(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128830
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】拡張式ブラインドスタッド
(51)【国際特許分類】
F16B 13/04 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F16B13/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027270
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】517258774
【氏名又は名称】土肥 雄治
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】浜田 敏次
【テーマコード(参考)】
3J025
【Fターム(参考)】
3J025AA08
3J025BA06
3J025CA01
(57)【要約】
【課題】作業者の負担を軽減できると共に引き抜き抵抗の調節も容易な拡張式ブラインドスタッドを提供する。
【解決手段】拡張式ブラインドスタッドは、ブラインド部6及びスタッド部7を有する本体軸3と、部材2を固定するためのナット4と、拡張ボルト8とを有しており、ブラインド部6に、拡張ボルト8のねじ戻しで広がり変形する拡張部10を設けている。拡張部10はスリット9で分断されており、拡張ボルト8をねじ戻すと、花びら状に広がりながら施工部1の内周縁に食い込んでいく。ハンマの振り回しは不要であるため、作業者の負担を軽減できる。拡張部10に対して、拡張ボルト8の回転トルクを大きなモーメントとして作用させることができるため、拡張部10を軽い力で大きく広げ変形させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の施工部に貫通した下穴に外側から挿入されるブラインド部を有する中空の本体軸と、前記本体軸のうち前記施工部の外側に露出したスタッド部にねじ込まれて部材を前記施工部に押さえ固定するナットと、前記本体軸に前端からねじ込まれた拡張ボルトとを有しており、
前記拡張ボルトの前端には頭を設けている一方、
前記ブラインド部に、前記拡張ボルトをねじ戻すと前記頭によって押し広げられて前記施工部の内面に突っ張る拡張部が設けられている、
拡張式ブラインドスタッド。
【請求項2】
前記拡張部は前記本体軸に一体に形成されており、前端に向けて開口した複数本のスリットを周方向に並設することによって広がり変形が許容されている、
請求項1に記載した拡張式ブラインドスタッド。
【請求項3】
前記拡張部は前記本体軸とは別体に形成されており、少なくとも前端に向けて開口したスリットを形成することによって広がり変形が許容されている、
請求項1に記載した拡張式ブラインドスタッド。
【請求項4】
前記拡張部における前端部の内面と前記拡張ボルトにおける頭の後面とのうち少なくとも一方に、前記頭の後退動によって前記拡張部が広がり変形するように案内するテーパ面が形成されている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した拡張式ブラインドスタッド。
【請求項5】
前記本体軸のスタッド部に、前記施工部の外面部に当たって挿入深さを規制するストッパー手段が設けられている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した拡張式ブラインドスタッド。
【請求項6】
前記ストッパー手段は、前記スタッド部に一体に形成したフランジである、
請求項5に記載した拡張式ブラインドスタッド。
【請求項7】
前記ストッパー手段は前記本体軸とは別部材であり、弾性変形を利用して前記スタッド部を抱持しているか、又は前記スタッド部にねじ込みによって取付けられているか、若しくは、前記スタッド部に設けた溝を利用して着脱自在に取付けられている、
請求項5に記載した拡張式ブラインドスタッド。
【請求項8】
前記本体軸のスタッド部は前記施工部の下穴よりも大径に形成されている、
請求項1~7のうちのいずれかに記載した拡張式ブラインドスタッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、板状の施工部に外側から(表面側から)の操作によって取り付ける拡張式(拡開式)ブラインドスタッド(ワンサイドスタッドと呼ぶこともできる)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
型鋼製構造体のような板材より成る施工部の外側から操作して取り付ける拡張式の固定具は、広く使用されている。この拡張式固定具には様々なタイプがあるが、施工部の表面からの突出が殆ど又は全く無くて、部材をボルトによって固定するタイプ(ブラインドアンカー)と、施工部の外側に突出するスタッド部を有して、スタッド部にねじ込んだナットで部材を施工部に固定するタイプ(ブラインドスタッド)とに大別される。
【0003】
