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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128757
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】インフレーション成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/28 20060101AFI20220829BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B29C55/28
B29C55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027150
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】303050355
【氏名又は名称】住友重機械モダン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隆宏
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AR12
4F210QA01
4F210QC05
4F210QG02
4F210QG18
4F210QK01
4F210QK05
4F210QK29
4F210QK33
4F210QK54
4F210QK64
(57)【要約】
【課題】バブルの外径を変更するにあたってサイジングリングの取り替えが不要なインフレーション成形装置を提供する。
【解決手段】インフレーション成形装置は、下向き水冷式のインフレーション成形装置である。インフレーション成形装置は、バブルの外径を規定するサイジングリング28を備える。サイジングリング28は、当該サイジングリング28の内径を変化させる内径可変機構32を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下向き水冷式のインフレーション成形装置であって、
バブルの外径を規定するサイジングリングを備え、
前記サイジングリングは、当該サイジングリングの内径を変化させる内径可変機構を含むインフレーション成形装置。
【請求項2】
前記内径可変機構は、前記内径を画成する内径画成部材を含み、
前記内径画成部材を回転させる回転機構をさらに備える請求項1に記載のインフレーション成形装置。
【請求項3】
前記回転機構は、前記サイジングリングを回転させる請求項2に記載のインフレーション成形装置。
【請求項4】
前記回転機構は、前記サイジングリングを収容する水槽ごと前記サイジングリングを回転させる請求項2または3に記載のインフレーション成形装置。
【請求項5】
前記内径可変機構は、前記内径を画成する、周方向に並列配置された複数の内径画成部材を含む請求項1に記載のインフレーション成形装置。
【請求項6】
各内径画成部材は、他の内径画成部材の少なくとも1つと径方向に重なるように配置される請求項5に記載のインフレーション成形装置。
【請求項7】
各内径画成部材は、他の内径画成部材の少なくとも1つと軸方向に重なるように配置される請求項5に記載のインフレーション成形装置。
【請求項8】
前記内径可変機構は、1の内径画成部材と他の内径画成部材との相対位置を変化させることで、前記サイジングリングの内径を変化させる請求項5から7のいずれかに記載のインフレーション成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーション成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融樹脂をダイからチューブ状に押し出し、その内側に空気を吹き込んで膨らませ、薄いフィルムを成形するインフレーション成形装置が知られている。インフレーション成形装置には、溶融樹脂を上向きに押し出す上向式と、下向きに押し出す下向式とがある。特許文献1のように、溶融樹脂を水冷する場合は、主に下向式が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-231266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下向きのインフレーション成形装置は、一般に、バブルの外径を規定するためのサイジングリングを備える。従来の下向きのインフレーション成形装置では、バブルの外径を変更する場合、バブルが通る挿通孔の内径が異なるサイジングリングに取り替える必要がある。