(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128981
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】什器及びシステム什器
(51)【国際特許分類】
A47B 83/02 20060101AFI20220829BHJP
A47B 83/04 20060101ALI20220829BHJP
A47B 81/00 20060101ALI20220829BHJP
A47B 96/04 20060101ALI20220829BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A47B83/02
A47B83/04
A47B81/00 C
A47B96/04 B
A47C7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027480
(22)【出願日】2021-02-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】岩松 里紗
(72)【発明者】
【氏名】槌田 美紀
(72)【発明者】
【氏名】太田 美樹
【テーマコード(参考)】
3B260
【Fターム(参考)】
3B260AB01
3B260AB04
3B260AB06
3B260AB07
3B260AC01
3B260AC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワーキングスタイルの変化に対応した多機能什器を提供する。
【解決手段】什器1~3は、左右の側枠4とその間に位置した基板6とを有しており、基板6の一方の面は座位空間7を形成し、他方の面は立位空間17を形成している。第1什器1では、座位空間7には固定式の椅子が配置され、立位空間17にはクッション製の寄りかかり部18が設けられている。第2什器2では、立位空間17にはホワイトボード等の筆記部19が配置されている。第3什器3では、座位空間7において移動式椅子とセットで使用される天板23が配置され、立位空間17には筆記部19が配置されている。立ち作業と座り作業とを1つ什器で実現できるため、利用者は多彩な作業を行える。什器1~3は重厚な間仕切としても機能するため、適度のクローズド性があって落ち着いて作業できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設置され、間仕切として機能するように上下方向と水平方向とに広がる表裏一対の広幅面を有し、
前記表裏の広幅面のうち一方の広幅面側において利用者が腰掛けて使用できる座位空間を形成し、前記表裏の広幅面のうち他方の広幅面において利用者が立って使用できる立位空間を形成し、
前記立位空間において、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に凭れられる寄りかかり部、および、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に筆記される筆記部、の少なくとも一つを有する、
什器。
【請求項2】
設置面に設置され、間仕切として機能するように上下方向と水平方向とに広がる表裏一対の広幅面を有し、
前記表裏の広幅面のうち少なくとも片方に、利用者が腰掛けて使用できる座位空間と、人が立って使用できる立位空間とを、水平方向に並べて形成し、
前記立位空間において、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に凭れられる寄りかかり部、および、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に筆記される筆記部、の少なくとも一つを有する、
什器。
【請求項3】
前記座位空間において、前記広幅面から突出するように設けられた座体を有し、利用者は前記座体に腰掛けて作業を行うことが許容されている、
請求項1又は2に記載した什器。
【請求項4】
前記座位空間において、前記広幅面は利用者の背凭れとして機能する、
請求項3に記載した什器。
【請求項5】
前記座位空間において、利用者が腰掛けて使用できる天板を有する、
請求項1から4のうちのいずれかに記載した什器。
【請求項6】
前記座位空間は、前記広幅面と正対した方向から見て少なくとも左右両側に配置された枠板で囲われている、
請求項1~5のうちのいずれかに記載した什器。
【請求項7】
前記立位空間に、クッション性のある素材で構成された前記寄りかかり部が形成されている、
請求項1~6のうちのいずれかに記載した什器。
【請求項8】
