(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128663
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】刈払機のブレード、及びこのブレードを用いたブレードカッター
(51)【国際特許分類】
A01D 34/73 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
A01D34/73 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027005
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】592013325
【氏名又は名称】ダイアトップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】玉山 隆三
(72)【発明者】
【氏名】猪島 陽平
(72)【発明者】
【氏名】比良 佑希
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083CA02
2B083CA09
2B083CA22
2B083CA28
2B083EA08
(57)【要約】
【課題】切れ味を長期間維持して作業効率を向上させることができる刈払機のブレード、及びこのブレードを用いたブレードカッターを提供する。
【解決手段】草を刈り払う刈払機に用いられ、動力源により高速回転する回転板2に取り付けられて放射状に延びる樹脂製板状の刈払機のブレード10、及びブレード10を用いたブレードカッターである。ブレード10は、回転板に着脱可能に取り付けられる保持部11と、草を刈る刃部12と、からなる。刃部12は、回転板の径方向に直角な断面形状が平行四辺形であり、上面両側縁部から下面両側縁部にかけて回転板の回転方向に傾斜する2つの切れ刃13a、14aを有する片刃形状をなしている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
草を刈り払う刈払機に用いられ、動力源により高速回転する回転板に取り付けられて放射状に延びる樹脂製板状の刈払機のブレードにおいて、
該ブレードは、該回転板に着脱可能に取り付けられる保持部と、草を刈る刃部と、からなり、
該刃部は、該回転板の径方向に直角な断面形状が平行四辺形であり、上面両側縁部から下面両側縁部にかけて該回転板の回転方向に傾斜する2つの切れ刃を有する片刃形状をなすことを特徴とする刈払機のブレード。
【請求項2】
前記ブレードの刃先角は、25度以上、45度以下であることを特徴とする請求項1記載の刈払機のブレード。
【請求項3】
前記回転板の周縁から前記ブレードの先端までの最大長さは、6mm以上、70mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の刈払機のブレード。
【請求項4】
前記刃部は、先端部に向かって次第に幅広となる略長方形をなすことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の刈払機のブレード。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の刈払機のブレードが、前記回転板の周縁部に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする刈払機のブレードカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草を刈り払う刈払機に用いられ、動力源により高速回転する回転板に取り付けられる樹脂製のブレード、及びそのブレードを用いたブレードカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
草を刈り払う刈払機の刈刃として、
図10、及び
図11に示すような、高速回転する回転板に取り付けられる樹脂製のブレード90が多く用いられている。
図10(1)、(2)はブレード90の正面図、及び平面図であり、
図11はブレード90の断面図である。このブレード90は、取付孔91aにより回転板に着脱可能に取り付けられる保持部91と、草を刈る刃先95とを有する刃部92とからなっている。この刃部92は、上面93の側縁部と下面94の側縁部との両方から傾斜する切れ刃93a、94aを有する両刃形状をなし、切れ刃93a、94aの交線部分が刃先95になっている。このような樹脂製のブレード90の例として、特許文献1に記載されたものがある。この樹脂製のブレード90によれば、回転中のブレード90が障害物に当って跳ねるキックバックが起こりにくいうえ、動作音が静かである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-29493号公報(P5、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ブレード90は、摩耗により
図12に示す刃先95bのように潰れて丸くなり切れ味が落ちてしまう。そして、この状態でさらに草を刈っても刃先95bから草が逃げてしまい、何度も同じ所の草を刈らなければならず作業効率が低下する。そのため、動力源に負担をかけるだけでなく、頻繁に別のブレード90に取り替えなければならず面倒である。特に、動力源がバッテリーである場合においては、バッテリーの持ち時間が短くなるという事態を招いてしまう。
