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特開2022-128849ガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体
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  • 特開-ガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128849
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220829BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220829BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B32B27/30 102
B32B27/20 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027297
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 里佳
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】神永 純一
(72)【発明者】
【氏名】越山 良樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 寛之
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB02
3E086BB51
3E086CA01
3E086DA06
4F100AA17D
4F100AA19
4F100AA20B
4F100AB01D
4F100AH06B
4F100AH08B
4F100AK01B
4F100AK21
4F100AK21B
4F100AK42A
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA23
4F100CA23B
4F100DE02
4F100DE02B
4F100EH46
4F100EH66
4F100EH66D
4F100GB15
4F100JB09B
4F100JB09C
4F100JD02B
4F100JD04
4F100JL12C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】水溶性ヒートシールニスの塗工適正に優れ且つ、延伸や屈曲等の機械的変形後のガスバリア性能が低下しない、ガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体を提供すること。
【解決手段】基材上に少なくともガスバリア被覆層、シール層がこの順に積層されてなるガスバリア性積層体であって、前記ガスバリア被覆層が、水溶性高分子70wt%以上と鱗片状フィラー5wt%以上30wt%以下を含んでおり、前記鱗片状フィラーの粒径が0.2μm以上10μm以下で、アスペクト比が50以上であり、前記シール層が、水溶性のヒートシールニスからなることを特徴とするガスバリア性積層体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくともガスバリア被覆層、シール層がこの順に積層されてなるガスバリア性積層体であって、
前記ガスバリア被覆層が、水溶性高分子70wt%以上と鱗片状フィラー5wt%以上30wt%以下を含んでおり、
前記鱗片状フィラーの粒径が0.2μm以上10μm以下で、アスペクト比が50以上であり、
前記シール層が、水溶性のヒートシールニスからなることを特徴とするガスバリア性積層体。
【請求項2】
前記ガスバリア被覆層は、一般式M(OR1)n(M:金属元素、R1:CH3、C2H5などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシド及びその加水分解物を含み、前記金属アルコキシド及びその加水分解物と前記鱗片状フィラーとのガスバリア被覆層における含有量が5wt%以上30wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
前記鱗片状フィラーが、表面にシラノール基を有するシリカフィラーであり、前記シラノール基量が、10~70μmol/mであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランであることを特徴とする請求項2または3に記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
前記水溶性高分子が、PVAであり、けん化度が90%以上、重合度が500以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
基材層とガスバリア被覆層の間に金属または金属酸化物からなる蒸着層が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
【請求項7】
