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特開2022-128875音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128875
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220829BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220829BHJP
【FI】
G01H17/00 C
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027326
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】三木 健志
(72)【発明者】
【氏名】中江 修二
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】回転体に対する音響パワーの評価の精度を向上することのできる音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】音響パワー計測システム20は、回転体である室外機1に適用される音響パワー計測システム20であって、室外機1を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各角度方向に設けられた音圧計Mと、角度方向のそれぞれにおいて、周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で音圧計Mが計測した音圧を取得する処理装置50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に適用される音響パワー計測システムであって、
前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計と、
前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する計測部と、
を備える音響パワー計測システム。
【請求項2】
前記計測点は、対応する前記角度方向において前記直交方向に3点以上設定される請求項1に記載の音響パワー計測システム。
【請求項3】
前記角度方向は、前記周方向に対して6方位以上設定される請求項1または2に記載の音響パワー計測システム。
【請求項4】
前記角度方向は、前記周方向に対して8方位以上設定される請求項1から3のいずれか1項に記載の音響パワー計測システム。
【請求項5】
前記計測部は、前記回転体が回転することで発生する流体力による音圧が所定値以下となる計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する請求項1から4のいずれか1項に記載の音響パワー計測システム。
【請求項6】
前記角度方向のそれぞれにおいて、前記音圧計の前記直交方向の位置を移動させる移動部を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の音響パワー計測システム。
【請求項7】
前記計測部において取得した各前記角度方向の音圧に基づいて前記回転体の音響パワーを演算する演算部を備える請求項1から6のいずれか1項に記載の音響パワー計測システム。
【請求項8】
回転体に適用される音響パワー計測方法であって、
前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計で音圧を計測する工程と、
前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する工程と、
を有する音響パワー計測方法。
【請求項9】
回転体に適用される音響パワー計測プログラムであって、
前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計で音圧を計測する処理と、
前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する処理と、
をコンピュータに実行させるための音響パワー計測プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械や装置類等の騒音を評価するために、音源全体が放射する音響的な総エネルギー値を示す量である音響パワー(音響パワーレベル)が用いられる(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-48227号公報
【特許文献2】特開平8-122141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音響パワーの測定は、例えば半無響室において音源を囲う半球面上にまばらに音圧計を配置(例えば数個程度配置)して測定を行う。しかしながら、特に音源が回転体である場合には、音源の周囲の音場が不均一となりやすい。このため、従来の音源パワーの測定方法では、音場の不均一性を十分に考慮して音響パワーの評価を行うことが困難であった。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、回転体に対する音響パワーの評価の精度を向上することのできる音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、回転体に適用される音響パワー計測システムであって、前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計と、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する計測部と、を備える音響パワー計測システムである。
