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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128916
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】車両用駆動装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20220829BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20220829BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20220829BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20220829BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20220829BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20220829BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20220829BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
F16H45/02 Z
B60K17/04 G
B60K6/54
B60K6/26
B60K6/36
B60K6/387
H02K7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027392
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
(72)【発明者】
【氏名】院田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】小野 航平
(72)【発明者】
【氏名】永里 有
(72)【発明者】
【氏名】吉田 倫生
(72)【発明者】
【氏名】加地 史弥
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
5H607
【Fターム(参考)】
3D039AA02
3D039AA03
3D039AB27
3D039AC03
3D039AC36
3D202AA08
3D202EE02
3D202EE08
3D202EE16
3D202EE22
3D202EE23
3D202FF04
3D202FF13
3D202FF15
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD07
5H607EE14
5H607EE27
5H607FF22
5H607GG01
(57)【要約】
【課題】車両用駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑えつつ、流体継手における継手ハウジングの内部のスペースを大きく確保し易い技術を提供する。
【解決手段】ロータ12を径方向内側R1から支持する第1支持部材71と、当該第1支持部材71を径方向内側R1から支持する第2支持部材72とは、互いに相対回転不能に係合されていると共に、軸方向Lに分離可能に構成され、第1支持部材71は、継手ハウジング6に対して分離不能に固定され、係合装置3は、第1支持部材71に対して径方向内側R1であって、軸方向Lにおける継手ハウジング6と第2支持部材72との間に配置され、第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第1側L1への相対移動を規制する規制部材が設けられ、第1カバー部材91に分離可能な状態で接合された第2カバー部材92と第2支持部材72とは、支持軸受B1を介して互いに相対回転自在な状態で一体化されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
ロータを備えた回転電機と、
前記ロータを支持するロータ支持部材と、
前記入力部材と前記ロータとの間の動力伝達を断接する係合装置と、
継手本体、及び当該継手本体を収容する継手ハウジングを備えた流体継手と、
前記回転電機、前記ロータ支持部材、前記係合装置、及び前記流体継手を収容するケースと、を備え、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記回転電機は、前記流体継手に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記ロータ支持部材は、前記ロータに対して径方向の内側に配置されて前記ロータと一体的に回転するように連結された第1支持部材と、当該第1支持部材に対して前記径方向の内側に配置されて前記第1支持部材を前記径方向の内側から支持する第2支持部材と、を備え、
前記第1支持部材は、前記継手ハウジングに対して分離不能に固定され、前記継手ハウジングから前記軸方向第1側に突出するように配置され、
前記係合装置は、前記第1支持部材に対して前記径方向の内側であって、前記軸方向における前記継手ハウジングと前記第2支持部材との間に配置され、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、互いに相対回転不能に係合されていると共に、前記軸方向に分離可能に構成され、
前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の前記軸方向第1側への相対移動を規制する規制部材が設けられ、
前記ケースは、前記回転電機の前記軸方向第1側を覆う第1カバー部材と、当該第1カバー部材に接合されて前記第2支持部材を回転可能に支持する第2カバー部材と、を備え、
前記第2カバー部材と前記第2支持部材とは、支持軸受を介して互いに相対回転自在な状態で一体化され、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは、互いに分離可能な状態で接合されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1支持部材は、前記軸方向に沿う軸心を有する筒状に形成され、
前記第2支持部材及び前記規制部材は、前記第1支持部材の内周面に係合され、
前記第2カバー部材は、当該第2カバー部材の全体が前記第1支持部材の前記内周面よりも前記径方向の内側に位置するように配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記継手本体は、前記継手ハウジングと一体的に回転するように連結された継手入力側部材と、当該継手入力側部材と対をなす継手出力側部材と、前記継手入力側部材と前記継手出力側部材とを選択的に係合するロックアップ係合装置と、を備え、
前記ロックアップ係合装置は、前記継手ハウジングの内部における前記継手入力側部材及び前記継手出力側部材よりも前記軸方向第1側に配置され、
前記ロータ支持部材は、前記ロックアップ係合装置よりも前記軸方向第1側に配置されている、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の前記軸方向第2側への相対移動を規制する第1規制機構と、
前記第2支持部材と前記支持軸受と前記第2カバー部材との互いの前記軸方向の相対移動を規制する第2規制機構と、を更に備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、ロータを備えた回転電機と、前記ロータを支持するロータ支持部材と、前記入力部材と前記ロータとの間の動力伝達を断接する係合装置と、継手本体及び当該継手本体を収容する継手ハウジングを備えた流体継手と、前記回転電機、前記ロータ支持部材、前記係合装置、及び前記流体継手を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置の製造方法であって、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記ロータ支持部材は、前記継手ハウジングから前記軸方向第1側に突出するように前記継手ハウジングに対して分離不能に固定された第1支持部材と、当該第1支持部材を径方向の内側から支持するように前記第1支持部材に連結される第2支持部材と、を備え、
前記ケースは、互いに接合可能に構成された第1カバー部材及び第2カバー部材を備え、
前記ロータが、前記流体継手に対して前記軸方向第1側に位置すると共に、前記継手ハウジングに固定された前記第1支持部材により前記径方向の内側から支持されるように、前記第1支持部材と前記ロータとを互いに組み付けて継手モジュールを作製する継手モジュール作製工程と、
前記入力部材と前記係合装置とを互いに組み付けて入力モジュールを作製する入力モジュール作製工程と、
前記第2支持部材が前記第2カバー部材により支持軸受を介して回転可能に支持されるように、前記第2支持部材と前記第2カバー部材と前記支持軸受とを互いに組み付けて支持モジュールを作製する支持モジュール作製工程と、
前記係合装置が前記第1支持部材に対して前記径方向の内側に位置するように、前記入力モジュールを前記継手モジュールに対して前記軸方向第1側から組み付ける第1組付工程と、
前記第1組付工程の後に実行される工程であって、前記第2支持部材が前記第1支持部材に対して前記径方向の内側に位置した状態で、前記第1支持部材と前記第2支持部材とが相対回転不能に係合するように、前記支持モジュールを前記継手モジュール及び前記入力モジュールに対して前記軸方向第1側から組み付ける第2組付工程と、