前記請求項1~6のいずれかに記載のガスバリア性積層体を用いたことを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の包装分野に用いられるガスバリア性積層体に関するもので、特に延伸、屈曲等の機械的な変形に対するガスバリア性の耐性が高く、環境負荷を低減させることを狙いとしたガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品、医療品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の保護のため、高いガスバリア性(酸素バリア性、水蒸気バリア性)が要求される。現在用いられているガスバリア材としてアルミニウム箔が用いられることがある。しかしながら、アルミニウム箔を貼り合わせる事で包材全体の重量が増加してしまうため、環境配慮の点から好ましくない。
【0003】
そこで、フィルム基材にガスバリア性を付与する方法として、アルミニウムなどの金属酸化物等の無機化合物からなる無機蒸着層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、更なる高バリア性及び耐水性、耐湿性を付与するために、無機蒸着層上にガスバリア被覆層を設けることが提案されている(例えば特許文献2参照)。この素材を使用すると高いガスバリア性を持つ積層体が得られ、より少ない材料で同等の特性が得られることから環境面からもより高い適性を持っているといえる。
【0004】
一方、包装袋として内容物を気密に包装するためには、積層体を折り曲げるなどして、内面同士をシールして袋状とする。シール方法としては積層体最内面にシーラント層として熱可塑性樹脂を積層して、ヒートシールすることが一般的である。このシーラント層として用いる熱可塑性樹脂としては、融点が低く、加工性もよいポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系樹脂などが用いられる。シーラント層の厚みは、内容物の種類、重量などによって設計されるが、シーラント層の加工上の制限から30μm以上となることが一般的である。また、このシーラント層を積層体の基材とラミネートするには、ドライラミネート法や押出ラミネート法が多く用いられるが、いずれも溶剤系の接着剤が用いられる。シーラント層は、気密な包装袋を製造するには必須であるが、熱可塑性樹脂の使用量、有機溶剤の使用などの点から、環境負荷が大きいという課題を有している。
【0005】
前記シーラント層の課題に対するものとして、水系のヒートシールニスをウェットコーティングにより製造することが提案されている。ヒートシールニスであれば、通常10μm以下の厚さで利用することが可能である。また、水系のヒートシール剤は、溶剤の臭気や成分が内容物に移らず、安全性が極めて高い為、食品包装に適している。
【0006】
環境配慮型の包装材としては、重量の観点から中間層やシーラント層がある事は好ましくない。そこで、ガスバリア被覆層上にヒートシールニスを塗工するだけの構成が考えられる。つまり、環境負荷の小さなガスバリア性積層体として、基材上に水系ウェットコーティングによるガスバリア被覆層、水系ウェットコーティングによるヒートシール層を積層した積層体が求められている。
【0007】
一般的に、ガスバリア被覆層の主な材料としては、安全性・ガスバリア性の観点から水溶性高分子が使用されるが、耐水性やガスバリア性を向上させるためさらに硬化剤等を加える事が知られている。しかし、このような従来の硬いガスバリア被覆層では製袋の過程で生じる折り曲げ工程等でガスバリア被覆層が割れてしまい、ガスバリア性が大きく劣化してしまう懸念が生じる。従来では、基材のガスバリア被覆層上に中間層やシーラント層を設けていたため、ガスバリア被覆層が硬くともそれらの層が保護の役割を果たし、包装
材を屈曲などしても、ガスバリアの大きな低下は見られなかった。そこで、上記問題の解決策として柔軟な水溶性高分子を多く使用したガスバリア被覆層を用いる事が考えられる。
【0008】
ところで、この柔軟なガスバリア被覆層である水溶性高分子上に既存の水溶性ヒートシールニスを塗工すると、ガスバリア被覆層が水溶性の樹脂であるためヒートシールニスの水を吸水し、ガスバリア被覆層が膨潤し、膨潤したガスバリア被覆層上にヒートシールニスが塗工される事で乾燥時にヒートシールニス層に亀裂が発生するなど塗工に不具合が生じる事が分かった。
【0009】
さらに、ヒートシールニス上の亀裂によって機能面でも問題が生じる。ヒートシールニス上に亀裂が入るため、亀裂部分にはヒートシールニスが塗工されていない。この亀裂はランダムに発生するため、亀裂部分でシールをした場合、正常にヒートシールニスが塗工されている場合と比較してシール強度が低下してしまう。また、亀裂部分が重なってシールされた場合包装袋としてシールされていない部分も生じる可能性がある。この揚合、包装袋が密閉状態にならず、食品等の内容物を入れた場合、シールされていない部分から外気が混入し、内容物の劣化が加速してしまう事だけでなく、衛生面からも問題が生じる。
【0010】
また、亀裂はヒートシールニス層だけでなく、ヒートシールニスの収縮率がガスバリア被覆層の収縮率よりも大きいため、亀裂がヒートシールニス層で留まらずヒートシールニスの亀裂がガスバリア被覆層にまで及ぶ可能性も考えられる。その為ガスバリア性の低下も懸念される。つまり、包装袋の役割である、内容物保護の役割を果たせない包装袋となってしまう懸念がある。
【0011】
さらに、ヒートシールニス層に亀裂が入る事によって、例えばガスバリア被覆層や基材層に色や光沢がある場合、亀裂の模様が目立ち外観不良となり、意匠性の観点から消費者の購入意識が低下してしまう。
【0012】
