(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128912
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】重合性組成物及びそれを重合硬化してなる樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 30/04 20060101AFI20220829BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220829BHJP
G21F 1/10 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
C08F30/04
G02B1/04
G21F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027384
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】松村 吉将
(72)【発明者】
【氏名】落合 文吾
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 美幸
(72)【発明者】
【氏名】金 英輝
(72)【発明者】
【氏名】野島 順
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB01P
4J100AB15P
4J100AB15Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA62
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA18
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】熱あるいは光硬化が可能であって、放射線遮蔽能力を有する透明な樹脂や光学材料を提供し得る重合性組成物を提供すること。
【解決手段】上記課題は、下記(1)式で表される化合物(a)を含む重合性組成物によって解決することができる。
【化1】
(式中、Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、又はマレイミド基を表し、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表し、nは0又は1の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)式で表される化合物(a)を含む、重合性組成物。
【化1】
(式中、
Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、又はマレイミド基を表し、
Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、
nは0又は1の整数を表し、
pは0から2の整数を表し、
qは1から3の整数を表し、
p+q=3である。)
【請求項2】
さらに、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物を含有する、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
さらに、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有する、請求項1又は2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記化合物(a)が下記(1A)式で表される化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の重合性組成物。
【化2】
(式中、
pは0から2の整数を表し、
qは1から3の整数を表し、
p+q=3である。)
【請求項5】
前記(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物が、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、及び4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンチオールからなる群より選択される1種以上である、請求項2~4のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物が、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びジメチル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、請求項3~5のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の重合性組成物を重合硬化してなる樹脂。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂を含む光学材料。
【請求項9】
請求項7に記載の樹脂を含む色調変化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を遮蔽する必要がある透明部材として、フィルター、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー等の光学材料、中でもフィルター、プラスチックレンズに好適に使用される重合性組成物及びそれを重合硬化してなる樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を遮蔽する部材として、一般的にはアルファ線に対しては紙などの薄い材料、ベータ線に対してはアルミニウム等の薄い金属板を用いることによって容易に遮蔽することができるが、ガンマ線、X線に対しては鉛や鉄などの厚い板を遮蔽材として用いることでこれらを弱めることができる。一方で、それらの材料は透明性がなく遮蔽材の反対側を可視化することができない。
【0003】
そのような中で、CT (コンピューター断層撮影) やPET(陽電子放出断層撮影) 装置などによる診療を行う高度医療の現場や、原子力発電所での現場では、放射線を十分に遮蔽しつつ、放射線を使用している現場での状況を確認するため、目視あるいはカメラを通して映像を伝送する必要があるため、放射線を十分に遮蔽しつつ、可視光に対して透明な材料が必要となる。
【0004】
そのような要求がある中で、可視光に対して透明かつ放射線を遮蔽できる材料としては、鉛含有ガラスが一般的に知られている(特許文献1及び2)。しかしながら、鉛含有ガラスはプラスチックと異なり加工性や成形性に劣るため複雑な形状には適していないことや、比重が高く軽量性を求められる用途に対しては不利である。
