IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京医科歯科大学の特許一覧

<>
  • 特開-α-ジカルボニル化合物分解剤 図1
  • 特開-α-ジカルボニル化合物分解剤 図2
  • 特開-α-ジカルボニル化合物分解剤 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128985
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】α-ジカルボニル化合物分解剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20220829BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220829BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20220829BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220829BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A61K31/4045
A23L33/10
A61P17/16
A61K8/49
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027485
(22)【出願日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】服部 淳彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】勝又 敏行
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD18
4B018ME10
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC01
4C083EE12
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】新規なα-ジカルボニル化合物分解剤およびその使用を提供する。
【解決手段】
下記式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物を含む、α-ジカルボニル化合物分解剤、下記式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物を含む、α-ジカルボニル化合物分解用組成物、およびメイラード反応生成物分解、AGEs生成抑制、AGEs架橋分解、抗糖化、および/またはメラニン合成の抑制のためのこれらの使用が提供される。
【化34】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物を含む、α-ジカルボニル化合物分解剤。
【化22】
[式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~6の整数を表し;
3aは、C2-6アシル基、水素原子、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
(A)R3aがC2-6アシル基のとき、
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-6アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり;
(B)R3aが水素原子又はC1-6アルキル基のとき、
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はヒドロキシC1-6アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
【請求項2】
式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はC1-3アルキル基を表し、
nは、1~3の整数を表し、
3aは、C2-4アシル基、水素原子、又はC1-3アルキル基を表し、
(A)R3aがC2-4アシル基のとき、
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-3アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり、
(B)R3aが水素原子又はC1-3アルキル基のとき、
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-3アルコキシ基、又はヒドロキシC1-3アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない、請求項1に記載の分解剤。
【請求項3】
式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記式(Ia-1)、式(Ia-2)、式(Ia-3)または式(Ib-1)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、請求項1または2に記載の分解剤。
【化23】
[式(Ia-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化24】
[式(Ia-2)中、
、R2a、R3c、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化25】
[式(Ia-3)中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化26】
[式(Ib-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、
3aおよびR3bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、メトキシ基又はヒドロキシメチル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
【請求項4】
式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記:
【化27】
からなる群から選択される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の分解剤。
【請求項5】
メイラード反応生成物分解、AGEs生成抑制、AGEs架橋分解、抗糖化、および/またはメラニン合成の抑制に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の分解剤。
【請求項6】
下記式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物を有効成分として含む、α-ジカルボニル化合物分解用組成物。
【化28】
[式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~6の整数を表し;
3aは、C2-6アシル基、水素原子、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
(A)R3aがC2-6アシル基のとき、
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-6アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり;
(B)R3aが水素原子又はC1-6アルキル基のとき、
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はヒドロキシC1-6アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
【請求項7】
式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はC1-3アルキル基を表し、
nは、1~3の整数を表し、
3aは、C2-4アシル基、水素原子、又はC1-3アルキル基を表し、
(A)R3aがC2-4アシル基のとき、
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-3アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり、
(B)R3aが水素原子又はC1-3アルキル基のとき、
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-3アルコキシ基、又はヒドロキシC1-3アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記式(Ia-1)、式(Ia-2)、式(Ia-3)または式(Ib-1)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、請求項6または7に記載の組成物。
【化29】
[式(Ia-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化30】
[式(Ia-2)中、
、R2a、R3c、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化31】
[式(Ia-3)中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化32】
[式(Ib-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、
3aおよびR3bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、メトキシ基又はヒドロキシメチル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
【請求項9】
式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記:
【化33】
からなる群から選択される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、請求項6~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
メイラード反応生成物分解、AGEs生成抑制、AGEs架橋分解、抗糖化、および/またはメラニン合成の抑制のための、請求項6~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
化粧料組成物、医薬組成物または食品組成物である、請求項6~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚の老化の予防および/もしくは改善、または、皮膚の色素沈着抑制および/もしくは美白のための化粧料組成物である、請求項6~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
終末糖化産物の形成に起因する老化関連疾患、皮膚の老化、または糖尿病合併症の予防および/または治療のための医薬組成物である、請求項6~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
老化の予防および/または改善のための食品組成物である、請求項6~10のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイラード反応生成物、糖化中間産物、メラニン合成の中間生成物などのα-ジカルボニル化合物の分解剤およびそれを配合した化粧料組成物、医薬組成物、食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖化はメイラード反応とも呼ばれ、1912年にフランスの科学者 L.C.Maillardによって発見されたアミノ酸と還元糖の非酵素的な化学反応である。メイラード反応では、まず糖のカルボニル基とアミノ酸のアミノ基が結合してできるシッフ塩基が形成され、アマドリ転移という反応によりアマドリ化合物と呼ばれる物質となる。生体内ではこのアマドリ化合物は更に酸化や脱水などの不可逆的な反応により、α-ジカルボニル化合物である3-デオキシグルコソン(3-DG)などの糖化中間産物になる。また、解糖系の副産物としてできるメチルグリオキサールや脂質の酸化によってできるグリオキサールもα-ジカルボニル化合物であり、主要な糖化中間産物である。これらのα-ジカルボニル化合物は反応性が高く、タンパク質中のアミノ酸の間に架橋を形成し、終末糖化産物(advanced glycation end products:AGEs)に至る。一方、タンパク質のアマドリ化合物は脱水反応によりamadori dione、さらに脱水されてamadori ene-dioneとなることで別のタンパク質とα-ジカルボニル構造を持つ架橋(amadori dion crosslink)を形成することも知られている。AGEsの生成はタンパク質の機能を低下させ、さまざまな組織や細胞に生理的、物理的障害を及ぼす。糖尿病や加齢に伴う組織や細胞の機能低下にはこのAGEsが関係している(非特許文献1)。例えば真皮のコラーゲンが糖化することで皮膚は弾性を失いしわが形成され、骨を構成するコラーゲンが糖化すれば骨が脆くなってしまう。また、白内障やアルツハイマー病の進行など数多くの病気にこの糖化が関わっていることが知られている。AGEsは、老化現象や様々な疾患の原因・重症化の原因として知られており、糖化はアンチエイジングにおいて重要なファクターとされている。
【0003】
このため、近年では、AGEsの体内での蓄積を防止するために、糖化反応阻害剤やAGEs生成阻害剤が開発検討されている。例えば、AGEsが関与する架橋構造を切断する化合物として、N-フェナンシルチアゾリウム臭化物(N-phenacylthiazolium bromide;PTB)が知られている(非特許文献2)。PTBは、AGEs架橋のモデルとなる1-フェニル-1,2-プロパンジオン(PPD)においてα-ジカルボニル構造を認識して切断する(非特許文献3)。PTBを糖尿病ラットに投与すると、コラーゲンのAGEs架橋形成を抑制し、腸間膜の血管のAGEsを減少させることが報告されている(非特許文献2、4)。また、PTBを水溶性化したALT-711という化合物をヒトに投与することで、血管の硬化や収縮期血圧が改善されたという報告もある(非特許文献3、5)。このようなAGEs架橋切断活性を持つ成分はPTB以外にも、ユズに含まれるモノテルペンアルコールやザクロに含まれるエラジタンニンなど様々な天然の成分からも見出されている。最近では、メラトニンにAGEs架橋切断作用があるとの報告がされた(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Goto S, et al., Implications of protein degradation in aging. Ann N Y Acad Sci. 2001 Apr; 928:54-64.