【0007】
本開示の第2態様は、回転体に適用される音響パワー計測方法であって、前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計で音圧を計測する工程と、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する工程と、を有する音響パワー計測方法である。
【0008】
本開示の第3態様は、回転体に適用される音響パワー計測プログラムであって、前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計で音圧を計測する処理と、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する処理と、をコンピュータに実行させるための音響パワー計測プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転体に対する音響パワーの評価の精度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る音響パワー計測システムの概略構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る走査経路の一例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る処理装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図4】本開示の一実施形態に係る処理装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図5】本開示の一実施形態に係る音響パワー計測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本開示の一実施形態に係る室外機の音場のシミュレーション結果を示している。
図7】本開示の一実施形態に係る第4NZ音の計測結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、音響パワー計測システム20の概略構成を示す図である。本実施形態では、音響パワー計測の対象である音源を回転体として説明する。回転体とは、回転する可動部を有する機器である。本実施形態では、回転体として、ファンを有する室外機1を対象とする。音源としては室外機1に限定されず、回転体であれば他の装置でも同様に適用することが可能である。
【0013】
図1に示すように、計測室(例えば半無響室)に音源である室外機1が設置されている。そして、室外機1を囲うように、音響パワー計測システム20が設置されている。音響パワー計測システム20は、計測系統30と、処理装置50とを備えている。
【0014】
図1に示すように、室外機1の囲うように角度方向が定義されている。角度方向は、室外機1を中心とする周方向に対して複数定義されている。本実施形態では、周方向は水平面内で定義されているものとする。すなわち、角度方向は、該周方向と直交する直交方向(本実施形態では鉛直上方向)から見たときに、室外機1を中心として、周方向に複数設定される。例えば、室外機1を中心として、半径が所定距離(例えば1m)となる円周において、該円周を所定数だけ等分するように角度方向が設定される。本実施形態では、角度方向は、8方位設定されているものとする。角度方向については、計測精度によって8方位以上とすることが好ましいが、要求される計測精度によっては、角度方向を6方位以上としても良い。
【0015】
図1に示すように、角度方位がそれぞれ第1方向(第1方位)、第2方向(第2方位)、第3方向(第3方位)、第4方向(第4方位)、第5方向(第5方位)、第6方向(第6方位)、第7方向(第7方位)、第8方向(第8方位)と設定されている。本実施形態では、8方位として、各方位のなす角を45°(=360°/8)として等分しているが、各方位のなす角は等分しなくてもよい。
【0016】
そして、各角度方向には、走査経路Lが定義されている。走査経路Lは、室外機1からの距離が所定距離となるように設定されており、角度方向は変わらず鉛直方向成分が変化するように定義されている。図2は、第1方向における走査経路Lの一例を示している。本実施形態では室外機1を対象としているため、室外機1の高さよりも低い位置にある走査経路L(図2のP1からP2)は、室外機1の筐体(例えば筐体の基準点)から所定距離だけ離れた位置において、鉛直方向へ延びるように設定されている。そして、室外機1の高さよりも高い位置にある走査経路L(図2のP2からP3)は、室外機1の筐体(例えば筐体の基準点)から所定距離だけ離れるように、円弧状に設定される。このように、走査経路Lは、評価対象から所定距離だけ離れるように設定される。本実施形態では、室外機1を対象としたが、他の機器を対象とする場合には、走査経路Lは図2の形状に限定されない。
【0017】
このように走査経路Lが設定されることで、図1に示すように、室外機1を囲う閉曲面S(室外機1から所定距離(1m)だけ離れるような閉曲面S)上において、角度方向の分だけ走査経路Lが設定される。換言すると、閉曲面Sは、図2に示す走査経路Lを室外機1を中心として回転させてできる面である。
【0018】