【0005】
一方、放射線遮蔽プラスチックとしては、硫酸バリウムや酸化セリウム、酸化バリウムなどの重金属を充填したゴムシートが一般的に知られている(特許文献3)。しかしながら、これらのゴムシートは可視光に対して不透明であるため、放射線を使用している現場を目視あるいはカメラを通して確認することができない。
【0006】
これらのことから、加工性に優れ軽量であるプラスチック材料で放射線遮蔽能力を有している材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-008146
【特許文献2】特開2014-062863
【特許文献3】特開2015-224967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術における問題の少なくとも一つを解決することを課題とする。更に、本発明は、熱あるいは光硬化が可能であって、放射線遮蔽能力を有する透明な樹脂や光学材料を提供し得る重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ビスマスを含有する特定構造の化合物を用いることによって上記課題を解決できることを見出した。
具体的には、本発明は以下の態様を含む。
【0010】
[1]下記(1)式で表される化合物(a)を含む、重合性組成物。
【化1】
(式中、
Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、又はマレイミド基を表し、
Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、
nは0又は1の整数を表し、
pは0から2の整数を表し、
qは1から3の整数を表し、
p+q=3である。)
[2]さらに、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物を含有する、[1]に記載の重合性組成物。
[3]さらに、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有する、[1]又は[2]に記載の重合性組成物。
[4]前記化合物(a)が下記(1A)式で表される化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の重合性組成物。
【化2】
(式中、
pは0から2の整数を表し、
qは1から3の整数を表し、
p+q=3である。)
[5]前記(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物が、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンチオールからなる群より選択される1種以上である、[2]~[4]のいずれかに記載の重合性組成物。
[6]前記(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物が、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びジメチル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、[3]~[5]のいずれかに記載の重合性組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれか記載の重合性組成物を重合硬化してなる樹脂。
[8]上記[7]に記載の樹脂を含む光学材料。
[9]上記[7]に記載の樹脂を含む色調変化材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の好ましい態様の重合性組成物を用いることにより、放射線遮蔽能力を有する透明な樹脂や光学材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1及び比較例1で得られた樹脂フィルムのX線透過率を示すグラフである。
【
図2】実施例2及び比較例1で得られた樹脂フィルムのX線透過率を示すグラフである。
【
図3】実施例3及び比較例1で得られた樹脂フィルムのX線透過率を示すグラフである。
【
図4】実施例4及び比較例1で得られた樹脂フィルムのX線透過率を示すグラフである。
【
図5】実施例5~7及び比較例2で得られた樹脂フィルムのX線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態において、下記(1)式で表される化合物(a)を含む、重合性組成物が提供される。なお、本発明の重合性組成物は、下記(1)式で表される化合物(a)のみを含む態様と、下記(1)式で表される化合物(a)とその他の成分とを含む態様の両方を包含するものである。
【化3】
(式中、
Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、又はマレイミド基を表し、
Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表し、
nは0又は1の整数を表し、
pは0から2の整数を表し、
qは1から3の整数を表し、
p+q=3である。)
【0014】
以下、各構成成分について説明する。
上記(1)式で表される化合物(a)(以下、「(a)化合物」とも称する)は、上記の条件を満たすすべての化合物を包含する。これらは単独でも使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。本発明で使用される(a)化合物は、硫黄化合物のような臭気がないという利点がある。
【0015】
上記(1)式において、Rは、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、又はマレイミド基を表すが、好ましくはビニル基、アリル基、アクリル基、又はメタクリル基である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、(a)化合物は、下記(1A)式で示される化合物であり得る。
【化4】
(式中、
pは0から2の整数を表し、
qは1から3の整数を表し、
p+q=3である。)
【0017】
上記(a)化合物は、ハロゲン化合物にMgを反応させてグリニャール試薬としたのち、トリクロロビスムチン、ジクロロフェニルビスムチン、又はジフェニルクロロビスムチンと反応させて得ることが出来る。
【0018】
グリニャール試薬は通常はエーテル溶媒中で調製する。好ましい溶媒はTHFである。反応後は、そのままトリクロロビスムチン、ジクロロフェニルビスムチン、又はジフェニルクロロビスムチンを投入し、簡便にワンポットで(a)化合物を得ることが出来る。
