(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128979
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20220829BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20220829BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
H02K11/30
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027475
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC06
5H605DD13
5H605EC20
5H609BB03
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5H611AA09
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】パワースイッチング素子や平滑コンデンサとともに比較的高出力の回転電機が収容部材内に配置される構成に適用可能な冷却構造を実現する。
【解決手段】回転電機と、回転電機が収容される収容室を形成する収容部材と、軸方向で収容部材の一端側に結合され、回転電機に軸方向に対向するカバー部材と、軸方向でカバー部材と回転電機の間に配置され、ステータのコイルに電気的に接続されるパワースイッチング素子と、軸方向でカバー部材と回転電機の間に配置され、パワースイッチング素子に電気的に接続される平滑コンデンサと、冷却構造とを含み、冷却構造は、カバー部材に形成され、パワースイッチング素子及び/又は平滑コンデンサを冷却するための冷却水が通る冷却水路と、カバー部材に形成され、回転電機を冷却するための油が通る第1油路とを有する、車両駆動装置が開示される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを有する回転電機と、
前記回転電機が収容される収容室を形成する収容部材と、
軸方向で前記収容部材の一端側に結合され、前記回転電機に軸方向に対向するカバー部材と、
軸方向で前記カバー部材と前記回転電機の間に配置され、前記ステータのコイルに電気的に接続されるパワースイッチング素子と、
軸方向で前記カバー部材と前記回転電機の間に配置され、前記パワースイッチング素子に電気的に接続される平滑コンデンサと
冷却構造とを含み、
前記冷却構造は、
前記カバー部材に形成され、前記パワースイッチング素子及び前記平滑コンデンサのうちの少なくともいずれか一方を冷却するための冷却水が通る冷却水路と、
前記カバー部材に形成され、前記回転電機を冷却するための油が通る第1油路とを有する、車両駆動装置。
【請求項2】
前記冷却構造は、
前記ロータのシャフト部の中空内部に第2油路、及び、径方向で前記回転電機に対向する第3油路のうちの、少なくともいずれか一方を含む冷却油路を更に有し、
前記第1油路は、前記冷却油路に連通する、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記冷却水路と前記第1油路とは、それぞれの入口部からの上流区間同士が隣り合う、請求項2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記冷却水路は、軸方向に視て、前記パワースイッチング素子を含むパワーモジュール及び前記平滑コンデンサのうちの少なくともいずれか一方にオーバラップし、
前記第1油路は、その入口部から前記冷却油路に接続するまでの区間における少なくとも一部において、前記冷却水路と隣り合う、請求項3に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記パワーモジュール及び前記平滑コンデンサは、複数の組をなして、前記回転電機の回転軸まわりに配置され、
前記冷却水路は、軸方向に視て、前記複数の組のそれぞれにおける前記パワーモジュールのそれぞれにオーバラップする態様で前記回転軸まわりに延在し、
前記第1油路は、軸方向に視て、径方向で前記冷却水路よりも内側で、前記回転軸まわりに延在する、請求項4に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータ及びステータからなる回転電機(モータ)が収容されるモータ収容室と、パワースイッチング素子や平滑コンデンサが収容されるインバータ収容室とを、ロータを回転可能に支持するベアリング支持部が設けられる円環状のモータブラケットにより、軸方向で仕切る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、モータ収容室を形成するモータケースの外表面と、インバータ収容室を形成するインバータケースの外表面とに、外気に接するフィンを設け、フィンを介してインバータ収容室の空気が有する熱を放熱する冷却構造が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、回転電機やパワースイッチング素子の熱を逃がす経路は、実質的にケースから空気への経路のみであるため、回転電機やパワースイッチング素子を安定的に冷却することが難しい。特に自動車用主機のような比較的高出力の回転電機に適用するには放熱能力が不足するおそれがある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、パワースイッチング素子や平滑コンデンサとともに比較的高出力の回転電機が収容部材内に配置される構成に適用可能な冷却構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、ロータ及びステータを有する回転電機と、
前記回転電機が収容される収容室を形成する収容部材と、
軸方向で前記収容部材の一端側に結合され、前記回転電機に軸方向に対向するカバー部材と、
軸方向で前記カバー部材と前記回転電機の間に配置され、前記ステータのコイルに電気的に接続されるパワースイッチング素子と、
軸方向で前記カバー部材と前記回転電機の間に配置され、前記パワースイッチング素子に電気的に接続される平滑コンデンサと
冷却構造とを含み、
前記冷却構造は、
前記カバー部材に形成され、前記パワースイッチング素子及び前記平滑コンデンサのうちの少なくともいずれか一方を冷却するための冷却水が通る冷却水路と、
前記カバー部材に形成され、前記回転電機を冷却するための油が通る第1油路とを有する、車両駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、パワースイッチング素子や平滑コンデンサとともに比較的高出力の回転電機が収容部材内に配置される構成に適用可能な冷却構造を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例による回転電機を含む電気回路の一例の概略図である。
【
図2】本実施例による回転電機を含む車両用駆動システムのスケルトン図である。
【
図3A】本実施例による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図3B】本実施例による車両駆動装置の要部を概略的に示す断面図である。
【
図7A】本実施例によるモータ駆動装置をX1側から視た斜視図である。
【
図7B】本実施例によるモータ駆動装置の各部品の説明図である。
【
図8】カバー部材の流路とモータ駆動装置との位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
以下では、本実施例の車両駆動装置10の電気系(制御系)、及び、本実施例の車両駆動装置10を含む駆動システム全体を概説してから、本実施例の車両駆動装置10の詳細について説明する。
【0011】
[車両駆動装置の電気系]
図1は、本実施例の回転電機1を含む電気回路200の一例の概略図である。
図1には、制御装置500についても併せて示される。
図1において、制御装置500に対応付けられた点線矢印は、情報(信号やデータ)のやり取りを表す。
【0012】
回転電機1は、制御装置500によるインバータINVの制御を介して駆動される。
図1に示す電気回路200では、回転電機1は、電源VaにインバータINVを介して電気的に接続される。なお、インバータINVは、例えば、相ごとに、電源Vaの高電位側と低電位側とにそれぞれパワースイッチング素子(例えばMOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect TransistorやIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor等)を備え、高電位側のパワースイッチング素子と低電位側のパワースイッチング素子とが上下アームを形成する。なお、インバータINVは、相ごとに、複数組の上下アームを備えてもよい。各パワースイッチング素子は、制御装置500による制御下で、所望の回転トルクが発生するようにPWM(Pulse Width Modulation)駆動されてよい。なお、電源Vaは、例えば比較的定格電圧の高いバッテリであり、例えばリチウムイオンバッテリや燃料電池等であってよい。
