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特開2022-128980車両の制御装置、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128980
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】車両の制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20220829BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220829BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027479
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】521080336
【氏名又は名称】ウーブン・アルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】三栗谷 祥
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA02
3D241BA21
3D241BA62
3D241CC01
3D241CC08
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DC26Z
3D241DC33Z
(57)【要約】
【課題】車両の走行に関する機器を適切に作動させることができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両100の制御装置は、車両の自動運転制御において車両に要求される機器の制御要求値が第2基準値以上であるときには第1基準値を制御目標値として設定する制御目標値設定部532、534と、設定された制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して機器制御装置へ出力する要求信号出力部533、535と、を備える。第1基準値は、その値を制御目標値として含む制御要求信号が要求信号出力部から機器制御装置へ送信されたときに機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値である。第2基準値は、その値を制御目標値として含む制御要求信号が要求信号出力部から機器制御装置へ送信されたときに機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に関する機器を制御する機器制御装置へ制御要求信号を出力する、車両の制御装置であって、
前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される前記機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには前記制御要求値を前記機器の制御目標値として設定すると共に、前記制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには前記第1基準値を前記制御目標値として設定する制御目標値設定部と、
設定された前記制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して前記機器制御装置へ出力する要求信号出力部と、を備え、
前記機器制御装置は、所定の条件を満たす前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値に対応する機器制御信号を出力すると共に前記所定の条件を満たさない前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値には対応しない前記機器制御信号を出力するように構成され、
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値であり、
前記第2基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である、車両の制御装置。
【請求項2】
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値のうち最も大きい値である、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記要求信号出力部は、前記車両のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置から前記通信部を介して受信した暫定制御要求信号に含まれる制御目標値を、前記制御目標値設定部によって設定された制御目標値に修正し、修正された前記制御目標値を含む制御要求信号を前記通信部を介して前記機器制御装置へ出力する、請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
車両の走行に関する機器を制御する機器制御装置へ制御要求信号を出力する、車両の制御方法であって、
前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される前記機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには前記制御要求値を前記機器の制御目標値として設定すると共に、前記制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには前記第1基準値を前記制御目標値として設定し、
設定された前記制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して前記機器制御装置へ出力する、ことを含み、
前記機器制御装置は、所定の条件を満たす前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値に対応する機器制御信号を出力すると共に前記所定の条件を満たさない前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値には対応しない前記機器制御信号を出力するように構成され、