前記表裏の広幅面を構成する本体板と、前記広幅面と直交した方向から見て前記本体板の左右両端面に固定された側板と、を有しており、
前記側板は、下に向かって間隔が広がっている、
請求項1~7のうちのいずれかに記載した什器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載した什器を複数台有し、
前記什器の群は、前記広幅面同士が対向するように並べて配置される、
システム什器。
【請求項10】
前記什器の群において、隣り合った什器は、一方の什器の前記座位空間と他方の什器の前記立位空間とが対向するように並べて配置される、
請求項9に記載のシステム什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主としてオフィスで使用される什器及びその複数個から成るシステム什器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスでは、デスク(机、テーブル)や椅子、間仕切などの様々な什器(家具)が使用されている。これらの什器は基本的には1つの機能しか備えていないが、1つの什器に複数の機能を持たせることも行われている。その典型として、間仕切に天板を取付けてデスクとしての機能を持たせたり、棚板を取り付けて棚としての機能を持たせたりすることが挙げられる。
【0003】
他方、複数の家具を組み合わせたシステム家具も提案されており、その例として特許文献1には、多数人が使用できる半円型ソファー状の椅子の後ろに、人が立って作業できるカンウターを併設した椅子システムが開示されている。この椅子システムでは、椅子に腰掛けた人とカウンターを使用する人は壁等に掛けたスクリーンを向いており、カウンターの使用者がノートパソコンを操作しながら、画像の操作や説明などを行える。
【0004】
特許文献1は特定の用途のためのシステムであるが、ワーカーの作業能率や環境の面に配慮した多機能什器も提案されている。その例として特許文献1には、フレーム構造体に、ぶら下がり機能や寄り掛かり機能などのエクササイズ装置と、モニターや筆記板などの作業ツールとを併設した複合什器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-77620号公報
【特許文献2】特開2019-178606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、近年、オフィスでのワーキングスタイルが大きく変貌しつつある。例えば、特定の席を持たずに、好きな席について仕事をするフリーアドレス方式(ノンテリトアル方式)や、1人用に独立した席で執務するスタイル、或いは、複数人が使用できる席が固まっているグループワーキングスタイルなどである。
【0007】
これらのワーキングスタイルの変化の背景の一つとして、作業ツールとしてのノートパソコンやタブレット端末などの情報機器の小型化がある。つまり、これらノートパソコンやタブレット端末は持ち運び自在であるため、特定の席で執務する必要性が無くなり、その結果、フリーアドレス方式が大きく進展している。
【0008】
他の背景として、ワーカーの創作能力を引き出すための環境作りが進んだことが挙げられる。すなわち、ワーカーの創作能力を高めて知的生産性を上げるには、思索に集中できる環境やリラックスできる環境、或いは、同僚等と討議等して知的刺激を受けることが容易な環境が必要であり、そこで、席の独立化やグループ化が進展している。従って、作業目的に応じて環境を選択できると好適である。
【0009】
そこで、例えば複数人で打合せや討議を行うケースを例に採って具体的に見ていくと、従来は、独立したテーブルと移動式ホワイトボードを併用し、テーブルに置いたノートパソコンを見ながら適宜ホワイトボードを使用して話し進めたり、独立したモニター(或いはスクリーン)を見ながら話しを進めたりしている。
【0010】
ここで1つの問題として、移動式ホワイトボードやモニターを使用した方式では、環境がオープン過ぎて落ち着き感が劣る点が挙げられる。従って、ある程度のクローズド性を有してディスカッションできる環境を形成できる什器があると好ましい。
【0011】
また、フリーアドレスの普及やグループワーキングの増加などのワーキングスタイルの多様化を背景に、一人で作業・執務を行う場合に一時的に腰掛けて作業を行いたいという要望や、逆にじっくりと腰を落ち着けて作業したいという要望、或いは、グループワーキングを行うに当たって筆記板やモニターなどを有効活用して効率よく討議したいといった要望などが想定される。
【0012】