前記第2組付工程の後に実行される工程であって、前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の前記軸方向第1側への相対移動を規制する規制部材を、前記継手モジュール及び前記支持モジュールに対して前記軸方向第1側から組み付ける第3組付工程と、
前記第3組付工程の後に実行される工程であって、前記第1カバー部材が前記回転電機の前記軸方向第1側を覆うと共に、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが互いに接合されるように、前記第1カバー部材を前記支持モジュールに対して前記軸方向第1側から組み付ける第4組付工程と、を備えた、車両用駆動装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、ロータを備えた回転電機と、ロータを支持するロータ支持部材と、入力部材とロータとの間の動力伝達を断接する係合装置と、流体継手と、それらを収容するケースと、を備えた車両用駆動装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置では、流体継手(TC)は、互いに相対的に回転するポンプインペラ(41)及びタービンランナ(51)と、それらを選択的に係合するロックアップ係合装置(C2)と、それらを収容する継手ハウジング(42)と、を備えている。そして、継手ハウジング(42)とロータ(Ro)とが、一体的に回転するように連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-96677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の車両用駆動装置では、継手ハウジング(42)と、ロータ(Ro)を支持するロータ支持部材(22)とが、係合装置(C1)の摩擦部材(33)を径方向の外側から支持する支持部材(32)を介して連結されている。支持部材(32)は、ボルト(92)を用いて、継手ハウジング(42)に対して軸方向に固定されている。このような構成では、ボルト(92)を配置するためのスペースを確保する必要があるため、車両用駆動装置が軸方向に大型化し易い。
【0006】
上記の車両用駆動装置では、ステータ(St)のコイルエンド部(Ce)に対して径方向の内側に隣接するスペースであって、ロータ(Ro)に対して軸方向の一方側(A2)に隣接するスペースにボルト(92)を配置することで、車両用駆動装置の軸方向の大型化を抑制している。しかし、ボルト(92)を配置するためのスペースを確保することに起因して、継手ハウジング(42)の内部のスペースを大きく確保することが難しいという課題が生じていた。このような場合、継手ハウジング(42)の内部におけるロックアップ係合装置(C2)の収容スペースを大きく確保できず、ロックアップ係合装置(C2)の伝達トルク容量を大きくすることが難しかった。
【0007】
そこで、車両用駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑えつつ、流体継手における継手ハウジングの内部のスペースを大きく確保し易い技術の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
ロータを備えた回転電機と、
前記ロータを支持するロータ支持部材と、
前記入力部材と前記ロータとの間の動力伝達を断接する係合装置と、
継手本体、及び当該継手本体を収容する継手ハウジングを備えた流体継手と、
前記回転電機、前記ロータ支持部材、前記係合装置、及び前記流体継手を収容するケースと、を備え、
前記ロータの回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記回転電機は、前記流体継手に対して前記軸方向第1側に配置され、
前記ロータ支持部材は、前記ロータに対して径方向の内側に配置されて前記ロータと一体的に回転するように連結された第1支持部材と、当該第1支持部材に対して前記径方向の内側に配置されて前記第1支持部材を前記径方向の内側から支持する第2支持部材と、を備え、
前記第1支持部材は、前記継手ハウジングに対して分離不能に固定され、前記継手ハウジングから前記軸方向第1側に突出するように配置され、
前記係合装置は、前記第1支持部材に対して前記径方向の内側であって、前記軸方向における前記継手ハウジングと前記第2支持部材との間に配置され、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは、互いに相対回転不能に係合されていると共に、前記軸方向に分離可能に構成され、
前記第1支持部材に対する前記第2支持部材の前記軸方向第1側への相対移動を規制する規制部材が設けられ、
前記ケースは、前記回転電機の前記軸方向第1側を覆う第1カバー部材と、当該第1カバー部材に接合されて前記第2支持部材を回転可能に支持する第2カバー部材と、を備え、
前記第2カバー部材と前記第2支持部材とは、支持軸受を介して互いに相対回転自在な状態で一体化され、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは、互いに分離可能な状態で接合されている点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、ロータ支持部材の第1支持部材が、継手ハウジングに対して分離不能に固定されている。そのため、ロータ支持部材と継手ハウジングとを連結するためにボルト等の締結部材を設ける必要がない。したがって、車両用駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑えつつ、継手ハウジングの内部のスペースを大きく確保し易い。例えば、継手ハウジングの内部における軸方向第1側の部分にロックアップ係合装置が配置される場合には、車両用駆動装置の軸方向の寸法を小さく抑えつつ、当該ロックアップ係合装置の配置スペースを大きく確保し易い。
ところで、このように、第1支持部材が継手ハウジングに対して分離不能に固定された構成とした場合、第1支持部材を径方向の内側から支持する第2支持部材と継手ハウジングとの軸方向の間に係合装置を配置することが困難になる。しかし、本特徴構成によれば、第1支持部材と第2支持部材とが軸方向に分離可能となっているため、第2支持部材と継手ハウジングとの軸方向の間に係合装置を配置することができる。
また、このように、第1支持部材と第2支持部材を軸方向に分離可能な構成とした場合、第1支持部材に対する第2支持部材の軸方向第1側への相対移動を規制する規制部材を設ける必要がある。回転電機の軸方向第1側を覆う第1カバー部材と、第2支持部材を回転可能に支持する第2カバー部材とが一体的に形成されている場合、このような規制部材を組み付けることが難しい。しかし、本特徴構成によれば、第1カバー部材と第2カバー部材とが互いに分離可能な構成となっている。更に、第2カバー部材と第2支持部材とが、支持軸受を介して互いに相対回転自在な状態で一体化されている。そのため、車両用駆動装置の製造工程において、第2カバー部材と第2支持部材と支持軸受とを一体化したモジュールを、第1支持部材と第2支持部材とが相対回転不能に係合するように、第1支持部材を含むモジュールに組み付けた後、それらのモジュールに対して規制部材を組み付けてから、第1カバー部材を第2カバー部材に接合させることができる。したがって、規制部材の組み付けも容易に行える構成となっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図
図2】実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図
図3】実施形態に係る車両用駆動装置の部分拡大断面図
図4】実施形態に係る車両用駆動装置の製造方法を示すフローチャート
図5】実施形態に係る継手モジュール組付工程を示す図
図6】実施形態に係る第1組付工程を示す図
図7】実施形態に係る第2組付工程及び第3組付工程を示す図
図8】実施形態に係るセンサロータ組付工程を示す図
図9】実施形態に係る第4組付工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載されるように構成されている。
【0012】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、車輪Wの駆動力源として内燃機関EG及び回転電機1の一方又は双方を用いる車両(ハイブリッド車両)を駆動するための装置である。つまり、車両用駆動装置100は、所謂、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。
【0013】
以下の説明では、特に明記している場合を除き、回転電機1の回転軸心を基準として、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向」を定義している。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、軸方向Lにおいて、回転電機1に対して内燃機関EGが配置される側を、軸方向第1側L1とし、その反対側を軸方向第2側L2としている。また、径方向Rにおいて、回転電機1の回転軸心側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。なお、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。
【0014】