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値であり、
前記第2基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である、制御方法。
【請求項5】
車両の走行に関する機器を制御する機器制御装置へ制御要求信号を出力させる、車両のプログラムであって、
前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される前記機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには前記制御要求値を前記機器の制御目標値として設定すると共に、前記制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには前記第1基準値を前記制御目標値として設定し、
設定された前記制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して前記機器制御装置へ出力する、ことをコンピュータに実行させ、
前記機器制御装置は、所定の条件を満たす前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値に対応する機器制御信号を出力すると共に前記所定の条件を満たさない前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値には対応しない前記機器制御信号を出力するように構成され、
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値であり、
前記第2基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドライバによる車両の運転を支援するために又は車両を自律走行させるために、車両の走行状態を所望の制御目標に応じて制御するための制御装置が開発されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-100244号公報
【特許文献2】特開2020-93700号公報
【特許文献3】特開2015-58752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行に関する機器(例えば、ブレーキ、操舵装置)には、この機器を制御する機器制御装置が設けられる。したがって、車両の走行状態を制御する車両の制御装置は、車両の自動運転制御において車両に要求される各機器の制御目標値を含む制御要求信号を、各機器の機器制御装置へ出力する。各機器の機器制御装置は受信した制御要求信号に基づいて各機器への機器制御信号を出力し、各機器はこの機器制御信号に応じて動作する。
【0005】
ところが、機器制御装置は、制御装置から受信した制御要求信号に含まれる制御目標値が所定の許容範囲外の値であるときには、この制御目標値に対応した機器制御信号を出力しない場合がある。また、車両の制御装置を取り替えたり後付けしたりすると、車両の運転状態によっては、車両の制御装置が斯かる許容範囲外の制御目標値を含む制御要求信号を機器制御装置に送信する場合がある。このように、車両の制御装置が斯かる許容範囲外の制御目標値を含む制御要求信号を送信すると、制御要求信号を受信した機器制御装置によって制御される機器は適切に作動しなくなってしまう。
【0006】
そこで、本開示の目的は、車両の走行に関する機器を適切に作動させることができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)車両の走行に関する機器を制御する機器制御装置へ制御要求信号を出力する、車両の制御装置であって、
前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される前記機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには前記制御要求値を前記機器の制御目標値として設定すると共に、前記制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには前記第1基準値を前記制御目標値として設定する制御目標値設定部と、
設定された前記制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して前記機器制御装置へ出力する要求信号出力部と、を備え、
前記機器制御装置は、所定の条件を満たす前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値に対応する機器制御信号を出力すると共に前記所定の条件を満たさない前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値には対応しない前記機器制御信号を出力するように構成され、
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値であり、
前記第2基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である、車両の制御装置。
(2)前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値のうち最も大きい値である、上記(1)に記載の車両の制御装置。
(3)前記要求信号出力部は、前記車両のドライバの運転を支援するための運転支援用制御装置から前記通信部を介して受信した暫定制御要求信号に含まれる制御目標値を、前記制御目標値設定部によって設定された制御目標値に修正し、修正された前記制御目標値を含む制御要求信号を前記通信部を介して前記機器制御装置へ出力する、上記(1)又は(2)に記載の車両の制御装置。
(4)車両の走行に関する機器を制御する機器制御装置へ制御要求信号を出力する、車両の制御方法であって、
前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される前記機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには前記制御要求値を前記機器の制御目標値として設定すると共に、前記制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには前記第1基準値を前記制御目標値として設定し、
