(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128716
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 19/00 20060101AFI20220829BHJP
D05C 13/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
D05B19/00
D05C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027089
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊作 太介
(72)【発明者】
【氏名】飯島 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 耕一
(72)【発明者】
【氏名】菅 宏彰
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA01
3B150AA07
3B150AA08
3B150AA16
3B150AA23
3B150CA01
3B150CA02
3B150CC07
3B150CE01
3B150CE09
3B150GA02
3B150GD00
3B150GD26
3B150GG10
3B150LA19
3B150LA85
3B150NA71
3B150NA80
3B150NC02
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】ミシンの状態を適正に管理すること。
【解決手段】ミシンは、上糸が供給されるミシン針を保持する針棒と、針棒の下方に配置され、ミシン針が通過可能な開口を有する針板と、針板が固定される天板と、針板の下方に配置され、下糸を供給することによりミシン針と協働して縫製対象物に縫い目を形成する釜と、針棒よりも下方の部材に設置される慣性センサと、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上糸が供給されるミシン針を保持する針棒と、
前記針棒の下方に配置され、前記ミシン針が通過可能な開口を有する針板と、
前記針板が固定される天板と、
前記針板の下方に配置され、下糸を供給することにより前記ミシン針と協働して縫製対象物に縫い目を形成する釜と、
前記針棒よりも下方の部材に設置される慣性センサと、を備える、
ミシン。
【請求項2】
前記慣性センサは、前記釜又は前記釜を支持する支持部材に設置される、
請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記慣性センサは、前記針板の下面に設置される、
請求項1に記載のミシン。
【請求項4】
前記慣性センサは、前記釜の傾斜角度を検出する、
請求項2に記載のミシン。
【請求項5】
前記慣性センサは、前記天板の傾斜角度を検出する、
請求項3に記載のミシン。
【請求項6】
前記天板の上面において前記縫製対象物を保持して移動可能な保持部材と、
前記天板の上面に配置され、前記保持部材を移動させる動力を発生する保持部材移動装置と、を備える、
請求項5に記載のミシン。
【請求項7】
前記慣性センサの検出データを表示する表示装置を備える、
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のミシン。
【請求項8】
前記慣性センサの検出データに基づいて、前記傾斜角度が角度閾値を超えたと判定した場合、前記表示装置に警報データを表示させる制御装置を備える、
請求項7に記載のミシン。
【請求項9】
前記天板を支持する複数の脚部と、
複数の前記脚部のそれぞれに設けられ、前記脚部の下面の高さを調整するアジャスタと、を備える、
請求項4から請求項8のいずれか一項に記載のミシン。
【請求項10】
前記針棒を支持した状態で、前記天板の上面と直交する回転軸を中心に回転可能な頭部を備え、
前記釜は、前記頭部と同期して前記回転軸を中心に回転し、
前記慣性センサは、前記回転軸を中心とする回転方向の前記釜の加速度又は角速度を検出する、
請求項2に記載のミシン。
【請求項11】
電動アクチュエータを含み、前記回転軸を中心に前記頭部を回転させる動力を発生する頭部回転装置と、
電動アクチュエータを含み、前記回転軸を中心に前記釜を回転させる動力を発生する釜回転装置と、
前記慣性センサの検出データに基づいて、前記加速度又は前記角速度が速度閾値を超えたと判定した場合、前記頭部回転装置及び前記釜回転装置のそれぞれに対する電力供給の停止指令を出力する制御装置と、を備える、
請求項10に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ミシンとして、本縫いミシン、千鳥縫いミシン、ロックミシン、ボタン付けミシン、及び電子サイクルミシン等が知られている。電子サイクルミシンとは、予め作成された縫製データに基づいて、縫製対象物に縫い目を形成するミシンをいう。非特許文献1には、頭部が回転する電子サイクルミシンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JUKI製品情報AMS-251、インターネット<URL:https://www.juki.co.jp/industrial_j/products_j/lether_j/cycle_non/detail.php?cd=AMS-251>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミシンの状態が適正に管理されないと、ミシンの性能が低下する可能性がある。例えば電子サイクルミシンは、本縫いミシンよりも多数の可動部を有する。多数の可動部を適正に駆動させるために、ミシンの状態を適正に管理する必要がある。
