(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128970
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】健康増進作用のある組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/26 20060101AFI20220829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220829BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20220829BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220829BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20220829BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220829BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K31/26
A61P43/00 111
A61P15/08
A61P39/06
A61K36/31
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027465
(22)【出願日】2021-02-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年4月21日、大学病院医療情報ネットワークセンターがhttps://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000045860にて、発明者らが株式会社ヘルスケアシステムズを通じて実施したわさびスルフィニル(登録商標)含有サプリメントの健康増進効果に関する探索研究の概要を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 良太
(72)【発明者】
【氏名】狩野 理延
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018MD48
4B018ME14
4B117LC04
4B117LG24
4B117LK06
4C088AB15
4C088BA31
4C088MA17
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4C088MA37
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4C088MA66
4C088NA14
4C088ZA81
4C088ZC02
4C088ZC37
4C088ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA70
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA81
4C206ZC02
4C206ZC37
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】尿中8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中の8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中のスペルミン濃度を増加させる作用、精液中のテストステロン濃度を増加させる作用、精液量を増加させる作用、および精液中の精子数を増加させる作用からなる群から選択される一つ以上の作用を奏する組成物を提供する。
【解決手段】アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、尿中8-OHdG濃度を低下させる組成物。
【請求項2】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、精液中の8-OHdG濃度を低下させる組成物。
【請求項3】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、精液中のスペルミン濃度を増加させる組成物。
【請求項4】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、精液中のテストステロン濃度を増加させる組成物。
【請求項5】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、精液量を増加させる組成物。
【請求項6】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、精液中の精子数を増加させる組成物。