回転電機1は、車輪Wの駆動力源として機能する。回転電機1は、ステータ11と、ロータ12と、を備えている。回転電機1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。そのため、回転電機1は、蓄電装置(バッテリやキャパシタ等)と電気的に接続されている。回転電機1は、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関EGのトルクや車両の慣性力により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。
【0015】
内燃機関EGは、回転電機1と同様に、車輪Wの駆動力源として機能する。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0016】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、上記の回転電機1に加えて、入力部材2と、係合装置3と、流体継手4と、ケース9と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、変速機TMを更に備えている。
【0017】
入力部材2は、内燃機関EGに駆動連結されている。なお、入力部材2は、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ装置(図示を省略)を介して、内燃機関EGの出力軸(クランクシャフト等)に駆動連結されていると好適である。
【0018】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0019】
係合装置3は、入力部材2とロータ12との間の動力伝達経路に配置されている。係合装置3は、入力部材2とロータ12との間の動力伝達を断接する装置である。
【0020】
変速機TMは、回転電機1の側から伝達される回転を変速する変速する装置である。本実施形態では、変速機TMは、当該変速機TMの入力要素としての変速入力軸Taの回転を変速して、出力軸Oに伝達する。出力軸Oは、差動歯車装置DFを介して一対の車輪Wに駆動連結されている。そのため、出力軸Oに伝達された回転は、差動歯車装置DFによって一対の車輪Wに分配される。なお、変速機TMとしては、例えば、複数の変速段を切り替え可能に構成された有段自動変速機や、変速比を無段階で変更可能に構成された無段自動変速機等の公知の各種自動変速機を用いることができる。
【0021】
流体継手4は、回転電機1と変速機TMとの間の動力伝達経路に配置されている。本実施形態では、流体継手4は、継手本体5、及び当該継手本体5を収容する継手ハウジング6を備えている。
【0022】
本実施形態では、継手本体5は、継手ハウジング6と一体的に回転するように連結された継手入力側部材51と、当該継手入力側部材51と対をなす継手出力側部材52と、継手入力側部材51と継手出力側部材52とを選択的に係合するロックアップ係合装置53と、を備えている。
【0023】
本実施形態では、流体継手4は、ポンプインペラとしての継手入力側部材51と、タービンランナとしての継手出力側部材52とに加えて、これらの間に配置されたステータとしての整流部材57を備えたトルクコンバータである。そして、流体継手4は、互いに軸方向Lに対向するように配置された継手入力側部材51と継手出力側部材52との間で、油等の流体を介して動力の伝達を行う。図示の例では、継手入力側部材51が、継手出力側部材52に対して軸方向第2側L2で対向するように配置されている。
【0024】
継手入力側部材51は、継手ハウジング6と一体的に回転するように連結されている。継手出力側部材52は、変速機TMの変速入力軸Taと一体的に回転するように連結されている。
【0025】
ロックアップ係合装置53は、継手入力側部材51と継手出力側部材52とを選択的に直結係合状態とするように構成されている。つまり、ロックアップ係合装置53は、継手ハウジング6と変速機TMの変速入力軸Taとを、直結係合状態、及び継手入力側部材51と継手出力側部材52との間で流体を介して動力を伝達する状態のいずれかに切り替え可能に構成されている。なお、「直結係合状態」とは、2つの回転要素(ここでは、継手入力側部材51及び継手出力側部材52)の間に回転速度差が無い係合状態である。
【0026】
本実施形態では、継手ハウジング6は、回転電機1のロータ12と一体的に回転するように連結されている。
【0027】
図2に示すように、ケース9は、回転電機1、係合装置3、及び流体継手4を収容している。本実施形態では、ケース9は、入力部材2の軸方向第1側L1の端部がケース9の外部に露出するように、入力部材2を収容している。また、本実施形態では、ケース9は、変速機TMも収容している。
【0028】
回転電機1は、流体継手4に対して軸方向第1側L1に配置されている。回転電機1のステータ11は、非回転部材(ここでは、ケース9)に固定されたステータコア111を有している。回転電機1のロータ12は、ステータコア111に対して相対的に回転自在に支持されたロータコア121を有している。
【0029】
本実施形態では、回転電機1は、インナロータ型の回転電機である。そのため、ステータコア111よりも径方向内側R1にロータコア121が配置されている。
【0030】
また、本実施形態では、回転電機1は、回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコア111には、当該ステータコア111から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部112が形成されるようにステータコイルが巻装されている。また、ロータコア121には、永久磁石122が設けられている。
【0031】
また、本実施形態では、軸方向第2側L2のコイルエンド部112には、接続部材14が取り付けられている。接続部材14は、回転電機1と、当該回転電機1を制御するためのインバータ装置(図示を省略)とを電気的に接続する部材である。
【0032】
車両用駆動装置100は、回転電機1のロータ12を支持するロータ支持部材7を備えている。ロータ支持部材7は、ケース9に収容されている。ロータ支持部材7は、第1支持部材71と、第2支持部材72と、を備えている。
【0033】
第1支持部材71は、ロータ12に対して径方向内側R1に配置されている。そして、第1支持部材71は、ロータ12と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1支持部材71は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、第1支持部材71は、径方向内側R1からロータ12を支持している。本例では、第1支持部材71の外周面とロータ12の内周面とが接触した状態で、ロータ12が一対の保持体13によって軸方向Lの両側から支持されている。
【0034】
第1支持部材71は、継手ハウジング6から軸方向第1側L1に突出するように配置されている。そして、第1支持部材71は、継手ハウジング6に対して分離不能に固定されている。ここで、「分離不能」とは、複数の要素が溶接により一体的に結合された状態、複数の要素が同一の素材で一体的に成形された状態等、複数の要素が互いに破壊せずに分離することが困難な状態を指し、ボルト締結、スプライン嵌合、圧入等のように組み付けて一体化された状態を除く。本例では、第1支持部材71の軸方向第2側L2の端部が、溶接によって継手ハウジング6に固定されている。
【0035】
第2支持部材72は、第1支持部材71に対して径方向内側R1に配置されている。そして、第2支持部材72は、第1支持部材71を径方向内側R1から支持している。本実施形態では、第2支持部材72は、第1支持部材71から径方向内側R1に向けて延在するように形成されている。
【0036】
第1支持部材71と第2支持部材72とは、互いに相対回転不能に係合されている。そして、第1支持部材71と第2支持部材72とは、軸方向Lに分離可能に構成されている。つまり、第1支持部材71と第2支持部材72とは、互いに軸方向Lに相対移動させることにより分離可能となっている。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では、第2支持部材72は、第1支持部材71の内周面71aに係合されている。本例では、第1支持部材71の内周面71aに、複数の第1スプライン溝71bが形成されている。そして、第2支持部材72の径方向外側R2の端部には、複数の第1スプライン溝71bに係合する複数のスプライン溝が形成されている。複数の第1スプライン溝71bは、第1支持部材71の内周面71aが径方向外側R2に窪むように形成されている。図示は省略するが、複数の第1スプライン溝71bは、第1支持部材71の内周面71aの周方向の全域に亘って等間隔で分散配置されている。図示の例では、複数の第1スプライン溝71bは、第1支持部材71の内周面71aにおける、軸方向第1側L1の端部から軸方向Lの中央部に亘って連続的に形成されている。そのため、図示の例では、第2支持部材72は、第1支持部材71に対して軸方向第1側L1に相対移動させることにより、第1支持部材71から分離可能となっている。
【0038】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第2側L2への相対移動を規制する第1規制機構Raを更に備えている。本例では、第1支持部材71の内周面71aに、軸方向第1側L1を向く第1規制面71cが形成されている。第1規制面71cは、第2支持部材72における第1支持部材71との係合部分が軸方向第1側L1から当接するように形成されている。ここでは、第1規制面71cは、複数の第1スプライン溝71bの軸方向第2側L2の終端面として形成されている。本例では、第1規制面71cが第1規制機構Raとして機能する。