【0005】
本開示は、ミシンの状態を適正に管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、上糸が供給されるミシン針を保持する針棒と、前記針棒の下方に配置され、前記ミシン針が通過可能な開口を有する針板と、前記針板が固定される天板と、前記針板の下方に配置され、下糸を供給することにより前記ミシン針と協働して縫製対象物に縫い目を形成する釜と、前記針棒よりも下方の部材に設置される慣性センサと、を備える、ミシンが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ミシンの状態を適正に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るミシンを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るミシンの一部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るミシンの一部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る縫製対象物を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第1慣性センサの検出データに基づく制御装置の第1の処理方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る第1慣性センサの検出データに基づく制御装置の第2の処理方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る第2慣性センサの検出データに基づく制御装置の処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
ミシン1にローカル座標系が規定される。実施形態においては、ミシン1に規定されるローカル座標系を適宜、ミシン座標系、と称する。ミシン座標系は、XYZ直交座標系により規定される。実施形態においては、ミシン座標系に基づいて各部の位置関係について説明する。所定面内のX軸と平行な方向をX軸方向とする。X軸と直交する所定面内のY軸と平行な方向をY軸方向とする。所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθX方向とする。Y軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθY方向とする。Z軸を中心とする回転方向又は傾斜方向をθZ方向とする。また、実施形態においては、X軸及びY軸を含む平面を適宜、XY平面、と称する。XY平面は、所定面と平行である。実施形態においては、XY平面と水平面とが平行であることとする。Z軸方向は上下方向である。+Z方向は上方向であり-Z方向は下方向である。なお、XY平面が水平面に対して傾斜していてもよい。
【0011】
[ミシン]
図1は、実施形態に係るミシン1を示す斜視図である。
図2及び
図3のそれぞれは、実施形態に係るミシン1の一部を示す斜視図である。実施形態において、ミシン1は、電子サイクルミシンである。ミシン1は、テーブル2と、フレーム3と、頭部4と、頭部回転装置5と、保持部材6と、保持部材移動装置7と、釜8と、釜回転装置9と、電源スイッチ10と、スタートスイッチ11と、一時停止スイッチ12と、非常停止スイッチ13と、操作パネル14と、制御装置15と、慣性センサ100とを備える。
【0012】
テーブル2は、針板20を含む天板21と、脚部22と、側板23とを有する。脚部22は、天板21を支持する。脚部22は、複数設けられる。脚部22の下面は、縫製工場の床面に接触する。側板23は、複数の脚部22の間に配置される。
【0013】
複数の脚部22のそれぞれにアジャスタ24が設けられる。アジャスタ24により、脚部22の下面がZ軸方向に移動する。アジャスタ24は、Z軸方向における脚部22の下面の位置を調整する。すなわち、アジャスタ24は、脚部22の下面の高さを調整する。複数の脚部22の下面のそれぞれの高さが調整されることにより、天板21の上面の傾斜角度が調整される。実施形態において、天板21の上面とXY平面とが平行になるように、複数の脚部22の下面のそれぞれの高さが調整される。
【0014】
テーブル2は、キャスタ25により床面を移動可能である。キャスタ25は、車輪又はコロを含む。キャスタ25は、テーブル2を移動可能に支持する。アジャスタ24により、脚部22の下面は床面から離れることができる。脚部22の下面が床面から離れた状態で、キャスタ25が床面を回転することにより、テーブル2は移動する。テーブル2を床面に設置する場合、アジャスタ24により、キャスタ25が床面から離れ、脚部22の下面が床面に接触するように、脚部22の下面の高さが調整される。
【0015】
