、上方の一定範囲には、その上方に向けて徐々に内径が小さくなっていくようなテーパーの与えられたテーパー部131Bが設けられている。テーパー部131Bが終わる部分より下の部分においては、外筒131の内周面の径は一定となっている。
外筒131の内周面の下端には、断面形状がリング状(円環状)の係止部131Cが設けられている。係止部131Cの内側に開いた孔は、内筒132の、後述する内筒後端部を案内するためのものであり、内筒後端部の外形よりも若干大きい程度の径となっている。
【0023】
内筒132は、本願発明で言う上操作部材に相当する。内筒132は、後述するようにして、外筒131に対して移動可能になっており、それにより、後述する球133の線状体110に対する距離(線状体110に対する接触状態)を変化させるようになっている。後述するように、球133の状態には第1状態と第2状態があり、内筒132はその操作によって、球133を第1状態から第2状態に変化させる。これも後述するが、球133を第1状態から第2状態に変化させるときの内筒132の移動の方向は、これには限られないが、外筒131に対して相対的に下方に向かう向きである。
内筒132は筒状であり、これには限られないがこの実施形態では概ね円筒形状である。内筒132は、上側から、円筒形の内筒先端部132A、円錐台形状である内筒中間部132B、円筒形状で長い内筒後端部132Cからなる。内筒先端部132Aは外筒131の上端から上方に突出するようになっている。内筒後端部132Cの下端は、これには限られないが、内筒132に特に外力を加えない場合には外筒131の後端と略一致するようになっている。
内筒先端部132A、内筒中間部132B、内筒後端部132Cは同軸であり、且つその内部を、貫通孔132Dで貫かれている。貫通孔132Dは、内筒中間部132Bの部分は図に示したように他の部分よりも大径となっているが、その他の部分においては、線状体110に対して上下にずらせる程度に線状体110の径よりも幾らか大きい程度の一定の径とされている。なお、貫通孔132Dは、すべての部分で一定の径とされていても構わない。
内筒132の内筒中間部132Bには、貫通孔132Dと連通したこの実施形態では円形の孔である連通孔132Eが穿たれている。連通孔132Eの断面は円形であり、軸に対して垂直である。これには限られないがこの実施形態における連通孔132Eは3つであり、軸に対して三方対称の位置(軸に対して垂直な平面上で軸を中心として120度ごとの位置)に設けられている。
連通孔132Eにはそれぞれ、球133が嵌っている。球133は、本願発明でいう上摩擦体に相当するものである。球133は球形であり、その径は連通孔132Eの径よりも僅かに小さい。また、球133の径は、線状体110から、外筒131のテーパー部131Bの所定の部分(これには限られないが、この実施形態では、テーパー部131Bの前後方向の中程)までの距離に等しくなっている。球133は、連通孔132Eの中を軸に対して垂直な方向に移動して、軸まで或いは線状体110までの距離を変化させることが可能となっており、それにより第1状態と第2状態とを採る。球133がどのようにして軸までの距離を変化させるかについては後述する。
【0024】
弾性バネ134は一般的なコイルばねである。弾性バネ134は、図3、4に示したように、内筒後端部132Cの周囲に巻き付けたような状態で、外筒131の内部空間に入れられている。弾性バネ134は、その上端を内筒中間部132Bと、内筒後端部132Cが交わる部分にできるドーナツ状の面に当接させ、その後端を円環状の係止部131Cの上面に当接させている。弾性バネ134は圧縮されており、内筒132に対して常に、内筒132を上側に向かって押すような付勢力を与えている。これにより、この実施形態における内筒132は、下向きの外力が加えられない状態(デフォルトの状態)では、図2(B)、図3に示された位置に位置するようになっている。
【0025】
上述したように線状体110に対して上部材130は、上方、下方に移動できる。その仕組は以下の通りである。
図3に示した上部材130はデフォルトの状態である。このときの球133の状態が第1状態である。
この状態では、内筒132は、弾性バネ134により上側に付勢されている。それにより、内筒132の上端は、外筒131の上端から上方に突出した状態となっている。
内筒132が上側に付勢されているこの状態では、内筒中間部132Bに設けられた連通孔132Eから覗いている球133は上方に押しやられ、外筒131のテーパー部131Bに当接して、軸に近づく方向に移動する。すると、3つの球133は、線状体110を3方向から押圧する。この状態では、上部材130は、線状体110に対して下方に移動させようとしても下方には移動させられない。なぜなら、線状体110に対して上部材130を下方に移動させようとすると、上部材130に対して相対的に上方向に移動しようとする線状体110から摩擦力を受ける球133は、線状体110から受ける力によって益々上方向に移動しようとし、これにより球133が線状体110を押圧する力が益々大きくなるからである。他方、この状態で、上部材130を線状体110に対して上方に移動させることは可能である。線状体110に対して上部材130を上方に移動させようとした場合には、上部材130に対して相対的に下方向に移動しようとする線状体110からの摩擦力を受ける球133には、線状体110から下向きに移動する方向の力がはたらく。そうすると、球133は、内筒132ともども弾性バネ134の付勢力に抗して若干下に下がる。球133が下方に移動した場合、その部分における外筒131の内部空間の径は、図3に示した状態で球133が当接していた部分におけるテーパー部131Bの径よりも大きいので、球133は外筒131の内周面側に軸から離れるように移動し、球133による線状体110の押圧が小さくなる。球133が線状体110に与える静止摩擦力が、上部材130を上方に移動させようとする力を下回ったときに上部材130は上方への移動を開始する。後述する動摩擦力を超える上方への力を加えられた上部材130は、上部材130の、より正確には上部材130の球133が線状体110から所定の摩擦力(動摩擦力)を受けながらも、その摩擦力に抗して上方へ移動する。
