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特開2022-128851反射型マスクブランク、反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128851
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20220829BHJP
   G03F 1/42 20120101ALI20220829BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027299
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】成田 英輔
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BE07
2H195BE09
2H195BE10
2H195CA01
2H195CA02
2H195CA22
(57)【要約】
【課題】フィデューシャルマークの形成に伴う欠陥を発生させることなく、多層反射層に形成された位相欠陥を回避してパターン形成可能な反射型マスクブランク、反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】基板16上に、少なくとも、多層反射層15と、吸収層13と、を有するフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク100であって、前記フィデューシャルマークが、前記多層反射層に形成された、平面視の大きさが600nm以下であり、多層反射層とは光の反射率が異なる部位19からなることを特徴とするフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも、多層反射層と、吸収層と、を有するフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランクであって、
前記フィデューシャルマークが、前記多層反射層に形成された、平面視の大きさが600nm以下であり、多層反射層とは光の反射率が異なる部位からなることを特徴とするフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記部位の光の反射率は、多層反射層の光の反射率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク。
【請求項3】
基板上に、少なくとも、多層反射層と、吸収層と、をこの順に備えたEUV用反射型マスクであって、
前記多層反射層に、平面視の大きさが600nm以下であり、フィデューシャルマークとして使用可能な、前記多層反射層とは光の反射率が異なる部位と、
前記吸収層に、前記吸収層を除去することにより前記多層反射層が露出した回路パターンと、を備えていることを特徴とする反射型マスク。
【請求項4】
前記反射率が前記多層反射層の反射率より低いことを特徴とする請求項3に記載の反射型マスク。
【請求項5】
請求項3または4に記載の反射型マスクの構成に加えて、さらに前記吸収層にアライメントマークが備えられていることを特徴とする反射型マスク。
【請求項6】
基板上に少なくとも多層反射層を有する反射型マスクブランクの前記多層反射層中に、平面視の大きさが600nm以下で、光の反射率が前記多層反射層とは異なるフィデューシャルマークを形成する工程と、
前記多層反射層中に形成されている欠陥の前記フィデューシャルマークからの相対位置を把握する工程と、
前記多層反射層上に少なくとも吸収層を成膜する工程と、
前記フィデューシャルマークを使用して、回路パターンが前記欠陥を避けるようにパターン形成位置を調整して回路パターンを描画する工程と、
をこの順に備えていることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項7】
基板上に少なくとも多層反射層を有する反射型マスクブランクの前記多層反射層中に、平面視の大きさが600nm以下で、光の反射率が前記多層反射層とは異なるフィデューシャルマークを形成する工程と、
前記多層反射層中に形成されている欠陥の前記フィデューシャルマークからの相対位置を把握する工程と、
前記多層反射層上に少なくとも吸収層を成膜する工程と、
前記吸収膜にアライメントマークを形成する工程と、
前記フィデューシャルマークと前記アライメントマークの相対位置を把握する工程と、
前記アライメントマークと前記欠陥の相対位置を求める工程と、
前記アライメントマークを用い、回路パターンが前記欠陥を避けるようにパターン位置を調整して回路パターンを描画する工程と、