設定された前記制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して前記機器制御装置へ出力する、ことを含み、
前記機器制御装置は、所定の条件を満たす前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値に対応する機器制御信号を出力すると共に前記所定の条件を満たさない前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値には対応しない前記機器制御信号を出力するように構成され、
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値であり、
前記第2基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である、制御方法。
(5)車両の走行に関する機器を制御する機器制御装置へ制御要求信号を出力させる、車両のプログラムであって、
前記車両の自動運転制御において前記車両に要求される前記機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには前記制御要求値を前記機器の制御目標値として設定すると共に、前記制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには前記第1基準値を前記制御目標値として設定し、
設定された前記制御目標値を含む制御要求信号を通信部を介して前記機器制御装置へ出力する、ことをコンピュータに実行させ、
前記機器制御装置は、所定の条件を満たす前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値に対応する機器制御信号を出力すると共に前記所定の条件を満たさない前記制御目標値を含む前記制御要求信号を受信すると該制御目標値には対応しない前記機器制御信号を出力するように構成され、
前記第1基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力した値であり、
前記第2基準値は、その値を前記制御目標値として含む前記制御要求信号が前記要求信号出力部から前記機器制御装置へ送信されたときに前記機器制御装置が対応する機器制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値である、プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両の走行に関する機器を適切に作動させることができる車両の制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車載制御システムの概略的な構成図である。
図2図2は、ECUのハードウェア構成図である。
図3図3は、車両制御処理に関するプロセッサの機能ブロック図である。
図4図4は、プロセッサの目標減速度設定部により実行される目標減速度設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5図5は、プロセッサの目標減速度設定部により実行される減速最小制限値及び減速最大許容値の更新処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
<車載制御システムの構成>
まず、図1を参照して、一つの実施形態に係る車両100の制御装置が実装される車載制御システム1の構成について説明する。車載制御システム1は、車両100に搭載されると共に、車両100の走行を制御する。
【0013】
図1は、車載制御システム1の概略的な構成図である。図1に示したように、車載制御システム1は、情報供給機器11~14と、車両のドライバの運転を支援するための制御装置(以下、「運転支援用制御装置」という)20と、車両100の走行に関する機器を制御する機器制御装置の一例であるアクセル制御装置30と、機器制御装置の一例であるブレーキ制御装置40と、車両100の制御装置の一例である電子制御装置(ECU)50とを有する。情報供給機器11~14と、運転支援用制御装置20と、アクセル制御装置30と、機器制御装置の一例であるブレーキ制御装置40と、ECU50とは、互いに通信可能に接続される。本実施形態では、車載制御システム1は、情報供給機器として、車外カメラ11、測距センサ12、測位センサ13及びストレージ装置14を有する。
【0014】
本実施形態では、ECU50は、例えば、運転支援用制御装置20が実装された車両100に対して、運転支援用制御装置20とは別個に、後から車両100に取り付けられる。ECU50は、運転支援用制御装置20を利用して、車両を自動運転制御する。また、情報供給機器11~14は、その一部が、ECU50と共に車両100に後付けされてもよい。
【0015】
このようにECU50を車両100に後付けすることにより、アクセル制御装置30及びブレーキ制御装置40へは、運転支援用制御装置20から出力されていた制御要求信号の代わりに、ECU50から出力された制御要求信号が入力される。ECU50は、運転支援用制御装置20から制御目標値(例えば、目標減速度、目標加減速度、等)を含む制御要求信号(暫定制御要求信号)を受信し、車両100の自動運転制御中には、この制御要求信号に含まれる制御目標値を、車両100の自動運転制御において車両100に要求される制御目標値に修正する。そして、ECU50は、修正された制御目標値を含む制御要求信号を、アクセル制御装置30及びブレーキ制御装置40へ出力する。したがって、アクセル制御装置30及びブレーキ制御装置40は、ECU50から受信した制御要求信号に含まれる制御目標値に基づいて、アクセル及びブレーキを制御する。
【0016】
車外カメラ11は、車両100の周囲を撮影する機器である。車外カメラ11は、車両100の前方を向くように、例えば車両100の車内に取り付けられる。車外カメラ11は、所定の撮影周期ごとに車両100の前方領域を撮影し、且つその前方領域が写った画像を生成する。車外カメラ11は、画像を生成する度に、生成した画像を運転支援用制御装置20及びECU50へ出力する。
【0017】