【0026】
次に、内筒132の内筒先端部132Aを外筒131に向かって下方に押し込んだ状態を図4に示す。このときの球133の状態が第2状態である。
内筒132を下方に移動させると、上部材130は、線状体110に沿って上下方向のいずれの方向にも移動させられるようになる。
内筒先端部132Aを弾性バネ134の付勢力に抗して外筒131に対して相対的に下方向に移動させ、球133を、テーパー部131Bにおける、第1状態にあった球133が位置していたところよりも内径の大きな位置か、或いは外筒131におけるテーパー部131B以外の部分(テーパー部131Bよりも下の部分)にまで移動させると、球133は軸から離れることが許容されるので、球133には、線状体110に対して付勢するような力がはたらかなくなる。したがって、この状態では、上部材130は、上向き或いは下向きの力を加えることによって、線状体110に対して、上方向にも下方向にも移動可能となる。
【0027】
まとめると、球133が第1状態にある場合の上部材130、言い換えれば、内筒132が下方に押されていない状態の上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。
他方、内筒132が下方に押されることにより球133が第2状態にある上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。
【0028】
下部材140は、上部材130の下に位置するようにして、線状体110に取付けられている。この実施形態では、下部材140は、上部材130の真下に位置する。
下部材140は、前の段落でまとめたように機能する上部材130と上下逆に機能するものである。その意味で、下部材140は上部材130と上下反転した構成を備えるものとすることができ、これには限られないがこの実施形態の下部材140はそのようなものとされている。
上部材130についての図3に相当する、下部材140についての一部破断図を図5に示す。
下部材140は、概ね円筒形状である。下部材140はすべて金属製であり、例えば鉄製である。
下部材140に含まれる140番台の符号が付された対象はすべて、その符号を130番台とした場合における上部材130に含まれていた各対象と同じ構成であり、上下反転していることを除けば機能も同じである。
【0029】
一応簡単に下部材140について説明する。
下部材140は、外筒141、内筒142、球143、弾性バネ144を備えて構成されている。
外筒141の外周面には溝141Aが切られている。外筒141の内周面のうち、下方の一定範囲には、テーパー部141Bが設けられている。テーパー部141Bより上の部分においては、外筒141の内周面の径は一定となっている。外筒141の内周面の上端には、係止部141Cが設けられている。係止部141Cの内側に開いた孔は、内筒後端部142Cの外形よりも若干大きい程度の径となっている。
内筒142は、外筒141に対して移動可能になっており、それにより、後述する球143の線状体110に対する距離(線状体110に対する接触状態)を変化させるようになっている。上部材130の場合と同様に、下部材140における球143の状態には第1状態と第2状態があり、内筒142はその操作によって、球143を第1状態から第2状態に変化させる。これには限られないが、球143を第1状態から第2状態に変化させるときの内筒142の移動の方向は、外筒141に対して相対的に上方に向かう向きである。
内筒142は概ね円筒形状である。内筒142は、下側から、円筒形の内筒先端部142A、円錐台形状である内筒中間部142B、円筒形状で長い内筒後端部142Cからなる。内筒先端部142Aは外筒141の下端から下方に突出するようになっている。内筒後端部142Cの後端は、これには限られないが、内筒142に特に外力を加えない場合には外筒141の上端と略一致するようになっている。
内筒先端部142A、内筒中間部142B、内筒後端部142Cは同軸であり、且つその内部を、貫通孔142Dで貫かれている。貫通孔142Dは、内筒中間部142Bの部分は図に示したように他の部分よりも大径となっているが、その他の部分においては、線状体110に対して上下にずらせる程度に線状体110の径よりも幾らか大きい程度の一定の径とされている。なお、貫通孔142Dは、すべての部分で一定の径とされていても構わない。
内筒142の内筒中間部142Bには、貫通孔142Dと連通した連通孔142Eが穿たれている。連通孔142Eの断面は円形であり、軸に対して垂直である。これには限られないがこの実施形態における連通孔142Eは3つであり、軸に対して三方対称の位置に設けられている。