をこの順に備えていることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型マスクブランク、反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法に関し、特に極端紫外線(Extreme Ultra Violet;以下「EUV」と表記する。)を光源とするEUVリソグラフィを用いた半導体製造装置などに利用されるフォトマスクブランク及びフォトマスク及びフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、波長が13.5nm近傍のEUVを光源に用いたEUVリソグラフィが提案されている。EUVリソグラフィは光源波長が短く光吸収性が非常に高いため、真空中で行われる必要がある。また、EUVの波長領域においては、ほとんどの物質の屈折率は1よりもわずかに小さい値であるため、EUVリソグラフィにおいては、従来から用いられてきた透過型の屈折光学系を使用することができず、反射光学系となる。従って、原版となるフォトマスク(以下、マスクとも呼ぶ。)も、従来の透過型のマスクは使用できないため、反射型のマスクとする必要がある。
【0003】
波長が極端に短いEUVリソグラフィでは、低熱膨張基板に多層反射層を形成する際のパーティクルの発生を極力抑えることが求められる。それは、露光光の波長が短いため、多層反射層の微小な凹凸欠陥がウェハ上に転写するパターンの品質に大きな影響を及ぼしてしまうためである。この微小な凹凸欠陥は位相欠陥と呼ばれており、高さが数nmであっても、微細なLSIパターンの寸法誤差に許容できない影響が出る。
【0004】
このような微小な凹凸欠陥が形成される原因は、低熱膨張基板表面の凹凸や異物、あるいは、多層反射層の堆積中に落下した異物である。これらの異物の上に堆積した多層反射層は、その周辺の多層反射層と比べて局所的に位相差を生じるため、位相欠陥とも呼ばれ、転写パターンへ悪影響を及ぼす。
【0005】
このような微小凹凸欠陥(位相欠陥)に対しては、いくつかの修正方法が提案されているが、修正可能な欠陥のタイプは限定されており、全ての微小凹凸欠陥を修正するのは困難である(例えば、特許文献1参照)。したがって、EUVマスクでは、このような位相欠陥の発生防止が最も重要であるが、一般的な透過型マスクと比べて複雑な層構成であるために、現状では無欠陥には程遠いブランク品質となっている。
【0006】
このような問題を解決するために、EUVマスク上にパターンを形成する前に、位相欠陥の位置を検査により把握し、その位相欠陥を避けるようにパターン形成(描画)することが、提案されている。具体的にはその位相欠陥を吸収層でカバーしてしまうことで、位相欠陥が転写されることなく、吸収層の無い多層反射層からは欠陥の無い所望のパターンの反射光を得ることができる。したがって、困難な修正をすることなく、高品質の反射型マスクの作製を可能にする製造方法が検討されている。
【0007】
位相欠陥の正確な位置の把握と、それらの位相欠陥を正確に避けてパターン形成するためには、EUVマスクブランク上にフィデューシャルマークと呼ばれる目印(基準マーク)を形成する必要がある。このフィデューシャルマークがブランク欠陥検査機(DUV(Deep Ultra Violet)光やEUV光を使用する。)およびマスク描画機(EB(Electron Beam)を使用する。)の基準パターンとなる。
【0008】
図6を参照して、EUVマスクにおける従来のフィデューシャルマーク形成方法を説明する。
図6(a)は、多層反射層15上に第2レジスト膜18を塗布した反射型マスクブランクの模式断面図である。次に、フォトリソグラフィもしくは電子線リソグラフィによってフィデューシャルマークを形成するためのレジストパターンを形成し(図6(b))、次いで、エッチングによって多層反射層15を掘り込み、多層反射層除去部4を形成し(図6(c))、次いで、第2レジスト膜18を剥膜洗浄したのち((図7(d))、さらに、保護層14、吸収層13、低反射層12及びレジスト膜11を順次積層することで、多層反射層除去部4にフィデューシャルマーク20が形成され、フィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク100´が完成する(図7(e))。
【0009】
図6図7に示したように、従来のフィデューシャルマークの作製方法は、フォトリソグラフィもしくは電子線リソグラフィを使用し、多層反射膜をエッチングする必要があり、さらに、保護層14、吸収層13、低反射層12などを成膜することになるため、欠陥の発生を極力回避することが必要であるにも関わらず、さらに欠陥を増やしてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-034129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は上記のような従来の形成方法の問題点を解決しようとするものであり、フィデューシャルマークの形成に伴う欠陥を発生させることなく、多層反射層に形成された位相欠陥を回避してパターン形成可能な反射型マスクブランク、反射型マスクおよび反射型マスクの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明の第1の態様は、基板上に、少なくとも、多層反射層と、吸収層と、を有するフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクであって、