サイジングリングの取り替えは、繁雑な作業であり、作業者に掛かる負担が大きい。また、取り替えには時間が掛かり、その間はフィルムの製造が停止してしまう。また、サイジングリングを取り替えるには成形を止めるすなわち樹脂の流れを止める必要があり、成形を再開するすなわち樹脂の流し始める際にはどうしても樹脂のロスが発生してしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、バブルの外径を変更するにあたってサイジングリングの取り替えが不要なインフレーション成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のインフレーション成形装置は、下向き水冷式のインフレーション成形装置であって、バブルの外径を規定するサイジングリングを備える。サイジングリングは、当該サイジングリングの内径を変化させる内径可変機構を含む。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バブルの外径を変更するにあたってサイジングリングの取り替えが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インフレーション成形装置の概略構成を示す図である。
図2図1の第2冷却装置とその周辺を示す断面図である。
図3図3(a)、(b)は、図2のサイジングリングを示す斜視図である。
図4図3(a)、(b)のブレードの1つを示す斜視図である。
図5図5(a)~(c)は、サイジングリングの動作を説明する図である。
図6図6(a)、(b)は、変形例に係るサイジングリングを示す斜視図である。
図7図6(a)、(b)のサイジングリングの側面図である。
図8図8(a)~(c)は、図6(a)、(b)のサイジングリングの動作を説明する図である。
図9図9(a)、(b)はさらに別の変形例に係るサイジングリングとその周辺を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、実施の形態に係るインフレーション成形装置1の概略構成を示す図である。インフレーション成形装置1は、ダイ10と、第1冷却装置12と、第2冷却装置14と、第一対の安定板16と、ピンチロール18と、を備える。インフレーション成形装置1は、ダイ10から下向きに樹脂が押し出されるいわゆる下向式のインフレーション成形装置である。
【0012】
ダイ10には、不図示の押出機から溶融樹脂が供給される。供給された溶融樹脂は、ダイ10に形成されたリング状の吐出口10aから押し出される。押し出された溶融樹脂の内側には、吐出口10aよりも内側に形成されたエア噴出口10bから適宜にエアが噴出される。これにより、チューブ状の薄肉の樹脂フィルムであるバブル24が成形される。
【0013】
第1冷却装置12は、ダイ10の下方に配置される。第1冷却装置12は、バブル24に冷却風を吹き付けてバブル24を冷却する。
【0014】
第2冷却装置14は、第1冷却装置12の下方に配置される。第2冷却装置14は、バブル24に冷却水を直接接触させてバブル24を冷却する。また、第2冷却装置14は、詳しくは後述するように、バブル24の外径を規定する。
【0015】
第1冷却装置12および第2冷却装置14に冷却され、バブル24は固化する。
【0016】
一対の安定板16は、第2冷却装置14の下方に配置され、バブル24を一対のピンチロール18の間に案内する。一対のピンチロール18は、安定板16の下方に配置される。一対のピンチロール18は、案内されたバブル24を引っ張り下げながら扁平に折りたたむ。巻取機20は、折りたたまれた樹脂フィルムを巻き取り、フィルムロール体22を形成する。
【0017】
図2は、第2冷却装置14を示す断面図である。第2冷却装置14は、水槽26と、水槽26の中に設けられるサイジングリング28および第1円筒部材29と、回転機構30と、水槽26の下方に設けられる第2円筒部材31と、を備える。
【0018】
水槽26は、特に限定されないが平面視で略円形状あり、上面が開放され、底部26aにはバブル24が通る挿通孔26bが形成されている。
【0019】
第1円筒部材29は、中心軸が鉛直方向に延在するように設けられる。第1円筒部材29の下端は水槽26の底部26aに載置されるとともに底部26aに対してインロー嵌合される。第1円筒部材29の上端には、サイジングリング28が載置される。つまり、サイジングリング28は第1円筒部材29に支持される。第1円筒部材29の上端は、サイジングリング28、具体的にはその第2保持部材54(後述)にインロー嵌合される。
【0020】
