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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128901
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20220829BHJP
   F16K 15/02 20060101ALI20220829BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B22D17/32 E
F16K15/02
F15B11/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027371
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 藍貴
(72)【発明者】
【氏名】山中 章弘
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴明
(72)【発明者】
【氏名】北川 智浩
【テーマコード(参考)】
3H058
3H089
【Fターム(参考)】
3H058AA05
3H058BB02
3H058CA04
3H058CA06
3H058CC02
3H058CD05
3H058EE08
3H058EE12
3H089AA10
3H089AA90
3H089BB14
3H089BB15
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA14
3H089DB43
3H089DB68
3H089DC02
3H089GG02
3H089JJ04
(57)【要約】
【課題】射出前進工程の開始直後におけるプランジャの加速度を増大させたダイカストマシンを提供する。
【解決手段】ダイカストマシンは、円柱形状のバルブ室(54)が内部に形成され、供給流路のアキュームレータ側に接続される流入ポート(55)が側面に形成され、及び供給流路のヘッド室側に接続される流出ポート(56)が先端に形成され、バルブ室(54)と流出ポート(56)との間にリング形状のバルブシート(58)が形成されたバルブ本体(51)と、円柱部(61)円錐台部(62)を有し、バルブシート(58)に対して円錐台部(62)を接離させる向きに移動可能な状態で、バルブ室(54)に収容されたポペット(52)とを備えるチェックバルブ(45)を備え、ポペット(52)の移動方向に対する円錐台部(62)の側面の傾斜角度θは、45°≦θ<90°に設定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、
前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、
作動油がヘッド室に供給されることによって前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されることによって前記プランジャを後退させる油圧シリンダと、
前記ヘッド室及び前記ロッド室に作動油を給排する油圧回路とを備えるダイカストマシンであって、
前記油圧回路は、
作動油を貯留する作動油タンクと、
予め蓄圧した作動油を、供給流路を通じて前記ヘッド室に供給するアキュームレータと、
前記供給流路を開閉するチェックバルブとを備え、
前記チェックバルブは、
円柱形状のバルブ室が内部に形成され、前記供給流路の前記アキュームレータ側に接続される流入ポートが側面に形成され、及び前記供給流路の前記ヘッド室側に接続される流出ポートが先端に形成され、前記バルブ室と前記流出ポートとの間にリング形状のバルブシートが形成されたバルブ本体と、
円柱部及び前記円柱部の先端に位置する円錐台部を有し、前記バルブシートに対して前記円錐台部を接離させる向きに移動可能な状態で、前記バルブ室に収容されたポペットとを備え、
前記ポペットの移動方向に対する前記円錐台部の側面の傾斜角度θは、45°≦θ<90°に設定されていることを特徴とするダイカストマシン。
【請求項2】
前記バルブ本体は、前記ポペットの移動方向に直交するリング形状の先端壁を有し、
前記流出ポートは、前記先端壁の内周から前記バルブ室と反対側に延設され、
前記バルブシートは、前記先端壁と前記流出ポートの内面との境界において、周方向に連続する直角の角部であることを特徴とする請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記流出ポートの直径A1と、前記円錐台部の先端の直径A2とは、0.7≦A2/A1≦0.95の関係を有することを特徴とする請求項1または2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記流出ポートの直径A1と、前記円柱部の直径A3とは、1.05≦A3/A1≦1.15の関係を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記油圧回路は、前記アキュームレータから前記バルブ本体の基端に形成されたパイロットポートに至るパイロット流路に配置され、前記アキュームレータの作動油を前記パイロットポートに供給する供給位置、及び前記パイロットポートの作動油を前記作動油タンクに排出する排出位置に切り替え可能な第1ソレノイドバルブを備え、