【非特許文献2】Vasan S, et al., An agent cleaving glucose-derived protein crosslinks in vitro and in vivo. Nature.1996 Jul; 382(6588):275-8.
【非特許文献3】Kass DA, et al. Improved arterial compliance by a novel advanced glycation end-product crosslink breaker. Circulation. 2001 Sep;104(13):1464-70.
【非特許文献4】Cooper ME, et al. The cross-link breaker, N-phenacylthiazolium bromide prevents vascular advanced glycation end-product accumulation. Diabetologia. 2000 May;43(5):660-4.
【非特許文献5】Bakris GL, et al. Advanced glycation end-product cross-link breakers. A novel approach to cardiovascular pathologies related to the aging process. Am J Hypertens. 2004 Dec;17(12):23S-30S.
【非特許文献6】Yonei Y, et al., Cleaving effect of melatonin on crosslinks in advanced glycation end products. Glycative Stress Ressearch. 2016; 3(1):38-43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メイラード反応生成物などのα-ジカルボニル化合物を分解可能な新たな物質が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は例えば以下の通りである。
[1] 下記式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物を含む、α-ジカルボニル化合物分解剤。
【化1】
[式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~6の整数を表し;
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
3aは、C2-6アシル基、水素原子、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
(A)R3aがC2-6アシル基のとき、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-6アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり;
(B)R3aが水素原子又はC1-6アルキル基のとき、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基又はC1-6アルコキシ基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
[2] 式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はC1-3アルキル基を表し、
nは、1~3の整数を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
3aは、C2-4アシル基、水素原子、又はC1-3アルキル基を表し、
(A)R3aがC2-4アシル基のとき、
は、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、RとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-3アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり、
(B)R3aが水素原子又はC1-3アルキル基のとき、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子を表し、
は、水素原子、水酸基又はC1-3アルコキシ基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない、請求項1に記載の分解剤。
[3] 式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記式(Ia-1)、式(Ia-2)、式(Ia-3)または式(Ib-1)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、[1]または[2]に記載の分解剤。
【化2】
[式(Ia-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化3】
[式(Ia-2)中、
、R2a、R3c、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化4】
[式(Ia-3)中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化5】
[式(Ib-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、
3aおよびR3bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、メトキシ基又はヒドロキシメチル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
【0007】
[4] 式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記:
【化6】
からなる群から選択される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、[1]~[3]のいずれかに記載の分解剤。
[5] メイラード反応生成物分解、AGEs生成抑制、AGEs架橋分解、抗糖化、および/またはメラニン合成の抑制に使用するための、[1]~[4]のいずれかに記載の分解剤。
【0008】
[6] 下記式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物を有効成分として含む、α-ジカルボニル化合物分解用組成物。
【化7】
[式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~6の整数を表し;
3aは、C2-6アシル基、水素原子、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
(A)R3aがC2-6アシル基のとき、
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-6アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり;
(B)R3aが水素原子又はC1-6アルキル基のとき、
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-6アルコキシ基、又はヒドロキシC1-6アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
[7] 式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はC1-3アルキル基を表し、
nは、1~3の整数を表し、
3aは、C2-4アシル基、水素原子、又はC1-3アルキル基を表し、
(A)R3aがC2-4アシル基のとき、
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-3アルコキシ基を表し、かつ、
、R2a、R2b、R3c、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基であり、
(B)R3aが水素原子又はC1-3アルキル基のとき、
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-3アルコキシ基、又はヒドロキシC1-3アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない、[6]に記載の組成物。
[8] 式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記式(Ia-1)、式(Ia-2)、式(Ia-3)または式(Ib-1)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、[6]または[7]に記載の組成物。
【化8】
[式(Ia-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化9】
[式(Ia-2)中、
、R2a、R3c、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化10】
[式(Ia-3)中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である]
【化11】
[式(Ib-1)中、