前記フィデューシャルマークが、前記多層反射層に形成された、平面視の大きさが600nm以下であり、多層反射層とは光の反射率が異なる部位からなることを特徴とするフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクである。
【0013】
また、第2の態様は、前記部位の光の反射率は、多層反射層の光の反射率よりも低いことを特徴とする第1の態様に記載のフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクである。
【0014】
また、第3の態様は、基板上に、少なくとも、多層反射層と、吸収層と、をこの順に備えたEUV用反射型マスクであって、
前記多層反射層に、平面視の大きさが600nm以下であり、フィデューシャルマークとして使用可能な、前記多層反射層とは光の反射率が異なる部位と、
前記吸収層に、前記吸収層を除去することにより前記多層反射層が露出した回路パターンと、を備えていることを特徴とするEUV用反射型マスクである。
【0015】
また、第4の態様は、前記反射率が前記多層反射層の反射率より低いことを特徴とする第3の態様に記載のEUV用反射型マスクである。
【0016】
また、第5の態様は、第3または第4の態様に記載のEUV用反射型マスクの構成に加えて、さらに前記吸収層にアライメントマークが備えられていることを特徴とするEUV
用反射型マスクである。
【0017】
また、第6の態様は、基板上に少なくとも多層反射層を有する反射型マスクブランクの前記多層反射層中に、平面視の大きさが600nm以下で、光の反射率が前記多層反射層とは異なるフィデューシャルマークを形成する工程と、
前記多層反射層中に形成されている欠陥の前記フィデューシャルマークからの相対位置を把握する工程と、
前記多層反射層上に少なくとも吸収層を成膜する工程と、
前記フィデューシャルマークを使用して、回路パターンが前記欠陥を避けるようにパターン形成位置を調整して回路パターンを描画する工程と、
をこの順に備えていることを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【0018】
また、第7の態様は、基板上に少なくとも多層反射層を有する反射型マスクブランクの前記多層反射層中に、平面視の大きさが600nm以下で、光の反射率が前記多層反射層とは異なるフィデューシャルマークを形成する工程と、
前記多層反射層中に形成されている欠陥の前記フィデューシャルマークからの相対位置を把握する工程と、
前記多層反射層上に少なくとも吸収層を成膜する工程と、
前記吸収膜にアライメントマークを形成する工程と、
前記フィデューシャルマークと前記アライメントマークの相対位置を把握する工程と、
前記アライメントマークと前記欠陥の相対位置を求める工程と、
前記アライメントマークを用い、回路パターンが前記欠陥を避けるようにパターン位置を調整して回路パターンを描画する工程と、
をこの順に備えていることを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクによれば、従来のフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクにおけるドライエッチング工程や薄膜形成工程などの発塵を伴う工程を必要とせずにフィデューシャルマークを形成することが可能であることから、より低欠陥のフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクを提供することが可能である。
【0020】
本発明のEUV用反射型マスクによれば、多層反射層中に形成されている位相欠陥を確実に回避して回路パターンを形成したEUV用反射型マスクを提供することができる。
【0021】
本発明のEUV用反射型マスクの製造方法によれば、本発明のEUV用反射型マスクを提供可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクを例示する断面説明図。
図2】本発明の第1の実施形態にかかるEUV用反射型マスクの製造方法を例示する断面説明図。
図3】本発明の第1の実施形態にかかるEUV用反射型マスクの製造方法を例示する断面説明図。
図4】本発明の第2の実施形態にかかるEUV用反射型マスクの製造方法を例示する断面説明図。
図5】本発明の第2の実施形態にかかるEUV用反射型マスクの製造方法を例示する断面説明図。
図6】従来のフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランクの製造方法を説明する断面説明図。