いずれにしても、固定具は本体軸を有しており、本体軸に、施工部の下穴に入り込むブラインド部を設けて、このブラインド部を広げることによって施工部に抜け不能に保持している。その例が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1には、部材をボルトで固定するアンカータイプと、部材をナットで固定するスタッドタイプとの両方が開示されており、拡張部は、本体軸に外側からねじ込まれたボルト又は挿通されたピンによって広げられるようになっている。また、拡張部は本体軸に一体に形成されており、前端(先端)に向けて開口した複数のスリットを形成して、隣り合ったスリットの間の部位を前端が自由端になった舌状部に形成しており、舌状部がボルト又はピンで押し広げられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、各舌状部が施工部の内面側で広がり変形することにより、施工部をしっかりとクランプして高い引き抜き抵抗を確保できる利点や、ボルトによる拡張を採用すると作業者の負担を軽減できる利点があるが、改良の余地が見られた。
【0007】
例えば、特許文献1では、拡張部を構成する各舌状部は付け根部を押して曲げるものであるため、舌状部に大きなモーメントを掛けることができず、このため、拡張部の押し広げに大きな力を要する問題や、曲げられた舌状部を施工部の内面部に対して強く密着させにくいという問題があり、結果として、ボルトに掛ける回転トルクを引き抜き抵抗に変換する効率が悪くなっていた。
【0008】
本願発明はこのような現状を契機に成されたものであり、施工面から突出するスタッド部を有する拡張式ブラインドスタッドに関し、改良された形態で提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は様々の構成を含んでおり、その典型を各請求項で例示している。請求項1の発明は、
「板状の施工部に貫通した下穴に外側から挿入されるブラインド部を有する中空の本体軸と、前記本体軸のうち前記施工部の外側に露出したスタッド部にねじ込まれて部材を前記施工部に押さえ固定するナットと、前記本体軸に前端からねじ込まれた拡張ボルトとを有しており、
前記拡張ボルトの前端には頭を設けている一方、
前記ブラインド部に、前記拡張ボルトをねじ戻すと前記頭によって押し広げられて前記施工部の内面に突っ張る拡張部が設けられている」
という構成になっている。
【0010】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記拡張部は前記本体軸に一体に形成されており、前端に向けて開口した複数本のスリットを周方向に並設することによって広がり変形が許容されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明も請求項1の展開例であり、
「前記拡張部は前記本体軸とは別体に形成されており、少なくとも前端に向けて開口したスリットを形成することによって広がり変形が許容されている」
という構成になっている。
【0012】
このように拡張部材を本体軸とは別部材に作る場合、拡張部は、複数のスリットが前向きにのみ開口するように形成して、拡張ボルトの押し広げ作用によって全体として花びら状に広げることも可能であるし、1本のスリットで分断された非ループに形成して、全体として拡径するように形成してもよい。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1~3のうちのいずれかにおいて、
「前記拡張部における前端部の内面と前記拡張ボルトにおける頭の後面とのうち少なくとも一方に、前記頭の後退動によって前記拡張部が広がり変形するように案内するテーパ面が形成されている」
という構成になっている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1~4のうちのいずれかにおいて、
「前記本体軸のスタッド部に、前記施工部の外面部に当たって挿入深さを規制するストッパー手段が設けられている」
という構成になっている。
【0015】
請求項6の発明は請求項5の展開例であり、
「前記ストッパー手段は、前記スタッド部に一体に形成したフランジである」
という構成になっている。
【0016】
請求項7の発明も請求項5の展開例であり、この発明では、
「前記ストッパー手段は前記本体軸とは別部材であり、弾性変形を利用して前記スタッド部を抱持しているか、又は前記スタッド部にねじ込みによって取付けられているか、若しくは、前記スタッド部に設けた溝を利用して着脱自在に取付けられている」
という構成になっている。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1~7のうちのいずれかにおいて、
「前記本体軸のスタッド部は、前記施工部の下穴よりも大径に形成されている」