測距センサ12は、車両100の周囲に存在する物体までの距離を測定するセンサである。測距センサ12は、例えば、ライダー(LiDAR)、ミリ波レーダ等のレーダ又はソナーである。本実施形態では、測距センサ12は、所定の周期ごとに周囲の物体までの距離の測定結果を運転支援用制御装置20及びECU50へ出力する。
【0018】
測位センサ13は、車両100の自己位置を測定するセンサである。測位センサ13は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機である。GPS受信機は、複数のGPS衛星からGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両100の自己位置を測定する。本実施形態では、測位センサ13は、所定の周期ごとに車両100の自己位置の測定結果を運転支援用制御装置20及びECU50へ出力する。
【0019】
ストレージ装置14は、例えば、ハードディスク装置または不揮発性の半導体メモリを有する。ストレージ装置14は、地図情報を記憶する。地図情報は、道路の所定の区間ごとに、その区間の位置、道路標示を表す情報(例えば、車線区画線または停止線)を含む。ストレージ装置14は、運転支援用制御装置20又はECU50からの地図情報の読出し要求に従って地図情報を読み出し、地図情報を運転支援用制御装置20又はECU50へ送信する。
【0020】
なお、車載制御システム1は、例えば、車両100の走行予定ルートを探索するナビゲーション装置や、乗員からの入力を受け付けるHMI装置、車外の機器との通信装置など、上述した機器以外の情報供給機器を有していてもよい。これらナビゲーション装置及びHMI装置も、データを運転支援用制御装置20及びECU50へ出力する。
【0021】
また、本実施形態では、情報供給機器11~14の全てが運転支援用制御装置20及びECU50の両方に接続されている。しかしながら、これら情報供給機器11~14のうちの一部又は全てが運転支援用制御装置20に接続され、これら情報供給機器11~14のうちの別の一部又は全てがECU50に接続されてもよい。
【0022】
運転支援用制御装置20は、所定の状況下で車両100のドライバの運転を支援するための車両100の制御を実行する。本実施形態では、運転支援用制御装置20は、所定の状況下で運転支援のために、少なくとも車両100に要求される減速度及び加減速度を設定する。所定の状況は、例えば、車両100の前方を走行する他の車両と車両100との間の車間距離を一定に保つことが求められる状況であり、運転支援用制御装置20は、アクティブクルーズコントロール用の制御装置である。或いは、所定の状況は、車両100を駐車する状況であり、運転支援用制御装置20は、車両100を自動駐車するための制御装置である。
【0023】
本実施形態では、車両100の車室内に、運転支援処理を動作させるか否かを設定するためのスイッチが設けられ、運転支援用制御装置20はこのスイッチを介して作動するように設定される。或いは、運転支援用制御装置20は、ECU50により、車両100が自動運転制御されている間、作動するように設定される。
【0024】
運転支援用制御装置20は、車両100が自動運転制御されている間、所定の周期ごとに、車両100の目標減速度を含む制動要求信号及び目標加減速度を含む加減速要求信号(これらをまとめて、「制御目標値を含む制御要求信号」という)を出力する。なお、車両100が自動運転制御されている間、運転支援用制御装置20が出力する制動要求信号に含まれる目標減速度及び加減速要求信号に含まれる目標加減速度は、ECU50において修正されるので、これら目標減速度及び目標加減速度は実際には車両100の自動運転制御には利用されない。
【0025】
アクセル制御装置30は、ECU50から受信した加減速要求信号に従って、車両100の加減速度が加減速要求信号に含まれる目標加減速度に近づくように車両100のアクセルへアクセル制御信号を出力する。本実施形態では、車両100がECU50により自動運転制御されている間、アクセル制御装置30は、ECU50から受信した加減速要求信号に従って車両100のアクセルを制御する。
【0026】
例えば、アクセル制御装置30は、目標加減速度とアクセル開度との対応関係を表す参照テーブルを記憶し、その参照テーブルを参照することで、目標加減速度に応じたアクセル開度を決定する。そして、アクセル制御装置30は、決定したアクセル開度となるように、アクセルを制御する。このようにして制御されたアクセル開度に応じて、車両100の内燃機関の燃料噴射量或いは吸入空気量、又は車両100の駆動用モータへの電力供給量が制御される。
【0027】
また、アクセル制御装置30は、所定の条件を満たす目標加減速度を含む加減速要求信号を受信しているときには、この目標加減速度に対応するアクセル制御信号(機器制御信号)をアクセルへ出力する。アクセル制御装置30は、アクセル制御信号をECU50へも出力してもよい。一方、アクセル制御装置30は、所定の条件を満たさない目標加減速度を含む加減速要求信号を受信しているときには、この目標加減速度に対応するアクセル制御信号をアクセルへ出力しない。具体的には、アクセル制御装置30は、運転支援用制御装置20が出力しうる上限値以下の目標加減速度を含む加減速要求信号を受信しているときには、対応するアクセル制御信号をアクセルへ出力する。一方、アクセル制御装置30は、上限値よりも大きい目標加減速度を含む加減速要求信号を受信しているときには、対応するアクセル制御信号をアクセルへ出力せずに、フェール信号をECU50へ出力する。
【0028】
ブレーキ制御装置40は、ECU50から受信した制動要求信号に従って、車両100の減速度が制動要求信号に含まれる目標減速度に近づくように車両100のブレーキへブレーキ制御信号を出力する。ブレーキ制御装置40は、ブレーキ制御信号をECU50へも出力してもよい。本実施形態では、車両100がECU50により自動運転制御されている間、ブレーキ制御装置40は、ECU50から受信した制動要求信号に従って車両100のブレーキを制御する。
【0029】
例えば、ブレーキ制御装置40は、目標減速度と制動力との対応関係を表す参照テーブルを記憶し、その参照テーブルを参照することで、目標減速度に応じた制動力を決定する。そして、ブレーキ制御装置40は、決定した制動力となるように、ブレーキを制御する。
【0030】
