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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128835
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20220829BHJP
【FI】
F16K17/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027280
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恒
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA05
3H059BB04
3H059BB06
3H059CA03
3H059CA19
3H059CA20
3H059CD05
3H059EE01
3H059FF01
(57)【要約】
【課題】樹脂やゴム等の軟質材料からなる弁体の経時的な変形に起因する受圧径の変化(開弁圧の変動)や弁漏れの発生を防ぐ。
【解決手段】流体を導入する導入路3と流体を外部へ放出する放出路4とに連通する弁室5を備えた弁本体2と、導入路の弁室側の端部に形成した弁座6と、弁座に対して進退動可能に弁室内に備えた弁体27と、弁体を弁座に向け付勢する閉弁ばね9とを備え、導入路から流入する流体が一定圧力以下の場合には、閉弁ばねの付勢力により弁体が弁座に着座して導入路から放出路への流路を遮断する一方、導入路から流入する流体が一定圧力より大きくなった場合には、閉弁ばねの付勢力に抗して弁体が弁座から後退して導入路から放出路への流路を開放して流体を外部へ放出する弁装置21で、弁体は軟質材料からなり、弁体の導入路に面する側に陥凹部(溝や穴)22,23を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を導入する導入路と前記流体を外部へ放出する放出路とに連通する弁室を備えた弁本体と、
前記導入路の前記弁室側の端部に形成した弁座と、
当該弁座に対して進退動可能に前記弁室内に備えた弁体と、
当該弁体を前記弁座に向け付勢する閉弁ばねと
を備え、
前記導入路を通じて流入する前記流体が一定の圧力以下の場合には、前記閉弁ばねの付勢力により前記弁体が前記弁座に着座して前記導入路から前記放出路への流路を遮断する一方、前記導入路から流入する前記流体が一定の圧力より大きくなった場合には、前記閉弁ばねの付勢力に抗して前記弁体が前記弁座から後退することにより前記導入路から前記放出路への流路を開放して前記流体を外部へ放出するようにした弁装置であって、
前記弁体は、軟質材料からなり、
前記弁体の前記導入路に面する側の面に陥凹部を備えた
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記軟質材料は、樹脂またはゴムを主成分とする材料である
請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記陥凹部は、溝、穴および段差のいずれかである
請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記陥凹部は、前記弁座を取り囲むように前記弁座より外側に形成した溝を含む
請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁座は環状の全体形状を有し、
当該弁座と一定の距離を隔てて当該弁座と平行に延びるように前記溝を形成した
請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記溝は、矩形、三角形、多角形および弧状のいずれかの断面形状を有する
請求項4または5に記載の弁装置。
【請求項7】
前記陥凹部は、前記弁座の内側に形成した穴を含む
請求項3から6のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項8】
前記穴の外縁と前記弁座との間の距離が一定となるように前記穴を形成した
請求項7に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に係り、特に、冷媒回路内の冷媒圧力が異常に上昇したときに冷媒を大気中に放出する安全弁の弁体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒圧力が異常に上昇したときにシステムの破損を防ぐため冷媒を外部へ放出し、冷媒圧力を低下させる安全弁が空気調和機や冷蔵装置、冷凍装置など冷媒回路を備えた冷凍サイクルシステムに従来から使用されている。
【0003】