本願発明はこのような状況を背景に成されたものであり、多様化したワーキングスタイルに即応できる什器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の什器は多彩な様相を呈しており、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は什器に関するもので、
「設置面に設置され、間仕切として機能するように上下方向と水平方向とに広がる表裏一対の広幅面を有し、
前記表裏の広幅面のうち一方の広幅面側において利用者が腰掛けて使用できる座位空間を形成し、前記表裏の広幅面のうち他方の広幅面側において利用者が立って使用できる立位空間を形成し、
前記立位空間において、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に凭れられる寄りかかり部、および、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に筆記される筆記部、の少なくとも一つを有する」
という構成になっている。
【0014】
請求項2の発明も什器に関するもので、
「設置面に設置され、間仕切として機能するように上下方向と水平方向とに広がる表裏一対の広幅面を有し、
前記表裏の広幅面のうち少なくとも片方に、利用者が腰掛けて使用できる座位空間と、人が立って使用できる立位空間とを、水平方向に並べて形成し、
前記立位空間において、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に凭れられる寄りかかり部、および、前記他方の広幅面に沿って広がるように設けられ利用者に筆記される筆記部、の少なくとも一つを有する」
という構成になっている。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記座位空間において、前記広幅面から突出するように設けられた座体を有し、利用者は前記座体に腰掛けて作業を行うことが許容されている」
という構成になっている。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3において、
「前記座位空間において、前記広幅面は利用者の背凭れとして機能する」
という構成になっている。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1~4のうちのいずれかにおいて、
「前記座位空間において、利用者が腰掛けて使用できる天板を有する」
という構成になっている。なお、請求項2,3と請求項4とは対立するものではない。1つの什器に座体と天板とのを併設してもよい。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1~5のうちのいずれかにおいて、
「前記座位空間は、前記広幅面と正対した方向から見て少なくとも左右両側に配置された枠板で囲われている」
請求項1~5のうちのいずれかに記載した什器。
という構成になっている。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1~6のうちのいずれかにおいて、
「前記立位空間に、クッション性のある素材で構成された前記寄りかかり部が形成されている」
という構成になっている。
【0020】
請求項8の発明は、請求項1~7のうちのいずれかにおいて、
「前記表裏の広幅面を構成する本体板と、前記広幅面と直交した方向から見て前記本体板の左右両端面に固定された側板と、を有しており、
前記側板は、下に向かって間隔が広がっている」
請求項1~7のうちのいずれかに記載した什器。
という構成になっている。
【0021】
請求項9の発明はシステム什器に関するもので、
「請求項1から8のいずれかに記載した什器を複数台有し、
前記什器の群は、前記広幅面同士が対向するように並べて配置される」
という構成になっている。
【0022】
請求項10の発明は請求項9を具体化したもので、
「前記什器の群において、隣り合った什器は、一方の什器の前記座位空間と他方の什器の前記立位空間とが対向するように並べて配置される」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1,2の発明では、什器は間仕切として機能しており、作業環境は適度のクローズド性を有しているため、落ち着いて作業できる。その結果、作業能率の向上に貢献できる。そして、什器を利用して別々の人が座り作業と立ち作業とを同時に行えるため、異なる人の異なる要望に応えつつ、空間を有効利用できる。従って、非常に便利である。
【0024】