さらに、走査経路Lは、回転体である室外機1が回転することで発生する流体力が、音圧計Mの計測に大きく影響しないように設定される。本実施形態では、流体力を風圧として説明する。本実施形態では、室外機1を対象としており、図2に示すように、室外機1の上部から風が出る構造となっている。このため、走査経路Lは、走査経路L上で音圧計Mによる音圧計測を行った場合に、風による音圧が所定値以下となるように設定される。風による音圧とは、室外機1が発生する音ではなく、室外機1が発生させる風のみが影響する音圧である。すなわち、室外機1の騒音評価においては、風による音圧は雑音となるため、この雑音の影響を低減するように、走査経路Lが設定される。このため、走査経路Lは、図2に示すP3の位置までとなっている。P2からP3までの円弧は、室外機1の基準位置に対して、60°となっている。例えば、ファンが作る気流方向の流れを目安として走査経路Lを設定してもよい。例えば手で風を感じる領域(上向きのジェットがある領域や、ジェットと流れが止まっている領域の間の乱れた領域)を避けて走査経路Lを設定してもよい。
【0019】
なお、角度方位や走査経路Lは仮想的に設定されるものである。このため、音圧計Mの配置のために、ガイドを設けることとしてもよい。例えば、室外機1の筐体と、音圧計Mとを所定の長さ(例えば1m)の紐でつなげることで、前述のような閉曲面Sに対して音圧計Mを配置することができる。また、走査経路Lに沿って紐を垂らしたりガイド部材を設けることで、所定距離を確保して音圧計Mを移動できるようにしてもよい。
【0020】
このように、角度方向と走査経路Lが設定された上で、音響パワー計測システム20(計測系統30及び処理装置50)による音響評価が行われる。
【0021】
計測系統30は、各角度方向に設けられた音圧計M(マイクロフォン)を備えている。すなわち、計測系統30では、室外機1を囲うように音圧計Mが設置されている。本実施形態では、各角度方向に対して1つの音圧計Mが設けられるものとする。
【0022】
そして、各角度方向の音圧計Mは、それぞれの走査経路L上において位置(計測点)が変更される。例えば、計測点は3点以上設定される。しかし、走査経路L上の計測点は数が多いほど評価精度が向上するため、好ましくは、8点以上がよい。すなわち、音圧計Mが走査経路L上を走査されて、各計測点にて音圧計測が行われる。
【0023】
本実施形態では、音圧計Mは、計測員等によって手動へ移動される。すなわち、ある計測点における音圧計測が完了すると、同じ走査経路L上の他の計測点へ音圧計Mが移動され、音圧計測が行われる。
【0024】
このようにして、計測系統30では、各角度方向の音圧計測だけでなく、鉛直方向成分を変えて音圧計測が可能となっているため、室外機1の周囲の音場をより正確に計測することが可能となる。
【0025】
なお、本実施形態では、各角度方向に対して1つの音圧計Mが設けられるものとしたが、各角度方向において、走査経路L上に、複数の音圧計Mを設けることとしても良い。
【0026】
処理装置50は、各音圧計Mの計測結果に基づいて音響パワー(音響パワーレベル)を評価する。
【0027】
図3は、本実施形態に係る処理装置50のハードウェア構成の一例を示した図である。
図3に示すように、処理装置50は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU11と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)12と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)13と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)14と、ネットワーク等に接続するための通信部15とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス18を介して接続されている。
【0028】
また、処理装置50は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
【0029】
なお、CPU11が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM12に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0030】
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ14等に記録されており、このプログラムをCPU11がRAM13等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM12やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0031】
図4は、処理装置50が備える機能を示した機能ブロック図である。図4に示されるように、処理装置50は、計測部51と、演算部52とを備えている。
【0032】
計算部は、各音圧計Mから音圧の計測結果を取得する。具体的には、角度方向のそれぞれにおいて、鉛直方向の位置が異なる複数の計測点で音圧計Mが計測した音圧を取得する。すなわち、計測部51は、各角度方向における各音圧計Mから音圧の計測結果を取得し、音圧計Mが鉛直方向に移動された場合に、移動後における計測点での音圧計Mの計測結果を取得する。
【0033】
図2に示すように、回転体による風の影響が抑制されるように走査経路Lが設定されている。このため、計測部51は、室外機1の風による音圧が所定値以下となる計測点で音圧計Mが計測した音圧を取得する。
【0034】
このようにして、計測部51は、8方位の角度方向のそれぞれから、鉛直方向に計測点が異なる複数の音圧計測結果を取得する。
【0035】
演算部52は、計測部51において取得した各角度方向の音圧に基づいて音響パワーを演算する。音響パワーとは、音源から単位時間に放射される音のエネルギーを表す指標である。すなわち、音響パワーは、計測する位置によらない普遍的な量となる。具体的には、計測系統30により室外機1を囲う閉曲面Sにおいて、音圧(パワー)を積分して、音響パワーレベルを評価する。例えば、閉曲面Sにおいて音圧の2乗を積分して音響パワーレベルを評価する。
