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特開2022-128815縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置
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  • 特開-縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128815
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 49/00 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
B21C49/00 B
B21C49/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027247
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 一駿
(72)【発明者】
【氏名】森枝 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田野口 一郎
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026HA03
(57)【要約】
【課題】キャリッジの傾斜をより確実に抑制しやすい縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置を提供すること。
【解決手段】縦型ルーパー1の傾斜抑制方法は、キャリッジ2を昇降可能に支持するワイヤロープ4の巻取りドラム6からキャリッジ2のY方向(幅方向)一端部2aまでのワイヤ経路R1(第一ワイヤ経路)と、巻取りドラム6からキャリッジ2のY方向他端部2bまでのワイヤ経路R2(第二ワイヤ経路)と、の差に基づいてキャリッジ2の昇降量に応じた当該キャリッジ2の傾斜量を算出する第一ステップS1と、キャリッジ2の高さ位置を検出する第二ステップS2と、高さ位置と傾斜量とに基づいてキャリッジ2の傾斜を補正する第三ステップS3と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジを昇降可能に支持するワイヤロープの巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向一端部までの第一ワイヤ経路と、前記巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向他端部までの第二ワイヤ経路と、の差に基づいて前記キャリッジの昇降量に応じた当該キャリッジの傾斜量を算出する第一ステップと、
前記キャリッジの高さ位置を検出する第二ステップと、
前記高さ位置と前記傾斜量とに基づいて前記キャリッジの傾斜を補正する第三ステップと、
を含む、縦型ルーパーの傾斜抑制方法。
【請求項2】
前記第一ワイヤ経路と前記第二ワイヤ経路とにおける前記ワイヤロープの経時的な伸び差に応じた前記キャリッジの傾斜量を学習する第四ステップと、
前記第四ステップで学習した傾斜量に基づいて前記キャリッジの傾斜を補正する第五ステップと、
を含む、請求項1に記載の縦型ルーパーの傾斜抑制方法。
【請求項3】
キャリッジを昇降可能に支持するワイヤロープの巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向一端部までの第一ワイヤ経路と、前記巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向他端部までの第二ワイヤ経路と、の差に基づいて前記キャリッジの昇降量に応じた当該キャリッジの傾斜量を算出する算出部と、
前記キャリッジの高さ位置を検出する検出部と、
前記キャリッジの傾斜を補正可能な昇降機構と、
前記高さ位置と前記傾斜量とに基づいて前記昇降機構を制御する制御部と、
を備えた、縦型ルーパーの傾斜抑制装置。
【請求項4】
前記第一ワイヤ経路と前記第二ワイヤ経路とにおける前記ワイヤロープの経時的な伸び差に応じた前記キャリッジの傾斜量を学習する傾斜学習手段を備え、
前記制御部は、前記傾斜学習手段で学習した傾斜量に基づいて前記昇降機構を制御する、請求項3に記載の縦型ルーパーの傾斜抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、連続焼鈍設備等では、操業途中でライン速度を落とさないようにするために、板をため込む役割をもつルーパー設備が設けられている。縦型ルーパーでは、板をため込む際にキャリッジが上昇し、板を吐き出す際にキャリッジが下降する仕組みとなっており、ワイヤロープによってキャリッジを昇降可能に支持している。
【0003】
縦型ルーパーでは、設備のスペース等の関係から、巻取りドラムからキャリッジの幅方向一端部までの第一ワイヤ経路と巻取りドラムからキャリッジの幅方向他端部までの第二ワイヤ経路とが異なることや、各ワイヤ経路におけるワイヤロープの伸び量が異なることが多いこと等によってキャリッジが傾斜し、それに伴って鋼板の蛇行が発生して鋼板に疵が入る虞がある。