、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、
3aおよびR3bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、メトキシ基又はヒドロキシメチル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。]
【0009】
[9] 式(I)で表される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物は、下記:
【化12】
からなる群から選択される化合物、その塩、又はこれらの溶媒和物である、[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
【0010】
[10] メイラード反応生成物分解、AGEs生成抑制、AGEs架橋分解、抗糖化、および/またはメラニン合成の抑制のための、[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[11] 化粧料組成物、医薬組成物または食品組成物である、[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12] 皮膚の老化の予防および/もしくは改善、または、皮膚の色素沈着抑制および/もしくは美白のための化粧料組成物である、[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[13] 終末糖化産物の形成に起因する老化関連疾患、皮膚の老化、または糖尿病合併症の予防および/または治療のための医薬組成物である、[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[14] 老化の予防および/または改善のための食品組成物である、[6]~[10]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】

本発明は、以下の一以上の効果を有する。 (1)本発明により、α-ジカルボニル結合の切断活性を有する新規なα-ジカルボニル化合物分解剤が提供される。
(2)本発明のα-ジカルボニル化合物分解剤は、メイラード反応の中間産物やメチルグリオキサール(MG)及びグリオキサール(GO)などの他の糖化中間産物であるα-ジカルボニル化合物を分解し得る。これにより、AGEsの生成が抑制される。
(3)本発明のα-ジカルボニル化合物分解剤は、メイラード反応の後期生成物である終末糖化産物(AGEs)に関連する架橋構造(AGEs架橋)を分解し得る。これにより、生体内のAGEsの分解排泄に寄与し、生体内でのAGEs蓄積を抑制することができる。
(4)本発明のα-ジカルボニル化合物分解剤は、メラニン合成の中間体であるドーパキノンを分解し、これによりメラニンの合成を抑制することができる。
(5)本発明のα-ジカルボニル化合物分解剤は、化粧料組成物、医薬組成物、食品組成物などとして好適に用いることができる。一実施形態の化粧料組成物は、皮膚の色素沈着抑制効果及び/又は美白効果を発揮し得る。一実施形態の化粧料組成物は、皮膚の老化(例えば皮膚の弾力低下、しわやたるみの原因となるコラーゲンの架橋形成等)の予防および/もしくは改善効果を発揮し得る。一実施形態の医薬組成物は、終末糖化産物(AGEs)の形成に起因する老化関連疾患の予防および/または治療に用いることができる。一実施形態の食品組成物は摂取することで老化を予防および/または改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1における各試料溶液における化合物の濃度と安息香酸生成量(BA量)との関係を示す。
図2図2Aは実施例2のメラニン黒化度の測定において得られた対照群および実験群(2HMEL 0.5mM、2HMEL 1mM)のウェル底面の沈殿の顕微鏡写真である。図2Bは、図2Aの写真からフリーソフトのImage Jを用いてウェル底面全体の輝度を測定し、実験群と対照群の黒化度を比較したものである。対照群を100%として実験群の黒化度を算出している。
図3図3は、実施例3におけるリゾチーム/フルクトース糖化反応モデルを用いた電気泳動の結果を示す図である。図中、Aはリゾチームのみの系、Bはリゾチームおよびフルクトースを含む系、Cはリゾチーム、フルクトース、および2HMELを含む系の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、「A~B」および「C~D」が記載されている場合、「A~D」および「C~B」の範囲も数値範囲として、本発明に範囲に含まれる。
「CX-Y」中のXおよびYは炭素原子の数を示す。例えば「C1-4」は炭素原子の数が1~4個であることを示す。
【0014】
以下に本明細書において記載する用語等の意義を説明する。
本明細書において、「α-ジカルボニル化合物」とは、その分子中にα-ジカルボニル部分(1,2-ジカルボニルともいう)を少なくとも1つ有する化合物をいう。α-ジカルボニル化合物は、生体、環境、食品など自然界に広く存在する。α-ジカルボニル化合物の例としては、以下に限定されるものではないが、メイラード反応における中間生成物である3-デオキシグルコソン(3-DG)、グルコースが解糖系により分解代謝される過程で生成するメチルグリオキサール(MG)及びグリオキサール(GO)、メイラード反応における終末糖化産物(AGEs)架橋形成物、ならびにメラニン合成における中間生成物であるドーパキノン(L-ドーパキノン)等が挙げられる。
【0015】
本明細書において、「α-ジカルボニル結合の切断活性を有する」とは、α-ジカルボニル化合物のジカルボニル構造の炭素-炭素間の結合(C-C結合)を切断する活性を有することをいう。一実施形態では、化合物の「α-ジカルボニル結合の切断活性」は、1-フェニル-1,2-プロパンジオン(PPD)のジカルボニル構造(-CO-CO-)のC-C結合の切断による安息香酸(BA)の生成量に基づき評価することができる。
【0016】
本明細書において、「メイラード反応」とは、還元糖のカルボニル基と、アミノ化合物のアミノ基との求核付加反応に始まる一連の非酵素的反応をいう。詳細には、メイラード反応は前期段階と、後期段階とを含む。前期段階では、カルボニル基とアミノ基とが反応してシッフ塩基を形成し、アマドリ転位の後、アマドリ化合物を形成する。後期段階では、前記のアマドリ化合物が酸化、脱水、縮合など不可逆的反応を受け、3-デオキシグルコソン(3-DG)のようなα-ジカルボニル化合物などを含む中間体生成を経て、最終的にさまざまな特徴を有する終末糖化産物(AGEs)に変化する反応である。本明細書において「メイラード反応」はこれら一連の反応過程を意味する。
本明細書において、「メイラード反応生成物」とは、メイラード反応によって生成される物質すべてを包含し、メイラード反応によって生成される中間体、及びメイラード反応によって生成される最終産物を含む。「メイラード反応生成物分解剤」は、メイラード反応生成物を分解できる物質をいう。幾つかの実施形態において、「メイラード反応生成物を分解する」とは、メイラード反応生成物に含まれるα-ジカルボニル構造のC-C結合を切断することを含む。
【0017】
本明細書において、「AGEs」は、糖化反応最終生成物の総称であり、一定の構造を示すものではない。AGEsとして、例えば、ペントシジン、ピロピリジン、クロスリン、カルボキシメチルリジン(CML)、カルボキシエチルリジン、ピラリン、カルボキシメチルアルギニン(CMA)、アルグピリミジン、グリオキサールリシン(GOLD)、メチルグリオキサールリシンダイマー(MOLD)、3-デオキシグルコソンリシンダイマー(DOLD)等が挙げられる。
などが含まれる。
本明細書において、「AGEs架橋」とは、AGEs内、あるいはAGEs同士、あるいはAGEsとタンパク質などの化合物との間に形成された架橋構造をいう。AGEsとタンパク質などの化合物との間に形成された架橋構造の例としては、例えば、コラーゲンの分子間にAGEによる架橋がされた構造が挙げられる。
本明細書において、「AGEs架橋を分解する」とは、AGEs内、あるいはAGEs同士、あるいはAGEsとタンパク質などの化合物との間に形成された架橋構造を切断することを指す。幾つかの実施形態では、AGEs架橋は、AGEs内、あるいはAGEs同士、あるいはAGEsとタンパク質などの化合物との間のα-ジカルボニル構造のC-C結合を含み、「AGEs架橋を分解する」とは当該α-ジカルボニルのC-C結合を切断することを含む。
【0018】
本明細書において、「対象」は、動物を指す。対象は、例えば、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥、及び同類のものが挙げられるが、これらの動物に限定されるものではない。好ましい実施形態では、対象は、哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
本発明の化合物の「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象の生物学的応答または医学的応答を導出、または症状を寛解、状態を軽減、疾患進行を緩徐もしくは遅延、または疾患を予防などする本発明の活性化合物の量を指す。
【0019】
「アルキル基」とは、指定された数の炭素原子を有する直鎖状、分岐状、または環状の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
「アルコキシ基」とは、指定された数の炭素原子を有するアルキルの末端に酸素原子(O)が結合した基である。具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基及びヘキシルオキシ基等が挙げられる。
