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特開2022-1289882,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤
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  • 特開-2,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022128988
(43)【公開日】2022-09-05
(54)【発明の名称】2,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220829BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20220829BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20220829BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220829BHJP
   A23G 3/36 20060101ALI20220829BHJP
   A23G 4/06 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
A23L33/10
A23F3/16
A23F5/24
A23L2/00 F
A23L2/52
A23G3/36
A23G4/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021027494
(22)【出願日】2021-02-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】507290814
【氏名又は名称】株式会社フード・ペプタイド
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】大畑 素子
(72)【発明者】
【氏名】横山 壱成
(72)【発明者】
【氏名】有原 圭三
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB06
4B014GB07
4B014GB08
4B014GB13
4B014GG18
4B014GL08
4B014GP01
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD18
4B018MD59
4B018ME14
4B018MF02
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC06
4B027FK20
4B027FP85
4B027FQ19
4B117LC04
4B117LK06
(57)【要約】
【課題】 2,3-ジメチルピラジン(3DP)の香気による機能性や作用の内容を明らかにし、これを応用したヒト用の食品等を提供すること。
【解決手段】 3DPを含むストレス軽減剤、およびそれを10~110mg/lの濃度で含む抗ストレス用食品組成物とする。本抗ストレス用食品組成物は、たとえば、口腔内崩壊性錠・チュアブル錠・顆粒剤・経口液剤等の剤形のサプリメント、キャンディ、チューインガム、キャラメル、ラムネ、グミ、タブレット、清涼飲料、お茶、コーヒーの形態をとることができ、ヒトの副交感神経活動を活発にし、また作業能率を向上させる。
【選択図】 図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3-ジメチルピラジンを含むストレス軽減剤。
【請求項2】
請求項1に記載のストレス軽減剤を含む抗ストレス用食品組成物。
【請求項3】
ヒトの副交感神経活動を活発にすることを特徴とする、請求項2に記載の抗ストレス用食品組成物。
【請求項4】
作業能率を向上させることを特徴とする、請求項2、3のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
【請求項5】
2,3-ジメチルピラジンの濃度が10~110mg/lであることを特徴とする、請求項2、3、4のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
【請求項6】
サプリメント、キャンディ、チューインガム、キャラメル、ラムネ、グミ、タブレット、清涼飲料、お茶、またはコーヒーのいずれかであることを特徴とする、請求項2、3、4、5のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
【請求項7】
サプリメントであって、その剤形が口腔内崩壊性錠、チュアブル錠、顆粒剤、または経口液剤のいずれかであることを特徴とする、請求項2、3、4、5のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
【請求項8】
抗ストレス用食品組成物の製造のための、請求項1に記載のストレス軽減剤の使用。