という構成になっている。なお、請求項8の発明は、特許文献1のような叩き込み式のブラインドアンカーにも適用できる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では、拡張ボルトは動力ドライバ等の回転式工具によって回転操作されるため、ハンマを使用した叩き込み方式に比べて、作業者の負担は格段に軽減される。特に、高所での作業において安全性を向上できる。また、拡張部の広がり具合を拡張ボルトのねじ戻し量によって調節できるため、下穴の径にバラツキなどがあっても、引き抜き抵抗を一定化して品質を安定化できる。
【0019】
そして、拡張ボルトのねじ戻しによって拡張部を広げるものであるが、拡張部が複数のスリットで分断された複数の舌状部を有している場合、拡張ボルトの頭は舌状部に対して、その前端から基端に向けて当たり位置を変えていくため、舌状部に大きなモーメントを掛けることができる。これにより、各舌状部を軽い力で花びら状に大きく押し曲げることができる。従って、拡張部を施工部の内周縁に食い込ませることも容易に行える。
【0020】
また、押し曲げられた舌状部は拡張ボルトの頭によって施工部の側に引き寄せられるため、舌状部のうち押し曲げられた部位を施工部に対して内側から強く押し付けることできるのであり、これにより、施工部に対する拡張部の固着強度を大きく向上できる。
【0021】
このように、本願発明では、拡張部を軽い力で広げ変形させることができると共に、施工部に対する固着強度も向上できるため、作業者の負担を軽減しつつ部材の固定強度を向上できる。
【0022】
請求項2のように拡張部を本体軸に一体に形成すると、部材管理の手間を抑制できる利点がある。他方、請求項3のように拡張部を本体軸とは別部材で作ると、拡張部の材質や形状を任意に選択できるため、融通性が高い。請求項4の構成を採用すると、拡張ボルトのねじ戻しによって拡張部を広げることがスムースに行われる。従って、作業性がよい。
【0023】
さて、板状の施工部ではその内側が空洞になっているため、取付け作業に際して本体軸が施工部の内側に落ち込まないように配慮する必要がある。特に、ピンを外側から叩き込んで拡張部を広げる方式では、ピンの叩き込みに際して本体軸に大きな前向き荷重が掛かるため、抜け落ち防止手段は必要不可欠になる。
【0024】
この点について、特許文献1のうち
図7に示すスタッドタイプの実施形態では、ナットをストッパーとしてピンの叩き込みを行っており、部材を施工部に重ねてから、ナットが螺合された本体軸を施工部の下穴に挿入し、次いで、ピンの打ち込みによって施工部の内側で拡張部を広げ変形させ、それからナットを締め込んで部材を固定している。従って、作業の手間を軽減できる。
【0025】
しかしながら、常に部材を施工部に重ねて拡張作業を行えるとは限らず、先に本体軸を施工部に固定しておき、それから部材を施工部に重ねて(部材の取付け穴を本体軸に嵌め込み)、ナットを本体軸に締め込んで固定するという工程を採らねばならない場合も多いが、この場合は、打ち込み式のスタッドでは、いったんナットを本体軸にねじ込むことによってストッパーとして機能させ、拡張部を拡張してスタッドを施工部に固定してからナットを取り外し、次いで、部材を重ねてからナットをねじ込み直すという手順を踏まねばならず、このため作業に手間がかかるという問題がある。
【0026】
これに対して、請求項5のようにストッパー手段を設けると、部材を施工部に重ねていない場合でも、ナットを本体軸に取り付けておくことなく本体軸を施工部に固定できるため、ナットの取付け・外しの手間を不要にしつつ、施工部の内側への落ち込みを防止できる。従って、現場の要求に応えることができて好適である。
【0027】
ストッパー手段は様々な態様を採用できるが、請求項6のような一体式のフランジを採用すると、部材管理の手間を省くことができる利点がある。この場合、フランジを下穴よりも僅かに大径に設定すると共に、固定される部材に空けられた取付け穴よりも小径に設定しておくと、部材を施工部の外面に密着させることができて好適である。
【0028】
他方、請求項7のようにストッパー手段を本体軸とは別部材に構成すると、ストッパー手段に変形などの機能を容易に保持させることができるため、本体軸が施工部の内側に落ち込むことを防止しつつ、部材を施工部の外面に密着させることができる。従って、融通性に優れている。なお、別部材としてのストッパー手段は、施工時のみに使用して施工後は取り外す方式とすることもできるし、施工後もスタッド部に取り付いたままにすることも可能である。
【0029】
請求項8の構成を採用すると、スタッド部は、それ自体が施工部の内側への落ち込みを防止するストッパー手段として機能するため、管理の手間を省きつつ、部材を施工部の外面に密着した状態に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は施工部に配置した状態での固定前の側面図、(B)は施工部を省略した状態での(A)のB-B視図、(C)は(A)の断面図(縦断側面図)、(D)は拡張工程を示す断面図、(E)は部材を固定した状態の側面図である。
【
図2】第2実施形態を示す図で、(A)は部材に配置した状態での固定前の側面図、(B)は拡張部と拡張ボルトとを示す側面図、(C)は(A)の断面図、(D)は拡張工程を示す断面図である。