図10はこのような安全弁の一例を示すものであるが、同図に示すように従来の安全弁1は、弁室5を内部に有する弁本体2と、弁座6に対して進退動(上下動)可能に弁室5内に備えた弁体7と、弁体7を保持する弁ホルダ8と、弁ホルダ8を介して弁体7を弁座6に向け付勢する閉弁ばね9とを有し、弁室5に冷媒を導入可能な導入路3を弁本体2の一端(下端)に備えるとともに、弁室5から外部(大気中)へ冷媒を放出可能な放出路4を弁本体2の他端(上端)に備えている。また、弁座6は導入路3の弁室5側の端部(上端)に形成され、導入路3の他端(下端)は冷媒回路に接続されている。
【0004】
そして、導入路3を通じて弁内に導入される冷媒圧力が一定圧(閉弁ばね9のばね荷重)以下の場合には、閉弁ばね9の付勢力により弁体7が弁座6に着座して導入路3から放出路4への流路が遮断された状態が維持される一方、冷媒圧力が一定圧(閉弁ばね9のばね荷重)を超えた場合には、閉弁ばね9の付勢力に抗して弁体7が弁座6から後退(上昇)することにより導入路3から放出路4への流路が開放される。これにより、冷媒回路内の冷媒が導入路3、弁室5および放出路4を通って外部へ放出され(矢印R参照)、冷媒回路内の冷媒圧力を低下させることが出来る。
【0005】
なお、図10中の符号Dは、弁体7が弁座6に当接する部分の径、すなわち弁体7の弁座側の面のうち冷媒圧力を受ける領域の径(この径を「受圧径」と称する)を示すもので、この受圧径に基いて上記閉弁ばね9のばね荷重が設定される。
【0006】
また弁体7は、平常時には外部への冷媒の漏洩を防ぐ必要があることから、シール性に優れる樹脂やゴムなどの軟質材料により形成されることが少なくない。
【0007】
さらに、このような安全弁を開示するものとして、下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-100926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、樹脂やゴムで形成した弁体は、クリープ変形が懸念される。閉弁ばね9の付勢力によって常に弁座6に押し付けられている弁体7が経時的に変形し、受圧径Dが変わることで設定圧力(閉弁ばねのばね荷重)を超えても開弁せず、或いは設定圧力以下でも開弁してしまう不具合が生じるおそれがあるのである。
【0010】
具体的には、図11に示すように弁座6はSUS(ステンレス鋼)や真鍮等の金属材料で形成されているのに対して弁体7は樹脂やゴム等の比較的柔軟な材料で形成されているため、弁体7が弁座6に持続的に押し付けられることにより弁体7の下面に弁座6が次第に喰い込んでいく(図11中の符号Fは弁座6から弁体7が受ける面圧を示している)。そして、弁座6が喰い込んだ分、軟質の弁体構成材料7a,7bが周囲に押し退けられ、図12に示すように弁座6の内周面や外周面に沿って弁体が盛り上がる(垂れ下がる)ように変形してしまうことがある。
【0011】
ここで、変形部が弁座6の内側(導入路側)に形成されるように弁体7が変形すれば(図12の符号7c参照)、本来の受圧径Dより実際の受圧径D1が小さくなり、導入路3を通じて弁体7が受ける冷媒圧力を受ける面積が小さくなるから、相対的に閉弁ばね9のばね荷重が大きくなって冷媒回路内の圧力が設定圧力を超えても開弁しない事態が生じ得る。一方、変形部が弁座6の外側に形成されるように変形すると(図12の符号7d参照)、本来の受圧径Dより実際の受圧径D2が大きくなって弁体7が受ける冷媒圧力を受ける面積が大きくなり、設定圧力以下でも開弁してしまう事態が生じ得る。
【0012】
特に、冷媒にCO2を使用する場合には冷媒回路内は高圧となり、これに対応して備えられる閉弁ばね9のばね荷重も大きくなるから、弁体7が弁座6に押し付けられる力も強く、変形が生じやすい。さらに、弁体7が不均一に変形すれば、弁座6への当接状態が変化して弁漏れが生じるおそれもある。
【0013】
一方、変形し難い材料、例えば弁座(弁本体)と同様にSUSや真鍮等の金属材料で弁体7を構成することも考えられる。しかしながら、安全弁において金属製の弁体を使用することは好ましくない。なぜなら、安全弁では、冷媒が大気に放出されることから弁漏れをゼロにすることが望まれるのに対し、金属製の弁体は樹脂などの弁体に比べて柔軟性がなく、弁漏れが生じやすいからである。
【0014】
したがって、本発明の目的は、樹脂やゴムのような軟質材料からなる弁体の経時的な変形に起因する受圧径の変化(開弁圧の変動)や弁漏れの発生を防止ないし抑制する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、流体を導入する導入路と流体を外部へ放出する放出路とに連通する弁室を備えた弁本体と、導入路の弁室側の端部に形成した弁座と、弁座に対して進退動可能に弁室内に備えた弁体と、弁体を弁座に向け付勢する閉弁ばねとを備え、導入路を通じて流入する流体が一定の圧力以下の場合には、閉弁ばねの付勢力により弁体が弁座に着座して導入路から放出路への流路を遮断する一方、導入路から流入する流体が一定の圧力より大きくなった場合には、閉弁ばねの付勢力に抗して弁体が弁座から後退することにより導入路から放出路への流路を開放して流体を外部へ放出するようにした弁装置であって、弁体が軟質材料からなり、弁体の導入路に面する側の面に陥凹部を備えた。