【化5】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、又はマレイミド基を表し、Yは酸素原子もしくは硫黄原子を表し、nは0又は1の整数を表す。)
【0019】
上記(1)式で表される化合物(a)を含む重合性組成物は、さらに、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物、及び/又は(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有してもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、重合性組成物は、(a)化合物と、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物とを含み得る。
【0021】
本発明の一実施形態において、(a)化合物と、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物とからなる重合性組成物が提供される。
【0022】
本発明の一実施形態において、重合性組成物は、(a)化合物と、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物とを含み得る。
【0023】
本発明の一実施形態において、(a)化合物と、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物とからなる重合性組成物が提供される。
【0024】
本発明の一実施形態において、重合性組成物は、(a)化合物と、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物と、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物とを含み得る。
【0025】
本発明の一実施形態において、(a)化合物と、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物と、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物とからなる重合性組成物が提供される。
【0026】
(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物(以下、「(b)化合物」とも称する)は、この条件を満たすすべての化合物を包含する。
【0027】
(b)化合物としては、o-ジメルカプトベンゼン、m-ジメルカプトベンゼン、p-ジメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、メタンジチオール、1,2-ジメルカプトエタン、2,2-ジメルカプトプロパン、1,3-ジメルカプトプロパン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、1,4-ジメルカプトブタン、1,6-ジメルカプトヘキサン、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,5-ジメルカプト-3-オキサペンタン、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メルカプトメチル-1,3-ジメルカプトプロパン、2-メルカプトメチル-1,4-ジメルカプトプロパン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-1,3-ジメルカプトプロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,1,1-トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアペンタン、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1-ジメルカプトシクロヘキサン、1,2-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(メルカプトエチル)-1,4-ジチアン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-メルカプトメチルフェニル)プロパン、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンチオール等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
(b)化合物として好ましい化合物は、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアペンタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンチオールが挙げられる。さらに最も好ましい化合物の具体例としては、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンチオールが挙げられる。
【0029】
(a)化合物と、(b)化合物との割合は任意であるが、好ましい組成の範囲は、(a)化合物中の二重結合の数/(b)化合物中のSH基の数の比が0.5~10.0であり、より好ましくは0.8~5.0であり、最も好ましくは0.9~1.2である。上記の比が0.5未満であるか、又は10.0を超えた場合、十分に重合せず耐熱性が低下する場合がある。
【0030】
(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、及びビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物(以下、「(c)化合物」とも称する)は、この条件を満たすすべての化合物を包含する。
【0031】
(c)化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタアクリレート)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びジメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
(a)化合物と、(c)化合物との割合は任意である。(c)化合物を混合することにより、重合性組成物の粘度をハンドリングしやすい範囲に調整したり、溶液の均一性を向上させたり、硬化後に均質な硬化物を作製することができる。また、(c)化合物を混合することにより、硬化後の樹脂の機械強度、屈折率等の光学特性を調整することができる。
【0033】