また、ブレーキ制御装置40は、所定の条件を満たす目標減速度を含む制動要求信号を受信しているときには、この目標減速度に対応するブレーキ制御信号(機器制御信号)をブレーキへ出力する。一方、ブレーキ制御装置40は、所定の条件を満たさない目標減速度を含む制動要求信号を受信しているときには、この目標減速度に対応するブレーキ制御信号をブレーキへ出力しない。具体的には、ブレーキ制御装置40は、運転支援用制御装置20が出力しうる上限値以下の目標減速度を含む制動要求信号を受信しているときには、対応するブレーキ制御信号をブレーキへ出力する。一方、ブレーキ制御装置40は、上限値よりも大きい目標減速度を含む制動要求信号を受信しているときには、対応するブレーキ制御信号をブレーキへ出力せずに、フェール信号をECU50へ出力する。
【0031】
図2は、ECU50のハードウェア構成図である。ECU50は、運転支援用制御装置20を利用して、車両100を自動運転制御する。そのために、ECU50は、通信インターフェース51と、メモリ52と、プロセッサ53とを有する。なお、通信インターフェース51、メモリ52及びプロセッサ53は、別個の回路であってもよく、又は一つの集積回路として構成されてもよい。
【0032】
通信インターフェース51は、通信部の一例であり、ECU50を、運転支援用制御装置20、アクセル制御装置30及びブレーキ制御装置40に接続するためのインターフェース回路を有する。通信インターフェース51は、運転支援用制御装置20から加減速要求信号及び制動要求信号を受信する度に、受信した加減速要求信号及び制動要求信号をプロセッサ53へ送る。また、通信インターフェース51は、アクセル制御装置30及びブレーキ制御装置40から出力されたフェール信号を受信するごとに、受信したフェール信号をプロセッサ53へ送る。加えて、通信インターフェース51は、加減速要求信号をアクセル制御装置30へ出力すると共に、制動要求信号をブレーキ制御装置40へ出力する。
【0033】
さらに、通信インターフェース51は、車外カメラ11から受信した車両100の周囲を撮影した画像、測距センサ12から受信した測距信号、測位センサ13から受信した測位信号、ストレージ装置14から読み込んだ地図情報、又はナビゲーション装置から受信した走行予定ルートなどをプロセッサ53へ送る。
【0034】
メモリ52は、データを記憶する記憶装置である。メモリ52は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ52は、ECU50のプロセッサ53により実行される車両制御処理のプログラムを記憶する。また、メモリ52は、車外カメラ11によって撮影された画像、ドライバによる操作情報、車両周囲の物体までの距離の測定結果、自己位置の測定結果、乗員の入力情報、及び車両制御処理において使用される各種のデータ等を記憶する。
【0035】
プロセッサ53は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ53は、論理演算ユニットまたは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0036】
<車両制御処理>
ECU50のプロセッサ53は、車両100が自動運転制御されている間、車両制御処理を実行する。以下では、プロセッサ53によって行われる車両制御処理について説明する。
【0037】
図3は、車両制御処理に関するプロセッサ53の機能ブロック図である。プロセッサ53は、運転計画部531と、目標減速度設定部532と、制動要求信号出力部533と、目標加減速度設定部534と、加減速要求信号出力部535とを有する。プロセッサ53が有するこれら各部は、例えば、プロセッサ53上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。また、プロセッサ53が有するこれら各部は、専用の演算回路としてプロセッサ53に実装されてもよい。
【0038】
運転計画部531は、車両100が自動運転制御されている間、車両100の現在位置から所定距離(例えば、500m~1km)先までの所定区間において車両100が走行する予定の軌跡(以下、単に「走行予定軌跡」という)を設定する。そして、運転計画部531は、その走行予定軌跡に沿って車両100が走行するための要求減速度及び要求加減速度(制御要求値)を算出する。走行予定軌跡は、例えば、所定区間を車両100が走行する際の各時刻における車両100の位置の集合として表される。
【0039】
運転計画部531は、例えば、走行予定ルートに沿うように走行予定軌跡を設定する。例えば、運転計画部531は、直近の所定区間において走行予定ルート上で右折する地点及び左折する地点が無ければ車両100が現在走行中の車線に沿って走行するよう、走行予定軌跡を設定する。一方、直近の所定区間において走行予定ルート上で右折する地点または左折する地点がある場合、運転計画部531は、その地点において車両100が右折または左折できるように走行予定軌跡を設定する。その際、車両100が右折または左折するために、車両100が走行中の車線と異なる目標車線へ移動する必要がある場合には、運転計画部531は、車両100が目標車線へ車線変更するよう、走行予定軌跡を設定する。なお、運転計画部531は、例えば、車両100に設けられたカメラにより得られた車両100の周囲の画像に表された地物と、地図情報に表された車両100の周囲の地物とを照合することで、車両100が現在走行中の車線、及び、車両100の現在位置を特定する。
【0040】
さらに、運転計画部531は、車両100がその周囲に存在する物体(例えば、他の車両)と衝突しないように走行予定軌跡を設定する。そのために、運転計画部531は、車両100に搭載された車外カメラ11から直近の所定期間における時系列の一連の画像を取得する。そして、運転計画部531は、車両100の周囲の物体を検出するように予め学習された識別器に、取得した一連の画像のそれぞれを入力することで、各画像から車両100の周囲に存在する1以上の物体を検出する。或いは、運転計画部531は、測距センサ12から直近の所定期間における時系列の一連の測距信号を取得する。そして、運転計画部531は、車両100の周囲の物体を検出するように予め学習された識別器に、取得した一連の測距信号を入力することで、各測距信号から車両100の周囲に存在する1以上の物体を検出する。
【0041】