「アシル基」とは、指定された数の炭素原子を有するアルキルの末端にカルボニル基(-CO-)が結合した基である。具体的には、メチルカルボニル(アセチル)、エチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、tert-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニルなどの直鎖状又は分枝鎖状のカルボニル基が挙げられる。
【0020】
1.α-ジカルボニル化合物分解剤
本発明の一形態は、下記式(I)で表される化合物、その塩又はこれらの溶媒和物(以下、「インドール化合物」ともいう)を含む、α-ジカルボニル化合物分解剤に関する。
【化13】
本発明者らは、上記インドール骨格を有し、特定の置換基を有する本発明のインドール化合物が、α-ジカルボニル結合切断活性を有することを見出した。本発明のインドール化合物は、α-ジカルボニル化合物内のジカルボニル構造(-C(=O)-C(=O)-)中のC-C結合を切断し、α-ジカルボニル化合物を分解することができる。
幾つかの実施形態では、本発明のインドール化合物は、メイラード反応の中間産物であるα-ジカルボニル化合物を分解し、これにより、メイラード反応が抑制され、AGEsの生成が抑制される。また、本発明のインドール化合物は、メチルグリオキサール(MG)及びグリオキサール(GO)などの他の糖化中間産物であるα-ジカルボニル化合物を分解し、これにより、これに続くメイラード反応が抑制され、AGEsの生成が抑制される。したがって、本発明のインドール化合物は、メイラード反応抑制剤またはAGEs生成抑制剤として機能し得る。
幾つかの実施形態では、本発明のインドール化合物は、メイラード反応の後期生成物である終末糖化産物(AGEs)に関連する架橋構造(AGEs架橋)を分解し、これにより、生体内でのAGEs蓄積を抑制することができる。したがって、本発明のインドール化合物は、AGEs架橋分解剤として機能し得る。
いくつかの実施形態では、本発明のインドール化合物は、上記のとおり、AGEsの生成を抑制および/またはAGEs架橋を分解することができ、抗糖化剤として機能し得る。
幾つかの実施形態では、本発明のインドール化合物は、メラニン合成の中間体であるドーパキノンを分解し、これによりメラニンの合成を抑制することができる。したがって、本発明のインドール化合物は、メラニン合成抑制剤として機能し得る。
【0021】
上記式(I)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、C1-6アルキル基からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はC1-3アルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基)を表す。特定の実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表す。一実施形態において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子又は水酸基を表す。
【0022】
上記式(I)中、nは、1~6の整数を表す。幾つかの実施形態において、nは、1~3の整数を表す。一実施形態において、nは2である。
【0023】
上記式(I)中、点線(---)は、単結合又は二重結合を表す。
【0024】
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cで示される2価の基を表し、XはCR2bで示される2価の基を表す。
2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基)からなる群から選択される。一実施形態において、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子および水酸基からなる群から選択される。
【0025】
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子である。
【0026】
式(I)において、R2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成している。幾つかの実施形態において、R2aは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基)からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成している。
【0027】
式(I)において、Rは、水素原子、水酸基、C1-6アルコキシ基又はヒドロキシC1-6アルキル基からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、R2aは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、C1-3アルコキシ基(好ましくはメトキシ基またはエトキシ基、より好ましくはメトキシ基)、およびヒドロキシC1-3アルキル基(好ましくはヒドロキシメチル基またはヒドロキシエチル基、より好ましくはヒドロキシメチル基)からなる群から選択される。
【0028】
上記式(I)中、R3aは、C2-6アシル基、水素原子、及びC1-6アルキル基からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、R3aは、C2-4アシル基(好ましくはアセチル基またはエチルカルボニル基、より好ましくはアセチル基)、水素原子、及びC1-3アルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基)からなる群から選択される。
【0029】
本発明の化合物は、式(I)において、特定の置換基(R、R2a、R2b、R3b、R3c、R、R、RおよびR)の組合せを有する。以下に式(I)における好ましい置換基の組合せを示す。
【0030】
(A)R3aがC2-6アシル基である場合には、以下の特定の置換基(R、R2a、R2b、R3b、R3c、R、R、RおよびR)の組合せを有する。
(A)R3aがC2-6アシル基である場合
幾つかの実施形態において、R3aがC2-6アシル基である場合、R、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である点を特徴とする。
幾つかの実施形態において、
3aは、C2-6アシル基であり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~6の整数を表し
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-6アルコキシ基を表し、かつ、R、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である。
特定の実施形態において、
3aは、C2-4アシル基(好ましくはアセチル基またはエチルカルボニル基、より好ましくはアセチル基)であり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~3の整数を表し
点線(---)は、単結合又は二重結合を表し、
点線(---)が単結合である場合、XはCR3cであり、XはCR2bであり、R2bおよびR3cは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、
点線(---)が二重結合である場合、XおよびXは炭素原子であり;
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され、かつ、R3bは、水素原子を表すか、又は、R2aとR3bとは一緒になって結合を形成し、
は、C1-3アルコキシ基(好ましくはメトキシ基またはエトキシ基、より好ましくはメトキシ基)を表し、かつ、R、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である。
これらの実施形態のいくつかにおいて、R、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRのうちの1つ、2つ、3つ、4つまたは5つが水酸基である。
これらの実施形態のいくつかにおいて、R、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRのうちの1つまたは2つが水酸基である。これらの実施形態のいくつかにおいて、R、R2a、R2b、R3c、R、RおよびRのうちの1つが水酸基である。
【0031】
本発明において、(B)R3aが水素原子又はC1-6アルキル基である場合には、以下の特定の置換基(R、R2a、R2b、R3b、R3c、R、R、RおよびR)の組合せを有する。
(B)R3aが水素原子又はC1-6アルキル基である場合
幾つかの実施形態において、
3aが水素原子又はC1-6アルキル基であり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~6の整数を表し;
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-6アルキル基からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
は、水素原子、水酸基、C1-6アルコキシ基又はヒドロキシC1-6アルキル基を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。