フレーム3は、テーブル2の天板21に支持される。フレーム3は、天板21の+X側且つ+Y側の角部に設置される第1柱部31と、天板21の-X側且つ+Y側の角部に設置される第2柱部32と、第1柱部31の上端部と第2柱部32の上端部とを繋ぐ梁部30とを有する。フレーム3は、所謂、門型フレームである。
【0016】
頭部4は、フレーム3の梁部30に支持される。頭部4は、保持部材6の上方に配置される。頭部4は、針棒40を支持する。頭部4は、針棒40を支持した状態で、天板21の上面と直交する回転軸AXを中心に回転可能である。実施形態において、回転軸AXは、実質的にZ軸と平行である。頭部4の周囲に、カバー部材33が配置される。カバー部材33は、頭部4とカバー部材33の周囲の物体との接触を抑制する。
【0017】
針棒40は、Z軸方向に往復移動可能に頭部4に支持される。針棒40は、ミシン針41を保持する。針棒40は、ミシン針41とZ軸とが平行になるように、ミシン針41を保持する。実施形態において、回転軸AXとミシン針41とは一致する。
【0018】
天板21に糸巻き装置16が設けられる。頭部4に糸立て装置17が設けられる。上糸は、糸巻き装置16から糸立て装置17を経由して、ミシン針41に供給される。上糸は、ミシン針41の針孔42に通される。
【0019】
頭部回転装置5は、回転軸AXを中心に頭部4を回転させる動力を発生する。頭部回転装置5は、例えばステッピングモータのような電動アクチュエータを含む。
【0020】
保持部材6は、縫製対象物50を保持する。保持部材6は、枠状の部材である。保持部材6は、縫製対象物50の周囲を挟むことによって縫製対象物50を保持する。保持部材6は、天板21の上面に移動可能に支持される。保持部材6は、ミシン針41の直下の縫製位置を含む天板21の上面において縫製対象物50を保持して移動可能である。保持部材6は、天板21の上面と平行なXY平面内において移動可能である。
【0021】
保持部材移動装置7は、XY平面内において保持部材6を移動させる動力を発生する。保持部材移動装置7は、天板21の上面に配置される。保持部材移動装置7は、保持部材6をX軸方向に移動させるX軸移動装置7Xと、保持部材6をY軸方向に移動させるY軸移動装置7Yとを有する。X軸移動装置7Xは、天板21の+Y側の縁部においてX軸方向に延伸するX軸ガイド部材と、電動モータ及びボールねじ機構を含むX軸駆動部とを有する。Y軸移動装置7Yは、Y軸方向に延伸するY軸ガイド部材と、電動モータ及びボールねじ機構を含むY軸駆動部とを有する。
【0022】
針板20は、針棒40の下方に配置される。針板20は、天板21に固定される。針板20は、針棒40の直下に配置される。針板20は、ミシン針41が通過可能な開口26を有する。
【0023】
頭部4は、縫製対象物50を上方から押さえる中押さえ43を有する。中押さえ43は、ミシン針41が通過する開口を有する。中押さえ43は、ミシン針41の周囲の縫製対象物50を押える。ミシン針41は、Z軸方向に往復移動する。中押さえ43により、ミシン針41の移動による縫製対象物50の浮き上がりが抑制される。ミシン針41は、中押さえ43に押さえられた縫製対象物50を貫通する。
【0024】
釜8は、針板20の下方に配置される。釜8は、針板20の直下に配置される。釜8にボビンケースが収容される。ボビンケースは、下糸が巻かれたボビンを保持する。釜8は、下糸を供給することにより、ミシン針41と協働して、縫製対象物50に縫い目を形成する。
【0025】
釜8は、支持部材80に支持される。支持部材80は、釜8を囲むように配置される。
【0026】
釜8は、ミシン針41の往復移動に伴って、回転軸CXを中心に回転する。回転軸CXは、XY平面と実質的に平行である。縫製対象物50を貫通したミシン針41が上昇するときに、上糸のループが形成される。上糸のループは、回転する釜8の剣先に掛けられる。剣先に掛けられた上糸のループは、釜8の回転運動に伴って拡がり、ボビンケースの表面を通過する。上糸のループが剣先から外れると、上糸が縫製対象物50に引き寄せられ、下糸と絡み合う。上糸と下糸とが絡み合うことにより、縫製対象物50に縫い目が形成される。
【0027】
釜8は、頭部4と同期して回転軸AXを中心に回転する。すなわち、頭部4と釜8とは、回転軸AXを中心に一緒に回転する。釜8と支持部材80とは、回転軸AXを中心に一緒に回転する。釜8と支持部材80との相対位置は、一定である。
【0028】
釜回転装置9は、回転軸AXを中心に釜8を回転させる動力を発生する。釜回転装置9は、例えばステッピングモータのような電動アクチュエータを含む。釜回転装置9は、頭部4と釜8とが回転軸AXを中心に一緒に回転するように駆動する。
【0029】
電源スイッチ10、スタートスイッチ11、一時停止スイッチ12、非常停止スイッチ13、及び操作パネル14のそれぞれは、作業者に操作される。電源スイッチ10が操作されることにより、ミシン1の電源が起動する。スタートスイッチ11が操作されることにより、ミシン1の駆動が開始され、ミシン1による縫製処理が開始される。縫製処理とは、縫製対象物50に縫い目を形成する処理をいう。実施形態において、ミシン1は、予め作成された縫製データに基づいて、縫製対象物50に縫い目を形成する。保持部材6が縫製対象物50を保持した状態で、縫製データに基づいて縫製位置を含むXY平面内において移動することにより、縫製対象物50に縫い目が形成される。一時停止スイッチ12が操作されることにより、ミシン1の駆動が停止される。非常停止スイッチ13が操作されることにより、ミシン1の駆動が強制的に停止される。