【請求項7】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類が4-メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5-メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6-メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート、7-メチルスルフィニルへプチルイソチオシアネート、8-メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、第2級ブチルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、5-ヘキセニルイソチオシアネート、5-メチルチオペンチルイソチオシアネート、6-メチルチオへキシルイソチオシアネート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8-メチルチオオクチルイソチオシアネート、β-フェネチルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、およびフェネチルイソチオシアネートからなる群から選択される一つであるか、または複数のものの混合物である、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類が6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートである、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
飲食品である、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
医薬品である、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
経口投与に適する請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する、スペルミンやテストステロンなどの有益物質や精子の産生増進作用などを有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アブラナ科植物等は種々のイソチオシアネート類を含有しており、このイソチオシアネート類は食品、または医薬品として優れた生体調節機能を有していることが知られている。例えば、わさびの根茎などに含まれる6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(以下、「6-MSITC」と表記する。)は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌活性、抗癌活性、および抗血小板凝集抑制活性を有するとの報告がある(非特許文献1-3)。
【0003】
また、アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいて、6-MSITC投与により認知障害が改善されたとの報告もある。その作用機序は6-MSITCがNrf2(酸化ストレス応答転写因子)を活性化することによる酸化ストレスの抑制であるとの見解がある(非特許文献4)。
【0004】
さらに、6-MSITCを含有する組成物が慢性疲労症候群の治療剤、老化抑制剤、軟部組織の石灰化抑制剤、肺組織破壊抑制剤、認識機能向上剤、神経成長因子作用増強剤になりうるとする文献もある(特許文献1-4)。
【0005】
しかしながら、アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類のヒトの腸内環境や精液への影響は知られていない。
【0006】
なお、金印株式会社から、6-MSITCを含有する健康食品である「わさびスルフィニル」(登録商標)が市販されている。
【0007】
一方、健康増進効果の評価には、例えば次のようなバイオマーカーが用いられている。
【0008】
活性酸素がDNAに作用すると、DNA中のデオキシグアノシンの8位が酸化されて8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(以下、「8-OHdG」と表記する。)が生成される。酸化されたDNAは直ちに修復されるが、修復の過程で放出される8-OHdGは血中に移行し、さらに尿中に排泄される。このため、尿中8-OHdGは、酸化によるDNA損傷の程度、すなわち酸化ストレスの定量的なバイオマーカーとなる。
【0009】
また、テストステロンはアンドロゲンの一種のステロイドホルモンであって、筋肉の量と強度を保つ作用や造血作用をもつほか、男性の性行動や性機能に重要な役割を果たしている。テストステロン値が低いと性機能障害、認知機能、気分障害、筋肉量の減少、内臓脂肪の増加などをもたらすことがある。
【0010】
また、精液検査では精液スペルミン量、精液量、精子数などが測定される。スペルミンは細胞分裂やタンパク質合成に関わるポリアミンの一種であって、精子を活性酸素によるダメージから守る役割が指摘されている。精液量は少なすぎても多すぎても男性不妊の原因となりうるとされ、精子数が低値を示す乏精子症も男性不妊の原因となりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2018/124258号
【特許文献2】国際公開第2018/066707号
【特許文献3】国際公開第2019/150497号
【特許文献4】特開2006-16362号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Mizuno K. Kume T, Muto C, Takeda-Takatori Y, Izumi Y, Sugimoto H, Akaike A, J. Pharmacol. Sci., 115 (3):320-328, 2011
【非特許文献2】Uto T, Hou D, Morinaga O, Shoyama Y. Advances in Pharmacol.Sci. Article ID 614046, 2012
【非特許文献3】Kuno T, Hirose Y, Yamada Y, Imaida K, Takanatsu K Nori Y, Mori H. Oncol. Let. 1: 273-278, 2010