(a)化合物と、(b)化合物と、(c)化合物との割合は任意である。好ましい組成の範囲は、[(a)化合物中の二重結合の数+(c)化合物中の二重結合の数]/(b)化合物中のSH基の数の比が0.5~10.0であり、より好ましくは0.8~5.0であり、最も好ましくは0.9~1.2である。上記の比が0.5未満であるか、又は10.0を超えた場合、十分に重合せず耐熱性が低下する場合がある。
【0034】
本発明の別の実施形態において、上記(a)化合物を含む重合性組成物を重合硬化して得られる樹脂が提供される。
【0035】
本発明の(a)化合物を含む重合性組成物は不飽和二重結合を含む重合性基を有するため、重合反応により硬化し、樹脂が得られる。重合反応としては、光による重合硬化や熱による重合硬化応等が挙げられるが、短時間で重合可能である光重合硬化の方が好ましい。熱硬化と光硬化とを組み合わせてもよい。
【0036】
本発明の(a)化合物を含む重合性組成物を重合硬化させる反応は、重合触媒の存在下又は非存在下で実施することができる。本発明の(a)化合物を含む重合性組成物を重合反応させて樹脂を得るに際して、重合反応を促進するため重合触媒の存在下で重合硬化することが好ましい。また、本発明の一実施形態では、本発明の重合性組成物を、重合触媒の存在下で紫外線又は可視光の照射により硬化させることを特徴とする硬化物の製造方法が提供される。こうして得られた樹脂や硬化物は、透明であることが好ましい。
【0037】
光重合反応の場合、本発明の(a)化合物を含む重合性組成物を、光線(活性エネルギー線)の照射により硬化させることにより、硬化物としての樹脂が製造される。光線としては、重合性組成物の硬化が可能であれば特に制限されないが、通常、紫外線、可視光線、放射線、電子線などが挙げられ、好ましくは紫外線又は可視光線であり、より好ましくは重合速度が速いことから紫外線である。光線の照射強度は特に制限されないが、通常10~100000mW/cm2である。照射時間は特に制限されないが、通常1分間~数時間、好ましくは1~60分間である。照射温度は特に制限されず、室温付近で重合可能である。本発明の(a)化合物を含む重合性組成物が室温で固体の場合は、融点以上の温度まで加熱しながら光硬化を行う場合もある。
【0038】
重合触媒としては、特に制限はなく、反応物の種類、重合条件等に合わせて、適宜選択すればよい。光重合の場合、光(好ましくは活性エネルギー線)の照射によりラジカルを発生する化合物(光分解型ラジカル重合開始剤)が好ましく、具体例としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。その中でも市販品として、ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(Irgacure)(登録商標)184)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)2959)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO)等が好ましく使用される。
【0039】
あるいは、光重合反応に用いる重合触媒として、酸化剤と還元剤との共存でラジカル(遊離基)を発生する化合物(レドックス系重合開始剤)を使用することも好ましい。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等から選択される酸化物と、L-アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等から選択される還元性化合物とを組み合わせた系が挙げられる。
【0040】
あるいは、光重合反応に用いる重合触媒として、可視光等の光の照射によりラジカルを発生する光レドックス触媒も好ましく使用される。具体例としては、ルテニウム(II)ポリピリジル錯体(例えば、Ru(bpz)3-(PF6)2触媒等)、イリジウム(III)フェニルピリジル錯体等の遷移金属錯体が挙げられる。
【0041】
熱重合反応の場合、本発明の本発明の(a)化合物を含む重合性組成物を、加熱によって重合(硬化)させることで硬化物としての樹脂が製造される。
【0042】
熱重合反応に用いる重合触媒として、加熱によりラジカルを発生する化合物(熱分解型ラジカル重合開始剤)が好ましい。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;過酸化ベンゾイル、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-2(-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)等のアゾ化合物が挙げられる。
重合触媒一種を単独で又は複数種を混合して使用することができる。
【0043】
重合触媒の添加量は、本発明の(a)化合物を含む重合性組成物の成分、混合比及び重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は重合性組成物の合計100質量%に対して、0.0001質量%~10質量%、好ましくは、0.001質量%~5質量%、より好ましくは、0.01質量%~1質量%、最も好ましくは、0.01質量%~0.5質量%である。添加量が10質量%より多いと急速に重合する場合がある。添加量が0.0001質量%より少ないと十分に硬化せず耐熱性が不良となる場合がある。したがって、本発明の好ましい一実施形態において、樹脂の製造方法は重合触媒を前記重合性組成物の総量に対して0.0001~10質量%添加し、重合硬化させる工程を含む。
【0044】
本発明の(a)化合物を含む重合性組成物の加熱による重合(硬化)は通常、以下のようにして行われる。即ち、硬化時間は通常1~100時間であり、硬化温度は通常-10℃~140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間保持する工程、0.1℃~100℃/hの昇温を行う工程、0.1℃~100℃/hの降温を行う工程によって、あるいはこれらの工程を組み合わせて行う。なお、硬化時間とは昇温過程等を含めた重合硬化時間をいい、所定の重合(硬化)温度で保持する工程に加えて、所定の重合(硬化)温度へと昇温・冷却する工程を含む。
【0045】