特定の実施形態において、
3aが水素原子又はC1-3アルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基)であり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基からなる群から選択され;
nは、1~3の整数を表し
点線(---)が二重結合であり、XおよびXは炭素原子であり、
2aは、水素原子、水酸基、およびC1-3アルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基)からなる群から選択され、
3bは、水素原子又はC1-3アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基)を表し、
は、水素原子、水酸基又はC1-3アルコキシ基(好ましくはメトキシ基またはエトキシ基、より好ましくはメトキシ基)又はヒドロキシC1-3アルキル基(好ましくはヒドロキシメチル基またはヒドロキシエチル基、より好ましくはヒドロキシメチル基)を表し、かつ
、R3a、3b、R、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記式(I)で表される化合物は、下記式(Ia-1)、式(Ia-2)、式(Ia-3)または式(Ib-1)で表される。
【0033】
一部の実施形態において、上記式(I)で表される化合物は、下記式(Ia-1)で表される。
【化14】
式(Ia-1)中、R、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である。 幾つかの実施形態において、式(Ia)中、R、R2a、R、RおよびRのうちの1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-1)中、R、R2a、R、およびRのうちの1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-1)中、R2a、R、およびRのうちの1つ、2つ、または3つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-1)中、R2aおよびRのうちの1つまたは2(例えば、1つ)が水酸基である。
【0034】
一部の実施形態において、上記式(I)で表される化合物は、下記式(Ia-2)で表される。
【化15】
式(Ia-2)中、R、R2a、R3c、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R2a、R3c、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-2)中、R、R2a、R3c、R、RおよびRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-2)中、R2a、R3c、R、およびRのうちの1つ、2つ、または3つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-2)中、R2aおよびR3cのうちの1つまたは2つ(例えば、1つ)が水酸基である。
一実施形態において、式(Ia-2)中、R3cが水酸基である。
【0035】
一部の実施形態において、上記式(I)で表される化合物は、下記式(Ia-3)で表される。
【化16】
式(Ia-3)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、かつ、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-3)中、R、R、RおよびRのうちの1つ、2つ、3つ、または4つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水酸基である。
特定の実施形態において、式(Ia-3)中、RおよびRのうちの1つまたは2(例えば、1つ)が水酸基である。
一実施形態において、式(Ia-3)中、Rが水酸基である。
【0036】
一部の実施形態において、上記式(I)で表される化合物は、下記式(Ib-1)で表される。
【化17】
式(Ib-1)中、R、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、R3aおよびR3bは、それぞれ独立して、水素原子又はC1-3アルキル基を表し、Rは、水素原子、水酸基、メトキシ基、又はヒドロキシメチル基を表し、かつR、R3a、3b、、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。
特定の実施形態において、R、R2a、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又はメチル基を表し、R3aおよびR3bは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基からなる群から選択され、Rは、水素原子、水酸基又はメトキシ基を表し、かつR、R3a、3b、、R、RおよびRの全てが水素原子であることはない。
特定の実施形態において、式(Ib-1)中、R、R、およびRのうちの1つ、2つ、または3つ(例えば、1つまたは2つ;例えば、1つ)が水素原子ではない。
一実施形態において、Rは、メチル基である。
一実施形態において、Rは、水酸基、メトキシ基又はヒドロキシメチル基である。
一実施形態において、Rは、水酸基又はメチル基である。一実施形態において、Rは、水酸基である。
【0037】
本発明において好ましく用いられる具体的な化合物の構造および名称を以下に示す。
【化18】
【表A】
【0038】
中でも、化合物1(4HMEL)、化合物2(6HMEL)、化合物3(2HMEL)、化合物4(1,2DHMEL)化合物5(5MTP)、化合物6(5HT)、化合物7(NMTP)、化合物8(3HMEL)、化合物9(C6HMEL)、化合物10(4HNINMTP)、化合物11(5HMNNDMTP)からなる群から選択される化合物が好ましく、α-ジカルボニル結合の切断効果に優れることから、化合物1(4HMEL)、化合物2(6HMEL)、化合物3(2HMEL)、化合物5(5MTP)、化合物7(NMTP)からなる群から選択される化合物が特に好ましい。
【0039】
上記インドール化合物はメラトニン代謝物またはその誘導体である。メラトニン(Melatonin;MEL)は脊椎動物において主に脳の松果体で合成され、時刻情報を伝達するホルモンとして知られている。MELはアミノ酸であるトリプトファン(Trp)から5-ヒドロキシトリプトファン(5HTrp)、セロトニン(5HT)、N-アセチルセロトニン(NAS)を経て作られる。Trpはトリプタミン(TP)を経てインドール酢酸(IAA)に代謝される経路も存在する。本発明の式(I)のインドール化合物は、動物、植物、微生物に存在するホルモンであるメラトニンの代謝物またはメラトニンと骨格構造を共有する誘導体であることから、安全性の面でも有利である。メラトニンの代謝経路を以下に示す。
【化19】
【0040】
本発明においては、上記式(I)で表される化合物の塩を使用することが可能である。「塩」としては、その任意の薬学的に許容可能な塩を意味する。本明細書において「薬学的に許容可能な」とは、安全性の低下や毒性の懸念を引き起こさないことを意味する。「薬学的に許容可能な塩」としては、特に限定されるものではなく、酸との塩又は塩基との塩などが挙げられる。
【0041】
酸との塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、及びギ酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸塩などを挙げることができる。
塩基との塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、アルギニン、リジンなどの有機塩基塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0042】
本発明において式(I)で表される化合物又はその塩は、無水物であってもよく、水和物などの溶媒和物を形成していてもよい。溶媒和物は水和物、非水和物のいずれであってもよい。非水和物としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール)、ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。さらに、本発明において、式(I)で表される化合物は、結晶でも無結晶でもよく、また、結晶多形が存在する場合には、それらのいずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよい。
【0043】
本発明のインドール化合物は市販品を用いてもよいし、公知の化学合成法により、合成したものを用いてもよい。
【0044】
2.組成物
本発明のさらなる形態は、上記形態のインドール化合物を含む組成物に関する。本発明のインドール化合物は優れたα-ジカルボニル結合の切断活性を有することから、α-ジカルボニル化合物分解に関連する多様な用途に使用可能である。上記形態のインドール化合物を含む組成物は、化粧品、医薬品、医薬部外品、飲食品、または機能性食品などとして好適に使用することができる。
幾つかの実施形態では、上記形態のインドール化合物を有効成分として含む、α-ジカルボニル化合物分解用組成物が提供される。