運転計画部531は、そのような識別器として、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つ、いわゆるディープニューラルネットワーク(DNN)を使用する。このような識別器は、検出対象となる物体が表された画像あるいは測距信号を多数用いて、誤差逆伝搬法といった学習手法に従って予め学習される。
【0042】
運転計画部531は、各画像あるいは各測距信号から検出された個々の物体に対して所定の追跡処理を実行することで各物体を追跡して直近の所定期間における各物体の軌跡を求め、求めた軌跡に対して所定の予測処理を適用することで、物体ごとに、その物体が通ると想定される予測軌跡を推定する。そして運転計画部531は、追跡中の各物体の予測軌跡に基づいて、何れの物体についても所定時間先までの追跡中の物体のそれぞれと車両100との間の距離の予測値が所定距離以上となるように、車両100の走行予定軌跡を設定する。
【0043】
さらに、運転計画部531は、車外カメラ11により得られた画像から、車両100の進行方向に位置する信号機の点灯状態を検出する。その際、運転計画部531は、例えば、上述したように、画像を識別器に入力することで、信号機の点灯状態を検出する。そして検出した信号機の点灯状態が赤信号である場合、運転計画部531は、車両100を減速させ、その信号機が設けられた交差点の停止位置にて車両100が一時停止するように走行予定軌跡を設定する。一方、運転計画部531は、車両100が交差点にて赤信号により一時停止している場合において、信号機の点灯状態が赤信号から青信号に変わったことを検知すると、車両100が発進して徐々に加速するように走行予定軌跡を設定する。
【0044】
運転計画部531は、走行予定軌跡を設定すると、車両100がその走行予定軌跡に沿って走行するように要求減速度及び要求加減速度を求める。すなわち、この要求減速度及び要求加減速度は、車両100が自動運転制御されている場合において車両100に要求される値となる。
【0045】
例えば、運転計画部531は、所定の周期ごとに、走行予定軌跡、車両100の現在位置、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両100の現在の車速に従って、車両100の要求減速度及び要求加減速度を算出する。特に、自動運転制御上の要求から車両100を減速させる場合、運転計画部531は、要求加減速度を、減速を表す値にするとともに、要求加減速度に応じて要求減速度も算出する。
【0046】
例えば、運転計画部531は、車両100の減速時には、アクセル制御装置30により調整可能な制動力(例えば、エンジンブレーキによる制動力)とブレーキによる制動力とが合成されて、走行予定軌跡に沿って車両100が走行するための減速度を達成するように、要求減速度及び要求加減速度を算出する。特に、運転計画部531は、アクセル制御装置30により調整可能な制動力の上限値以下となるように要求加減速度を設定し、設定された要求加減速度と要求減速度の合計が、走行予定軌跡に沿って車両100が走行するための減速度となるように、要求減速度を設定する。
【0047】
運転計画部531は、要求減速度及び要求制動力を算出する度に、算出した要求減速度を目標減速度設定部532へ送ると共に、算出した要求加減速度を目標加減速度設定部534へ送る。
【0048】
目標減速度設定部532は、車両100が自動運転制御されている間、ブレーキ制御装置40へ送信される制動要求信号に含まれるべき目標減速度を設定する。
【0049】
ところで、上述したように、ブレーキ制御装置40は、上限値よりも大きい目標減速度(制御目標値)を含む制動要求信号(制御要求信号)を受信しているときには、対応するブレーキ制御信号をブレーキへ出力せず、特に本実施形態ではフェール信号をECU50へ出力する。この結果、車両100の大きな減速が必要な場合に、車両100が十分に減速しないか又は全く減速しなくなってしまう。そこで、目標減速度設定部532は、ブレーキ制御装置40がフェール信号を出力するような大きな要求減速度が運転計画部531から送られてきたときには、目標減速度を、ブレーキ制御装置40がこの目標減速度に対応するブレーキ制御信号を出力するような値(フェール信号を出力しないような値)に設定する。
【0050】
図4は、プロセッサ53の目標減速度設定部532により実行される目標減速度設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、車両100が自動運転制御されている間、所定の周期ごとに、プロセッサ53の目標減速度設定部532により実行される。
【0051】
目標減速度設定部532は、まず、運転計画部531から受信した要求減速度を取得する(ステップS11)。次いで、目標減速度設定部532は、取得した要求減速度が減速最小制限値(第2基準値)以上であるか否かを判定する(ステップS12)。ここで、減速最小制限値は、過去にブレーキ制御装置40へ送信された制動要求信号に含まれていた目標減速度のうち、その制動要求信号が送信されてもブレーキ制御装置40が対応するブレーキ制御信号を出力しなかった(フェール信号を出力した)目標減速度の中で最も小さい値である。したがって、減速最小制限値を目標減速度として含む制動要求信号が制動要求信号出力部533からブレーキ制御装置40へ出力されると、ブレーキ制御装置40は対応するブレーキ制御信号を出力せずにフェール信号を出力する。
【0052】
ステップS12において要求減速度が減速最小制限値未満であると判定されると、目標減速度設定部532は目標減速度を,運転計画部531から受信した要求減速度に設定する(ステップS13)。一方、ステップS12において要求減速度が減速最小制限値以上であると判定されると、すなわち要求減速度が過去にブレーキ制御装置40からフェール信号が出力されるような値であると判定されると、目標減速度設定部532は目標減速度を要求減速度よりも小さい減速最大許容値(第2基準値)に設定する(ステップS14)。
【0053】