【
図3】第3実施形態を示す図で、(A)は施工部に配置した状態での固定前の側面図、(B)は(A)のB-B視断面図、(C)は(A)の断面図(縦断側面図)、(D)は部材を固定した状態の縦断側面図、(E)は変形例を示す側面図である。
【
図4】第3実施形態の変形例である第4実施形態を示す図で、(A)は部材に配置した状態での固定前の状態での側面図、(B)は(A)の断面図(縦断側面図)、(C)は部材を固定した状態での縦断側面図である。
【
図5】(A)は第5実施形態の側面図、(B)は第6実施形態の側面図、(C)は第7実施形態の側面図であり、いずれも施工部に配置して固定前の状態を表示している。
【
図6】(A)は第8実施形態の側面図、(B)は第9実施形態の側面図、(C)は第10実施形態の側面図、(D)は第11実施形態の側面図であり、いずれも施工部に配置して固定前の状態を表示している。
【
図7】(A)は施工部に配置した状態での第12実施形態の部分側面図、(B)は(A)の部分的な断面図、(C)は(A)のC-C視図、(D)は第13実施形態の要部縦断側面図、(E)は施工部に配置した状態での固定前の第14実施形態の側面図、(F)は(E)のF-F視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、方向を特定するため前後の文言を使用するが、前後は、施工部の下穴への差し込み方向に向いた方向として定義している。正面視は、ワークへの差し込み方向から見た状態であり、側面視は本体軸の軸心と直交した方向から見た状態である。
【0032】
(1).第1実施形態の構造
まず、
図1に示す第1実施形態を説明する。本実施形態は、請求項2を具体化したものである。本実施形態の拡張式ブラインドスタッドは、
図1(E)に示すように、板状の施工部1に部材(ワーク)2を固定することに使用される。施工部1としては、例えば角形鋼管のように、内側に人の手を差し入れることができない構造材が挙げられる。なお、複数の部材2を共締めすることも可能である。
【0033】
H型鋼のように表裏両面に人が手を差し入れることができる構造材の場合は、ボルトとナットを人が手で持ってねじ込みできるので、拡張式固定具は必ずしも必要ないが、角形鋼管のように内面に人の手を差し入れることができずに表面側からしか作業を行えない場合に、本実施形態の拡張式ブラインドスタッドが有益である。
【0034】
拡張式ブラインドスタッドは、ストレート状で中空状の本体軸3と、部材2を固定するためのナット4とを有している。本体軸3は、施工部1の下穴5に入るブラインド部6と、施工部1の外側に露出したスタッド部7とを有しており、ブラインド部6に前端から後ろ向きに拡張ボルト8がねじ込まれている。
【0035】
従って、本体軸3の内周には雌ねじが形成されて、スタッド部7の外周面には雄ねじが形成されている。実施形態では、雌ねじは本体軸3の全長に亙って形成しているが、少なくとも、拡張ボルト8がねじ戻される範囲に形成したら足りる。拡張部10の内面には、雌ねじを形成してもよいし、形成しなくてもよい。雄ねじは、スタッド部7の全長に亙って形成している。
【0036】
ブラインド部6の前端部は施工部1の内部空間に露出するようになっており、下穴5に隠れた部分と施工部1の内部空間に露出した部分とを、複数のスリット9によって割られた態様の拡張部10に形成している。従って、拡張部10はブラインド部6に一体に形成されている。スリット9は前端に向けて開口しているため、隣り合ったスリット9で挟まれた部位は、前端を自由端と成した舌状部になっている。
【0037】
本実施形態では、スリット9は6本形成しているが、スリット9の数は、本体軸3の大きさ等に応じて任意に設定できる。拡張部10のうち施工部1の内部空間に露出したはみ出し部10aは、やや先広がりのテーパ状に形成されているが、拡張部10は全体としてストレート状であってもよい。拡張部10の付け根部の外周面にはV形の溝11を形成している。
【0038】
拡張ボルト8の前端には円形の頭12が形成されており、頭12の外周面は、手前に向けて少し縮径したテーパ面になっている。他方、拡張ボルト8の後端面には、六角レンチ等の棒状レンチ13が係合する係合穴(図示せず)を形成している。拡張部10の前端部の内周には、拡張ボルト8の頭12を誘い込むためのテーパ面14を形成している。スタッド部7の後端には、回り止め手段の一例として、スパナ(図示せず)が係合する一対の平坦面15を形成している。
【0039】
スタッド部7及びブラインド部6(拡張部10)は、下穴5の内径よりも僅かに小径に設定されている。また、拡張ボルト8の頭12の最大径は拡張部10の最大径よりも小さい寸法に設定している(拡張部10と同径であってもよい。)。従って、拡張ボルト8が取付けられたブラインド部6を施工部1の下穴5に挿入できる。
【0040】
(2).第1実施形態の施工