【0016】
本発明に係る弁装置では、流体の圧力を常に受けることとなる導入路に面する側の面に陥凹部を備え、この陥凹部を変形させることで当該陥凹部に弁体の経時的な変形(クリープ変形)を誘導し、これにより弁座への当接部の変形を抑制する。つまり本発明では、弁体の弁座への当接部の近くに、変形しやすい陥凹部を備えておくことで弁体の変形を当該陥凹部に積極的に誘導する(言い換えれば、弁座当接部の変形を陥凹部により吸収し或いは当該陥凹部に逃がす)。
【0017】
したがって本発明によれば、弁体にクリープ変形が生じたとしても受圧径が変化し難く、開弁圧力の変動(想定圧力に対する誤差)を抑えることが可能となる。なお、この点については、後述の実施形態の説明において図面に基いてさらに詳しく述べる。
【0018】
本発明において弁体を構成する前記軟質材料は、例えば、樹脂(合成樹脂又は天然樹脂)またはゴム(合成ゴム又は天然ゴム)を主成分とする材料である。
【0019】
当該「軟質材料」は、単一の或いは軟質材料のみからなるものである必要は必ずしもなく、複数種類の材料を含んだ複合材料(混合材料)であっても構わない。すなわち本発明に言う「軟質材料」は、例えば、複数種類の樹脂やゴム材料からなるものであっても良いし、金属やセラミックスのような硬質材料を含んでいても構わない。要は、本発明に言う「軟質材料」とは、弁体(弁体を構成する材料)全体として経時的な変形の可能性がある材料であることを意味する。
【0020】
陥凹部は、典型的には、溝、穴および段差のいずれかである。
【0021】
また当該陥凹部は、弁座を取り囲むように弁座より外側に形成した溝を含むことがある。なお、「外側」とは、弁座(又は弁体)の中心軸から見て弁座(弁体の弁座への当接部)より遠い側を意味する。また逆に、後に述べる「内側」とは、弁座(又は弁体)の中心軸から見て弁座(弁体の弁座への当接部)より近い側を意味する。
【0022】
また、本発明では好ましい態様として、弁座が環状の全体形状を有し、弁座と一定の距離を隔てて弁座と平行に延びるように上記溝を形成する。弁体の経時変形が弁体全体として均一になるようにするためである。これにより、弁体の弁座への当接状態が不均衡となって弁漏れが生じることを防ぐことが出来る。
【0023】
また上記溝は、矩形(長方形又は正方形)、三角形、多角形および弧状のいずれかの断面形状を有することがある。
【0024】
さらに、陥凹部が、弁座の内側に形成した穴を含むことがある。この場合、上記溝と同様の理由から(弁体の経時変形を均一にするため)、穴の外縁(周縁)と弁座との間の距離が一定となるように当該穴を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、樹脂やゴムのような軟質材料からなる弁体の経時的な変形に起因する受圧径の変化(開弁圧の変動)や弁漏れの発生を防ぐことが出来る。
【0026】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る弁装置(安全弁)の閉弁状態を示す縦断面図である。
図2図2は、前記実施形態に係る弁装置の弁体および弁座(図3のA-A切断面)を示す縦断面図である。
図3図3は、前記実施形態に係る弁装置の弁体を示す底面図である。
図4図4は、前記実施形態に係る弁装置の弁座と弁体(閉弁状態で弁座が弁体に喰い込んだ状態)を示す縦断面図である。
図5図5は、前記実施形態に係る弁装置の弁座と弁体(弁体がクリープ変形した状態)を示す縦断面図である。
図6図6は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の構成例を図2と同様に示す縦断面図である。
図7図7は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の更に別の構成例を弁ホルダとともに示す縦断面図である。
図8図8は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の更に別の構成例を弁ホルダとともに示す縦断面図である。
図9図9は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の更に別の構成例を弁ホルダとともに示す縦断面図である。
図10図10は、従来の安全弁の一例(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図11図11は、従来の安全弁の弁座と弁体(閉弁状態で弁座が弁体に喰い込んだ状態)を示す縦断面図である。