【0036】
音源周囲の音圧に基づき音響パワーが評価されれば、具体的な評価方法は限定されない。
【0037】
次に、音響パワー計測処理の一例について図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る音響パワー計測処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローは、例えば、計測員等により計測の開始指示があった場合に処理が開始される。
【0038】
計測が行われる場合には、室外機1は稼働しているものとする。すなわち、ファンが回転している状態で計測が行われる。
【0039】
そして、図5のフローでは、音圧計Mは走査経路Lにおける鉛直方向が最も下側の計測点を初期位置として配置されているものとする。そして、走査経路Lに沿って鉛直方向成分が高くなるように、計測点が設定されている。走査経路Lにおける各計測点には番号であるmが予め設定されており、初期位置の計測点をm=1とする。そして、初期位置から鉛直方向成分が高くなるごとに番号であるmが1ずつ増加し、最終位置(走査経路Lにおける鉛直方向成分が最も高い計測点)でmが所定値に達するものとする。図5のフローが開始される場合には、mは初期値(すなわち1)に設定されており、各角度方向の音圧計Mは初期位置に配置されているものとする。mの所定値は、計測点数に相当し、適宜変更可能である。
【0040】
まず、各角度方向の音圧計Mより音圧の計測結果を取得する(S101)。
【0041】
次に、m=所定数となったか否かを判定する(S102)。
【0042】
m=所定数となっていない場合(S102のNO判定)には、mに1を加算する(m=m+1)処理を行う(S103)。そして、mの値に対応する計測点へ、各角度方向の音圧計Mを移動する(S104)。すなわち、S104では、鉛直方向成分が高くなるように、音圧計Mが移動される。なお、S104については、計測員等によって手動で移動されることとしても良いし、機械的に自動で移動されることとしても良い。
【0043】
そして、再度S101が実行される。これにより、それぞれの角度方向において、音圧計Mの計測位置が鉛直方向に移動されて、音圧計Mの計測が行われる。
【0044】
m=所定数となった場合(S102のYES判定)には、取得した音圧の計測結果に基づいて、音響パワーを演算する(S105)。
【0045】
このようにして、室外機1に対する音響パワーが評価される。
【0046】
次に、回転体の周囲の音場の不均一性について説明する。
図6は、室外機1のNZ音(回転音)の音場のシミュレーション結果を示している。図6では、閉曲面Sにおける第1NZ音(回転数の1倍のNZ音)、第2NZ音(回転数の2倍のNZ音)、第3NZ音(回転数の3倍のNZ音)、第4NZ音(回転数の4倍のNZ音)、第5NZ音(回転数の5倍のNZ音)の音場をそれぞれ示している。図6に示すように、室外機1の周囲の音場は、各NZ音において不均一となっている。特に、室外機1は、鉛直方向に対して音場が不均一となりやすい傾向にある。
【0047】
図7は、第4方向及び第8方向における鉛直方向の第4NZ音の計測結果を示している。図7では、縦軸を第4NZ音の音圧、横軸を床面からの距離としている。図7に示すように、音圧は床面からの距離によって大きく変化している。このことからも、室外機1は、音場が不均一となっていることがわかる。
【0048】
本実施形態では、各角度方向の音圧計測だけでなく、鉛直方向成分を変えて音圧計測を行う。このため、室外機1の周囲の音場をより正確に計測できる。そして、この計測結果に基づいて音響パワーを評価するため、室外機1に対してより正確に評価を行うことが可能となる。
【0049】
図6図7では、一例として室外機1に対する結果を示したが、他の回転体についても音場に不均一性が生じる可能性があるため、本実施形態と同様に音響パワーの評価を行うことが好ましい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラムによれば、回転体の周囲の音場が不均一な場合であっても、周方向に複数の角度方向が設定されており、それぞれの角度方向において、鉛直方向の複数の計測点で音圧計測が行われることで、回転体の周囲の音場状況をより正確に計測することが可能となる。すなわち音場をより正確に把握して、音響パワーの評価を行うことが可能となる。
【0051】
ある角度方向における計測点を、鉛直方向に3点以上設定することによって、角度方向の数×3点(3点以上でもよい)の計測点の音圧を把握することができる。このため、回転体の音場をより正確に把握することができる。
【0052】
角度方向が回転体を中心とする周方向に対して6方位以上設定されることで、回転体の音場をより正確に把握することができる。さらに、角度方向が回転体を中心とする周方向に対して8方位以上設定されることで、回転体の音場をより正確に把握することができる。
【0053】
回転体が回転することで発生する流体力(風圧)による音圧が所定値以下となる計測点で音圧を計測することで、流体力による影響を抑制して、より正確に回転体の音圧を計測することができる。
【0054】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【0055】
例えば、本実施形態では、音圧計Mの移動を手動ですることとしたが、自動で行うこととしても良い。この場合には、例えば、処理装置50に移動部を設けることとしても良い。移動部は、角度方向のそれぞれにおいて、音圧計Mの鉛直方向の位置を移動させる。すなわち、移動部は、走査経路L上において音圧計Mを移動させる。角度方向のそれぞれにおいて、音圧計Mの鉛直方向の位置の移動が移動部により行われることで、計測にようする労力を抑制することができる。