立位空間(立位作業部)において寄りかかり部を設けると、利用者は立った状態で什器に凭れ掛かってタブレットなどで作業できるため、人を待っている間の準備を行ったり、リラックスした状態で打合せしたりするのに重宝である。また、基本的に自席で椅子に腰掛けて作業をしている場合、立ち上がることがリフレッシュになることがあるが、寄りかかり部を利用してタブレットなどで作業を行いつつ立ってリフレッシュできる利点もある。
【0025】
他方、立位空間の備品として筆記部を設けると、打合せやディスカッションする場合に好適である。立位空間の備品としてモニターを配置した場合も同様である。立位空間には、寄り掛かり部や筆記部に加えて、物品を載置できるテーブル板も配置可能である。テーブル板を設けると、資料や携帯端末類、飲み物等を載せ得るため何かと便利である。
【0026】
そして、請求項1の発明では、座位空間と立位空間とは表裏に分離しているため、什器をできるだけ幅狭に形成することも可能であり、従って、狭い空間でも有効利用できる。また、座位空間の使用者と立位空間の使用者とは互いに見えないため、互いに気兼ねすることなく作業・執務を行える利点もある。
【0027】
他方、請求項2の発明では、座位空間(座位作業部)と立位作業空間とは什器の片面で左右に並んでいるため、片面しか使用できない場所でも有効利用できる。もとより、両面に座位空間と立位空間とを形成したり、他方の面に座位空間と立位空間とのうちいずれか一方を形成したりすることも可能である。或いは、他方の面を棚(収納部・展示部)として利用することもできる。
【0028】
請求項3の発明では、利用者は座体に気軽に腰掛けて、休息を採ったり、打合せ時間の調整をしたり、タブレットやスマートフォン、ノートパソコンなどを使用して作業を行ったりすることができる。従って、フリーアドレス方式のオフィスのように、ワーカーに自席がない場合に特に重宝である。
【0029】
請求項4では、什器の広幅面に凭れかかることができるため、ユーザーフレンドリーである。この場合、什器の広幅面にクンション体を配置すると、利用者の身体への当たりが柔らかくなるため、特に好ましい。
【0030】
請求項5の発明では、天板を机として使用できるため、腰を落ち着けて作業を行う場合に好適である。また、書類付きの作業やパソコンを使用した作業にも好適である。そして、什器は間仕切として機能しているため、独立した机(テーブル)で作業する場合に比べて、落ち着いた環境で作業できる。
【0031】
請求項6の発明では、座位空間が枠板で囲われているため、クローズド性を高くできる。従って、休息を採る場合は気兼ねを無くして休息の効果を高めるができる一方、携帯端末を使用する等して作業を行う場合は、その作業に集中できる。
【0032】
請求項7のように、寄りかかり部にクッション性を持たせると、利用者の身体への当たりを柔らかくできて好適である。寄りかかり部としては、腰をチョイ掛けできるパッドも採用できる。この場合は、足への負担を軽減できる利点がある。
【0033】
請求項8の発明では、什器の安定性を向上できる。従って、利用者が寄り掛かる場合、特に好適である。重厚感に優れるため、落ち着いた作業環境に貢献できる。
【0034】
本願発明の什器は様々にレイアウトできるが、請求項9のような並列配置すると、オフィスのスペースを有効利用できる。この場合、隣り合った什器の座位空間同士又は立位空間同士が対向するように配置してもよいが、請求項10のように、座位空間と立位空間とが対向するように配置すると(すなわち、各什器を同じ向きで配置すると)、2つの什器の作業内容が干渉することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】3種類の什器を表示した第1実施形態の斜視図である。
【
図2】同じく第1実施形態を別の方向から見た斜視図である。
【
図3】(A)は
図1のIIIA-IIIA 視断面図、(B)は
図2のIIIB-IIIB 視断面図である。
【
図4】(A)は
図2の IVA-IVA視断面図:(B)は
図2の IVB-IVB視断面図である。
【
図5】第2実施形態を示す図で、(A)は座位空間から見た斜視図、(B)は立位空間から見た斜視図である。
【
図6】第3実施形態を示す図で、(A)は座位空間から見た斜視図、(B)は立位空間から見た斜視図である。
【
図7】第4実施形態を示す図で、(A)は座位空間から見た斜視図、(B)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本開示に係る什器は、設置面に設置されて空間を仕切るための間仕切りとして機能するものである。本開示に係る什器は、例えば、人が単独での執務や集中作業、休憩若しくは待機を行う空間、又は複数人での共同作業、休憩、待機若しくは議論や雑談等の会話を行う空間、等に設置され、例えばオフィス、学校、公共施設、若しくは待合ロビー等に設置される。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、什器の広幅面を向いた方向(奥行き方向)を前後方向、広幅面と直交した水平方向(間口方向)を左右方向としている。