前記ポペットは、
前記円錐台部を前記バルブシートから離間させる向きの圧力を、前記流入ポートを通じて前記バルブ室に供給された作動油から受ける第1受圧部と、
前記円錐台部を前記バルブシートに当接させる向きの圧力を、前記パイロットポートを通じて前記バルブ室に供給された作動油から受ける第2受圧部とを備え、
前記第2受圧部の受圧面積は、前記第1受圧部の受圧面積より大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記チェックバルブは、前記円錐台部を前記バルブシートに当接させる向きに、前記ポペットを付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項5に記載のダイカストマシン。
【請求項7】
前記油圧回路は、前記チェックバルブより前記ヘッド室側で前記供給流路から分岐して、前記ヘッド室の作動油を前記作動油タンクに戻す戻り流路に配置され、前記戻り流路を閉塞する閉塞位置、及び前記戻り流路を開放する開放位置に切り替え可能な第2ソレノイドバルブを備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯金属を金型内に射出して成形品を成形するダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型のキャビティに連通するスリーブ内に配置されたプランジャと、スリーブ内でプランジャを進退させる油圧シリンダと、油圧シリンダに対して作動油を給排する油圧回路とを備えるダイカストマシンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記構成のダイカストマシンは、プランジャ内の溶湯金属をキャビティ内に均一に充填するために、プランジャを高速で前進させる射出前進工程が必要となる。そこで、特許文献1に記載のダイカストマシンは、アキュームレータと油圧シリンダのヘッド室とを接続する流路にバルブを配置し、射出前進工程でこのバルブを開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-155378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、射出前進工程の開始時点におけるプランジャの加速が不十分だと、キャビティ全体に溶湯金属が充填される前に溶湯金属の凝固が進んで、成形不良が発生するという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、射出前進工程の開始直後におけるプランジャの加速度を増大させたダイカストマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、金型内に形成されたキャビティに連通するスリーブと、前記スリーブ内で前記キャビティに向けて前進することによって、前記スリーブ内の溶湯金属を前記キャビティに供給するプランジャと、作動油がヘッド室に供給されることによって前記プランジャを前進させ、作動油がロッド室に供給されることによって前記プランジャを後退させる油圧シリンダと、前記ヘッド室及び前記ロッド室に作動油を給排する油圧回路とを備えるダイカストマシンであって、前記油圧回路は、作動油を貯留する作動油タンクと、予め蓄圧した作動油を、供給流路を通じて前記ヘッド室に供給するアキュームレータと、前記供給流路を開閉するチェックバルブとを備え、前記チェックバルブは、円柱形状のバルブ室が内部に形成され、前記供給流路の前記アキュームレータ側に接続される流入ポートが側面に形成され、及び前記供給流路の前記ヘッド室側に接続される流出ポートが先端に形成され、前記バルブ室と前記流出ポートとの間にリング形状のバルブシートが形成されたバルブ本体と、円柱部及び前記円柱部の先端に位置する円錐台部を有し、前記バルブシートに対して前記円錐台部を接離させる向きに移動可能な状態で、前記バルブ室に収容されたポペットとを備え、前記ポペットの移動方向に対する前記円錐台部の側面の傾斜角度θは、45°≦θ<90°に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、射出前進工程の開始直後におけるプランジャの加速度を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るダイカストマシンの側面図である。
図2】油圧回路の回路図である。
図3】開放位置のチェックバルブを示す図である。
図4】閉塞位置のチェックバルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシン10の側面図である。ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する。図1に示すように、ダイカストマシン10は、型締装置20と、射出装置30とを主に備える。