【0005】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、切れ味を長期間維持して作業効率を向上させることができる刈払機のブレード、及びこのブレードを用いたブレードカッターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る刈払機のブレードの特徴は、草を刈り払う刈払機に用いられ、動力源により高速回転する回転板に取り付けられて放射状に延びる樹脂製板状の刈払機のブレードにおいて、該ブレードは、該回転板に着脱可能に取り付けられる保持部と、草を刈る刃部と、からなり、該刃部は、該回転板の径方向に直角な断面形状が平行四辺形であり、上面両側縁部から下面両側縁部にかけて該回転板の回転方向に傾斜する2つの切れ刃を有する片刃形状をなすことである。
【0007】
請求項2に係る刈払機のブレードの特徴は、請求項1において、前記ブレードの刃先角は、25度以上、45度以下であることである。
【0008】
請求項3に係る刈払機のブレードの特徴は、請求項1又は2において、前記回転板の周縁から前記ブレードの先端までの最大長さは、6mm以上、70mm以下であることである。
【0009】
請求項4に係る刈払機のブレードの特徴は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記刃部は、先端部に向かって次第に幅広となる略長方形をなすことである。
【0010】
請求項5に係る刈払機のブレードカッターの特徴は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の刈払機のブレードが、前記回転板の周縁部に着脱可能に取り付けられていることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る刈払機のブレードにおいては、ブレードが回転板に着脱可能に取り付けられる保持部と、草を刈る刃部とからなっている。そして、刃部は、回転板の径方向に直角な断面形状が平行四辺形であり、上面両側縁部から下面両側縁部にかけて回転板の回転方向に傾斜する2つの切れ刃を有する片刃形状をなしている。このブレードの刃部は片刃形状であり、両刃形状のものと比較して刃先が草に食い込みやすいうえ、刃先が石等の障害物に当っても丸くなり難い。そのため、刃先から草が逃げ難く、鋭い切れ味を維持しやすい。また、回転板の径方向に直角な刃部の断面形状が平行四辺形であるため、切れ味が落ちた場合、ブレードを上下反転させて回転板に取り付ければ、新しい切れ刃(刃先)にすることができる。したがって、この刈払機のブレードによれば、切れ味を長期間維持して作業効率を向上させることができる。なお、この刈払機のブレードは片刃形状であるため、両刃形状の場合と比べ、刃先の位置を地表により近くすることができ、草の根元まで刈り取ることができる。
【0012】
請求項2に係る刈払機のブレードにおいては、ブレードの刃先角が25度以上、45度以下であるため、切れ味を長期間維持することができる。すなわち、ブレードの刃先角が25度未満である場合、刃先が石等の障害物に当たると欠けやすくなってしまい、鋭い切れ味の維持が困難になる。また、ブレードの刃先角が45度を超える場合、切れ味が鈍く草が逃げやすい。
【0013】
請求項3に係る刈払機のブレードにおいては、回転板の周縁からブレードの先端までの最大長さが6mm以上、70mm以下であるため、効率よく草を刈ることができ、動力源にかける負荷を小さくすることができる。すなわち、回転板の周縁からブレードの先端までの最大長さが6mm未満である場合、草を刈り取ることのできる範囲が狭く効率が悪い。また、回転板の周縁からブレードの先端までの最大長さが70mmを超える場合、刃先から逃げる草の量が多くなるうえ、動力源に負担をかけてしまう。
【0014】
請求項4に係る刈払機のブレードにおいては、刃部が先端部に向かって次第に幅広となる略長方形であるため、ブレードの回転に従って刃先の草がブレードの径方向内側に移動しやすい。そのため、草がブレードに抱え込まれる状態となり、刃先から草が逃げ難い。
【0015】
請求項5に係る刈払機のブレードカッターにおいては、上記のブレードが回転板の周縁部に着脱可能に取り付けられているため、切れ味を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態のブレード及びブレードカッターを用いた刈払機の斜視図。
【
図8】実施形態のブレードに係り、
図4におけるVIII―VIII矢視断面図。
【
図9】実施形態のブレードと従来のブレードとの比較拡大図。
【
図11】従来のブレードに係り、
図10(1)におけるXIーXI矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る刈払機のブレード及びブレードカッターを具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、刈払機のブレード10、及びブレードカッター1を用いた刈払機の斜視図である。この刈払機の操作ロッド90の先端部にはギアヘッド91とカバー92とが取り付けられている。そして、ギアヘッド91にはブレードカッター1が回転可能に取り付けられている。
【0018】
また、
図2にも示すように、ブレードカッター1は、回転板2とブレード10とを有している。回転板2には2枚のブレード10が取り付けられている。回転板2は円盤状をなし、その中心にギアヘッド91から突出する取付け軸(図示なし)を貫通させて、回転板2を固着させるための軸孔2aを有している。また、回転板10の周縁部には、2枚のブレード10が軸孔2aを挟んで反対側に着脱可能に取付ピン3により放射状に取り付けられている。これにより、回転板2が動力源の駆動力により高速回転すると、2枚のブレード10も高速回転して草を刈り払うことができる。なお、本実施形態においては、回転板2にブレード10が2枚取り付けられているが、これに限られず、3枚以上であってもよい。
【0019】