【0039】
車両用駆動装置100は、第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第1側L1への相対移動を規制する規制部材10を備えている。
【0040】
本実施形態では、規制部材10は、第1支持部材71の内周面71aに係合されている。そして、規制部材10は、第2支持部材72に対して軸方向第1側L1から当接するように配置されている。本例では、規制部材10は、第1支持部材71の内周面71aの周方向に沿う環状に形成されたスナップリングである。第1支持部材71の内周面71aにおける規制部材10の取付箇所には、周方向に沿って延在する係合溝が形成されており、当該係合溝にスナップリングとしての規制部材10が嵌め込まれることで、規制部材10が第1支持部材71の内周面71aに係合される。
【0041】
図2に示すように、ケース9は、互いに接合可能に構成された第1カバー部材91及び第2カバー部材92を備えている。本実施形態では、ケース9は、回転電機1及び流体継手4の径方向外側R2を覆う周壁部93と、流体継手4の軸方向第2側L2を覆う側壁部94と、を更に備えている。
【0042】
第1カバー部材91は、回転電機1の軸方向第1側L1を覆うように配置されている。本実施形態では、第1カバー部材91は、径方向Rに沿って延在するように形成されている。そして、第1カバー部材91の径方向内側R1の端部が軸方向第1側L1から第2カバー部材92に当接した状態で、ボルト等の第1締結部材F1によって第1カバー部材91と第2カバー部材92とが互いに接合されている。このように、第1カバー部材91と第2カバー部材92とは、互いに分離可能な状態で接合されている。また、第1カバー部材91の径方向外側R2の端部が軸方向第1側L1から周壁部93の軸方向第1側L1を向く接合面に当接した状態で、ボルト等の第2締結部材F2によって第1カバー部材91と周壁部93とが互いに接合されている。
【0043】
また、本実施形態では、第1カバー部材91は、回転電機1のステータ11を支持するステータ支持部911を備えている。本実施形態では、ステータ支持部911は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成されている。そして、ステータ支持部911は、第1カバー部材91の本体部分である径方向Rに沿って延在する部分から、軸方向第2側L2に突出するように形成されている。
【0044】
第2カバー部材92は、ロータ支持部材7の第2支持部材72を回転可能に支持している。ここでは、第2カバー部材92と第2支持部材72とが、第1軸受B1を介して互いに相対回転自在な状態で一体化されている。第1軸受B1は、「支持軸受」に相当する。本実施形態では、第2カバー部材92は、第2軸受B2を介して入力部材2を回転可能に支持している。ここでは、入力部材2が第2カバー部材92を軸方向Lに貫通するように配置され、入力部材2と第2カバー部材92との間に第2軸受B2が配置されている。本例では、第1軸受B1及び第2軸受B2のそれぞれは、玉軸受である。
【0045】
また、本実施形態では、第2カバー部材92は、当該第2カバー部材92の全体が第1支持部材71の内周面71aよりも径方向内側R1に位置するように配置されている。なお、「第1支持部材71の内周面71a」は、当該内周面71aに形成された第1スプライン溝71b等を含む。ここでは、第2カバー部材92は、当該第2カバー部材92の全体が内周面71aの径方向内側R1の端縁よりも径方向内側R1に位置するように配置されている。
【0046】
このように、本実施形態では、第1支持部材71は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成され、
第2支持部材72及び規制部材10は、第1支持部材71の内周面に係合され、
第2カバー部材92は、当該第2カバー部材92の全体が第1支持部材71の内周面71aよりも径方向内側R1に位置するように配置されている。
【0047】
この構成によれば、車両用駆動装置100の製造工程において、第2カバー部材92と第2支持部材72と第1軸受B1とを一体化したモジュールを、第1支持部材71と第2支持部材72とが相対回転不能に係合するように、第1支持部材71を含むモジュールに組み付けた後、規制部材10をそれらのモジュールに対して軸方向Lに相対移動させることで、第2カバー部材92に干渉することなく規制部材10を第1支持部材71の内周面71aに係合させることができる。このように、規制部材10の組み付けを容易に行える構成となっている。
【0048】
図3に示すように、本実施形態では、第2カバー部材92は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された内側支持部921を有している。本実施形態では、内側支持部921は、第2カバー部材92の本体部分である径方向Rに沿って延在する部分の径方向内側R1の端部から軸方向第2側L2に突出するように形成されている。
【0049】
また、本実施形態では、第2支持部材72は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された外側支持部721を有している。内側支持部921は、外側支持部721よりも径方向内側R1に配置されている。本実施形態では、外側支持部721は、第2支持部材72の本体部分である径方向Rに沿って延在する部分の径方向内側R1の端部から軸方向第2側L2に突出するように形成されている。
【0050】
本実施形態では、内側支持部921と外側支持部721との径方向Rの間に、第1軸受B1が配置されている。また、内側支持部921と入力部材2との間に、第2軸受B2が配置されている。
【0051】
車両用駆動装置100は、第2支持部材72と第1軸受B1と第2カバー部材92との互いの軸方向Lの相対移動を規制する第2規制機構Rbを更に備えている。本例では、外側支持部721の内周面に、軸方向第2側L2を向く外側段差面72aが形成されている。そして、内側支持部921の外周面に、軸方向第2側L2を向く内側段差面92aが形成されている。外側段差面72a及び内側段差面92aのそれぞれは、第1軸受B1が軸方向第2側L2から当接するように形成されている。また、外側支持部721の内周面に、第1軸受B1に対して軸方向第2側L2から当接する外側規制部材20が固定されている。そして、内側支持部921の外周面に、第1軸受B1に対して軸方向第2側L2から当接する内側規制部材30が固定されている。本例では、外側規制部材20及び内側規制部材30のそれぞれは、外側支持部721及び内側支持部921の周方向に沿う環状に形成されたスナップリングである。外側支持部721の内周面には、外側規制部材20が係合する係合溝が形成されている。また、内側支持部921の外周面には、内側規制部材30が係合する係合溝が形成されている。
【0052】
こうして、外側支持部721の外側段差面72aにより、外側支持部721に対する第1軸受B1の軸方向第1側L1への相対移動が規制される。そして、外側規制部材20により、外側支持部721に対する第1軸受B1の軸方向第2側L2への相対移動が規制される。また、内側支持部921の内側段差面92aにより、内側支持部921に対する第1軸受B1の軸方向第1側L1への相対移動が規制される。そして、内側規制部材30により、内側支持部921に対する第1軸受B1の軸方向第2側L2への相対移動が規制される。このように、本例では、外側段差面72a、外側規制部材20、内側段差面92a、及び内側規制部材30が、第2規制機構Rbとして機能する。
【0053】
このように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、
第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第2側L2への相対移動を規制する第1規制機構Raと、
第2支持部材72と第1軸受B1と第2カバー部材92との互いの軸方向Lの相対移動を規制する第2規制機構Rbと、を備えている。
【0054】
この構成によれば、第1支持部材71の第2カバー部材92に対する軸方向第1側L1への相対移動が、第2支持部材72を介して第1規制機構Ra及び第2規制機構Rbにより規制される。そのため、継手ハウジング6の内部の油圧等に起因する継手ハウジング6の膨張(所謂、バルーニング)が生じて、継手ハウジング6に固定された第1支持部材71がケース9に対して軸方向第1側L1に移動することを制限できる。したがって、第1支持部材71に連結されたロータ12が、ステータ11に対して軸方向Lにずれることを制限できる。
【0055】
図3に示すように、係合装置3は、第1支持部材71に対して径方向内側R1であって、軸方向Lにおける継手ハウジング6と第2支持部材72との間に配置されている。本実施形態では、係合装置3は、第1摩擦部材31と、当該第1摩擦部材31を軸方向Lに押圧する第1ピストン32と、を備えている。
【0056】
第1摩擦部材31は、第1内側摩擦材311及び第1外側摩擦材312を含む。第1内側摩擦材311及び第1外側摩擦材312は、いずれも円環板状に形成されており、互いに同軸に配置されている。また、第1内側摩擦材311及び第1外側摩擦材312は複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第1内側摩擦材311及び第1外側摩擦材312は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0057】