特許文献3では、紙基材上のガスバリア層としてPVA単体が使用されている。PVA単体を使用する事により屈曲後のガスバリア劣化を抑制することは可能だが、その上にシーラント層としてヒートシールニスを塗工することが困難なためラミネートや押し出しをする必要があり、そのため環境面での問題が残る。解決策のーつとしてヒートシールニス層をガスバリア被覆層とは反対の面に塗工する事が考えられるが、ガスバリア被覆層が包装袋の外側にさらされることとなり、こすれ等でバリア性が低下する恐れがあるため好ましくはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3448872号公報
【特許文献2】特許第2790054号公報
【特許文献3】特許第6668576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記事情を踏まえ、本発明では、水溶性ヒートシールニスの塗工適正に優れ且つ、延伸や屈曲等の機械的変形後のガスバリア性能が低下しない、ガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に於いて上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基材上に少なく
ともガスバリア被覆層、シール層がこの順に積層されてなるガスバリア性積層体であって、
前記ガスバリア被覆層が、水溶性高分子70wt%以上と鱗片状フィラー5wt%以上30wt%以下を含んでおり、
前記鱗片状フィラーの粒径が0.2μm以上10μm以下で、アスペクト比が50以上であり、
前記シール層が、水溶性のヒートシールニスからなることを特徴とするガスバリア性積層体である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、前記ガスバリア被覆層は、一般式M(OR1)n(M:金属元素、R1:CH3、C2H5などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシド及びその加水分解物を含み、前記金属アルコキシド及びその加水分解物と前記鱗片状フィラーとのガスバリア被覆層における含有量が5wt%以上30wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性積層体である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、前記鱗片状フィラーが、表面にシラノール基を有するシリカフィラーであり、前記シラノール基量が、10~70μmol/mであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層体である。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランであることを特徴とする請求項2または3に記載のガスバリア性積層体である。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、前記水溶性高分子が、PVAであり、鹸化度が90%以上、重合度が500以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性積層体である。
また、請求項6に記載の発明は、基材層とガスバリア被覆層の間に金属または金属酸化物からなる蒸着層が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガスバリア性積層体である。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から6のいずれかに記載のガスバリア性積層体を用いたことを特徴とする包装体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、ガスバリア被覆層を水溶性高分子中に規定した範囲内で鱗片状フィラーを加える事により、水溶性ヒートシールニスの塗工適正に優れ且つ、延伸や屈曲等の機械的変形後のガスバリア性能が低下しない、ガスバリア性積層体およびそれを用いた包装体を提供する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のガスバリア性積層体の積層構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。図1は、本発明からなるガスバリア性積層体1の積層構成を示す断面模式図である。ガスバリア性積層体1は、基材2上にガスバリア被覆層3、シール層4がこの順に積層されてなるものである。
【0024】
<基材>
本発明に用いることのできる基材2としては、各種プラスチックフィルムや紙を用いることができる。生分解性プラスチックによるフィルム、バイオマスプラスチックによるフィルム、紙を基材として用いると、ごみとして環境に放置されても微生物によって分解されたり、天然物を原料として製造されているため環境負荷に関して好適である。
【0025】
<ガスバリア被複層>
ガスバリア被複層3は、少なくとも水溶性高分子と鱗片状フィラーとからなる。必要に応じて金属アルコキシドを加えても良い。膜厚は特には問わないが、ガスバリア性、屈曲性、塗工適正の観点から膜厚0.1~10μmが好ましい。
【0026】
(水溶性高分子)