幾つかの実施形態では、上記形態のインドール化合物を有効成分として含む、抗糖化組成物が提供される。
【0045】
本発明のインドール化合物を含む組成物は、上記式(I)で表されるインドール化合物のうち異種を含有してもよく、複数種を含有してもよい。幾つかの実施形態の組成物は、上記形態のインドール化合物と、1種または複数の添加剤とを含む。
添加剤としては、賦形剤、香料、着色料、乳化剤、安定化剤、増粘剤、酵素、防腐剤、滑沢剤、界面活性剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、結合剤、吸収促進剤、吸着剤、抗糖化剤、可溶化剤、保存剤、風味剤、甘味剤等が挙げられる。添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて配合することができる。
組成物における本発明のインドール化合物の含有量は、本発明の所望の効果が奏される限り特に限定されないが、組成物の重量基準で、0.000025重量%~25重量%、好ましくは0.00025~2.5重量%であり、より好ましくは0.0025~0.25質量%である。
幾つかの実施形態は、上記形態のインドール化合物を有効成分として含む化粧料組成物、医薬組成物、または食品組成物を提供する。幾つかの実施形態の組成物は、上記形態のインドール化合物と、1種または複数の添加剤とを含む化粧料組成物、医薬組成物、または食品組成物である。
【0046】
(化粧料組成物)
本発明の一形態は、上記形態のインドール化合物を含む化粧料組成物を提供する。
幾つかの実施形態において、化粧料組成物は、皮膚の老化(例えば皮膚の弾力低下、しわやたるみの原因となるコラーゲンの架橋形成等)の予防および/もしくは改善のために用いることができる。
本発明のインドール化合物は、メイラード反応抑制、AGEsの生成抑制、および/またはAGEs架橋分解などの作用を有することから、糖化又は酸化等によってコラーゲン分子内に形成されたコラーゲン架橋(悪玉架橋又は老化架橋)を分解し得る。したがって、本発明のインドール化合物を化粧料組成物に含有させることによりコラーゲン中のAGEsの蓄積を抑制することができ、皮膚の老化の予防および/もしくは改善効果を発揮し得る。本発明のインドール化合物を含む化粧料組成物を皮膚に局所適用することにより、皮膚の老化を予防および/もしくは改善する効果を奏することができる。また、いくつかの実施形態においては、本発明のインドール化合物を含む化粧料組成物を皮膚に局所適用することにより、皮膚の老化の予防および/もしくは改善する化粧方法を提供するものである。
【0047】
幾つかの実施形態において、化粧料組成物は、皮膚の色素沈着抑制及び/又は美白のために用いることができる。
本発明のインドール化合物は、メラニン合成の中間体であるドーパキノンのα-ジカルボニル結合を切断して分解し、これによりメラニンの合成を抑制し得る。ヒトの皮膚に存在するメラニン色素は、フェノール類物質が高分子化して色素になった物質の総称である。メラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。したがって、本発明のインドール化合物を化粧料組成物に含有させることにより、メラニンの合成を抑制し、優れた皮膚の色素沈着抑制及び/又は美白効果を発揮し得る。本発明の化粧料組成物を皮膚に局所適用することにより、皮膚を色素沈着抑制及び/又は美白する効果を奏することができる。すなわち、本発明の幾つかの実施形態においては、本発明の化粧料組成物を皮膚に局所適用することにより、皮膚を色素沈着抑制及び/又は美白する化粧方法を提供するものである。
【0048】
本発明の化粧料組成物は、局所適用に適したあらゆる剤形で提供されてよい。例えば、溶液、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、油相に水相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、ローション、スプレー液などの液状;粉末、顆粒およびブロック状などの固体状;クリームおよびペーストなどの半固体状; ゲル状等の各種所望の剤形で調製することができる。このような化粧料組成物は、洗顔料、乳液、クリーム、ゲル、エッセンス(美容液)、パック・マスク等の基礎化粧料、オイル、ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧料、口腔化粧料、芳香化粧料、毛髪化粧料、ボディ化粧料等の各種化粧料として使用可能である。
こうした剤形の化粧料組成物は常法に従って製造することができる。また、化粧料組成物への本発明のインドール化合物の配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、スプレー缶、噴霧容器、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
【0049】
化粧料組成物は、通常化粧料に用いられる成分を適宜加えて調製することができる。例えば、軟膏用基材、アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、酸化防止剤、pH調整剤、紫外線防止剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、界面活性剤、精製水、防腐剤、抗菌剤、油剤、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、保湿剤、色素、ビタミン類、アミノ酸類等を挙げることができる。
【0050】
化粧料組成物における本発明のインドール化合物の含有量は、本発明の所望の効果が奏される限り特に限定されないが、組成物の重量基準で、0.000025重量%~25重量%、好ましくは0.00025~2.5重量%であり、より好ましくは0.0025~0.25質量%である。
【0051】
化粧料組成物の使用量は、本発明にインドール化合物の種類、剤型、投与対象者の年齢等により異なるが、例えば、インドール化合物の投与量は、一日につき体重1kgあたり約0.05~50mgであり得る。但し、これらの投与量に制限されるものではない。一日投与量は、1回で投与してもよく、また、複数回に分割して投与してもよい。
【0052】
(医薬組成物)
本発明の一形態は、上記形態のインドール化合物を含む医薬組成物を提供する。
本発明のインドール化合物は単独で投与されることは可能であるが、医薬組成物として投与されることができる。幾つかの実施形態は、上記形態のインドール化合物と、1種または複数の薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物を提供する。添加剤と組み合わせる活性成分(インドール化合物)の量は、一般的に、治療効果を生ずる化合物の量である。本発明のインドール化合物は、1種または複数の他の治療剤と同時に、またはその前もしくは後のいずれかで投与されてもよい。
【0053】
本発明のインドール化合物は単独で投与されることは可能であるが、医薬組成物として投与されることができる。幾つかの実施形態は、上記形態のインドール化合物と、1種または複数の薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物を提供する。添加剤と組み合わせる活性成分(インドール化合物)の量は、一般的に、治療効果を生ずる化合物の量である。本発明のインドール化合物は、1種または複数の他の治療剤と同時に、またはその前もしくは後のいずれかで投与されてもよい。
本発明のインドール化合物は、メイラード反応抑制、AGEsの生成抑制、および/またはAGEs架橋分解などの作用を有する。AGEsは、老化現象や様々な疾患の原因・重症化の原因として知られており、糖化はアンチエイジングにおいて重要なファクターとされている。したがって、本発明のインドール化合物を用いて、生体内に生成したAGEsが原因となる疾病、組織の老化および機能低下の予防ならびに治療が可能である。幾つかの実施形態において、本発明のインドール化合物を含む医薬組成物は、終末糖化産物(AGEs)の形成に起因する老化関連疾患(例えば、白内障、軟骨の弾力低下、動脈硬化、骨粗鬆症、アルツハイマー型認知症)の予防および/または治療に用いることができる。幾つかの実施形態において、本発明のインドール化合物を含む医薬組成物は、皮膚の老化(皮膚の弾力低下、しわやたるみの原因となるコラーゲンの架橋形成、肌のくすみの原因となる色素沈着等)の予防および/または治療に用いることができる。幾つかの実施形態において、本発明のインドール化合物を含む医薬組成物は、メイラード反応が関与することが知られている、糖尿病合併症(例えば、心筋梗塞、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症)の予防および/または治療に用いることもできる。
【0054】
幾つかの実施形態は、必要とする対象において終末糖化産物(AGEs)の形成に起因する老化関連疾患(例えば、白内障、軟骨の弾力低下、動脈硬化、骨粗鬆症、アルツハイマー型認知症)を予防および/または治療する方法であって、本発明のインドール化合物の有効量を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
幾つかの実施形態は、必要とする対象において皮膚の老化(皮膚の弾力低下、しわやたるみの形成(特に、しわやたるみの原因となるコラーゲンの架橋形成)、肌のくすみの原因となる色素沈着等)を予防および/または治療する方法であって、本発明のインドール化合物の有効量を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