【0030】
操作パネル14は、天板21の上面に搭載される。操作パネル14は、入力装置18と表示装置19とを有する。
【0031】
慣性センサ100は、針棒40よりも下方の部材に設置される。慣性センサ100は、部材の傾斜角度、部材の加速度、及び部材の角速度を検出可能である。慣性センサ100として、加速度センサが例示される。
【0032】
実施形態において、慣性センサ100は、針板20の下面に設置される第1慣性センサ101と、釜8を支持する支持部材80に設置される第2慣性センサ102とを含む。
【0033】
なお、第1慣性センサ101は、天板21の下面に設置されてもよい。第2慣性センサ102は、釜8に設置されてもよい。
【0034】
第1慣性センサ101は、天板21の傾斜角度を検出する。実施形態において、第1慣性センサ101は、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度を検出する。
【0035】
第2慣性センサ102は、釜8の傾斜角度を検出する。実施形態において、第2慣性センサ102は、XY平面に対する釜8の回転軸CXの傾斜角度を検出する。また、第2慣性センサ102は、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度を検出する。
【0036】
[縫製対象物]
図4は、実施形態に係る縫製対象物50を示す平面図である。
図4は、縫製処理前の縫製対象物50を示す。実施形態において、縫製対象物50は、車両用シートに使用される表皮材である。
【0037】
図4に示すように、縫製対象物50の表面に複数の孔51が設けられる。複数の孔51により複数の基準パターン52が形成される。実施形態において、基準パターン52は、25個の孔51で構成される。
【0038】
基準パターン52は、間隔をあけて縫製対象物50の表面に配置される。縫製対象物50の表面は、基準パターン52が設けられるテクスチャ領域53と、テクスチャ領域53の間の基準パターン52が設けられないステッチ領域54とを含む。ステッチ領域54には、縫製対象物50に形成される縫い目55の目標縫い目ライン56が設定される。目標縫い目ライン56は、予め作成された縫製データにより規定される。
【0039】
なお、
図4に示す目標縫い目ライン56は一例である。目標縫い目ライン56は、縫製データにより任意に規定される。
【0040】
[制御装置]
図5は、実施形態に係る制御装置15を示す機能ブロック図である。制御装置15は、コンピュータシステムを含む。
【0041】
図5に示すように、制御装置15は、頭部回転装置5、保持部材移動装置7、釜回転装置9、及び操作パネル14のそれぞれと接続される。操作パネル14は、入力装置18及び表示装置19を含む。
【0042】
入力装置18は、作業者に操作されることにより入力データを生成する。入力装置18として、コンピュータ用キーボード、マウス、及びタッチパネルが例示される。
【0043】
表示装置19は、表示データを表示する。表示装置19として、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。
【0044】
上述のように、頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれは、電動アクチュエータを含む。頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれは、ミシン1の電源200から供給される電力により駆動する。保持部材移動装置7は、電動モータを含む。保持部材移動装置7は、ミシン1の電源200から供給される電力により駆動する。
【0045】
制御装置15は、縫製データ記憶部61と、移動制御部62と、回転制御部63と、検出データ取得部64と、判定部65と、表示制御部66と、停止指令部67とを有する。
【0046】
縫製データ記憶部61は、縫製処理において参照される縫製データを記憶する。縫製データは、縫製対象物50に形成される縫い目55の目標縫い目ライン56、及び保持部材6の移動条件を含む。目標縫い目ライン56は、縫製対象物50に形成される縫い目55の目標形状及びミシン座標系における縫い目55の目標位置を規定する。保持部材6の移動条件は、ミシン座標系において規定される保持部材6の移動軌跡を含む。保持部材6の移動軌跡は、XY平面内における保持部材6の移動軌跡を含む。保持部材6の移動条件は、目標縫い目ライン56に基づいて定められる。
【0047】
移動制御部62は、保持部材移動装置7を制御する制御指令を出力する。移動制御部62は、縫製データに基づいて、XY平面内における保持部材6の移動を制御する。移動制御部62は、ミシン針41が縫製対象物50から抜けているときに保持部材6を移動させる。すなわち、移動制御部62は、ミシン針41が縫製対象物50よりも上方に配置されているときに保持部材6を移動させる。
【0048】