第2円筒部材31は、水槽26の底部26aの下面に固定される。第2円筒部材31は、水槽26の挿通孔26bと同じ内径を有し、バブル24を環囲する。
【0021】
水槽26には、底部26aに形成された供給口26cから冷却水が供給される。また、水槽26の底部26aには、サイジングリング28よりも上側まで延びるオーバーフロー管34が取り付けられている。これにより、冷却水の水位WHはサイジングリング28よりも上側の所定水位に保たれる。冷却水は、バブル24の外周とサイジングリング28の挿通孔28aとの間を流れ落ちながらバブル24を冷却する。
【0022】
水槽26の外周面26dに複数(例えば4つ)のプレート27が固定される。複数のプレート27には、それぞれ第1ボルト70が鉛直下向きに螺合される。第1ボルト70は、周方向に例えば等間隔に設けられる。第1ボルト70はプレート27を貫通し、第1ボルト70の先端はそれぞれ載置台60の上面60aに当接する。水槽26は、複数の第1ボルト70を介して載置台60に支持される。第1ボルト70とプレート27はボールねじ機構を構成し、第1ボルト70を回すとプレート27ひいては水槽26が上下方向に移動する。つまり水槽26の高さが調整される。
【0023】
載置台60の上面60aには複数(例えば4つ)の支持部材62が固定される。複数の支持部材62には、それぞれ第2ボルト72がサイジングリング28の中心軸に向かって水平に螺合される。第2ボルト72は、周方向に例えば等間隔に設けられる。第2ボルト72は支持部材62を貫通し、第2ボルト72の先端はそれぞれ水槽26の外周面26dに当接する。複数の第2ボルト72により、水槽26が水平方向に位置決めされる。例えば、サイジングリング28の中心軸がダイ10の吐出口10aの中心軸と一致するように、水槽26を水平方向に位置決めする。
【0024】
サイジングリング28は、挿通孔28aの周面28bによってバブル24の外径を規定する部材である。詳しくは、バブル24が挿通孔28aの周面28bに接触しながらサイジングリング28を通過することで、バブル24の外径は挿通孔28aの内径に対応する(すなわち内径と同じかそれよりもわずかに小さい)大きさに規定される。
【0025】
本実施の形態のサイジングリング28は、挿通孔28aの内径を変化できるように構成される。これにより、バブル24の外径を変更する場合、サイジングリング28の挿通孔28aの内径を変化させればよく、従来のインフレーション成形装置のようにサイジングリングを取り替えなくてよい。なお、図2では、サイジングリング28の内径が最大の状態を示す。
【0026】
図3(a)、(b)は、サイジングリング28を示す斜視図である。図3(a)は挿通孔28aの内径を最大にした状態のサイジングリング28を示し、図3(b)は挿通孔28aの内径を最小にした状態のサイジングリング28を示す。図4は、サイジングリング28のブレード50の1つを示す斜視図である。
【0027】
サイジングリング28は、周方向に並ぶ複数(図示の例では32個)のブレード(内径画成部材)50と、複数のブレード50を保持する第1保持部材52および第2保持部材54と、を含む。この例では、サイジングリング28の全体、すなわち複数のブレード50、第1保持部材52および第2保持部材54が、挿通孔28aの内径を変化させる内径可変機構32を構成する。
【0028】
第1保持部材52は、薄肉の円環状の部材である。第1保持部材52には、複数のブレード50と同数のスリット52aが周方向に等間隔に形成されている。スリット52aは、直線状に延びるスリットである。スリット52aは、平面視で、径方向外側ほど周方向一方側(図示の例では時計回り方向前側)に位置するように径方向に対して傾斜している。
【0029】
第2保持部材54は、第1保持部材52と同様の形状および大きさを有する部材である。すなわち、第2保持部材54は薄肉の円環状の部材である。第2保持部材54には、複数のブレード50と同数のスリット54aが周方向に等間隔に形成されている。スリット54aは、直線状に延びるスリットである。スリット54aは、平面視で、径方向外側ほど周方向他方側(図示の例では時計回り後方側)に位置するように径方向に対して傾斜している。つまり、スリット54aは、平面視で、スリット52aとは逆向きに傾斜している。
【0030】
ブレード50は、略三角柱形状の部材であり、隣接するブレード50と側面50a同士が接触するように配置される。ブレード50は特に、少なくとも隣接するブレード50と、径方向に重なるように配置される。複数のブレード50によってサイジングリング28の挿通孔28aが画成され、複数のブレード50の側面50aによってその挿通孔28aの周面28bが構成される。ブレード50の高さによって挿通孔28aの周面28bの高さが決まる。周面28bの高さは、シミュレーション、実験または知見に基づいて、バブル24の外径を規定するのに必要な高さに形成されればよい。