連通孔142Eにはそれぞれ、球143が嵌っている。球143は、本願発明でいう下摩擦体に相当するものである。球143は球形であり、その径は連通孔142Eの径よりも僅かに小さい。また、球143の径は、線状体110から、外筒141のテーパー部141Bの所定の部分(これには限られないが、この実施形態では、テーパー部141Bの前後方向の中程)までの距離に等しくなっている。球143は、連通孔142Eの中を軸に対して垂直な方向に移動して、軸まで或いは線状体110までの距離を変化させることが可能となっており、それにより第1状態と第2状態とを採る。
【0030】
弾性バネ144は一般的なコイルばねである。弾性バネ144は、図5に示したように、内筒後端部142Cの周囲に巻き付けたような状態で、外筒141の内部空間に入れられている。弾性バネ144は圧縮されており、内筒142に対して常に、内筒142を下側に向かって押すような付勢力を与えている。これにより、この実施形態における内筒142は、上向きの外力が加えられない状態(デフォルトの状態)では、図5に示された位置に位置するようになっている。
【0031】
上部材130と同様に、下部材140も線状体110に対して上下方向に移動させることができる。
まず、球143が第1状態にある場合の下部材140、言い換えれば、内筒142が上方に押されていない状態の下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。
他方、内筒142が上方に押されることにより球143が第2状態にある下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。
【0032】
以上のような上部材130及び下部材140は、2本の線状体110のそれぞれに2セットずつ取付けられている。各線状体110に取付けられた2セットの上部材130及び下部材140は、上下方向に離れた状態で取付けられている。上側の上部材130及び下部材140は、水平(事実上水平)な広告梁150を、下側の上部材130及び下部材140は、水平(事実上水平)な仕切り梁160をそれぞれ上下させる機能を担っている。
広告梁150の周辺の側面図を図6(A)に、正面図を同(B)にそれぞれ示す。
広告梁150は、断面コの字型の長尺材である。広告梁150の両端付近には、孔151が穿たれている。これには限られないが、この孔151は円形であり、広告梁150の上側の板を貫通している。この孔151は、上部材130に対して広告梁150を係止するためのものであり、その径は、上部材130の外筒131の径よりも小さく、且つ外筒131の外周面に設けられた溝131Aの部分の径よりも大きくなっている。上部材130は、その溝131Aが広告梁150の孔151に位置するようにして、広告梁150に取付けられている。広告梁150の孔151の縁の下面は、それにより、上部材130における溝131Aの最下端から張り出す外筒131の水平な面に係止されることになる。
このようにして、広告梁150は、上部材130に対して係止されている。もっとも、広告梁150は上部材130と接触している部分で、溶接、ネジ止めその他の公知或いは周知の方法を用いて、上部材130と固定されていても構わない。
図6に示した例では、広告梁150と固定或いは係止されるのは上部材130のみであったが、例えば、図7に示したようにして、広告梁150に対して、上部材130のみならず下部材140をも、固定或いは係止されるようにしてもよい。
図7は、他の例による広告梁150の正面図を示すものであるが、この場合の広告梁150は、断面ロの字型の長尺材である。広告梁150の両端付近には孔152、153が穿たれている。この孔152、153は例えば円形であり、広告梁150の上側の板と下側の板とをそれぞれ貫通している。孔152と、孔153とは、それらを平面視したときにちょうど重なるような位置にあり、大きさも同じである。上側の板にある孔152の径は、上部材130の外筒131の径よりも小さく、且つ外筒131の外周面に設けられた溝131Aの部分の径よりも大きくなっている。上部材130は、その溝131Aが広告梁150の孔152に位置するようにして、広告梁150に取付けられている。広告梁150の孔152の縁の下面は、それにより、上部材130における溝131Aの最下端から張り出す外筒131の水平な面に係止されることになる。下側の板にある孔153の径は、下部材140の外筒141の径よりも小さく、且つ外筒141の外周面に設けられた溝141Aの部分の径よりも大きくなっている。下部材140は、その溝141Aが広告梁150の孔153に位置するようにして、広告梁150に取付けられている。広告梁150の孔153の縁の上面は、それにより、下部材140における溝141Aの最上端から張り出す外筒141の水平な面に係止されることになる。
このようにして、広告梁150は、上部材130と下部材140との双方に対して係止されている。もっとも、広告梁150は上部材130と接触している部分で、溶接、ネジ止めその他の公知或いは周知の方法を用いて、上部材130と固定されていても構わず、また、下部材140と接触している部分で、溶接、ネジ止めその他の公知或いは周知の方法を用いて、下部材140と固定されていても構わない。
【0033】
広告梁150が図6図7のいずれに示したものであるにしろ、広告梁150には、広告部材150Xが取付けられている。広告部材150Xは、広告を印刷した広告媒体であって、例えば、板材或いは膜材で構成されている。
これには限られないが、この実施形態における広告部材150Xは膜材であって、その両面に広告が印刷されている。また、これには限られないがこの実施形態における広告部材150Xは、広告梁150の長さに略一致した一辺を備える矩形であり、広告梁150の下方に広告梁150から吊り下げられる。広告梁150と広告部材150Xとの接続は、公知或いは周知技術を用いて適宜行えば良いが、この実施形態では、広告梁150にその上端が固定された紐150Yの下端を広告部材150Xに設けた孔に結びつけることにより、広告部材150Xは広告梁150に接続されている。