図12図12は、従来の安全弁の弁座と弁体(弁体がクリープ変形した状態)を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から図3に示すように本発明の一実施形態に係る弁装置21は、冷媒回路内の冷媒圧力が異常に上昇したときに冷媒を大気中に放出する安全弁で、冷媒を導入する導入路3と冷媒を外部(大気中)へ放出する放出路4とに連通する弁室5を内部に備えた弁本体2と、導入路3の弁室側の端部(上端部)に形成した弁座6と、弁座6に対して進退動(上下動)可能に弁室5内に備えた弁体27と、弁体27を保持して弁体27と一緒に上下動する弁ホルダ8と、弁ホルダ8を介して弁体27を弁座6に向け付勢する閉弁ばね9と、閉弁ばね9の上端部を支持するばね受け部材10とを備えている。
【0029】
なお、各図には上下および左右方向を表す互いに直交する二次元座標を示し、本願ではこれらの方向に基いて説明を行うが、本発明の弁装置および実施形態の安全弁は様々な向きで使用することが可能であるから、当該各方向は説明の便宜上のものであり、本発明の各部構成に何ら限定を加えるものではない。
【0030】
導入路3は、弁本体2の下面から垂直上方へ延び、弁本体2の上下方向の中間位置に形成した弁室5に連通する。導入路3の上端、すなわち弁室5への開口部には、弁座6を弁本体2と一体に形成してある。この弁座6は、導入路3の上端の開口縁部から垂直上方に立ち上がる一定の高さを有する壁体からなり、当該壁体は導入路3の上面開口を取り囲むように延在する。したがって、弁座6は全体としてリング状の平面形状を有する。
【0031】
また、上記壁体の上端部は半円状(ドーム形)の断面形状を有し、閉弁時には壁体の頂上6aに弁体27が当接して導入路3を閉塞する。したがって、壁体の頂上6aが描く円の径Dが弁体27にクリープ変形が生じていないときの受圧径となる。
【0032】
一方、弁体27は、弁座6に当接して導入路3を塞ぐことが出来るように弁座6より大きな径を有する円板状の部材で、平常時(閉弁時)に弁漏れが生じることを防ぐため、樹脂またはゴムにより形成する。なお、弁座6の頂上6aが当接する弁体27の部分を弁座当接部と称し、図中に符号28で示している。また、弁体27は、弁ホルダ8の下端周縁部8aをかしめることにより弁ホルダ8の下面に固定してある。
【0033】
弁体27の弁座6に対向する面(下面)には、陥凹部22,23を備える。この陥凹部は、本実施形態では、弁体27の中心軸部に形成した円形の平面形状を有する穴(以下「内穴」と言う)22と、弁座6を取り囲むようにリング状に形成した溝(以下「外溝」と言う)23とからなり、弁体27の変形(後述する)を吸収しやすくするために、内穴22および外溝23いずれも弁座6の当接位置(弁座当接部28)に近い位置に形成する。
【0034】
さらに、外溝23はその内縁23aが弁座6(弁座頂上6a)と一定の間隔W2を有するように弁座6と同心円状に形成する。弁体27の変形を均一にするためである。同様の理由から、内穴22はその周縁22aが弁座6(弁座頂上6a)と一定の間隔W1を有するように形成する。
【0035】
内穴22および外溝23の断面形状は特に問わないが、本実施形態では、内穴22は周縁(内周面の下縁部)の角部と天面(上面)の角部をそれぞれ丸めた略長方形の縦断面形状を有する。また外溝23は、内周縁(内側内周面の下縁部)および外周縁(外側内周面の下縁部)の各角部を丸めるとともに天面(上面)を半円状(ドーム形)にした略正方形の縦断面形状を有する。
【0036】
弁体27を保持する弁ホルダ8は、有底無蓋の円筒状(カップ状)の全体形状を有し、弁室5の内周面に沿って上下に摺動可能に弁室5内に設置する。この弁ホルダ8は、上面側から閉弁ばね9を収容して閉弁ばね9の下部を支持するとともに、閉弁ばね9によって下方に付勢され、これにより下面に固定した弁体27を弁座6に押し付ける機能を果たす。なお、閉弁ばね9は、コイルばねからなり、弁ホルダ8とばね受け部材10との間に圧縮した状態で設置する。
【0037】
閉弁ばね9の上端部は、弁室上部に備えたばね受け部材10により支持する。ばね受け部材10は、弁室内周面に形成した雌ねじ13に螺合する雄ねじ12を外周面に備えており、ばね受け部材10を回転させてばね受け部材10の上下方向の位置を変更することにより閉弁ばね9の付勢力(設定圧力)を増減し、開弁圧力を調節することが可能である。さらに、ばね受け部材10の外周部には当該ばね受け部材10を上下方向に貫通する複数の連通孔11を穿設してある。したがって、開弁時に導入路3から流入した冷媒は、弁ホルダ8の外周面と弁本体2の内周面との間を通って弁室5の上部へ進行し、さらに連通孔11を通って弁室5から放出路4へ流れていく。
【0038】
放出路4は、弁室5の上面部から垂直上方に延びるように弁本体2の上部に形成してあり、弁室5内の冷媒を外部へ放出できるように弁本体2の上面に開口している。
【0039】