ここで、減速最大許容値は、過去にブレーキ制御装置40へ送信された制動要求信号に含まれていた目標減速度のうち、その制動要求信号が送信されるとブレーキ制御装置40が対応するブレーキ制御信号を出力した目標減速度の中で最も大きい値である。したがって、減速最大許容値を目標減速度として含む制動要求信号が制動要求信号出力部533からブレーキ制御装置40へ出力されると、ブレーキ制御装置40は対応するブレーキ制御信号を出力する。なお、本実施形態では、目標減速度設定部532はステップS14において目標減速度を減速最大許容値に設定しているが、過去にブレーキ制御装置40へ送信された制動要求信号に含まれていた目標減速度のうち、その制動要求信号が送信されるとブレーキ制御装置40が対応するブレーキ制御信号を出力した目標減速度であれば、目標減速度を減速最大許容値以外の値に設定してもよい。
【0054】
ステップS13又はステップS14において目標減速度が設定されると、目標減速度設定部532は、設定された目標減速度を制動要求信号出力部533へ送る(ステップS15)。
【0055】
以上より、目標減速度設定部532は、車両100の自動運転制御において車両100に要求されるブレーキへの要求減速度(制御要求値)が減速最小制限値(第2基準値)よりも小さいときには目標減速度(制御目標値)をこの要求減速度に設定すると共に、車両100の自動運転制御において車両100に要求される要求減速度が減速最小制限値(第2基準値)以上であるときには、目標減速度を、減速最小制限値よりも小さい減速最大許容値(第1基準値)に設定する。
【0056】
また、目標減速度設定部532は、このようにして設定された目標減速度を含む制動要求信号が制動要求信号出力部533からブレーキ制御装置40へ送信されたときのブレーキ制御装置40からの出力に基づいて、減速最小制限値又は減速最大許容値を更新する。図5は、プロセッサ53の目標減速度設定部532により実行される減速最小制限値及び減速最大許容値の更新処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、車両100が自動運転制御されている間、所定の周期ごとに、プロセッサ53の目標減速度設定部532により実行される。
【0057】
目標減速度設定部532は、まず、ブレーキ制御装置40から出力された制御信号が、ブレーキ制御装置40へ送信された制動要求信号に含まれた目標減速度に対応しているか否かを判定する(ステップS21)。本実施形態では、ブレーキ制御装置40は、上限値未満の目標減速度を含む制動要求信号を受信しているときには、対応するブレーキ制御信号をブレーキへ出力し、よって目標減速度設定部532はブレーキ制御装置40から制御信号を受信しない。したがって、本実施形態では、目標減速度設定部532は、ブレーキ制御装置40から制御信号を受信していないときには、ブレーキ制御装置40から出力された制御信号は目標減速度に対応していたと判断する。一方、本実施形態では、ブレーキ制御装置40は、上限値以上の目標減速度を含む減速度要求信号を受信しているときには、フェール信号をECU53に、特にECU53の目標減速度設定部532に送信する。したがって、本実施形態では、目標減速度設定部532は、ブレーキ制御装置40からフェール信号を受信しているときには、ブレーキ制御装置40から出力された制御信号は目標減速度に対応していないと判断する。なお、ブレーキ制御装置40から、ブレーキ制御信号がECU50へも出力されているときには、目標減速度設定部532は受信したブレーキ制御信号が目標減速度に対応しているかを直接判断してもよい。
【0058】
ステップS21においてブレーキ制御装置40から出力された制御信号が目標減速度に対応していないと判定された場合には、目標減速度設定部532は、減速最小制限値を今回の制動要求信号に含まれていた目標減速度に設定する(ステップS22)。これにより、減速最小制限値が、ブレーキ制御装置40からフェール信号が出力される、より小さい値に更新されることになる。したがって、減速最小制限値は、過去にその値を目標減速度として含む制動要求信号が制動要求信号出力部533からブレーキ制御装置40へ送信されたときにブレーキ制御装置40が対応するブレーキ制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値であるといえる。
【0059】
一方、ステップS21においてブレーキ制御装置40から出力された制御信号が目標減速度に対応していると判定された場合には、目標減速度設定部532は、今回の制動要求信号に含まれていた目標減速度が減速最大許容値よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。
【0060】
ステップS23において目標減速度が減速最大許容値以下であると判定された場合には、目標減速度設定部532は減速最小制限値及び減速最大許容値の更新を行わない。一方、ステップS23において目標減速度が減速最大許容値よりも大きいと判定された場合には、目標減速度設定部532は、減速最大許容値を今回の制動要求信号に含まれていた制動目標値に設定する(ステップS24)。これにより、減速最大許容値が、ブレーキ制御装置40からフェール信号が出力されない、より大きい値に更新されることになる。したがって、減速最大許容値は、過去にその値を目標減速度として含む制動要求信号が制動要求信号出力部533からブレーキ制御装置40へ送信されたときにブレーキ制御装置40が対応するブレーキ制御信号を出力した値のうち最も大きい値であるといえる。
【0061】
制動要求信号出力部533は、通信インターフェース51を介して運転支援用制御装置20から制動要求信号を受信する。また、制動要求信号出力部533には、目標減速度設定部532から目標減速度が送られる。
【0062】
制動要求信号出力部533は、車両100が自動運転制御されている間、運転支援用制御装置20から受信した制動要求信号に含まれる目標減速度を、目標減速度設定部532により設定された目標減速度に修正する。そして、制動要求信号出力部533は、修正した制動要求信号を、通信インターフェース51を介してブレーキ制御装置40へ出力する。一方、制動要求信号出力部533は、車両100が自動運転制御されていないときには、運転支援用制御装置20から受信した制動要求信号をそのままブレーキ制御装置40へ出力する。
【0063】
目標加減速度設定部534は、目標減速度設定部532と同様に、車両100が自動運転制御されている間、アクセル制御装置30へ送信される加減速要求信号に含まれるべき目標加減速度を設定する。
【0064】