【0037】
(1).第1実施形態の概略
まず、
図1~4に示す第1実施形態を説明する。
図1,2のとおり、本実施形態は、縦横が略同じ程度の大きさの第1什器1及び第2什器2と、左右長さが高さの数倍になっている横長の第3什器3とを含んでいる。いずれの什器1~3も、側面視で三角形状(或いは縦長の台形状)に形成された左右の側枠(或いは側板)4と、左右側枠4の上端を繋ぐ上枠5とを備えている。従って、重厚感が高く安定している。
【0038】
各什器1~3は、例えば2m程度の高さになっており、左右側枠4と上枠5と囲われた空間には、
図3,4に示すように、中空状又は中実状の基板6が配置されている。従って、使用者や傍を通る人は什器1~3の上から前後を見ることはできない。従って、各什器1~3は、空間を仕切って人の視線を遮る間仕切り機能を備えている。各什器1~3の高さは任意に設定できるが、人に圧迫感を与えることなく間仕切機能を発揮しかつ一般成人の手が届く利便性として、1.8~2.2m程度でよいと云える。
【0039】
各什器1~3において、基板6は上下左右に広がる前後の広幅面S1を有しており、前後の広幅面S1は人が作業や待機等を行えるような空間(座位空間または立位空間)を形成している。第1什器1及び第2什器2では、基板6の一方の面に、座位空間7を形成しており、ベンチ状の椅子(長椅子)8を配置している。椅子8は、木製又は樹脂製の座枠9にクッション材10を張ってこれを表皮材で覆った構造であり、ベース板11を介して基板6及び側枠4に固定している。なお、椅子8は、上向きに跳ね上げ回動できるように基板6に連結することも可能である。
【0040】
図3に示すように、ベース板11の下方は空間になっている。この空間を物品の収納部として使用することが可能である。収納部として使用する場合、引出し方式でもよいし、引き戸式又は水平回動式の扉を備えた方式でもよい。
図3に示すように、座位空間7においては、基板6の表面にクッション材12が張られている。クッション材12は基板6の露出面全体に張られているが、椅子8に腰掛けた人の背が当たる高さのエリアのみに配置してもよい。
【0041】
(2).什器の具体的構造
座位空間7は、側板13及び上板14より成る囲い枠15によって三方から囲われている。
図3に示すように、囲い枠15を構成する上板14には、LED方式のランプ16を設けている。ランプ16は左右中間部に1か所だけ設けてもよいし、複数個を左右に分離した状態で配置してもよい。ランプ16はLEDには限らず、蛍光灯又は有機ELシートも採用できる。
【0042】
第1什器1及び第2什器2において、基板6の他方の面は立位空間17を形成している。そして、例えば
図2に示すように、第1什器1では、立位空間17においてクッション材を張った寄りかかり部18が設けられており、第2什器2では、立位空間17において筆記部19と小テーブル板20とが設けられている。筆記部19は、例えばホワイトボードであり、左右側枠4の間の全長に亙って広がっている。小テーブル板20は、ブラケット20aによって安定的に支持されている。
【0043】
図3に示すように、第1什器1において、基板6とクッション材12との間には空間Kが空いている。このため、椅子8の使用者がクッション材12に凭れたときに衝撃がかかっても、寄りかかり部を構成するクッション材18や筆記部19に衝撃が伝わることを防止できる。
【0044】
小テーブル板20は半円状に形成されて左右中間部に配置されており、筆記部19で使用するペンや消し具は小テーブル板20に載置できる。また、小テーブル板20に飲み物や資料なども載置できる。本実施形態の側枠4はかなり厚いので、側枠4の前面に空所形成して、この空所にペンや消し具を収納することも可能である。或いは、基板6の表面などに籠を取付けて、籠にペンや消し具を収納してもよい。小テーブル20は平面視長方形でよい。この場合は、基板6の左右全長に亙って装架してもよい。
【0045】
寄りかかり部18には、利用者が後ろ向きに凭れることができる。この場合、利用者は単独で寄りかかり部18に凭れて、スマートフォンやタブレットなどを使用して作業を行うこともできるし、複数人が寄りかかり部18に凭れた状態で話しをすることもできる。或いは、寄りかかり部18に凭れた人と、寄りかかり部18を向いた人とが話しをすることもできる。いずれにしても、移動式のテーブル21を付属品として使用できる。
【0046】