【0034】
仕切り梁160の構成は、広告梁150の構成と同じものを採用することができるため、仕切り梁160の構成については説明を省略する。ただし、広告梁150と仕切り梁160の構成は同一である必要はなく、例えば、広告梁150は図7に示した構成を、仕切り梁160は図6に示した構成をそれぞれ採用するということも可能である。
仕切り梁160の下方には、板材によって構成された仕切り板160Xが、例えば、紐160Yを用いて吊り下げられている。仕切り板160Xは、隣接する遊技機20の前に座る2人の遊技者を、例えば互いに会話を交わしたときに相手の発した飛沫から守るべく、互いに隔離するための板である。それが可能な限り仕切り板160Xはどのような構成を採用していても良いが、この実施形態では透明な樹脂製の板である。
【0035】
上述した島10及び遊技機20の使用方法は従前と変わらない。
他方、ここまでに説明した広告梁150と仕切り梁160は各々、線状体110に沿って上下に移動可能である。広告梁150と仕切り梁160の上下動を行うための方法、及びそのときの上部材130、下部材140等の動作について説明する。
ここまでで説明したように、第1状態と第2状態にある上部材130及び下部材140の挙動は以下のようにまとめられる。
まず上部材130についてである。
球133が第1状態にある場合の上部材130、言い換えれば、内筒132が下方に押されていない状態の上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。
他方、内筒132が下方に押されることにより球133が第2状態にある上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。
次に下部材140についてである。
球143が第1状態にある場合の下部材140、言い換えれば、内筒142が上方に押されていない状態の下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。
他方、内筒142が上方に押されることにより球143が第2状態にある下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。
【0036】
仕切り梁160の動かし方も同様なので、とりあえず、広告梁150の上下方向への動かし方について説明する。広告梁150の上下方向への移動は、例えば、広告部材150Xの取替の場合等に必要となる。また、広告梁150の構造は、とりあえず図6に示したものであることとしてまず説明を行う。なお、以下の説明は、広告梁150を貫通する2本の線状体110の双方で行われる。
まず、上部材130の内筒132が下方に押されておらず、また、下部材140の内筒142が上方に押されていない状態、つまり、上部材130及び下部材140の双方ともがデフォルトの状態にある場合である。
このとき、上部材130、下部材140ともに第1状態にある。
球133が第1状態にある上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。球143が第1状態にある下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。
したがって、上部材130と係止或いは固定された広告梁150は、上方向には移動できるが下方向には移動できない。したがって、上部材130或いは広告梁150に上方向の外力を与えない限り、広告梁150は所望の高さ位置において、上部材130を介して線状体110に固定された状態となる。このとき、下部材140は第1状態にあるから、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。したがって、下部材140を下方向に移動させることにより、上部材130と下部材140の間隔を大きくすることは一応可能であるが、そうする意味がないため、普通は下部材140は上部材130の直下に位置したままの状態にある。
いずれにせよ、広告梁150は、ある高さ位置に位置決めされた状態で、線状体110に対して、上部材130を介して固定された状態となる。もちろん、広告梁150の下に吊り下げられた広告部材150Xも所望の高さに位置決めされた状態となる。
【0037】
次に、広告梁150を下方向に移動させる場合である。
この場合、上部材130の内筒132における内筒先端部132Aを下方へと押す。作業者は、例えば手の指で、広告部材150Xの上側の板の上側に突出した内筒先端部132Aを下方へ押すことにより内筒132を下方へ移動させる。
そうすると、上部材130は第1状態から第2状態へ変化する。下部材140は第1状態のままである。
球133が第2状態にある上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。また、球143が第1状態にある下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら下方向に移動することができるが、上方向には移動できない。