回転制御部63は、頭部回転装置5及び釜回転装置9を制御する制御指令を出力する。回転制御部63は、頭部4と釜8とが回転軸AXを中心に一緒に回転するように制御指令を出力する。回転制御部63は、縫製データにより指定される保持部材6の移動方向の変化量βに基づいて、回転軸AXを中心とする頭部4及び釜8の回転角度αを制御する。回転制御部63は、ミシン針41が縫製対象物50から抜けているときに頭部4及び釜8を回転させる。すなわち、回転制御部63は、ミシン針41が縫製対象物50よりも上方に配置されているときに頭部4及び釜8を回転させる。
【0049】
検出データ取得部64は、慣性センサ100の検出データを取得する。慣性センサ100の検出データは、第1慣性センサ101の検出データ及び第2慣性センサ102の検出データを含む。第1慣性センサ101の検出データは、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度を示す。第2慣性センサ102の検出データは、XY平面に対する釜8の回転軸CXの傾斜角度を示す。第2慣性センサ102の検出データは、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度を示す。
【0050】
判定部65は、第1慣性センサ101の検出データに基づいて、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度が予め定められている角度閾値を超えたか否かを判定する。判定部65は、第2慣性センサ102の検出データに基づいて、XY平面に対する釜8の回転軸CXの傾斜角度が予め定められている角度閾値を超えたか否かを判定する。判定部65は、第2慣性センサ102の検出データは、第2慣性センサ102の検出データに基づいて、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が予め定められている速度閾値を超えたか否かを判定する。
【0051】
表示制御部66は、慣性センサ100の検出データを表示装置19に表示させる。表示装置19は、第1慣性センサ101によって検出されたXY平面に対する天板21の上面の傾斜角度を表示する。表示装置19は、第2慣性センサ102によって検出されたXY平面に対する釜8の回転軸CXの傾斜角度を表示する。表示装置19は、第2慣性センサ102によって検出された回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度を表示する。
【0052】
表示制御部66は、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えたと判定部65により判定された場合、表示装置19に警報データを表示させる。表示制御部66は、XY平面に対する釜8の回転軸CXの傾斜角度が角度閾値を超えたと判定部65により判定された場合、表示装置19に警報データを表示させる。表示制御部66は、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えたと判定部65により判定された場合、表示装置19に警報データを表示させる。
【0053】
停止指令部67は、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えたと判定部65により判定された場合、頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれに対する電力供給の停止指令を出力する。上述のように、頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれは、電源200から供給される電力により駆動する。停止指令部67は、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えたと判定部65により判定された場合、電源200から頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれに供給される電力が遮断されるように、遮断装置300に停止指令を出力する。遮断装置300は、電源200と頭部回転装置5及び釜回転装置9との間に配置される。遮断装置300は、電源200から頭部回転装置5及び釜回転装置9に供給される電力を遮断可能である。電源200から頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれに供給される電力が遮断されることにより、頭部回転装置5の駆動が停止し、釜回転装置9の駆動が停止する。すなわち、回転軸AXを中心とする頭部4の回転が停止し、回転軸AXを中心とする釜8の回転が停止する。
【0054】
実施形態において、停止指令部67は、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えたと判定部65により判定された場合、電源200から保持部材移動装置7に供給される電力が遮断されるように、遮断装置300に停止指令を出力する。
【0055】
[第1慣性センサの検出データに基づく第1の処理]
次に、実施形態に係る第1慣性センサ101の検出データに基づく制御装置15の第1の処理について説明する。
図6は、実施形態に係る第1慣性センサ101の検出データに基づく制御装置15の第1の処理方法を示すフローチャートである。第1の処理は、ミシン1の初期調整において、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度を0[°]にする処理である。
【0056】