図7】従来のフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランクの製造方法を説明する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
反射型マスクブランクについて図1を参照して説明する。図1は、フィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク100の一例の模式断面図である。このような反射型マスクの元となる反射型マスクブランクは、低熱膨張基板16上に、多層反射層15、保護層14、吸収層13、低反射層12、レジスト膜11が順次積層された反射型マスクブランクである。また、低熱膨張基板16の裏面には、露光機のマスクステージに静電チャックするために必要な裏面導電膜17が成膜されている。反射型マスクブランクから反射型マスクへ加工する際には、EBリソグラフィとエッチング技術とにより吸収層を部分的に除去することにより、吸収部と反射部とからなる回路パターンを形成する。このように作製された反射型マスクによって反射された光像が反射光学系を経て半導体基板上に転写される。
【0024】
また、EUVマスクに用いられる多層反射層は、Si(シリコン)とMo(モリブデン)をそれぞれ所定の膜厚で交互に成膜されており、トータルで40~50ぺア(Si層とMo層で1ペアであるため、80層から100層程度に相当する。)から成る。SiやMoは、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つSiとMoのEUV光における屈折率差が大きい。従って、SiとMoは互いの界面での反射率を高く出来るという利点から多用される。この多層構造により、EUV光は例えば40ペアからなる多層反射そうであれば40回反射が可能である。各界面で反射したEUV光は、それぞれ位相が揃っており、その合算が多層反射層からのEUV反射率となり、EUVブランクメーカー各社から販売されているEUVマスクブランクでは、概ね62~65%程度、あるいはそれ以上であり、理論値の約70%に迫るレベルに達している。
【0025】
EUVマスクの反射率は、半導体チップ製造のスループット(生産能力)に直接効いてくるため、出来るだけ高いことが望まれるが、現在知られている材料とその組み合わせは、上述したSiとMoの多層反射層が最良とされている。反射率を生み出す本質的な能力は、SiとMoの界面であり、界面がきっちりと形成されていることが重要である。そのため、SiとMoを同一真空チャンバー内で、真空を破らずに交互に成膜する方法が使用されている。成膜法としては主としてスパッタリング法が使用されている。
【0026】
<フィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク>
次に、本発明の実施形態のフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランクについて図1を用いて説明する。
【0027】
本発明の実施形態のフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク100は、基板16上に、少なくとも、多層反射層15と、吸収層13と、を有するフィデューシャルマーク付きEUV用反射型マスクブランクである。
【0028】
フィデューシャルマークとは、位相欠陥の正確な位置の把握と、それらの位相欠陥を正確に避けてパターン形成するために、EUVマスクなどの反射型マスクブランク上に形成される目印(基準マーク)である。このフィデューシャルマークがブランク欠陥検査機およびマスク描画機の基準パターンとなる。
【0029】
このフィデューシャルマークは、図1における周囲と異なる反射率の箇所19であり、フィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク100を平面視で観察した場合に観察することができる基準マークである。本発明のフィデューシャルマーク付きEUV用反射
型マスクブランクにおいては、このフィデューシャルマーク19は、多層反射層15の内部に形成されており、反射型マスクブランク100を平面視した場合の大きさが600nm以下であり、多層反射層15とは光の反射率が異なることにより、観察可能な部位となっている。
【0030】
フィデューシャルマーク19の平面視した場合の大きさが600nmを超えると、マークとしては大型化しすぎて描画パターンを圧迫しかねないため好ましくない。
【0031】
周囲と異なる反射率の箇所19における光の反射率は、多層反射層15の反射率より低い値であっても良い。
【0032】
本発明のフィデューシャルマーク付き反射型マスクブランク100においては、基板16の一方の面に、多層反射層15と、保護層14と、吸収層13と、低反射層12と、をこの順に備えた層構成としても良い。さらに低反射層12の上にレジスト膜11が備えらえた構成であっても良い。
【0033】
また、基板16のもう一方の面に、裏面導電膜17が形成された構成としても良い。裏面導電膜17は、露光機のマスクステージに静電チャックするために必要な構成要素である。