したがって、上部材130における内筒先端部132Aを下方に押しながら上部材130に下方に向かう力を加えると(この力は、上部材130に直接加えなくとも広告梁150に下向きの力を加えることにより、広告梁150を介して与える等してもよい。)、上部材130は下方に移動し、それに伴い広告梁150も下方に移動する。このとき、上部材130は、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない。しかしながら、上部材130の直下にある下部材140は、線状体110に対する下方への移動は許容されているものの、その下方への移動の際には線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受ける。したがって、下方に下がろうとして下部材140と干渉する上部材130は、下方に移動する下部材140から、下部材140が線状体110から受ける摩擦抵抗を間接的に受けることになる。これにより、上部材130、或いは上部材130と固定された広告梁150は下方に移動している最中に上述の摩擦抵抗を受け続けることになるから、過度に勢いの着いた落下を生じることはない。広告梁150が所望の高さまで移動したら作業者は、内筒先端部132Aを下方に押すのを止めればよい。そうすると、上部材130と下部材140はともに第1状態になるから、既に説明したように、上部材130、或いはそれに固定された広告梁150は、その高さで線状体110に対して固定されることになる。
【0038】
最後に、広告梁150を上方向に移動させる場合である。
この場合、下部材140の内筒142における内筒先端部142Aを上方へと押す。作業者は、例えば手の指で、広告梁150に隠れた内筒先端部142Aを上方へ押すことにより内筒142を上方へ移動させる。そのとき線状体110或いは外筒141を摘みながら、内筒142を上方へ移動させる。
そうすると、下部材140は第1状態から第2状態へ変化する。上部材130は第1状態のままである。
球133が第1状態にある上部材130は、線状体110に沿って、線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受けながら上方向に移動することができるが、下方向には移動できない。球143が第2状態にある下部材140は、線状体110に沿って、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない状態で上下方向のどちらにも移動することができる。
したがって、下部材140における内筒先端部142Aを上方に押しながら下部材140に上方に向かう力を加えると、下部材140は上方に移動し、それに伴い広告梁150も上方に移動する。このとき、下部材140は、線状体110から摩擦抵抗を殆ど(或いは事実上)受けない。他方、下部材140の直上にある上部材130は、線状体110に対する上方への移動は許容されているものの、その上方への移動の際には線状体110から幾らかの摩擦抵抗を受ける。したがって、上方に上がろうとして上部材130或いは広告梁150と干渉する下部材140は、上方に移動する上部材130から、上部材130が線状体110から受ける摩擦抵抗を間接的に受けることになる。また、上部材130は、下方への移動を規制されている。これにより、下部材140、或いは下部材140に押されて押し上げられる広告梁150は、意図せぬ落下を生じることはない。広告梁150が所望の高さまで移動したら作業者は、内筒先端部142Aを上方に押すのを止めればよい。そうすると、上部材130と下部材140はともに第1状態になるから、既に説明したように、上部材130、或いはそれに固定された広告梁150は、その高さで線状体110に対して固定されることになる。
【0039】
以上では、広告梁150の構造が図6に示されたものである場合について説明したが、広告梁150の構造が図7に示された場合であっても、その使用方法は同じである。
上部材130と下部材140とを第1状態としたときには、広告梁150は停止した状態で線状体110に固定される。ただし、このとき下部材140は断面ロの字型の広告梁150に対して係止されているか固定されているから、単独で下方に移動することにより上部材130との間隔を広げることはできない。
上部材130の内筒先端部132Aを下方に移動させつつ上部材130(或いは広告梁150)に下方向の力を加えると、上部材130及び広告梁150は下方向に移動する。ただし、上部材130が下方に下がるとき、下部材140は上部材130と干渉せず、下部材140は、断面ロの字型の広告梁150を介して下向きの力を受けることになる。下部材140が幾らかの摩擦抵抗を線状体110から受けるのは広告梁150が図6に示したものである場合と同様であり、過度の勢いのついた広告梁150の落下を生じることはない。
下部材140の内筒先端部142Aを上方に移動させつつ下部材140(或いは、広告梁150)に上方向の力を加えると、下部材140及び広告梁150は上方向に移動する。ただし、下部材140が上方に上がるとき、上部材130は下部材140と干渉せず、上部材130は、広告梁150を介して上向きの力を受けることになる。上部材140が幾らかの摩擦抵抗を線状体110から受けるのは広告梁150が図6に示したものである場合と同様である。また、上部材130の下方向への移動が規制されているため、意図せぬ広告梁150の落下を生じることがないのも、広告梁150が図6に示したものである場合と同様である。
【0040】
以上で説明したのと同様の方法で、仕切り梁160を線状体110に沿って上下方向に移動させることができ、また、所望の高さで上部材130及び下部材140を固定することで、仕切り梁160に吊り下げられた仕切り板160Xを、所望の高さに位置決めした状態で線状体110に固定することができる。