縫製工場の床面にミシン1を設置するとき、第1慣性センサ101により天板21の上面の傾斜角度を検出しながら、アジャスタ24が調整される。第1慣性センサ101は、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度を検出する。第1慣性センサ101の検出データは、制御装置15に送信される。検出データ取得部64は、第1慣性センサ101の検出データを取得する(ステップS11)。
【0057】
表示制御部66は、第1慣性センサ101の検出データを表示装置19に表示させる。表示装置19は、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度を検出する(ステップS12)。
【0058】
作業者は、表示装置19に表示された天板21の上面の傾斜角度を確認しながら、複数の脚部22のそれぞれに設けられているアジャスタ24を調整する。作業者は、表示装置19に表示された天板21の上面の傾斜角度を確認しながら、天板21の上面が水平面と平行になるように、アジャスタ24を調整する。
【0059】
第1の処理によれば、第1慣性センサ101の検出データに基づいて、天板21の上面を水平面と平行にするための調整処理を効率良く実施することができる。ミシン1に第1慣性センサ101が設けられているので、例えば水準器を用意しなくても、天板21の上面を水平面と平行にするための調整処理を効率良く実施することができる。天板21の上面の傾斜角度が適正に管理されるので、ミシン1の性能の低下が抑制される。
【0060】
また、第1慣性センサ101の検出データが表示装置19に表示されるので、作業者は、表示装置19に表示された天板21の上面の傾斜角度を確認しながら、天板21の上面を水平面と平行にするための調整処理を効率良く実施することができる。
【0061】
実施形態において、保持部材6が天板21の上面を移動する。また、保持部材移動装置7は、天板21の上面に配置される。天板21の上面が傾いていると、保持部材6の位置精度が低下する可能性がある。実施形態においては、第1慣性センサ101の検出データに基づいて、天板21の上面を水平面と平行にするための調整処理を精度良く実施できるので、保持部材6の位置精度の低下が抑制されるので、ミシン1の性能の低下が抑制される。
【0062】
[第1慣性センサの検出データに基づく第2の処理]
次に、実施形態に係る第1慣性センサ101の検出データに基づく制御装置15の第2の処理について説明する。
図7は、実施形態に係る第1慣性センサ101の検出データに基づく制御装置15の第2の処理方法を示すフローチャートである。第2の処理は、ミシン1の稼働において、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えた場合、警報データを出力する処理である。
【0063】
ミシン1の稼働において、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度が第1慣性センサ101により監視される。第1慣性センサ101は、天板21の上面の傾斜角度を検出する。第1慣性センサ101の検出データは、制御装置15に送信される。検出データ取得部64は、第1慣性センサ101の検出データを取得する(ステップS21)。
【0064】
判定部65は、第1慣性センサ101の検出データに基づいて、XY平面に対する天板21の上面の傾斜角度が予め定められている角度閾値を超えたか否かを判定する(ステップS22)。
【0065】
ステップS22において、天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えていないと判定された場合(ステップS22:No)、ステップS21の処理に戻る。すなわち、第1慣性センサ101による天板21の上面の傾斜角度の監視が継続される。
【0066】
ステップS22において、天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えたと判定された場合(ステップS22:Yes)、表示制御部66は、表示装置19に警報データを表示させる(ステップS23)。
【0067】
表示装置19に表示される警報データは、天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えたことを示す表示データである。表示制御部66は、例えばシンボル画像を点滅させたり、シンボル画像の色を変えたりして、天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えたことを表示装置19に報知させる。なお、警報データは、表示装置19に表示されなくてもよい。警報データは、操作パネル14から出力される警告音を含んでもよい。
【0068】
作業者は、表示装置19に表示された警報データに基づいて、天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えたことを認識することができる。すなわち、作業者は、天板21の上面が傾いていることを認識することができる。作業者は、天板21の上面が水平面と平行になるように、アジャスタ24を調整することができる。
【0069】