【0031】
ブレード50は、内側上面50bと、内側上面50bよりも上方に位置する外側上面50cと、含む。外側上面50cの外周側には上側に突出する上側突起50dが設けられている。ブレード50の下面50eの外周側には、下側に突出する下側突起50fが設けられている。ブレード50は、上側突起50dが第1保持部材52のスリット52aに係合し、下側突起50fが第2保持部材54のスリット54aに係合する。
【0032】
図5(a)~(c)は、サイジングリング28の動作を説明する図である。図5(a)~(c)では、見やすさのために、ブレード50を2つのみ示している。また、第2保持部材54の表示を省略している。図5(a)は挿通孔28aの内径が最大の状態を示し、図5(c)は挿通孔28aの内径が最小の状態を示す。第1保持部材52を第2保持部材54に対して時計回り方向に回すと、サイジングリング28の状態が図5(a)→図5(b)→図5(c)と変化する。反対に、第1保持部材52を第2保持部材54に対して反時計回り方向に回すと、サイジングリング28の状態が図5(c)→図5(b)→図5(a)と変化する。
【0033】
上述したように、スリット52aは径方向外側ほど時計回り方向前側に位置するように、逆にいうと径方向内側ほど時計回り方向後ろ側に位置するように径方向に対して傾斜している。
【0034】
そのため、第1保持部材52を第2保持部材54に対して時計回り方向に回転させると、上側突起50dひいてはブレード50は、スリット52aおよびスリット54aに沿って第1保持部材52および第2保持部材54に対して径方向内側に移動する。各ブレード50が径方向内側に移動するほど、各ブレード50の側面50aにより構成される挿通孔28aの内径は小さくなる。
【0035】
反対に、第1保持部材52を第2保持部材54に対して反時計回り方向に回転させると、上側突起50dひいてはブレード50は、スリット52aおよびスリット54aに沿って第1保持部材52および第2保持部材54に対して径方向外側に移動する。各ブレード50が径方向外側に移動するほど、各ブレード50の側面50aにより構成される挿通孔28aの内径は大きくなる。
【0036】
つまり、第1保持部材52を第2保持部材54に対して時計回り方向または反時計回り方向に回転させることで、複数のブレード50のそれぞれの他のブレード50との相対位置が変化し、挿通孔28aの内径が変化する。
【0037】
ここでは第1保持部材52を第2保持部材54に対して回転させる場合について説明したが、これには限定されず、第2保持部材54を第1保持部材52に対して回転させてもよい。
【0038】
なお、複数のブレード50によって大きさが可変の挿通孔28aを構成すると、不可避的に挿通孔28aは非真円となる。この例では、サイジングリング28の挿通孔28aは多角形である。したがって、挿通孔28aの内径は、挿通孔28aに収まる最大の円の直径であってもよく、挿通孔28aが多角形であればその内接円の直径であってもよい。
【0039】
図2に戻る。上述したように、サイジングリング28の挿通孔28aは真円ではない。したがって、周方向において部分的に、挿通孔28aとバブル24との隙間が大きいところや小さいところができる。つまり、周方向において部分的に、水が流れる量が多いところや少ないところができる。水が流れる量が多いところは水が流れる量が少ないところところと比べて早く冷える、すなわち固化するまでの時間が短くなる。水が流れる量が少ないところは水が流れる量が多いところと比べて遅く冷える、すなわち固化するまでの時間が長くなる。バブル24はピンチロール18に引っ張られて伸びて薄くなるが、固化するまでの時間が短いところは固化するまでの時間が長いところと比べてあまり伸びず、固化するまでの時間が長いところは固化するまでの時間が短いところと比べてよく伸びる。その結果、バブル24の厚みが周方向で不均一になる。
【0040】
バブル24の厚みが許容範囲内の厚みではあるものの周方向で不均一であり、フィルムロール体22を形成するときに厚い部分同士または薄い部分同士が積み重なると、フィルムロール体の外周に凹凸ができる。凹凸は、フィルムのひずみの原因となる。
【0041】