このように構成した本実施形態に係る安全弁21では、前記従来の安全弁1と同様に導入路3を通じて導入される冷媒圧力が一定圧(閉弁ばね9のばね荷重)以下の場合には、閉弁ばね9の付勢力により弁体27が弁座6に当接して導入路3から放出路4への流路が遮断されている。一方、導入路3から導入される冷媒圧力が一定圧(閉弁ばね9のばね荷重)を超えると、閉弁ばね9の付勢力に抗して弁体27が弁ホルダ8とともに弁座6から後退(上昇)し、導入路3から放出路4への流路が開放される。これにより、冷媒回路内の冷媒が導入路3、弁室5および放出路4を通って外部へ放出され(矢印R参照)、冷媒回路内の冷媒圧力を低下させることが出来る。
【0040】
他方、経年使用により弁体27がクリープ変形する場合には、本実施形態の安全弁21では次のような変形となる。
【0041】
図4に示すように弁体27は、従来(図11)と同様に弁座6から圧力を受け、弁座6が弁体27に喰い込むが、図5に示すように本実施形態では、弁座当接部(弁座頂上6a)の内側近くに内穴22を備え、弁座当接部の外側近くには外溝23を備えてあるから、内側への変形27cは内穴22に吸収され、外側への変形27dは外溝23に吸収される。言い換えれば、本実施形態では、弁座当接部近傍に形成した内穴22の外縁(周縁)22aや外溝23の内縁23aの変形を促すことにより、弁座当接部のクリープ変形をこれら内穴22や外溝23に積極的に誘導する(別の表現をすれば、弁体27の変形を内穴22や外溝23に逃がす)ことで、従来(図12)のように弁体27が弁座側に盛り上がる(弁座6の内周面や外周面に沿って垂れ下がる)ことを防ぐことが出来る。
【0042】
また、従来(図12)では、受圧径Dの変動幅、すなわち外側へ変形した場合の受圧径D2と、内側へ変形した場合の受圧径D1の差(D2-D1)が大きく、開弁圧力の変動(想定圧力に対する誤差)が大きくなっていたが、本実施形態によれば、受圧径Dの変動幅、すなわち外側へ変形した場合の受圧径D4と、内側へ変形した場合の受圧径D3の差(D4-D3)を従来に比べて抑えることができ、開弁圧力の変動(想定圧力に対する誤差)を小さくすることが可能となる。
【0043】
さらに本実施形態では、弁座6(弁座当接部28)から上記内穴22と外溝23の各距離W1,W2を一定にしてあるから、弁体27が変形してもその変形が弁体全体として均一になり、弁体27と弁座6との間の当接状態に変化が少なく弁漏れも生じ難い。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0045】
例えば、前記実施形態では、陥凹部として弁座当接部の内側に穴22を、外側に溝23をそれぞれ備えたが、図6に示すように外溝に代えて段差部24を備えることも可能である。また、弁座当接部内側の穴22に代えて外溝23と同様の溝を備えても良い。さらに、内穴22と外溝23の断面形状は、長方形や正方形(図7参照)、三角形(図8参照)、円弧状(図9参照)或いは多角形とするなど様々な形状とすることが出来る。
【0046】
また、弁室上部(放出路4)には、安全弁が作動したことを目視できるようにする手段、例えば、冷媒(流体)によって吹き飛び或いは破れるシート材などを備えておくことも可能である。さらに、放出路4を通じて放出される流体の向きを変える曲がり配管や、放出される流体を他の場所へ導く配管などを放出路4に接続できるようにしても良い。
【0047】
また、本発明に係る弁装置は、エアコン(空気調和機)や冷凍庫・冷蔵庫など冷媒回路を備えた冷凍サイクルシステムに好ましく使用することが出来るが、使用用途はこれらに限定されず、他にも様々な用途に使用可能な弁装置を本発明に基いて構成することが可能である。したがって、本発明に言う「流体」には熱媒体(冷媒および熱媒)のほか、各種の液体や気体(ガス)が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 弁装置(安全弁)
2 弁本体
3 導入路
4 放出路
5 弁室
6 弁座
6a 弁座(弁座を構成する壁体)の頂上
7,27 弁体
7a,7b,27a,27b クリープ変形(弁座の喰い込み)により周囲に押し退けられる弁体の構成部分
7c,7d,27c,27d クリープ変形による弁体の変形部
8 弁ホルダ
8a 弁ホルダの下端周縁部(かしめ部)
9 閉弁ばね(圧縮コイルばね)
10 ばね受け部材
11 連通孔
12a 雄ねじ(調節ねじ)
12b 雌ねじ(調節ねじ)
22 内穴(陥凹部)
22a 内穴の外縁(周縁)
23 外溝(陥凹部)
23a 外溝の内縁
24 段差部(陥凹部)
28 弁座当接部
D,D1,D2,D3,D4 受圧径
F 弁体が弁座から受ける面圧
W1 弁座当接部から内穴外縁までの距離
W2 弁座当接部から外溝内縁までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12