図1の(A)(B)では部材2を表示していないが、本実施形態の標準的な工法(施工手順)としては、予め部材2を施工部1に重ね配置し、ナット4をスタッド部7にねじ込んだ状態で、本体軸3の固定作業(拡張ボルト8のねじ戻し)が行われる。部材2を予め施工部1に配置できずに先にスタッドを施工部に取付けなければならない場合は、ナット4をストッパーと成して、ブラインド部6が施工部1の厚さとの関係で所定の深さに入り込むように、ナット4を所定位置までねじ込んでおく。施工部1が厚い場合は、ブラインド部6の長さは長くなる。従って、ブラインド部6とスタッド部7とは、施工部1の厚さによって変化する相対的な関係になっている。
【0041】
拡張部10のはみ出し部10aが施工部1の内側の空間に露出する状態に本体軸3をセットしてから、スタッド部7をスパナで回り止めした状態で、
図1(D)に示すように、棒状レンチ13によって拡張ボルト8をねじ戻す。すると、
図1(D)に示すように、拡張部10は、拡張ボルト8の頭12の押圧作用により、その前端が下穴5の放射方向外側まで押し広げられつつ(拡張しつつ)、中途部が下穴5の縁部に食い込んでいく。これにより、本体軸3は、施工部1に対して、前後移動不能に固定される。
【0042】
拡張部10が拡張しきったら、部材2が重なっている標準工程では、ナット4をそのまま締め込んで部材2を施工部1に固定したらよい。部材2を重ねていない場合は、ナット4を取り外して部材2を施工部1にセットし、それからナット4を付け直して部材2を施工部1に固定する。
【0043】
いずれにしてしも、拡張作業において重いハンマを振り回す必要はないため、作業者の負担を軽減できる。また、下穴5に加工誤差があっても、所定の強度に取り付けることができる。トルクリミッタ付きの動力ドライバで棒状レンチ13を駆動すると、施工部1に対する拡張部10の抵抗を一定化できるため好適である。本実施形態のように、拡張部10の付け根に溝11を形成しておくと、拡張部10の曲がり変形を容易化できて好適である。
【0044】
拡張ボルト8のねじ戻しに際し、拡張ボルト8の頭12が、拡張部10を構成する舌状部に当たるが、拡張ボルト8の頭12の当たり位置は、舌状部の先端(自由端)から基端(後端、付け根)に向かって移動していく。従って、舌状部に大きなモーメントを掛けることができて、拡張部10(の各舌状部)を軽い力で大きく押し曲げることができる。かつ、曲げられた拡張部10を施工部1の内面に向けて強く押圧できると共に、拡張部10を下穴5の内周縁(特に前側のエッジ部)に大きく食い込ませることもできる。従って、拡張式ブラインドスタッドを軽い力で施工部1に強固に固定できる。
【0045】
拡張ボルト8における頭12の後面は、図示の例では側面視で前広がりのテーパ状になっているが、側面視で湾曲した形状に形成してもよい。拡張部10にテーパ面14を形成している場合、拡張ボルト8の頭12は円板状であってもよい。
【0046】
本実施形態の拡張式ブラインドスタッドは、部材2を施工部1にナット4で押さえ固定することに使用できるが、
図1(D)のように本体軸3を施工部1に固定した状態で、他のナット4を使用して本体軸3にフック類などを取り付けることも可能である。或いは、
図1(D)のような状態で天井面に本体軸3を固定して、スタッド部7に他のナット及びブラケットを介して吊りボルトを取り付けるといった使用方法も採用可能である。いずれにしても、本願発明に含まれる。
【0047】
つまり、本願発明では、ナット4で部材2を施工部1に固定できる状態になっておれば足りるのであり、常に
図1(E)のような態様に使用しなければならないというものではない。結局、使用方法はユーザーに委ねられている。
【0048】
本実施形態では、拡張工程での本体軸3の回り止め手段として平坦面15をスパナで挟んでいるが、本体軸3の後端部に、ナットのねじ込みを阻害しない六角等の係合ボス部を形成しておく一方、ドライバ工具に、係合ボス部に係合する係合筒体を設けることにより、回り止め手段とすることも可能である。この場合は、片手でスパナを持っている必要はないので、作業を軽快に行える。他の実施形態も同様である。
【0049】
さて、インパクトドライバ等の動力ドライバは正逆回転できるが、一般に、右ねじに対応して右回転(正転)のときに大きなトルクを発生できるようになっていることが多い。従って、本実施形態(他の実施形態も同様である)では、拡張ボルト8の雄ねじと本体軸3の雌ねじとを左ねじに形成し、動力ドライバの正転によって拡張ボルト8を後退させる(ねじ戻す)のが好適であると云える。
【0050】
(3).第2実施形態
第1実施形態では拡張部10をスタッド部7に一体に形成したが、
図2に示す第2実施形態では、拡張部10はスタッド部7とは別部材として作られている。すなわち、本実施形態の拡張部10は、筒状の形態を成しており、後端部を除いて複数本(6本)のスリット9によって複数の舌状部に分断されている。
【0051】
拡張部10の前端部は、全周に亙って連続したリング部10bになっている(1本のスリット9を全長に亙って形成して、非ループのC型に形成することも可能である。)。拡張ボルト8の頭12には、拡張部10の広げ変形を容易化するためテーパ面を形成している。本実施形態の拡張部10はパイプを材料にして製造されている。なお、拡張部10の内面には雌ねじは形成されていない。