【0034】
(基板)
基板16の材料には、<±5ppb/Kレベルの低い熱膨張係数が求められるほか、波長13.5nmのEUV光を、反射型マスクに対して6°の入射角で入射するように露光装置の光学系が設計されている。そのため、マスク表面の凹凸に関しては、マスク全面における最高低差(P-V:Peak to Valley)で<36nmの平坦度が要求されている。このような厳しい仕様を満たすことができる材料として、酸化チタンをドープした石英ガラスを使用した基板が入手可能となっている。
【0035】
(多層反射層)
多層反射層15は、EUV光を反射する層である。Si(シリコン)とMo(モリブデン)をそれぞれ約4.2nmと約2.8nmの膜厚で交互に成膜された多層膜となっており、トータルで40~50ペア(Si層とMo層で1ペアであるため、80層から100層程度に相当する。)から成る多層反射層が使用されている。EUV反射率(EUV光の波長における光反射率)は、概ね62~65%程度のものが入手可能となっている。
【0036】
(保護層)
保護層14は、EUV光の照射による多層反射層15の劣化を抑制するために設けられる層である。保護層14の材料としては、特に限定する必要は無いが、例えば、Ru(ルテニウム)やRuの化合物が使用可能である。膜厚を2~4nm程度とすることが好ましい。
【0037】
(吸収層)
吸収層13は、EUV光を吸収することで、反射させない層である。多層反射層15の高い反射率の領域と、吸収層13の低い反射率の領域と、のコントラストにより、EUV光をパターン反射させることにより、パターン形成を可能とするものである。
吸収層13の材料としては、EUV光の吸収率が高く、EUV反射率が低い材料であり、またEUV光によって劣化し難い材料であれば特に限定する必要は無い。例えば、Ta(タンタル)およびTaの化合物が使用される。例えば、TaN、TaBN、TaSi、TaGeNなどをあげることができる。また、吸収層13のEUV反射率としては、<0.5%程度であることが求められている。
【0038】
(低反射層)
低反射層12は、吸収層13の上に設けられ、パターン検査に使用するDUV(深紫外)光に対する低反射層である。低反射層12の材料としては、EUV反射率が吸収層13より低く、EUV光の照射により劣化し難い材料であれば特に限定する必要は無い。例えば、厚さ5nm~12nm程度の吸収層13のTa系材料の酸化窒化層が形成される。
【0039】
(レジスト膜)
レジスト膜11は、フォトマスクのエッチングマスクとして使用する感光性レジストや電子ビームレジストであれば使用可能であり、特に限定する必要は無い。
【0040】
<反射型マスクの製造方法>
次に、本発明の実施形態の反射型マスクの製造方法について図2図5を用いて説明する。
【0041】
<反射型マスクの製造方法にかかる第1の実施形態>
本発明の実施形態の反射型マスクの製造方法にかかる第1の実施形態について、図2図3を用いて説明する。
【0042】
本発明の実施形態の反射型マスクの製造方法は、基板16上に少なくとも多層反射層15を有する反射型マスクブランク10-1の前記多層反射層15中に、平面視の大きさが600nm以下で、光の反射率が前記多層反射層15とは異なるフィデューシャルマーク19を形成する工程と、前記多層反射層15中に形成されている欠陥1の前記フィデューシャルマーク19からの相対位置を把握する工程と、前記多層反射層15上に少なくとも吸収層13を成膜する工程と、前記フィデューシャルマーク19を使用して、回路パターン3が前記欠陥1を避けるようにパターン形成位置を調整して回路パターン3を描画する工程と、をこの順に備えている。なお、図2図3では基板16の多層反射層15が形成されている面とは反対側の面に、裏面導電膜17が形成されている例を示している。裏面導電膜17は静電チャックを行う場合に必要となるため、通常は形成されている。
【0043】
(ステップ1:反射型マスクブランク10-1(図2(a)参照)の多層反射層15中に光の反射率が周囲の多層反射層15の反射率とは異なる部位(フィデューシャルマーク)19(図2(b)参照)を形成する工程)
反射型マスクブランク10-1の裏面からフェムト秒レーザーを、所定の位置に照射することによって、照射された部分のみの多層反射層15でミキシング(原子が混ざり合う状況)を起こし、多層反射層15の多層構造が乱されることで、周囲とは異なる反射率の箇所19(図2(b)参照)であるフィデューシャルマーク19を形成する。フェムト秒レーザーを照射する装置としては、例えば、Carl Zeiss社製のRegC(Registration Control)(Carl Zeiss社の登録商標)を使用することができる。
【0044】
(ステップ2:多層反射層15中の欠陥1のフィデューシャルマーク19からの相対的な位置(座標)を計測し、把握する工程)