幾つかの実施形態は、必要とする対象においてメイラード反応が関与することが知られている、糖尿病合併症(例えば、心筋梗塞、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症)を予防および/または治療する方法であって、本発明のインドール化合物の有効量を必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0055】
本発明のインドール化合物を医薬組成物として用いる場合、その投与形態は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。
経口投与の場合は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又はシロップ剤等による投与が可能である。
非経口投与の場合は、注射剤、座剤、点眼剤、経肺剤型(例えばネフライザーなどを用いたもの)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。
幾つかの実施形態において、本発明のインドール化合物、又は、これを含む医薬組成物は、経口投与、局所投与、直腸投与、または経皮投与、非経口注射により対象に投与または吸入される。
特定の実施形態において、本発明のインドール化合物、又は、これを含む医薬組成物は経皮投与される。経皮投与剤型は例えば、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、散剤、スプレー剤、ペースト剤、ローション剤、溶液剤、貼付剤および吸入剤等が挙げられる。経皮投与剤型は例えば、溶液剤として皮膚に塗布される、または、例えば、皮膚貼付剤として、皮膚に適用される。
これらの製剤は薬学的に許容可能な添加剤を用いて周知の方法で製造される。
薬学的に許容可能な添加剤としては、一般に用いられる賦形剤、充填材、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤等が挙げられる。
【0056】
医薬組成物における本発明のインドール化合物の含有量は、本発明の所望の効果が奏される限り特に限定されないが、組成物の重量基準で、0.000025重量%~25重量%、好ましくは0.00025~2.5重量%であり、より好ましくは0.0025~0.25質量%である。
【0057】
本発明のインドール化合物を医薬組成物として使用する場合の投与量は、年齢、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、対象の年齢、症状により適宜選択する。例えば、インドール化合物の投与量は、一日につき体重1kgあたり約0.05~50mgであり得る。但し、これらの投与量に制限されるものではない。一日投与量は、1回で投与してもよく、また、複数回に分割して投与してもよい。
【0058】
(食品組成物)
本発明の一形態は、上記形態のインドール化合物を含む食品組成物を提供する。
【0059】
本発明のインドール化合物は、メイラード反応抑制、AGEsの生成抑制、および/またはAGEs架橋分解などの作用を有する。AGEsは、老化現象や様々な疾患の原因・重症化の原因として知られており、本発明のインドール化合物を摂取することで、老化を予防および/または改善することが可能である。
本発明の一形態は、老化の予防および/または改善のための食品組成物に関する。
幾つかの実施形態は、必要とする対象において老化を予防および/または改善する方法であって、上記形態のインドール化合物を含む食品組成物を摂取することを含む、方法に関する。
【0060】
食品組成物は、任意の形態で摂取することが可能である。
食品組成物は、食品、飲料または動物用飼料として、例えば、一般の食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品、美容食品、又は栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。食品組成物の形態は特に限定されず、例えば、粉末状、塊状、液状、シロップ状、ゼリー状を挙げることができる。
【0061】
本発明の食品組成物は、本発明のインドール化合物を、公知の食品と混合して、常法により、食品組成物に加工することにより得ることができる。食品の種類としては、例えば、飲料、乳製品、調味料、麺類、畜肉魚肉加工食品、マーガリン、パン、菓子類などの形態が挙げられる。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、又は錠剤の形態であってもよい。本発明の食品組成物は極めて多種類の形態にわたり、前記の例示に限定されるものではない。
食品組成物は、1種または複数の食品上許容可能な添加剤(例えば、各種栄養補助成分(アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類等)、糖類、乳製品、甘味料、香味料、香料、酸化防止剤、保存剤、着色剤、乳化助剤、pH調整剤、有機酸、緩衝剤、果汁等の少なくとも一つの成分)を含んでもよい。一実施形態は、上記形態のインドール化合物と1種または複数の食品上許容可能な添加剤とを含む食品組成物を提供する。
【0062】
食品組成物における本発明のインドール化合物の含有量は、添加剤の有無や食品の種類等により異なるが組成物の重量基準で、0.000025重量%~25重量%、好ましくは0.00025~2.5重量%であり、より好ましくは0.0025~0.25質量%である。
【0063】
本発明のインドール化合物の摂取量は特に限定されるものではなく、摂取者の性別、年齢、体重等に応じて適宜設定することができる。例えば、インドール化合物の重量として、一日につき体重1kgあたり約0.05~50mgであり得る。但し、これらの摂取量に制限されるものではない。かかる一日あたりの摂取量は、1回で使用してもよく、また、複数回に分割して使用してもよい。
【実施例0064】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本明細書において、「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。
本明細書において、用語「約」は、±10%を意味することができる。
【0065】
実施例において使用される略語は当業者に周知の慣用的な略語である。いくつかの略語を以下に示す。
PPD:1-フェニル-1,2-プロパンジオン
BA:安息香酸
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
PTB:N-フェナンシルチアゾリウム臭化物
DMSO:ジメチルスルホキシド
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
【0066】
実施例における物性の測定は、以下に示す装置を用いて行った。
【0067】
(高速液体クロマトグラフィー(HPLC))
HPLCにはシステムコントローラー、ポンプ、オートサンプラー、カラムオーブン、UV検出器としてそれぞれSCL-10A、LC-20AD、SIL-20A、CTO-10A、SPD-20A(株式会社島津製作所、京都府京都市)を接続して使用した。カラムはCAPCELL PAK C18 MG II 4.6mm IDx250 mm(資生堂株式会社、東京都港区)を用いた。溶出液には0.5%酢酸、10mM酢酸アンモニウム/メタノール(70/30)を使用した。流速は1.0 mL/min、カラム温度は40℃、検出波長は270 nmとして測定を行った。得られたデータはLCsolution (株式会社島津製作所)によって解析を行った。
【0068】
[実施例1:α-ジカルボニル結合の切断活性の測定]
非特許文献6(Yonei Y, et al., Cleaving effect of melatonin on crosslinks in advanced glycation end products. Glycative Stress Ressearch. 2016; 3(1):38-43)に記載の方法に基づき、α-ジカルボニル構造を持つ1-フェニル-1,2-プロパンジオン(PPD)を使用し、PPDのα-ジカルボニル構造切断後の分解産物である安息香酸(BA)の測定を行うことによりα-ジカルボニル結合の切断活性を測定した。PPDはAGEs架橋構造モデル物質として知られており、PPDを用いて測定されたα-ジカルボニル結合の切断活性からAGEs架橋分解活性を評価することができる。
【化20】
【0069】
(i)試料溶液の調製
PPDを、50%アセトニトリル溶液に溶解し、所定濃度のPPD溶液を調製した。
AGEs架橋切断活性のポジティブコントロールとしてPTBを使用した。PTBは50% DMSO溶液に溶解し、所定濃度のPTB溶液を調製した。
被験物質となる各種インドール化合物は、それぞれ50% DMSO溶液に溶解し、所定濃度の被験物質溶液を調製した。
上記で調製したPPD溶液、PTB溶液、被験物質溶液を以下の測定に用いた。
測定に用いたPTBおよび各種インドール化合物の構造を表1に示す。
【表1】
PPD、MEL、NMTP、BAは富士フィルム和光純薬株式会社(大阪府)から購入したTrp、5HTrp、5HT、NAS、5MTrp、5MTP、5HIAA、5MTPL、TP、IAA、NATP、6HMELはSigma-Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。2HMEL、4HMEL、6SMEL、2BrMEL、AMKはToronto Research Chemicals(Toronto,Canada)、AFMKはCAYMAN Chemical Company(Ann Abor,MI)、PTBはSanta Cruz Biotechnology(Dallas,TX)から購入した。