【0056】
以上説明した各実施形態に記載の音響パワー計測システム、及びその方法並びにプログラムは例えば以下のように把握される。
本開示に係る音響パワー計測システム(20)は、回転体に適用される音響パワー計測システムであって、前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計(M)と、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する計測部(51)と、を備える。
【0057】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、回転体の周囲の音場が不均一な場合であっても、周方向に複数の角度方向が設定されており、それぞれの角度方向において、前記周方向に直交する直交方向の複数の計測点で音圧計測が行われることで、回転体の周囲の音場状況をより正確に計測することが可能となる。すなわち音場をより正確に把握して、音響パワーの評価を行うことが可能となる。なお、直交方向は、周方向が水平面内で定義される場合は、鉛直方向とされる。
【0058】
本開示に係る音響パワー計測システムは、前記計測点は、対応する前記角度方向において前記直交方向に3点以上設定されることとしてもよい。
【0059】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、ある角度方向における計測点を、直行方向に3点以上設定することによって、角度方向の数×3点(3点以上でもよい)の計測点の音圧を把握することができる。このため、回転体の音場をより正確に把握することができる。
【0060】
本開示に係る音響パワー計測システムは、前記角度方向は、前記周方向に対して6方位以上設定されることとしてもよい。
【0061】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、角度方向が回転体を中心とする周方向に対して6方位以上設定されることで、回転体の音場をより正確に把握することができる。
【0062】
本開示に係る音響パワー計測システムは、前記角度方向は、前記周方向に対して8方位以上設定されることとしてもよい。
【0063】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、角度方向が回転体を中心とする周方向に対して8方位以上設定されることで、回転体の音場をより正確に把握することができる。
【0064】
本開示に係る音響パワー計測システムは、前記計測部は、前記回転体が回転することで発生する流体力による音圧が所定値以下となる計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得することとしてもよい。
【0065】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、回転体が回転することで発生する流体力による音圧が所定値以下となる計測点で音圧を計測することで、流体力による影響を抑制して、より正確に回転体の音圧を計測することができる。なお、流体力としては、例えば風圧が挙げられる。
【0066】
本開示に係る音響パワー計測システムは、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記音圧計の前記直交方向の位置を移動させる移動部を備えることとしてもよい。
【0067】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、角度方向のそれぞれにおいて、音圧計の直交方向の位置の移動が移動部により行われることで、計測にようする労力を抑制することができる。
【0068】
本開示に係る音響パワー計測システムは、前記計測部において取得した各前記角度方向の音圧に基づいて前記回転体の音響パワーを演算する演算部(52)を備えることとしてもよい。
【0069】
本開示に係る音響パワー計測システムによれば、各角度方向の音圧により、音源としての回転体の音響パワーを評価することができる。音源周囲の音圧に基づき音響パワーが評価されれば、具体的な評価方法は限定されない。
【0070】
本開示に係る音響パワー計測方法は、回転体に適用される音響パワー計測方法であって、前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計で音圧を計測する工程と、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する工程と、を有する。
【0071】
本開示に係る音響パワー計測プログラムは、回転体に適用される音響パワー計測プログラムであって、前記回転体を中心とする周方向に対して複数の角度方向が設定されており、各前記角度方向に設けられた音圧計で音圧を計測する処理と、前記角度方向のそれぞれにおいて、前記周方向に直交する直交方向の位置が異なる複数の計測点で前記音圧計が計測した音圧を取得する処理と、をコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0072】
1 :室外機
11 :CPU
12 :ROM
13 :RAM
14 :ハードディスクドライブ
15 :通信部
18 :バス
20 :音響パワー計測システム
30 :計測系統
50 :処理装置
51 :計測部
52 :演算部
L :走査経路
M :音圧計
S :閉曲面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7