【0052】
本実施形態の施工手順は第1実施形態と同じであり、拡張式ブラインドスタッドを、拡張部10が部分的に施工部1の内部空間に露出した状態にセットして、拡張ボルト8を棒状レンチ13でねじ戻すことにより、拡張部10を広げ変形させて施工部1に食い込ませ、これにより、本体軸3を施工部1に強固に固定する。
図2では部材2を表示していないが、
図1(E)と同様に部材2が施工部1に固定される。
図2では部材2は表示していないが、この
図2の実施形態においても、部材2を施工部1に重ねた状態で本体軸3の固定作業を行うのが標準工法である。
【0053】
本実施形態のように拡張部10が本体軸3とは別部材になっていると、拡張部10を本体軸3とは異なる材料で製造できるため、例えば、拡張部10として硬い材料を使用して施工部1への食い込み性を向上できるなど、拡張部10の機能を拡大できる利点がある。
【0054】
(4).第3実施形態
図3では、拡張部10は本体軸3とは別部材として製造されており、前後両側に開口した1本のスリット9によって非ループのC形に形成されている。そして、本実施形態の拡張部10は、施工部1の内側の空間で広がる(拡径する)ように設定されている。
【0055】
他方、本体軸3は、スタッド部7の前端に、ストッパー手段として、施工部1の外面に当たるフランジ17を形成している。本実施形態において、ブラインド部6は施工部1の内側空間に露出する長さになっており、前端部に先窄まりのテーパ部6aが形成されている。テーパ部6aは、一部は下穴5に隠れて一部は施工部1の内側空間に露出している。なお、拡張部10の後ろ向き開口縁も僅かに面取りしている。従って、拡張部10はテーパ部6aとはスムースに重なり合う。
【0056】
この実施形態では、フランジ17により、本体軸3の前向き移動(落ち込み)が防止されると共に、ブラインド部6の挿入深さが規定される。従って、本体軸3を施工部1に固定するにおいて、ナット4を取付けておく必要はない。
【0057】
そして、本実施形態において、フランジ17を施工部1の外面に当てた状態で拡張ボルト8をねじ戻すと、拡張部10は、ブラインド部6におけるテーパ部6aのガイド作用によって拡径し、その後面が施工部1の内面1aに当たる。従って、拡張ボルト8をねじ戻しきると、施工部1がフランジ17と拡張部10とで挟圧されて、本体軸3は施工部1に強固に立設される。
【0058】
施工部1の必要箇所にスタッドを取付けてから、部材2を施工部1にセットして、ナット4で固定する。この場合、部材2の取付け穴18の内径をフランジ17の外径よりも僅かに大径に設定しているため、部材2を施工部1の外面に密着させることができる。もとより、フランジ17を取付け穴18よりも大径に設定して、部材2をフランジ17に重ねることも可能である。フランジ17には、部材2の嵌め込みをスムースにするためテーパ面17aを形成している。
【0059】
本実施形態において、拡張部10は一種の拡張式座金であり、部材2の固定に際しては、部材2と施工部1と拡張部10との三者が、ナット4及び拡張ボルト8の頭12によって共締めされる。
【0060】
図3(E)の変形例では、拡張部10は、自由状態ではその外径が施工部1の下穴5よりも大径になって、内径は拡張ボルト8の外径よりも小径になるように設定しており、拡張ボルト8に嵌まった状態で弾性に抗して窄めると下穴5に挿入できる。従って、拡張部10は、下穴5を通り過ぎると弾性力によって自由状態に拡径し、拡張ボルト8を外側に引いても拡張部10が下穴5に嵌まり込むことはない。従って、本体軸3を施工部1から抜け出ない状態に仮保持できると共に、拡張工程で拡張部10を施工部1の内面1aに当てることを確実化できる。拡張部10の前端部には、下穴5への挿入を容易にするためテーパ面10dを形成している。
【0061】
(5).第4実施形態
図4に示す第4実施形態は、第3実施形態の好適な変形例(改良版)である。この第4実施形態では、まず、本体軸3のブラインド部6に、施工部1の内部空間に露出する小径部6bを形成して、小径部6bの前端部にテーパ部6aを形成している。従って、小径部6bと下穴5の内面との間に環状空間19が形成されている。なお、テーパ部6aはその全体が施工部1の内部空間に露出しているが、一部が下穴5に入り込んでいてもよい。
【0062】
他方、拡張部10の後端部に段落ちした状態の小径嵌入部10cを形成しており、小径嵌入部10cは、本体軸3の小径部6bによって広げられた(拡開された)状態で、下穴5の内径よりも小さい外径になるように設定されている。
【0063】
そして、拡張ボルト8のねじ戻しによって拡張部10が後退すると、その後退途次において、小径嵌入部10cがブラインド部6のテーパ部6aを超えると、拡張部10の小径嵌入部10cはブラインド部6の小径部6bを抱持した状態で後退して環状空間19に嵌まり込む。これにより、拡張部10は過大に広がることが阻止され、その状態で、拡張部10が施工部1の内面1aに当接する。
【0064】