本実施形態では、第1外側摩擦材312は、第1支持部材71によって径方向外側R2から支持されている。本例では、第1支持部材71の内周面71aに、複数の第2スプライン溝71dが形成されている。そして、第1外側摩擦材312の径方向外側R2の端部には、複数の第2スプライン溝71dに係合する複数のスプライン溝が形成されている。第1外側摩擦材312における複数のスプライン溝が第1支持部材71における複数の第2スプライン溝71dに係合されることで、第1外側摩擦材312が第1支持部材71の内周面71aに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0058】
複数の第2スプライン溝71dは、第1支持部材71の内周面71aが径方向外側R2に窪むように形成されている。図示は省略するが、複数の第2スプライン溝71dは、第1支持部材71の内周面71aの周方向の全域に亘って等間隔で分散配置されている。図示の例では、複数の第2スプライン溝71dは、第1支持部材71の内周面71aにおける、軸方向第1側L1の端部から、第1スプライン溝71bの軸方向第2側L2の端部よりも軸方向第2側L2の部分に亘って連続的に形成されている。そのため、図示の例では、第1外側摩擦材312は、第1支持部材71に対して軸方向第1側L1に相対移動させることにより、第1支持部材71から分離可能となっている。
【0059】
第1内側摩擦材311は、入力部材2と一体的に回転するように連結された第1内側支持部材21によって径方向内側R1から支持されている。第1内側支持部材21は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された第1内側筒状部21aを備えている。
【0060】
本実施形態では、第1内側支持部材21は、径方向Rに沿って延在するように形成されたフランジ部材22を介して、入力部材2と一体的に回転するように連結されている。第1内側支持部材21は、第1内側筒状部21aがフランジ部材22から軸方向第1側L1に突出するように、フランジ部材22に連結されている。本実施形態では、フランジ部材22の径方向内側R1の端部は、入力部材2の軸方向第2側L2の端部に固定されている。一方、フランジ部材22の径方向外側R2の端部は、第1摩擦部材31を軸方向第2側L2から支持するように配置されている。
【0061】
本例では、第1内側筒状部21aの外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第1内側摩擦材311の内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されることにより、第1内側摩擦材311が第1内側筒状部21aにより径方向内側R1から支持される。こうして、第1内側摩擦材311は、第1内側筒状部21aに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0062】
第1ピストン32は、第1摩擦部材31を軸方向Lに押圧するように構成されている。本実施形態では、第1ピストン32は、押圧部321と、摺動部322と、を有している。
【0063】
本実施形態では、押圧部321は、第1摩擦部材31に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。図示の例では、押圧部321は、径方向Rに沿う径方向視で、第1軸受B1と重複するように配置されている。本実施形態において、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
【0064】
本実施形態では、摺動部322は、ばね等の第1付勢部材33によって軸方向第1側L1に付勢されている。また、本実施形態では、摺動部322は、入力部材2から径方向外側R2に延在するように形成された油室形成部材23の径方向外側R2の端部と、入力部材2の外周面における油室形成部材23よりも軸方向第2側L2の部分とを摺動するように構成されている。図示の例では、摺動部322は、押圧部321から第1内側支持部材21の第1内側筒状部21aよりも径方向内側R1まで径方向Rに沿って延在し、そこから油室形成部材23よりも軸方向第2側L2まで軸方向Lに沿って延在し、更に径方向内側R1に延在するように形成されている。そのため、図示の例では、摺動部322は、径方向Rに沿う径方向視で、第1摩擦部材31と重複するように配置されている。
【0065】
油室形成部材23は、入力部材2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、油室形成部材23と摺動部322との軸方向Lの間に作動油室が形成されている。この作動油室に油圧が供給されると、当該油圧に応じて第1付勢部材33の付勢力に抗して第1ピストン32が軸方向第2側L2に摺動し、第1摩擦部材31を軸方向第2側L2に押圧する。
【0066】
図2に示すように、本実施形態では、ロックアップ係合装置53は、継手ハウジング6の内部における継手入力側部材51及び継手出力側部材52よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0067】
本実施形態では、流体継手4の継手ハウジング6は、第1支持部61と、第1側部62と、第1周部63と、第2周部64と、第2側部65と、第3側部66と、第2支持部67と、を備えている。
【0068】
第1支持部61は、継手ハウジング6の回転軸心から径方向外側R2に延在するように形成されている。第1支持部61は、第3軸受B3を介して、入力部材2に対して相対回転可能に支持されている。本実施形態では、第3軸受B3は、第1支持部61と入力部材2との軸方向Lの間に配置されたスラスト軸受である。
【0069】
第1側部62は、ロックアップ係合装置53に対して軸方向第1側L1を覆うように形成されている。本実施形態では、第1側部62は、第1支持部61から径方向外側R2に延在する円環板状に形成されている。
【0070】
第1周部63は、ロックアップ係合装置53に対して径方向外側R2を覆うように形成されている。本実施形態では、第1周部63は、第1側部62の径方向外側R2の端部から軸方向第2側L2に延在する筒状に形成されている。
【0071】
第2周部64は、継手入力側部材51及び継手出力側部材52の径方向外側R2を覆うように形成されている。本実施形態では、第2周部64は、第1周部63よりも径方向外側R2に配置された筒状に形成されている。
【0072】
第2側部65は、第1周部63と第2周部64とを接続するように形成されている。本実施形態では、第2側部65は、第1周部63の軸方向第2側L2の端部と、第2周部64の軸方向第1側L1の端部とを接続する円環板状に形成されている。
【0073】
第3側部66は、継手入力側部材51の軸方向第2側L2を覆うように形成されている。本実施形態では、第3側部66は、第2周部64の軸方向第2側L2の端部から径方向内側R1に向けて、継手入力側部材51の外形に沿って延在するように形成されている。
【0074】
第2支持部67は、第4軸受B4を介して、ケース9の側壁部94に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第2支持部67は、第3側部66の径方向内側R1の端部から軸方向第2側L2に延在する筒状に形成されている。そして、第2支持部67は、第4軸受B4を介して、側壁部94により径方向外側R2から回転可能に支持されている。本例では、第4軸受B4は、針状ころ軸受である。
【0075】
本実施形態では、ロックアップ係合装置53の軸方向第1側L1を覆う第1側部62から軸方向第1側L1に延在するように、ロータ支持部材7の第1支持部材71が第1側部62に固定されている。そのため、本実施形態では、ロータ支持部材7は、ロックアップ係合装置53よりも軸方向第1側L1に配置されていている。
【0076】
このように、本実施形態では、継手本体5は、継手ハウジング6と一体的に回転するように連結された継手入力側部材51と、当該継手入力側部材51と対をなす継手出力側部材52と、継手入力側部材51と継手出力側部材52とを選択的に係合するロックアップ係合装置53と、を備え、
ロックアップ係合装置53は、継手ハウジング6の内部における継手入力側部材51及び継手出力側部材52よりも軸方向第1側L1に配置され、
ロータ支持部材7は、ロックアップ係合装置53よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0077】
この構成によれば、径方向Rに沿う径方向視でロータ支持部材7がロックアップ係合装置53と重複している構成と比べて、ロックアップ係合装置53の径方向Rの配置スペースを大きく確保し易い。したがって、ロックアップ係合装置53の軸方向Lの寸法を小さく抑えつつ、ロックアップ係合装置53の伝達トルク容量を大きく確保し易い。
【0078】
本実施形態では、ロックアップ係合装置53は、軸方向Lに沿う軸方向視で、回転電機1のロータ12と重複するように配置されている。更に、ロックアップ係合装置53は、径方向Rに沿う径方向視で、回転電機1における軸方向第2側L2のコイルエンド部112、及び当該コイルエンド部112に接続された接続部材14の少なくとも一方と重複するように配置されている。図示の例では、ロックアップ係合装置53は、径方向Rに沿う径方向視で、接続部材14と重複するように配置されている。
【0079】
本実施形態では、回転電機1における軸方向第2側L2のコイルエンド部112及び接続部材14は、継手ハウジング6の第1周部63に対して径方向外側R2に隣接するスペースであって、継手ハウジング6の第2側部65に対して軸方向第1側L1に隣接するスペースに配置されている。言い換えると、コイルエンド部112及び接続部材14は、径方向Rに沿う径方向視及び軸方向Lに沿う軸方向視の双方で、継手ハウジング6と重複する位置に配置されている。