【0013】
本実施例では、
図1に示す電気回路200のように、電源Vaの高電位側と低電位側の間には、インバータINVに対して並列に、平滑コンデンサCが電気的に接続される。なお、平滑コンデンサCは、複数組、互いに並列に、電源Vaの高電位側と低電位側の間に電気的に接続されてもよい。また、電源VaとインバータINVとの間にDC/DCコンバータが設けられてもよい。
【0014】
[駆動システム全体]
図2は、回転電機1を含む車両用駆動システム100のスケルトン図である。
図2には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、第1軸A1の方向(以下、「軸方向」とも称する)に平行である。
【0015】
図2に示す例では、車両用駆動システム100は、車輪の駆動源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構7と、を備える。駆動伝達機構7は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、左右の出力部材61、62と、を備える。
【0016】
入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力ギヤ32は、回転電機1からの回転トルク(駆動力)をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力部材3の入力軸31と一体的に回転するように、入力部材3の入力軸31に連結される。
【0017】
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
【0018】
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。第2軸A2は、第1軸A1に平行に延在する。第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0019】
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。
【0020】
差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。第3軸A3は、第1軸A1に平行に延在する。差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、左右の出力部材61、62に分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51を備え、差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。また、差動歯車機構5は、差動ケース52を備え、差動ケース52内には、ピニオンシャフトや、ピニオンギヤ、左右のサイドギヤ等が収容される。左右のサイドギヤは、それぞれ、左右の出力部材61、62と一体的に回転するように連結される。
【0021】
左右の出力部材61、62のそれぞれは、左右の車輪Wに駆動連結される。左右の出力部材61、62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。なお、左右の出力部材61、62は、2つ以上の部材により構成されてもよい。
【0022】
このようにして回転電機1は、駆動伝達機構7を介して車輪Wを駆動する。ただし、他の実施例では、回転電機1は、ホイールインモータとして、車輪内に配置されてもよい。この場合、車両用駆動システム100は、駆動伝達機構7を含まない構成であってよい。また、他の実施例では、駆動伝達機構7の一部又は全部を共用化する複数の回転電機1が設けられてもよい。
【0023】
[車両駆動装置の詳細]
図3A及び
図3Bは、本実施例の車両駆動装置10の要部の断面図であり、
図3Aは、油路2530を通る断面図(
図5のラインA-Aに沿った一部の断面図)であり、
図3Bは、冷却水路2528を通る断面図(
図5のラインB-Bに沿った一部の断面図)である。
図4は、カバー部材252をX2側から視た斜視図である。
図5は、車両駆動装置10のカバー部材252における冷却構造の説明図であり、カバー部材252を軸方向に沿ってX1側に視た平面図である。なお、
図5には、カバー部材252は外形だけが概略的に示されている。また、
図5には、第1軸A1に直交するZ方向が定義されている。Z方向は、上下方向に対応し、Z1側は上側に対応する。なお、Z方向は、必ずしも重力方向と平行である必要はない。
【0024】
車両駆動装置10は、上述した回転電機1と、ケース2と、モータ駆動装置8とを含む。
【0025】
車両駆動装置10は、車両用駆動システム100の一部として車両に搭載され、上述したように、車両を前進又は後退させる駆動力を生成する。なお、車両は、任意の形態であり、例えば4輪の自動車であってもよいし、バス、トラック、二輪車や建設機械等であってもよい。なお、車両駆動装置10は、他の駆動源(例えば内燃機関)とともに車両に搭載されてもよい。
【0026】
回転電機1は、ロータ310及びステータ320を有する。
図3A及び
図3Bには、回転電機1の軸方向一端側(X1側)の一部が示されている。回転電機1は、インナロータタイプであり、ステータ320がロータ310の径方向外側を囲繞するように設けられる。すなわち、ロータ310は、ステータ320の径方向内側に配置される。
【0027】
ロータ310は、ロータコア312と、シャフト部314とを備える。
【0028】
ロータコア312は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ロータコア312の内部には、永久磁石325が埋め込まれてよい。あるいは、永久磁石325は、ロータコア312の外周面に取り付けられてもよい。なお、永久磁石325の配列等は任意である。ロータコア312は、シャフト部314の外周面に固定され、シャフト部314と一体となって回転する。
【0029】
シャフト部314は、回転電機1の回転軸である第1軸A1を画成する。シャフト部314は、ロータコア312が固定される部分よりもX1側において、ケース2のカバー部材252(後述)にベアリング240を介して回転可能に支持される。なお、シャフト部314は、回転電機1の軸方向他端側(X2側)において、ベアリング240に対応するベアリングを介してケース2に回転可能に支持される。このようにして、シャフト部314が軸方向両端で回転可能にケース2に支持されてよい。
【0030】
シャフト部314は、例えば中空管の形態であり、中空内部314Aを有する。中空内部314Aは、シャフト部314の軸方向の全長にわたり延在してよい。中空内部314Aは、軸心油路として機能することができる。この場合、シャフト部314は、ステータ320のコイルエンド部322A等に油を吐出する油孔が形成されてよい。
【0031】
ステータ320は、ステータコア321と、ステータコイル322とを備える。
【0032】
ステータコア321は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなってよい。ステータコア321の内周部には、径方向内側に突出するティース(図示せず)が放射状に形成される。
【0033】
ステータコイル322は、例えば断面平角状又は断面円形状の導体に絶縁被膜が付与された形態であってよい。ステータコイル322は、ステータコア321のティース(図示せず)まわりに巻装される。なお、ステータコイル322は、例えば、1つ以上の並列関係で、Y結線で電気的に接続されてもよいし、Δ結線で電気的に接続されてもよい。
【0034】
ステータコイル322は、ステータコア321のスロットから軸方向外側に突出する部分であるコイルエンド部322Aを有する。以下の説明において、コイルエンド部322Aとは、特に言及しない限り、ステータコイル322の一部であって、ステータコア321の軸方向両側のそれぞれで周方向に沿って延在する部分のうちの、リード側である軸方向一端側(X1側)で沿って延在する部分を指す。
【0035】
ケース2は、例えばアルミ等により形成されてよい。ケース2は、例えば鋳造等により形成できる。ケース2は、モータケース250と、カバー部材252とを含む。ケース2は、回転電機1及びモータ駆動装置8を収容する。また、
図2に示した車両用駆動システム100の場合、ケース2は、
図2に模式的に示すように、駆動伝達機構7を更に収容してもよい。
【0036】