第3什器3は請求項2の具体例であり、
図2に示すように、基板6の一方の面のうち左右中間部に、立位空間17を形成するとともに筆記部19と小テーブル板20とを設けられ、かつ、立位空間17の左右両側に、座位空間7を形成するとともに、キャスタ付き回転椅子のような移動式の椅子22とセットで使用される天板23が配置されている。この場合も、座位空間7は、側板13及び上板14より成る囲い枠15で囲われている。
図4(A)に示すように、天板23には、電源用コンセント23aを設けている(インターネット又はイントラネット用のコネクタを設けてもよい。)。
【0047】
第3什器3の座位空間7は、例えば2人が使用できる大きさであり、基板6にはモニター24を配置されている。モニター24は座位空間7の左右中間部に配置されているが、座位空間7を2人で使用する場合、左右に別々に設けられてもよい。また、座位空間7(机上空間)を左右に分ける仕切板を配置することも可能である。天板23の下面には引出し25を設けているが、無くてもよい。
【0048】
図1に示すように、第3什器3において、基板6の他方の面には、棚板26が多段に配置された左右の棚装置27と、大型のモニター28を掛けた補助立位空間29とを設けられている。棚装置27の下方部は扉付き収納部30になっており、この収納部30に、ノートパソコンなどの物品を収納できる。棚装置27は座位空間7の反対側に位置しており、補助立位空間29は立位空間17の反対側に位置している。
【0049】
請求項では立位空間17の要素として寄りかかり部18と筆記部19とを選択的に記載しているが、立位空間17の1つの要素としてモニター28を選択的に特定することも可能である。この場合は、第3什器3は、天板23が配置された座位空間7とモニター28が配置された立位空間29とが前後(表裏)に配置されるので、請求項1の具体例にもなる。モニター28を使用して立ち作業を行う場合、移動自在なテーブル21を使用できる。
【0050】
第3什器3において、いずれか一方又は両方の棚装置27に代えて、天板方式又は椅子方式の座位空間7を設けてもよい。或いは、いずれか一方又は両方の棚装置27に代えて、筆記部19が配置された立位空間17を設けることも可能である。更に、基板6の他方の面全体に筆記部19が配置された立位空間17と成すことも可能である。この場合は、大人数でディスカッションできる。
【0051】
(3).まとめ
第1実施形態では3種類の什器1~3を提示しているが、いずれも利用者よりも高い高さであって上から前後に見通せないため、間仕切として機能して、利用者は落ち着いて作業を行える。また、天井まで届く高さではないため、過度の圧迫感を受けることもない。更に、側枠4は下広がりであるため、見た目にも安定感に優れて信頼性が高い(耐震性も高い。)。
【0052】
そして、各什器1~3は一方の広幅面S1の側と他方の広幅面S1の側とで作業を行えるが、第1什器1及び第2什器2では、座位空間7において椅子8に腰掛けて作業を行える一方、立位空間17では、寄りかかり部18に凭れたリラックス状態で一人作業や打合せなどを行うことができる。
【0053】
他方、第2什器2では、立位空間17では筆記部19を使用してアクティブにディスカッションなどを進めることができる。すなわち、利用者は立っているため、誰もが即座に筆記部19に近寄って書き込みなどを行えるのであり、従って、ディスカッションをアクティブに進行できる。いずれにしても、座位空間7と立位空間17とを目的に応じて使い分けて、知的生産性の向上に貢献できる。
【0054】
また、通常は自席でデスクワークを行いつつ、必要に応じて複数人が集まって討議することがあるが、このような場合、立位空間17を使用することにより、ワーカーは、腰を伸ばして、リフレッシュも兼ねて議論・討議を行うことができるため、ワーカーの健康維持の面でも好適である。
【0055】
第3什器3の座位空間7では、利用者は椅子22に腰掛けてじっくり作業に没頭できる。他方、立位空間17では、第1什器1及び第2什器2と同様に、筆記部19を利用してアクティブに討議・議論できる。従って、第3什器3においても、座位空間7と立位空間17とを目的に応じて使い分けて、知的生産性を向上できる。結局、実施形態の什器1~3は、近年のワーキングスタイルの変化にマッチングして、ワーカーの要望に的確に応えることができると云える。
【0056】
第3什器3は横長であるため、通路の形成手段として活用することも可能である。本実施形態では、1つの第1什器1と2つの第2什器2とが並列配置されて、第3什器3は第1什器1及び第2什器2の並び方向に長い姿勢では位置しているが、このようにレイアウトすると、大きさが異なる什器1~3をまとまり良く配置してスペースを有効利用できる。