そこで、本実施の形態では、サイジングリング28の挿通孔28aを画成する複数のブレード50を、互いの位置関係を維持したままバブル24の周りを回転させる。これにより、挿通孔28aの内径の大きさを変えずに、挿通孔28aとバブル24との隙間が大きいところと小さいところを周方向に変化させることができる。その結果、バブル24の厚いところと薄いところが周方向に変化し、フィルムロール体22を形成するときに厚い部分同士または薄い部分同士が積み重なることを抑止できる。
【0042】
回転機構30は、複数のブレード50を互いの位置関係を維持したまま回転させるための機構である。本実施の形態の回転機構30は、特に限定されないが、サイジングリング28を回転させることによって複数のブレード50を回転させる。回転機構30は、サイジングリング28を例えば20~30分で1回転させる。
【0043】
回転機構30は、この例では、水槽26ごと、サイジングリング28ひいては複数のブレード50を回転させる。詳しくは、回転機構30は、駆動装置36と、伝達機構38と、を含む。
【0044】
駆動装置36は、例えばモータやギヤモータであり、回転力を出力する。伝達機構38は、駆動装置36による回転力を水槽26に伝達する機構であり、外歯車40と、旋回ベアリング42と、を含む。
【0045】
外歯車40は、駆動装置36の出力軸36aに嵌合される。旋回ベアリング42は、バブル24を環囲するように配置される。この例では、旋回ベアリング42、サイジングリング28および水槽26の中心軸は実質的に一致している。
【0046】
旋回ベアリング42は、内輪44と、外輪46と、を含む。内輪44は、図示しないフレームに固定される。外輪46は、水槽26に対して固定される。この例では、外輪46は、水槽26が載置される載置台60に固定、つまり間接的に水槽26に固定されているが、直接的に水槽26に固定されてもよい。外輪46の外周には、外歯車40と噛み合う外歯46aが形成されている。
【0047】
出力軸36aの回転に伴って外歯車40が回転すると、外輪46が回転する。上述したように、外輪46は水槽26に対して固定されている。また、サイジングリング28は水槽26に対して固定されている。したがって、外輪46が回転すると、サイジングリング28が回転する。
【0048】
回転機構30は、好ましくは、水槽26を所定の角度範囲(例えば360°以下の所定の角度範囲)で回転(すなわち往復回動)させてもよい。これにより、供給口26cに接続されるホース(不図示)のねじれを避けられる。
【0049】
以上説明した本実施の形態では、サイジングリング28の挿通孔28aの内径を変化させることができる。これにより、バブル24の外径を変更する場合にサイジングリング28の挿通孔28aの内径を変化させればよく、従来のインフレーション成形装置のようにサイジングリングを取り替えなくて済む。
【0050】
また、本実施の形態では、サイジングリング28の挿通孔28aの内径を画成する複数のブレード50を、互いの位置関係を維持したままバブル24の周りを回転させる。これにより、挿通孔28aの内径の大きさを変えずに、隙間が大きいところと小さいところを周方向に変化させることができる。その結果、バブル24の厚いところと薄いところが周方向に変化し、フィルムロール体22を形成するときに厚い部分同士または薄い部分同士が積み重なることを抑止できる。
【0051】
また、本実施の形態では、水槽26ごと、サイジングリング28ひいては複数のブレード50を回転させる。これにより、フィルムロール体22の外周に凹凸ができることを抑止できる。また、水槽26ごと回転させるため、回転機構30の構成部品を水槽26の中に入れなくて済む。回転機構30の構成部品を水槽26の中に入れると水槽26の中の水が揺れてバブル24に偏肉が生じる原因となるところ、これを避けられる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例を説明する。
【0053】
(変形例1)
図6(a)、(b)は、変形例に係るサイジングリング128を示す斜視図である。図6(a)は挿通孔128aの内径を最大にした状態のサイジングリング128を示し、図6(b)は挿通孔128aの内径を最小にした状態のサイジングリング128を示す。図7は、サイジングリング128の側面図である。図7では、見やすさのために、ブレード150を1つのみ示している。
【0054】
サイジングリング128は、複数(図示の例では32個)のブレード(内径画成部材)150と、複数のブレード150を保持する第1保持部材152および第2保持部材154と、を含む。この例では、サイジングリング128の全体、すなわち複数のブレード150、第1保持部材152および第2保持部材154が、挿通孔128aの内径を変化させる内径可変機構132を構成する。
【0055】