モータケース250は、回転電機1を収容するモータ収容室SP1を形成する。なお、モータ収容室SP1は、回転電機1(及び/又は駆動伝達機構7)を冷却及び/又は潤滑するための油を含む油密空間であってよい。モータケース250は、回転電機1の径方向外側を囲繞する周壁部を有する形態である。モータケース250は、複数の部材を結合して実現されてもよい。また、モータケース250は、軸方向他端側(X2側)で、駆動伝達機構7を収容する他のケース部材に一体化されてよい。また、モータケース250は、回転電機1のステータコア321の外周面に対して径方向に非常にわずかな隙間をもって対向する部位を有してもよい(
図3B参照)。
【0037】
カバー部材252は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)に結合される。カバー部材252は、モータ収容室SP1における軸方向一端側(X1側)を覆うカバーの形態であり、回転電機1に軸方向に対向する。この場合、カバー部材252は、モータケース250の軸方向一端側(X1側)の開口部を完全に又は略完全に閉塞する態様で覆ってもよい。
【0038】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を収容するインバータ収容室SP2を形成する。なお、インバータ収容室SP2の一部は、モータケース250により形成されてもよいし、逆に、モータ収容室SP1の一部は、カバー部材252により形成されてもよい。
【0039】
カバー部材252は、モータ駆動装置8を支持する。例えばモータ駆動装置8は、後述するモジュールの形態で、カバー部材252に取り付けられてもよい。これにより、カバー部材252にモータ駆動装置8の一部又は全体を組み付けてから、カバー部材252とモータケース250とを結合でき、モータ駆動装置8の組み付け性が向上する。
【0040】
カバー部材252には、ロータ310を回転可能に支持するベアリング240が設けられる。すなわち、カバー部材252は、ベアリング240を支持するベアリング支持部2524を有する。なお、ベアリング支持部2524とは、カバー部材252のうちの、ベアリング240が設けられる軸方向範囲の部分全体を指す。
【0041】
ベアリング240は、
図3A及び
図3Bに示すように、シャフト部314のX1側の端部における径方向外側に設けられる。具体的には、ベアリング240は、アウタレースの径方向外側がカバー部材252に支持され、インナレースの径方向内側がシャフト部314の外周面に支持される。なお、変形例では、逆に、ベアリング240は、インナレースの径方向内側がカバー部材252に支持され、アウタレースの径方向外側がシャフト部314の内周面に支持されてもよい。
【0042】
本実施例では、カバー部材252は、
図3A、
図3B、及び
図4に示すように、第1軸A1を中心とした円形状の底部2521と、底部2521の外周縁から軸方向他端側(X2側)へと突出する周壁部2522とを含み、底部2521と周壁部2522とが、インバータ収容室SP2を画成する。底部2521における軸方向他端側(X2側)の中央部(第1軸A1を中心とした部分)には、軸方向他端側(X2側)に突出する円筒状部位25211(
図4参照)が形成され、円筒状部位25211にベアリング支持部2524が設定される。なお、円筒状部位25211は、第1軸A1を中心として同芯に形成されてよい。
【0043】
インバータ収容室SP2は、空間であってもよいが、好ましくは、比較的高い伝熱性を有するフィラーを含む樹脂により封止される。すなわち、カバー部材252は、好ましくは、伝熱性のモールド樹脂部2523を有する。この場合、モールド樹脂部2523は、後述するモータ駆動装置8を封止して支持する機能と、モータ収容室SP1内の油に対してモータ駆動装置8を保護する機能と、モータ駆動装置8からの熱をカバー部材252に伝達する機能を有することができる。なお、
図3A及び
図3Bでは、モールド樹脂部2523内に封止される要素(後述するブロック組立体90等)が透視で示されている。モールド樹脂部2523の形成範囲は、
図3A等に示す範囲に限られず、底部2521側から、よりX1側までしか延在しなくてもよいし、よりX2側まで延在してもよい。
【0044】
ここで、
図3A、
図3B、及び
図5を参照して、本実施例の冷却構造について説明する。以下では、径方向、軸方向及び周方向の各用語は、特に言及しない限り、第1軸A1に関する各方向である。すなわち、軸方向は、第1軸A1に平行な方向(第1軸A1と同軸の線に沿った方向を含む)であり、径方向は、第1軸A1を通りかつ第1軸A1に直交する方向であり、周方向は、第1軸A1に直交する任意の平面内における第1軸A1まわりの方向である。
【0045】
本実施例の冷却構造は、カバー部材252にそれぞれ形成される冷却水路2528及び油路2530(以下、「カバー油路2530」と称する)と、軸心油路を形成する中空内部314Aと、中空内部314Aに油を供給する軸心供給用の管状部材180と、上掛け油路を形成する管状部材181とを含む。
【0046】
冷却水路2528には、冷却水が流される。なお、冷却水は、例えばLLC(Long Life Coolant)を含む水であってよい。この場合、冷却水路2528を流れる冷却水は、車両に搭載されるラジエーター(図示せず)で放熱されることで、比較的低温に維持できる。
【0047】
冷却水路2528は、軸方向に視て任意の形態であってよく、例えば、円環状の形態であってもよいし、螺旋状の形態であってもよいし、後述するように、径方向外側と内側に蛇行しながら周方向に沿って延在する形態であってもよい。なお、カバー部材252を中子等を用いて製造する場合は、冷却水路2528の形状等の自由度を高めることができる。冷却水路2528の好ましい例は、後に詳説する。
【0048】
カバー油路2530には、油が流れる。カバー油路2530には、図示しないオイルポンプから油が供給される。オイルポンプは、例えば駆動伝達機構7に連動する機械式であってよいし、電動式であってもよい。
【0049】
カバー油路2530は、軸方向に視て任意の形態であってよく、例えば、円環状の形態であってもよいし、螺旋状の形態であってもよいし、後述するように、径方向外側と内側に蛇行しながら周方向に沿って延在する形態であってもよい。カバー油路2530には、フィン等が形成されてもよい。なお、カバー部材252を中子等を用いて製造する場合は、カバー油路2530の形状等の自由度を高めることができる。
【0050】
カバー油路2530は、径方向に視て、冷却水路2528とオーバラップしてもよい。この場合、カバー油路2530と冷却水路2528とが径方向に視てオーバラップしない場合に比べて、カバー部材252の厚み(軸方向の底部2521の厚み)の低減を図り、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。カバー油路2530の好ましい例は、後に詳説する。
【0051】
カバー油路2530に供給される油は、カバー油路2530を通ってから、管状部材180に供給される。管状部材180は、中空の管状の形態であり、内部が流路を形成する。管状部材180は、第1軸A1と同心状に、軸方向に延在し、軸方向の両端が開口されてよい。管状部材180は、
図3Aに示すように、X1側でカバー油路2530(後述する軸心側の出口部25302)に接続され、中空内部314A内までX2側に軸方向に延在し、X2側の端部の開口が中空内部314Aに連通する。なお、管状部材180は、X2側の端部が閉塞されてもよく、この場合、中空内部314A内に位置する部分に径方向の油孔が形成されてもよい。
【0052】
管状部材180に供給される油は、軸心油路(中空内部314A)に供給される。中空内部314Aに供給された油は、ロータ310の回転時の遠心力の作用により、シャフト部314の内周面を伝って流れ、ロータコア312及びそれに伴い永久磁石325を径方向内側から冷却する。また、シャフト部314に径方向の油孔を形成して、径方向内側からコイルエンド部322A(X2側のコイルエンド部322Aも同様)に向けて油を吐出することも可能である。この場合、コイルエンド部322A(X2側のコイルエンド部322Aも同様)を径方向内側から冷却できる。
【0053】
また、カバー油路2530に供給される油は、カバー油路2530を通ってから、管状部材181に供給される。管状部材181は、中空の管状の形態であり、内部が流路を形成する。管状部材181は、軸方向に視てステータ320よりも径方向外側において、軸方向に延在し、軸方向の両端が開口されてよい。
【0054】
管状部材181に供給された油は、重力の作用により、管状部材181に形成される径方向の油孔1810を介して、ステータ320に落下する。ステータ320に落下した油は、ステータ320の外周面等を伝って下方へと流れる。これにより、ステータ320を径方向外側から冷却できる。管状部材181は、好ましくは、第1軸A1よりも上側に配置される。例えば、管状部材181は、天頂部(回転電機1まわりの周方向で最も上側の領域)付近に配置されてよい。これにより、重力を利用して管状部材181を通る油により、ステータ320を効率的に冷却できる。