【非特許文献4】Uruno, A., Matsumaru, D., Ryoke, R., Saito, R., Kadoguchi, S., Saigusa, D., & Yamamoto, M. (2020).Molecular and Cellular Biology
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、尿中8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中の8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中のスペルミン濃度を増加させる作用、精液中のテストステロン濃度を増加させる作用、精液量を増加させる作用、および精液中の精子数を増加させる作用のうち、少なくとも一つの作用を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する組成物によれば上記課題が解決されるという意外な知見に基づいてなされたものである。
【0015】
すなわち、本発明は尿中の8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中の8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中のスペルミン濃度を増加させる作用、精液中のテストステロン濃度を増加させる作用、精液量を増加させる作用、および精液中の精子数を増加させる作用からなる群から選択される一つ以上の作用を奏する、アブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を含有する組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物によれば、尿中8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中の8-OHdG濃度を低下させる作用、精液中のスペルミン濃度を増加させる作用、精液中のテストステロン濃度を増加させる作用、精液量を増加させる作用、および精液中の精子数を増加させる作用のうち、少なくとも一つの効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、本発明組成物中に含まれるアブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類が生理活性を発現する。
【0018】
本発明に用いられるアブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類としては、4-メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5-メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6-メチルスルフィニルへキシルイソチオシアネート(6-MSITC)、7-メチルスルフィニルへプチルイソチオシアネート、8-メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、アリルイソチオシアネート、第2級ブチルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、5-ヘキセニルイソチオシアネート、5-メチルチオペンチルイソチオシアネート、6-メチルチオへキシルイソチオシアネート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8-メチルチオオクチルイソチオシアネート、β-フェネチルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、およびフェネチルイソチオシアネートが例示でき、これらを単独で、あるいは複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明で用いられるアブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類における「アブラナ科植物に含まれている」との表現は、専ら化学種を特定するために用いたものであり、アブラナ科植物から現に抽出したものに限られるわけではない。すなわち、本発明で用いるアブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類は、アブラナ科植物から抽出したものであっても、化学合成によって調製したものであってもよい。また、配糖体も排除されない。例えば本わさびから抽出、精製した6-MSITC(CAS:4430-35-7)でもよく(特開2006-16362参照)、その由来や調製法は問わない。
【0020】
6-MSITCの定量法については、https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc04/bunsekihoho?bunsekihohoFile=F200%255CF200_bunsekihoho.pdf にその例が示されている。
【0021】
本発明の組成物は、例えば飲食品または飼料の形態で哺乳動物に適用されるが、特にヒトに用いることが好ましい。以下の記述はヒトに用いる場合についてのものであるが、そこで挙げる用量等の数値は、体重などに基づいて換算することで、適用対象である他の哺乳動物にも敷衍できる。
【0022】
本発明の組成物の摂取量は用途、摂取する個体の種、症状、年齢、性別等に応じて適宜選択すればよい。例えば体重50kgの一般的な成人の場合、6-MSITCの1日あたりの摂取量としては0.1-1000mgが好ましく、0.1-100mgがより好ましく、0.1-10mgが特に好ましい。