【0004】
そこで、キャリッジの傾斜を補正することによって鋼板の蛇行を抑制する対策がとられてきた。例えば、特許文献1には、キャリッジの傾斜を補正(調整)することが可能な昇降機構と、キャリッジの傾斜を検出(測定)することが可能な傾斜計と、傾斜計の検出結果に基づいて昇降機構を制御する制御部と、を備えた縦型ルーパーの傾斜抑制装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-39711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の縦型ルーパーの傾斜抑制装置では、傾斜が発生した際の傾斜値を信号として与えて調整する所謂フィードバック制御になるので、遅れが生じてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、キャリッジの傾斜をより確実に抑制しやすい縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる縦型ルーパーの傾斜抑制方法は、キャリッジを昇降可能に支持するワイヤロープの巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向一端部までの第一ワイヤ経路と、前記巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向他端部までの第二ワイヤ経路と、の差に基づいて前記キャリッジの昇降量に応じた当該キャリッジの傾斜量を算出する第一ステップと、前記キャリッジの高さ位置を検出する第二ステップと、前記高さ位置と前記傾斜量とに基づいて前記キャリッジの傾斜を補正する第三ステップと、を含む。
【0009】
また、前記第一ワイヤ経路と前記第二ワイヤ経路とにおける前記ワイヤロープの経時的な伸び差に応じた前記キャリッジの傾斜量を学習する第四ステップと、前記第四ステップで学習した傾斜量に基づいて前記キャリッジの傾斜を補正する第五ステップと、を含む。
【0010】
また、本発明にかかる縦型ルーパーの傾斜抑制装置は、キャリッジを昇降可能に支持するワイヤロープの巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向一端部までの第一ワイヤ経路と、前記巻取りドラムから前記キャリッジの幅方向他端部までの第二ワイヤ経路と、の差に基づいて前記キャリッジの昇降量に応じた当該キャリッジの傾斜量を算出する算出部と、前記キャリッジの高さ位置を検出する検出部と、前記キャリッジの傾斜を補正可能な昇降機構と、前記高さ位置と前記傾斜量とに基づいて前記昇降機構を制御する制御部と、を備える。
【0011】
また、前記第一ワイヤ経路と前記第二ワイヤ経路とにおける前記ワイヤロープの経時的な伸び差に応じた前記キャリッジの傾斜量を学習する傾斜学習手段を備え、前記制御部は、前記傾斜学習手段で学習した傾斜量に基づいて前記昇降機構を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャリッジの傾斜をより確実に抑制しやすい縦型ルーパーの傾斜抑制方法および傾斜抑制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態の縦型ルーパーの例示的かつ模式的な斜視図であって、キャリッジが下降位置にある状態の図である。
図2図2は、実施形態の縦型ルーパーの例示的かつ模式的な斜視図であって、キャリッジが上昇位置にある状態の図である。
図3図3は、実施形態の縦型ルーパーの傾斜抑制装置の例示的かつ模式的な構成図である。
図4図4は、実施形態の縦型ルーパーにおけるキャリッジの傾斜の原因の一例を説明する説明図である。
図5図5は、実施形態の縦型ルーパーのキャリッジの傾斜量と昇降量との関係を示す例示的なグラフである。
図6図6は、実施形態の縦型ルーパーのキャリッジの傾斜量と経時量との関係を示す例示的なグラフである。
図7図7は、実施形態の縦型ルーパーのキャリッジの傾斜量と鋼板の蛇行量との関係を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0016】
[実施形態]
図1は、実施形態の縦型ルーパー1の斜視図であって、キャリッジ2が下降位置P1にある状態の図であり、図2は、キャリッジ2が上昇位置P2にある状態の図である。なお、以下の説明では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、縦型ルーパー1の前後方向に沿い、Y方向は、縦型ルーパー1の左右方向に沿い、Z方向は、縦型ルーパー1の上下方向に沿う。
【0017】
また、以下の説明では、便宜上、X方向は前方と称され、X方向の反対方向は後方と称され、Y方向は右方と称され、Y方向の反対方向は左方と称され、Z方向は上方と称され、Z方向の反対方向は下方と称される場合がある。Y方向は、キャリッジ2の幅方向の一例である。
【0018】
図1,2に示されるように、縦型ルーパー1は、例えば、キャリッジ2と、キャリッジロール3と、ワイヤロープ4と、シーブ5と、巻取りドラム6と、後述する傾斜抑制装置10(図3参照)と、を備えている。
【0019】