【0055】
管状部材181の油孔1810は、例えば、コイルエンド部322A(X2側のコイルエンド部322Aも同様)に径方向で対向する油孔1810Aを含んでよい。これにより、コイルエンド部322A(X2側のコイルエンド部322Aも同様)を径方向外側から冷却できる。
【0056】
また、管状部材181の油孔1810は、ステータコア321の外周面に径方向で対向する油孔1810Bを含んでよい。これにより、ステータコア321(及びステータコイル322)を径方向外側から冷却できる。
【0057】
なお、管状部材180及び/又は管状部材181は、一部又は全部が、カバー部材252に一体的に形成されてもよい。
【0058】
ところで、カバー油路2530に供給される油は、車両に搭載されるオイルクーラ(図示せず)で冷却された油であってもよいが、本実施例では、かかるオイルクーラを省略することも可能である。
【0059】
具体的には、本実施例では、同じカバー部材252に冷却水路2528とカバー油路2530が形成されるので、カバー油路2530内の油を冷却水路2528内の冷却水により冷却できる。この結果、カバー油路2530に比較的高温の油が供給される場合でも、比較的高温の油は、カバー油路2530を流れて管状部材180及び管状部材181に至るまでに、冷却水路2528内の冷却水により冷却される。これにより、オイルクーラを無くした場合又は小型化した場合でも、管状部材180及び管状部材181を介して供給される油の低温化が可能である。
【0060】
図5に示す例では、冷却水路2528は、入口部25281と、出口部25282と、径方向内側の周方向流路部25284と、径方向外側の周方向流路部25285と、径方向流路部25286とを含む。
【0061】
入口部25281及び出口部25282は、
図5に示すように、周方向で隣り合う態様(後述する入口部25301等を挟んで隣り合う態様)で配置されてよい。これにより、周方向全体にわたって冷却水路2528を延在させることが容易となる。入口部25281及び出口部25282は、それぞれカバー部材252における径方向外側に配置されてよい。また、入口部25281及び出口部25282は、第1軸A1よりも上側に配置されてよい。例えば、入口部25281及び出口部25282は、天頂部付近に配置されてよい。
【0062】
入口部25281は、一の径方向流路部25286を介して、一の径方向内側の周方向流路部25284に接続される。出口部25282は、他の一の径方向流路部25286を介して、他の一の径方向内側の周方向流路部25284に接続される。
【0063】
径方向内側の周方向流路部25284のそれぞれは、カバー部材252における径方向内側において周方向に延在する。径方向内側の周方向流路部25284のそれぞれは、周方向の両端で、径方向流路部25286の径方向内側の端部に接続される。
【0064】
径方向外側の周方向流路部25285のそれぞれは、カバー部材252における径方向外側において周方向に延在する。径方向外側の周方向流路部25285のそれぞれは、周方向の両端で、径方向流路部25286の径方向外側の端部に接続される。
【0065】
径方向流路部25286は、上述したように入口部25281及び出口部25282にそれぞれ接続される2本と、径方向内側で周方向流路部25284に接続され径方向外側で周方向流路部25285に接続される他の複数本とからなる。
【0066】
このような冷却水路2528では、一の径方向内側の周方向流路部25284に接続される対の径方向流路部25286は、当該一の径方向内側の周方向流路部25284とともに、軸方向に視て、径方向外側が開口するU字状の流路を形成する。また、一の径方向外側の周方向流路部25285に接続される対の径方向流路部25286は、当該一の径方向外側の周方向流路部25285とともに、軸方向に視て、径方向内側が開口するU字状の流路を形成する。
【0067】
従って、冷却水路2528に入口部25281から供給される冷却水は、かかるU字状の流路を通りながら第1軸A1まわりを周回しつつ、カバー油路2530内の油を冷却するとともに、後述するように、周方向に分散して配置されるモータ駆動装置8のブロック組立体90(後述)を冷却する。そして、これらを冷却することで高温化した冷却水は、出口部25282から排出され、ラジエーター(図示せず)を介して再び冷却された後、冷却水路2528に入口部25281から供給される。
【0068】
カバー油路2530は、好ましくは、冷却水路2528に近接して形成される。
図5に示す例では、冷却水路2528及びカバー油路2530は、軸方向に視て互いに対して交差しない態様で、径方向の内外に行き来しつつ、第1軸A1まわりに1周だけ周回するように、形成されている。これにより、冷却構造に起因したカバー部材252の軸方向の厚み(底部2521の厚み)の増加を防止しつつ、冷却水路2528内の冷却水によるカバー油路2530内の油の冷却を効果的に促進できる。
【0069】
具体的には、
図5に示す例では、カバー油路2530は、入口部25301と、軸心側の出口部25302と、径方向外側の出口部25303と、径方向内側の周方向流路部25304と、径方向外側の周方向流路部25305と、径方向流路部25306とを含む。
【0070】
入口部25301及び径方向外側の出口部25303は、
図5に示すように、周方向で隣り合う態様で配置されてよい。これにより、周方向全体にわたってカバー油路2530を延在させることが容易となる。入口部25301及び径方向外側の出口部25303は、それぞれカバー部材252における径方向外側に配置されてよい。また、入口部25301及び径方向外側の出口部25303は、第1軸A1よりも上側に配置されてよい。例えば、入口部25301及び径方向外側の出口部25303は、天頂部付近に配置されてよい。この場合、カバー油路2530の入口部25301及び径方向外側の出口部25303は、
図5に示すように、周方向で冷却水路2528の入口部25281及び出口部25282の間に配置されてよい。
【0071】
入口部25301は、一の径方向流路部25306(以下、他の径方向流路部25306と区別のために「径方向流路部25306A」と表記する)を介して、一の径方向内側の周方向流路部25304に接続される。
【0072】
軸心側の出口部25302は、
図3Aに示すように、軸心油路となる中空内部314Aに連通する管状部材180に接続される。
【0073】
径方向外側の出口部25303は、
図3Aに示すように、上掛け油路を形成する管状部材181に接続される。
【0074】
径方向内側の周方向流路部25304のそれぞれは、カバー部材252における径方向内側において周方向に延在する。径方向内側の周方向流路部25304のそれぞれは、冷却水路2528の径方向内側の周方向流路部25284のそれぞれに対して径方向内側から径方向に隣接する態様で形成されてよい。この場合、径方向内側の周方向流路部25304のそれぞれは、冷却水路2528の径方向内側の周方向流路部25284のそれぞれと、径方向で隣り合う関係で、周方向に並走する。径方向内側の周方向流路部25304のそれぞれは、周方向の両端で、径方向流路部25306の径方向内側の端部に接続される。
【0075】
径方向外側の周方向流路部25305のそれぞれは、カバー部材252における径方向外側において周方向に延在する。径方向外側の周方向流路部25305のそれぞれは、冷却水路2528の径方向外側の周方向流路部25285のそれぞれに対して径方向内側から径方向に隣接する態様で形成されてよい。この場合、径方向外側の周方向流路部25305のそれぞれは、冷却水路2528の径方向外側の周方向流路部25285のそれぞれと、径方向で隣り合う関係で、周方向に並走する。径方向外側の周方向流路部25305のそれぞれは、周方向の両端で、径方向流路部25306の径方向外側の端部に接続される。
【0076】
径方向流路部25306は、径方向流路部25306Aと、上掛け用の径方向流路部25306Bと、径方向流路部25306Cと、径方向流路部25306Dとからなる。
【0077】
径方向流路部25306Aは、径方向外側の端部が入口部25301に接続され、径方向内側の端部が一の径方向内側の周方向流路部25304に接続される。径方向流路部25306Aは、好ましくは、冷却水路2528の入口部25281に接続される径方向流路部25286に周方向で隣り合う。この場合、径方向流路部25306Aは、冷却水路2528の入口部25281に接続される径方向流路部25286と、周方向で隣り合う関係で、径方向に並走する。これにより、径方向流路部25306Aを流れる油を、冷却水路2528の入口部25281から流れる冷却水により効率的に冷却できる。
【0078】