【0080】
図3に示すように、本実施形態では、ロックアップ係合装置53は、第2摩擦部材54と、当該第2摩擦部材54を軸方向Lに押圧する第2ピストン55と、を備えている。
【0081】
第2摩擦部材54は、第2内側摩擦材541及び第2外側摩擦材542を含む。第2内側摩擦材541及び第2外側摩擦材542は、いずれも円環板状に形成されており、互いに同軸に配置されている。また、第2内側摩擦材541及び第2外側摩擦材542は複数枚ずつ設けられており、これらが軸方向Lに沿って交互に配置されている。第2内側摩擦材541及び第2外側摩擦材542は、いずれか一方をフリクションプレートとし、他方をセパレートプレートとすることができる。
【0082】
第2内側摩擦材541は、継手ハウジング6と一体的に回転するように連結された第2内側支持部材41によって径方向内側R1から支持されている。第2内側支持部材41は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された第2内側筒状部41aを備えている。本実施形態では、第2内側支持部材41は、第2内側筒状部41aが継手ハウジング6の第1側部62から軸方向第2側L2に突出するように、第1側部62に連結されている。
【0083】
本例では、第2内側筒状部41aの外周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第2内側摩擦材541の内周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されることにより、第2内側摩擦材541が第2内側筒状部41aにより径方向内側R1から支持される。こうして、第2内側摩擦材541は、第2内側筒状部41aに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0084】
第2外側摩擦材542は、継手出力側部材52と一体的に回転するように連結された外側支持部材42によって径方向外側R2から支持されている。外側支持部材42は、軸方向Lに沿う軸心を有する筒状に形成された外側筒状部42aを備えている。
【0085】
本例では、外側筒状部42aの内周部には、軸方向Lに延在する複数のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。一方、第2外側摩擦材542の外周部にも、同様のスプライン溝が周方向に分散して形成されている。そして、それらのスプライン溝同士が係合されることにより、第2外側摩擦材542が外側筒状部42aにより径方向外側R2から支持される。こうして、第2外側摩擦材542は、外側筒状部42aに対して相対回転が規制された状態で、軸方向Lに摺動可能に支持されている。
【0086】
第2ピストン55は、第2摩擦部材54を軸方向Lに押圧するように構成されている。本実施形態では、第2ピストン55は、第2摩擦部材54に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。そして、第2ピストン55は、ばね等の第2付勢部材56によって軸方向第2側L2に付勢されている。本実施形態では、第2ピストン55に対して軸方向第2側L2に隣接して形成された作動油室に油圧が供給されると、当該油圧に応じて第2付勢部材56の付勢力に抗して第2ピストン55が軸方向第1側L1に摺動し、第2摩擦部材54を軸方向第2側L2に押圧する。
【0087】
図3に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、回転電機1のロータ12の回転を検出する回転センサ8を更に備えている。本実施形態では、回転センサ8は、センサステータ81と、当該センサステータ81に対して回転自在に支持されたセンサロータ82と、を備えている。本例では、回転センサ8は、レゾルバとして構成されている。よって、回転センサ8は、センサステータ81に設けられたコイルに交流電流を通した場合における、センサステータ81に対するセンサロータ82の相対角度に応じた交流電圧の位相を検出して、ロータ12の回転位置を検出する。なお、回転センサ8は、レゾルバに限らず、例えば、ホール素子センサ、エンコーダ、磁気式回転センサ等の各種センサにより構成することができる。
【0088】
センサステータ81は、ケース9に固定されている。本実施形態では、センサステータ81は、ケース9の第2カバー部材92から径方向外側R2に突出するように、第2カバー部材92に固定されている。また、センサステータ81は、第2支持部材72に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。
【0089】
センサロータ82は、ロータ12と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、センサロータ82は、第1支持部材71の内周面71aに係合されている。
【0090】
本例では、第1支持部材71の内周面71aに、複数の第3スプライン溝71eが形成されている。そして、センサロータ82の径方向外側R2の端部には、複数の第3スプライン溝71eに係合する複数のスプライン溝が形成されている。複数の第3スプライン溝71eは、第1支持部材71の内周面71aが径方向外側R2に窪むように形成されている。図示は省略するが、複数の第3スプライン溝71eは、第1支持部材71の内周面71aの周方向の全域に亘って等間隔で分散配置されている。図示の例では、複数の第3スプライン溝71eは、第1支持部材71の内周面71aにおける、軸方向第1側L1の端部から、規制部材10の取付位置よりも軸方向第1側L1の部分に亘って連続的に形成されている。そのため、図示の例では、センサロータ82は、第1支持部材71に対して軸方向第1側L1に相対移動させることにより、第1支持部材71から分離可能となっている。
【0091】
本例では、第1支持部材71の内周面71aに、軸方向第1側L1を向く第2規制面71fが形成されている。第2規制面71fは、センサロータ82における第1支持部材71との係合部分が軸方向第1側L1から当接するように形成されている。ここでは、第2規制面71fは、複数の第3スプライン溝71eの軸方向第2側L2の終端面として形成されている。
【0092】
また、本例では、第1支持部材71に対するセンサロータ82の軸方向第1側L1への相対移動を規制するセンサ規制部材40が、第1支持部材71の内周面71aに係合されている。センサ規制部材40は、センサロータ82に対して軸方向第1側L1から当接するように配置されている。
【0093】
以上のように、車両用駆動装置100は、
内燃機関EGに駆動連結される入力部材2と、
ロータ12を備えた回転電機1と、
ロータ12を支持するロータ支持部材7と、
入力部材2とロータ12との間の動力伝達を断接する係合装置3と、
継手本体5、及び当該継手本体5を収容する継手ハウジング6を備えた流体継手4と、
回転電機1、ロータ支持部材7、係合装置3、及び流体継手4を収容するケース9と、を備え、
ロータ12の回転軸心に沿う方向を軸方向Lとし、当該軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側を軸方向第2側L2として、
回転電機1は、流体継手4に対して軸方向第1側L1に配置され、
ロータ支持部材7は、ロータ12に対して径方向内側R1に配置されてロータ12と一体的に回転するように連結された第1支持部材71と、当該第1支持部材71に対して径方向内側R1に配置されて第1支持部材71を径方向内側R1から支持する第2支持部材72と、を備え、
第1支持部材71は、継手ハウジング6に対して分離不能に固定され、継手ハウジング6から軸方向第1側L1に突出するように配置され、
係合装置3は、第1支持部材71に対して径方向内側R1であって、軸方向Lにおける継手ハウジング6と第2支持部材72との間に配置され、
第1支持部材71と第2支持部材72とは、互いに相対回転不能に係合されていると共に、軸方向Lに分離可能に構成され、
第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第1側L1への相対移動を規制する規制部材10が設けられ、
ケース9は、回転電機1の軸方向第1側L1を覆う第1カバー部材91と、当該第1カバー部材91に接合されて第2支持部材72を回転可能に支持する第2カバー部材92と、を備え、
第2カバー部材92と第2支持部材72とは、第1軸受B1を介して互いに相対回転自在な状態で一体化され、
第1カバー部材91と第2カバー部材92とは、互いに分離可能な状態で接合されている。
【0094】
この構成によれば、ロータ支持部材7の第1支持部材71が、継手ハウジング6に対して分離不能に固定されている。そのため、ロータ支持部材7と継手ハウジング6とを連結するためにボルト等の締結部材を設ける必要がない。したがって、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えつつ、継手ハウジング6の内部のスペースを大きく確保し易い。例えば、継手ハウジング6の内部における軸方向第1側L1の部分にロックアップ係合装置53が配置される場合には、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えつつ、当該ロックアップ係合装置53の配置スペースを大きく確保し易い。