【0023】
本発明の組成物の摂取頻度は特に限定されないが、上述した1日あたりの摂取量の範囲内となる摂取頻度が好ましく、例えば週に1回以上から1日3回以下の範囲での摂取頻度が好ましい。
【0024】
本発明の組成物の摂取期間も特に制限されず、例えば1日のみとしても、1週間としても、1カ月としても、数カ月としても、1年としても、数年またはそれ以上としてもよい。また、一定のインターバル期間を設けた断続的な摂取であってもよい。
【0025】
こうした摂取量や摂取頻度や摂取期間は、本発明の組成物摂取の効果を確認しながら判断してもよい。
【0026】
本発明の組成物における6-MSITCの含量や含有率は限定されるものではなく、用途等に応じて適宜調整すればよい。本発明の組成物における6-MSITCの含量としては、0.1-1000mgが好ましく、0.1-100mgがより好ましく、0.1-10mgが特に好ましい。また、本発明の組成物における6-MSITCの含有率は、0.1-100質量%が好ましく、0.1-10質量%がより好ましく、0.1-3質量%が特に好ましい。
【0027】
本発明の組成物の形態は特に制限されるものではなく、固体、半固体、溶液、懸濁液、分散液等、任意の形態とすることができ、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0028】
飲食品である本発明の組成物は、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品等)であってもよいが、それらに限られない。
【0029】
飲食品である本発明の組成物の形態としては、グラノーラ様シリアル、シリアルバー、
ガム、経管経腸を含む流動食、飲料が挙げられるが、機能発現を妨げない限り、その形態は問わない。特に、健康の保持増進に資する食品である健康食品、例えば丸剤、錠剤、チュアブル錠、ゼリー剤、粉剤、顆粒剤、ゲル剤、またはカプセル剤等の形態を有するサプリメントが好適例として挙げられる。そうした食品中の好ましい6-MSITCの含量や含有率は、前述した好ましい6-MSITCの摂取量や摂取頻度を実現できるものであることが推奨される。
【0030】
本発明で用いる6-MSITCにはオイルに不安定なことがあるので、本発明の組成物中に粉末化剤・安定化剤を添加してもよい。かかる粉末化剤・安定化剤としては、環状オリゴ糖が好ましく、なかでもα―シクロデキストリンが好ましい。
【0031】
飲食品である本発明の組成物には、意図する作用発現を妨げない限り、他の成分を含んでいてもよい。例えばビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、生薬、崩壊剤や賦形剤などの医薬添加剤、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、風味剤、前記粉末化剤、および結着剤からなる群から選ばれる任意の一つまたは二つ以上の組み合わせであり、その比率は問わない。
【0032】
本発明の組成物は、当局の承認を前提に医薬品として用いることもできる。有効成分である6-MSITCの含量は、上述した飲食品における含量や後述する実施例での含量を参照しつつ、適応症、投与対象、投与経路、剤形、投薬レジメン等に応じて適宜定めることができる。
【0033】
医薬品たる本発明の組成物の剤型としては、限定されるものではないが、例えば錠剤、粉剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口剤、点滴用を含む注射剤が挙げられる。こうした剤形も、適応症、投与対象、投与経路、投薬レジメン等に応じて適宜選択できる。
【0034】
医薬品たる本発明の組成物の投与経路としては、経口、点滴を含めた注射が可能であり、適応症、投与対象、投薬レジメン、患者の状態等に応じて適宜選択できる。
【0035】
ここまでは本発明の組成物における有効成分として6-MSITCを用いる場合を中心に説明してきたが、有効成分として6-MSITC以外のアブラナ科植物に含まれているイソチオシアネート類を用いる場合における1日あたりの摂取量、摂取頻度、摂取期間やそのインターバル期間、組成物中のイソチオシアネート類の含量や含有率、組成物の形態、組成物中に含める他の成分は、概ね上述した6-MSITCと同様に定めうる。その際、当業者に期待できる通常程度の試行によってその精度を高めることもできる。
【実施例0036】
[試験食品]
「わさびスルフィニル」(登録商標)を含有するサプリメントを用いた。その1カプセル中には1.6mgの6-MSITCを含有するワサビスルフィニル200mgのほか、HPMC59mg、環状オリゴ糖46mg、ステアリン酸カルシウム4mg、および着色料(紅花黄、クチナシ)0.9mgを含有する。
【0037】
[被験者]
単群試験とした。
被験者は男性30名、女性30名であったが、試験期間中に被験者都合により脱落した男性1名を除く59名を有効性解析対象者とした。
検査までの食生活や運動等の生活習慣は大きく変えていない。
また、検査前日は過激な運動を控えて21時までに食事を済ませ、暴飲暴食、多量の飲酒、タバコ、夜更かしは避けた。
また、酸化ストレスに影響する可能性のある医薬品、特定保健用食品、健康食品などの新たな摂取は控えた。
なお、男性の被験者は各試験日の前2日間以上禁欲した。
【0038】
[検討のスケジュール]
被験者は4週間にわたり、朝食時に試験食品を摂取した。摂取は食前、食事中、食後のいずれも可とした。摂取開始時および摂取開始から4週間後に、尿検査および男性のみ精液検査を実施した。
【0039】
[尿検査]