【0011】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型22を支持する固定ダイプレート23と、可動側金型24を支持する可動ダイプレート25とを主に備える。固定側金型22及び可動側金型24は、ダイカストマシン10の左右方向(水平方向)において、互いに対面するように支持されている。
【0012】
可動ダイプレート25は、型開閉シリンダ26の駆動力がトグルリンク機構27を通じて伝達されることによって、タイバー28に沿って左右方向に移動する。可動ダイプレート25が左方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが離間(型開)する。一方、可動ダイプレート25が右方向に移動すると、固定側金型22と可動側金型24とが当接(型閉)する。そして、可動ダイプレート25を右方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型22及び可動側金型24が型締される。
【0013】
射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属を射出する。射出装置30は、射出スリーブ(スリーブ)31と、プランジャ32と、油圧シリンダ33と、油圧回路40とを主に備える。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20と水平方向(型締装置20の右方)に離間して配置されている。
【0014】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート23に取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、型締された金型21の内部空間(以下、「キャビティ」と表記する。)に連通している。また、射出スリーブ31には、ラドル(図示省略)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0015】
プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ32が前進すると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がキャビティに供給される。一方、プランジャ32が後退すると、ラドルから供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0016】
油圧シリンダ33は、作動油が供給及び排出(以下、「給排」と表記する。)されて伸縮することによって、プランジャ32を進退させる。油圧シリンダ33への作動油の給排は、油圧回路40によって行われる。図2に示すように、油圧シリンダ33は、シリンダチューブ34と、ピストン35と、ロッド36とで構成される。
【0017】
ピストン35は、シリンダチューブ34内を移動可能に構成されている。また、ピストン35は、シリンダチューブ34内を、ヘッド室37及びロッド室38に区画する。ロッド36は、基端がピストン35に接続され、シリンダチューブ34の外部に突出している。そして、ロッド36の先端(突出端)には、プランジャ32が取り付けられている。
【0018】
ヘッド室37に作動油が供給され且つロッド室38から作動油が排出されると、ピストン35がロッド室38側に移動して、ロッド36が伸長する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が前進する。一方、ロッド室38に作動油が供給され且つヘッド室37から作動油が排出されると、ピストン35がヘッド室37側に移動して、ロッド36が縮小する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が後退する。
【0019】
図2は、油圧回路40の回路図である。図2に示すように、油圧回路40は、作動油タンク41と、モータ42と、油圧ポンプ43と、アキュームレータ44と、チェックバルブ45と、パイロットバルブ46(第1ソレノイドバルブ)と、開閉バルブ47(第2ソレノイドバルブ)と、給排制御バルブ48とを主に備える。また、油圧回路40は、作動油を流通させる複数の流路L1、L2、L3、L4、L5、L6を備える。
【0020】
ヘッド側供給流路L1は、チェックバルブ45を介して、アキュームレータ44と油圧シリンダ33のヘッド室37とを接続する。パイロット流路L2は、チェックバルブ45よりアキュームレータ44側でヘッド側供給流路L1から分岐して、パイロットバルブ46を介してチェックバルブ45のパイロットポート57(図3参照)に接続されている。排出流路L3は、パイロットバルブ46を介してパイロットポート57と作動油タンク41とを接続する。
【0021】