ところで、このように、第1支持部材71が継手ハウジング6に対して分離不能に固定された構成とした場合、第1支持部材71を径方向内側R1から支持する第2支持部材72と継手ハウジング6との軸方向Lの間に係合装置3を配置することが困難になる。しかし、本構成によれば、第1支持部材71と第2支持部材72とが軸方向Lに分離可能となっているため、第2支持部材72と継手ハウジング6との軸方向Lの間に係合装置3を配置することができる。
また、このように、第1支持部材71と第2支持部材72を軸方向Lに分離可能な構成とした場合、第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第1側L1への相対移動を規制する規制部材10を設ける必要がある。回転電機1の軸方向第1側L1を覆う第1カバー部材91と、第2支持部材72を回転可能に支持する第2カバー部材92とが一体的に形成されている場合、このような規制部材10を組み付けることが難しい。しかし、本構成によれば、第1カバー部材91と第2カバー部材92とが互いに分離可能な構成となっている。更に、第2カバー部材92と第2支持部材72とが、第1軸受B1を介して互いに相対回転自在な状態で一体化されている。そのため、車両用駆動装置100の製造工程において、第2カバー部材92と第2支持部材72と第1軸受B1とを一体化したモジュールを、第1支持部材71と第2支持部材72とが相対回転不能に係合するように、第1支持部材71を含むモジュールに組み付けた後、それらのモジュールに対して規制部材10を組み付けてから、第1カバー部材91を第2カバー部材92に接合させることができる。したがって、規制部材10の組み付けも容易に行える構成となっている。
【0095】
以下では、実施形態に係る車両用駆動装置100の製造工程S100について図面を参照して説明する。図4に示すように、製造工程S100は、継手モジュール作製工程S1と、入力モジュール作製工程S2と、支持モジュール作製工程S3と、第1組付工程S4と、第2組付工程S5と、第3組付工程S6と、第4組付工程S7と、を備えている。
【0096】
継手モジュール作製工程S1は、継手モジュールM1を作製する工程である。図5に示すように、継手モジュールM1は、流体継手4と、第1支持部材71と、ロータ12とを含むモジュールである。継手モジュール作製工程S1では、ロータ12が、流体継手4に対して軸方向第1側L1に位置すると共に、継手ハウジング6に固定された第1支持部材71により径方向内側R1から支持されるように、第1支持部材71とロータ12とを互いに組み付けて継手モジュールM1を作製する。
【0097】
本実施形態の継手モジュール作製工程S1では、第1支持部材71の外周面とロータ12の内周面とが接触すると共に、一対の保持体13によりロータ12が軸方向Lの両側から支持されるように、ロータ12及び一対の保持体13を第1支持部材71に組み付ける。
【0098】
入力モジュール作製工程S2は、入力モジュールM2を作製する工程である。図6に示すように、入力モジュールM2は、入力部材2と、係合装置3とを含むモジュールである。入力モジュール作製工程S2では、入力部材2と係合装置3とを互いに組み付けて入力モジュールM2を作製する。
【0099】
本実施形態の入力モジュール作製工程S2では、第1内側摩擦材311と第1外側摩擦材312とを複数枚ずつ軸方向Lに交互に配置させた状態で、複数の第1内側摩擦材311を第1内側支持部材21に組み付ける。そして、摺動部322が、第1付勢部材33により軸方向第1側L1に付勢されると共に、油室形成部材23の径方向外側R2の端部と入力部材2の外周面とを摺動するように、入力部材2と油室形成部材23と第1ピストン32と第1付勢部材33とを互いに組み付ける。更に、第3軸受B3を入力部材2に対して軸方向第2側L2から組み付ける。
【0100】
支持モジュール作製工程S3は、支持モジュールM3を作製する工程である。図7に示すように、支持モジュールM3は、第2支持部材72と、第2カバー部材92と、第1軸受B1とを含むモジュールである。支持モジュール作製工程S3では、第2支持部材72が第2カバー部材92により第1軸受B1を介して回転可能に支持されるように、第2支持部材72と第2カバー部材92と第1軸受B1とを互いに組み付けて支持モジュールM3を作製する。
【0101】
本実施形態の支持モジュール作製工程S3では、第2支持部材72の外側支持部721の内周面に形成された外側段差面72a、及び第2カバー部材92の内側支持部921の外周面に形成された内側段差面92aに対して、軸方向第2側L2から第1軸受B1を当接させる。その後、外側規制部材20を第1軸受B1に対して軸方向第2側L2から当接させた状態で外側支持部721の内周面に固定すると共に、内側規制部材30を第1軸受B1に対して軸方向第2側L2から当接させた状態で内側支持部921の外周面に固定する。また、第2軸受B2が第2カバー部材92により径方向外側R2から支持されるように、第2軸受B2を第2カバー部材92に組み付ける。更に、センサステータ81が第2カバー部材92から径方向外側R2に突出するように、センサステータ81を第2カバー部材92に固定する。
【0102】
第1組付工程S4は、入力モジュールM2を継手モジュールM1に組み付ける工程である。第1組付工程S4は、継手モジュール作製工程S1及び入力モジュール作製工程S2の後に実行される。第1組付工程S4は、継手モジュール作製工程S1、入力モジュール作製工程S2、及び支持モジュール作製工程S3の後に実行されても良い。なお、継手モジュール作製工程S1、入力モジュール作製工程S2、及び支持モジュール作製工程S3の実行順序は限定されない。
【0103】
本実施形態では、図5に示すように、第1組付工程S4の前に、継手モジュールM1をケース9に組み付ける継手モジュール組付工程が実行される。継手モジュール組付工程では、継手ハウジング6の第2支持部67が、第4軸受B4を介してケース9の側壁部94により径方向外側R2から回転可能に支持されるように、継手モジュールM1をケース9に組み付ける。
【0104】
図6に示すように、第1組付工程S4では、係合装置3が第1支持部材71に対して径方向内側R1に位置するように、入力モジュールM2を継手モジュールM1に対して軸方向第1側L1から組み付ける。本実施形態の第1組付工程S4では、第1支持部材71の内周面71aに形成された複数の第2スプライン溝71dに、第1外側摩擦材312の径方向外側R2の端部に形成された複数のスプライン溝を係合させる。更に、第3軸受B3を介して入力部材2と継手ハウジング6とが互いに相対回転するように、入力部材2に組み付けた第3軸受B3を継手ハウジング6の第1支持部61に軸方向第1側L1から当接させる。
【0105】
図7に示すように、第2組付工程S5は、支持モジュールM3を継手モジュールM1及び入力モジュールM2に組み付ける工程である。第2組付工程S5は、第1組付工程S4の後に実行される。第2組付工程S5では、第2支持部材72が第1支持部材71に対して径方向内側R1に位置した状態で、第1支持部材71と第2支持部材72とが相対回転不能に係合するように、支持モジュールM3を継手モジュールM1及び入力モジュールM2に対して軸方向第1側L1から組み付ける。本実施形態の第2組付工程S5では、第1支持部材71の内周面71aに形成された複数の第1スプライン溝71bに、第2支持部材72の径方向外側R2の端部に形成された複数のスプライン溝を係合させる。その後、第2支持部材72が第1規制面71cに当接するまで、第2支持部材72を第1支持部材71に対して軸方向第2側L2へ移動させる。また、第2軸受B2が入力部材2を径方向外側R2から回転可能に支持するように、第2軸受B2を入力部材2に組み付ける。
【0106】
図7に示すように、第3組付工程S6は、規制部材10を継手モジュールM1及び支持モジュールM3に組み付ける工程である。第3組付工程S6は、第2組付工程S5の後に実行される。第3組付工程S6では、規制部材10を継手モジュールM1及び支持モジュールM3に対して軸方向第1側L1から組み付ける。本実施形態の第3組付工程S6では、規制部材10が第2カバー部材92及びセンサステータ81よりも径方向外側R2を通るように、規制部材10を支持モジュールM3に対して軸方向第2側L2へ移動させる。そして、規制部材10が第2支持部材72に対して軸方向第1側L1から当接するように、規制部材10を第1支持部材71の内周面71aに係合させる。
【0107】
本実施形態では、図8に示すように、第3組付工程S6の後であって、第4組付工程S7の前に、回転センサ8のセンサロータ82を第1支持部材71に組み付けるセンサロータ組付工程が実行される。センサロータ組付工程では、第1支持部材71の内周面71aに形成された複数の第3スプライン溝71eに、センサロータ82の径方向外側R2の端部に形成された複数のスプライン溝を係合させる。そして、センサロータ82が第2規制面71fに当接するまで、センサロータ82を第1支持部材71に対して軸方向第2側L2へ移動させる。その後、センサ規制部材40がセンサロータ82に対して軸方向第1側L1から当接するように、センサ規制部材40を第1支持部材71の内周面71aに係合させる。
【0108】
図9に示すように、第4組付工程S7は、第1カバー部材91を支持モジュールM3に組み付ける工程である。第4組付工程S7は、第3組付工程S6の後に実行される。第4組付工程S7では、第1カバー部材91が回転電機1の軸方向第1側L1を覆うと共に、第1カバー部材91と第2カバー部材92とが互いに接合されるように、第1カバー部材91を支持モジュールM3に対して軸方向第1側L1から組み付ける。本実施形態の第4組付工程S7では、第1カバー部材91のステータ支持部911により回転電機1のステータ11が支持されるように、ステータ11を第1カバー部材91に組み付ける。そして、第1カバー部材91の径方向内側R1の端部を、第2カバー部材92に軸方向第1側L1から当接させ、それらを第1締結部材F1によって接合させる。また、第1カバー部材91の径方向外側R2の端部を、周壁部93の軸方向第1側L1の端部に軸方向第1側L1から当接させ、それらを第2締結部材F2によって接合させる。