重合硬化工程(光重合及び熱重合)は特に限定されないが、金属、セラミック、ガラス、樹脂製等の金型を用いた硬化工程であることが好適である。具体的には、本発明の(a)化合物を含む重合性組成物の各成分及び重合触媒等を混合する。これらは、全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても、各原料を段階的に添加混合しても、数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合してもよい。また、各原料及び副原料はいかなる順序で混合してもよい。混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であればよい。このようにして得られた重合性組成物はモールド等の型に注型し、加熱や紫外線等の光線の照射によって重合硬化反応が進められた後、型から外される。このようにして、本発明の(a)化合物を含む重合性組成物を硬化した樹脂が得られる。重合反応(硬化工程)は、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。
【0046】
硬化終了後、得られた樹脂を50~150℃の温度で10分~5時間程度アニール処理を行うことは、歪を除くために好ましい処理である。さらに得られた樹脂に対して、必要に応じてハードコート、反射防止、等の表面処理を行ってもよい。
【0047】
本発明の樹脂を製造する際、(a)化合物を含む重合性組成物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着性改善剤、離型剤等の添加剤を加え、得られる樹脂の実用性をより向上させることもできる。
【0048】
本発明の(a)化合物を含む重合性組成物は、上述のようにして放射線遮蔽に優れた樹脂を与えることができる。このように、上記重合性組成物を硬化させて得られる樹脂(硬化物)もまた、本発明の一実施形態である。
【0049】
本発明の一実施形態は、本発明の(a)化合物を含む重合性組成物を重合硬化して得られる樹脂を用いて作製される成形体である。成形体は、例えば、CT (コンピューター断層撮影) やPET(陽電子放出断層撮影) 装置などによる診療を行う高度医療の現場や、原子力発電所での現場での用途がある。使用方法としては、放射線遮蔽板や遮蔽フィルターに用いることができ、例えば光学材料(部材)に直接用いることもできる。例えばカメラレンズに用いることでカメラセンサーを放射線による損傷から防ぐこともでき、放射線によるノイズをカットした画像を伝送することもできる。これらの用途としては、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料、色調変化材料等の各種用途に有用である。中でも、光学材料、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、プリズム、フィルター、回折格子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイバックライト、導光板、ディスプレイ保護膜、反射防止フィルム、防曇フィルム等のコーティング剤(コーティング膜)等の表示デバイス用途;光メモリ、電子ペーパー等の記録媒体;紫外線チェッカー等のセンサー材料;窓ガラス、サングラス、自動車用ウィンドウガラス等の調光材料;繊維製品、化粧品素材、フォトクロミック材料、その他プリント材等の色調変化材料等が好適である。上記光学材料としては、特に、光学用接着剤、プリズム、コーティング剤であることが好適である。
【実施例0050】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られたモノマーの評価は以下の方法で行った。
NMR:日本電子株式会社製(ECX-400)を用い測定した。
融点:柳本製作所社製の融点測定器を用い測定した。
【0051】
合成例1
(トリスチリルビスムチンの合成例)
窒素雰囲気下にて、THF(25ml)に塩化ビスマス(III)(BiCl
3: 1.16g(3.00mmol)を分散させた。この分散液を0℃まで冷却し、(4-ビニルフェニル)マグネシウムブロミド(1.0M、 10ml、10mmol)を滴下し、温度を保ったまま一時間攪拌した。その後、還流しながらさらに2時間攪拌した。反応終了後、氷浴中で冷やしながら飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加え、50mlジエチルエーテルで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、アルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)にて目的物を単離した。さらにヘキサンから再結晶することで、下記構造式で表されるトリスチリルビスムチンを淡黄色結晶として収率78%(1.22g、2.34mmol)で得た。なお、本化合物には硫黄化合物のような臭気は無い。
【化6】
【0052】
トリスチリルビスムチンの融点及びNMRの測定結果を以下に示す。
融点:70.8-72.1℃
1H-NMR(400MHz,CDCl3,δ);7.70(d,J=8.2Hz, 6H),7,41(d,J=7.7Hz,6H),6.68(dd,J=17.7,10.9Hz,3H),5.75(d,J=17.7Hz,3H),5.23(d,J=10.9Hz,3H).
13C-NMR(100MHz、CDCl3,δ);154.9,137.6,136.9, 130.2,128.3,114.0.
【0053】
合成例2
(フェニルジスチリルビスムチンの合成例)
窒素雰囲気下にて、塩化ビスマス(III)(BiCl
3: 1.05g(3.33mmol))のジエチルエーテル(10ml)分散液に、トリフェニルビスムチン(Ph
3Bi: 0.734g(1.67mmol))のジエチルエーテル(10ml)分散液を滴下し、室温にて8時間攪拌した。この混合液を0℃まで冷却し、(4-ビニルフェニル)マグネシウムブロミド(1.0M、12ml、12mmol)を滴下し、温度を保ったまま一時間攪拌した。その後、還流しながらさらに2時間攪拌した。反応終了後、氷浴中で冷やしながら飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加え、50mlジエチルエーテルで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、アルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)で精製することで、下記構造式で表されるフェニルジスチリルビスムチンを淡黄色粘性体として収率56%(1.39g、2.82mmol)で得た。なお、本化合物には硫黄化合物のような臭気は無い。
【化7】
【0054】
フェニルジスチリルビスムチンのNMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,δ);7.77-7.63(6H),7.44-7.28(7H),6.68(dd,J=17.7,10.9Hz,3H),5.75(d,J=17.7Hz,3H),5.23(d,J=10.9Hz,3H).