上掛け用の径方向流路部25306Bは、軸心側の出口部25302と径方向外側の出口部25303との間で径方向に延在する。上掛け用の径方向流路部25306Bは、径方向流路部25306Aと周方向で隣接する態様で形成されてよい。上掛け用の径方向流路部25306Bは、好ましくは、冷却水路2528の出口部25282に接続される径方向流路部25286に周方向で隣り合う。この場合、上掛け用の径方向流路部25306Bは、冷却水路2528の出口部25282に接続される径方向流路部25286に周方向で隣り合う関係で、径方向に並走する。
【0079】
径方向流路部25306Cは、径方向内側の端部が軸心側の出口部25302に接続され、径方向外側の端部が一の径方向内側の周方向流路部25304に接続される。なお、変形例では、径方向流路部25306Cは、径方向流路部25306Dから連続して形成されてもよい。
【0080】
径方向流路部25306Dは、径方向内側で周方向流路部25304に接続され、径方向外側で周方向流路部25305に接続される。径方向流路部25306Dは、好ましくは、
図5に示すように、冷却水路2528の径方向流路部25286に対して周方向で隣り合う関係で、径方向に延在する(すなわち径方向流路部25286と径方向に並走する)。これにより、径方向流路部25306Dを流れる油を、冷却水路2528の径方向流路部25286を流れる冷却水により効率的に冷却できる。
【0081】
このようなカバー油路2530では、一の径方向内側の周方向流路部25304に接続される対の径方向流路部25306は、当該一の径方向内側の周方向流路部25304とともに、軸方向に視て、径方向外側が開口するU字状の流路を形成する。また、一の径方向外側の周方向流路部25305に接続される対の径方向流路部25306は、当該一の径方向外側の周方向流路部25305とともに、軸方向に視て、径方向内側が開口するU字状の流路を形成する。
【0082】
従って、カバー油路2530に入口部25301から供給される油は、かかるU字状の流路を通りながら第1軸A1まわりを周回しつつ、冷却水路2528内の冷却水により冷却される。このようにして冷却水路2528内の冷却水により冷却された油は、軸心側の出口部25302に至り、かかる冷却された油が、管状部材180内を流れる油と、上掛け用の径方向流路部25306Bを流れる油とを形成する。そして、上掛け用の径方向流路部25306Bを流れる油が、管状部材181を流れる油を形成する。このようにして、冷却水路2528内の冷却水により冷却された油が、管状部材180及び管状部材181を介して、回転電機1の冷却に供される。
【0083】
このように、
図5に示す例では、カバー油路2530は、冷却水路2528と並走しつつ第1軸A1まわりを周回するので、冷却水路2528の冷却水とカバー油路2530内の油との間の熱交換が可能な区間長を効率的に増加できる。これにより、カバー油路2530内の油を、冷却水路2528の冷却水により効率的に冷却できる。
【0084】
特に
図5に示す例では、冷却水路2528とカバー油路2530とは、それぞれの上流側の区間同士が隣接する。具体的には、冷却水路2528の入口部25281と、カバー油路2530の入口部25301とは、周方向で隣り合い、入口部25281からの径方向流路部25286は、入口部25301からの径方向流路部25306Aと周方向で隣り合う。これにより、カバー油路2530における比較的高温の油が流れる上流区間と、冷却水路2528における比較的低温の冷却水が流れる上流区間とが、隣り合うので、カバー油路2530に供給される比較的高温の油を、上流区間で効率的に冷却できる。
【0085】
そして、
図5に示す例では、カバー油路2530の入口部25301からの油の流路は、冷却水路2528の入口部25281からの冷却水の流路に対して並走しつつ、下流側に向かう。従って、油路2530内の油は、入口部25301から下流側(軸心側の出口部25302や径方向外側の出口部25303)に向かうにつれて、冷却水路2528内の水との間の熱交換時間が増加することで、低温化されていく。これにより、軸心側の出口部25302や径方向外側の出口部25303に、比較的低い温度の油(すなわち比較的冷却能力の高い油)を供給できる。この場合、比較的低い温度の油(すなわち比較的冷却能力の高い油)によりステータ320を効果的に冷却できる。
【0086】
また、
図5に示す例では、カバー油路2530は、
図5に示すように、冷却水路2528と並走しつつ、冷却水路2528よりも径方向内側で周回する。これにより、カバー油路2530は、冷却水路2528に対して径方向に交差することなく、入口部25301から軸心側の出口部25302まで延在できる。従って、冷却水路2528と並走しつつ周回しかつ軸心側の出口部25302に連通できるカバー油路2530を、カバー部材252の底部2521における厚み(X方向の厚み)を過大とすることなく、形成できる。
【0087】
ところで、本実施例では、後述するように、冷却水路2528を流れる冷却水は、モータ駆動装置8の冷却にも利用される。具体的には、カバー部材252の冷却水路2528に冷却水が流れると、カバー部材252の熱が冷却水に奪われることで、カバー部材252が冷却される。これにより、カバー部材252は、軸方向に隣接して配置されるモータ駆動装置8を冷却する機能を有することができる。
【0088】
モータ駆動装置8は、後述するように、周方向に沿って配置される複数のブロック組立体90を含む。複数のブロック組立体90のそれぞれに対する冷却水の冷却能力の均一化を図るためには、冷却水路2528を流れる冷却水の温度分布であって、周方向に沿った温度分布が均一化されていることが望ましい。
【0089】
この点、冷却水路2528を流れる冷却水は、比較的低い温度で、カバー部材252に供給されるので、カバー油路2530が設けられない場合は、周方向に沿った温度分布の均一化を図ることは難しい。これに対して、本実施例によれば、カバー油路2530内を流れる油により、冷却水路2528を流れる冷却水の温度分布であって、周方向に沿った温度分布の均一化を図ることができる。具体的には、
図5に示す例によれば、上述したように、冷却水路2528を流れる冷却水は、比較的低い温度で、カバー部材252に供給されるものの、上流区間において、比較的高い温度の油から熱を受けるので、周方向に沿った温度分布の均一化を図ることができる。すなわち、冷却水路2528を流れる冷却水の最も低温となる入口部25281からの上流区間と、カバー油路2530を流れる油の最も高温となる入口部25301からの上流区間とを、隣り合わせることで、上流区間で油と冷却水との間の温度差を比較的急激に低減できる。この結果、上流区間から全体にわたって油と冷却水との間の温度差を比較的小さく維持できるので、冷却水路2528を流れる冷却水の温度分布(周方向に沿った温度分布)の均一化を図ることができる。
【0090】
モータ駆動装置8は、上述したインバータINVや平滑コンデンサC、制御装置500等を含む。
【0091】
モータ駆動装置8は、
図3A及び
図3Bに示すように、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間に配置される。すなわち、モータ駆動装置8は、インバータ収容室SP2に配置される。
【0092】
このようにして、本実施例によれば、カバー部材252と回転電機1との間にモータ駆動装置8が配置されるので、モータ駆動装置8’がモータケース250’の外部に搭載される場合(
図6参照)に比べて、車両駆動装置10全体としての体格を低減できる。
【0093】
特に、本実施例によれば、カバー部材252にベアリング支持部2524を設けつつ、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間にモータ駆動装置8を配置することで、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。具体的には、軸方向でカバー部材252よりもX1側にモータ駆動装置8を設ける場合、モータ駆動装置8のX1側をカバーするカバー部材が別に必要となり、その分、車両駆動装置10の軸方向の体格の増加を招きやすい。この点、本実施例によれば、カバー部材252は、回転電機1のみならず、モータ駆動装置8に対しても、X1側のカバーとして機能できるので、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。
【0094】
更に、本実施例では、カバー部材252のベアリング支持部2524は、軸方向に視てモータ駆動装置8(後述するパワーモジュール80やコンデンサモジュール82等)よりも径方向内側に配置され、かつ、径方向に視てモータ駆動装置8にオーバラップする。これにより、カバー部材252の軸方向の寸法(ベアリング支持部2524からX2側への寸法)の低減を図りつつ、モータ駆動装置8を、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間に配置できる。この結果、車両駆動装置10の軸方向の体格を更に効果的に低減できる。