キャリッジ2は、ワイヤロープ4によって図1に示される下降位置P1と、図2に示される上昇位置P2(図2参照)と、の間でZ方向に沿って昇降可能、すなわち上下動可能に支持されている。キャリッジ2には、不図示の鋼板をX方向に搬送するための複数のキャリッジロール3が配置されている。
【0020】
ワイヤロープ4は、キャリッジ2の四隅から上方に延びるとともにシーブ5を介して下方に折り返されて巻取りドラム6に連結されている。本実施形態では、キャリッジ2の前方側において巻取りドラム6が左右二つのワイヤロープ4で共用され、キャリッジ2の後方側において巻取りドラム6が左右二つのワイヤロープ4で共用されている。
【0021】
ここで、本実施形態では、ワイヤロープ4の巻取りドラム6からキャリッジ2のY方向一端部2aまでのワイヤ経路R1と、巻取りドラム6からキャリッジ2のY方向他端部2bまでのワイヤ経路R2と、が異なる。具体的には、巻取りドラム6がキャリッジ2のY方向両側に設けられずに片側に設けられ、もう片側には巻取りドラム6に替えてシーブ5が配置されている。
【0022】
上述した構成によって、本実施形態では、ワイヤ経路R2におけるワイヤロープ4の長さ(ワイヤ長)は、ワイヤ経路R1におけるワイヤロープ4の長さよりも長い。また、ワイヤ経路R2に介在するシーブ5の数は、ワイヤ経路R1に介在するシーブ5の数よりも多い。具体的には、ワイヤ経路R2には、二つのシーブ5が配置され、ワイヤ経路R1には、一つのシーブ5が配置されている。
【0023】
さらに、本実施形態では、ワイヤ経路R1における巻取りドラム6から一つ目のシーブ5までの距離l(l’)は、ワイヤ経路R2における巻取りドラム6から一つ目のシーブ5までの距離l(l’)よりも長い。ワイヤ経路R1は、第一ワイヤ経路の一例であり、ワイヤ経路R2は、第二ワイヤ経路の一例である。
【0024】
次に、傾斜抑制装置10についてより詳しく説明する。図3は、縦型ルーパー1の傾斜抑制装置10の構成図である。図3に示されるように、傾斜抑制装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置20と、昇降機構30と、検出部40と、傾斜計50と、を有している。
【0025】
昇降機構30は、例えば、スクリュージャッキ31と、モータ32と、を有している。スクリュージャッキ31は、ワイヤロープ4のキャリッジ2側の端部(ワイヤエンド部)に、不図示の取付ベースを介して連結されている。スクリュージャッキ31は、取付ベースに対してZ方向に伸縮することで、キャリッジ2のY方向とZ方向との間の傾斜を調整可能、すなわち補正可能である。
【0026】
モータ32は、スクリュージャッキ31の駆動源である。本実施形態では、例えば、制御装置20がモータ32の回転方向や回転数等を制御することによって、スクリュージャッキ31がキャリッジ2のY方向一端部2aを上方に持ち上げたり、下方に押し下げたりすることができる。
【0027】
検出部40および傾斜計50は、例えば、キャリッジ2上に設けられている。本実施形態では、検出部40は、キャリッジ2の高さ位置(高さ情報)を検出可能であり、傾斜計50は、キャリッジ2の傾斜量を測定可能である。検出部40は、例えば、アブソコーダ等によって構成されている。
【0028】
制御装置20は、例えば、算出部21や、制御部22、記憶部23、学習部24等を有している。算出部21は、上述したワイヤ経路R1とワイヤ経路R2との差に基づいて、キャリッジ2の昇降量に応じたキャリッジ2の傾斜量を算出する機能ブロックである。なお、本実施形態では、算出部21、制御部22、記憶部23、および学習部24は、ソフトウエアとハードウエアとの協働によって実現されるが、少なくとも部分的にハードウエアによって実現されてもよい。
【0029】
図4は、縦型ルーパー1におけるキャリッジ2の傾斜の原因の一例を説明する説明図である。なお、図4中、距離lは、キャリッジ2の下降位置P1におけるワイヤ経路R1の巻取りドラム6から一つ目のシーブ5までの距離に相当し、距離l’は、キャリッジ2の上昇位置P2におけるワイヤ経路R1の巻取りドラム6から一つ目のシーブ5までの距離に相当する。
【0030】
また、図4中、距離lは、キャリッジ2の下降位置P1におけるワイヤ経路R2の巻取りドラム6から一つ目のシーブ5までの距離に相当し、距離l’は、キャリッジ2の上昇位置P2におけるワイヤ経路R2の巻取りドラム6から一つ目のシーブ5までの距離に相当する。ここで、本実施形態では、二つのワイヤ経路R1,R2の変化量(変位量)は、以下の式(1)によって求めることができる。
【0031】
【数1】
【0032】
数1から明らかなように、本実施形態では、ワイヤ経路R2の変化量は、ワイヤ経路R1の変化量よりも大きい。このため、キャリッジ2が下降位置P1から上昇位置P2まで上昇した際に、キャリッジ2に傾斜が生じてしまう。
【0033】
図5は、縦型ルーパー1のキャリッジ2の傾斜量と昇降量としてのLPレベルとの関係を示すグラフである。なお、図5中、同調位置は、下降位置P1の一例であり、キャリッジ2の有効ストロークの下限位置に相当する。同調位置は、縦型ルーパー1内の鋼板の搬送速度がライン全体の鋼板の搬送速度と同じになるキャリッジ2の位置である。キャリッジ2は、LPレベルが100%に近づくほど上昇位置P2へと近づく。