【0109】
以上のように、車両用駆動装置100の製造工程S100は、
内燃機関EGに駆動連結される入力部材2と、ロータ12を備えた回転電機1と、ロータ12を支持するロータ支持部材7と、入力部材2とロータ12との間の動力伝達を断接する係合装置3と、継手本体5及び当該継手本体5を収容する継手ハウジング6を備えた流体継手4と、回転電機1、ロータ支持部材7、係合装置3、及び流体継手4を収容するケース9と、を備えた車両用駆動装置100の製造工程S100であって、
ロータ12の回転軸心に沿う方向を軸方向Lとし、当該軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側を軸方向第2側L2として、
ロータ支持部材7は、継手ハウジング6から軸方向第1側L1に突出するように継手ハウジング6に対して分離不能に固定された第1支持部材71と、当該第1支持部材71を径方向内側R1から支持するように第1支持部材71に連結される第2支持部材72と、を備え、
ケース9は、互いに接合可能に構成された第1カバー部材91及び第2カバー部材92を備え、
ロータ12が、流体継手4に対して軸方向第1側L1に位置すると共に、継手ハウジング6に固定された第1支持部材71により径方向内側R1から支持されるように、第1支持部材71とロータ12とを互いに組み付けて継手モジュールM1を作製する継手モジュール作製工程S1と、
入力部材2と係合装置3とを互いに組み付けて入力モジュールM2を作製する入力モジュール作製工程S2と、
第2支持部材72が第2カバー部材92により第1軸受B1を介して回転可能に支持されるように、第2支持部材72と第2カバー部材92と第1軸受B1とを互いに組み付けて支持モジュールM3を作製する支持モジュール作製工程S3と、
係合装置3が第1支持部材71に対して径方向内側R1に位置するように、入力モジュールM2を継手モジュールM1に対して軸方向第1側L1から組み付ける第1組付工程S4と、
第1組付工程S4の後に実行される工程であって、第2支持部材72が第1支持部材71に対して径方向内側R1に位置した状態で、第1支持部材71と第2支持部材72とが相対回転不能に係合するように、支持モジュールM3を継手モジュールM1及び入力モジュールM2に対して軸方向第1側L1から組み付ける第2組付工程S5と、
第2組付工程S5の後に実行される工程であって、第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第1側L1への相対移動を規制する規制部材10を、継手モジュールM1及び支持モジュールM3に対して軸方向第1側L1から組み付ける第3組付工程S6と、
第3組付工程S6の後に実行される工程であって、第1カバー部材91が回転電機1の軸方向第1側L1を覆うと共に、第1カバー部材91と第2カバー部材92とが互いに接合されるように、第1カバー部材91を支持モジュールM3に対して軸方向第1側L1から組み付ける第4組付工程S7と、を備えている。
【0110】
この構成によれば、係合装置3が第1支持部材71に対して径方向内側R1に位置するように、入力モジュールM2を継手モジュールM1に対して軸方向第1側L1から組み付ける第1組付工程S4を実行した後に、第2支持部材72が第1支持部材71に対して径方向内側R1に位置した状態で、第1支持部材71と第2支持部材72とが相対回転不能に係合するように、支持モジュールM3を継手モジュールM1及び入力モジュールM2に対して軸方向第1側L1から組み付ける第2組付工程S5を実行する。そのため、第1支持部材71が継手ハウジング6に対して分離不能に固定された構成であっても、第1支持部材71を径方向内側R1から支持する第2支持部材72と継手ハウジング6との軸方向Lの間に係合装置3を配置することができる。上述したように、第1支持部材71が継手ハウジング6に対して分離不能に固定された構成では、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えつつ、継手ハウジング6の内部のスペースを大きく確保し易い。したがって、本構成によれば、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法を小さく抑えつつ、継手ハウジング6の内部のスペースを大きく確保し易い車両用駆動装置100を製造することができる。
また、本構成によれば、上記の第2組付工程S5の後であって、第1カバー部材91が回転電機1の軸方向第1側L1を覆うと共に、第1カバー部材91と第2カバー部材92とが互いに接合されるように、第1カバー部材91を支持モジュールM3に対して軸方向第1側L1から組み付ける第4組付工程S7の前に、第1支持部材71に対する第2支持部材72の軸方向第1側L1への相対移動を規制する規制部材10を、継手モジュールM1及び支持モジュールM3に対して軸方向第1側L1から組み付ける第3組付工程S6を実行する。これにより、規制部材10が第1カバー部材91等に干渉することを回避し易くなるため、規制部材10の組み付けを容易に行うことができる。
【0111】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1支持部材71の内周面71aに、第2支持部材72及び規制部材10、並びにセンサロータ82及びセンサ規制部材40が係合された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、センサロータ82が第2支持部材72に対して軸方向第1側L1から当接し、センサロータ82及びセンサ規制部材40が規制部材10として機能する構成としても良い。
【0112】
(2)上記の実施形態では、第2カバー部材92の全体が第1支持部材71の内周面71aよりも径方向内側R1に位置する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、規制部材10をスナップリング等の環状の部材とは異なる部材とした場合等であって、規制部材10を第1支持部材71に取り付けることができるのであれば、第2カバー部材92が第1支持部材71の内周面71aよりも径方向外側R2まで延在している構成としても良い。
【0113】
(3)上記の実施形態では、ロックアップ係合装置53が、継手ハウジング6の内部における継手入力側部材51及び継手出力側部材52よりも軸方向第1側L1に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ロックアップ係合装置53が、継手ハウジング6の内部における継手入力側部材51及び継手出力側部材52よりも軸方向第2側L2に配置されていても良い。
【0114】
(4)上記の実施形態では、第1支持部材71の内周面71aに形成された第1規制面71cが、第1規制機構Raとして機能する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1規制面71cの代わりに、第2支持部材72に対して軸方向第2側L2から当接するスナップリングが、第1支持部材71の内周面71aに固定されていても良い。
【0115】
(5)上記の実施形態では、第2支持部材72の外側支持部721の内周面に形成された外側段差面72aと、当該内周面に固定された外側規制部材20と、第2カバー部材92の内側支持部921の外周面に形成された内側段差面92aと、当該外周面に固定された内側規制部材30とが、第2規制機構Rbとして機能する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、外側段差面72aの代わりに、第1軸受B1に対して軸方向第1側L1から当接するスナップリングが、外側支持部721の内周面に固定されていても良い。また、内側段差面92aの代わりに、第1軸受B1に対して軸方向第1側L1から当接するスナップリングが、内側支持部921の外周面に固定されていても良い。また、これらのスナップリングの少なくとも1つに代えてカシメにより、第1軸受B1の軸方向Lの相対移動を規制する構成としても良い。或いは、外側支持部721の内周面と第1軸受B1の外周面との間、及び、内側支持部921の外周面と第1軸受B1の内周面との間のいずれか一方を圧入とし、スナップリングを省略した構成としても良い。これらの構成も第2規制機構Rbとして機能させることができる。
【0116】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、ロータを備えた回転電機と、ロータを支持するロータ支持部材と、入力部材とロータとの間の動力伝達を断接する係合装置と、流体継手と、それらを収容するケースと、を備えた車両用駆動装置、及びその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
100:車両用駆動装置、1:回転電機、11:ステータ、12:ロータ、2:入力部材、3:係合装置、4:流体継手、5:継手本体、6:継手ハウジング、7:ロータ支持部材、71:第1支持部材、72:第2支持部材、9:ケース、91:第1カバー部材、92:第2カバー部材、10:規制部材、B1:第1軸受(支持軸受)、EG:内燃機関、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、R:径方向、R1:径方向内側、R2:径方向外側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9