【0057】
第1什器1と第2什器2のレイアウトとして、同じ形態のものを同じ姿勢で並列に配置すると、作業内容が干渉しないため、できるだけ間隔を詰めて配置できる。第1什器1と第2什器2とは座位空間7が対向しているが、座位空間7では人の動きは少ないため、この場合もできるだけ間隔を詰めてスペースを有効利用できる。
【0058】
いずれにしても、什器1~3はユーザーが目的に応じて任意にレイアウトできる。複数の第1什器1を直列に配置することも可能である。なお、1つの什器の配置にしても複数の什器の配置にしても、内装の意匠としての登録を受けることが可能である。
【0059】
(4).他の実施形態
次に、
図5以下に示す他の実施形態を説明する。
図5に示す第2実施形態は第4什器31示すもので、この第4什器31では、側枠4は、支柱部4aと水平部4bとを有して逆T型に形成されており、左右の水平部4bは前後のステー32で連結されている。
【0060】
そして、基板6の一方の面は背もたれ付き椅子8が固定され座位空間7を形成しており、座位空間7には左右一対の椅子8と両者の間に位置した小テーブル板20とが配置されている。従って、2人の利用者が独立して作業を怠り、2人の利用者が小テーブル板20を共有して打合せを行ったりすることができる。この実施形態では、座位空間7はオープン性が高くなっている。
【0061】
立位空間17には、左右に分かれた対の筆記部19と、左右中間部に位置したモニター33と、左右長手のテーブル板34とが配置されている。テーブル板34は左右に長いため、各種の物品を置くことができて便利である。上枠5などにカメラを設けてウエブ会議の便宜に供することも可能である。
【0062】
図6に第3実施形態として示す第5什器35は、側枠4は板状に形成されており、側枠4と基板6とで平面視H型の形態を成している。そして、基板6の一方の面は、座位空間7を形成しており、当該座位空間7には椅子とセットで使用される天板23が配置されている。この場合、机上の空間は1人分ずつ仕切板36で仕切ってブース化しており、ブース毎にモニター24を配置されている。
【0063】
基板6の他方の面には、左右の椅子8と、その上のエリアに広がる左右長手の筆記部19と、左右の椅子9の間に位置した小テーブル板20とが配置されている。従って、この実施形態では、基板6の他方の面には、座位空間7と立位空間17とが複合して形成されている(従って、この実施形態は、請求項1と請求項2との両方の具体例になっている)。
【0064】
一点鎖線で示すように、立位空間17にモニター37を配置することも可能である。なお、座位空間7の側では、圧迫感が過度に高くなるのを防止するため、側枠4を部分的に切り欠いている。この実施形態では、利用者は、基板6の他方の面の箇所で、筆記部19を使用して立ってディスカッションしたり、椅子8に腰掛けてじっくりと話し合ったりすることができる。
【0065】
図7に第4実施形態として示す第6什器38は、左右の側枠4とで平面視コ字型の形態を成しており、側枠4で囲われた内部を座位空間7と成して、一対の椅子8を向かい合わせに配置すると共に、基板6のうち椅子8が配置された一方の面にモニター37を配置されている。従って、利用者はモニターを見ながら打合せやアイデア出しなどの作業を行える。(B)に一点鎖線で示すように、座位空間7に小テーブル板20を配置してもよい。
【0066】
基板6の他方の面は立位空間17を形成しており、立位空間17に、筆記部19と横長のテーブル板34とを配置されている。また、一方の側枠4又は両方の側枠4の外面にも筆記部19を配置されている。従って、この実施形態では、3つの立位空間17を有して、最大4つのグループが同時に異なる作業を実行できる。
【0067】
以上、図示した実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、什器は平面視L形やT形に形成することも可能である。また、本願発明の什器はオフィスのみでなく、様々な場所に設置できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明は、オフィス用等の各種施設に設置する什器に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 第1什器
2 第2什器
3 第3什器
4 側枠
5 上枠
6 基板
7 座位空間(座位作業部)
8 一体式の椅子
15 囲い枠
16 ランプ(照明用灯具)
17 立位空間(立位作業部)
18 寄りかかり部
19 筆記部
20 小テーブル板
21 移動式テーブル
22 移動式椅子
23 天板
31 第4什器
35 第5什器
38 第6什器