従って、部材2を施工部1に重ねてナット4を締め込んでも、拡張部10が過剰に広がり変形することはなくて、拡張部10は座金としての機能を確実に保持する。この実施形態では、拡張部10の小径嵌入部10cが環状空間19に入り込むと部材2を固定できるので、施工部1の厚さの違いに対応できる。すなわち、環状空間19が調整代として機能して、1種類のスタッドを厚さが異なる施工部1に適用できる。
【0065】
(6).第5~7実施形態
図5(A)に示す第5実施形態では、第1実施形態のスタッド部7にフランジ17を設けている。この場合、第3,4実施形態と同様に、部材2の取付け穴18をフランジ17の外径よりも僅かに小径に設定すると共に、フランジ17に後ろ窄まりのテーパ部17aを形成している。
【0066】
図5(B)に示す第6実施形態は、
図2の第2実施形態をベースにしている。第3~5実施形態では、ストッパー手段として、スタッド部7の全周に亙って広がるフランジ17を形成したが、第6実施形態では、ストッパー手段として、スタッド部7に、施工部1の外面に当たるヒレ状のリブ20を周方向に点在させている。図ではリブ20は4つ形成しているが、少なくとも1つあったらよい。
【0067】
リブ20の外接円は、部材2における取付け穴18の内径よりも僅かに大きくなっており、かつ、リブ20には、後ろに向けて高さが低くなる傾斜面20aを形成している。そして、この実施形態は、本体軸3を施工部1に固定してから、部材2の取付け穴18をスタッド部7に嵌め込み、ナット4を締め込んで部材2を施工部1に向けて押圧すると、リブ20と部材2とのうちずれか一方又は両方が潰れ変形して、部材2は施工部1の外面に密着する。
【0068】
すなわち、この実施形態では、リブ20を部材2に食い込ませるか、又は、リブ20が潰れ変形するか、若しくは、リブ20と部材2の一部とが互いに潰れ変形することにより、部材2を施工部1に重ねた状態に固定できる。従って、リブ20は、ストッパー機能を発揮しつつ、できるだけ薄いのが好ましい(個数もできるだけ少ないのがよい。)。
【0069】
図5(C)に示す第7実施形態では、スタッド部7を下穴5よりも大径に設定している。従って、スタッド部7自体がストッパー機能を有している。この実施形態は、フランジ17やリブ20の加工は不要であるため、構造はごく簡単になる。なお、
図5の実施形態において、拡張部10の形態は任意に選択できる。
【0070】
(7).第8~11実施形態
図6では第8~11実施形態を示している。これら第8~11実施形態はストッパー手段の別例であり、施工部1における下穴5の後端部に面取り部(或いは座繰り部)21を形成している点で共通している。施工部1にある程度の厚さ(例えば5mm以上)がある場合は、好適に対応できると云える。
【0071】
図6のうち(A)に示す第8実施形態は
図1の実施形態をベースにしており、施工部1の面取り部21に入り込むテーパ状のフランジ17を形成している。従って、本体軸3が施工部1の内側に落ち込むことを確実に防止しつつ、部材2を施工部1の外面に密着させることができる。
【0072】
この実施形態では、拡張部10のうち施工部1の内側に露出するはみ出し部10aは先広がりのテーパに形成されており、自由状態で、最大外径は施工部1の下穴5よりも大径に設定している。従って、下穴5への挿入は、はみ出し部10aを弾性に抗して窄まらせた状態で行われ、フランジ17が面取り部に21に当たるとはみ出し部10aは広がり変形して、ある程度の力を受けて引っ張らないと抜けない状態に保持される。
【0073】
すなわち、スタッドを抜け出ない状態に仮保持できる。従って、多数本のスタッドを施工部1に予め配置してから順次拡開して固定するような手順を採る場合に便利である。また、天井部に取り付ける場合、脱落しない状態に仮り保持できるため、施工部1への配置を両手で行うことができて、作業者の負担を軽減できる。
【0074】
図6のうち(B)に示す第9実施形態は
図2の形態をベースにしており、フランジ部17は断面半円状に形成されている。この実施形態では、フランジ17は僅かに施工部1の外側に突出しているが、拡張工程での引き込み作用又は部材2の固定工程での部材2による押圧作用により、面取り部21に嵌まり込む。もとより、フランジ部17は当初から面取り部21に隠れるように設定してもよい。この実施形態のようにフランジ17を断面半円状に形成すると、圧造によって形成するにおいて金型の耐久性を向上できると云える。
【0075】
図6のうち(C)に示す第10実施形態は第9実施形態の変形例であり、拡張部10の後端部の外周面を前広がりのテーパに形成する一方、ブラインド部6の内面を前広がりのテーパに形成し、両者のテーパを互いに重ね合わせている。
【0076】
この実施形態では、まず、ブラインド部6が下穴5に入り込む寸法が長くなっているため、拡張ボルト8の安定性が高い利点がある。また、拡張工程で、ブラインド部6のうちテーパになっている部分が拡張部10によって押し広げられるため(拡径されるため)、ブラインド部6の前端部を下穴5に強圧させて(或いは食い込ませて)、スタッドの固定強度を向上できる利点がある。
【0077】
図6のうち(D)に示す第11実施形態は、