第1保持部材152は、薄肉の円環状の部材である。第2保持部材154は、第1保持部材152と同様の形状および大きさを有する部材である。すなわち、第2保持部材154は薄肉の円環状の部材である。
【0056】
複数のブレード150はそれぞれ、略円弧状の本体部156と、直線状の連結部158と、を含む。本体部156は、一方の端部156aは第1保持部材152に回転可能に連結され、他方の端部156bは連結部158の一方の端部158aに回転可能に連結される。連結部158の他方の端部158bは、第2保持部材154に回転可能に連結される。本体部156の一方の端部156aと連結部158の他方の端部158bは、保持部材152,154の中心を挟んで概ね反対側に位置する。
【0057】
複数のブレード150はそれぞれ、他のブレード150の少なくとも1つと軸方向に重なるように配置される。また、複数のブレード150の本体部156の端部156aは、周方向に並ぶように第1保持部材152に連結される。同様に、複数のブレード150の連結部158の端部158bは、周方向に並ぶように第2保持部材154に連結される。
【0058】
図8(a)~(c)は、サイジングリング128の動作を説明する図である。図8(a)~(c)では、見やすさのために、ブレード150を2つのみ示している。図8(a)は挿通孔128aの内径が最大の状態を示し、図8(c)は挿通孔128aの内径が最小の状態を示す。第1保持部材152を第2保持部材154に対して時計回り方向に回すと、サイジングリング128の状態が図8(a)→図8(b)→図8(c)と変化する。反対に、第1保持部材152を第2保持部材154に対して反時計回り方向に回すと、サイジングリング128の状態が図8(c)→図8(b)→図8(a)と変化する。
【0059】
上述したように、ブレード150の一端(すなわち本体部156の端部156a)は第1保持部材152に連結されており、他端(すなわち連結部158の端部158b)は第2保持部材154に連結されている。
【0060】
そのため、第1保持部材152を第2保持部材154に対して時計回り方向に回転させると、本体部156の端部156aの第1保持部材152との連結部分は時計回り方向に移動し、一方で、連結部158の端部158bの第2保持部材154との連結部分は移動しない。これにより、本体部156と連結部158の相対位置が変化する。そしてブレード150は概ね他端(すなわち連結部158の端部158b)を中心に時計回り方向に回転する。その結果、ブレード150は径方向内側に移動する。各ブレード150が径方向内側に移動するほど、各ブレード150の側面150aにより構成されるサイジングリング128の挿通孔128aの内径は小さくなる。
【0061】
反対に、第1保持部材152を第2保持部材154に対して反時計回り方向に回転させると、本体部156の端部156aの第1保持部材152との連結部分は反時計回り方向に移動し、一方で、連結部158の端部158bの第2保持部材154との連結部分は移動しない。これにより、本体部156と連結部158の相対位置が変化する。そしてブレード150は概ね他端(すなわち連結部158の端部158b)を中心に反時計回り方向に回転する。その結果、ブレード150は径方向外側に移動する。ブレード150が径方向外側に移動するほど、複数のブレード150の側面150aにより構成されるサイジングリング128の挿通孔128aの内径は大きくなる。
【0062】
実施の形態のサイジングリング28と同様に、第1保持部材152を第2保持部材154に対して時計回り方向または反時計回り方向に回転させることで、複数のブレード150のそれぞれの他のブレード150との相対位置が変化し、挿通孔128aの内径が変化する。
【0063】
ここでは第1保持部材152を第2保持部材154に対して回転させる場合について説明したが、これには限定されず、第2保持部材154を第1保持部材152に対して回転させてもよい。
【0064】
複数のブレード150により構成される大きさが可変の挿通孔128aは、実施の形態の挿通孔128と同様に、非真円となる。したがって、実施の形態と同様に、回転機構によって複数のブレード150を互いの位置関係を維持したまま回転させるようにしてもよい。例えば、水槽26ごと、サイジングリング128ひいては複数のブレード150を回転させるようにしてもよい。
【0065】
インフレーション成形装置1は、鉛直方向に同心に並んだ複数のサイジングリング128を備えてもよい。サイジングリング128の数を調整することにより、挿通孔28aの周面の合計高さを調整できる。