次に、KLA Tencor社製のフォトマスク検査装置などの、微小な測定対象物の座標を計測可能な装置を使用し、前記のフィデューシャルマーク(光の反射率が周囲の多層反射層とは異なる部位)19をアライメントマークとして欠陥検査を実施し、多層反射層15中の欠陥1を検出し、その座標を計測し、記録することにより、反射型マスクブランク10-1における欠陥1の座標をすべて把握する(図2(c)参照)。
【0045】
(ステップ3:多層反射層15上に吸収層13を成膜する工程)
次に、スパッタリング法により、最初に多層反射層15上に、多層反射層15を保護する保護層(キャッピング層とも言う。)を形成する。保護層の材料としては、例えばRu(ルテニウム)を使用することができる。次に、スパッタリング法により、EUV光の吸収層13を形成する。吸収層13の材料としては、例えばTa(タンタル)を使用することができる。図3(d)においては、保護層を省略して示している。また、吸収層13の上に、低反射層が形成されるが、図3(d)においては低反射層も省略して示している。
【0046】
(ステップ4:フィデューシャルマーク19を使用して、回路パターン3が欠陥1を避けるようにパターン形成位置を調整して回路パターン3を描画する工程)
次に、まず吸収層13の上に第2レジスト膜18を形成する。第2レジスト膜18の形成は、フォトマスクの製造工程で使用されているスピンコータなどの膜厚の均一性が良好な塗布装置を用いて感光性レジスト塗液を塗布し、乾燥することによって得ることができる。電子ビーム描画装置を使用して回路パターンを描画する場合には電子ビームレジスト塗液を使用すればよい。
【0047】
このようにして形成した第2レジスト膜18に対して、例えば、ニューフレアテクノロジー社製の電子ビームマスク描画装置のような描画装置を用いて回路パターン3を描画し、現像することにより、第2レジスト膜18をパターン化する。この際、フィデューシャルマーク19に対する多層反射層15中の欠陥1の座標がすべてわかっているため、多層反射層15中の欠陥1が、平面視で吸収層13に隠れるように、パターン形成位置をずらして回路パターン3を描画することができる。
【0048】
次に、パターン化された第2レジスト膜18をエッチングマスクとして吸収層13の不
要部をエッチング除去する(図3(e)参照)。
エッチング除去には、例えば、Applied Material社製CENTURA
(Applied Material社登録商標) TETRA(Applied Material社商標)などのフォトマスク用のドライエッチング装置を使用することができる。またはFEI社製 NB(収束イオンビーム)装置などを使用しても良い。
【0049】
次に、パターン化された第2レジスト膜18を、レジスト膜の剥離液や酸素系プラズマを用いたアッシング処理を行うことにより除去することにより、回路パターン3が形成される(図3(f)参照)。
【0050】
以上により、本発明のEUV用反射型マスク200-1を作製することができる。
【0051】
<反射型マスクの製造方法にかかる第2の実施形態>
本発明の実施形態の反射型マスクの製造方法にかかる第2の実施形態について、図4図5を用いて説明する。
本発明の実施形態の反射型マスクの製造方法にかかる第2の実施形態は、ステップ1:基板16上に少なくとも多層反射層15を有する反射型マスクブランク10-1の多層反射層15中に、平面視の大きさが600nm以下で、光の反射率が多層反射層15とは異なるフィデューシャルマーク19を形成する工程から、ステップ3:多層反射層15上に少なくとも吸収層13を成膜する工程までは第1の実施形態における工程、までは第1の実施形態と同様であるが、ステップ4以降の工程が、次のような工程となっている。すなわち、吸収層13にアライメントマーク2を形成する工程と、フィデューシャルマーク19とアライメントマーク2の相対位置を把握する工程と、アライメントマーク2と欠陥1の相対位置を求める工程と、アライメントマーク2を用い、回路パターン3が欠陥1を避けるようにパターン位置を調整して回路パターン3を描画する工程と、をこの順に備えている。なお、図4図5では基板16の多層反射層15が形成されている面とは反対側の面に、裏面導電膜17が形成されている例を示している。裏面導電膜17は静電チャックを行う場合に必要となるため、通常は形成されている。
【0052】
以下に、ステップ4以降について説明する。
(ステップ4:吸収層にアライメントマークを形成する工程)
フォトリソグラフィ法を用いて、吸収層13(または、低反射層と吸収層13)の一部をエッチング除去することによりアライメントマーク2を形成する(図4(a)参照)。具体的には、まず感光性レジスト層を吸収層13の上に塗布・乾燥した後、アライメントマークを露光し、現像することにより感光性レジスト層のパターンを形成する。
【0053】