【0095】
また、本実施例によれば、軸方向でモータ駆動装置8と回転電機1の間に、ベアリング支持部2524に対応するベアリング支持部を有するブラケットが設けられることがない。これにより、かかるブラケットが設けられる構成に比べて、部品点数の低減を図るとともに、モータ駆動装置8と回転電機1との間の軸方向の距離の短縮を図ることができ、上述したように車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。また、軸方向でモータ駆動装置8と回転電機1との間を隔てる壁部(ブラケット)がないので、モータ駆動装置8と回転電機1との間の配線長の短縮を図ることができ、モータ駆動装置8と回転電機1との間の配線効率を高めることができる。
【0096】
本実施例では、モータ駆動装置8は、パワーモジュール80と、コンデンサモジュール82と、制御基板84と、配線部88とを含む。
【0097】
図7Aは、本実施例によるモータ駆動装置8をX1側から視た斜視図である。
図7Bは、本実施例によるモータ駆動装置8の各部品の説明図である。なお、
図7A及び
図7Bでは、制御基板84及び配線部88の一部の図示は省略されている。
【0098】
本実施例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、
図7A及び
図7Bに示すように、複数の組(
図7A及び
図7Bに示す例では、12組)をなして、周方向に沿って配置される。パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数は、回転電機1の仕様に応じて変化させる。基本的には、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数が増加すると、回転電機1の出力が高くなる。従って、回転電機1の設計の際に、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組の数(及びそれに伴い回転電機1の出力)が異なる複数のバリエーションを設定できる。
【0099】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、組ごとに、周方向に沿って等ピッチで配置される。例えば、
図7A及び
図7Bに示す例では、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数は12組であり、12組は、30度ピッチで配置される。これにより、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82からの熱に起因した周方向に沿った温度分布を均一化できる。ただし、変形例では、異なるピッチが利用されてもよい。
【0100】
パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、好ましくは、複数の組のそれぞれにおいて、一体化された組立体の形態である。すなわち、各組のパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82は、一体化されたブロック組立体90を形成する。
【0101】
ブロック組立体90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は同じ構成を有し、コンデンサモジュール82は同じ構成(電気的特性や形状等)を有する。これにより、ブロック組立体90ごとの交換や整備も可能であり、汎用性を高めることができる。本実施例では、ブロック組立体90のそれぞれにおいて、パワーモジュール80は、サブモジュール800と、放熱部材810とを含む。この場合、ブロック組立体90のそれぞれにおいて、サブモジュール800は同じ構成(電気的特性や形状等)を有し、放熱部材810は同じ構成(材料や形状等)を有する。これにより、複数のブロック組立体90を周方向に沿って配置する際、どのブロック組立体90を、どの周方向の位置に配置するかを考慮する必要性がなくなり、組付け性が良好となる。なお、電気的特性が同じとは、電気的特性に有意差がないことを意味し、個体差に起因した微差を無視する概念である。電気的特性とは、任意であるが、例えば、コンデンサモジュール82の電気的特性は、定格容量等であってよく、サブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)の電気的特性は、ゲート閾値電圧等であってよい。同様に、形状が同じとは、形状に有意差がないことを意味し、個体差に起因した微差(例えば許容公差内の寸法の差等)を無視する概念である。
【0102】
なお、例えば、12つのブロック組立体90のうちのU相用の4つのブロック組立体90は、周方向に隣接して一塊で配置され、V相用の4つのブロック組立体90は、周方向に隣接して一塊で配置され、W相用の4つのブロック組立体90は、周方向に隣接して一塊で配置されてもよい。あるいは、U相用のブロック組立体90と、V相用のブロック組立体90と、W相用のブロック組立体90とが、周方向に沿って1つずつ又は2つずつ周期的に配置されてもよい。
【0103】
サブモジュール800のそれぞれは、インバータINV(
図1参照)における一の相に係る上下アームを形成する。これにより、上下アームごとにサブモジュール化が可能となり、配線効率が向上する。具体的には、12組のうちの、4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、U相に係る上下アームを形成し、他の4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、V相に係る上下アームを形成し、更なる他の4組におけるパワーモジュール80において、サブモジュール800のそれぞれは、W相に係る上下アームを形成する。
【0104】
また、ブロック組立体90のそれぞれにおいて、サブモジュール800は、対のパワー半導体チップ801、802を有する。具体的には、対のパワー半導体チップ801、802は、高電位側の上アームを形成するパワー半導体チップ801と、低電位側の下アームを形成するパワー半導体チップ802とからなる。パワー半導体チップ801、802は、それぞれ、上述したパワースイッチング素子を含む。
【0105】
パワー半導体チップ801及びパワー半導体チップ802は、
図7Bに示すように、好ましくは、放熱部材810と一体化される。これにより、上述したパワーモジュール80が放熱部材810を一体的に含むことになり、放熱部材810を介して対のパワー半導体チップ801、802の熱を効率的に放熱できる。また、対のパワー半導体チップ801、802及び放熱部材810をそれぞれ別々にカバー部材252又はコンデンサモジュール82に組み付ける場合に比べて、組み付け性を高めることができる。
【0106】
また、パワー半導体チップ801及びパワー半導体チップ802は、
図7Bに示すように、配線部88の一部としてバスバー881、882、883、884を有する。パワー半導体チップ801と一体化されるバスバー881は、パワー半導体チップ801とコンデンサモジュール82(例えば
図7Bのコンデンサバスバー821)とを電気的に接続する。また、パワー半導体チップ801と一体化されるバスバー883は、パワー半導体チップ801と、回転電機1における対応する相のステータコイル322とを電気的に接続する。同様に、パワー半導体チップ802と一体化されるバスバー882は、パワー半導体チップ802とコンデンサモジュール82(例えば
図7Bのコンデンサバスバー822)とを電気的に接続する。また、パワー半導体チップ802と一体化されるバスバー884は、パワー半導体チップ802と、回転電機1における対応する相のステータコイル322とを電気的に接続する。
【0107】
本実施例では、対のパワー半導体チップ801、802は、放熱部材810の周方向の側面に接合される。この際、パワー半導体チップ801は、放熱部材810の周方向一方側の側面(表面)に接合され、パワー半導体チップ802は、放熱部材810の周方向他方側の側面(表面)に接合される。なお、接合方法は任意であり、比較的高い伝熱性の接着材料等が利用されてもよい。これにより、放熱部材810は、対のパワー半導体チップ801、802から周方向の側面を介して効率的に熱を受けることができる。また、周方向で隣り合う放熱部材810の間のスペースを効率的に利用して、対のパワー半導体チップ801、802を配置できる。
【0108】
放熱部材810は、比較的高い伝熱性を有する材料(例えばアルミ)により形成される。本実施例では、放熱部材810は、中実のブロックの形態である。これにより、放熱部材810の熱容量を効率的に高めることができる。
【0109】