第2の処理によれば、第1慣性センサ101により、天板21の上面の傾斜角度が監視される。例えばミシン1の自重、ミシン1と他の物体との接触、及び地震等に起因して、天板21の上面が傾く可能性がある。天板21の上面が傾くと、上述のようにミシン1の性能が低下する。ミシン1の性能が低下した状態でミシン1の稼働が継続されると、縫製精度が低下する。第2の処理によれば、第1慣性センサ101により天板21の上面の傾斜角度が監視される。天板21の上面の傾斜角度が角度閾値を超えた場合、警報データが表示装置19に表示される。これにより、作業者は、直ちに、天板21の上面が水平面と平行になるように、アジャスタ24を調整することができる。したがって、ミシン1の性能が低下した状態でミシン1の稼働が継続されることが抑制される。
【0070】
[第2慣性センサの検出データに基づく処理]
次に、実施形態に係る第2慣性センサ102の検出データに基づく制御装置15の処理について説明する。
図8は、実施形態に係る第2慣性センサ102の検出データに基づく制御装置15の処理方法を示すフローチャートである。第2慣性センサ102の検出データに基づく処理は、ミシン1の稼働において、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えた場合、頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれに対する電力の供給を停止する処理である。
【0071】
ミシン1の稼働において、回転軸AXを中心とする回転方向の釜8の加速度又は角速度が第2慣性センサ102により監視される。第2慣性センサ102は、釜8の加速度又は角速度を検出する。第2慣性センサ102の検出データは、制御装置15に送信される。検出データ取得部64は、第2慣性センサ102の検出データを取得する(ステップS31)。
【0072】
判定部65は、第2慣性センサ102の検出データに基づいて、釜8の加速度又は角速度が予め定められている速度閾値を超えたか否かを判定する(ステップS32)。
【0073】
ステップS32において、釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えていないと判定された場合(ステップS32:No)、ステップS31の処理に戻る。すなわち、第2慣性センサ102による釜8の加速度又は角速度の監視が継続される。
【0074】
ステップS32において、釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えたと判定された場合(ステップS32:Yes)、停止指令部67は、頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれに対する電力供給の停止指令を遮断装置300に出力する(ステップS33)。
【0075】
電源200から頭部回転装置5及び釜回転装置9のそれぞれに供給される電力が遮断されることにより、頭部回転装置5の駆動が停止し、釜回転装置9の駆動が停止する。すなわち、回転軸AXを中心とする頭部4の回転が停止し、回転軸AXを中心とする釜8の回転が停止する。
【0076】
第2慣性センサ102の検出データに基づく処理によれば、第2慣性センサ102により、釜8の加速度又は角速度が監視される。回転軸AXを中心に釜8が高加速度又は高角速度で回転すると、縫製精度が低下する可能性がある。頭部4及び釜8は、ミシン針41が縫製対象物50から抜けているときに回転する必要がある。釜8が高加速度又は高角速度で回転すると、ミシン針41が縫製対象物50から抜けていないときに、頭部4及び釜8が回転してしまい、縫製精度が低下する可能性がある。すなわち、釜8が過度に高加速度又は高角速度で回転すると、ミシン1の性能が低下する可能性がある。第2慣性センサの検出データに基づく処理によれば、釜8の加速度又は角速度が速度閾値を超えた場合、頭部4及び釜8の回転が強制的に停止される。これにより、ミシン1の性能が低下した状態でミシン1の稼働が継続されることが抑制される。
【0077】
また、第2慣性センサ102により釜8の加速度又は角速度が監視されているので、回転軸AXを中心に釜8が高加速度又は高角速度で回転した場合、作業者が非常停止スイッチ13を押さなくても、制御装置15により、頭部4及び釜8の回転が強制的に停止される。
【符号の説明】
【0078】
1…ミシン、2…テーブル、3…フレーム、4…頭部、5…頭部回転装置、6…保持部材、7…保持部材移動装置、7X…X軸移動装置、7Y…Y軸移動装置、8…釜、9…釜回転装置、10…電源スイッチ、11…スタートスイッチ、12…一時停止スイッチ、13…非常停止スイッチ、14…操作パネル、15…制御装置、16…糸巻き装置、17…糸立て装置、18…入力装置、19…表示装置、20…針板、21…天板、22…脚部、23…側板、24…アジャスタ、25…キャスタ、26…開口、30…梁部、31…第1柱部、32…第2柱部、33…カバー部材、40…針棒、41…ミシン針、42…針孔、43…中押さえ、50…縫製対象物、51…孔、52…基準パターン、53…テクスチャ領域、54…ステッチ領域、55…縫い目、56…目標縫い目ライン、61…縫製データ記憶部、62…移動制御部、63…回転制御部、64…検出データ取得部、65…判定部、66…表示制御部、67…停止指令部、80…支持部材、100…慣性センサ、101…第1慣性センサ、102…第2慣性センサ、200…電源、300…遮断装置、AX…回転軸、CX…回転軸。