ヘッド側戻り流路L4は、チェックバルブ45よりヘッド室37側でヘッド側供給流路L1から分岐して、開閉バルブ47を介して作動油タンク41に接続されている。ロッド側供給流路L5は、給排制御バルブ48を介して油圧ポンプ43と油圧シリンダ33のロッド室38とを接続する。ロッド側戻り流路L6は、給排制御バルブ48を介してロッド室38と作動油タンク41とを接続する。
【0022】
作動油タンク41は、作動油を貯留する。作動油は、例えば、ISO粘度分類の「VG46」を用いることができる。この作動油は、40°における粘度(mm/s)が41.4以上で且つ50.6以下である。モータ42は、油圧ポンプ43を駆動するための駆動力を発生させる。油圧ポンプ43は、モータ42の駆動力が伝達されて、作動油タンク41に貯留された作動油をロッド側供給流路L5に圧送する。また、油圧ポンプ43は、不図示のチャージ流路を通じてアキュームレータ44に作動油をチャージする。
【0023】
アキュームレータ44は、作動油を圧縮した状態で貯留(蓄圧)し、圧縮された作動油をヘッド室37及びパイロットポート57に供給する。より詳細には、アキュームレータ44には、チャージ流路を通じて油圧ポンプ43から供給される作動油が蓄圧される。また、アキュームレータ44から排出された作動油は、ヘッド側供給流路L1を通じてヘッド室37に供給され、パイロット流路L2を通じてパイロットポート57に供給される。
【0024】
チェックバルブ45は、ヘッド側供給流路L1に配置されている。より詳細には、チェックバルブ45は、ヘッド側供給流路L1のパイロット流路L2との分岐位置よりヘッド室37側で、ヘッド側供給流路L1のヘッド側戻り流路L4との分岐位置よりアキュームレータ44側に配置されている。そして、チェックバルブ45は、ヘッド側供給流路L1を開閉することによって、アキュームレータ44からヘッド室37への作動油の供給を制御する。
【0025】
チェックバルブ45は、ヘッド側供給流路L1を開放する開放位置(図3参照)と、ヘッド側供給流路L1を閉塞する閉塞位置(図4参照)とに切り替え可能に構成されている。チェックバルブ45を開放位置にすると、アキュームレータ44からヘッド室37に作動油が供給される。一方、チェックバルブ45を閉塞位置にすると、アキュームレータ44からヘッド室37への作動油の供給が停止する。チェックバルブ45の詳細な構成は、図3及び図4を参照して後述する。
【0026】
パイロットバルブ46は、パイロット流路L2及び排出流路L3に接続されている。そして、パイロットバルブ46は、パイロットポート57への作動油の給排を制御する。パイロットバルブ46は、制御装置(図示省略)の制御に従って、供給位置Aと、排出位置Bとに切り替え可能なソレノイドバルブである。供給位置Aは、パイロット流路L2をパイロットポート57に接続して、アキュームレータ44から排出された作動油をパイロットポート57に供給する位置である。排出位置Bは、排出流路L3をパイロットポート57に接続して、パイロットポート57の作動油を作動油タンク41に排出する位置である。
【0027】
パイロットバルブ46の初期位置は、供給位置Aである。また、パイロットバルブ46は、制御装置から制御電圧が印加されることによって、供給位置Aから排出位置Bに切り替えられる。さらに、パイロットバルブ46は、制御装置からの制御電圧の印加が停止することによって、再び排出位置Bから供給位置Aに切り替えられる。
【0028】
開閉バルブ47は、ヘッド側戻り流路L4に配置されている。そして、開閉バルブ47は、ヘッド室37からの作動油の排出を制御する。開閉バルブ47は、制御装置(図示省略)の制御に従って、閉塞位置Cと、開放位置Dとに切り替え可能なソレノイドバルブである。閉塞位置Cは、ヘッド側戻り流路L4を閉塞して、ヘッド室37からの作動油の排出を阻止する位置である。開放位置Dは、ヘッド側戻り流路L4を開放して、ヘッド室37の作動油を作動油タンク41に排出する位置である。
【0029】
開閉バルブ47の初期位置は、閉塞位置Cである。また、開閉バルブ47は、制御装置から制御電圧が印加されることによって、閉塞位置Cから開放位置Dに切り替えられる。さらに、開閉バルブ47は、制御装置からの制御電圧の印加が停止することによって、再び開放位置Dから閉塞位置Cに切り替えられる。
【0030】
給排制御バルブ48は、ロッド側供給流路L5及びロッド側戻り流路L6に接続されている。そして、給排制御バルブ48は、ロッド室38への作動油の給排を制御する。給排制御バルブ48は、制御装置(図示省略)の制御に従って、排出位置Eと、供給位置Fとに切り替え可能なソレノイドバルブである。排出位置Eは、ロッド側戻り流路L6をロッド室38に接続して、ロッド室38の作動油を作動油タンク41に排出する位置である。供給位置Fは、ロッド側供給流路L5をロッド室38に接続して、油圧ポンプ12から排出された作動油をロッド室38に供給する位置である。
【0031】
給排制御バルブ48の初期位置は、排出位置Eである。また、給排制御バルブ48は、制御装置から制御電圧が印加されることによって、排出位置Eから供給位置Fに切り替えられる。さらに、給排制御バルブ48は、制御装置からの制御電圧の印加が停止することによって、再び供給位置Fから排出位置Eに切り替えられる。