屈曲後のガスバリア性能を維持する為に、水溶性高分子の比率はガスバリア被覆層3全体の70wt%以上である必要がある。ガスバリア性の観点からより好ましくは、80wt%以上であり、さらに好ましくは90wt%以上である。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)、ポリビニルピロリドン、デンプン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸などを挙げることができるが、とくにポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。PVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化PVAまでを用いることができるが、鹸化度90%以上のものが水酸基を多数有してガスバリア性が得られるため好ましい。また、重合度も500以上とすることで、ガスバリア層を形成した際の皮膜の靭性やガスバリア性の点から好ましい。
【0027】
(鱗片状フィラー)
高いアスペクト比を有することから、迷路効果がより効果的に働き、ガスバリア被複層3のガスバリア性が特に高く発現するのに寄与する。アスペクト比の高いフィラーを水溶性高分子中に適当な量含有させることで迷路効果が生じ、屈曲によるガスバリア性低下が少ない。また、フィラーは耐水性が高いため、水溶性高分子中に配合する事で前述したヒートシール層塗工時の不具合が生じにくい利点もある。迷路効果発揮の観点から、フィラーの粒径は0.2μm以上が好ましく、アスペクト比も50以上が好ましい。塗工上の観点からフィラーの粒径は10μm以下が好ましい。
【0028】
フィラーの種類は特に限定はしないが、例えばカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトが挙げられる。この中でフィラー表面にシラノール基を有するシリカ粒子がバリア性・耐水性の観点から特に好ましい。表面にシラノール基がある事で、水溶性高分子と水素結合が期待でき、より緻密な膜になる事でガスバリア性の向上が期待でき、また耐水性向上も期待できる。シラノール基を有するシリカ粒子は重量比で、5wt%以上30wt%以下であり、シラノール基量が、10~70μmol/mであることが好ましい。重量比で5wt%より少ないとヒートシール剤の塗工適正が悪化し、30wt%を超えると折り曲げ時のガスバリア性が大きく低下してしまう。より好ましくは、5wt%以上20wt%以下である。シリカ粒子のSiO純度は、例えば、95質量%以上であればよく、98質量%以上であることが好ましい。また、シラノール基の量は入手しやすさの観点から、上限値として70μmol/m以下であることが好ましい。
【0029】
(金属アルコキシド)
ガスバリア被覆層3は、一般式M(OR1)n(M:金属元素、R1:CH3、C2H5などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシド及びその加水分解物を含んでいてもよい。金属アルコキシドの役割としては、金属アルコキシドの加水分解物同士が架橋する事で、ガスバリア被覆層3中に多く含まれている水溶性高分子中に架橋の膜を形成し、さらには水溶性高分子中のOH基と水素結合する事で水溶性のガスバ
リア被覆層3の耐水性能を高める事が出来、ガスバリア被覆層3上に水溶性のヒートシールニスを塗工してもガスバリア被覆層の膨潤や再溶解を抑える効果が期待できる。性能向上のためには金属アルコキシドは反応点(OH基)が多数ある方が良く、ガスバリア性・水溶性ヒートシールニスの塗工適正の観点からテトラエトキシシラン(TEOS)が好ましい。ガスバリア被覆層3が金属アルコキシド及びその加水分解物を含んだ場合、金属アルコキシド及びその加水分解物と前記鱗片状フィラーとのガスバリア被覆層における含有量は5wt%以上30wt%以下であることが好ましい。5wt%より少ないとヒートシール剤の塗工適正が悪化し、30wt%を超えると折り曲げ時のガスバリア性が大きく低下してしまう。より好ましくは、5wt%以上20wt%以下である。
【0030】
<水溶性ヒートシールニス>
水を溶媒とするヒートシールニス4であれば特には問わない。塗布量は、シール性の観点から1~10μmが好ましく、1~5μmであることがより好ましい。1~5μmであれば、ヒートシール包材として十分なヒートシール強度が得られ、屈曲性も十分に確保できるため、プラスチック使用量を最小限にでき環境にも良い。水溶性ヒートシールニスとして用いられるのは、特にカルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基及びカルボン酸エステルより選ばれる少なくとも1種を有する水系ポリオンフィン樹脂が好ましい。上記樹脂を用いることにより、ヒートシール性だけでなく、ヒートシール層4の膜が緻密に形成される事によって、水蒸気バリア性も期待できる。上記成分以外に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、有機チタネート、ポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリアミド、ポリオレフィン系エマノレジョン、ポリイミド、メラミン、フェノーノレ等が挙げられる。また、環境対応の観点からポリ乳酸系、ポリブチレンサクシネート系などの生分解性ヒートシール剤を使用するのも好ましい。
【0031】
<蒸着層>