これにより、広告部材150Xと仕切り板160Xとは、互いに独立して、線状体110に対して所望の高さ位置に位置決め可能となる。
【0041】
以上のようにして広告梁150及び仕切り梁160の上下方向の移動、及び位置決めしての固定を行うが、上述したように、横アーム220の先端の高さは、例えば、2.5m程度であり、通常の作業者では横アーム220の近辺で手作業が行うのは難しい。
したがって、広告梁150と仕切り梁160のうち、特に、相対的に上に位置する広告梁150を上下方向に移動させようとした場合、広告梁150とセットになっている上部材130及び下部材140における上部材130の内筒先端部132Aを下方向に押し下げることや、下部材140の内筒先端部142Aを上方向に押し上げることは難しい。そこで、以下に説明するような操作棒を用いて、広告梁150を上下方向に移動させることが可能である。もちろん、操作棒は、仕切り梁160を上下方向に移動させるために用いても良い。
【0042】
操作棒180は、図8の斜視図に示したように構成されている。
操作棒180は、使用時において鉛直方向に延びる長尺の棒状体である、持ち手棒181を備えている。
持ち手棒181の上端には、上板182が取付けられている。上板182は、持ち手棒181に対して垂直に張り出しており、これには限られないが、この実施形態では矩形である。上板182の例えば先端よりの部分には、これには限られないが矩形とされた切り欠き182Aが設けられている。切り欠き182Aは、線状体110をその中に挿入するためのものであり、この実施形態では平面視した場合に細長い矩形の形状となるようにされているが、線状体110をその中に挿入することが可能な限り、その形状は特に問わない。
持ち手棒181の、上板182の下には下板183が取付けられている。下板183は、切り欠き183Aを備えている。下板183は、上板182と同じ形状、大きさであり、切り欠き183Aまで含めて、平面視した場合に上板182にぴったりと重なる向きで、持ち手棒181に取付けられている。上板182と下板183の距離は、上板182の切り欠き182Aに上部材130の上の線状体110を挿入し、下板183の切り欠き183Aに下部材140の下の線状体110を挿入した場合に、上板182が上部材130の内筒先端部132Aの僅かに上に、下板183が下部材140の内筒先端部142Aの僅かに下にそれぞれ位置するような距離となっている。
【0043】
操作棒180は、図9に示したように用いる。
なお、この場合の操作棒180は、図7で示した広告梁150を上下させるために用いられている。図6で示した広告梁150を上下させるために操作棒180を用いるのであれば、図6に示した下部材140における少なくとも内筒先端部142Aが、側面視した場合の広告梁150の下側に露出するようにすべきである。
操作棒180を用いる場合、上板182の切り欠き182Aに上部材130の上の線状体110を挿入し、下板183の切り欠き183Aに下部材140の下の線状体110を挿入する。そうすると、上板182が上部材130の内筒先端部132Aの僅かに上に、下板183が下部材140の内筒先端部142Aの僅かに下にそれぞれ位置するようになる。
この状態で、作業者が持ち手棒181を握って操作棒180を下方に引っ張る。そうすると、上板182の下面が上部材130の内筒先端部132Aを下方に押し下げる。そうすると、上部材130が第2状態に、下部材140が第1状態となり、且つ操作棒180から上部材130に下向きの力がはたらくから、広告梁150は、上述したように下方に移動することになる。操作棒180を下方に引くのをやめると、上部材130、下部材140ともに第1状態となるから、広告梁150はその位置で高さを位置決めされ、線状体110に固定されることになる。
逆に、作業者が持ち手棒181を握って操作棒180を上方に持ち上げる。そうすると、下板183の上面が下部材140の内筒先端部142Aを上方に押し上げる。そうすると、上部材130が第1状態に、下部材140が第2状態となり、且つ操作棒180から下部材140に上向きの力がはたらくから、広告梁150は、上述したように上方に移動することになる。操作棒180を上方に持ち上げるのをやめると、上部材130、下部材140ともに第1状態となるから、広告梁150はその位置で高さを位置決めされ、線状体110に固定されることになる。
このような操作棒180を用いれば、作業者の手が届かないような高い位置にある上部材130及び下部材140を操作できるようになる。また、操作棒180を用いて上部材130及び下部材140を操作するときも、広告梁150等の過度に勢いのついた落下や、意図せぬ落下を防ぐことができる。
なお、切り欠き182A、切り欠き183Aは、操作棒180を、既に存在している線状体110に対して取付けること、また、不必要時に線状体110から取り外すことを可能とする。操作棒180を常時線状体110に取付けたままとするのであれば、切り欠き182Aと切り欠き183Aはともに、線状体110を通過させることができる孔であっても構わない。
特に、操作棒180が線状体110に常時取付けられたままとされる場合には、広告部材150Xは、広告梁150ではなく操作棒180に取付けられるようになっていても構わない。その場合、図10に示したように広告部材150Xは例えば、操作棒180の持ち手棒181に取付けることができる。
【0044】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、第1実施形態と殆ど同じである。