【0032】
次に、図3及び図4を参照して、チェックバルブ45の構成を説明する。図3は、開放位置のチェックバルブ45を示す図である。図4は、閉塞位置のチェックバルブ45を示す図である。図3及び図4に示すように、チェックバルブ45は、バルブ本体51と、ポペット52と、コイルバネ(付勢部材)53とを主に備える。
【0033】
バルブ本体51は、チェックバルブ45の外殻を構成する。バルブ本体51の内部には、円柱形状の外形を呈するバルブ室54が形成されている。バルブ室54は、ポペット52を収容すると共に、作動油を流通させる空間である。
【0034】
バルブ室54の先端(ポペット52の移動方向における一方側の端部)は先端壁59によって画定され、バルブ室54の基端(ポペット52の移動方向における他方側の端部)は基端壁60によって画定されている。先端壁59及び基端壁60は、ポペット52の移動方向に直交するリング形状の壁である。また、バルブ室54は、ポペット52によって、先端側の空間と基端側の空間とに区画されている。さらに、バルブ本体51には、各々がバルブ室54に連通する流入ポート55、流出ポート56、及びパイロットポート57と、バルブシート58とが形成されている。
【0035】
流入ポート55は、バルブ本体51の側面に形成されている。また、流入ポート55は、バルブ室54の径方向外向きに延設されている。さらに、流入ポート55は、一端がヘッド側供給流路L1のアキュームレータ44側に接続され、他端がバルブ室54のポペット52より先端側に接続されている。そして、流入ポート55は、アキュームレータ44から供給される作動油を、バルブ室54のポペット52より先端側に流入させる。
【0036】
流出ポート56は、バルブ本体51の先端において、リング形状の先端壁59の内周に形成されている。また、流出ポート56は、バルブ室54の軸方向外向きに延設されている。さらに、流出ポート56は、一端がバルブ室54のポペット52より先端側に接続され、他端がヘッド側供給流路L1のヘッド室37側に接続されている。そして、流出ポート56は、流入ポート55からバルブ室54に流入した作動油を、ヘッド室37に向けて流出させる。
【0037】
パイロットポート57は、バルブ本体51の基端において、リング形状の基端壁60の内周に形成されている。また、パイロットポート57は、バルブ室54の軸方向外向きに延設されている。さらに、パイロットポート57は、一端がパイロット流路L2に接続され、他端がバルブ室54のポペット52より基端側に接続されている。そして、パイロットポート57は、アキュームレータ44から供給される作動油を、バルブ室54のポペット52より基端側に流入させる。
【0038】
バルブシート58は、バルブ室54と流出ポート56との間に形成されたリング形状の部分である。より詳細には、バルブシート58は、互いに直交する先端壁59と流出ポート56の内面との境界に形成された直角の角部である。そして、この角部は、流出ポート56の周方向に連続(リング形状)している。バルブシート58は、後述するポペット52の円錐台部62が接離することによって、バルブ室54と流出ポート56とを連通または遮断する部分である。
【0039】
ポペット52は、バルブ室54内を軸方向(バルブシート58に対して円錐台部62を接離させる向き)に移動可能な状態で、バルブ室54内に収容されている。また、ポペット52は、バルブ室54を先端側の空間と基端側の空間とに区画する。そして、ポペット52は、円柱部61と、円錐台部62と、円筒部63と、第1受圧部64と、第2受圧部65とで構成される。
【0040】
円柱部61は、バルブ室54の直径より小さい円柱形状の外形を呈する。円錐台部62は、円柱部61の先端に設けられている。また、円錐台部62は、先端に向かって徐々に直径が小さくなる円錐台形状の外形を呈する。円筒部63は、第1受圧部64を挟んで円柱部61と反対側に設けられている。また、円筒部63は、パイロットポート57に対面する面(第1受圧部64と反対側の面)が開放されている。さらに、円筒部63の外形寸法は、バルブ室54の直径と同一か僅かに小さく設定される。
【0041】
第1受圧部64は、円柱部61及び円筒部63の間に設けられている。第1受圧部64は、円柱部61から離れるほど直径が徐々に大きくなる円錐台形状の外形を呈する。第1受圧部64は、円錐台部62をバルブシート58から離間させる向きの圧力を、流入ポート55を通じてバルブ室54の先端側に流入した作動油から受ける部分である。
【0042】
第2受圧部65は、円筒部63の内側の奥壁に設けられている。第2受圧部65は、円錐台部62をバルブシート58に当接させる向きの圧力を、パイロットポート57を通じてバルブ室54の基端側に流入した作動油から受ける部分である。そして、第2受圧部65の受圧面積は、第1受圧部64の受圧面積より大きく設定されている。
【0043】