そして、回転板2の周縁からブレード10の先端までの最大長さLは、6mm以上、70mm以下である。最大長さLをこの範囲に保つことにより、効率よく草を刈ることができ、動力源にかける負荷を小さくすることができる。すなわち、最大長さLが6mm未満である場合、草を刈り取ることのできる範囲が狭く効率が悪い。また、最大長さLが70mmを超える場合、動力源に負担をかけるだけでなく刃先から逃げる草の量が多くなってしまう。なお、動力源がバッテリーである場合、最大長さLを6mm以上、70mm以下にすることによりバッテリーの持ち時間を長くすることができるため、非常に効果が大きい。
【0020】
次に、ブレード10について、
図3から
図8を用いて詳細に説明する。
図3から
図8は、それぞれブレード10の斜視図、正面図、平面図、左側面図、右側面図、及び断面図である。
図3から
図7に示すように、ブレード10は保持部11と刃部12とからなっている。保持部11には、取付ピン3によりブレード10が回転板2に着脱可能に取り付けられる取付孔11aが設けられている。また、刃部12は先端部に向かって次第に幅広となる略長方形であるため、ブレード10の回転に従って草がブレード10の径方向内側に移動しやすく、草が逃げ難くなっている。
【0021】
図8に示すように、刃部12は、回転板2の径方向に直角な断面形状が平行四辺形であり、上面13の両側縁部から下面14の両側縁部にかけて矢印Aで示す回転板2の回転方向に傾斜する2つの切れ刃13a、14aを有する片刃形状をなしている。そして、切れ刃13a、14aと下面14、上面13との交線に刃先角θの刃先15、16が形成される。そして、
図8において、ブレード10が回転すると、刃先15により草を刈り払うことができる。
【0022】
また、回転板2の径方向に直角な刃部12の断面形状が平行四辺形であるため、切れ味が落ちた場合、ブレード10を上下反転させて回転板2に取り付ければ、新しい刃先16にすることができる。さらに、刃先15、16の刃先角θは、25度以上、45度以下であり、切れ味を長期間維持することができる。すなわち、刃先角θが25度未満である場合、刃先15、16が石等の障害物に当たると欠けやすくなってしまい、鋭い切れ味の維持が困難になるからである。また、刃先角θが45度を超える場合、切れ味が鈍く草が逃げやすいからである。
【0023】
図9(1)、(2)は、片刃形状のブレード10と両刃形状のブレード90とを拡大比較したものである。ただし、破線で示されるブレード90は、
図10から
図12に示す従来のものと同じである。
図9(1)は、ブレード10、90が草Gに当たった場合を表したものである。
図9(1)に示すように、上面13、93からの切れ刃13a、93aの傾斜角度が同じであれば、切れ刃13aの方が切れ刃93aよりも広くすることができる。また、両刃形状と片刃形状の特性の違いより、ブレード90の刃先95は矢印Bで示すように進もうとし、ブレード10の刃先15は矢印Cで示すように進もうとする。しかし、ブレード10、90はブレードカッター1の回転方向に強制的に進むため、ブレード10の場合は草Gが上方に引っ張られ刃先15が草Gに食い込みやすくなる。これに対し、ブレード90の場合は草Gが押し切られる状態となるため、刃先95が潰れて丸くなると、草Gが押し倒されてブレード90の下方に逃げやすくなってしまう。
【0024】
また、
図9(2)は、ブレード10、90の刃先15、95部分を比較したものである。
図9(2)に示すように、ブレード10は、刃先15の位置を刃先95の位置より高さHだけ地表により近くすることができ、草の根元まで刈り取ることができる。また、摩耗によりブレード90は刃先95bのように潰れて丸くなりやすいのに比べ、ブレード90は刃先15bのように潰れても丸くなりにくい。なお、ブレード10、及びブレードカッター1は、電動刈払機、特に、バッテリー式の刈払機に用いて好適である。
【0025】
実施形態の刈払機のブレード10及びブレードカッター1においては、ブレード10の刃部12は片刃形状であり、両刃形状のものと比較して刃先15、16が草に食い込みやすいうえ、刃先15、16が石等の障害物に当っても丸くなり難い。そのため刃先5、15から草が逃げ難く、鋭い切れ味を維持しやすい。また、回転板2の径方向に直角な刃部12の断面形状が平行四辺形であるため、切れ味が落ちた場合、ブレード10を上下反転させて回転板2に取り付ければ、新しい切れ刃14a、13a(刃先16、15)にすることができる。したがって、この刈払機のブレード10、及びブレードカッター1によれば、切れ味を長期間維持して作業効率を向上させることができる。
【0026】
また、この刈払機のブレード10及びブレードカッター1においては、ブレード10の刃先角θが25度以上、45度以下であるため、切れ味を長期間維持することができる
【0027】
さらに、この刈払機のブレード10及びブレードカッター1においては、回転板2の周縁からブレード10の先端までの最大長さLが6mm以上、70mm以下であるため、効率よく草を刈ることができ、動力源にかける負荷を小さくすることができる。
【0028】
また、この刈払機のブレード10及びブレードカッター1においては、刃部12が先端部に向かって次第に幅広となる略長方形であるため、ブレード10の回転に従って刃先15、16の草がブレード10の径方向内側に移動しやすい。そのため、草がブレード10に抱え込まれる状態となり、刃先15、16から草が逃げ難い。
【0029】
以上、本発明の刈払機のブレード及びブレードカッターを実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、実施形態において、ブレード10は回転板2に放射状に固着されているが、回転板に回動可能に軸支され、回転板の回転に伴って放射状に突出するブレードであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ブレードカッター、2…回転板、10…ブレード、11…保持部、12…刃部、13a、14a…切れ刃、θ…刃先角、L…最大長さ。