唯一異なるのは、第1実施形態では別体とされていた上部材130及び下部材140が、第2実施形態では一体とされている、という点のみである。
第1実施形態における上部材130と下部材140とを一体化したものを、第2実施形態で仮に位置決め部材190と呼ぶこととする。その一部破断図を図11に示す。図11の記載方法は、図3図5にならう。
第2実施形態の位置決め部材190の構成要素のうち、第1実施形態における上部材130又は下部材140における符号と同一の符号が付されているものは、第1実施形態における上部材130又は下部材140における各構成要素に相当する。殆ど唯一異なるのは、第1実施形態における上部材130の外筒131と、下部材140の外筒141とが、第2実施形態では一体の外筒191になっている、という点である。また、内筒132と内筒142の対向する面同士の距離は、内筒先端部132Aが押されたときの内筒132の移動が内筒142に妨げられず、内筒先端部142Aが押されたときの内筒142の移動が内筒132に妨げられないだけの間隔を空ける必要がある。
上部材130と下部材140を一体とした位置決め部材190は、例えば、図6図7において近接して描かれている別体であった上部材130及び下部材140に置換することが可能であり、それは当業者であれば容易に理解することができるであろう。位置決め部材190は、別体であった上部材130及び下部材140と同様に機能する。
【0045】
第2実施形態における位置決め部材190は、当然に操作棒と組合せて用いることもできる。用いられる操作棒は第1実施形態で説明した操作棒180と同じものでも構わないが、この実施形態で用いられる操作棒180Xは、図12図15に示したようなものである。なお、図12、14、15は位置決め部材190及び操作棒180Xの斜視図である。図13は、位置決め部材190付近の位置決め部材190と操作棒180Xの側面図である。ただし、操作棒180は、後述する上係止板及び下係止板の切り欠きでない部分の断面が示されている。
なお、この実施形態で説明する操作棒180Xを、第1実施形態で説明した上部材130及び下部材140と組合せて用いることができる。その場合、上部材130の外筒131と下部材140の外筒141とは、各々後述する持ち手棒181に固定されることになる。
【0046】
図12に示されているのは、位置決め部材190及び後述する操作部材が操作されていない状態の操作棒180Xの斜視図である。なお、図12から図15では、広告梁150(或いは、仕切り梁160)の図示は省略されている。以下に説明する例の場合には、2つの位置決め部材190の外筒191は、広告梁150の両端にそれぞれ固定されているが、簡単のために広告梁150の図示を省略している。
また、この実施形態における外筒191は、図12等に示したように、第1実施形態では存在した外筒131における溝131Aと、外筒141における溝141Aに相当するものを備えない。その代わりに、外筒191は、その外周の径の太い部分である大径部191Aを備えている。他方、外筒191における大径部191Aの上下に位置する大径部191Aに比して小径の部分を小径部191Bと呼ぶことにする。
【0047】
操作棒180Xは、第1実施形態の操作棒180と同様の部材を備えている。
操作棒180Xは、使用時において鉛直方向に延びる長尺の棒状体である、持ち手棒181を備えている。ただし、持ち手棒181は、平面視した場合に断面コの字型の棒状体とされている。持ち手棒181の上端付近には、上板182が、その下方には下板183が存在している。上板182、下板183ともに例えば矩形であり、その幅は、断面コの字型の持ち手棒181において縦方向に走る溝の幅より僅かに小さい。操作棒180Xの上板が切り欠き182Aを、下板が切り欠き183Aを備えている点は、操作棒180の場合と同様である。ただし、操作棒180Xにおける上板182と下板183とは、側面視した場合にコの字型となるように、矩形の接続板184の上下の辺でその基端同士を互いに接続されている。接続板184の幅は上板182及び下板183の幅と同じであり、その図12における背面は、持ち手棒181の溝の奥の面に沿っている。
下板183は、操作部材185と互いに接続されている。操作部材185は、上板182と下板183とを上下に移動させるためのものである。この実施形態における操作部材185は、持ち手棒181に沿って延びる棒状体である。棒状体である操作部材185の上端付近が、下板183と例えばロウ付けや溶接によって固定されている。それにより、操作部材185を上下させると下板183が上下方向に移動し、また、接続板184によって下板183と接続されている上板182も、下板183と同時に上下方向に移動することになる。つまり、側面視コの字型の上板182、下板183及び接続板184は、持ち手棒181の溝の中で、持ち手棒181に対して上下方向に可動となっている。なお、持ち手棒181の下端には、持ち手棒181の上述した溝を閉じる蓋181Aが設けられている。操作部材185の下端は、その蓋181Aに穿たれた孔を貫通して、蓋181Aよりも下にまで及んでいる。作業者は、操作部材185の蓋181Aよりも下の部分を把持して、操作部材185を上下方向に移動させることができる。
持ち手棒181の上述した溝の中には、上係止板186と下係止板187とが設けられている。上係止板186と下係止板187は、持ち手棒181の溝の中に入るような形状であり、その外形は矩形である。上係止板186と下係止板187との間隔は、位置決め部材190の外筒191の大径部191Aの長さに対応している。また、上係止板186と下係止板187は、外筒131の小径部191Bを挿入することのできる切り欠き186Aと切り欠き187Aとを備えている。