コイルバネ53は、円筒部63の内側に配置されている。より詳細には、コイルバネ53は、基端壁60と第2受圧部65との間に配置されている。そして、コイルバネ53は、円錐台部62をバルブシート58に当接させる向きに、ポペット52を付勢する。また、コイルバネ53の付勢力は、第1受圧部64が作動油から受ける力(=圧力×受圧面積)より十分に小さく設定される。
【0044】
流入ポート55及び流出ポート56は、バルブ室54のポペット52より先端側の空間に接続されている。また、流入ポート55及び流出ポート56は、互いに直交する方向に延設されている。一方、パイロットポート57は、バルブ室54のポペット52より基端側の空間に接続されている。また、流出ポート56及びパイロットポート57は、バルブ室54の軸方向において、互いに対向して配置されている。
【0045】
また、円柱部61及び第1受圧部64の側面は、流入ポート55に対面している。円錐台部62の側面は、流入ポート55、流出ポート56、及びバルブシート58に対面している。円筒部63の外周面は、バルブ室54の内面に面接触して、バルブ室54の先端側及び基端側の間の作動油の流通を阻止する。第2受圧部65は、パイロットポート57に対面している。
【0046】
さらに、ポペット52の移動方向に対する円錐台部62の側面の傾斜角度θは、45°≦θ<90°、より好ましくは75°≦θ<90°に設定される。また、流出ポート56の直径A1と、円錐台部62の先端の直径A2とは、0.7≦A2/A1≦0.95の関係を有する。さらに、流出ポート56の直径A1と、円柱部61の直径A3とは、1.05≦A3/A1≦1.15の関係を有する。
【0047】
そして、バルブ室54の先端側の空間には、アキュームレータ44から排出された作動油が流入ポート55を通じて常に供給されている。また、バルブ室54の基端側の空間には、パイロットバルブ46が供給位置Aのときに、アキュームレータ44から排出された作動油がパイロットポート57を通じて供給される。このとき、図4に示すように、円錐台部62の先端側の一部が流出ポート56に進入し、円錐台部62の側面が周方向に連続してバルブシート58に線接触する。この状態がチェックバルブ45の閉塞位置である。
【0048】
一方、バルブ室54の基端側の空間に貯留された作動油は、パイロットバルブ46が排出位置Bのときに、パイロットポート57を通じて作動油タンク41に排出される。このとき、図3に示すように、円錐台部62がバルブシート58から離間して、流入ポート55及び流出ポート56がバルブ室54を通じて連通する。この状態がチェックバルブ45の開放位置である。
【0049】
ここで、流入ポート55からバルブ室54に流入し、円柱部61及び円錐台部62の側面に沿って流出ポート56から流出する作動油の流れを「狭まり流れ」と表記する。一方、流出ポート56からバルブ室54に流入し、円錐台部62及び円柱部61の側面に沿って流入ポート55から流出する作動油の流れを「拡がり流れ」と表記する。図3及び図4に示すチェックバルブ45は、その構造上、狭まり流れ及び拡がり流れの両方を許容する。但し、図2に示す油圧回路40において、チェックバルブ45は、狭まり流れのみで利用される。
【0050】
上記構成のダイカストマシン10は、以下の工程を含む射出成形処理によって、成形品を成形する。なお、射出成形処理の開始時点において、金型21は型締され、射出スリーブ31には溶湯金属が貯留され、アキュームレータ44には所定圧力の作動油が蓄圧されているものとする。また、チェックバルブ45は閉塞位置であり、パイロットバルブ46は供給位置Aであり、開閉バルブ47は閉塞位置Cであり、給排制御バルブ48は排出位置Eであるものとする。
【0051】
まず、制御装置は、パイロットバルブ46を供給位置Aから排出位置Bに切り替える。これにより、チェックバルブ45が閉塞位置から供給位置に切り替えられて、アキュームレータ44から排出された作動油がヘッド側供給流路L1を通じてヘッド室37に供給され、ロッド室38の作動油がロッド側戻り流路L6を通じて作動油タンク41に排出される。その結果、射出スリーブ31内をプランジャ32が高速で前進し、射出スリーブ31内の溶湯金属がキャビティ内に射出される(射出前進工程)。
【0052】
次に、制御装置は、位置センサ(図示省略)によってプランジャ32が前進位置に到達したことを検知したタイミングで、パイロットバルブ46を排出位置Bから供給位置Aに切り替える。これにより、チェックバルブ45が供給位置から閉塞位置に切り替えられて、アキュームレータ44からヘッド室37への作動油の供給が阻止される。その結果、前進しているプランジャ32が制動される(制動工程)。
【0053】
次に、制御装置は、開閉バルブ47を閉塞位置Cから開放位置Dに切り替え、給排制御バルブ48を排出位置Eから供給位置Fに切り替える。これにより、油圧ポンプ12から排出された作動油がロッド側供給流路L5を通じてロッド室38に供給され、ヘッド室37の作動油がヘッド側戻り流路L4を通じて作動油タンク41に排出される。その結果、プランジャ32が所定の後退速度で後退する(射出後退工程)。
【0054】