放熱部材810は、サブモジュール800からの熱を効率的に受け、受けた熱をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)に効率的に伝達する機能を有する。
【0110】
本実施例では、上述したように、放熱部材810は、対のパワー半導体チップ801、802が周方向の側面に接合されるので、軸方向の表面(例えばX1側の表面)がフリーとなる。これにより、放熱部材810は、カバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528)に軸方向に近接又は当接する態様で、配置できる。この場合、放熱部材810を介して対のパワー半導体チップ801、802の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと効率的に伝達できる。なお、放熱部材810の軸方向他方側(X2側)の表面は、制御基板84上の素子の冷却等に利用されてもよい。
【0111】
本実施例では、
図7A及び
図7Bに示すように、放熱部材810は、カバー部材252に軸方向で当接する。これにより、放熱部材810の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと効率的に伝達できる。また、放熱部材810は、軸方向に視て、冷却水路2528にオーバラップする。これにより、放熱部材810の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと、更に効率的に伝達できる。なお、放熱部材810(及びそれに伴い対のパワー半導体チップ801、802)を冷却水路2528内の冷却水により効率的に冷却する好ましい冷却構造については、
図8を参照して後述する。
【0112】
放熱部材810は、好ましくは、
図7A及び
図7Bに示すように、軸方向に視て、径方向内側に向かうほど周方向幅が小さくなる形態である。すなわち、放熱部材810は、好ましくは、対のパワー半導体チップ801、802が接合される周方向の側面間の距離L1が、径方向で第1軸A1に近い側の方が第1軸A1よりも遠い側よりも小さい。これにより、放熱部材810をコンデンサモジュール82よりも径方向内側に配置しつつ、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数(すなわちブロック組立体90の数)を比較大きくした場合でも、放熱部材810のレイアウトを比較的容易に成立させることができる。
【0113】
なお、放熱部材810には、冷却水路2528に連通する流路が形成されてもよい。あるいは、放熱部材810は、中空の形態であり、内部に冷却水路2528に連通する管状部材が通されてもよい。
【0114】
コンデンサモジュール82は、平滑コンデンサC(
図1参照)を形成するモジュールの形態である。コンデンサモジュール82は、平滑コンデンサCを形成するコンデンサ素子や配線部88のコンデンサバスバー821、822を樹脂により封止した形態であってよい。なお、コンデンサバスバー821、822は、それぞれ、封止樹脂部から露出した各端部が、コンデンサ素子の高電位側端子と、コンデンサ素子の低電位側端子とを形成する。コンデンサバスバー821、822は、サブモジュール800に接続されるとともに、電源用バスバー886(
図3A及び
図3B参照)に接続される。
【0115】
ブロック組立体90のそれぞれにおいて、コンデンサモジュール82は、対応する組のサブモジュール800の高電位側と低電位側との間に並列に電気的に接続される平滑コンデンサCを形成する。
【0116】
本実施例では、コンデンサモジュール82は、パワーモジュール80の径方向外側に配置される。これにより、コンデンサモジュール82がパワーモジュール80の径方向内側に配置される場合に比べて、配置できる周方向範囲が広くなり、コンデンサモジュール82の体格を大きくしやすくなる。例えば、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82の組数を比較大きくした場合でも、比較的大きな体格のコンデンサモジュール82を実現できる。この結果、回転電機1の高出力化に対応することが容易となる。
【0117】
また、本実施例では、コンデンサモジュール82の軸方向の延在範囲は、
図3A及び
図3Bに示すように、パワーモジュール80の軸方向の延在範囲とオーバラップする。特に、本実施例では、パワーモジュール80のサブモジュール800は、径方向に視て、コンデンサモジュール82とオーバラップする。これにより、車両駆動装置10の軸方向の体格の最小化を図りつつ、軸方向でカバー部材252と回転電機1との間にコンデンサモジュール82及びサブモジュール800を配置できる。
【0118】
コンデンサモジュール82は、カバー部材252と熱的に接続される。例えば、コンデンサモジュール82は、放熱部材810を介してカバー部材252に熱的に接続されてもよい。この場合、放熱部材810は、コンデンサモジュール82に近接するような径方向外側の突出部(図示せず)を有してもよい。
【0119】
あるいは、コンデンサモジュール82は、放熱部材810を介さずに、又は、放熱部材810を介した熱的な接続に加えて、直接的にカバー部材252に熱的に接続されてもよい。具体的には、コンデンサモジュール82は、軸方向でサブモジュール800よりも回転電機1から遠い側(すなわちX1側)まで延在し、カバー部材252に軸方向に近接又は当接する。本実施例では、コンデンサモジュール82は、放熱部材810と同様、カバー部材252に軸方向に当接する。この場合、コンデンサモジュール82の熱をカバー部材252(及びそれに伴い冷却水路2528内の冷却水)へと効率的に伝達できる。また、コンデンサモジュール82は、カバー部材252の周壁部2522に径方向に当接されてもよい。
【0120】
あるいは、コンデンサモジュール82は、これらの熱的な接続方法に代えて又は加えて、モールド樹脂部2523を介してカバー部材252に熱的に接続されてもよい。
【0121】
このようにして、コンデンサモジュール82がカバー部材252と熱的に接続することで、コンデンサモジュール82の熱をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)に効率的に伝達し、コンデンサモジュール82を効率的に冷却できる。なお、コンデンサモジュール82を冷却水路2528内の冷却水により効率的に冷却する好ましい冷却構造については、
図8を参照して後述する。
【0122】
特に本実施例では、コンデンサモジュール82、放熱部材810、及びサブモジュール800(パワー半導体チップ801、802)は、軸方向の延在範囲が、互いに対してオーバラップするので、モータ駆動装置8の軸方向の搭載スペースの最小化を図りつつ、放熱部材810を介したカバー部材252への伝熱性能を高めることができる。
【0123】
また、コンデンサモジュール82は、好ましくは、X2側の端部が、コイルエンド部322AよりもX2側まで延在する。すなわち、コンデンサモジュール82は、径方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする。これにより、コンデンサモジュール82と回転電機1との間の軸方向の隙間の最小化を図ることができる。この結果、コンデンサモジュール82の軸方向の必要な体格を確保しつつ、車両駆動装置10の軸方向の体格の低減を図ることができる。
【0124】
制御基板84は、制御装置500(
図1参照)の一部又は全体を形成する。制御基板84は、例えば多層プリント基板により形成されてもよい。制御基板84は、基板表面に対する法線方向が軸方向に沿う向きに配置される。これにより、制御基板84を軸方向の僅かな隙間を利用して配置できる。例えば、本実施例では、制御基板84は、
図3A及び
図3Bに示すように、軸方向で回転電機1とパワーモジュール80との間に配置されてよい。より詳細には、制御基板84は、軸方向で回転電機1のコイルエンド部322Aとパワーモジュール80との間に配置されてよい。これにより、デッドスペースになりやすいスペースを利用した効率的な配置を実現できる。また、制御基板84は、軸方向に視て、コイルエンド部322Aにオーバラップする径方向位置まで径方向外側に延在できるので、制御基板84の面積(回路部形成範囲)の最大化を図ることができる。
【0125】
配線部88は、上述したコンデンサバスバー821、822と、上述したバスバー881、882、883、884と、電源用バスバー886等を含む。
【0126】
電源用バスバー886は、例えば円環状の形態であり、第1軸A1まわりに延在する。本実施例では、電源用バスバー886は、軸方向でカバー部材252とサブモジュール800の間において、サブモジュール800に対してX1側から隣接する態様で周方向に延在する。これにより、電源用バスバー886をカバー部材252(及び冷却水路2528内の冷却水)により効率的に冷却できる。また、この場合、電源用バスバー886は、軸方向に視てコンデンサモジュール82よりも径方向内側に配置され、かつ、径方向に視てコンデンサモジュール82とオーバラップする。これにより、電源用バスバー886と各ブロック組立体90との間の配線長を効率的に低減できる。