図4の形態をベースにして、本体軸3にフランジ17を形成して、施工部1に面取り部21を形成している。作用・効果は(A)(B)と同じである。
【0078】
図6のように施工部1に面取り部21を形成する場合、下穴5の穿孔と面取り部21の加工とを別工程として行うことも可能であるが、下穴5を空けるためのドリルにエンドミル部を一体に設けて、下穴5の穿孔と面取り部21の加工とを一連に行うと、作業効率がよい。図面では面取り部21をテーパに表示しているが、U形等の座繰り穴仕様に形成することも可能である。
【0079】
下穴5を施工部1に予め空けておく場合があるが、実施形態のスタッドを使用することが判っておれば、面取り部21を設けた状態で空けておくと寸法精度が高くて好ましい。下穴5がストレート穴として予め空けられている場合は、現場で面取り部21のみを加工したらよい。
【0080】
(8).第12~14実施形態
図7(A)~(C)に示す第12実施形態では、ストッパー手段として、樹脂製のテーパ筒状ストッパー23を使用している。テーパ筒状ストッパー23は、前向きに広がったテーパ状であるが、ボトルを封止する王冠のようにヒダ状に形成されており、かつ、スタッド部7に形成された環状溝24に嵌入する内向きリング25を備えている。
【0081】
本実施形態のテーパ筒状ストッパー23は、
図3の拡張部10と同様に全周に亙ってループ状には連続しておらず、スナップリングのように、弾性に抗して広がり変形させることができる。従って、スタッド部7の環状溝24に装着できる。
【0082】
そして、この実施形態では、テーパ筒状ストッパー23の最大径は、部材2における取付け穴18の内径よりも大径になっているが、ナット4をスタッド部7に締め込んで部材2を施工部1に向けて押圧すると、テーパ筒状ストッパー23は窄まり変形して、部材2における取付け穴18に収まっていく。従って、部材2は、施工部1の外面に重ねた状態に固定できる。
【0083】
図7(D)に示す第13実施形態では、ストッパー手段として、スタッド部7の雄ねじに螺合するナット型ストッパー26に形成している。ナット型ストッパー26は、ナット部26aと、ナット部26aの前端から前向きに広がったスカート部26bとを有しており、ナット部26aの外径は部材2における取付け穴18の内径よりも小径で、スカート部26bの最大径は、部材2における取付け穴18の内径よりも大径になっている。
【0084】
この実施形態でも、部材2の押圧によってスカート部26bが窄まり変形して、部材2は施工部1の外面に重ね固定される。図示のナット型ストッパー26は合成樹脂製であるが、例えば0.4mm前後の薄金属板で製造することも可能である。この実施形態では、ナット型ストッパー26は前後位置を任意に設定できるため、異なる厚さの施工部1に1種類の拡張式ブラインドスタッドを使用できる利点がある。
【0085】
図7(E)(F)に示す第14実施形態では、拡張式ブラインドスタッドの回り止めとして、スタッド部7の後端部に一対の係合溝27を形成して、この係合溝27に板状スパナ28を係合させているが、板状スパナ28に、施工部1の外面に当たる足片29を設けることにより、ストッパー手段に兼用している。
【0086】
一点鎖線で示すように、係合溝27を施工部1の外面に合致する箇所に形成して、板状スパナ28を施工部1の外面にダイレクトに当てることも可能であるが、実線のように係合溝27をスタッド部7の後端部に形成すると、部材2の締結に際して係合溝27の箇所に外力(引っ張り力)は作用しないため、強度低下を防止できる利点がある。
【0087】
また、係合溝27をスタッド部7の後端部に形成すると、足片29の長さが相違するものを複数種類用意しておくことにより、1種類の拡張式ブラインドスタッドを厚さが相違する複数種類の施工部1に適用できる利点がある。足片29を断面U型(溝型)に形成して板状スパナ28に着脱できる構成として、長さが異なる複数種類の足片29を板状スパナ28に付け替えることによっても、1種類の拡張式ブラインドスタッドを厚さが相違する複数種類の施工部1に適用できる。
【0088】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、
図1や
図2のように拡張部が曲がり変形する場合、拡張部10と拡張ボルト8との重合面に、拡張ボルト8を所定量だけねじ戻すと互いに係合して拡張ボルト8を回転不能に保持するロック部を設けることも可能である。このように構成すると、拡張ボルト8の緩みを防止できるため、信頼性は格段に高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本願発明は、拡張式ブラインドスタッドに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1 施工部
2 締結される部材(ワーク)
3 本体軸
4 ナット
5 下穴
6 ブラインド部
7 スタッド部
8 拡張ボルト
9 スリット
10 拡張部
12 拡張ボルトの頭
13 棒状レンチ
17 ストッパー手段の一例としてフランジ
21 下穴の面取り部
28 回り止め用のスパナ