次に、その感光性レジスト層のパターンをエッチングマスクとして吸収層13(または、低反射層と吸収層13)をドライエッチングした後、感光性レジスト層のパターンを除去することにより、アライメントマーク2を形成する。ドライエッチング工程には、例えば、Applied Material社製CENTURA(Applied Material社登録商標) TETRA(Applied Material社登録商標になる予定)などのフォトマスク用のドライエッチング装置を使用することができる。またはFEI社製 NB(収束イオンビーム)装置などを使用して、アライメントマーク2を形成することができる。
【0054】
(ステップ5:フィデューシャルマーク19とアライメントマーク2の相対位置を把握する検査工程)
次に、KLA Tencor社製のフォトマスク検査装置を使用し、STEP1で作製した多層反射層15中の周囲と異なる反射率の箇所(フィデューシャルマーク)19と、ステップ4で作製した吸収層13のアライメントマーク2を両方検出し、2つの相対座標を把握する(図4(b)参照)。
【0055】
(ステップ6:アライメントマーク2と欠陥1の相対位置を把握する工程)
次に、KLA Tencor社製のフォトマスク検査装置を使用し、ステップ4で作製した吸収層13のアライメントマーク2と多層反射層15中の欠陥1の両方を検出し、2つの相対座標を把握する(図4(c)参照)。その上で、ステップ5とステップ6より、ステップ1で作製した多層反射層15中の周囲と異なる反射率の箇所(フィデューシャルマーク)19と多層反射層15中の欠陥1の相対座標を把握する。
【0056】
(ステップ7:回路パターン3が欠陥1を避けるようにパターン位置を調整して回路パターン3を形成する工程)
次に、まずアライメントマーク2が形成された吸収層13の上に第2レジスト膜18を形成する。第2レジスト膜18の形成は、フォトマスクの製造工程で使用されているスピンコータなどの膜厚の均一性が良好な塗布装置を用いて感光性レジスト塗液を塗布し、乾燥することによって得ることができる。電子ビーム描画装置を使用して回路パターンを描画する場合には電子ビームレジスト塗液を使用すればよい。
【0057】
このようにして形成した第2レジスト膜18に対して、例えば、ニューフレアテクノロジー社製の電子ビームマスク描画装置のような描画装置を用いて回路パターン3を描画し、現像することにより、第2レジスト膜18をパターン化する。
【0058】
次に、パターン化された第2レジスト膜18をエッチングマスクとして吸収層13の不要部をエッチング除去する(図5(d)参照)。
【0059】
次に、パターン化された第2レジスト膜18を、レジスト膜の剥離液や酸素系プラズマを用いたアッシング処理を行うことにより除去することにより、回路パターン3が形成される(図5(e)参照)。
【0060】
多層反射層15中の欠陥1の座標が正確にわかっているため、多層反射層15中の欠陥1が、平面視で吸収層13に隠れるように、パターン形成位置をずらして回路パターン3を描画する。
【0061】
以上により、本発明の実施形態のEUV用反射型マスク200-2を作製することができる。
【0062】
<反射型マスク>
次に、本発明の実施形態のEUV用反射型マスクについて、図3(f)および図5(e)を用いて説明する。
【0063】
<本発明のEUV用反射型マスクにかかる第1の実施形態>
図3(f)に例示したように、本発明のEUV用反射型マスクにかかる第1の実施形態におけるEUV用反射型マスク200-1は、基板16上に、少なくとも、多層反射層15と、吸収層13と、をこの順に備えたEUV用反射型マスクである。基板16上の一方の面に、多層反射層15と、保護層14と、吸収層13と、低反射層12と、をこの順に備えた層構成であっても良い。さらに、基板16上のもう一方の面に、静電チャックを可能とする裏面導電膜17が備えられていても良い。
【0064】
多層反射層15には、平面視の大きさが600nm以下であり、フィデューシャルマークとして使用可能な、多層反射層15とは光の反射率が異なる部位19を備えていることが特徴である。
【0065】
<本発明のEUV用反射型マスクにかかる第2の実施形態>
図5(e)に例示したように、本発明のEUV用反射型マスクにかかる第2の実施形態におけるEUV用反射型マスク200-2は、第1の実施形態におけるEUV用反射型マスク200-1の吸収層13に、回路パターン3に加えて、アライメントマーク2を備えている。
【符号の説明】
【0066】
1・・・(多層反射層の)欠陥
2・・・アライメントマーク
3・・・回路パターン
4・・・多層反射層除去部
10、10-1・・・EUV用反射型マスクブランク
11・・・レジスト膜
12・・・低反射層
13・・・吸収層
14・・・保護層(またはキャッピング層)
15・・・多層反射層
16・・・低熱膨張基板
17・・・裏面導電膜
18・・・第2レジスト膜
19・・・多層反射層と異なる反射率の箇所(またはフィデューシャルマーク)
20・・・フィデューシャルマーク
100、100´・・・フィデューシャルマーク付きEUV用反射型フォトマスクブラン

200-1、200-2・・・EUV用反射型フォトマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7