目標加減速度設定部534は、目標減速度設定部532と同様に、アクセル制御装置30がフェール信号を出すような大きな要求加速度が運転計画部531から送られてきたときには、目標加減速度を、アクセル制御装置30がこの目標加減速度に対応するアクセル制御信号を出力するような値(フェール信号を出力しないような値)に設定する。
【0065】
具体的には、目標加減速度設定部534は、目標減速度設定部532と同様に、車両100の自動運転制御において車両100に要求されるアクセルへの要求加減速度(制御要求値)が加減速最小制限値(第2基準値)よりも小さいときには目標加減速度(制御目標値)をこの要求加減速度に設定すると共に、車両100の自動運転制御において車両100に要求される要求加減速度が加減速最小制限値(第2基準値)以上であるときには、目標加減速度を、加減速最小制限値よりも小さい加減速最大許容値(第1基準値)に設定する。
【0066】
また、目標加減速度設定部534は、目標減速度設定部532と同様に、このようにして設定された目標加減速度を含む加減速要求信号が加減速要求信号出力部535からアクセル制御装置30へ送信されたときのアクセル制御装置30からの出力に基づいて、加減速最小制限値又は加減速最大許容値を更新する。
【0067】
この結果、加減速最小制限値は、過去にその値を目標加減速度として含む加減速要求信号が加減速要求信号出力部535からアクセル制御装置30へ送信されたときにアクセル制御装置30が対応するアクセル制御信号を出力しなかった値のうち最も小さい値とされる。また、加減速最大許容値は、過去にその値を目標加減速度として含む加減速要求信号が加減速要求信号出力部535からアクセル制御装置30へ送信されたときにアクセル制御装置30が対応するアクセル制御信号を出力した値のうち最も大きい値とされる。
【0068】
加減速要求信号出力部535は、通信インターフェース51を介して運転支援用制御装置20から加減速要求信号を受信する。また、加減速要求信号出力部535には、目標加減速度設定部534から目標加減速度が送られる。
【0069】
加減速要求信号出力部535は、車両100が自動運転制御されている間、運転支援用制御装置20から受信した加減速要求信号に含まれる目標加減速度を、目標加減速度設定部534により設定された目標加減速度に修正する。そして、加減速要求信号出力部535は、修正した加減速要求信号を、通信インターフェース51を介してアクセル制御装置30へ出力する。一方、加減速要求信号出力部535は、車両100が自動運転制御されていないときには、運転支援用制御装置20から受信した加減速要求信号をそのままアクセル制御装置30へ出力する。
【0070】
<効果・変形例>
以上説明したように、本実施形態に係る車両の制御装置は、車両の自動運転制御において車両に要求される機器の制御要求値が第1基準値以下であるときには制御要求値を機器の制御目標値として設定すると共に、制御要求値が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには第1基準値を制御目標値として設定する。このため、機器制御装置には、所定の条件を満たさない制御目標値を含む制御要求信号が入力されにくくなり、よって機器制御装置によって制御される機器が適切に作動しなくなることが抑制され、斯かる機器を適切に作動させることができるようになる。
【0071】
なお、上記実施形態では、制御目標値設定部は、車両100の自動運転制御において車両100に要求される制御要求値が第2基準値よりも小さいときには制御目標値をこの要求減速度に設定すると共に、制御要求値が第2基準値以上であるときには、目標減速度を第1基準値に設定している。しかしながら、制御目標値設定部は、車両100の自動運転制御において車両100に要求される制御要求値が第1基準値以下であるときには制御目標値をこの要求減速度に設定すると共に、制御要求値が第2基準値よりも大きいときには、目標減速度を第1基準値に設定してもよい。したがって、制御目標値設定部は、車両100の自動運転制御において車両100に要求される制御要求値が第1基準値以下であるときには制御目標値をこの要求減速度に設定すると共に、制御要求値が第1基準値よりも大きい第2基準値以上であるときには、目標減速度を第1基準値に設定しているといる。
【0072】
また、上記実施形態では、運転支援用制御装置20が制動要求信号及び加減速要求信号を生成している。しかしながら、運転支援用制御装置20が加減速要求信号を生成してアクセル制御装置30へ送信し、アクセル制御装置30が加減速要求信号に基づいて制動要求信号を生成してブレーキ制御装置へ送信してもよい。この場合、アクセル制御装置30は、運転支援用制御装置20又はECU50から受信した加減速要求信号に基づいてアクセルの制御を行い、ブレーキ制御装置40は、アクセル制御装置30又はECU50から受信した制動要求信号に基づいてブレーキの制御をおこなう。
【0073】
さらに、上記実施形態では、機器制御装置がアクセル制御装置30及びブレーキ制御装置40である例を示したが、機器制御装置は車両の走行に関する他の機器、例えば操舵制御装置であってもよい。この場合、操舵制御装置は、運転支援用制御装置20が出力しうる上限値以下の操舵角度変更速度を含む操舵要求信号を受信しているときには、対応する操舵制御信号を操舵機器に出力せずに、フェール信号をECU50へ出力する。そして、運転支援用制御装置20は、目標操舵角度変更速度を含む操舵要求信号を出力する。さらに、ECU50の運転計画部531は、車両100が走行予定軌跡に沿って走行するように車両100のステアリングの目標操舵角変更速度を算出する。そして、ECU50の目標操舵角変更速度設定部(制御目標値設定部)及び操舵要求信号出力部(要求信号出力部)は、運転支援用制御装置20から入力された操舵要求信号及び運転計画部531から送られた目標操舵角変更速度に基づいて、操舵要求信号を操舵制御装置に出力する。
【0074】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 車載制御システム
20 運転支援用制御装置
30 アクセル制御装置
40 ブレーキ制御装置
50 電子制御装置
51 通信インターフェース
52 メモリ
53 プロセッサ
531 運転計画部
532 目標減速度設定部
533 制動要求信号出力部
534 目標加減速度設定部
535 加減速要求信号出力部
図1
図2
図3
図4
図5