【0034】
制御部22は、図5に示される算出部21によって算出されたキャリッジ2の傾斜量や、図6に示される傾斜学習手段によって算出されたキャリッジ2の傾斜量に基づいて、キャリッジ2の傾斜を補正する機能ブロックである。
【0035】
具体的には、制御部22は、例えば、上述した検出部40によって検出された現状のキャリッジ2の高さ位置(高さ情報)からLPレベル(図5の横軸)を算出し、当該LPレベルに対応するキャリッジ2の傾斜量(図5の縦軸)に基づいてキャリッジ2の補正代を決定する。そして、その補正代に基づいてキャリッジ2の傾斜を補正するよう昇降機構30のモータ32を制御する。
【0036】
図6は、縦型ルーパー1のキャリッジ2の傾斜量と経時量との関係を示すグラフである。ワイヤロープ4には、クリープ伸びと呼ばれる時間の経過につれて伸びていく特性がある。また、ワイヤロープ4は、シーブ5による曲げ回数によっても伸び差が生じる。上述したように、本実施形態では、ワイヤ経路R1とワイヤ経路R2とでワイヤロープ4の長さや曲げ回数等が異なるため、経時的に伸び量がそれぞれで変わってしまいキャリッジ2に傾斜が生じてしまう。
【0037】
ここで、本実施形態では、傾斜抑制装置10には、傾斜学習手段が設けられている。傾斜学習手段は、例えば、傾斜計50(図3参照)と、記憶部23と、学習部24と、を有している。記憶部23は、傾斜計50によって測定されたキャリッジ2の傾斜量を記憶する機能ブロックである。記憶部23は、例えば、経時量として1カ月毎のキャリッジ2の傾斜量を記憶する。
【0038】
図6に示されるように、学習部24は、記憶部23によって記憶されたキャリッジ2の傾斜量に基づいて、ワイヤロープ4の経時的な伸び差に応じたキャリッジ2の傾斜量を学習する機能ブロックである。本実施形態では、制御部22は、経時量(図6の横軸)に対応するキャリッジ2の傾斜量(図6の縦軸)に基づいてキャリッジ2の補正代を決定し、その補正代に基づいてキャリッジ2の傾斜を補正するようモータ32を制御する。
【0039】
図7は、縦型ルーパー1のキャリッジ2の傾斜量と鋼板の蛇行量との関係を示すグラフである。図7に示されるように、本実施形態では、上述した傾斜抑制装置10によって、鋼板に疵を発生させない傾斜量以下に常にキャリッジ2を保つことが可能である。これにより、縦型ルーパー1の安定操業につながる。
【0040】
以上のように、本実施形態では、縦型ルーパー1の傾斜抑制方法は、キャリッジ2を昇降可能に支持するワイヤロープ4の巻取りドラム6からキャリッジ2のY方向(幅方向)一端部2aまでのワイヤ経路R1(第一ワイヤ経路)と、巻取りドラム6からキャリッジ2のY方向他端部2bまでのワイヤ経路R2(第二ワイヤ経路)と、の差に基づいてキャリッジ2の昇降量に応じた当該キャリッジ2の傾斜量を算出する第一ステップS1と、キャリッジ2の高さ位置を検出する第二ステップS2と、高さ位置と傾斜量とに基づいてキャリッジ2の傾斜を補正する第三ステップS3と、を含む。
【0041】
このような構成によれば、例えば、ワイヤ経路R1,R2から幾何学的に決まるキャリッジ2の昇降量に応じた傾斜量を事前に求め、その傾斜量と現状のキャリッジ2の高さ位置とに基づいて補正代を決定し、その補正代に基づいてキャリッジ2の傾斜を補正することができる。よって、例えば、キャリッジ2の傾斜の補正(調整)に遅れが生じてしまうのを抑制でき、ひいては構造上起きてしまうキャリッジ2の傾斜をより確実に抑制しやすい縦型ルーパー1の傾斜抑制方法および傾斜抑制装置10を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、縦型ルーパー1の傾斜抑制方法は、ワイヤ経路R1とワイヤ経路R2とにおけるワイヤロープ4の経時的な伸び差に応じたキャリッジ2の傾斜量を学習する第四ステップS4と、第四ステップS4で学習した傾斜量に基づいてキャリッジ2の傾斜を補正する第五ステップS5と、を含む。
【0043】
このような構成によれば、例えば、ワイヤロープ4の経時量に対応するキャリッジ2の傾斜量に基づいてキャリッジ2の補正代を決定し、その補正代に基づいてキャリッジ2の傾斜を補正することができる。これにより、例えば、キャリッジ2の傾斜の補正(調整)に遅れが生じてしまうのを抑制でき、ひいては経時的に起きてしまうキャリッジ2の傾斜をより確実に抑制しやすい縦型ルーパー1の傾斜抑制方法および傾斜抑制装置10を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…縦型ルーパー
2…キャリッジ
2a…一端部
2b…他端部
4…ワイヤロープ
6…巻取りドラム
10…傾斜抑制装置
21…算出部
22…制御部
23…記憶部(傾斜学習手段)
24…学習部(傾斜学習手段)
30…昇降機構
40…検出部
50…傾斜計(傾斜学習手段)
R1…ワイヤ経路(第一ワイヤ経路)
R2…ワイヤ経路(第二ワイヤ経路)
S1…第一ステップ
S2…第二ステップ
S3…第三ステップ
S4…第四ステップ
S5…第五ステップ
Y…キャリッジの幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7