【0127】
このように、本実施例によれば、モータ駆動装置8は、カバー部材252に対して軸方向に隣接して配置されるので、冷却水路2528が形成されたカバー部材252をモータ駆動装置8に熱的に容易に接続できる。すなわち、モータ駆動装置8をカバー部材252を介して冷却水路2528内の冷却水により効率的に冷却できる。冷却水路2528には冷却水を安定的に流すことができるので、モータ駆動装置8の冷却の安定化を図ることができる。また、冷却水の流量を制御できる場合は、モータ駆動装置8の状態に応じた冷却の最適化を図ることも可能である。
【0128】
また、本実施例によれば、モータ駆動装置8と回転電機1との間の軸方向の距離の短縮を図ることで、カバー部材252(冷却水路2528を備えるカバー部材252)によりモータ駆動装置8のみならず、回転電機1の一部を冷却することも可能となる。例えば、上述したモールド樹脂部2523を回転電機1のステータコイル322に熱的に接続してもよい。具体的には、モールド樹脂部2523を回転電機1のコイルエンド部322Aに当接又は近接させることで、コイルエンド部322Aをモールド樹脂部2523及びカバー部材252を介して冷却水路2528内の冷却水により冷却できる。
【0129】
次に、
図8を参照して、上述した冷却構造(主にカバー部材252に形成される冷却水路2528及びカバー油路2530)とブロック組立体90との位置関係の好ましい例について説明する。
【0130】
図8は、軸方向に視たときの、冷却水路2528及びカバー油路2530とブロック組立体90との位置関係の説明図であり、カバー部材252を軸方向に視て示す平面図である。
図8には、冷却水路2528及びカバー油路2530とブロック組立体90とが、透視図で模式的に点線により示されている。
【0131】
冷却水路2528は、好ましくは、軸方向に視て、パワーモジュール80及びコンデンサモジュール82のうちの少なくともいずれか一方にオーバラップする。例えば、冷却水路2528が軸方向に視てパワーモジュール80にオーバラップする場合、冷却水路2528とパワーモジュール80との間の伝熱経路における熱抵抗が最小化されるので、冷却水路2528内の冷却水によりパワーモジュール80を効果的に冷却できる。なお、この場合、冷却水路2528は、軸方向に視て、パワーモジュール80のうちの、放熱部材810にオーバラップしてよい。また、冷却水路2528が軸方向に視てコンデンサモジュール82にオーバラップする場合、冷却水路2528とコンデンサモジュール82との間の伝熱経路における熱抵抗が最小化されるので、冷却水路2528内の冷却水によりコンデンサモジュール82を効果的に冷却できる。
【0132】
本実施例では、冷却水路2528は、軸方向に視て、複数のブロック組立体90のそれぞれにおけるパワーモジュール80及びコンデンサモジュール82のそれぞれにオーバラップする。具体的には、冷却水路2528の径方向流路部25286のそれぞれは、軸方向に視て、パワーモジュール80の放熱部材810及びコンデンサモジュール82のそれぞれにオーバラップする。これにより、各ブロック組立体90のパワー半導体チップ801、802及びコンデンサモジュール82を効果的に冷却できる。
【0133】
この場合、冷却水路2528は、一の径方向流路部25286が一のブロック組立体90に対応する態様で、ブロック組立体90の数に応じた径方向流路部25286を有してもよい。あるいは、上述したように回転電機1の仕様に応じてブロック組立体90の数が変化しうる場合、冷却水路2528は、ブロック組立体90の数が最大である仕様の回転電機1を基準として、各仕様に対して共通に設計されてもよい。例えば、ブロック組立体90の数が最大で12個である場合、冷却水路2528は、一の径方向流路部25286が一のブロック組立体90に一対一で対応する態様で、12本の径方向流路部25286を有してもよい。この場合、例えばブロック組立体90の数が12個未満の任意の数である仕様に対しても、冷却水路2528は、一の径方向流路部25286が一のブロック組立体90に対応する態様で、径方向流路部25286を有することができる。
【0134】
ところで、本実施例では、上述したように、冷却水路2528を流れる冷却水の温度分布であって、周方向に沿った温度分布が均一化されるので、このようにして周方向に沿って複数配置されるブロック組立体90のそれぞれを均一に冷却できる。これにより、特定のブロック組立体90の温度(高温化)が回転電機1の高出力化に対する制約となる可能性を低減でき、回転電機1の効率的な高出力化が可能となる。
【0135】
なお、本実施例では、軸方向に視て冷却水路2528の径方向流路部25286のそれぞれが、一のブロック組立体90のパワーモジュール80の放熱部材810及びコンデンサモジュール82のそれぞれにオーバラップする範囲(面積)(以下、「オーバラップ面積」と称する)は、同じであるが、異ならせてもよい。一般的に、かかるオーバラップ面積は、大きいほど、ブロック組立体90に対する冷却能力は大きくなる傾向がある。従って、例えば、冷却水路2528を流れる冷却水の温度分布であって、周方向に沿った温度分布に、若干の偏りがある場合、当該偏りに応じてオーバラップ面積を変化させてもよい。この場合、冷却水の温度が低いほど、オーバラップ面積を小さくすることで、冷却水の温度分布の若干の偏りが補償されてもよい。
【0136】
図9は、変形例による冷却水路2528Aの説明図であり、
図3Aに示した断面に対応する断面図である。
【0137】
本変形例では、冷却水路2528Aには、フィン2529が形成されている。フィン2529は、軸方向に視て、パワーモジュール80の放熱部材810にオーバラップする位置に設けられる。これにより、冷却水路2528A内の冷却水により放熱部材810を効率的に冷却できる。
【0138】
なお、本変形例では、フィン2529は、軸方向に視て、パワーモジュール80の放熱部材810にオーバラップするが、これに加えて又は代えて、軸方向に視てコンデンサモジュール82にオーバラップする同様のフィンが設けられてもよい。また、フィン2529は、冷却水路2528Aの他の箇所に設けられてもよいし、冷却水路2528Aの全体にわたって均一に設けられてもよい。
【0139】
最後に、
図10を参照して、補足的に用語の定義を説明する。本明細書においては、
図10に示すように、Y方向に視て要素Cが要素BよりもF方向F1側に配置されるとは、矢印2900で示す位置関係のように、Y方向に平行な各直線のうち、要素Bに対しF1側に接する直線に対して、要素Cの少なくとも一部がF1側に位置する関係を含む概念である。なお、この場合、Y方向とF方向は直交関係であり、各要素の位置関係は、YF平面に対して垂直な方向に視たときの関係である。
【0140】
また、Y方向で要素Dが要素Bと要素Cの間に配置されるとは、矢印2900で示す位置関係のように、要素DのY方向の延在範囲(Y方向の座標範囲)の少なくとも一部が、要素BのY方向の延在範囲と、要素CのY方向の延在範囲との間にある関係を含む概念である。換言すると、要素Dを通るF方向に平行な少なくとも1本の直線を、Y方向で要素Bと要素Cの間に(要素B及び要素Cのいずれをも通ることなく)、通すことができる関係を含む概念である。
【0141】
また、Y方向に視て要素Eが要素Fにオーバラップするとは、矢印2902で示す位置関係のように、要素Eを通るY方向に平行な各直線のうちの少なくとも1本の直線が要素Fを通る関係を含む概念である。なお、ここで、要素を通る直線とは、当該要素に接する直線は除く概念である。
【0142】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0143】
例えば、上述した実施例では、カバー油路2530は、中空内部314A及び管状部材181(上掛け油路)の双方に連通されるが、いずれか一方の冷却油路にのみ連通されてもよい。この場合、中空内部314A及び管状部材181(上掛け油路)のいずれか他方は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0144】
10・・・車両駆動装置、1・・・回転電機、310・・・ロータ、320・・・ステータ、322・・・ステータコイル(コイル)、250・・・モータケース(収容部材)、252・・・カバー部材、801、802・・・パワー半導体チップ(パワースイッチング素子)、80・・・パワーモジュール、C・・・平滑コンデンサ、2528、2528A・・・冷却水路、25281・・・入口部、2530・・・カバー油路(第1油路)、25301・・・入口部、25302・・・出口部(第1出口部)、25303・・・出口部(第2出口部)、314A・・・中空内部(第2油路)、181 管状部材(第3油路)