被験者に尿検査キットを提供し、被験者自身で採尿のうえ、検体を株式会社ヘルスケアシステムズへの郵送を依頼した。
同社で尿中の8-OHdG、およびクレアチニンを定量した。
【0040】
[精液検査]
男性の被験者に精液検査キットを提供し、被験者自身で採取のうえ、検体を株式会社ヘルスケアシステムズへの郵送を依頼した。
同社で精液中の8-OHdG、スペルミン、テストステロン、精液量、および精子数を測定した。
【0041】
[クレアチン補正]
尿中に排泄されるクレアチニンは生理的変動因子の影響を受けず、1日の排泄量は筋肉
量に比例することから、尿の濃度を補正するために、同時に測定したクレアチニン値で割った比を求めるクレアチニン補正を行った。
【0042】
[尿中8-OHdG(クレアチニン補正)の測定結果]
有効性解析対象者の6-MSITC摂取前後における尿中8-OHdGを酸化ストレス検査「サビチェック」で測定した結果の平均値を表1に示した(単位はng/mgクレアチン、平均値±標準偏差)。
【0043】
【0044】
表1によれば、尿中8-OHdGについては6-MSITC摂取前後において有意な差がみられなかった。しかし、表2に示すように、6-MSITC摂取前の尿中8-OHdGの値が中央値である7.7ng/mg以上の者を対象とした平均値をみると、6-MSITC摂取4週後において、尿中8-OHdGは6-MSITC摂取前と比べて有意に低下した。
【0045】
【0046】
[精液中8-OHdGの測定結果]
男性有効性解析対象者の6-MSITC摂取前後における精液中8-OHdGの平均値を表3に示した(単位はng/mg、平均値±標準偏差)。
【0047】
【0048】
表3によれば、6-MSITC摂取4週後において、精液中8-OHdGは6-MSITC摂取前と比べて有意に低下した。
また、表4に示すように、6-MSITC摂取前の精液中8-OHdGの値が中央値である11.76ng/ml以上の者を対象とした平均値でも、6-MSITC摂取4週後において、精液中8-OHdGは6-MSITC摂取前と比べて有意に低下した。
【0049】
【0050】
Nakamuraらによれば、Nrf2ノックアウトマウスにおいては抗酸化物質が減少して酸化ストレスを上昇させるが、精巣における8-OHdG陽性細胞数は野生型と比較し差がなかったことが報告されている(Nakamura, Brooke N., et al. Free Radical Biology and Medicine 49.9 (2010): 1368-1379)。
【0051】
とすると、こうした精液中8-OHdGの低下は、6-MSITCによるNrf2活性化とは異なる作用機序による、部位特異的な作用であることが示唆された。このことは、尿中8-OHdGの変化量と精液中8-OHの変化量の間には弱い相関しかないことからも支持される。
【0052】
[精液中スペルミンの測定結果]
男性有効性解析対象者の6-MSITC摂取前後における精液中スペルミンの平均値を表5に示した(単位はmmol/L、平均値±標準偏差)。
【0053】
【0054】
表5によれば、精液中スペルミンについては6-MSITC摂取前後において有意な差がみられなかった。しかし、表6に示すように、6-MSITC摂取前の精液中スペルミンの値が中央値である0.41mmol/L以下の者を対象とした平均値をみると、6-MSITC摂取4週後において、精液中スペルミンは6-MSITC摂取前と比べて有意に増加した。
【0055】
【0056】
[精液中テストステロンの測定結果]
男性有効性解析対象者の6-MSITC摂取前後における精液中テストステロンの平均値を表7に示した(単位はng/mL、平均値±標準偏差)。
【0057】
【0058】
表7によれば、精液中テストステロンについては6-MSITC摂取前後において有意な差がみられなかった。しかし、表8に示すように、6-MSITC摂取前の精液中テストステロンの値が中央値である29.93ng/mL以下の者を対象とした平均値をみると、6-MSITC摂取4週後において、精液中テストステロンは6-MSITC摂取前と比べて有意に増加した。
【0059】
【0060】
[精液量の測定結果]
男性有効性解析対象者の6-MSITC摂取前後における精液量の平均値を表9に示した(単位はmL、平均値±標準偏差)。
【0061】
【0062】
表9によれば、精液量については6-MSITC摂取前後において有意な差がみられなかった。しかし、表10に示すように、6-MSITC摂取前の精液量の値が中央値である2.28mL以下の者を対象とした平均値をみると、6-MSITC摂取4週後において、精液量は6-MSITC摂取前と比べて有意に増加した。
【0063】
【0064】
[精液中の精子数の測定結果]
男性有効性解析対象者の6-MSITC摂取前後における精液中の精子数の平均値を表11に示した(単位は×100万個、平均値±標準偏差)。
【0065】
【0066】
表11によれば、精液中の精子数については6-MSITC摂取前後において有意な差がみられなかった。しかし、表12に示すように、6-MSITC摂取前の精液中の精子数が中央値である278.5×100万個以下の者を対象とした平均値をみると、6-MSITC摂取4週後において、精液中の精子数は6-MSITC摂取前と比べて有意に増加した。
【0067】
【0068】
以上より、本発明の組成物は次に列挙する作用のうちの一つ以上を発現することがわかる。
a)尿中8-OHdGが高値である者の尿中8-OHdGの低下作用
b)精液中8-OHdGの低下作用
c)精液中スペルミンが低値を示す者の精液中スペルミンの増加作用
d)精液中テストステロンが低値を示す者の精液中テストステロンの増加作用
e)精液量が低値を示す者の精液量の増加作用
f)精液中の精子数が低値を示す者の精液中の精子数の増加作用