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤に係り、詳しくは嗅覚刺激による気分的ストレス軽減および身体的な鎮静効果を得、それによるストレス度低下、作業能率向上を可能とするストレス軽減剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2,3-ジメチルピラジン(3DP)は、ローストしたナッツを連想するような香気、香ばしい香気などを有する。3DPは、生落花生、緑茶等の食品中に天然に存在する他、牛肉、豚肉、エビ、ポテト等の加熱調理、およびコーヒー、カカオ等の焙煎により生成する成分である。また、飲料、冷菓、焼き菓子などの食品用香料としても使用されている(非特許文献1)。さらに、3DPを含む覚醒付与香料(特許文献1)や、血流改善機能によるあたたまり感付与剤(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】香りの総合辞典、日本香料協会編、朝倉書店発行(1998年)
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-016743号公報「覚醒感付与香料」
【特許文献2】特開2013-116100号公報「あたたまり感を付与する飲食品用配合素材及びあたたまり感付与剤」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように3DPは従来から、食品用香料、覚醒付与香料、あたたまり感付与剤としての使用またはその提案がなされている。しかし、3DPの利用はそれらに留まり、たとえば鎮静作用や抗ストレス作用などを有するか否かは確認されておらず、したがってかかる観点からの新食品等の提案は未だに報告されていない。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、特に3DPの香気による機能性や作用の内容を明らかにし、これを応用したヒト用の食品等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは上記課題について検討した。その結果、3DPの香気が嗅覚系を介して自律神経系に作用し、交感神経活動を抑制することによって副交感神経活動を優位にし、その結果、鎮静効果をもたらすことを見出した。また、3DPの香気を吸入することにより、主観的な気分評価で、敵意、疲労、ストレスが緩和し、さらには脳のストレス度が低下し、それにより頭の回転度が向上し、脳年齢が若返るとともに作業能率の向上効果も見出した。
【0008】
すなわち、3DPの香気を吸入することにより、ヒトにおける身体的な鎮静効果のみならず、気分的な敵意減少、疲労低減、ストレス緩和といった精神安定効果、そして脳のストレス低減、頭の回転向上、作業能率向上等といった各効果を見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 2,3-ジメチルピラジンを含むストレス軽減剤。
〔2〕 〔1〕に記載のストレス軽減剤を含む抗ストレス用食品組成物。
〔3〕 ヒトの副交感神経活動を活発にすることを特徴とする、〔2〕に記載の抗ストレス用食品組成物。
〔4〕 作業能率を向上させることを特徴とする、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
【0010】
〔5〕 2,3-ジメチルピラジンの濃度が10~110mg/lであることを特徴とする、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
〔6〕 サプリメント、キャンディ、チューインガム、キャラメル、ラムネ、グミ、タブレット、清涼飲料、お茶、またはコーヒーのいずれかであることを特徴とする、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
〔7〕 サプリメントであって、その剤形が口腔内崩壊性錠、チュアブル錠、顆粒剤、または経口液剤のいずれかであることを特徴とする、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の抗ストレス用食品組成物。
〔8〕 抗ストレス用食品組成物の製造のための、〔1〕に記載のストレス軽減剤の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明の2,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤は上述のように構成されるため、明らかにした3DPの香気による機能性や作用内容に基づいて、ヒト用のストレス軽減剤や抗ストレス用食品組成物を提供することができる。
【0012】
本発明2,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤においては、3DPが副交感神経活動を活発にすることで、気分的なストレスの軽減および身体的な鎮静をもたらし、それにより脳のストレス度を低下させ頭の回転を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】3DPの香気吸入によるヒトの自律神経活動を評価する指標となる縮瞳率(図中(A))、および指先の末梢皮膚温(図中(B))を、空気吸入時との比較により示すグラフである。
図2】3DPの香気吸入後のヒトにおける主観的な気分をVisual Analogue Scale(VAS)(図中(2A))、および多面的感情尺度(図中(2B))を用いて評価したグラフである。
図3】3DPの香気吸入によるヒトの脳のストレス度および頭の回転度を評価したグラフ(図中(A))、および、それらの評価から算出された脳年齢を示すグラフ(図中(B))である。