13C-NMR(100MHz、CDCl3,δ);155.3, 138.1,137.8,137.2,137.1,130.8,128.5,128.1,114.3.
【0055】
合成例3
(ジフェニルスチリルビスムチンの合成例)
窒素雰囲気下にて、塩化ビスマス(III)(BiCl
3: 3.15g(10.0mmol))のジエチルエーテル(30ml)分散液に、トリフェニルビスムチン(Ph
3Bi: 8.81g(20.0mmol))のジエチルエーテル(30ml)分散液を滴下し、室温にて8時間攪拌した。この混合液を0℃まで冷却し、(4-ビニルフェニル)マグネシウムブロミド(1.0M、36ml、36mmol)を滴下し、温度を保ったまま一時間攪拌した。その後、還流しながらさらに2時間攪拌した。反応終了後、氷浴中で冷やしながら飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加え、50mlジエチルエーテルで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、アルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)で精製することで、下記構造式で表されるジフェニルスチリルビスムチンを淡黄色粘性体として収率76%(10.6g、22.8mmol)で得た。なお、本化合物には硫黄化合物のような臭気は無い。
【化8】
【0056】
ジフェニルスチリルビスムチンのNMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,δ);7.79-7.68(6H),7.45-7.29(8H),6.67(dd,J=17.7,10.9Hz,1H),5.75(d,J=17.2Hz,1H),5.23(d,J=10.9Hz,1H).
13C-NMR(100MHz、CDCl3,δ);155.2,137.9,137.6,137.0,130.6,128.3,127.8,114.1.
【0057】
実施例1
(a)化合物として合成例3で得たジフェニルスチリルビスムチン(0.200g、0.429mmol)及び過酸化ベンゾイル(1mol%)を混合し、これを二枚のガラス板に挟みこみ、これを窒素雰囲気下にて、100℃で24時間加熱し硬化させた。得られた樹脂フィルムについて、以下の通りX線透過率を測定し、その結果を
図1及び表1に示した。
【0058】
比較例1
スチレン(0.500g、4.80mmol)および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO))(1mol%)を混合し均一液とした。その後、紫外線照射器(シーシーエス株式会社製HLDL-100U6-4UPSC(強度300mW/cm
2、波長365nm))を用いて24時間照射し硬化させた。得られた樹脂フィルムについて、以下の通りX線透過率を測定し、その結果を
図1及び表1に示した。
【0059】
得られた樹脂フィルムのX線遮蔽性について、X線発生源(検出器)として小角X線散乱装置(SAXS: 株式会社リガク製 NANO-Viewer)を用いて評価を行った。X線透過率の評価は、以下の式で計算した。
・X線源:CuKα 1.54オングストローム(8.048keV)
・管電圧(加速電圧):40kV
・X線透過率(Tr)=Σ資料の透過光強度[counts]
/Σダイレクト強度(サンプル無しの透過光強度)[counts]
【0060】
実施例1で得たポリジフェニルスチリルビスムチンのフィルムのX線遮蔽性を、フィルム厚さを変えて測定した。また、比較例1で得たポリスチレンフィルムについても同様に測定し、両者を比較した。その結果、ポリジフェニルスチリルビスムチンのフィルムには、高いX線遮蔽性がみられ、特に、厚さ634μmでX線透過率は0.01未満と高いX線遮蔽性がみられた(
図1及び表1)。
【0061】
【0062】
実施例2
(a)化合物として合成例1で得たトリスチリルビスムチン(0.100g、0.193mmol、50wt%)及び合成例3で得たジフェニルスチリルビスムチン(0.100g、0.214mmol、50wt%)、並びに過酸化ベンゾイル(1mol%)を混合し、これを二枚のガラス板に挟みこみ、これを窒素雰囲気下にて、100℃で24時間加熱し硬化させた。得られた樹脂フィルムのX線透過率を測定し、その結果を
図2及び表2に示した。
【0063】
実施例2で得たトリスチリルビスムチン(50wt%)とジフェニルスチリルビスムチン(50wt%)の共重合体フィルムのX線遮蔽性を、フィルム厚さを変えて測定し、比較例1で得たポリスチレンフィルムと比較した。その結果、本共重合体フィルムには、高いX線遮蔽性がみられ、特に、厚さ684μmでX線透過率は0.01未満と高いX線遮蔽性がみられた(
図2及び表2)。