【0070】
(ii)検量線の作成および反応時間の検討
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて基質であるPPDと分解産物であるBAの検量線を作成した。測定の範囲内ではどちらも濃度依存的にピーク面積が増大し、正の相関が得られた。その後のα-ジカルボニル結合の切断活性の実験では、これらの基質の減少量と分解産物の増加量の2つのファクターを測定することとした。
【0071】
AGEs架橋切断活性が知られているPTBを用いてα-ジカルボニル結合の切断活性を測るのに適した反応時間を検討した。10mmol/LのPTB溶液 500μL、10mmol/LのPPD 100μLおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)400μLを混合し、37℃でインキュベートした。各タイムポイントで、HPLCを用いて基質であるPPDの分解量とBAの生成量を測定し、PPDの分解量とBAの生成量の経時的変化を観察した。対照群としてはPTB溶液を含まない溶液を用いた。
PPDの分解、BAの増加ともに18時間でPTB群と対照群で大きく差が開き、48時間ではあまり反応が進んでいなかったことから、続くα-ジカルボニル結合の切断活性の測定実験では、反応時間を18時間とした。
【0072】
(iii)α-ジカルボニル結合の切断活性の測定
10mmol/Lの各種インドール化合物を含有する被験物質溶液 500μLに対して、10mmol/LのPPD溶液 100μLおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS) 400μLを混合し、37℃で18時間インキュベートした。この時、反応液中の被験物質濃度は5mMとなっている。反応終了後2mol/L 塩酸 200μLを加えて反応を停止させ、2分間遠心分離した後、上清をHPLCを用いて逆相カラムで分離して、BA量をUV検出器で測定した。なお、2BrMELについては、溶解度の都合により、1/20の濃度(0.5mmol/L)の被験物質溶液を用いて同様の手順によりBA量を測定した。
PTBをポジティブコントロールとして用いた。10mmol/LのPTB溶液 500μLに対して、10mmol/LのPPD溶液 100μLおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS) 400μLを混合した溶液についても、上記と同様に、37℃で18時間インキュベート後、HPLCを用いて、BA量を測定した。
各インドール化合物を用いた場合の安息香酸生成量を表2に示す。表2に示す数値は、各インドール化合物を用いた場合の安息香酸生成量の値を、PTBの安息香酸生成量(100%)に対する割合として示したものである。安息香酸の増加はPPDがα-ジカルボニル構造の位置で切断されたことを示しており、安息香酸生成量が大きいほど、AGEs架橋切断活性が高いといえる。
【表2】
表2から、本発明の式(I)で表されるインドール化合物が、安息香酸生成量が大きく、AGEs架橋切断活性が高いことが確認される。特に、本発明の化合物は、非特許文献3で報告されたメラトニン(MEL)をはるかに超える高い切断活性が高いことが確認された。
中でも、4HMEL、2HMEL、6HMELのようなインドール環が水酸基で置換された化合物(式(Ia-1)の化合物)は、一層高い切断活性を示すことが確認された。特に、4HMELや2HMELは、PTBと比較しても高い切断活性を示した。
また、NMTP、5MTP、5HTのような式(Ib-1)で表される化合物も高い切断活性を有していた。
【0073】
(iv)AGEs架橋切断活性の用量依存性の検討
インドール化合物として、4HMELおよび2HMELを用い、濃度の異なる被験物質溶液を調製した。PTBについても、濃度の異なるPTB溶液を調製した。これらの各種濃度の被験物質溶液およびPTB溶液を試料溶液として用いた。各試料溶液 500μLに対して、10mmol/LのPPD溶液 100μLおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS) 400μLを混合し、37℃で18時間インキュベートした。反応終了後2mol/L 塩酸 200μLを加えて反応を停止させ、2分間遠心分離した後、上清をHPLCを用いて逆相カラムで分離して、BA量をUV検出器で測定した。
【0074】
図1に、各試料溶液における化合物の濃度と安息香酸生成量(BA量)との関係を示す。
図1から、インドール化合物濃度の増加に伴い、安息香酸生成量が増加することが確認された。本発明のインドール化合物とAGEs架橋切断活性との間に用量依存性があることが示される。
図1から、5mMのPTBを用いた際に生じた安息香酸生成量(0.13μmol/mL)と同量の安息香酸を生成する4HMELおよび2HMELの濃度を算出した。結果を表3に示す。
【表3】
表3から、4HMELおよび2HMELは、PTBと比較してそれぞれ約1/9、約1/19の濃度で同量の安息香酸を生成することができたことから、PTBよりも顕著に高いAGEs架橋切断活性を有するといえる。
【0075】
[実施例2:メラニン中間体の分解性(メラニン合成の抑制)評価]
メラニンは酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、ついで5,6-ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成されるものとされている。メラニン中間体であるドーパキノンは、α-ジカルボニル構造を有する。
【化21】
本実施例では、インドール化合物として2HMELを用い、以下の方法により、インドール化合物のメラニン合成の抑制能を評価した。
【0076】
(メラニン黒化度の測定)
L-DOPA(富士フィルム和光純薬株式会社)を1mMになるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、96wellプレートに分注した。2HMEL(Toronto Research Chemicals)をDMSOに溶解し、実験群には最終濃度が1mM又は0.5mMになるように添加し、対照群には等量のDMSOを加えた。チロシナーゼ(Sigma-Aldrich)を100 unit/mLになるように加えて反応を開始した。25℃で18時間のインキュベーションを行い、その後静かに上清を取り除いた。十分に乾燥した後、ウェル底面の沈殿は実体顕微鏡下で撮影した。結果を図2Aに示す。フリーソフトのImage Jを用いてウェル底面全体の輝度を測定し、対照群を100%として実験群の黒化度を算出した。図2Bに算出した黒化度の比較を示す。
【0077】
2HMELを添加した実験群では黒化度の低下が確認された。
L-DOPAから生成したメラニン中間体であるドーパキノンのα-ジカルボニル構造が2HMELにより切断されて分解され、メラニン合成が抑制されたと推定される。
本発明のインドール化合物が、メラニン合成を抑制できることが確認された。
【0078】
[実施例3:リゾチーム重合体に対する架橋切断効果]
リゾチーム/フルクトース糖化反応モデルを用いて、インドール化合物である2HMELの蛋白架橋形成阻害作用を検証した。
2mg/mLリゾチーム(Sigma-Aldrich)と0.2Mフルクトース(富士フィルム和光純薬株式会社)のPBS溶液に2HMELを最終濃度が6mMになるように添加し、60℃で40時間のインキュベーションを行った。
同様のインキュベーションを、2mg/mLリゾチーム(Sigma-Aldrich)のみを含むPBS溶液(2HMELおよびフルクトースの添加なし)の系、および、2mg/mLリゾチーム(Sigma-Aldrich)と0.2Mフルクトース(富士フィルム和光純薬株式会社)のPBS溶液(2HMELの添加なし)の系についても実施した。
溶液の上清を2 x Laemmli Sample Buffer(バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社)と1:1で混合し、4-20%のグラジエントゲルを用いてSDS-PAGEを行った。泳動後のゲルを蒸留水で洗浄し、Bio-Safe Coomassie G-250 Stain(バイオ・ラッドラボラトリーズ株式会社)によって1時間染色した。
【0079】
結果を図3に示す。リゾチームとフルクトースとを含む系では、2量体、3量体、4量体の存在に起因するバンドが確認された。これは、フルクトースによる糖化反応により、リゾチームの単量体が架橋し、2量体、3量体、4量体が形成したことを示す。一方、2HMELを添加した系では、2量体、3量体、4量体のバンドが薄くなるか消失した。2HMELの添加により、リゾチームの多量体中の架橋が切断され、多量体の生成が抑制されたと考えられ、2HMELは蛋白の架橋形成による重合を阻害したといえる。
【0080】
これらの結果からも、本発明の式(I)で表されるインドール化合物が、AGEs架橋切断効果を有し、AGEsの生成を抑制することが示唆される。
これらの結果は、本発明の式(I)で表されるインドール化合物が、AGEs生成抑制剤、AGEs架橋分解剤、抗糖化剤、またはメラニン合成抑制剤として使用可能であることを示す。
【0081】
本発明の範囲は以上の説明に拘束されることはなく、上記例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
図1
図2
図3