【0066】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
(変形例2)
実施の形態および上述の変形例では、回転機構30が水槽26ごとサイジングリングを回転させる場合について説明したが、回転機構30はサイジングリングを直接回転させてもよい。
【0068】
変形例1のサイジングリング128を直接回転させる場合について説明する。図9(a)、(b)はさらに別の変形例に係るサイジングリング128とその周辺を示す図である。この例では、見やすさのために、ブレード150を4つのみ示している。図9(a)、(b)のサイジングリング128は、図6(a)、(b)のサイジングリング128と対応する。本変形例のサイジングリング128は、第1保持部材152および第2保持部材154の外周面に外歯152a,154aが形成されている。回転機構30は、不図示の駆動装置と、駆動装置の回転軸に嵌合された外歯車40と、を含む。保持部材152,154の外歯152a,154aは、外歯車40と噛み合う。これにより、駆動装置の出力軸の回転に伴って外歯車40が回転すると、保持部材152,154とともにサイジングリング128が回転する。
【0069】
実施の形態のサイジングリング28を直接回転させてもよい。この場合、例えば、第1保持部材52および第2保持部材54の外周面に外歯を形成し、外歯車40と噛み合わさせて保持部材52,54回転させればよい。
【0070】
なお、サイジングリングの内径を変化させる場合、第1保持部材および第2保持部材の外歯と、回転機構30の駆動装置36の回転軸に嵌合された外歯車40との係合を解除する。つまり、それらが噛み合わない状態にする。サイジングリング全体を回転させる場合、第1保持部材および第2保持部材の外歯と、回転機構30の駆動装置36の回転軸に嵌合された外歯車とを係合する。つまり、それらが噛み合った状態にする。この場合、第2冷却装置14は、第1保持部材および第2保持部材の外歯と、回転機構30の駆動装置36の回転軸に嵌合された外歯車との係合および係合解除を行う係合状態切替機構を備えるようにしてもよい。
【0071】
あるいはまた、サイジングリングの内径を変化させる場合、第1保持部材および第2保持部材の外歯の一方と、回転機構30の駆動装置36の回転軸に嵌合された外歯車とを係合する。つまりこの例では、回転機構30の駆動装置36によって第1保持部材および第2保持部材の一方を回転させることにより、サイジングリングの内径を変化させる。サイジングリング全体を回転させる場合、第1保持部材および第2保持部材の外歯の両方と、駆動装置の回転軸に嵌合された外歯車とを係合する。この場合、第2冷却装置14は、回転機構30の駆動装置36の回転軸に嵌合された外歯車を、第1保持部材および第2保持部材の外歯の一方と係合させたり、両方と係合させたりする、係合状態切替機構を備えるようにしてもよい。
【0072】
本変形例によれば、実施の形態と同様に、フィルムロール体22の外周に凹凸ができることを抑止できる。また、サイジングリングを直接回転させるすなわち水槽26は回転させないため、水槽26の供給口26cに接続されるホースがねじれる問題が生じない。
【0073】
(変形例3)
実施の形態および上述の変形例では、第2冷却装置14が回転機構30を備える場合について説明したが、これには限定されず、第2冷却装置14が回転機構を備えない構成も考えられる。すなわち、大きさが可変の挿通孔28aを構成する複数のブレード50,150を回転させない構成も考えられる。
【0074】
(変形例4)
実施の形態および上述の変形例では、第2冷却装置14のサイジングリング28,128が内径可変機構32,132を備える場合について説明したが、これには限定されず、サイジングリングが内径可変機構を備えていなくてもよい。つまり、サイジングリングの内径が可変でなくてもよい。言い換えると、サイジングリングは、円筒状の内周面を有する筒状に形成されてもよい。回転機構は、直接にサイジングリングを回転させてもよいし、水槽26を回転させることによってサイジングリングを回転させてもよい。サイジングリングを回転させることによって、サイジングリングの内周面の加工誤差やサイジングリングの取り付け誤差によるバブルの膜厚のバラツキを抑制できる。
【0075】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0076】
1 インフレーション成形装置、 24 バブル、 26 水槽、 28,128 サイジングリング、 30 回転機構、 50,150 ブレード。
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