図4】3DPの香気吸入時における所定のカウントアップ課題の平均反応時間を、空気吸入時との比較により示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、嗅覚刺激によりヒトに鎮静効果およびストレス軽減効果を誘発する2,3-ジメチルピラジン(3DP)を含む、ストレス軽減剤である。また本発明は、かかるストレス軽減剤を含むヒトの抗ストレス用食品組成物である。本発明ストレス軽減剤は、実施例にて詳述する通り、ヒトの副交感神経活動を活発にする作用効果、および作業能率を向上させる作用効果を有する。
【0015】
ところで、食品や植物精油の香気成分の生理的な作用とは、香気成分が自律神経や中枢神経、内分泌系に影響し、ストレス低減、集中力向上、睡眠改善、作業能率向上などの様々な効果をもたらすことをいう。このような生理作用メカニズムについては多くの研究報告があり、主に二つの経路が存在する。
一つは香気成分が血中に取り込まれる経路であり、もう一つは嗅覚神経系を介した経路である。
【0016】
前者は、精油を用いたマッサージ等によって精油成分に含まれる香気成分が皮膚から吸収されたり、呼吸とともに肺胞に吸収され肺粘膜から血中に取り込まれたり、あるいは経口的に摂取することで自然に香気成分が消化吸収され血中に取り込まれる経路である。香気成分が血中に取り込まれて脳に到達し、生理作用が出現するまで少なくとも20分程度の時間を要すると考えられている(アロマテラピーを学ぶためのやさしい精油化学 E・ジョイ・ボウルズ著 フレグランスジャーナル社発行(2002年))。
【0017】
一方、後者は、呼吸とともに香気成分が鼻腔内に流入し、あるいは食物の咀嚼中に香気成分が後鼻腔から流入し、嗅細胞の表面に存在する受容体と結合し、その結合情報が軸索から嗅球へ投射されて大脳辺縁系などの脳の深部領域に到達する経路である。この場合、大脳辺縁系にある視床下部は、自律神経系や内分泌系、免疫系を統合的に制御しているため、これらの活動に影響し、鎮静や興奮などの生理作用が誘発される。生理作用が出現するまでの時間は非常に短く、数分で見られることもある。本発明は後者の経路によるものである。
【0018】
本発明のストレス緩和剤は、有効成分である3DPのみを含有するものでよいし、さらに他の成分を含有してもよい。他の成分としては、有効成分の作用を妨げず、かつ食品として許容されるものであればよい。たとえば、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、または湿潤剤を挙げることができる。
【0019】
本発明の抗ストレス用食品組成物は本発明のストレス軽減剤を含み、ヒトが摂取する際に、香気成分が鼻腔内に流入し、あるいは食物の咀嚼中に香気成分が後鼻腔から流入することによる鎮静効果によって精神安定効果をもたらす。そのため食品組成物としては、摂取する際に香気成分が鼻腔内に流入するか、咀嚼中に香気成分が鼻腔内に流入するような組成物であればよく、特に限定されない。
【0020】
このような食品組成物としてはたとえば、サプリメント、キャンディ、チューインガム、キャラメル、ラムネ、グミ、タブレット、清涼飲料、お茶、またはコーヒーなどを挙げることができる。これら食品組成物を調製する際、あるいは調製後に、3DPを添加することにより、本発明の抗ストレス用食品組成物を製造することができる。
【0021】
本発明ストレス軽減剤および抗ストレス用食品組成物に含有される3DPの濃度は特に限定されないが、10~110mg/l、好ましくは100±5mg/lとすることができる。このような濃度範囲とすることで、ストレス軽減や食品組成物を摂取した際における、所望の効果をより高度に発揮することができる。
【0022】
食品組成物がサプリメントの場合、その剤形は特に、口腔内崩壊性錠、チュアブル錠、顆粒剤、または経口液剤とすることができる。またそれぞれ、有効成分3DPの他に、サプリメントとして許容される成分を適宜添加する構成としてもよい。
【0023】
なお、食品組成物の製造のための、3DPを含むストレス軽減剤の使用もまた、本発明の範囲内である。食品組成物の製造に3DPを含むストレス軽減剤を用いることで、抗ストレス作用による精神安定効果のある食品組成物を得ることができる。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例で説明する。なお、以下の実施例は、本発明を説明するために挙げた例であり、これにより本発明を限定するものではない。なお、パネリストとして20歳から26歳の男女27名(男13名、女14名)を選出し、各実施例に係る実験を行った。
【0025】
(実施例1)
(3DPの香気吸入による自律神経活動の評価)
3DPの香気を吸入した際のヒトの自律神経活動を評価した。より詳しくは、以下の通りである。100mg/lの3DPを10mlずつ褐色バイアル瓶に分注し、常温で30分間平衡させて、香気をヘッドスペースに充満させたものをパネリストに呈示し、自然呼吸下で2分間香気を吸入しながら光照射前の瞳孔直径と光照射後の最小瞳孔径から算出する縮瞳率(constriction rate,CR)を縮瞳計測装置で測定した。
【0026】
また、自然呼吸下で2分間3DPの香気をパネリストに吸入させ、サーモセンサーを用いて、パネリストの利き手人差し指の指先温度を末梢皮膚温として測定し、3DPの吸入前と吸入後の温度差を求めた。
【0027】
図1は、3DPの香気吸入によるヒトの自律神経活動を評価する指標となる縮瞳率(図中(A))、および指先の末梢皮膚温(図中(B))を、空気吸入時との比較により示すグラフである。図示するように、3DPを嗅いだ後の縮瞳率(図中(A))が有意に上昇していることから(p<0.05)、副交感神経活動が亢進していることが認められた。また、指先の末梢皮膚温(図中(B))の有意な上昇により(p<0.00001)、3DPの香気吸入によって交感神経活動が抑制されて副交感神経活動が高まり、身体的な鎮静が誘発されたことが認められた。