また、本発明におけるガスバリア性積層体1の基材2とガスバリア被覆層3との間に金属または金属酸化物からなる蒸着層を設けてもよい。特に基材としてプラスチックフィルムを用いる場合には、酸化アルミニウムなどの金属酸化物による蒸着層を用いれば透明性が保持される。一方、基材2として紙などの不透明な基材を用いる場合には、アルミニウムの蒸着層を行うのが製造上容易である。また、蒸着に先立って基材2上に平滑化改善、密着性改善のためのアンカーコート層を設けてもよい。これら蒸着層を設けることで、環境への負荷を大きく上昇させることなく、積層体のガスバリア性を向上させることができるので、積層体を用いた包装体の利用範囲が広くなる。金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等が挙げられ、酸化アルミニウムが好ましい。酸化金属蒸着層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0032】
酸化金属蒸着層の厚さは、100~500Åが好ましい。酸化金属蒸着層の厚さが下限値以上であれば、ガスバリア性が確保される。酸化金属蒸着層の厚さが上限値以下であれば、透明性が確保される。
【実施例0033】
実施例1~9、比較例1~4の層構成を表1に示す。以下のように各材料を準備し、実施例1~9、比較例1~4のサンプルを作製した。
【0034】
<基材>
基材として以下3種のものを用意した。
【0035】
(1)PET:二軸延伸PETフィルム12μm。コロナ処理面に得られたガスバリア
コートを塗工した。
【0036】
(2)PET/AlO:二軸延伸PETフィルム12μmを基材とし、その上面にAlを蒸着源として電子線加熱方式による真空蒸着法により膜厚400Åの酸化アルミニウム薄膜層を形成した。蒸着面に得られたガスバリアコートを塗工した。
【0037】
(3)紙/AlO:50g/mの紙基材にプライマー処理を行い、処理面にAlを蒸着源として電子線加熱方式による真空蒸着法により膜厚400Åの酸化アルミニウム薄膜層を形成した。蒸着面に得られたガスバリアコートを塗工した。
【0038】
<ガスバリア被覆層>
水溶性高分子(A)として以下2種のものを調製した。
【0039】
(1)PVA:ポリビニルアルコール(鹸化度:98.5%、重合度:500)の5wt%水/IPA(90/10)溶液を作製した。
【0040】
(2)PAA:ポリアクリル酸(分子量5000)の5wt%水溶液
鱗片状フィラー(B)として以下4種のものを調製した。
【0041】
(1)OH基含有フィラー:サンラブリーLFSHN-050 AGCエスアイテック株式会社製(粒径0.5μm、アスペクト比120)
(2)モンモリナイト:クニミネ工業社製クニピアF(粒径300nm、アスペクト比300)
(3)カオリン:イメリスミネラルズ社製バリサーフHX(粒径9μm、アスペクト比100)
(4)タルク:日本タルク社製 P-3 (粒径5μm、アスペクト比20~30)
金属アルコキシド(C)として以下のものを調製した。
【0042】
(1)TEOS:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.05N)89.6gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液。
【0043】
(調液方法)
表1に示した組合せにて上記水溶性高分子溶液に鱗片状フィラーを加え、30分攪拌後得られた溶液に金属アルコキシドを加え30分間以上攪拌し3wt%の溶液を得た。
【0044】
(塗工方法)
基材上にバーコーターにより塗布しオーブンで120℃30秒乾燥させ、膜厚1μmのガスバリア被覆層を形成した。
【0045】
<水溶性ヒートシールニス>
水溶性ヒートシールニスとして以下2種のものを準備した。
【0046】
(1)ケミパールS500:三井化学(株)製
(2)ザイクセンAC:住友精化(株)製
(塗工方法)
ガスバリア被覆層上にバーコーターにより塗布しオーブンで120℃30秒乾燥させ、3g/m(dry)のヒートシールニス層を形成した。
【0047】
<溶剤系ヒートシールニス>
溶剤系ヒートシールニスとして以下のものを準備した。
【0048】
(1)ユニストールR200:三井化学(株)製
(塗工方法)
ガスバリア被覆層上にバーコーターにより塗布しオーブンで120℃30秒乾燥させ、3g/m(dry)のヒートシールニス層を形成した。
【0049】
<評価方法>
(臭気)
ヒートシールニスまで塗工した包材を内容物を何も入れずに、15cm角の三方袋を作成した。三方袋を24時間室温にて放置し、袋開封時にヒートシールニスに使用される溶剤の臭気の有無を官能評価にて確認した。評価者3人中1人でも臭気があると判断した場合に「×」、0人の場合「〇」とした。
【0050】
(外観)
拡大率10倍のルーぺで100mmを観察した時のコートのクラックの数を数えた。
【0051】
(シール強度)
ヒートシーラーにて120℃1秒、0.2Mpaにてシールをしたサンプルを20サンプル準備した。得られたサンプルを全て15mm幅の短冊にし、剥離速度300mm/minにて90度剥離してシール強度を測定した。
【0052】
(水蒸気透過度 WVTR(g/m・day))
初期:得られたガスバリア積層体単体を等圧法(MOCON法)にて40℃、90%RH条件下で測定した。
屈曲後:得られたガスバリア積層体単体を600gのロールで300mm/minの速さでシール層側を外側にして折り曲げた積層体上を走行させて折り目を付け、折り目を開いたのちのサンプルの水蒸気透過度を同様に測定した。
【0053】
各積層体についての評価結果を表1に示した。実施例によって包装体として用いるに適するガスバリア性積層体が得られていることがわかる。
【0054】
【表1】
【符号の説明】
【0055】
1・・・ガスバリア性積層体
2・・・基材
3・・・ガスバリア層
4・・・ヒートシールニス層
図1