【0064】
【0065】
実施例3
(a)化合物として合成例1で得たトリスチリルビスムチン(0.060g、0.116mmol、30wt%)及び合成例3で得たジフェニルスチリルビスムチン(0.140g、0.300mmol、70wt%)、及び過酸化ベンゾイル(1mol%)を混合し、これを二枚のガラス板に挟みこみ、これを窒素雰囲気下にて、100℃で24時間加熱し硬化させた。得られた樹脂フィルムのX線透過率を測定し、その結果を
図3及び表3に示した。
【0066】
実施例3で得たトリスチリルビスムチン(30wt%)とジフェニルスチリルビスムチン(70wt%)の共重合体フィルムのX線遮蔽性を、フィルム厚さを変えて測定し、比較例1で得たポリスチレンフィルムと比較した。その結果、本共重合体フィルムには、高いX線遮蔽性がみられ、特に、厚さ548μmでX線透過率は0.01未満と高いX線遮蔽性がみられた(
図3及び表3)。
【0067】
【0068】
実施例4
(a)化合物として合成例2で得たフェニルジスチリルビスムチン(0.200g、0.407mmol)および過酸化ベンゾイル(1mol%)を混合し、これを二枚のガラス板に挟みこみ、これを窒素雰囲気下にて、100℃で24時間加熱し硬化させた。得られた樹脂フィルムのX線透過率を測定し、その結果を
図4および表4に示した。
【0069】
実施例4で得たポリフェニルジスチリルビスムチンのフィルムのX線遮蔽性を、フィルム厚さを変えて測定し、比較例1で得たポリスチレンフィルムと比較した。その結果、ポリフェニルジスチリルビスムチンのフィルムには、高いX線遮蔽性がみられ、特に、厚さ580μmでX線透過率は0.01未満と高いX線遮蔽性がみられた(
図4および表4)。
【0070】
【0071】
実施例5
(a)化合物として合成例2で得たフェニルジスチリルビスムチン(30.0mg、0.0609mmol)、(b)化合物としてペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(0.325g、0.665mmol)、(c)化合物としてネオペンチルグリコールジアクリレート(0.270g,1.27mmol)および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO))(1mol%)を混合し均一液とした。その後、紫外線照射器(シーシーエス株式会社製HLDL-100U6-4UPSC(強度300mW/cm2、波長365nm))を用いて60秒間照射し硬化させた。
【0072】
実施例6
(a)化合物として合成例2で得たフェニルジスチリルビスムチン(60.0mg、0.122mmol)、(b)化合物としてペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(0.306g、0.626mmol)、(c)化合物としてネオペンチルグリコールジアクリレート(0.240g,1.13mmol)および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO))(1mol%)を混合し均一液としたものを実施例5と同様の方法で硬化した。
【0073】
実施例7
(a)化合物として合成例2で得たフェニルジスチリルビスムチン(60.0mg、0.122mmol)、(b)化合物として4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンチオール(0.217g、0.835mmol)、(c)化合物としてネオペンチルグリコールジアクリレート(0.240g,1.13mmol)および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO))(1mol%)を混合し均一液としたものを実施例5と同様の方法で硬化した。
【0074】
比較例2
フェニルジスチリルビスムチンを含まない比較例として、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(0.345g、0.707mmol)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(0.300g,1.41mmol)および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO))(1mol%)を混合し均一液としたものを実施例5と同様の方法で硬化した。
【0075】
実施例5~7で得たフィルムのX線遮蔽性を、フィルム厚さを変えて測定した。また、比較例2で得たフェニルジスチリルビスムチンを含まないフィルムについても同様に測定し、これらを比較した。その結果、フェニルジスチリルビスムチンを含むフィルムのフィルムには、高いX線遮蔽性がみられた(
図5および表5)。
【0076】