【0028】
縮瞳は、副交感神経が支配する瞳孔括約筋の収縮または交感神経が支配する瞳孔散大筋の弛緩によって起こるが、鎮静状態では副交感神経が優位となり縮瞳率が上昇する。一方で末梢血管は、交感神経のみが支配していることから、交感神経活動が抑制されることで末梢血管が拡張して血流量が増加し皮膚温が上昇した。以上のことから、3DPの香気吸入により、ヒトの交感神経活動が抑制され、副交感神経が優位となり身体的な鎮静状態を誘発すると結論づけた。
【0029】
(実施例2)
(3DPの香気吸入によるヒトの主観的な気分の評価)
3DPの香を気吸入した際のヒトの主観的な気分を評価した。より詳しくは、以下の通りである。100mg/lの3DPを10mlずつ褐色バイアル瓶に分注し、常温で30分間平衡させて、香気をヘッドスペースに充満させたものをパネリストに呈示した。主観的な気分はVisual Analogue Scale(VAS)および多面的感情尺度を用いて評価した。
【0030】
具体的には、VASにより「疲労感」および「ストレス感」を、また多面的感情尺度により「抑うつ・不安」、「敵意」および「倦怠」を評価した。また、評価の尺度は、VASにおいては「0=全く感じない」から「100=はっきり感じる」、多面的感情尺度においては「0=全く感じない」から「6=はっきり感じる」と定義し、各評価項目における評価得点をデータとして記録した。
【0031】
図2は、3DPの香気吸入後のヒトにおける主観的な気分をVisual Analogue Scale(VAS)(図中(2A))、および多面的感情尺度(図中(2B))を用いて評価したグラフである。図示するように、3DPを嗅ぐ前の評価と比較して、嗅いだ後の「敵意」、「疲労感」および「ストレス感」における得点は有意に減少することを示し(p<0.05)、「抑うつ・不安」および「倦怠」における得点は減少傾向にあることを示した(抑うつ・不安:p=0.078、倦怠:p=0.131)。すなわち、3DPの身体的な鎮静によって心理的な敵意の感情、疲労感やストレス感、不安感、倦怠感が緩和されると結論づけた。
【0032】
(実施例3)
(3DPの香気吸入による脳ストレスの評価および作業能率の評価)
3DPの香気を吸入した際のヒトの脳ストレスおよび作業能率を評価した。より詳しくは、以下の通りである。100mg/lの3DPを10mlずつ褐色バイアル瓶に分注し、常温で30分間平衡させて、香気をヘッドスペースに充満させたものをパネリストに呈示し、自然呼吸下で2分間香気を吸入した。吸入後、脳年齢計ATMT(登録商標、株式会社総合医科学研究所)を用いて、数字とひらがな計40個を順番かつ交互にできるだけ速く押すカウントアップ課題を実施した。カウントアップ課題をこなすことによる反応時間、正答率、情報処理能力等から総合して脳のストレス度および頭の回転度が算出され、点数化(定量化)されるものである。また、脳年齢も算出される。
【0033】
図3は、3DPの香気吸入によるヒトの脳のストレス度および頭の回転度を評価したグラフ(図中(A))、および、それらの評価から算出された脳年齢を示すグラフ(図中(B))である。図示するように、3DPの香気吸入によって脳のストレス度が有意に減少し(p<0.01)、頭の回転度が有意に向上し(p<0.001)、脳年齢が実年齢よりも減少する傾向(p=0.267)が示された。3DPの身体的な鎮静および気分的なストレスの軽減により、脳のストレスも低下され、それにより頭の回転度が高まったことを示している。これらの変化により、3DPの香気吸入によって脳年齢が若くなる傾向があると結論づけた。
【0034】
図4は、3DPの香気吸入時における所定のカウントアップ課題の平均反応時間を、空気吸入時との比較により示すグラフである。図示するように、3DPの香気級によって、数字とひらがな計40個を順番かつ交互にできるだけ速く押すカウントアップ課題の平均反応時間が有意に減少した(p<0.001)。それに伴って評価された脳のストレス度は有意に減少し(p<0.01)、一方で頭の回転度は有意に向上した(p<0.001)。すなわち、3DPの吸入によって脳のストレス度が軽減され、頭の回転が良くなり、それによって脳年齢が若くなる傾向が示された。
【0035】
3DPの身体的な鎮静効果と、および心理的な敵意の感情、疲労感やストレス感、不安感、倦怠感の軽減という気分的なストレスの軽減効果とによって、脳のストレス度が軽減するとともに脳の回転度の向上がもたらされ、作業能率が有意に向上すると結論づけた。
【0036】
以上、実施例1~3で得られた結果から、3DPはヒトの交感神経活動を抑制し副交感神経活動を亢進し生体に鎮静効果をもたらすとともに、気分や感情に影響を与え、脳のストレス軽減とそれに伴う頭の回転の向上にも作用し、作業能率向上効果を有していると結論づけた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明2,3-ジメチルピラジンを利用したストレス軽減剤によれば、3DPが副交感神経活動を活発にし、気分的なストレスの軽減および身体的な鎮静をもたらし、それにより脳のストレス度を低下させ頭の回転を向上させる効果を得ることができる。したがって、食品等製造分野、およびこれに関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
図1
図2
図3
図4