上係止板186と下係止板187はともに、持ち手棒181の上述した溝の幅方向の両内面に、その幅方向の両端を固定されている。また、上係止板186と下係止板187はともに、持ち手棒181の溝の奥側(図12等の奥側)の面とは当接しておらず、当該面との間に、接続板184の厚さに応じた隙間が生じるようにして、持ち手棒181に固定されている(図13参照)。それにより、上側に上板182が、下側に下板183が固定された接続板184は、上係止板186及び下係止板187と持ち手棒181の奥側の板との間にある隙間を通って上下方向に移動できるようになっている。
【0048】
このような操作棒180Xを用いて位置決め部材190を上下させる方法は次の通りである。
操作棒180Xを用いる場合、上板182の切り欠き182Aに上部材130の上の線状体110を挿入し、下板183の切り欠き183Aに下部材140の下の線状体110を挿入する。そうすると、上板182が上部材130の内筒先端部132Aの僅かに上に、下板183が下部材140の内筒先端部142Aの僅かに下にそれぞれ位置するようになる。
このとき、操作棒180Xの上係止板186の切り欠き186Aには、位置決め部材190の上側の小径部191Bが嵌まり込み、上係止板186の下面は大径部191Aの上側の端面に殆ど当接した状態となる。同時に、操作棒180Xの下係止板187の切り欠き187Aには、位置決め部材190の下側の小径部191Bが嵌まり込み、下係止板187の上面は大径部191Aの下側の端面に殆ど当接した状態となる。これにより、位置決め部材190の大径部191Aは、操作棒180Xの持ち手棒181に固定された上係止板186及び下係止板187に上下から挟まれ、係止された状態となるため、結果として持ち手棒181に対して固定された状態となる。言い換えれば、位置決め部材190は、少なくとも持ち手棒181に対して相対的に位置決めされ、持ち手棒181に対して相対的に不動となる。
この状態で、作業者が操作部材185の蓋181Aよりも下の部分を把持して操作部材185を下方向に引く。それにより、操作部材185の上端と接続された下板183、及び下板183と接続された接続板184及び上板182はすべて、操作部材185が下方向に移動した分だけ下方向に移動する(図14)。そうすると、下板183は位置決め部材190の下端の内筒先端部142Aから離れるが、上板182の下面が位置決め部材190の上端の内筒先端部132Aを下方に押し下げる。これにより、位置決め部材190における第1実施形態における上部材130に相当する部分が第2状態に、下部材140に相当する部分が第1状態となる。
その状態で、作業者は、操作棒180Xの全体(或いは持ち手棒181)を下方に引く。そうすると、操作棒180Xから位置決め部材190に下向きの力がはたらくから、位置決め部材190は、下方に移動することになる。実際には、操作部材185を下方に引く動作と、持ち手棒181を下方に引く動作とを殆ど同時に、或いは連続して行うことで、位置決め部材190は下方に移動することになる。
操作棒180Xを下方に引くのをやめ、更には操作部材185を元の位置に戻すと、位置決め部材190における第1実施形態における上部材130に相当する部分と、下部材140に相当する部分とがともに第1状態となるから、位置決め部材190はその位置で高さを位置決めされ、線状体110に固定されることになる。
逆に、作業者が操作部材185の蓋181Aよりも下の部分を把持して操作部材185を上方向に押し上げる。それにより、操作部材185の上端と接続された下板183、及び下板183と接続された接続板184及び上板182はすべて、操作部材185が上方向に移動した分だけ上方向に移動する(図15)。そうすると、上板182は、位置決め部材190の上端の内筒先端部132Aから離れるが、下板183の上面が位置決め部材190の下端の内筒先端部142Aを上方に押し上げる。これにより、位置決め部材190における第1実施形態における下部材140に相当する部分が第2状態に、上部材130に相当する部分が第1状態となる。
その状態で、作業者は、操作棒180Xの全体(或いは持ち手棒181)を上方に押す。そうすると、操作棒180Xから位置決め部材190に上向きの力がはたらくから、位置決め部材190は、上方に移動することになる。実際には、操作部材185を上方に押す動作と、持ち手棒181を上方に押す動作とを殆ど同時に、或いは連続して行うことで、位置決め部材190は上方に移動することになる。
操作棒180Xを上方に押すのをやめ、更には操作部材185を元の位置に戻すと、位置決め部材190における第1実施形態における上部材130に相当する部分と、下部材140に相当する部分とがともに第1状態となるから、位置決め部材190はその位置で高さを位置決めされ、線状体110に固定されることになる。
【符号の説明】
【0049】
110 線状体
130 上部材
131 外筒
131B テーパー部
132 内筒
132A 内筒先端部
133 球
134 弾性バネ
140 下部材
141 外筒
141B テーパー部
142 内筒
142A 内筒先端部
143 球
144 弾性バネ
150 広告梁
150X 広告部材
160 仕切り梁
160X 仕切り板
180 操作棒
181 持ち手棒
182 上板
183 下板
185 操作部材
186 上係止板
187 下係止板
190 位置決め部材
191 外筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15