また、制御装置は、射出後退工程と並行して、金型21を型開し、可動側金型24に保持された成形品を取出し、射出スリーブ31に溶湯金属を貯留する。さらに、制御装置は、アキュームレータ44内の作動油の圧力が下限値を下回った場合に、油圧ポンプ43からアキュームレータ44に作動油を供給する。そして、制御装置は、前述した処理を繰り返すことによって、複数の成形品を連続して成形することができる。なお、油圧回路40の具体的な構成は、前述した射出成形処理を実現することができれば、図2の例に限定されない。
【0055】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0056】
上記構成のチェックバルブ45において、流入ポート55から流出ポート56に向かって流れる作動油は、円錐台部62の側面に沿って流れる際に抵抗を受ける。その結果、円錐台部62及びバルブシート58の間の作動油の圧力が高くなって、チェックバルブ45を通過する作動油の流量が低下する。この傾向は、射出前進工程の開始直後(換言すれば、円錐台部62の側面がバルブシート58から離間した直後)において、特に顕著となる。
【0057】
そして、上記構成のチェックバルブ45において、円錐台部62の傾斜角度θが小さいほど拡がり流れがスムーズであり、円錐台部62の傾斜角度θが大きいほど狭まり流れがスムーズである。すなわち、円錐台部62の側面の向きは、バルブ室54への作動油の流入方向に近いほど、作動油の流れがスムーズになる。そして、拡がり流れ及び狭まり流れの流通性能は、傾斜角度θ=45°で逆転する。
【0058】
そこで上記の実施形態のように、チェックバルブ45を狭まり流れのみで利用し、且つ傾斜角度θ≧45°に設定することによって、流出ポート56から流出する作動油の流量が増大する。その結果、射出前進工程の開始直後におけるプランジャ32の加速度を増大させることができる。一方、傾斜角度θ=90°に設定すると、チェックバルブ45が閉塞位置のときに、バルブ室54内の作動油が流出ポート56に漏れ出す可能性がある。そのため、傾斜角度θ<90°とするのが望ましい。
【0059】
また、傾斜角度θを固定した場合において、円錐台部62の先端の直径A2が小さいほど、円錐台部62の軸方向の長さが長くなる。これにより、チェックバルブ45が閉塞位置のときに、流出ポート56に対する円錐台部62の進入量が多くなる。その結果、射出前進工程の開始直後において、円錐台部62の側面に沿って流れる作動油が円錐台部62から抵抗を受ける区間(すなわち、ボトルネック)が長くなる。
【0060】
そこで上記の実施形態のように、A2/A1≧0.7に設定することによって、前述したボトルネックを短くできる。その結果、射出前進工程の開始直後におけるプランジャ32の加速度を増大させることができる。一方、円錐台部62の先端の直径A2が大き過ぎると、閉塞位置における円錐台部62とバルブシート58との間のシール性が低下する。そのため、A2/A1≦0.95とするのが望ましい。
【0061】
さらに、円柱部61の直径A3が大き過ぎると、バルブ室54の内側面と円柱部61の側面との隙間が小さくなる。その結果、円柱部61及びバルブ室54の間を作動油が通過する際の抵抗が大きくなると共に、第1受圧部64の受圧面積が小さくなる。
【0062】
そこで上記の実施形態のように、A3/A1≦1.15に設定することによって、バルブ室54の内側面と円柱部61の側面との隙間を確保することができる。これにより、円柱部61及びバルブ室54の間を作動油が通過する際の抵抗を小さくできると共に、第1受圧部64の受圧面積を大きくできる。その結果、射出前進工程の開始直後におけるプランジャ32の加速度を増大させることができる。一方、円柱部61の直径A3が小さ過ぎると、ポペット52がバルブシート58に押し付けられたときに、円柱部61までもが流出ポート56に嵌まり込んで、動作不良を起こす可能性がある。そのため、A3/A1≧1.05とするのが望ましい。
【0063】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…ダイカストマシン、20…型締装置、21…金型、22…固定側金型、23…固定ダイプレート、24…可動側金型、25…可動ダイプレート、26…型開閉シリンダ、27…トグルリンク機構、28…タイバー、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…プランジャ、33…油圧シリンダ、34…シリンダチューブ、35…ピストン、36…ロッド、37…ヘッド室、38…ロッド室、40…油圧回路、41…作動油タンク、42…モータ、43…油圧ポンプ、44…アキュームレータ、45…チェックバルブ、46…パイロットバルブ、47…開閉バルブ、48…給排制御バルブ、51…バルブ本体、52…ポペット、53…コイルバネ、54…バルブ室、55…流入ポート、56…流出ポート、57…パイロットポート、58…バルブシート、59…先端壁、60…基端壁、61…円柱部、62…円錐台部、63…円筒部、64…第1受圧部、65…第2受圧部
図1
図2
図3
図4